説明

アスベスト簡易評価装置、方法、および、プログラム

【課題】建築物に使用されているアスベストを簡易に評価することができるアスベスト簡易評価装置を提供する。
【解決手段】建築物中のアスベスト簡易評価装置が、アスベストが使用されている建築物について、建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各情報と関連付けて、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を示す推定情報が予め記憶されている記憶部と、評価対象となる建築物の建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各入力情報が入力される入力部と、入力部に入力された各入力情報と関連付けられている推定情報を記憶部から読み出し、当該読み出した推定情報を、評価対象となる建築物のアスベスト使用面積として推定するアスベスト使用面積推定部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物におけるアスベストの使用の有無及びアスベストの使用量(使用面積)とその除去費用を推定するアスベスト簡易評価装置、方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
アスベストは、1970年〜1990年にかけて大量に輸入され、その多くは建材として建築物に使用されてきた。今後、増大する当時の建築物の解体工事に伴い、特に吹付けアスベストの除去処理については大きな問題になることが予想されている。
【0003】
ここで、建物の吹付けアスベスト有無の確認やその除去処理費用を算出する場合、設計図書による確認、現地調査による確認や、試料採取・分析による確認が実行されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本石綿協会ホームページ(2010年1月29日現在)http://www.jaasc.or.jp
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、M&A(Mergers and Acquisitions)や企業再生等における資産評価や、環境リスク対応の必要性に対する社会認識の高揚と、それを促す法整備や会計制度の進展に伴い、建物について、スピーディーかつ低コストでリスクの概況を把握することが求められてきている。
【0006】
しかしながら、従来の方法においては、建物の吹付けアスベスト有無の確認やその除去処理費用を算出する場合、設計図書による確認、現地調査による確認や、試料採取・分析による確認等を実効する必要があるため、「手間」、「時間」、「コスト」がかかるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、建築物に使用されているアスベストを簡易に評価することができるアスベスト簡易評価装置、方法、および、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、アスベストが使用されている建築物について、建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各情報と関連付けて、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を示す推定情報が予め記憶されている記憶部と、評価対象となる建築物の建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各入力情報が入力される入力部と、前記入力部に入力された前記各入力情報と関連付けられている前記推定情報を前記記憶部から読み出し、当該読み出した推定情報を、前記評価対象となる建築物のアスベスト使用面積として推定するアスベスト使用面積推定部と、を備えていることを特徴とする建築物中のアスベスト簡易評価装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記記憶部には、アスベストが使用されている複数の建築物であって、前記推定情報を算出するための複数の建築物である複数の算出用建築物のそれぞれについて、建物構造、建物種別、および、床部位の面積を示す入手情報が入力される第1の入力過程と、前記複数の算出用建築物のそれぞれについて、当該建築物のアスベスト使用面積が入力される第2の入力過程と、前記複数の算出用建築物のそれぞれについて入力された前記アスベスト使用面積が、前記入手情報のうちの建物構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各情報に基づいて、複数の群に分割される分割過程と、前記各群において、前記入手情報のうちの床部位の面積に対しての前記入力された前記アスベスト使用面積の第1の回帰関数が統計的に算出される第1の統計過程と、前記統計的に算出された各群の第1の回帰関数を、前記入手情報のうちの建築構造および建物種別が同じ群毎に、前記入手情報のうちの床部位の面積に対して滑らかに接続する第2の回帰関数が推定関数として統計的に算出される第2の統計過程と、前記推定関数に基づいて、床部位の面積の複数の所定値それぞれに対しての前記推定情報が、前記入手情報のうちの建築構造および建物種別ごとに算出される推定情報算出過程と、前記入手情報のうちの建築構造および建物種別と、前記床部位の面積の複数の所定値とを、前記アスベストが使用されている建築物についての建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各情報と定め、当該各情報と関連付けて前記算出された推定情報が前記記憶部に記憶される記憶過程と、により、前記アスベストが使用されている建築物について、建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す前記各情報と関連付けて、前記推定情報が予め記憶されている、ことを特徴とする請求項1に記載の建築物中のアスベスト簡易評価装置である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記複数の算出用建築物のそれぞれについて、当該算出用建築物の所定部位の面積が、前記所定部位ごとに、前記算出用建築物の建物構造、建物種別、および、床部位の面積に基づいて求められる所定部位面積取得過程と、前記複数の算出用建築物のそれぞれについて、前記算出用建築物の前記所定部位の面積に基づいて、前記所定部位ごとのアスベスト使用面積が算出され、算出された前記所定部位ごとのアスベスト使用面積の総和を算出することにより、前記アスベスト使用面積が算出されるアスベスト使用面積算出過程と、を有し、前記第2の入力過程において、前記複数の算出用建築物のそれぞれについて、前記アスベスト使用面積算出過程により算出された前記アスベスト使用面積が入力される、ことを特徴する請求項2に記載の建築物中のアスベスト簡易評価装置である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記所定部位面積取得過程において、前記算出用建築物の建物構造および建物種別および部位に対応して予め設定されている第1の係数が、前記算出用建築物の床部位の面積に乗じられて、前記算出用建築物の所定部位の面積が前記所定部位ごとに求められる、ことを特徴する請求項3に記載の建築物中のアスベスト簡易評価装置である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記アスベスト使用面積算出過程において、前記複数の算出用建築物のそれぞれについて、前記算出用建築物の前記所定部位の面積に、前記所定部位毎に対応して予め設定されている第2の係数を乗じることにより、前記所定部位ごとのアスベスト使用面積が算出される、ことを特徴する請求項3または請求項4に記載の建築物中のアスベスト簡易評価装置である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記所定部位は、少なくとも床、天井、壁を含む、ことを特徴する請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の建築物中のアスベスト簡易評価装置である。
【0014】
請求項7に記載の発明は、前記第2の統計過程において、前記各群について統計的に算出された第1の回帰関数に、床部位の面積の複数の所定値をそれぞれ代入し、前記床部位の面積の複数の所定値それぞれに対しての前記アスベスト使用面積が算出され、前記床部位の面積の複数の所定値それぞれに対しての、前記アスベスト使用面積の前記第2の回帰関数が統計的に算出される、ことを特徴する請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の建築物中のアスベスト簡易評価装置である。
【0015】
請求項8に記載の発明は、前記アスベスト使用面積推定部により推定された前記アスベスト使用面積を、所定の第3の係数に基づいて、当該アスベスト使用面積のアスベストを除去する場合に要する金額に換算する換算部、を有することを特徴する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の建築物中のアスベスト簡易評価装置である。
