説明

アゼチジノンの合成のためのプロセス

【課題】ペネム合成における中間体、およびコレステロール低下剤として有用なアゼチジノンを調製するプロセスが提供すること。
【解決手段】本プロセスはβ−(置換アミノ)アミド、β−(置換アミノ)酸エステルまたはβ−(置換アミノ)チオール炭酸エステルをシリル化剤および環化剤と反応させることを包み;この環化剤はカルボン酸アルカリ金属塩、第四級アンモニウムカルボキシレート、水酸化第四級アンモニウム、第四級アンモニウムアルコキシド、第四級アンモニウムアリールオキシドおよびそれらの水和物からなる群より選択されるか、または(i)少なくとも一種のハロゲン化第四級アンモニウムと、少なくとも一種のカルボン酸アルカリ金属塩との反応生成物;もしくは(ii)少なくとも一種の塩化第四級アンモニウム、臭化第四級アンモニウム、もしくはヨウ化第四級アンモニウムと、少なくとも一種のフッ化アルカリ金属との反応生成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、血管症状および高脂血症状態の治療に有用な、又ペネム合成のための中間体であるアゼチジノンまたはβ−ラクタム化合物を調製するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
アゼチジノンは、特許文献1号に開示されている通り、コレステロール低下剤として有用であり、又既知の抗菌剤の群であるペネムの合成における中間体としても有用である。
【0003】
特許文献2には、シリル化剤およびフッ化物イオン触媒環化剤と、適切に保護されたβ−(置換アミノ)アミド、β−(置換アミノ)酸エステル、またはβ−(置換アミノ)チオール炭酸エステルとを反応させることによる、アゼチジノンを調製するプロセスが開示されている。
【0004】
特許文献3には、化合物(エゼチミブ):
【0005】
【化15】

を製造するプロセスが開示されており、該プロセスは、
(a)p−フルオロベンゾイル酪酸を塩化ピバロイルと反応させ、生成物をキラル補助剤でアシル化して、ケトンを産生し:
【0006】
【化16】

(式中、Xは、−O−、−S−または−N(C−Cアルキル)であり;Yは、=Oまたは=Sであり;Rは、C−Cアルキル、フェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ナフチル、C−Cアルコキシカルボニルまたはベンジルであり、ここでフェニルおよびナフチル上の置換基は、C−Cアルキル、フェニルおよびベンジルからなる群より選択される1〜3個の置換基である);
(b)ケトンをキラル触媒の存在下でアルコールに還元し:
(c)工程(b)のキラルアルコールを、イミンおよびシリル保護剤と反応させた後、保護化合物を縮合させて、β−(置換アミノ)アミドを産生し:
【0007】
【化17】

(d)β−(置換アミノ)アミドを、
(i)シリル化剤およびフッ化物イオン触媒環化剤;
(ii)シリル化剤、および工程(a)のキラル補助剤の第四級アンモニウム塩;
または
(iii)強力な非求核性塩基;
で環化して以下の化合物を得る工程:
【化18】

;および保護基を除去する工程を包含する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国再発行特許発明第37,721号明細書
【特許文献2】欧州特許第0707567号明細書
【特許文献3】米国特許第6,207,822号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
アゼチジノンの調製における上記の有益な改良が行われているにもかかわらず、アゼチジノンおよびβ−ラクタム化合物を調製する代替の、より単純な、且つより安価なプロセスが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
一実施形態において、本発明は、アゼチジノン、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、およびプロドラッグを調製するプロセスを提供し、該プロセスは:
(1)β−(置換アミノ)アミド、β−(置換アミノ)酸エステル、またはβ−(置換アミノ)チオール炭酸エステル(thiolcarbonic acid)を、
(2)少なくとも一種のシリル化剤、および
(3)少なくとも一種の環化剤と反応させる工程を包含し、該環化剤は、
(a)カルボン酸アルカリ金属塩、第四級アンモニウムカルボキシレート、水酸化第四級アンモニウム、第四級アンモニウムアルコキシド、第四級アンモニウムアリールオキシドおよびそれらの水和物からなる群より選択されるか、または
(b)反応生成物であって、
(i)少なくとも一種のハロゲン化第四級アンモニウムと、少なくとも一種のカルボン酸アルカリ金属塩との反応生成物;もしくは
(ii)少なくとも一種の塩化第四級アンモニウム、臭化第四級アンモニウム、もしくはヨウ化第四級アンモニウムと、少なくとも一種のフッ化アルカリ金属との反応生成物であり、
該環化剤の第四級アンモニウム部分は、未置換であるか、またはアルキル、アリールアルキルおよびアリールアルキル−アルキルからなる群より独立して選択される1〜4個の基で置換されている。
【0011】
本発明の別の態様は、構造式(IV):
【0012】
【化19】

で表される化合物を調製するプロセスであり、該プロセスは、
構造式XII:
【0013】
【化20】

(式中、Xは、−O−、−S−または−N(C−Cアルキル)であり;Yは、=Oまたは=Sであり;Rは、アルキル、アリールまたはアルコキシカルボニルであり、Protは、シリル保護基である)のβ−(置換アミノ)アミドを、
少なくとも一種のシリル化剤、ならびに
(a)カルボン酸アルカリ金属塩、第四級アンモニウムカルボキシレート、水酸化第四級アンモニウム、第四級アンモニウムアルコキシド、第四級アンモニウムアリールオキシドおよびその水和物からなる群より選択されるか、または
(b)
(i)少なくとも一種のハロゲン化第四級アンモニウムと、少なくとも一種のカルボン酸アルカリ金属塩;もしくは
(ii)少なくとも一種の塩化第四級アンモニウム、臭化第四級アンモニウム、もしくはヨウ化第四級アンモニウムと、少なくとも一種のフッ化アルカリ金属、との反応生成物であり、
その第四級アンモニウム部分が、未置換であるか、またはアルキル、アリールアルキルおよびアリールアルキル−アルキルからなる群より独立して選択される1〜4個の基で置換されている少なくとも一種の環化剤で環化させて、構造式XI:
【0014】
【化21】

の化合物を得る工程;ならびにシリル保護基を除去して、構造式(IV)の化合物を形成する工程を包含する。
【0015】
記載する実施例中のもの以外の、または別に指示される場合、明細書および特許請求の範囲に使用される成分の量、反応条件その他を表す全数字は、全ての場合において、「約」という用語により変更されることを理解すべきである。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
アゼチジノンを調製するためのプロセスであって、
(1)β−(置換アミノ)アミド、β−(置換アミノ)酸エステル、またはβ−(置換アミノ)チオール炭酸エステルを、
(2)少なくとも一種のシリル化剤、および
(3)少なくとも一種の環化剤と反応させる工程を包含し、該環化剤が、
(a)カルボン酸アルカリ金属塩、第四級アンモニウムカルボキシレート、水酸化第四級アンモニウム、第四級アンモニウムアルコキシド、第四級アンモニウムアリールオキシドおよびそれらの水和物からなる群より選択されるか、または
(b)反応生成物であって、
(i)少なくとも一種のハロゲン化第四級アンモニウムと、少なくとも一種のカルボン酸アルカリ金属塩との反応生成物;もしくは
(ii)少なくとも一種の塩化第四級アンモニウム、臭化第四級アンモニウム、もしくはヨウ化第四級アンモニウムと、少なくとも一種のフッ化アルカリ金属との反応生成物であり、
該環化剤の第四級アンモニウム部分が、未置換であるか、またはアルキル、アリールアルキルおよびアリールアルキル−アルキルからなる群より独立して選択される1〜4個の基で置換されている、プロセス。
(項目2)
前記アゼチジノンが、構造式(I):
【化1】


