説明

アスベストの回収・分離・濾過方法及びそのための装置

【課題】アスベスト繊維の飛散を防止する略密閉状態でアスベストを剥離して回収し、アスベスト片等の固形分は即時に分離し、アスベスト混濁水は濾過する一連の作業を閉塞した回路で一貫して行い、作業現場及び周囲の安全性を確保し、優れた作業効率を上げる。
【解決手段】アスベスト吸引器1にブラスト装置11の噴射ノズル14を挿入し、水と研掃材を加圧噴射してアスベストAを剥離し、破砕する。アスベスト分離装置21は、アスベスト吸引器1、吸引ホース27を介して吸引したアスベスト汚泥からアスベスト固形分を分離して回収する。アスベスト分離装置21が排出するアスベスト混濁水はアスベスト濾過装置31で濾過してアスベスト繊維等を分離除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルディング、その他の構造物に使用されているアスベストを回収して分離し、濾過する処理を一貫して行うことができるので、極めて安全性の高いアスベストの回収・分離・濾過方法及びそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アスベストは人体に対する危険性が高いことからその除去技術の確立が早くから望まれているが、構造物から剥す際にアスベストは極細な繊維になって飛散し、浮遊するという特質がある。このため、作業員のみならず作業現場の周辺の安全性を確保することが強く望まれており、従来はポリエチレンシートを作業現場に張り巡らして周囲から遮断し、HEPAフィルタ付きの負圧集塵機で作業現場を負圧状態にしてアスベスト繊維が外部に飛散しない状態にしてアスベスト剥離作業を行うことが行われている。
【0003】
また、作業員は防護服、防塵マスク等を着用し、現場にはアスベスト飛散防止剤を噴霧してスベスト繊維を湿潤させて飛散を防止した状態にして、ケイレン棒その他の剥し用工具により剥離作業を行っている。しかし、剥離作業に伴って床等には剥したアスベスト片が散乱した状態になることから作業員が人力で回収し、綿ゴミ状のアスベストは真空掃除機で吸引除去して清掃するという作業を行っている。また、回収したアスベスト片等は袋詰めにするか、或はコンクリートと混合して袋詰めして固形化し、地中に埋設している。
【0004】
しかし、ケイレン棒等でアスベストを剥す従来の方法は、アスベスト繊維を飛散させてしまうという欠点がある。そこで、微細なアスベスト繊維を飛散させず、また作業現場をシートで覆う必要のないアスベスト除去方法として、吸引用筒にアスベストに押し付けるブラシを取付け、吸引筒内に砂を高圧空気と共に噴射してアスベストを剥離し、剥離したアスベストと砂をサイクロンへ吸引する方法が提案されている。
【特許文献1】特公平4−53233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来技術は、作業現場にシートを張り巡らす、手作業でアスベストを剥す、散乱したアスベスト片を回収し、綿ゴミ状アスベストは掃除機で吸引回収するといった多くの作業が必要であるため、作業効率が極めて悪いという欠点がある。また、アスベストを剥がす方法では多量の繊維が飛散するという問題があり、しかもアスベスト繊維は極めて微細であることから、作業時にアスベスト飛散防止剤を噴霧してアスベストの飛散を抑制し、作業員は防塵マスクを着用することで対応しているが飛散するアスベストから完全に守ることは困難であるという欠点がある。
【0006】
また、砂を高圧空気で噴射することによりアスベストを剥離し、吸引回収する方法は、アスベスト片及びアスベスト繊維を乾燥状態のままで処理することから、これらの飛散及び浮遊を完全に防止することはできないという欠点がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の諸欠点に鑑みなされたもので、水により湿潤させた状態でアスベストを剥離し回収するので、アスベスト繊維が飛散して浮遊する事態を防止できるし、略密閉状態でアスベストを剥離し、回収したアスベスト片等の固形分は即時に分離し、アスベスト混濁水は濾過するという一連の作業