【0016】
請求項9に記載の発明は、前記換算部は、前記アスベスト使用面積推定部により出力されるアスベスト使用面積を金額に換算する場合、当該アスベスト使用面積のアスベストを除去する場合に要する金額の上限と下限とに換算する、ことを特徴とする請求項8に記載の建築物中のアスベスト簡易評価装置である。
【0017】
請求項10に記載の発明は、前記評価対象となる建築物が建築された建築年が入力され、当該入力された建築年に基づいて、前記評価対象となる建築物にアスベストが使用されている可能性を判定する判定部、を備えており、前記アスベスト使用面積推定部は、前記判定部により前記評価対象となる建築物にアスベストが使用されている可能性があると判定された場合、前記評価対象となる建築物に対しての前記アスベスト使用面積を推定する、ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の建築物中のアスベスト簡易評価装置である。
【0018】
請求項11に記載の発明は、アスベストが使用されている建築物について、建築構造および建物種別を示す各情報と関連付けて、床部位の面積に対しての、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を算出する推定関数が予め記憶されている記憶部と、評価対象となる建築物の建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各入力情報が入力される入力部と、前記入力部に入力された前記各入力情報のうちの建築構造および建物種別と関連付けられている前記推定関数を前記記憶部から読み出し、当該読み出した推定関数に、前記入力部に入力された床部位の面積を代入して算出した値を、前記評価対象となる建築物のアスベスト使用面積として推定するアスベスト使用面積推定部と、を備えていることを特徴とする建築物中のアスベスト簡易評価装置である。
【0019】
請求項12に記載の発明は、前記記憶部には、アスベストが使用されている複数の建築物であって、前記推定情報を算出するための複数の建築物である複数の算出用建築物のそれぞれについて、建物構造、建物種別、および、床部位の面積を示す入手情報が入力される第1の入力過程と、前記複数の算出用建築物のそれぞれについて、当該建築物のアスベスト使用面積が入力される第2の入力過程と、前記複数の算出用建築物のそれぞれについて入力された前記アスベスト使用面積が、前記入手情報のうちの建物構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各情報に基づいて、複数の群に分割される分割過程と、前記各群において、前記入手情報のうちの床部位の面積に対しての前記入力された前記アスベスト使用面積の第1の回帰関数が統計的に算出される第1の統計過程と、前記統計的に算出された各群の第1の回帰関数を、前記入手情報のうちの建築構造および建物種別が同じ群毎に、前記入手情報のうちの床部位の面積に対して滑らかに接続する第2の回帰関数が前記推定関数として統計的に算出される第2の統計過程と、前記算出された推定関数が、前記入手情報のうちの建築構造および建物種別と関連付けられて前記記憶部に記憶される記憶過程と、により、前記アスベストが使用されている建築物について、建築構造および建物種別を示す各情報と関連付けて、床部位の面積に対しての、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を算出する前記推定関数が予め記憶されていることを特徴とする請求項11に記載の建築物中のアスベスト簡易評価装置である。
【0020】
請求項13に記載の発明は、評価対象となる建築物の建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各入力情報が入力される入力手順と、アスベストが使用されている建築物について、建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各情報と関連付けて、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を示す推定情報が予め記憶されている記憶部から、前記入力手順により入力された前記各入力情報と関連付けられている前記推定情報を読み出し、当該読み出した推定情報を、前記評価対象となる建築物のアスベスト使用面積として推定するアスベスト使用面積推定手順と、を備えていることを特徴とする建築物中のアスベスト簡易評価方法である。
【0021】
請求項14に記載の発明は、評価対象となる建築物の建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各入力情報が入力される入力手順と、アスベストが使用されている建築物について、建築構造および建物種別を示す各情報と関連付けて、床部位の面積に対しての、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を算出する推定関数が予め記憶されている記憶部から、前記入力手順により入力された前記各入力情報のうちの建築構造および建物種別と関連付けられている前記推定関数を読み出し、当該読み出した推定関数に、前記入力部に入力された床部位の面積を代入して算出した値を、前記評価対象となる建築物のアスベスト使用面積として推定するアスベスト使用面積推定手順と、を備えていることを特徴とする建築物中のアスベスト簡易評価方法である。
【0022】
請求項15に記載の発明は、建築物中のアスベスト簡易評価装置としてのコンピュータに、評価対象となる建築物の建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各入力情報が入力される入力手順と、アスベストが使用されている建築物について、建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各情報と関連付けて、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を示す推定情報が予め記憶されている記憶部から、前記入力手順により入力された前記各入力情報と関連付けられている前記推定情報を読み出し、当該読み出した推定情報を、前記評価対象となる建築物のアスベスト使用面積として推定するアスベスト使用面積推定手順と、を実行させるためのアスベスト簡易評価プログラムである。
【0023】
請求項16に記載の発明は、建築物中のアスベスト簡易評価装置としてのコンピュータに、評価対象となる建築物の建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各入力情報が入力される入力手順と、アスベストが使用されている建築物について、建築構造および建物種別を示す各情報と関連付けて、床部位の面積に対しての、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を算出する推定関数が予め記憶されている記憶部から、前記入力手順により入力された前記各入力情報のうちの建築構造および建物種別と関連付けられている前記推定関数を読み出し、当該読み出した推定関数に、前記入力部に入力された床部位の面積を代入して算出した値を、前記評価対象となる建築物のアスベスト使用面積として推定するアスベスト使用面積推定手順と、を実行させるためのアスベスト簡易評価プログラムである。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、建築物に使用されているアスベストを簡易に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の一実施形態によるアスベスト簡易評価装置の構成を示すブロック図である。
【図2】建築物にアスベストが使用されている可能性を判定する場合の一例を示す説明図である。
【図3】アスベスト使用面積を推定する場合の一例を示す説明図である。
【図4】アスベスト使用面積を推定する場合に、区間毎に統計処理をする一例を示す説明図である。
【図5】アスベスト使用面積を推定する場合に、図4の区間毎に統計処理をした後、すべての区間にわたって統計処理をする一例を示す説明図である。
【図6】アスベスト使用面積を金額に換算する係数の一例を示す説明図である。
【図7】アスベスト使用面積を金額に換算する係数の一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず、本実施形態の概要について説明する。
本実施形態においては、建物の不動産登記簿の記載内容(建物種別・建築構造・床面積・建物建築年(建物新築年))から得られる情報に基づいて、当該建物にアスベストが吹付けられ使用されている可能性を判定する。また、建物の不動産登記簿の記載内容から得られる情報に基づいて、予め実測されたアスベストに基づいた統計的な値により、当該建物にアスベストが吹付けられ使用されているアスベストの使用面積を推定する。
【0027】