によって表されるか、または式(I)のアゼチジノンの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であり、上記の式(I)中、
X’、Y’およびZは、同一であっても、異なっていてもよく、且つ各々、−CH−、−CH(アルキル)−および−C(アルキル)−からなる群より独立して選択され;
およびQは、同一であっても、異なっていてもよく、且つ各々、H、−(C−C30アルキレン)−G、−OR、−OC(O)R、−OC(O)OR、および−OC(O)NRMからなる群より独立して選択され;
、Q、およびQは、同一であっても、異なっていてもよく、且つ各々独立して、アシル、アルキル、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アルキルスルホニルアルケニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキニル、−(C−C30アルキレン)−G、
−(C−C10アルキレン)−OR、−(C−C10アルキレン)−C(O)R
−(C−C10アルキレン)−C(O)OR、−(C−C10アルキレン)−OC(O)R
−(C−C10アルキレン)−OC(O)OR、−CH=CH−C(O)R、−CH=CH−C(O)OR
−C≡C−C(O)OR、−C≡C−C(O)R、−O−(C−C10アルキレン)−OR
−O−(C−C10アルキレン)−C(O)R、−O−(C−C10アルキレン)−C(O)OR、−CN、
−C(=N−CN)−NH、−C(=NH)−NHR10、−O−(C−C10アルキレン)−C(O)NR
−O−(C−C10アルキレン)−C(O)NRNRC(O)OR
−O−(C−C10アルキルレン)−C(O)(アリール)−N−N=N
−OC(O)−(C−C10アルキレン)−C(O)OR、−(C−C10アルキレン)−C(O)NR
−(C−C10アルキレン)−OC(O)NR、−NO、−(C−C10アルキレン)−NR
−O−(C−C10アルキレン)−NR、−NRC(O)R、−NRC(O)OR、−NRC(O)NR
−NRS(O)0−2、−N(S(O)0−2、−CHNOR、−C(O)NR、−C(O)NRNR
−S(O)0−2NR、−S(O)0−2、−O−C(O)−(C−C10アルキレン)−C(O)NR
−OC(O)−(C−C10アルキレン)−NRC(O)O−(アルキルアリール)、−P(O)(OR10
−(C−C10アルキレン)−OSi(アルキル)、−CF、−OCF、ハロ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルコキシアルコキシ、アルコキシカルボニルアルコキシ、アルコキシアリールアルコキシ、アルコキシイミノアルキル、アルキルジオイル、アリル、アリルオキシ、アリールオキシカルボニル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アロイル、アロイルオキシ、アリールスルホニル、アロイルアロイルオキシ、アロイル、アリールアルコキシカルボニル、ベンゾイルベンゾイルオキシ、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルコキシ、
ヘテロアリールスルホニル、ヘテロアリールチオ、ジオキソラニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニルアルコキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、およびアルキルスルホニルからなる群より独立して選択される1〜5個の置換基であり;
ここで場合によりQ、Q、Q、QおよびQの−(C−C30アルキレン)−基の一つ以上の炭素原子は、独立して
−O−、−C(O)−、−CH=CH−、−C≡C−、−N(アルキル)−、−N(アルキルアリール)−または−NH−によって置き換えられ;
Gは、糖残基、二糖残基、三糖残基、四糖残基、糖酸、アミノ糖、アミノ酸残基、2〜9個のアミノ酸を含むオリゴペプチド残基、トリアルキルアンモニウムアルキル基および−S(O)−OHからなる群より選択され、
およびRは、同一であっても、異なっていてもよく、且つ各々、水素、アルキルおよびアリールからなる群より独立して選択され;
、RおよびRは、同一であっても、異なっていてもよく、且つ各々、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルおよび保護基からなる群より独立して選択され;ならびに
各Rは、独立してアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアリールアルキルであり、
各R10は、独立してHまたはアルキルであり;
qは0または1であり;
rは0または1であり;
m、nおよびpは、0、1、2、3または4から独立して選択されるが;但し、qおよびrの少なくとも一方が1であり、且つm、n、p、qおよびrの合計が1、2、3、4、5または6であり;そして、pが0であり、且つrが1の場合、m、qおよびnの合計が1、2、3、4または5である、項目1に記載のプロセス。
(項目3)
前記アゼチジノンが、構造式(IV):
【化2】


で表される、項目2に記載のプロセス。
(項目4)
前記β−(置換アミノ)アミドがカルバモイル部分B−C(O)−を含み、ここでBが、
【化3】


からなる群より選択される脱プロトン化キラル補助剤であり、式中、Xは、−O−、−S−または−N(アルキル)−であり;Yは、=Oまたは=Sであり;R12およびR13は、各々アルキル、アリールアリールアルキル、およびアルコキシカルボニルからなる群より独立して選択されるか、またはR12およびR13のうちの一方は上に定義した通りであり、他方は水素である、項目1に記載のプロセス。
(項目5)
12またはR13の前記アリール基が、フェニル、ナフチル、ベンジル、置換フェニル、置換ナフチルおよび置換ベンジルからなる群より独立して選択され、該フェニルまたはナフチル上の該置換基が、アルキル、アルコキシ、フェニルおよびベンジルからなる群より選択される1〜3個の置換基である、項目4に記載のプロセス。
(項目6)
前記β−(置換アミノ)アミドがカルバモイル部分B−C(O)−を含み、ここでBが(R14)(R15)N−であり、R14およびR15は、各々アルキル、アリール、アリールアルキルからなる群より独立して選択される、項目4に記載のプロセス。
(項目7)
前記β−(置換アミノ)アミドが、式(II):
【化4】


で表され、式中、Bは、項目4に定義した通りであり、
X’、Y’およびZは、同一であっても、異なっていてもよく、且つ各々、−CH−、−CH(アルキル)−および−C(アルキル)−からなる群より独立して選択され;
およびQは、同一であっても、異なっていてもよく、且つ各々、H、−(C−C30アルキレン)−G、−OR、−OC(O)R、−OC(O)ORおよび−OC(O)NRからなる群より独立して選択され;
、Q、およびQは、同一であっても、異なっていてもよく、且つ各々独立して、アシル、アルキル、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アルキルスルホニルアルケニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキニル、−(C−C30アルキレン)−G、
−(C−C10アルキレン)−OR、−(C−C10アルキレン)−C(O)R
−(C−C10アルキレン)−C(O)OR、−(C−C10アルキレン)−OC(O)R
−(C−C10アルキレン)−OC(O)OR、−CH=CH−C(O)R、−CH=CH−C(O)OR、−C≡C−C(O)OR、−C≡C−C(O)R、−O−(C−C10アルキレン)−OR
−O−(C−C10アルキレン)−C(O)R、−O−(C−C10アルキレン)−C(O)OR、−CN、
−C(=N−CN)−NH、−C(=NH)−NHR10、−O−(C1−10アルキレン)−C(O)NR
−O−(C−C10アルキレン)−C(O)NRNRC(O)OR
−O−(C−C10アルキレン)−C(O)(アリール)−N−N=N
−OC(O)−(C−C10アルキレン)−C(O)OR、−(C−C10アルキレン)−C(O)NR
−(C−C10アルキレン)−OC(O)NR、−NO、−(C−C10アルキレン)−NR
−O−(C−C10アルキレン)−NR、−NRC(O)R、−NRC(O)OR、−NRC(O)NR
−NRS(O)0−2、−N(S(O)0−2、−CHNOR、−C(O)NR、−C(O)NRNR
−S(O)0−2NR、−S(O)0−2、−O−C(O)−(C−C10アルキレン)−C(O)NR
−OC(O)−(C−C10アルキレン)−NRC(O)O−(アルキルアリール)、−P(O)(OR10、−(C−C10アルキレン)−OSi(アルキル)、−CF、−OCF、ハロ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルコキシアルコキシ、アルコキシカルボニルアルコキシ、アルコキシアリールアルコキシ、アルコキシイミノアルキル、アルキルジオイル、アリル、アリルオキシ、アリールオキシカルボニル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アロイル、アロイルオキシ、アリールスルホニル、アロイルアロイルオキシ、アロイル、アリールアルコキシカルボニル、ベンゾイルベンゾイルオキシ、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルコキシ、ヘテロアリールスルホニル、ヘテロアリールチオ、ジオキソラニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニルアルコキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、およびアルキルスルホニルからなる群より独立して選択される1〜5個の置換基であり、
ここで場合によりQ、Q、Q、QおよびQの−(C−C30アルキレン)−基の一つ以上の炭素原子は、独立して
−O−、−C(O)−、−CH=CH−、−C≡C−、−N(アルキル)−、−N(アルキルアリール)−または−NH−によって置き換えられ;
Gは、糖残基、二糖残基、三糖残基、四糖残基、糖酸、アミノ糖、アミノ酸残基、2〜9個のアミノ酸を含むオリゴペプチド残基、トリアルキルアンモニウムアルキル基および−S(O)−OHからなる群より選択され、
およびRは、同一であっても、異なっていてもよく、且つ各々、水素、アルキルおよびアリールからなる群より独立して選択され;
、RおよびRは、同一であっても、異なっていてもよく、且つ各々、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルおよび保護基からなる群より独立して選択され;ならびに
各Rは、独立してアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアリールアルキルであり、
各R10は、独立してHまたはアルキルであり;
qは0または1であり;
rは0または1であり;
m、nおよびpは、0、1、2、3または4から独立して選択されるが;但し、qおよびrの少なくとも一方が1であり、且つm、n、p、qおよびrの合計が1、2、3、4、5または6であり;そして、pが0であり、且つrが1の場合、m、qおよびnの合計が1、2、3、4または5である、項目4に記載のプロセス。
(項目8)
前記β−(置換アミノ)アミドが、式(III):
【化5】