を閉塞した回路で一貫して行うので、作業現場及び周囲の安全性を確保できるし、作業効率に優れており、しかも廃棄作業も安全かつ効率良く行うことができるアスベストの回収・分離・濾過方法及びそのための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決する請求項1に係る発明を構成する手段は、アスベスト吸引器の吸込み口を作業面に密接し、該アスベスト吸引器に挿装した噴射ノズルから水と研掃材を加圧噴射することによりアスベストを剥離して破砕し、破砕したアスベストが混合するアスベスト汚泥を吸引してアスベスト固形分は分離回収し、アスベスト混濁水は凝集剤と混合した後、フィルタによりアスベストを分離除去して濾過するようにしたものからなる。
【0009】
また、請求項2に係る発明を構成する手段は、作業面に密接する吸込み口を有するアスベスト吸引器と、該アスベスト吸引器内に挿入した状態で水と研掃材を加圧噴射することによりアスベストを剥離し、破砕する噴射ノズルを有するブラスト装置と、吸引ホースを介して前記アスベスト吸引器に接続され、吸引したアスベスト汚泥からアスベスト固形分を分離して回収するアスベスト分離装置と、該アスベスト分離装置から排出するアスベスト混濁水を濾過してアスベストを分離除去することにより濾過水を生成するアスベスト濾過装置と、前記ブラスト装置、アスベスト分離装置及びアスベスト濾過装置との間で濾過水を循環供給する循環ポンプと、前記アスベスト吸引器及びアスベスト分離装置に吸引力を付与する吸引手段とからなる。
【0010】
そして、前記アスベスト吸引器には、前記噴射ノズルのノズル筒部を挿脱可能に挿装するノズル差込口を設けた構成にするとよい。
【0011】
また、前記アスベスト吸引器は、内部が目視可能なように少なくとも一部を透明に形成するとよい。
【0012】
また、前記アスベスト分離装置は、分離したアスベスト固形分のみを排出する固形分排出機構を備えた構成にするとよい。
【0013】
更に、前記アスベスト濾過装置は、アスベスト混濁水に凝集剤を添加する攪拌槽と、該攪拌槽の下流側に配置した沈殿槽と、該沈殿槽から流入するアスベスト濾過水を浄化して循環利用する水質調整槽とから構成し、該水質調整槽内に前記循環ポンプを組み込んで構成するとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上詳述した如く構成したから、下記の諸効果を奏する。
(1)吸込み口を有するアスベスト吸引器を作業面に当接した状態で、噴射ノズルから噴射した水と研掃材によりアスベストを剥離し、湿潤した状態のアスベスト片や繊維を即時に吸引回収するようにしたから、周囲にアスベスト繊維が飛散し浮遊する事態を防止して安全なアスベスト処理作業ができる。
(2)吸引回収したアスベストは大きさに応じて選別し、所定の大きさ以上のアスベスト片は分離して回収する構成にしたから、回収作業を円滑に効率よく行うことができる。
(3)アスベスト吸引器は内部を目視可能に構成し、作業面とアスベストの剥離状況を確認しながら作業を行うことができるようにしたから、剥離残しのない完全な作業と無駄のない効率的な作業ができる。
(4)アスベスト片を除去したアスベスト混濁水は濾過して浄化するようにしたから、アスベスト繊維を確実に回収することができる。
(5)アスベスト片及びアスベスト繊維の回収、アスベスト固形分の即時の分離、アスベスト混濁水の浄化という一連の作業を閉鎖した回路で一貫して行うので、作業員の安全性に優れているし、周囲の安全性を確保して環境保全を図ることができる。
(6)アスベストの剥離、回収、分離、濾過といった工程を連続して行うから、作業効率に優れているし、廃棄作業も安全かつ効率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係るアスベストの回収・分離・濾過装置を図面に基づいて詳述する。図1はアスベストの回収・分離・濾過方法を実施するための装置の全体構成を示し、該装置はアスベスト吸引器1、ブラスト装置11、アスベスト分離装置21、アスベスト濾過装置31、循環ポンプ52及び吸引手段57とから構成してある。