このように、本実施形態においては、建物の不動産登記簿の記載内容から得られる情報に基づいて、建物にアスベストが吹付けられ使用されている可能性と、当該建物にアスベストが吹付けられ使用されているアスベストの使用面積を推定する。そのため、建物に対するアスベストを評価する場合の、「手間」、「時間」、「コスト」の大幅な軽減を図ることができる。たとえば、設計図書の収集及び内容の確認、現地調査の実施、試料採取・分析等を省略することができる。従って、本実施形態によれば、建築物に使用されているアスベストを簡易に評価することができる。
【0028】
また、本実施形態においては、各種建物における吹付けアスベスト使用面積の実データ、及び建物設計における標準的な吹付けアスベスト使用箇所を基に作成したモデルにより、当該建物の吹付けアスベスト使用面積を推計して、吹付けアスベスト除去処理費用概算額を算出する。
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、この発明の一実施形態によるアスベスト簡易評価装置100の構成の一例を示す概略ブロック図である。
【0030】
アスベスト簡易評価装置100は、入力部1、判定部2、アスベスト使用面積推定部3、換算部4、出力部5、判定情報記憶部10、推定情報記憶部20、換算情報記憶部30、および、推定情報設定部40を備えている。
【0031】
入力部1には、アスベストを推定する評価対象となる建築物の建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各入力情報が入力される。このアスベストを推定する評価対象となる建築物の建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各入力情報は、アスベストを推定する評価対象となる建築物の「謄本」に記載されている情報である。
【0032】
ここで、本実施形態のおいては、この建物種別として、建物謄本に記載されている建物種別を分類して、次に示すように、ビル系、工場系、および、住居系の3種類の建物種別系としている。
【0033】
建物謄本に記載されている建物種別が、例えば、事務所、ホテル、病院等の場合、使用目的をビル系とする。また、建物謄本に記載されている建物種別が、例えば、工場、作業所、機械室等の場合、使用目的を工場系とする。また、建物謄本に記載されている建物種別が、例えば、共同住宅、居宅、寄宿舎等の場合、使用目的を住居系とする。
【0034】
入力部1は、建物謄本に記載されている建物種別が入力され、この入力された建物謄本に記載されている建物種別を、建物種別系を示す情報に変換してもよい。たとえば、建物謄本に記載されている建物種別と、建物種別系を示す情報とが関連付けられて予め記憶されている建物種別記憶部を備えている。そして、入力部1が、入力された建物謄本に記載されている建物種別に対応する建物種別系を示す情報を建物種別記憶部から読み出す。
【0035】
なお、この入力部1には、ユーザにより選択された建物種別系を示す情報が入力されてもよい。たとえば、建物謄本に記載されている建物種別に基づいて、ユーザが、ビル系、工場系、および、住居系の3種類の建物種別系のうちいずれか1つの建物種別系を選択する。そして、このユーザにより選択された建物種別系を示す情報が、ユーザにより入力部1に入力されてもよい。
【0036】
判定情報記憶部10には、建築物についての建築年の複数の範囲(期間)を示す情報と、当該建築年の範囲に建築された建築物にアスベストが使用されている可能性を示す評価値とが関連付けて予め記憶されている。
【0037】
判定部2は、入力部1に入力された情報のうち、建築物の建築年に基づいて、当該建築物にアスベストが使用されている可能性を判定する。たとえば、判定部2は、入力部1に入力された情報のうち、評価対象となる建築物の建築年に対応する評価値を、判定情報記憶部10から読み出すことにより、当該建築物にアスベストが使用されている可能性を判定する。
【0038】
ここで図2を用いて、判定情報記憶部10と判定部2とによる、建築物にアスベストが使用されている可能性を判定する一例について説明する。
【0039】
たとえば、判定情報記憶部10には、アスベストが使用されていた年代を考慮して、年代A、年代B、年代C、および、年代Dという建築物の建築年の範囲と、可能性は否定できない、可能性は高い、可能性は否定できない、および、可能性は低いという評価値とが関連付けて予め記憶されている(図2の建築新築年および評価を参照)。
【0040】
なお、この年代A、年代B、年代C、および、年代Dとは、次のようにして予め定められている年代(期間)である。
たとえば、アスベストは、あるT1年以前は、輸入量が少なく、建築物に使用されている可能性は低かった。その後(T1年以降)、アスベストは、大量に輸入されはじめ、建築物に使用される可能性が高くなった。その後のT2年に、アスベストは建築物に使用されることが禁止されたため、このT2年以降は、アスベストは、通常建築物に使用されなくなった。しかしながら、その後のT3年以前までは、アスベストは、一部の建築物に使用され続けていた。その後(T3年以降)は、アスベストは、建築物に使用されなくなった。
上述した年代A、年代B、年代C、および、年代Dとは、このようなT1年からT3年に基づいて予め定められている年代である。たとえば、T1年以前の期間に基づいて年代Aが予め定められている。また、T1年以降からT2年以前の期間に基づいて年代Bが予め定められている。また、T2年以降からT3年以前の期間に基づいて年代Cが予め定められている。また、T3年以降の期間に基づいて年代Dが予め定められている。
【0041】
判定部2は、入力部1に入力された情報に含まれている建築年(評価対象となる建築物の建築年)に対応する評価値を判定情報記憶部10から読み出し、当該評価対象となる建築物に対して、アスベストが使用されている可能性を判定する。このようにして、判定部2は、可能性は否定できない、可能性は高い、可能性は否定できない、および、可能性は低いという評価値の中から、いずれか1つの評価値を選択する。そして、判定部2は、この選択した評価値を、当該評価対象となる建築物にアスベストが使用されている可能性として判定する。
【0042】
なお、判定部2は、建築物の建築年のみではなく、建築物の建築構造にも基づいて、当該建築物にアスベストが使用されている可能性を判定してもよい。たとえば、判定部2は、図2に示されるように、建築物がS造、RC造、または、SRC造の場合は、上述したように、入力部1に入力された情報のうち、建築物の建築年に基づいて、当該建築物にアスベストが使用されている可能性を判定する。
【0043】
また、判定部2は、図2に示されるように、建築物がW造、または、その他の場合は、その建築構造のみから、可能性は低いと判定してもよい。
【0044】
ここで、S造とは、鉄骨造、または、軽量鉄骨造のことである。RC造とは、鉄筋コンクリート造のことである。SRC造とは、鉄骨鉄筋コンクリート造のことである。W造とは、木造のことである。その他の建築構造とは、コンクリートブロック造、レンガ造、石造、土蔵造、等のことである。
【0045】
なお、判定情報記憶部10には、図2に示すそれぞれの期間に対しての閾値が記憶されており、判定部2は、入力部1に入力された情報に含まれている建築年(評価対象となる建築物の建築年)が、判定情報記憶部10から読み出した閾値以前であるか否かを判定することにより、当該評価対象となる建築物にアスベストが使用されている可能性として判定してもよい。
【0046】
たとえば、判定情報記憶部10には、閾値として年代Cを示す情報が記憶されており、判定部2は、入力部1に入力された情報に含まれている建築年(評価対象となる建築物の建築年)が、判定情報記憶部10から読み出した閾値である年代C以前であるか否かを判定する。その結果が、年代C以前である場合には、判定部2は、評価対象となる建築物にアスベストが使用されている可能性は否定できないと判定する。その結果が、年代C以前でない場合(年代C以降である場合)には、判定部2は、アスベストが使用されている可能性は低いと判定する。
【0047】
推定情報記憶部20には、アスベストが使用されている建築物について、建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各情報と関連付けて、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を示す推定情報が予め記憶されている。ここでいう建物種別は、上述した建物種別系を示す情報であってもよい。
【0048】
アスベスト使用面積推定部3は、入力部1に入力された各入力情報と関連付けられている推定情報を推定情報記憶部20から読み出し、当該読み出した推定情報を、評価対象となる建築物のアスベスト使用面積として推定する。
【0049】
ここで、推定情報記憶部20には、推定情報設定部40により、複数の建築物について、当該建築物の建築構造および建物種別毎に、建築物の測定された面積と建築物に使用されている測定されたアスベスト使用面積とに基づいて、建築物の面積に対する建築物に使用されているアスベスト使用面積が統計的に算出され(図3参照)、当該建築物の面積に対して算出された建築物に使用されているアスベスト使用面積が、建築物の建築構造、建物種別、および、面積と関連付けて記憶されている。
【0050】