で表される、項目7に記載のプロセス。
(項目9)
前記β−(置換アミノ)酸エステルがカルボン酸エステル部分R14−O−C(O)−を含み、ここでR14がアルキルまたはアリールである、項目1に記載のプロセス。
(項目10)
前記β−(置換アミノ)チオール炭酸エステルがチオール炭酸エステル部分R14−S−C(O)−を含み、ここでR14がアルキルまたはアリールである、項目1に記載のプロセス。
(項目11)
前記シリル化剤がシリルエノールエーテルである、項目1に記載のプロセス。
(項目12)
前記シリル化剤が、ビストリメチルシリルアセトアミド、N−メチル−O−トリメチルシリルアセトアミドまたはイソプロペニルオキシトリメチルシランからなる群より選択される、項目11に記載のプロセス。
(項目13)
前記カルボン酸アルカリ金属塩が、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびセシウムからなる群より選択されるアルカリ金属のカルボン酸塩である、項目1に記載のプロセス。
(項目14)
前記カルボン酸アルカリ金属塩または第四級アンモニウムカルボキシレートが、ホルメート、アセテート、プロピオネート、ブチレート、バレレート、カプロエート、カプリレート、ラウレート、ミリステート、パルミテート、ステアレート、オレエート、リノレエート、リノレネート、シクロヘキサンカルボキシレート、フェニルアセテート、ベンゾエートおよびトルエートからなる群より選択されるカルボキシレート部分を含む、項目1に記載のプロセス。
(項目15)
前記カルボン酸アルカリ金属塩のカルボキシレート部分がアセテートである、項目14に記載のプロセス。
(項目16)
前記カルボン酸アルカリ金属塩が酢酸カリウムである、項目14に記載のプロセス。
(項目17)
前記第四級アンモニウムカルボキシレートのカルボキシレート部分がアセテートである、項目14に記載のプロセス。
(項目18)
前記環化剤の第四級アンモニウム部分がテトラn−ブチルアンモニウムである、項目1に記載のプロセス。
(項目19)
前記第四級アンモニウムカルボキシレートがテトラn−ブチルアンモニウムアセテートである、項目14に記載のプロセス。
(項目20)
前記水酸化第四級アンモニウムが水酸化テトラn−ブチルアンモニウムである、項目1に記載のプロセス。
(項目21)
前記ハロゲン化第四級アンモニウムが、フッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物からなる群より選択されるハロゲン化物部分を含む、項目1に記載のプロセス。
(項目22)
前記環化剤が、臭化テトラn−ブチルアンモニウムと酢酸カリウムとの反応生成物である、項目1に記載のプロセス。
(項目23)
前記環化剤が、臭化テトラn−ブチルアンモニウムとフッ化セシウムとの反応生成物である、項目1に記載のプロセス。
(項目24)
前記反応生成物(3)(b)が、反応物(1)および反応物(2)の存在下、インサイチュで形成される、項目1に記載のプロセス。
(項目25)
反応物(1)および反応物(2)との反応の前に、前記反応生成物(3)(b)を形成する工程をさらに包含する、項目1に記載のプロセス。
(項目26)
前記シリル化剤がビストリメチルシリルアセトアミドであり、前記環化剤がテトラn−ブチルアンモニウムアセテートである、項目1に記載のプロセス。
(項目27)
フッ化物イオン触媒である第二の環化剤を添加することをさらに包含する、項目1に記載のプロセス。
(項目28)
反応物(1)と反応物(2)とを予め反応させることを包含する、項目1に記載のプロセス。
(項目29)
構造式(IV):
【化6】


で表されるアゼチジノンを調製するための項目1に記載のプロセスであって、
(1)式(III)
【化7】


のβ−(置換アミノ)アミドを
(2)少なくとも一種のシリル化剤、および
(3)少なくとも一種の環化剤と反応させる工程を包含し、該環化剤が、
(a)カルボン酸アルカリ金属塩、第四級アンモニウムカルボキシレート、水酸化第四級アンモニウム、第四級アンモニウムアルコキシド、第四級アンモニウムアリールオキシドおよびそれらの水和物からなる群より選択されるか、または
(b)反応生成物であって、
(i)少なくとも一種のハロゲン化第四級アンモニウムと、少なくとも一種のカルボン酸アルカリ金属塩との反応生成物;もしくは
(ii)少なくとも一種の塩化第四級アンモニウム、臭化第四級アンモニウム、もしくはヨウ化第四級アンモニウムと、少なくとも一種のフッ化アルカリ金属との反応生成物であり、
該環化剤の第四級アンモニウム部分が、未置換であるか、またはアルキル、アリールアルキルおよびアリールアルキル−アルキルからなる群より独立して選択される1〜4個の基で置換されている、プロセス。
(項目30)
式(IV):
【化8】


で表される化合物を調製するためのプロセスであって、
式XIIのβ−(置換アミノ)アミド
【化9】


(式中、Xは、−O−、−S−または−N(C−Cアルキル)であり;Yは、=Oまたは=Sであり;Rは、アルキル、アリールまたはアルコキシカルボニルであり、Protは、シリル保護基である)を、
少なくとも一種のシリル化剤、ならびに
(a)カルボン酸アルカリ金属塩、第四級アンモニウムカルボキシレート、水酸化第四級アンモニウム、第四級アンモニウムアルコキシド、第四級アンモニウムアリールオキシドおよびそれらの水和物からなる群より選択されるか、または
(b)反応生成物であって、
(i)少なくとも一種のハロゲン化第四級アンモニウムと、少なくとも一種のカルボン酸アルカリ金属塩;もしくは
(ii)少なくとも一種の塩化第四級アンモニウム、臭化第四級アンモニウム、もしくはヨウ化第四級アンモニウムと、少なくとも一種のフッ化アルカリ金属との反応生成物であり、
環化剤の第四級アンモニウム部分が、未置換であるか、またはアルキル、アリールアルキルおよびアリールアルキル−アルキルからなる群より独立して選択される1〜4個の基で置換されている、少なくとも一種の環化剤で環化して、式XI:
【化10】

の化合物を得る工程;ならびに
シリル保護基を除去して式(IV)の化合物を形成する工程
を包含する、プロセス。
(項目31)
さらに、式XIIのβ−(置換アミノ)アミドを環化する工程の前に、
式VIIIのキラルアルコール、式IXのイミンおよびシリル保護剤を反応させた後、シリル保護化合物を縮合させて、式XIIのβ−(置換アミノ)アミドを得る工程:
【化11】


を包含し、式中、Xは、−O−、−S−または−N(C−Cアルキル)であり;Yは、=Oまたは=Sであり;Rは、アルキル、アリールまたはアルコキシカルボニルであり、Protは、シリル保護基である、項目30に記載のプロセス。
(項目32)
さらに、式XIIのβ−(置換アミノ)アミドを環化する工程の前に、
(a)式Vのp−フルオロベンゾイル酪酸を、塩化ピバロイルと反応させ、生成物を式VIのキラル補助剤でアシル化して、式VIIのケトンを得る工程:
【化12】


であって、式中、Xは、−O−、−S−または−N(C−Cアルキル)であり;Yは、=Oまたは=Sであり;Rは、アルキル、アリールまたはアルコキシカルボニルである、工程;
(b)式VIIのケトンを、キラル触媒の存在下で、式VIIIのアルコールに還元する工程:
【化13】


(c)式VIIIのキラルアルコールと式IXのイミンとシリル保護剤とを反応させた後、シリル保護化合物を縮合させて、式XIIのβ−(置換アミノ)アミドを得る工程:
【化14】