【0016】
図2乃至図5はアスベスト吸引器1を示す。2は該アスベスト吸引器1を構成し、例えばFRP合成樹脂板と透明アクリル板で形成した吸引カップで、該吸引カップ2は作業面を目視できるように透明板で形成した略円弧状の胴部2Aと、該胴部2Aの両側面を閉塞する半円状の側部2B、2Bとから半円筒状に形成したものからなり、略長方形の開口は作業面に当接する吸込み口2Cになっており、該吸込み口2Cに対向して胴部2Aにはノズル接続口2Dが突設してある。
【0017】
そして、胴部2A及び両側部2Bには長方形のノズル差込口2Eが形成してあり、該各ノズル差込口2Eは先端側3A、3Aを重畳して密閉状態を保持するようにしたゴム、高圧ポリエチレン等の可撓性材料からなる封止材3で閉塞してある。かくして、後述する噴射ノズル14のノズル筒部14Aは作業面に対して噴射方向を変えることや、移動させることが可能であるから、効率よく作業を行うことができる。
【0018】
また、吸込み口2Cの口縁に沿って吸引カップ2には軟質ゴム等からなる密閉材4が設けてあり、図5に示すように、アスベストを除去する作業面にアスベスト吸引器1を密着させて、アスベスト片や繊維が外部に飛散しないようにしてある。
【0019】
11は除去するアスベストAに向けて研掃材を高圧で噴射するためのブラスト装置を示す。該ブラスト装置11は、槽本体12Aと、駆動モータ12Bと、攪拌翼12Cからなり、例えば貝殻等の粉砕粒からなる研掃材を攪拌して研掃材に流動性を持たせる研掃材攪拌槽12と、該研掃材攪拌槽12に供給ホース13を介して接続され、ノズル筒部14Aの先端に噴射口が形成してある噴射ノズル14と、一端側は水を0.15〜1.5Mpaの圧力で圧送する加圧ポンプ15に接続され、先端側は噴射ノズル14に接続されている送水ホース16と、後述する循環ポンプ52と配管17を介して接続され、供給された水を加圧ポンプ15に供給する貯水タンク18とから構成してある。
【0020】
上述したブラスト装置11は、加圧ポンプ15から送水ホース16を介して加圧水を噴射ノズル14に圧送し、霧吹きと同じ負圧現象を利用して研掃材を研掃材攪拌器2から供給ホース13を介して吸い上げ、水と混合した状態で噴射ノズル14から高圧噴射するものである。このように、ブラスト装置11は、研掃材のみでなく水を混合した状態で噴射することにより、アスベストを湿潤状態で剥離し、破砕するのでアスベスト繊維の飛散や浮遊を防止することができる。なお、研掃材として貝殻の粉砕粒を例に挙げたが、この場合は貝殻を洗浄し、約200度で加熱して有機物を燃焼除去した後、粒径を0.5から2.4mmに粉砕した粉粒を使用している。
【0021】
次に、21は噴射ノズル1から研掃材をアスベストAに吹付けることにより剥離したアスベスト片や繊維と水が混合したアスベスト汚泥から、アスベスト固形分を分離するためのアスベスト分離装置を示す。22は該アスベスト分離装置21を構成するケーシングで、該ケーシング22は略四角形の気密性を有する箱からなり、上方に汚泥流入口22A、下方に汚泥流出口22B、下方寄りの中間にアスベスト排出口22Cを夫々形成したものからなる。そして、ケーシング22内は後述する吸引手段である高圧ポンプ57によって負圧状態にしてあり、アスベスト汚泥は除々に脱水するようになっている。
【0022】
23はアスベスト片等を大きさに応じて選別するための分離板で、該分離板23は穴径が5mmの選別穴23Aを多数穿設した平板からなり、該ケーシング22内に傾斜させて設置してある。分離板23は選別穴23Aより小さいアスベスト繊維や塊は水と共にケーシング22内下方に落下させ、選別穴23Aより大きいアスベスト片等の固形分は除々に脱水されることにより分離板23上を滑落してスクリューコンベア24に落下するようになっている。
【0023】
また、24はアスベスト排出口22Cに挿設され、分離板23の下端側からケーシング22の外側に突出して設けられた固形分排出機構で、該固形分排出機構24は、ケーシング22の一側に突設したモータ室24Aに設けた駆動モータ24Bと、該駆動モータ24Bに軸着されて回転駆動されるスクリューコンベア24Cと、ケーシング22の他側に突設され、スクリューコンベア24Cを覆う円筒状のカバー24Dと、ケーシング22内に連通した状態で該カバー24Dに沿ってケーシング22から突設した吸引管24Eとから構成してある。