たとえば、この図3に示されるように、推定情報設定部40により、建物の部位、建物建築年、建築構造の部位に基づいた係数、建物種類に基づいた係数、アスベストの吹付け割合係数、微調整値などの説明変量に基づいて、建築物に使用されているアスベスト使用面積を算出する推定関数が、多変量解析により求められる。
【0051】
一例としては、まず、建築物の面積に対する建築物に使用されているアスベスト使用面積が統計的に算出される場合に、当該建築物の建築構造および建物種別毎に、複数の建築物は、建築物の測定された面積に基づいて複数に分割される。そして、この分類毎に、建築物の建築構造および建物種別毎に、かつ、分割された複数の建築物毎に、建築物の面積に対する建築物に使用されているアスベスト使用面積を示す関数を統計的に算出されている。
【0052】
更に、建築物の建築構造および建物種別毎に、かつ、分割された複数の建築物毎に算出された関数に基づいて、建築物の建築構造および建物種別毎に、建築物の面積に対する建築物に使用されているアスベスト使用面積が統計的に算出されている。
【0053】
ここで、図4と図5とを用いて、推定情報設定部40により、推定情報記憶部20に、アスベストが使用されている建築物について、建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各情報と関連付けて、推定情報が予め記憶される処理について説明する。この図4と図5とでは、建築物の建築構造がS造であり、建物種別がビル系である場合について説明する。
【0054】
推定情報記憶部20には、次に説明する推定情報設定部40による第1の入力過程と、第2の入力過程と、分割過程と、第1の統計過程と、第2の統計過程と、推定情報算出過程と、記憶過程とにより、アスベストが使用されている建築物について、建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各情報と関連付けて、推定情報が記憶される。
【0055】
まず、推定情報設定部40による第1の入力過程において、アスベストが使用されている複数の建築物であって、推定情報を算出するための複数の建築物である複数の算出用建築物のそれぞれについて、建物構造、建物種別、および、床部位の面積を示す入手情報が入力される。この算出用建築物とは、既に建築されている建築物のことである。
【0056】
また、推定情報設定部40による第2の入力過程において、複数の算出用建築物のそれぞれについて、当該建築物のアスベスト使用面積が入力される。ここで入力される算出用建築物のアスベスト使用面積は、建築物が解体される場合に実際に測定された値であってもよいし、建築物が解体される場合に推定された値であってもよい。また、ここで入力される算出用建築物のアスベスト使用面積は、後述するように、たとえば設計図面から算出されて推定された値であってもよい(図3参照)。
【0057】
次に、推定情報設定部40による分割過程において、複数の算出用建築物のそれぞれについて入力されたアスベスト使用面積が、入手情報のうちの建物構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各情報に基づいて、複数の群に分割される。
【0058】
推定情報設定部40により、算出用建築物の床部位の面積に基づいて、複数の郡に分割される。たとえば、図4の場合、床部分の面積として0〜10000m2の範囲において、床部位の面積が0〜1000m2、1000〜3000m、3000〜6000m、6000〜10000mの4つに分割される。この分割される区間は、たとえば、入力された算出用建築物の床部位の面積と、入力された算出用建築物の戸数の分布とから、予め定めてられていてもよい。
【0059】
次に、推定情報設定部40による第1の統計過程において、各群において、入手情報のうちの床部位の面積に対しての入力されたアスベスト使用面積の第1の回帰関数が統計的に算出される。たとえば、図4の場合、推定情報設定部40により、それぞれの区間において、一次関数で近似されている(図4の符号A1、A2、A3およびA4参照)。ここでは、第1の回帰関数として、一次関数により近似されているが、近似する関数形式は、任意であってもよい。なお、第1の回帰関数としての関数形式は、滑らかであり、かつ、単調増加であることが望ましい。
【0060】
次に、推定情報設定部40による第2の統計過程において、統計的に算出された各群の第1の回帰関数を、入手情報のうちの建築構造および建物種別が同じ群毎に、入手情報のうちの床部位の面積に対して滑らかに接続する第2の回帰関数が推定関数として統計的に算出される。
【0061】
この第2の統計過程において、推定情報設定部40により、まず、各群について統計的に算出された第1の回帰関数に、床部位の面積の複数の所定値をそれぞれ代入し、床部位の面積の複数の所定値それぞれに対してのアスベスト使用面積が算出される。次に、推定情報設定部40により、床部位の面積の複数の所定値それぞれに対しての、アスベスト使用面積の第2の回帰関数が統計的に算出される。なお、ここでいう「床部位の面積の複数の所定値」とは、「床部位の面積の複数の予め定められている値」のことである。
【0062】
一例としては、推定情報設定部40は、まず、それぞれの区間において近似された一次関数に、予め定められている複数の床面積の値であって、等間隔になっている複数の床面積の値をそれぞれ代入する。これにより、図4に示されるように、等間隔となる複数の床面積と、この複数の床面積のそれぞれに対して一次関数により算出されたアスベスト使用面積とに対応する複数の点が、それぞれの区間毎に求められる(図4の符号A1、A2、A3およびA4の直線状の複数の点を参照)。
【0063】
次に推定情報設定部40は、このようにして求めた複数の区間毎の複数の点に対して、複数の区間のすべての区間に渡って1つの関数で近似する第2の回帰関数を、推定関数として算出して求める。
【0064】
このようにして、推定情報設定部40は、たとえば、図5の符号Bに示されるように、第2の回帰関数を推定関数として、統計的に算出する。この図5の符号Bに示されている第2の回帰関数の関数形式は、多項式関数である。ここでは、第2の回帰関数として、多項式関数により近似されているが、近似する関数形式は、任意であってもよい。なお、第2の回帰関数としての関数形式は、滑らかであり、かつ、単調増加であることが望ましい。
【0065】
次に、推定情報設定部40による推定情報算出過程において、推定関数に基づいて、床部位の面積の複数の所定値それぞれに対しての推定情報が、入手情報のうちの建築構造および建物種別ごとに算出される。
【0066】
ここでいう「床部位の面積の複数の所定値」とは、たとえば、床部位の面積について、等間隔となっている複数の値のことであって、予め定められている複数の値のことである。また、その範囲は、当該推定関数により、評価対象となる建築物のアスベスト使用面積を推定する予め定められている範囲であってもよい。たとえば、「床部位の面積の複数の所定値」とは、図5の場合、床部位の面積として0〜10000mの範囲において、たとえば、100m毎の値のことである。推定情報設定部40は、推定関数に、このような「床部位の面積の複数の所定値」をそれぞれ代入し、床部位の面積の複数の所定値それぞれに対しての推定情報を算出する。
【0067】
次に、推定情報設定部40による記憶過程において、入手情報のうちの建築構造および建物種別と、床部位の面積の複数の所定値とを、アスベストが使用されている建築物についての建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各情報と定め、当該各情報と関連付けて算出された推定情報が推定情報記憶部20に記憶される。
【0068】
以上の推定情報設定部40による過程により、推定情報記憶部20には、アスベストが使用されている建築物について、床部位の面積を示す情報と関連付けて、推定情報が予め記憶されている。すなわち、図5の符号Bに示されているような推定関数に基づいて、床部位の面積の複数の所定値それぞれに対して算出された推定情報が、推定情報記憶部20には記憶されている。
【0069】
上記に説明した図4と図5とにおいては、建築物の建築構造がS造であり、建物種別がビル系である場合について説明したが、S造、RC造、および、SRC造という建築物の建築構造と、ビル系、工場系、および、住居系という建物種別との各組み合わせに対して、同様に、建築物の面積に対する建築物に使用されているアスベスト使用面積が推定情報設定部40により算出される。
【0070】
このようにして、推定情報設定部40による過程により、推定情報記憶部20には、アスベストが使用されている建築物について、建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各情報と関連付けて、推定情報が記憶される。
【0071】
ここで、本実施形態においては、図4で示したように、建築物の面積における各区間において統計的な処理をした後、この統計的な処理がされた値に対して、建築物の面積における全区間において再度統計的に処理して、建築物の面積に対して統計的に算出されたアスベスト使用面積が予め記憶されている。
【0072】
このようにすることにより、次のような効果がある。まず、本実施形態においては、実測された値に対して、統計的な処理により推定値を求めているが、この実測されたデータの個数が少ないことがある。また、このデータは、建築物の面積において、一様に分布しているのではなく、建築物の面積が比較的小さなデータの個数はあるが、建築物の面積が比較的大きなデータの個数は少ない。