であって、式中、Protは、シリル保護基である、工程
を包含する、項目30に記載のプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(詳細な説明)
本発明は、その多数の実施形態において、コレステロール低下剤として、または既知の抗菌物質の群であるペネムの合成における中間体として有用となり得る、アゼチジノンまたはβ−ラクタムを調製する新規のプロセスを提供する。
【0017】
このプロセスは、場合によりC−3およびC−4位の各々において一置換、二置換または未置換であり、且つ環窒素において置換されたアゼチジノンの調製に適用可能である。このプロセスにより調製したC−3、C−4二置換アゼチジノンの立体化学は、出発物質に依存する。即ち、ラセミ化合物、立体特異的化合物またはエナンチオマー化合物は、対応する出発物質が使用された場合に得ることができる。より詳細には、このプロセスは、C−3位およびC−4位にて置換され、且つ場合により環窒素にて置換されたアゼチジノンの立体特異的調製に有用である。
【0018】
本発明のプロセスは、構造式(I):
【0019】
【化22】

で表されるようなアゼチジノン、または構造式(I)のアゼチジノンの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の調製に使用することができ、上記の構造式(I)中:
X’、Y’およびZは、同一であっても、異なっていてもよく、且つ各々、−CH−、−CH(アルキル)−および−C(アルキル)−からなる群より独立して選択され;
およびQは、同一であっても、異なっていてもよく、且つ各々、H、−(C−C30アルキレン)−G、−OR、−OC(O)R、−OC(O)OR、および−OC(O)NR7Mからなる群より独立して選択され;
は、アシル、アルキル、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アルキルスルホニルアルケニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキニル、−(C−C30アルキレン)−G、
−(C−C10アルキレン)−OR、−(C−C10アルキレン)−C(O)R
−(C−C10アルキレン)−C(O)OR、−(C−C10アルキレン)−OC(O)R
−(C−C10アルキレン)−OC(O)OR、−CH=CH−C(O)R、−CH=CH−C(O)OR
−C≡C−C(O)OR、−C≡C−C(O)R、−O−(C−C10アルキレン)−OR
−O−(C−C10アルキレン)−C(O)R、−O−(C−C10アルキレン)−C(O)OR、−CN、
−C(=N−CN)−NH、−C(=NH)−NHR10、−O−(C−C10アルキレン)−C(O)NR
−O−(C−C10アルキレン)−C(O)NRNRC(O)OR
−O−(C−C10アルキレン)−C(O)(アリール)−N−N=N−、
−OC(O)−(C−C10アルキレン)−C(O)OR、−(C−C10アルキレン)−C(O)NR
−(C−C10アルキレン)−OC(O)NR、−NO、−(C−C10アルキレン)−NR
−O−(C−C10アルキレン)−NR、−NRC(O)R、−NRC(O)OR
−NRC(O)NR、−NRS(O)0−2、−N(S(O)0−2、−CHNOR、−C(O)NR
−C(O)NRNR、−S(O)0−2NR、−S(O)0−2
−O−C(O)−(C−C10アルキレン)−C(O)NR
−OC(O)−(C−C10アルキレン)−NRC(O)O−(アルキルアリール)、−P(O)(OR10
−(C−C10アルキレン)−OSi(アルキル)、−CF、−OCF、ハロ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルコキシアルコキシ、アルコキシカルボニルアルコキシ、アルコキシアリールアルコキシ、アルコキシイミノアルキル、アルキルジオイル、アリル、アリルオキシ、アリールオキシカルボニル、アラルコキシカルボニル(アリールアルコキシカルボニル)、アリール、アリールアルキル(アラルキル)、アリールオキシ、アリールスルホニルアリールアルコキシ、アロイル、アロイルオキシ、アロイルアロイルオキシ、ベンゾイルベンゾイルオキシ、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルコキシ、ヘテロアリールスルホニル、ヘテロアリールチオ、ジオキソラニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニルアルコキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルキルスルホニル、および環系上の1個の利用可能な水素原子を代替する部分、または以下に定義する、環系上の隣接する炭素原子上の2個の利用可能な水素を同時に代替する部分を含む環置換基、からなる群より独立して選択される1〜5個の置換基であり;
は、アシル、アルキル、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アルキルスルホニルアルケニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキニル、−(C−C30アルキレン)−G、
−(C−C10アルキレン)−OR、−(C−C10アルキレン)−C(O)R
−(C−C10アルキレン)−C(O)OR、−(C−C10アルキレン)−OC(O)R
−(C−C10アルキレン)−OC(O)OR、−CH=CH−C(O)R、−CH=CH−C(O)OR
−C≡C−C(O)OR、−C≡C−C(O)R、−O−(C−C10アルキレン)−OR
−O−(C−C10アルキレン)−C(O)R、−O−(C−C10アルキレン)−C(O)OR、−CN、
−C(=N−CN)−NH、−C(=NH)−NHR10、−O−(C−C10アルキレン)−C(O)NR
−O−(C−C10アルキレン)−C(O)NRNRC(O)OR
−O−(C−C10アルキレン)−C(O)(アリール)−N−N=N−、
−OC(O)−(C−C10アルキレン)−C(O)OR、−(C−C10アルキレン)−C(O)NR
−(C−C10アルキレン)−OC(O)NR、−NO、−(C−C10アルキレン)−NR
−O−(C−C10アルキレン)−NR、−NRC(O)R、−NRC(O)OR、−NRC(O)NR、−NRS(O)0−2、−N(S(O)0−2、−CHNOR、−C(O)NR、−C(O)NRNR、−S(O)0−2NR、−S(O)0−2、−O−C(O)−(C−C10アルキレン)−C(O)NR、−OC(O)−(C−C10アルキレン)−NRC(O)O−(アルキルアリール)、−P(O)(OR10
−(C−C10アルキレン)−OSi(アルキル)、−CF、−OCF、ハロ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルコキシアルコキシ、アルコキシカルボニルアルコキシ、アルコキシアリールアルコキシ、アルコキシイミノアルキル、アルキルジオイル、アリル、アリルオキシ、アリールオキシカルボニル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アロイル、アロイルオキシ、アリールスルホニル、アロイルアロイルオキシ、アロイル、アリールアルコキシカルボニル、ベンゾイルベンゾイルオキシ、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルコキシ、ヘテロアリールスルホニル、ヘテロアリールチオ、ジオキソラニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニルアルコキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルキルスルホニルおよび環系上の1個の利用可能な水素原子を代替している部分、または、以下に定義するように、環系の隣接する炭素原子上の2個の利用可能な水素を同時に代替している部分を含む環置換基、からなる群より独立して選択される1〜5個の置換基であり;
は、アシル、アルキル、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アルキルスルホニルアルケニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキニル、−(C−C30アルキレン)−G、
−(C−C10アルキレン)−OR、−(C−C10アルキレン)−C(O)R
−(C−C10アルキレン)−C(O)OR、−(C−C10アルキレン)−OC(O)R
−(C−C10アルキレン)−OC(O)OR、−CH=CH−C(O)R、−CH=CH−C(O)OR
−C≡C−C(O)OR、−C≡C−C(O)R、−O−(C−C10アルキレン)−OR
−O−(C−C10アルキレン)−C(O)R、−O−(C−C10アルキレン)−C(O)OR、−CN、
−C(=N−CN)−NH、−C(=NH)−NHR10、−O−(C−C10アルキレン)−C(O)NR
−O−(C−C10アルキレン)−C(O)NRNRC(O)OR
−O−(C−C10アルキレン)−C(O)(アリール)−N−N=N−、
−OC(O)−(C−C10アルキレン)−C(O)OR
−(C−C10アルキレン)−C(O)NR、−(C−C10アルキレン)−OC(O)NR、−NO
−(C−C10アルキレン)−NR、−O−(C−C10アルキレン)−NR、−NRC(O)R
−NRC(O)OR、−NRC(O)NR、−NRS(O)0−2、−N(S(O)0−2
−CHNOR、−C(O)NR、−C(O)NRNR、−S(O)0−2NR、−S(O)0−2、−O−C(O)−(C−C10アルキレン)−C(O)NR
−OC(O)−(C−C10アルキレン)−NRC(O)O−(アルキルアリール)、−P(O)(OR10
−(C−C10アルキレン)−OSi(アルキル)、−CF、−OCF、ハロ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルコキシアルコキシ、アルコキシカルボニルアルコキシ、アルコキシアリールアルコキシ、アルコキシイミノアルキル、アルキルジオイル、アリル、アリルオキシ、アリールオキシカルボニル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アロイル、アロイルオキシ、アリールスルホニル、アロイルアロイルオキシ、アロイル、アリールアルコキシカルボニル、ベンゾイルベンゾイルオキシ、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルコキシ、ヘテロアリールスルホニル、ヘテロアリールチオ、ジオキソラニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニルアルコキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルキルスルホニルおよび環系上の1個の利用可能な水素原子を代替している部分、または、以下に定義するように、環系の隣接する炭素原子上の2個の利用可能な水素を同時に代替している部分を含む環置換基、からなる群より独立して選択される1〜5個の置換基であり;
ここで場合によりQ、Q、Q、QおよびQの−(C−C30アルキレン)−基の一つ以上の炭素原子は、独立して−O−、−C(O)−、−CH=CH−、−C≡C−、−N(アルキル)−、−N(アルキルアリール)−または−NH−によって置き換えられ;
Gは、糖残基、二糖残基、三糖残基、四糖残基、糖酸、アミノ糖、アミノ酸残基、2〜9個のアミノ酸を含むオリゴペプチド残基、トリアルキルアンモニウムアルキル基および−S(O)−OHからなる群より選択され、
およびRは、同一であっても、異なっていてもよく、且つ各々、水素、アルキルおよびアリールからなる群より独立して選択され;
、RおよびRは、同一であっても、異なっていてもよく、且つ各々、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、および保護基からなる群より独立して選択され;ならびに
各Rは、独立してアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアリールアルキルであり、
各R10は、独立してHまたはアルキルであり;
qは0または1であり;
rは0または1であり;
m、nおよびpは、0、1、2、3または4から独立して選択されるが;但し、qおよびrの少なくとも一方が1であり、且つm、n、p、qおよびrの合計が1、2、3、4、5または6であり;そして、pが0でrが1の場合、m、qおよびnの合計が1、2、3、4または5である。
【0020】
上記に使用するように、および本明細書全体を通して、以下の用語は、別に指示しない限り、以下の意味を有するものと理解される:
上記の記述は、例えば、QおよびQは、置換基の群から独立して選択されると記述された場合、QおよびQは、独立して選択されることを意味するが、QまたはQの変数が分子内に1個以上存在し、これらの存在が独立して選択される(例えば、Qが−ORである(ここでRは水素である)場合、Qは−ORであってもよい(ここでRはアルキルである))ことも意味する。当業者は、置換基(一つまたは複数)の大きさおよび性質が、存在し得る置換基の数に影響を及ぼすことを認識するであろう。
【0021】
「場合により置換された」という用語は、特定の基または部分による、場合による置換を意味する。本明細書の本文、スキーム、実施例および表内の満たされていない原子価を有する任意の原子は、水素原子(一つまたは複数)を有して、原子価を満たしていると想定されることに留意すべきである。