【0024】
上述の構成からなる固形分排出機構24は、分離板23の各選別穴23Aから落下しなかったアスベスト片や繊維塊をスクリューコンベア24Cでケーシング22外に排出する。そして、カバー24Dの先端側に回収袋Bを被せて排出されるアスベスト片や塊を収容し、吸引管24Eで空気を抜いて開口部B1を密閉して真空包装することにより、アスベスト繊維の飛散を確実に防止した状態で廃棄処分ができる。ここで、該アスベスト回収袋Bは気密性を有する素材で形成してあり、開口部B1はスライドファスナーと粘着テープで気密に密閉するようにしてある。
【0025】
更に、ケーシング22内の上側には分離板23に向けてシャワーノズル25、25、・・が設けてある。各シャワーノズル25から分離板23に洗浄水を噴射することにより、選別穴23Aの目詰まりを防止し、分離板23に付着するアスベスト繊維を洗い流して汚泥流出口22B側に流動させる。そして、本実施の形態では、シャワーノズル25は給水管26を介して循環ポンプ52と接続してあり、浄化した水をシャワー水に循環使用することにより、水に掛かるコストの節減を図っている。
【0026】
アスベスト分離装置21は上述の構成からなり、汚泥流入口22Aに吸引ホース27を介してアスベスト吸引器1が接続してあり、ケーシング22内を高圧ポンプ57によって負圧にすることにより、アスベスト吸引器1に吸込み力を働かせるようにしてある。
【0027】
31は前記アスベスト分離装置21の下流側に設置したアスベスト濾過装置を示す。32は該アスベスト濾過装置31を構成し、気密に構成した箱型のハウジングで、該ハウジング32内は4枚の隔壁33、34、35、36によって上流側から攪拌槽37、第1沈殿槽38、第2沈殿槽39、水質調整槽40、水質管理槽41に画成してあり、ハウジング32の底には各槽37、38、39、40、41毎に開閉可能な汚泥排出口42が設けてある。
【0028】
また、43はハウジング32の上部に配置した薬品タンクで、該薬品タンク43は凝集材収容部、凝集補助材収容部及びアスベスト飛散防止剤収容室に画成してあり、凝集材収容部と凝集補助材収容部は開閉弁を夫々有する供給管44によって連通し、攪拌槽37に凝集材と凝集補助材を供給するようになっている。また、アスベスト飛散防止剤収容室は配管45によって水質調整槽40にアスベスト飛散防止剤を供給するようになっている。
【0029】
ここで、凝集材には硫酸パック或は硫酸ベンドを用いており、凝集補助材には消石灰、ベントナイト、セメント、砂利洗浄汚泥の2種類を混合したものを用いている。これらの使用量は、アスベスト汚泥1.000リットル当り凝集材は500〜2.000cc、凝集補助材は50〜500gが目安である。凝集材に加えて凝集補助材を使用するのは、凝集材のみではアスベスト汚泥中のアスベストが沈降するのに約20時間を要するのに対し、凝集補助材にアスベストが吸着することにより比重が重くなり、急速に沈降することにある。また、アスベスト飛散防止剤として、アクリル系エマルジョンとノニオン系活性剤を混合したものを用いている。
【0030】
46は攪拌槽37に設けた攪拌機を示し、該攪拌機46はハウジング32に設けた駆動モータ46Aと、攪拌槽37内に突設され、該駆動モータ46Aにより回転駆動される攪拌翼46B、46Bとから構成してある。そして、攪拌機46は、連通管47を介してアスベスト分離装置21の汚泥流出口22Bから攪拌槽37に流入するアスベスト汚泥を攪拌してアスベスト汚泥に凝集材と凝集補助材を混合する。
【0031】
攪拌槽37で混合されたアスベスト汚泥は隔壁33を溢流して第1沈殿槽38に流入し、凝集材と凝集補助材に吸着したアスベストは沈積することにより、アスベスト汚泥は混濁水の状態にまで浄化される。隔壁34の上端には水中ポンプ48を組み付けた濾過フィルタ49が設けてある。濾過フィルタ49は、容器内下側にバクテリアマット、中間にゼオライト、上側にサランロックを層状に充填して構成してあり、容器の上端から流入したアスベスト混濁水は容器内を下側から上側に流動させることによって順次濾過して上側から浄水として排出するようにしてある。かくして、第1沈殿槽38のアスベスト混濁水は、水中ポンプ48によって吸い上げられ、濾過フィルタ49によって濾過されながら第2沈殿槽39に放出される。第2沈殿槽39では、アスベスト混濁水中のアスベストを更に沈降することにより除去することができる。