【0073】
このようなデータがある状況において、仮に建築物の面積の全区間において、建築物の面積に対して統計的にアスベスト使用面積を算出したとすると、建築物の面積とアスベスト使用面積との間に十分な相関が得られない可能性がある。
【0074】
これに対して、本実施形態のように、建築物の面積におけるある区間において、建築物の面積に対して統計的にアスベスト使用面積を算出すると、その区間においては、建築物の面積とアスベスト使用面積との間に相関が得られる。特に、この区間を適切に設定すると、その区間において、より、建築物の面積とアスベスト使用面積との間に相関が得られる。そして、この区間においては、建築物の面積に対してアスベスト使用面積が連続的に変化している(図4参照)。
【0075】
このようにして、各区間においては、建築物の面積とアスベスト使用面積との間に相関があり、建築物の面積に対してアスベスト使用面積が連続的に変化しているが、全区間においては、不連続となる可能性がある。たとえば、図4または図5において、各区間の境界のところでは、建築物の面積に対してアスベスト使用面積が不連続となっている。
【0076】
そこで、本実施形態においては、この統計的な処理がされた値に対して、建築物の面積における全区間において再度統計的に処理して、建築物の面積に対してのアスベスト使用面積が算出されている。このようにすることにより、各区間において、建築物の面積とアスベスト使用面積との間に相関が得られ、かつ、区間の全体において、建築物の面積に対するアスベスト使用面積を連続とすることができる。
【0077】
よって、建築物に対してのアスベスト使用面積のデータが少ない場合においても、この推定情報記憶部20には、建築物に使用されているアスベスト使用面積が適切に推定されて記憶されている。
【0078】
そして、この推定情報記憶部20に記憶されている情報を用いて、アスベスト使用面積推定部3は、入力部1に入力された情報のうち、建築物の建築構造、建物種別、および、面積と関連付けられているアスベスト使用面積を推定情報記憶部20から読み出して、この建築物に使用されているアスベスト使用面積を推定する。よって、アスベスト使用面積推定部3は、建築物に使用されているアスベスト使用面積を適切に推定することができる。
【0079】
また、アスベスト使用面積推定部3は、判定部2により建築物にアスベストが使用されている可能性があると判定された場合、当該築物に使用されているアスベスト使用面積を推定してもよい。これにより、判定部2により建築物にアスベストが使用されている可能性がないと判定されたような場合には、アスベスト使用面積推定部3は、当該築物に使用されているアスベスト使用面積を推定せず、アスベスト使用面積を推定することが必要な場合のみ、アスベスト使用面積を推定することができる。
【0080】
なお、ここでいう「判定部2により建築物にアスベストが使用されている可能性があると判定された場合」とは、判定部2により、可能性は否定できない、可能性は高い、可能性は否定できない、または、可能性は低いという評価値が判定された場合のことである(図2参照)。
【0081】
換算情報記憶部30には、アスベスト使用面積推定部3により算出されたアスベスト使用面積を、該アスベスト使用面積のアスベストを除去する場合に要する金額に換算するための係数が予め記憶されている。
【0082】
なお、換算情報記憶部30には、アスベスト使用面積推定部3により算出されたアスベスト使用面積を、当該アスベスト使用面積のアスベストを除去する場合に要する金額に換算するための係数が、アスベスト使用面積毎に予め記憶されていてもよい。
たとえば、図6に示すように、収集した事例(アスベスト使用面積に対しての、そのアスベストを除去する費用の処理単価)が統計処理されることにより、上述した係数が、アスベスト使用面積毎に算出される。換算情報記憶部30には、このようにしてアスベスト使用面積毎に算出された係数(処理単価)が、予め記憶されている。
【0083】
換算部4は、換算情報記憶部30から読み出した係数に基づいて、アスベスト使用面積推定部3により出力されるアスベスト使用面積を、当該アスベスト使用面積のアスベストを除去する場合に要する金額に換算する。
【0084】
たとえば、換算部4は、まず、アスベスト使用面積推定部3により出力されるアスベスト使用面積に対応する係数を、換算情報記憶部30から読み出す。次に、換算部4は、読み出した係数を、アスベスト使用面積推定部3により出力されるアスベスト使用面積に乗じることにより、アスベスト使用面積推定部3により出力されるアスベスト使用面積を、当該アスベスト使用面積のアスベストを除去する場合に要する金額に換算する。
【0085】
なお、換算情報記憶部30には、図7に示すように、アスベスト使用面積推定部3により出力されるアスベスト使用面積を金額に換算する場合、当該アスベスト使用面積のアスベストを除去する場合に要する金額の上限と下限とに換算するための係数が、アスベスト使用面積毎に記憶されていてもよい。
【0086】
たとえば、換算情報記憶部30には、図7に示すように、アスベスト使用面積としてのアスベスト処理面積が300m以下の場合は係数が20千円/m〜85千円/m、アスベスト処理面積が300m〜1000mの場合は15千円/m〜45千円/m、アスベスト処理面積が1000m〜の場合は10千円/m〜30千円/mとして、予め記憶されている。これらの値は、たとえば、国土交通省のホームページで公開されている処理単価(平成20年4月25日時点)に基づいた値である。
【0087】
この場合、換算部4は、アスベスト使用面積推定部3により出力されるアスベスト使用面積に対応する上限と下限との係数を換算情報記憶部30から読み出し、アスベスト使用面積推定部3により出力されるアスベスト使用面積に、読み出した上限と下限との係数を乗じて、当該アスベスト使用面積のアスベストを除去する場合に要する金額の上限と下限とに換算する。
【0088】
出力部5は、判定部2により判定された評価値と、換算情報記憶部30から出力されたアスベストを除去する場合に要する金額とを、入力部1に入力された建築物と関連付けて出力する。
【0089】
たとえば、出力部5はプリンターなどの印刷部を介して、判定部2により判定された評価値と、換算情報記憶部30から出力されたアスベストを除去する場合に要する金額とを、入力部1に入力された建築物と関連付けて、印刷してもよい。また、出力部5は、これら情報を、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶表示装置などの表示部に表示してもよい。また、出力部5は、これら情報を、ハードディスクなどの記憶部に記憶させてもよい。
【0090】
次に、アスベスト簡易評価装置100が、アスベストを推定する評価対象となる建築物の建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各入力情報に対して、アスベスト使用面積として推定する場合の動作の一例について説明する。ここでは、推定情報記憶部20には、推定情報設定部40により、アスベストが使用されている建築物について、建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各情報と関連付けて、推定情報が予め記憶されているものとして説明する。
【0091】
(ステップS1)まず、入力部1に、アスベストを推定する評価対象となる建築物の建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各入力情報が入力される。
(ステップS2)次に、判定部2は、入力部1に入力された情報のうち、建築物の建築年に基づいて、当該建築物にアスベストが使用されている可能性を判定する。
【0092】
(ステップS3)この判定した結果が、建築物にアスベストが使用されている可能性がない場合には、アスベスト使用面積推定部3(または判定部2)は、たとえば、評価対象となる建築物のアスベスト使用面積を0として推定する。
【0093】
(ステップS4)一方、上記のステップS2において判定した結果が、建築物にアスベストが使用されている可能性がある場合には、アスベスト使用面積推定部3は、入力部1に入力された各入力情報と関連付けられている推定情報を推定情報記憶部20から読み出し、当該読み出した推定情報を、評価対象となる建築物のアスベスト使用面積として推定する。
【0094】
(ステップS5)次に、換算部4は、換算情報記憶部30から読み出した係数に基づいて、ステップS3またはステップS4において、アスベスト使用面積推定部3により出力されるアスベスト使用面積を、当該アスベスト使用面積のアスベストを除去する場合に要する金額に換算する。
【0095】
(ステップS6)次に、出力部5は、判定部2により判定された評価値と、換算情報記憶部30から出力されたアスベストを除去する場合に要する金額とを、入力部1に入力された建築物と関連付けて出力する。
【0096】