【0022】
以下の定義は、別に指示しない限り、用語が単独で、または他の用語との組み合わせの何れで使用されるかに係わらず適用される。従って、「アルキル」の定義は、「アルキル」、および「ヒドロキシアルキル」、「ハロアルキル」、「アルコキシ」等の「アルキル」部分に適用される。
【0023】
本明細書に使用される「アシル」という用語は、H−C(O)−、アルキル−C(O)−またはシクロアルキル−C(O)−基を意味し、ここで様々な基は、前述の通りである。親部分に対する結合はカルボニルを介している。好ましいアシルは、低級アルキルを含む。適切なアシル基の非限定的な例は、ホルミル、アセチルおよびプロパノイルを含む。
【0024】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよく、且つ鎖内に1〜約20個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基を意味する。好ましいアルキル基は、鎖内に1〜約12個の炭素原子を含む。より好ましいアルキル基は、鎖内に1〜約6個の炭素原子を含む。「分岐鎖」は、例えばメチル、エチルまたはプロピル等の低級アルキル基の一つまたはそれ以上が、線状のアルキル鎖に結合していることを意味する。アルキル基は、ハロ、アリール、シクロアルキル、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、−NH(アルキル)、−NH(シクロアルキル)、−N(アルキル)(アルキルは、同一であっても、異なっていてもよい)、カルボキシおよび−C(O)O−アルキルからなる群より独立して選択される一つ以上の置換基で置換されてもよい。適切なアルキル基の非限定的な例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、ヘプチル、ノニル、デシル、フルオロメチル、トリフルオロメチルおよびシクロプロピルメチルを含む。
【0025】
「アルキルアリール」は、アルキル−アリール基を意味し、ここでアルキルおよびアリールは、本明細書に記載した通りである。好ましいアルキルアリールは、低級アルキル基を含む。適切なアルキルアリール基の非限定的な例は、トリルである。親部分に対する結合はアリールを介している。「アルキルヘテロアリール」は、アリール基が本明細書に定義されているヘテロアリール基を含む、アルキルアリール部分を意味する。
【0026】
「アルキルスルホニル」は、アルキル−S(O)−基を意味する。好ましい基は、アルキル基が低級アルキルである基である。親部分に対する結合はスルホニルを介している。
【0027】
「アルキルスルホニル」は、アルキル−S(O)−基を意味する。好ましい基は、アルキル基が低級アルキルである基である。親部分に対する結合はスルホニルを介している。
【0028】
「アリールスルホニル」は、アリール−S(O)−基を意味する。親部分に対する結合はスルホニルを介している。
【0029】
「アルケニル」は、鎖内に、共役していても、または共役していなくてもよい一つ以上の二重結合を含む脂肪族炭化水素基(直鎖または分岐鎖の炭素鎖)を意味する。有用なアルケニル基は、鎖内に2〜約15個の炭素原子、好ましくは鎖内に2〜約12個の炭素原子、より好ましくは鎖内に2〜約6個の炭素原子を含んでいてもよい。アルケニル基は、ハロ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、ヘテロアリールおよびアルコキシからなる群より独立して選択される一つ以上の置換基で置換されてもよい。置換されている場合、アルケニル基は、本明細書で便宜上置換基名を付加して記載されることがあり、例えば、ヘテロアリール基で置換されている場合は、「ヘテロアリールアルケニル」基と記載されてもよい。適切なアルケニル基の非限定的な例は、エテニル、プロペニル、n−ブテニル、3−メチルブテニルおよびn−ペンテニルを含む。
【0030】
アルキルまたはアルケニル鎖が2個の他の変数を連結し、従って二価である場合各々、アルキレンおよびアルケニレンという用語が使用される。
【0031】
「アルコキシ」は、アルキル−O−基を意味し、ここでアルキル基は、前述の通りである。有用なアルコキシ基は、1〜約12個の炭素原子、好ましくは1〜約6個の炭素原子を含んでいてもよい。適切なアルコキシ基の非限定的な例は、メトキシ、エトキシおよびイソプロポキシを含む。アルコキシのアルキル基は、エーテル酸素を介して、隣接する部分に結合している。連続して使用されて、例えば、アルコキシアルコキシは、それ自体が、一つ以上のアルコキシ部分で置換されたアルコキシ部分を意味する。
【0032】
「アルコキシアリールアルコキシ」は、アルキル−O−アリール−アルキレン−O−基を意味し、ここでアルキル、アルキレンおよびアリール基は、前述の通りである。有用なアルコキシアリールアルコキシ基は、7〜約26個の炭素原子、好ましくは7〜約12炭素原子を含んでいてもよい。適切なアルコキシアリールアルコキシ基の非限定的な例は、メトキシベンジルオキシである。アルコキシアリールアルコキシは、エーテル酸素を介して、隣接する部分に結合している。
【0033】
「アルコキシカルボニル」は、アルキル−O−CO−基を意味する。適切なアルコキシカルボニル基の非限定的な例は、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルを含む。親部分に対する結合はカルボニルを介している。
【0034】
「アリールオキシカルボニル」は、アリール−O−C(O)−基を意味する。適切なアリールオキシカルボニル基の非限定的な例は、フェノキシカルボニルおよびナフトキシカルボニルを含む。親部分に対する結合はカルボニルを介している。
【0035】
「アラルコキシカルボニル」は、アラルキル−O−C(O)−基を意味する。適切なアラルコキシカルボニル基の非限定的な例は、ベンジルオキシカルボニルである。親部分に対する結合はカルボニルを介している。便宜上、「アリールアルコキシカルボニル」という用語が、本明細書で代替として使用されることがある。
【0036】
「アルコキシカルボニルアルコキシ」は、アルキル−O−C(O)−アルキレン−O−基を意味し、ここでアルキルおよびアルキレン基は、前述の通りである。有用なアルコキシカルボニルアルコキシ基は、3〜約12個の炭素原子、好ましくは3〜約8個の炭素原子を含んでいてもよい。適切なアルコキシカルボニルアルコキシ基の非限定的な例は、CHCH−O−C(O)−CH−O−である。アルコキシカルボニルアルコキシは、エーテル酸素を介して、隣接する部分と結合している。
【0037】
「アルコキシイミノアルキル」は、アルキル−O−N=CH−アルキレン−基を意味し、ここでアルキルおよびアルキレン基は、前述の通りである。有用なアルコキシイミノアルキル基は、2〜約12個の炭素原子、好ましくは2〜約8個の炭素原子を含んでいてもよい。アルコキシイミノアルキルは、アルキレン基を介して、隣接する部分と結合している。
【0038】
「アルキルジオイル」は、ROC(O)−アルキレン−C(O)−O−基を意味し、ここでRは、アルキルまたはHであり、アルキレン基は、前述の通りである。有用なアルキルジオイル基は、2〜約12個の炭素原子、好ましくは2〜約8個の炭素原子を含んでいてもよい。適切なアルキルジオイル基の非限定的な例は、1,3−プロパンジオールを含む。アルキルジオイルは、エステル酸素を介して、隣接する部分と結合している。
【0039】
「アルキニル」は、少なくとも一つの炭素−炭素三重結合を含み、且つ直鎖である場合もあれば、分岐鎖である場合もあり、鎖内に約2〜約15個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基を意味する。好ましいアルキニル基は、鎖内に約2〜約12個の炭素原子;より好ましくは鎖内に約2〜約4個の炭素原子を有する。分岐鎖は、例えばメチル、エチルまたはプロピル等の低級アルキル基の一つまたはそれ以上が、線状のアルキニル鎖に結合していることを意味する。適切なアルキニル基の非限定的な例は、エチニル、プロピニル、2−ブチニル、3−メチルブチニル、n−ペンチニル、およびデシニルを含む。アルキニル基は、同一であっても、異なっていてもよく、且つ各々がハロ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、ヘテロアリール、およびアルコキシからなる群より独立して選択される、一つ以上の置換基で置換される場合がある。置換されている場合、アルキニル基は、本明細書で便宜上置換基名を付加して記載されることがあり、例えば、ヘテロアリール基で置換された場合は、「ヘテロアリールアルキニル」基と記載されてもよい。
【0040】
「アリル」は、(R)C=CR−C(R)−を意味し、ここでRおよびRは、同一であっても、異なっていてもよく、且つ各々の存在に関して、水素、アルキルおよびアリールからなる群より独立して選択される。
【0041】
「アリルオキシ」は、HC=CH−O−を意味する。アリルオキシは、エーテル酸素を介して、隣接する部分と結合している。
【0042】
「アリール」は、約5〜約14個の炭素原子、好ましくは約6〜約10個の炭素原子を含む芳香族の単環または多環系を意味する。アリール基は、同一である場合もあれば、異なる場合もあり、且つ本明細書に定義される通りとなる一つ以上の「環系置換基」で置換されてもよい。適切なアリール基の非限定的な例は、フェニル、ナフチル、インデニル、テトラヒドロナフチルおよびインダニルを含む。「アリーレン」は、二価フェニル基を意味し、オルト、メタおよびパラ置換を含む。
【0043】
「アラルキル」または「アリールアルキル」は、アリール−アルキレン基を意味し、ここでアリールおよびアルキレンは、前述の通りである。好ましいアラルキルは、低級アルキル基を含む。適切なアラルキル基の非限定的な例は、ベンジル、フェネチルおよびナフタレニルメチルを含む。アラルキルは、アルキレン基を介して、隣接する部分と結合している。
【0044】
「アリールオキシ」は、アリール−O−基を意味し、ここでアリール基は、前述の通りである。適切なアリールオキシ基の非限定的な例は、フェノキシおよびナフトキシを含む。親部分に対する結合はエーテル酸素を介している。
【0045】
「アラルコキシ」または「アリールアルキルオキシ」は、アラルキル−O−基を意味し、ここでアラルキル基は、前述の通りである。適切なアラルコキシ基の非限定的な例は、ベンジルオキシおよび1−または2−ナフタレンメトキシを含む。親部分に対する結合はエーテル酸素を介している。「アラルコキシカルボニル」は、アラルコキシ−C(O)−基を意味し、ここでアラルコキシ基は、前述の通りである。
【0046】
「アロイル」は、アリール−C(O)−基を意味し、ここでアリール基は、前述の通りである。親部分に対する結合はカルボニルを介している。適切な基の非限定的な例は、ベンゾイルならびに1−および2−ナフトイルを含む。
【0047】
「アロイルオキシ」は、アロイル−O−基を意味し、ここでアロイル基は、前述の通りである。親部分に対する結合はエーテル酸素を介している。適切な基の非限定的な例は、ベンゾイルオキシならびに1−および2−ナフトイルオキシを含む。
【0048】
「カルボキシ」は、R”−C(O)O−を意味し、ここでR”は、置換されていても、または置換されていなくてもよい脂肪族または芳香族炭化水素基である。
【0049】
「シクロアルキル」は、約3〜約10個の炭素原子、好ましくは約5〜約10個の炭素原子を含む、非芳香族の単環または多環系を意味する。好ましいシクロアルキル環は、約5〜約7個の環原子を含む。シクロアルキルは、同一である場合もあれば、異なる場合もあり、且つ以下に定義される通りとなる一つ以上の「環系置換基」で置換されてもよい。適切な単環シクロアルキルの非限定的な例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよび同様物を含む。適切な多環シクロアルキルの非限定的な例は、1−デカリニル、ノルボルニル、アダマンチルおよび同様物を含む。「シクロアルキレン」は、対応する二価環を指し、ここで他の基に対する結合地点は、全位置異性体を含む。
【0050】
「シクロアルキルアルキル」は、アルキル部分(上に定義)を介して母体中心に結合した、上に定義したシクロアルキル部分を意味する。適切なシクロアルキルアルキルの非限定的な例は、シクロヘキシルメチル、アダマンチルメチルおよび同様物を含む。
【0051】
「シクロアルケニル」は、少なくとも一つの炭素−炭素二重結合を含む、約3〜約10個の炭素原子、好ましくは約5〜約10個の炭素原子を含む非芳香族の単環または多環系を意味する。好ましいシクロアルケニル環は、約5〜約7個の環原子を含む。シクロアルケニルは、同一である場合もあれば、異なる場合もあり、且つ上に定義される通りとなる一つ以上の「環系置換基」で場合により置換されてもよい。適切な単環シクロアルケニルの非限定的な例は、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプタ−1,3−ジエニル、および同様物を含む。適切な多環シクロアルケニルの非限定的な例は、ノルボルニレニルである。
【0052】
「シクロアルケニルアルキル」は、アルキル部分(上に定義)を介して母体中心に結合した、上に定義したシクロアルケニル部分を意味する。適切なシクロアルケニルアルキルの非限定的な例は、シクロペンテニルメチル、シクロヘキセニルメチルおよび同様物を含む。
【0053】
「ジオキソラニル」は、以下を意味する:
【0054】
【化23】