【0032】
第2沈殿槽39と水質調整槽40の隔壁35の上端には水中ポンプ50を組み付けた濾過フィルタ51が設けてあり、第2沈殿槽39のアスベスト混濁水は濾過されながら水質調整槽40に送られる。濾過フィルタ51は、上述した濾過フィルタ49と同様の構成からなるものである。
【0033】
水質調整槽40には循環ポンプ52が設置してあり、薬品タンク43からアスベスト飛散防止剤が供給される。循環ポンプ52は配管17を介してブラスト装置11の貯水タンク18と、給水管26を介してシャワーノズル25と夫々接続してある。これにより、水質調整槽40の濾過水は配管17を介してブラスト装置11に供給され、噴射ノズル14から噴射される。アスベスト片や繊維及び研掃材と混合した浄水はアスベスト汚泥となってアスベスト吸引器1から吸引ホース27を介してアスベスト分離装置21に流入し、連通管47を介してアスベスト濾過装置31に還流する。
【0034】
また、濾過水の一部は給水管26を介してアスベスト分離装置21のケーシング22に送られ、シャワーノズル25から噴射されてアスベスト汚泥に合流してアスベスト濾過装置31に還流する。このように、アスベストAを濾過した濾過水は循環供給しながら各目的に利用することにより、水に要する費用の削減を図ることができる。
【0035】
隔壁36によって水質調整槽40と遮断して形成した水質管理槽41は、上部に空気浄化フィルタ53と排気筒54が設けてある。隔壁36の高さ方向中間には水中ポンプ55を組み付けた濾過フィルタ56が設けてあり、水質調整槽40内の濾過水は濾過フィルタ56によって更に濾過して水質管理槽41に供給するようになっている。
【0036】
57は水質管理槽41に設置し、アスベスト吸引器1及びアスベスト分離装置21に吸引力を付与させる吸引力形成機構を示す。該吸引力形成機構57は、例えば毎分1.5トンの水を吸込む高圧ポンプ57Aと、該高圧ポンプ57Aに設けた略冂字状の循環パイプ57Bと、該循環パイプ57Bに接続され、ハウジング32内に開口した吸気管57C、57C、57Cとから構成してある。
【0037】
そして、吸引力形成機構57は、水質管理槽41内の濾過水を高圧ポンプ57Aにより循環パイプ57Bとの間で高速で流動させることにより各吸気管57Cからハウジング32内の外気を吸込み、負圧状態を形成するものである。これにより、連通管47を介してアスベスト分離装置21のケーシング22内は負圧になり、吸引ホース27を介してアスベスト吸引器1内は負圧になることにより、アスベスト汚泥を吸引するようにしてある。
【0038】
本実施の形態に係るアスベストの回収・分離・濾過装置は上述の構成からなり、作業開始前にアスベスト濾過装置31の水質調整槽40に図9に示す所定の水位、濾過フィルタ49の上側まで水を充填し、適量のアスベスト飛散防止剤を注入したら、循環ポンプ52と高圧ポンプ57を始動して作業を開始する。アスベストAの作業面にアスベスト吸引器1を当て、噴射ノズル14を挿装した状態にし、循環ポンプ52を経て加圧ポンプ15から圧送する水の流れにより生じる負圧によって研掃材を噴き付けることによりアスベストAを剥離する。アスベスト片、繊維、研掃材が混合したアスベスト汚泥はアスベスト吸引器1により吸引してアスベスト分離装置21に送られる。アスベスト分離装置21では大きいアスベスト片等を分離して回収し、アスベスト繊維が混合しているアスベスト混濁水はアスベスト濾過装置31により濾過して浄水にする。そして、本実施の形態では、これら一連の処理を外部と遮断した閉じた回路で行うので、アスベスト繊維が外部に飛散するのを確実に防止し、作業と環境の安全性を確保することができる。
【0039】