以上説明したように、本実施形態においては、建物の不動産登記簿の記載内容(建物種別・建築構造・床面積・建物建築年)から得られる情報のみに基づいて、当該建物にアスベストが吹付けられ使用されている可能性を判定することができる。また、建物の不動産登記簿の記載内容から得られる情報に基づいて、予め実測されたアスベストに基づいた統計的な値により、当該建物にアスベストが吹付けられ使用されているアスベストの使用面積を推定することができる。すなわち、建物の吹付けアスベスト使用の可能性を判定するとともに、その使用面積を推計するモデルに基づいて、吹付けアスベスト除去処理費用概算額が算出できる。従って、建築物に使用されているアスベストを簡易に評価することができる。
【0097】
これにより、「手間」、「時間」、「コスト」の大幅な軽減を図りつつ、M&Aや企業再生等における資産評価や、環境リスク対応の必要性に対する社会認識という社会的なニーズに対応することができる。
【0098】
<算出用建築物のアスベスト使用面積の算出>
なお、上記に説明したように、推定情報設定部40による第2の入力過程において、複数の算出用建築物のそれぞれについて、当該建築物のアスベスト使用面積が入力されたが、ここで入力される算出用建築物のアスベスト使用面積は、たとえば設計図面から算出されて推定された値であってもよい(図3参照)。
【0099】
この場合、算出用建築物のアスベスト使用面積は、次に説明するように、推定情報設定部40による所定部位面積取得過程とアスベスト使用面積算出過程とにより算出される。ここでは、図3において、S造であり、かつ、工場系の場合について説明する。
【0100】
まず、推定情報設定部40による所定部位面積取得過程により、複数の算出用建築物のそれぞれについて、当該算出用建築物の所定部位の面積が、所定部位ごとに、算出用建築物の建物構造、建物種別、および、床部位の面積に基づいて求められる。この所定部位とは、予め定められている建築物の部位のことであり、少なくとも床、天井、壁を含んでいる。
【0101】
この所定部位面積取得過程において、推定情報設定部40により、算出用建築物の建物構造および建物種別および部位に対応して予め設定されている第1の係数が、算出用建築物の床部位の面積に乗じられて、算出用建築物の所定部位の面積が所定部位ごとに求められる。
【0102】
たとえば、図3に示されているS造であり、かつ、工場系の場合には、所定部位のうち天井には、第1の係数として係数α1が乗じられ、所定部位のうち柱または梁には、第1の係数として係数α4が乗じられる。
【0103】
次に、推定情報設定部40によるアスベスト使用面積算出過程により、複数の算出用建築物のそれぞれについて、算出用建築物の所定部位の面積に基づいて、所定部位ごとのアスベスト使用面積が算出され、算出された所定部位ごとのアスベスト使用面積の総和を算出することにより、アスベスト使用面積が算出される。
【0104】
このアスベスト使用面積算出過程において、推定情報設定部40により、複数の算出用建築物のそれぞれについて、算出用建築物の所定部位の面積に、所定部位毎に対応して予め設定されている第2の係数を乗じることにより、所定部位ごとのアスベスト使用面積が算出される。
【0105】
たとえば、図3に示されているS造であり、かつ、工場系の場合には、所定部位のうち天井に対応して算出された面積に、第2の係数として係数K1が乗じられ、所定部位のうち柱または梁に対応して算出された面積に、第2の係数として係数K2が乗じられる。
【0106】
そして、このようにして、推定情報設定部40により、複数の算出用建築物のそれぞれについて、アスベスト使用面積算出過程により算出されたアスベスト使用面積が、上記に説明した推定情報設定部40による第2の入力過程において、入力される。
【0107】
これにより、たとえば、算出用建築物のアスベスト使用面積として、建築物が解体される場合に実際に測定された値や、建築物が解体される場合に推定された値が無い場合であっても、建築物の設計図面から算出して、推定することができる。
【0108】
ここで、推定情報設定部40により、推定値を精度よく推定するめには、推定値を推定ための建築物の数は多い方がよい。しかし、一般に、建築物が解体される場合に実際に測定されたアスベスト使用面積が既知の建築物や、建築物が解体される場合に推定されたアスベスト使用面積が既知の建築物の数は、設計図面を入手できる建築物の数よりも少ない。
【0109】
このように、設計図面を入手できる建築物の数は、建築物が解体される場合に実際に測定されたアスベスト使用面積が既知の建築物や、建築物が解体される場合に推定されたアスベスト使用面積が既知の建築物よりも多い。そのため、建築物の設計図面から算出してアスベスト使用面積を推定することにより、推定情報設定部40は、推定値を精度よく推定することができる。よって、アスベスト簡易評価装置は、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を、精度よく算出することができる。
【0110】
なお、上記に説明した第1の係数または第2の係数の値自体は、建物新築年などに応じて、推定情報設定部40により変更されるようになっていてもよい。または、推定情報設定部40は、建物新築年などに応じた第4の係数や、微調整値を、更に乗じるようにしてもよい(図3の計算式を参照)。これにより、推定情報設定部40は、推定値を、より精度よく推定することができる。そのため、アスベスト簡易評価装置は、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を、精度よく算出することができる。
【0111】
<推定関数を記憶する場合>
なお、上記の説明においては、推定情報記憶部20に、床部位の面積の複数の所定値それぞれに対しての推定情報が記憶されている場合について説明した。しかし、これに限られるものではなく、推定情報記憶部20に対応する記憶部に、推定情報を算出する推定関数が記憶されていてもよい。この場合、アスベスト簡易評価装置は、たとえば、図1に示されている推定情報記憶部20と推定情報設定部40とに替えて、推定関数記憶部20と推定関数設定部40とを備えている。
【0112】
この推定関数記憶部20には、アスベストが使用されている建築物について、建築構造および建物種別を示す各情報と関連付けて、床部位の面積に対しての、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を算出する推定関数が予め記憶されている。
【0113】
アスベスト使用面積推定部3は、入力部1に入力された各入力情報のうちの建築構造および建物種別と関連付けられている推定関数を推定関数記憶部20から読み出し、当該読み出した推定関数に、入力部1に入力された床部位の面積を代入して算出した値を、評価対象となる建築物のアスベスト使用面積として推定する。
【0114】
推定関数記憶部20には、推定関数設定部40により、次のようにして、アスベストが使用されている建築物について、建築構造および建物種別を示す各情報と関連付けて、床部位の面積に対しての、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を算出する推定関数が予め記憶されている。
【0115】
まず、推定関数設定部40は、上述した第1の入力過程と、第2の入力過程と、分割過程と、第1の統計過程と、第2の統計過程とにより、推定情報設定部40と同様に、推定関数を算出する。次に、推定関数設定部40は、上述した記憶過程において、算出された推定関を、入手情報のうちの建築構造および建物種別と関連付けて推定関数記憶部20に記憶する。
【0116】
このようにして、推定関数記憶部20には、推定関数設定部40により、アスベストが使用されている建築物について、建築構造および建物種別を示す各情報と関連付けて、床部位の面積に対しての、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を算出する推定関数が記憶される。
【0117】
この場合、アスベスト使用面積推定部3は、推定関数に基づいて、床部位の面積に対しての、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を算出することができる。よって、より適切にアスベストが含まれている内外装材の使用面積を算出することができる。また、推定情報記憶部20の場合のように、床部位の面積の複数の所定値それぞれに対しての推定情報を記憶する必要がなく、推定関数記憶部20には、推定関数が記憶されてあればよい。そのため、推定関数記憶部20の記憶容量を、推定情報記憶部20の場合の記憶容量に対比して、低減させることができる。
【0118】
<「床部位の面積の複数の所定値」について>
なお、上記の説明においては、推定情報設定部40による推定情報算出過程において、「床部位の面積の複数の所定値」として、たとえば、床部位の面積として0〜10000mの範囲において、たとえば、100m毎の値として説明した。しかし、「床部位の面積の複数の所定値」とは、これに限られるものではない。たとえば、床部位の面積の値が小さい領域は、床部位の面積の値が大きい領域に対比して、所定値の値を小さくしてもよい。たとえば、床部位の面積として0〜5000mの範囲において、たとえば、10m毎の値とし、5000〜10000mの範囲において、たとえば、100m毎の値としてもよい。
【0119】