【0055】
「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素基を指す。好ましくは、フルオロ, クロロまたはブロモであり,より好ましくは、フルオロおよびクロロである。
【0056】
「ヘテロアリール」は、環系の一つ以上の原子が、炭素以外の原子、例えば窒素、酸素または硫黄である、約5〜約14個の環原子、好ましくは約5〜約10個の環原子からなる単環または多環の芳香族環系を意味する。ヘテロ原子(一つまたは複数)は、炭素環構造を中断し、十分数の非局在化pi電子を有して芳香族の特徴を付与するが、但し環は隣接する酸素および/または硫黄原子を含まないことを条件とする。好ましいヘテロアリールは、約5〜約6個の環原子を有する。「ヘテロアリール」は、同一である場合もあれば、異なる場合もあり、且つ本明細書に定義される通りとなる一つ以上の「環系置換基」で場合により置換されてもよい。ヘテロアリールの基幹名の前の接頭辞アザ、オキサまたはチアは各々、少なくとも一つの窒素、酸素または硫黄原子が、環原子として存在することを意味する。ヘテロアリールの窒素原子は、酸化されて対応するN−オキシドを形成してもよい。例えば、2−ピリジル、3−ピリジルおよび4−ピリジル等の全立体異性体が想定される。有用な6員のヘテロアリール基の例は、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニルおよび同様物ならびにそのN−オキシドを含む。有用な5員のヘテロアリール環の例は、フリル、チエニル、ピロリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリルおよびイソオキサゾリルを含む。有用な二環基は、上に挙げたヘテロアリール基から誘導されたベンゾ縮合環系、例えばキノリル、フタラジニル、キナゾリニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニルおよびインドリルである。
【0057】
「ヘテロアリールアルキル」または「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリール−アルキレン基を意味し、ここでヘテロアリールおよびアルキルは、前述の通りである。好ましいヘテロアラルキルは、低級アルキル基を含む。適切なヘテロアラルキル基の非限定的な例は、ピリジルメチル、2−(フラン−3−イル)エチルおよびキノリン−3−イルメチルを含む。親部分に対する結合はアルキレンを介している。同様に、「ヘテロアリールアルケニル」および「ヘテロアリールアルキニル」は各々、アルケニル基およびアルケニニル基を介して親部分に結合した、上に定義したヘテロアリール基を意味する。「ヘテロアリールアルコキシ」は、ヘテロアリール−アルキレン−O−基を意味し、ここでヘテロアリールおよびアルキレンは、前述の通りである。
【0058】
「ヘテロシクリル」は、約3〜約10個の環原子、好ましくは約5〜約10個の環原子を含む非芳香族の飽和単環系または多環系であって、環系内の一つ以上の原子が、単独でまたは組み合わせにおいて、炭素以外の元素、例えば窒素、酸素または硫黄である環系を意味する。環系内に、隣接する酸素および/または硫黄原子は全く存在しない。好ましいヘテロシクリルは、約5〜約6個の環原子を含む。ヘテロシクリルの基幹名の前の接頭辞アザ、オキサまたはチアは各々、環原子として少なくとも一つの窒素、酸素または硫黄原子が存在することを意味する。ヘテロシクリルは、同一である場合もあれば、異なる場合もあり、且つ本明細書に定義される通りとなる一つ以上の「環系置換基」で、場合により置換されてもよい。ヘテロシクリルの窒素または硫黄原子は、場合により、対応するN−オキシド、S−オキシドまたはS,S−ジオキシドに酸化されてもよい。適切な単環のヘテロシクリル環の非限定的な例は、ピペリジル、ピロリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアゾリジニル、1,3−ジオキソラニル、1,4−ジオキソラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、および同様物を含む。
【0059】
「ヘテロシクリルアルキル」は、ヘテロシクリル−アルキレン基を意味し、ここでヘテロシクリル基およびアルキレン基は、前述の通りである。好ましいヘテロシクリルアルキルは、低級アルキレン基を含む。親部分に対する結合はアルキレンを介している。「ヘテロシクリルカルボニル」は、ヘテロシクリル−C(O)−基を意味し、ここでヘテロシクリルは、前述の通りである。
【0060】
好ましいヘテロシクリルカルボニルは、低級アルキル基を含む。親部分に対する結合はカルボニルを介している。「ヘテロシクリルカルボニルアルコキシ」は、ヘテロシクリル−C(O)−アルコキシ−基を意味し、ここでヘテロシクリルおよびアルコキシは、前述の通りである。
【0061】
「ヒドロキシアルキル」は、HO−アルキル−基を意味し、ここでアルキルは、以前に定義した通りである。好ましいヒドロキシアルキルは、低級アルキルを含む。適切なヒドロキシアルキル基の非限定的な例は、ヒドロキシメチルおよび2−ヒドロキシエチルを含む。
【0062】
「環系置換基」は、芳香族または非芳香族の環系に結合した置換基を意味し、同置換基は、例えば、環系上の利用可能な水素を代替している。環系置換基は、同一である場合もあれば、異なる場合もあり、各々、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルキルアリール、アラルケニル、ヘテロアラルキル、ヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロアリール、ヘテロアラルケニル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、アシル、アロイル、ハロ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオ、ヘテロアラルキルチオ、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクレニル、−C(=N−CN)−NH、−C(=NH)−NH、−C(=NH)−NH(アルキル)、YN−、YN−アルキル−、YNC(O)−YNSO−および−SONYからなる群より独立して選択され、ここでYおよびYは、同一である場合もあれば、異なる場合もあり、且つ独立して水素、アルキル、アリール、およびシクロアルキル、およびアラルキルからなる群より選択される。「環系置換基」は、環系上の隣接する炭素原子上の2個の利用可能な水素(各炭素上に1個のH)を同時に代替する一つの部分も意味する場合がある。そのような部分の例は、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、−C(CH−および同様物であり、これらは、例えば以下のような部分を形成する:
【0063】
【化24】