なお、本発明において、アスベスト吸引器1の吸込み口1Cは実施の形態に限られるものではなく、例えば凹湾曲状に形成してもよいし、略L字状に屈曲形成してもよく、種々の形態がある作業面に対応できるように各種のアスベスト吸引器を揃えておくとよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係るアスベストの回収・分離・濾過装置の全体構成図である。
【図2】アスベスト吸引器の正面図である。
【図3】アスベスト吸引器の側面図である。
【図4】アスベスト吸引器の斜視図である。
【図5】アスベスト吸引器の使用状態図である。
【図6】アスベスト分離装置の外観斜視図である。
【図7】アスベスト分離装置の内部構成を示す正面図である。
【図8】図7中のVIII−VIII矢示方向断面図である。
【図9】アスベスト濾過装置の構成図である。
【図10】吸引力形成機構を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 アスベスト吸引器
2C 吸込み口
2E ノズル差込口
11 ブラスト装置
14 噴射ノズル
14A ノズル筒部
21 アスベスト分離装置
24 固形分排出機構
27 吸引ホース
31 アスベスト濾過装置
37 攪拌槽
38、39 沈殿槽
40 水質調整槽
52 循環ポンプ
57 吸引力形成機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスベスト吸引器の吸込み口を作業面に密接し、該アスベスト吸引器に挿装した噴射ノズルから水と研掃材を加圧噴射することによりアスベストを剥離して破砕し、破砕したアスベストが混合するアスベスト汚泥を吸引してアスベスト固形分は分離回収し、アスベスト混濁水は凝集剤と混合した後、フィルタによりアスベストを分離除去して濾過するようにしてなるアスベストの回収・分離・濾過方法。
【請求項2】
作業面に密接する吸込み口を有するアスベスト吸引器と、該アスベスト吸引器内に挿入した状態で水と研掃材を加圧噴射することによりアスベストを剥離し、破砕する噴射ノズルを有するブラスト装置と、吸引ホースを介して前記アスベスト吸引器に接続され、吸引したアスベスト汚泥からアスベスト固形分を分離して回収するアスベスト分離装置と、該アスベスト分離装置から排出するアスベスト混濁水を濾過してアスベストを分離除去することにより濾過水を生成するアスベスト濾過装置と、前記ブラスト装置、アスベスト分離装置及びアスベスト濾過装置にかけて濾過水を循環供給する循環ポンプと、前記アスベスト吸引器及びアスベスト分離装置に吸引力を付与する吸引手段とから構成してなるアスベストの回収・分離・濾過装置。
【請求項3】
前記アスベスト吸引器には、前記噴射ノズルのノズル筒部を挿脱可能に挿装するノズル差込口を設けてあることを特徴とする請求項2記載のアスベストの回収・分離・濾過装置。
【請求項4】
前記アスベスト吸引器は、内部が目視可能なように少なくとも一部を透明に形成してあることを特徴とする請求項2記載のアスベストの回収・分離・濾過装置。
【請求項5】
前記アスベスト分離装置は、分離したアスベスト固形分のみを排出する固形分排出機構を備えていることを特徴とする請求項2記載のアスベストの回収・分離・濾過装置。
【請求項6】
前記アスベスト濾過装置は、アスベスト混濁水に凝集剤を添加する攪拌槽と、該攪拌槽の下流側に配置した沈殿槽と、該沈殿槽から流入するアスベスト濾過水を浄化して循環利用する水質調整槽とから構成し、該水質調整槽内に前記循環ポンプを組み込んで構成してあることを特徴とする請求項2記載のアスベストの回収・分離・濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−291747(P2007−291747A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121553(P2006−121553)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(506144455)
【出願人】(506143687)
【出願人】(506143698)
【Fターム(参考)】