これにより、次のような効果がある。たとえば、推定関数が、図5の符号Bに示されるように、床部位の面積の値小さい領域は、床部位の面積の値大きい領域に対比して、床部位の面積に対してのアスベスト使用面積の変化率(すなわち推定関数を一次微分した値)が大きいとする。この場合、床部位の面積に対してのアスベスト使用面積の変化率が大きい領域については、床部位の面積の複数の所定値として、小さな値の所定値とすると、推定情報設定部40は、推定値の精度を向上させることができる。よって、アスベスト簡易評価装置は、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を、精度よく算出することができる。
【0120】
また、床部位の面積の値小さい領域は、床部位の面積の値大きい領域に対比して、所定値の値を小さくするのではなく、推定情報設定部40は、推定関数の変化率(すなわち推定関数を一次微分した値)の大きさに応じて、「床部位の面積の複数の所定値」の所定値が設定されるようにしてもよい。たとえば、推定情報設定部40は、変化率が大きい領域では、変化率が小さい領域に対比して、「床部位の面積の複数の所定値」の所定値を小さくする。この場合も、床部位の面積の値が小さい領域は、床部位の面積の値が大きい領域に対比して、所定値の値を小さくした場合と同様の効果がある。また、推定情報設定部40は、推定関数に応じて、より、推定値の精度を向上させることができる。そのため、アスベスト簡易評価装置は、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を、より、精度よく算出することができる。
【0121】
なお、上記の説明においては、推定情報設定部40は、分割過程と第1の統計過程と第2の統計過程とによる統計処理、すなわち、2段階の統計処理により、推定関数を算出して求めた。しかし、これに限られるものではなく、推定情報設定部40は、1段階の統計処理により、推定関数を算出して求めてもよい。
【0122】
この場合、推定情報設定部40は、分割過程と第1の統計過程と第2の統計過程と替えて、次の第3の統計過程を実行する。第3の統計過程において、推定情報設定部40により、入手情報のうちの床部位の面積に対しての入力されたアスベスト使用面積の第3の回帰関数が、推定関数として統計的に、入手情報のうちの建物構造、建物種別ごとに算出される。このようにして、1段階の統計処理により、推定関数を算出して求める場合には、推定情報設定部40は、簡易に推定関数を算出して求めることができる。
【0123】
なお、上記の説明においては、推定情報記憶部20には、アスベストが使用されている建築物について、建物種別を示す情報などと関連付けて、推定情報が予め記憶されているものとして説明した。しかし、これに限られるものではなく、建物種別を示す情報に替えて、建物種別系を示す情報を用いて、推定情報記憶部20には、アスベストが使用されている建築物について、建物種別系を示す情報などと関連付けて、推定情報が予め記憶されていてもよい。また、推定情報記憶部20と同様に、推定関数記憶部20、推定情報設定部40、または、推定関数設定部40などの構成も、建物種別を示す情報に替えて、建物種別系を示す情報を用いてもよい。
【0124】
これにより、建物種別を示す情報毎に、推定情報などの情報を記憶することや処理を変更するのではなく、建物種別系を示す情報毎に、推定情報などの情報を記憶することや処理を変更することができる。また、各記憶部に記憶される情報の量を低減させることができる。
【0125】
なお、判定情報記憶部10、推定情報記憶部20、推定関数記憶部20、または、換算情報記憶部30などの記憶部は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリや、CD−ROM等の読み出しのみが可能な記憶媒体、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成されるものとする。
【0126】
なお、図1における入力部1、判定部2、アスベスト使用面積推定部3、換算部4、出力部5、推定情報設定部40、または、推定関数設定部40の各構成は、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、この各構成はメモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、その構成の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0127】
また、この各構成の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、各構成による処理を実行してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0128】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0129】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0130】
1…入力部、2…判定部、3…アスベスト使用面積推定部、4…換算部、5…出力部、10…判定情報記憶部、20…推定情報記憶部(推定関数記憶部)、30…換算情報記憶部、40…推定情報設定部(推定関数設置部)、100…アスベスト簡易評価装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスベストが使用されている建築物について、建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各情報と関連付けて、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を示す推定情報が予め記憶されている記憶部と、
評価対象となる建築物の建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各入力情報が入力される入力部と、
前記入力部に入力された前記各入力情報と関連付けられている前記推定情報を前記記憶部から読み出し、当該読み出した推定情報を、前記評価対象となる建築物のアスベスト使用面積として推定するアスベスト使用面積推定部と、
を備えていることを特徴とする建築物中のアスベスト簡易評価装置。
【請求項2】
前記記憶部には、
アスベストが使用されている複数の建築物であって、前記推定情報を算出するための複数の建築物である複数の算出用建築物のそれぞれについて、建物構造、建物種別、および、床部位の面積を示す入手情報が入力される第1の入力過程と、
前記複数の算出用建築物のそれぞれについて、当該建築物のアスベスト使用面積が入力される第2の入力過程と、
前記複数の算出用建築物のそれぞれについて入力された前記アスベスト使用面積が、前記入手情報のうちの建物構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各情報に基づいて、複数の群に分割される分割過程と、
前記各群において、前記入手情報のうちの床部位の面積に対しての前記入力された前記アスベスト使用面積の第1の回帰関数が統計的に算出される第1の統計過程と、
前記統計的に算出された各群の第1の回帰関数を、前記入手情報のうちの建築構造および建物種別が同じ群毎に、前記入手情報のうちの床部位の面積に対して滑らかに接続する第2の回帰関数が推定関数として統計的に算出される第2の統計過程と、
前記推定関数に基づいて、床部位の面積の複数の所定値それぞれに対しての前記推定情報が、前記入手情報のうちの建築構造および建物種別ごとに算出される推定情報算出過程と、
前記入手情報のうちの建築構造および建物種別と、前記床部位の面積の複数の所定値とを、前記アスベストが使用されている建築物についての建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各情報と定め、当該各情報と関連付けて前記算出された推定情報が前記記憶部に記憶される記憶過程と、
により、前記アスベストが使用されている建築物について、建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す前記各情報と関連付けて、前記推定情報が予め記憶されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の建築物中のアスベスト簡易評価装置。
【請求項3】
前記複数の算出用建築物のそれぞれについて、当該算出用建築物の所定部位の面積が、前記所定部位ごとに、前記算出用建築物の建物構造、建物種別、および、床部位の面積に基づいて求められる所定部位面積取得過程と、
前記複数の算出用建築物のそれぞれについて、前記算出用建築物の前記所定部位の面積に基づいて、前記所定部位ごとのアスベスト使用面積が算出され、算出された前記所定部位ごとのアスベスト使用面積の総和を算出することにより、前記アスベスト使用面積が算出されるアスベスト使用面積算出過程と、
を有し、
前記第2の入力過程において、
前記複数の算出用建築物のそれぞれについて、前記アスベスト使用面積算出過程により算出された前記アスベスト使用面積が入力される、
ことを特徴する請求項2に記載の建築物中のアスベスト簡易評価装置。