【0064】
「糖残基」は、3〜7個の炭素原子を有し、且つD体またはL体に属する場合があるアルドースまたはケトースから誘導された部分を意味する。糖残基を形成することができる適切なアルドースの非限定的な例は、グルコース、マンノース、ガラクトース、リボース、エリトロースおよびグリセルアルデヒドを含む。糖残基を形成することができる適切なケトースの非限定的な例は、フルクトースである。
【0065】
「二糖残基」は、2個の単糖分子に加水分解することができる糖から誘導された部分を意味する。二糖残基を形成することができる適切な化合物の非限定的な例は、マルトース、ラクトース、セロビオースおよびスクロースを含む。
【0066】
糖残基および二糖残基の例は、上に詳細に列挙した部分Gを含む。
【0067】
二、三または四糖は、2個またはそれ以上の糖のアセタール様の結合により形成される。結合はαまたはβ型となる場合がある。「三糖残基」は、3個の単糖分子に加水分解することができる糖から誘導された部分を意味する。「四糖残基」は、4個の単糖分子に加水分解することができる糖から誘導された部分を意味する。
【0068】
糖が置換されている場合、好ましくは糖のOH基の水素原子にて置換されている。
【0069】
「糖酸」は、グルクロン酸、ガラクツロン酸、グルコン酸、ガラクトン酸、マンノン酸、グルカル酸およびガラクタル酸から形成できるような糖残基を意味する。
【0070】
「アミノ糖」は、例えばグルコサミン、ガラクトサミン、グルカミンまたは3−アミノ−1,2−プロパンジオールから形成できるようなアミノ置換糖残基を意味する。
【0071】
糖のヒドロキシル基の適切な保護基は、ベンジル、アセチル、ベンゾイル、ピバロイル、トリチル、tert−ブチルジメチルシリル、ベンジリデン、シクロヘキシリデンまたはイソプロピリデン保護基を含む。
【0072】
「アミノ酸残基」は、アミノ酸から誘導される部分を意味する。アミノ酸部分は、DまたはL型のアミノ酸から調製することができる。アミノ酸残基を調製できる適切なアミノ酸の非限定的な例は、アラニン、アルギニン、アルパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、ヒドロキシリシン、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、2−アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、β−アラニン、2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、ピペリジンカルボン酸、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2−(2−チエニル)グリシン、ペニシラミン、N−エチルアスパラギン、2−アミノイソ酪酸、2−アミノイソ酪酸、2−アミノピメリン酸、2,4−ジアミノ酪酸、デスモシン、2,2−ジアミノピメリン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸、N−エチルグリシン、3−(2−チエニル)アラニン、サルコシン、N−メチルイソロイシン、6−N−メチルリシン、N−メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチンおよびN−メチルグリシンを含む。
【0073】
「オリゴペプチド残基」は、上で言及した2〜9個のアミノ酸から構成されているペプチド残基を意味する。
【0074】
「トリアルキルアンモニウムアルキル基」は、以下の基を意味する:
【0075】
【化25】