【請求項4】
前記所定部位面積取得過程において、
前記算出用建築物の建物構造および建物種別および部位に対応して予め設定されている第1の係数が、前記算出用建築物の床部位の面積に乗じられて、前記算出用建築物の所定部位の面積が前記所定部位ごとに求められる、
ことを特徴する請求項3に記載の建築物中のアスベスト簡易評価装置。
【請求項5】
前記アスベスト使用面積算出過程において、
前記複数の算出用建築物のそれぞれについて、前記算出用建築物の前記所定部位の面積に、前記所定部位毎に対応して予め設定されている第2の係数を乗じることにより、前記所定部位ごとのアスベスト使用面積が算出される、
ことを特徴する請求項3または請求項4に記載の建築物中のアスベスト簡易評価装置。
【請求項6】
前記所定部位は、少なくとも床、天井、壁を含む、
ことを特徴する請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の建築物中のアスベスト簡易評価装置。
【請求項7】
前記第2の統計過程において、
前記各群について統計的に算出された第1の回帰関数に、床部位の面積の複数の所定値をそれぞれ代入し、前記床部位の面積の複数の所定値それぞれに対しての前記アスベスト使用面積が算出され、
前記床部位の面積の複数の所定値それぞれに対しての、前記アスベスト使用面積の前記第2の回帰関数が統計的に算出される、
ことを特徴する請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の建築物中のアスベスト簡易評価装置。
【請求項8】
前記アスベスト使用面積推定部により推定された前記アスベスト使用面積を、所定の第3の係数に基づいて、当該アスベスト使用面積のアスベストを除去する場合に要する金額に換算する換算部、
を有することを特徴する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の建築物中のアスベスト簡易評価装置。
【請求項9】
前記換算部は、
前記アスベスト使用面積推定部により出力されるアスベスト使用面積を金額に換算する場合、当該アスベスト使用面積のアスベストを除去する場合に要する金額の上限と下限とに換算する、
ことを特徴とする請求項8に記載の建築物中のアスベスト簡易評価装置。
【請求項10】
前記評価対象となる建築物が建築された建築年が入力され、当該入力された建築年に基づいて、前記評価対象となる建築物にアスベストが使用されている可能性を判定する判定部、
を備えており、
前記アスベスト使用面積推定部は、
前記判定部により前記評価対象となる建築物にアスベストが使用されて可能性があると判定された場合、前記評価対象となる建築物に対しての前記アスベスト使用面積を推定する、
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の建築物中のアスベスト簡易評価装置。
【請求項11】
アスベストが使用されている建築物について、建築構造および建物種別を示す各情報と関連付けて、床部位の面積に対しての、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を算出する推定関数が予め記憶されている記憶部と、
評価対象となる建築物の建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各入力情報が入力される入力部と、
前記入力部に入力された前記各入力情報のうちの建築構造および建物種別と関連付けられている前記推定関数を前記記憶部から読み出し、当該読み出した推定関数に、前記入力部に入力された床部位の面積を代入して算出した値を、前記評価対象となる建築物のアスベスト使用面積として推定するアスベスト使用面積推定部と、
を備えていることを特徴とする建築物中のアスベスト簡易評価装置。
【請求項12】
前記記憶部には、
アスベストが使用されている複数の建築物であって、前記推定情報を算出するための複数の建築物である複数の算出用建築物のそれぞれについて、建物構造、建物種別、および、床部位の面積を示す入手情報が入力される第1の入力過程と、
前記複数の算出用建築物のそれぞれについて、当該建築物のアスベスト使用面積が入力される第2の入力過程と、
前記複数の算出用建築物のそれぞれについて入力された前記アスベスト使用面積が、前記入手情報のうちの建物構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各情報に基づいて、複数の群に分割される分割過程と、
前記各群において、前記入手情報のうちの床部位の面積に対しての前記入力された前記アスベスト使用面積の第1の回帰関数が統計的に算出される第1の統計過程と、
前記統計的に算出された各群の第1の回帰関数を、前記入手情報のうちの建築構造および建物種別が同じ群毎に、前記入手情報のうちの床部位の面積に対して滑らかに接続する第2の回帰関数が前記推定関数として統計的に算出される第2の統計過程と、
前記算出された推定関数が、前記入手情報のうちの建築構造および建物種別と関連付けられて前記記憶部に記憶される記憶過程と、
により、前記アスベストが使用されている建築物について、建築構造および建物種別を示す各情報と関連付けて、床部位の面積に対しての、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を算出する前記推定関数が予め記憶されている
ことを特徴とする請求項11に記載の建築物中のアスベスト簡易評価装置。
【請求項13】
評価対象となる建築物の建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各入力情報が入力される入力手順と、
アスベストが使用されている建築物について、建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各情報と関連付けて、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を示す推定情報が予め記憶されている記憶部から、前記入力手順により入力された前記各入力情報と関連付けられている前記推定情報を読み出し、当該読み出した推定情報を、前記評価対象となる建築物のアスベスト使用面積として推定するアスベスト使用面積推定手順と、
を備えていることを特徴とする建築物中のアスベスト簡易評価方法。
【請求項14】
評価対象となる建築物の建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各入力情報が入力される入力手順と、
アスベストが使用されている建築物について、建築構造および建物種別を示す各情報と関連付けて、床部位の面積に対しての、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を算出する推定関数が予め記憶されている記憶部から、前記入力手順により入力された前記各入力情報のうちの建築構造および建物種別と関連付けられている前記推定関数を読み出し、当該読み出した推定関数に、前記入力部に入力された床部位の面積を代入して算出した値を、前記評価対象となる建築物のアスベスト使用面積として推定するアスベスト使用面積推定手順と、
を備えていることを特徴とする建築物中のアスベスト簡易評価方法。
【請求項15】
建築物中のアスベスト簡易評価装置としてのコンピュータに、
評価対象となる建築物の建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各入力情報が入力される入力手順と、
アスベストが使用されている建築物について、建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各情報と関連付けて、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を示す推定情報が予め記憶されている記憶部から、前記入力手順により入力された前記各入力情報と関連付けられている前記推定情報を読み出し、当該読み出した推定情報を、前記評価対象となる建築物のアスベスト使用面積として推定するアスベスト使用面積推定手順と、
を実行させるためのアスベスト簡易評価プログラム。
【請求項16】
建築物中のアスベスト簡易評価装置としてのコンピュータに、
評価対象となる建築物の建築構造、建物種別、および、床部位の面積を示す各入力情報が入力される入力手順と、
アスベストが使用されている建築物について、建築構造および建物種別を示す各情報と関連付けて、床部位の面積に対しての、アスベストが含まれている内外装材の使用面積を算出する推定関数が予め記憶されている記憶部から、前記入力手順により入力された前記各入力情報のうちの建築構造および建物種別と関連付けられている前記推定関数を読み出し、当該読み出した推定関数に、前記入力部に入力された床部位の面積を代入して算出した値を、前記評価対象となる建築物のアスベスト使用面積として推定するアスベスト使用面積推定手順と、
を実行させるためのアスベスト簡易評価プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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