(式中、n1は、0〜10であり、Alk、AlkおよびAlkは、同一である場合もあれば、異なる場合もあり、且つ各々、1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基である)。
【0076】
本発明の方法に従って調製されるアゼチジノンまたはβ−ラクタム化合物は、少なくとも一つの不斉炭素原子を有する。従って、本発明の方法は、構造式(I)の化合物のエナチオマー、立体異性体、回転異性体、互変異性体、およびラセミ体(それらが存在する場合)を含む、全異性体の調製に有用であり、又、それらは本発明のプロセスにより形成される生成物の範囲内に含まれると想定される。従って、本発明は、純粋な形態、および、ラセミ混合物を含む混合物の両方におけるdおよびl異性体の製剤を含む。本発明の方法を活用して、異性体は、光学的に純粋なもしくは光学的に富んだ出発物質を反応させるか、または構造式(I)の化合物の異性体を分離するかの何れかにより、従来の技法を使用して調製することができる。本明細書で用語が使用されるように、異性体は、例えば、二重結合が存在する場合、幾何異性体も含む場合がある。又、構造式(I)の化合物の多形の形態の調製は、結晶質または非晶質の何れであっても、本発明の一部として想定される。
【0077】
本発明の方法に従って調製される、アミノ基を有するアゼチジノンまたはβ−ラクタム化合物は、有機酸および無機酸と共に薬学的に許容される塩を形成することができる。塩形成のための適切な酸の例は、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、サリチル酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、アスコルビン酸、マレイン酸、メタンスルホン酸および当該技術分野で既知の他の無機酸およびカルボン酸である。塩は、遊離塩基形態を、十分な量の所望の酸と接触させて、塩を生成することにより調製される。遊離塩基形態は、例えば希釈重炭酸ナトリウム水溶液等の適切な希釈塩基水溶液で塩を処理することにより再生される場合がある。遊離塩基形態は、例えば極性溶媒中の溶解度等、所定の物理的性質において、その各塩形態とは幾分異なるが、塩は、本発明の目的に関しては、その他の点でその各々の遊離塩基形態と等価である。
【0078】
本発明の方法に従って調製される所定のアゼチジノンまたはβ−ラクタム化合物は、酸性である(例えば、カルボキシル基を所有する化合物)。これらの化合物は、無機塩基および有機塩基と共に、薬学的に許容される塩を形成する。そのような塩の例は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、金および銀塩である。従って、本発明の方法は、例えばアンモニア、アルキルアミン、ヒドロキシアルキルアミン、N−メチルグルカミンおよび同様物等の薬学的に許容されるアミンと共に塩が形成されるという条件の下で、有用である。
【0079】
本発明に従って調製される、カルボン酸基を有するアゼチジノンまたはβ−ラクタム化合物は、アルコールと共に薬学的に許容されるエステルを形成することができる。適切なアルコールの例は、メタノールおよびエタノールを含む。本発明の方法は、そのような化合物の条件の下でも有用である。
【0080】
本発明のプロセスを使用して調製することができるアゼチジノンの非限定的な例は、各々参考として本明細書に組み入れられる米国特許第RE37,721号、米国特許第5,624,920号、米国特許第5,656,624号、米国特許第5,627,176号、米国特許第5,633,246号、米国特許第5,661,145号、米国特許第5,688,785号、米国特許第5,688,787号、米国特許第5,688,990号、米国特許第5,744,467号、米国特許第5,756,470号、米国特許第5,767,115号、米国特許第5,846,966号に開示されている。
【0081】
好ましくは、本発明のプロセスは、以下の構造式(IV)で表されるアゼチジノン(エゼチミブ)の調製に使用することができる:
【0082】
【化26】


【0083】
エゼチミブは、米国において、ZETIA(登録商標)処方物中に、およびMSP Pharmaceuticals, Inc.製のVYTORIN(登録商標)処方物中にシンバスタチンと組み合わされて、商業的に入手可能である。
【0084】
一実施形態において、本発明は、アゼチジノンを調製するプロセスを提供し、該プロセスは、(1)β−(置換アミノ)アミド、β−(置換アミノ)酸エステル、またはβ−(置換アミノ)チオール炭酸エステルを、(2)以下に詳細に記載する少なくとも一種のシリル化剤および(3)少なくとも一種の環化剤と反応させることを包含する。
【0085】
本明細書に使用されるβ−(置換アミノ)アミド、β−(置換アミノ)酸エステル、およびβ−(置換アミノ)チオール炭酸エステルという用語は、β−アミノアミド、β−アミノ酸エステル、およびβ−アミノチオール−炭酸エステルを指し、これらは、第二級アミン、即ち、窒素がβ−炭素、水素分子、および非水素置換基に結合している化合物である。
【0086】
出発物質β−(置換アミノ)アミド、β−(置換アミノ)酸エステル、およびβ−(置換アミノ)チオール炭酸エステルは公知であり、または公知の方法を使用して当業者が調製することができる。例えば、構造式IIのβ−アミノアミド化合物の調製に適切な方法は、参考として本明細書に組み入れられるWO93/02048号に開示されている。
【0087】
当業者は、所望のように環化を進行させるためには、β−(置換アミノ)アミド、β−(置換アミノ)酸エステル、またはβ−(置換アミノ)チオール炭酸エステル出発物質上に存在する−NH、−SHおよび−OH置換基を、優位に、または分子の置換アミノ部分のシリル化に加えて、シリル化されない基に変換する必要があることを認識するであろう。当該技術分野で既知の適切な保護基には、−NHの場合:t−ブチルジメチルシリル、ベンジル、ベンゾイルおよびt−ブトキシ−カルボニルが;−SHの場合:トリフェニルメチル;ならびに−OHの場合:低級アルコキシ、例えばメトキシ、ベンジルオキシおよびt−ブチルジメチルシリルが含まれる。
【0088】
一実施形態において、β−(置換アミノ)アミドは、カルバモイル部分B−C(O)−を含み−、ここでBは、以下からなる群より選択される脱プロトン化キラル補助剤である:
【0089】
【化27】

(式中、Xは、−O−、−S−または−N(アルキル)−であり;Yは、=Oまたは=Sであり;R12およびR13は各々、アルキル、アリールおよびアルコキシカルボニルからなる群より独立して選択されるか、またはR12もしくはR13の一方は、上に定義した通りであり、且つ他方は水素である)。好ましくは、XおよびYは各々酸素であり、R12は水素であり、R13は、フェニル、ベンジルまたはイソプロピルである。
【0090】
12またはR13のアリール基は、フェニル、ナフチル、ベンジル、置換フェニル、置換ナフチルおよび置換ベンジルからなる群より独立して選択されてもよく、ここでフェニル、ナフチルまたはベンジル上の置換基は、アルキル、アルコキシ、フェニルおよびベンジルからなる群より選択される1〜3個の置換基である。
【0091】
別の実施形態において、β−(置換アミノ)アミドは、カルバモイル部分B−C(O)−を含み、ここでBは、(R14)(R15)N−であり、R14およびR15は各々、アルキル、アリール、アリールアルキルからなる群より独立して選択される。
【0092】
好ましくは、β−(置換アミノ)アミドは、以下の構造式(II)で表される:
【0093】
【化28】

(式中、B、R、R、R、R、R、R、R10、Q、Q、Q、Q、Q、X’、Y’、Z、m、n、p、q、rは、上に定義した通りである)。
【0094】
より好ましくは、Qは、H、3−フルオロ−、および4−フルオロ−からなる群より選択され、Qは、H、4−メチル−、2−フルオロ−、および4−フルオロ−からなる群より選択される。
【0095】
最も好ましくは、β−(置換アミノ)アミドは、以下の構造式(III)で表される:
【0096】
【化29】


【0097】
本発明のプロセスの別の実施形態において、β−(置換アミノ)酸エステルは、反応物として使用することができる。好ましくは、β−(置換アミノ)酸エステルはカルボン酸エステル部分R14−O−C(O)−を含み、ここでR14は、アルキルまたはアリールである。
【0098】
本発明のプロセスの別の実施形態において、β−(置換アミノ)チオール炭酸エステルは、反応物として使用することができる。好ましくは、β−(置換アミノ)チオール炭酸エステルは、チオール炭酸エステル部分R14−S−C(O)−を含み、ここでR14は、アルキルまたはアリールである。
【0099】
上述の通り、本プロセスは、(1)β−(置換アミノ)アミド、β−(置換アミノ)酸エステル、またはβ−(置換アミノ)チオール炭酸エステルを、以下に記載する(2)一種以上のシリル化剤および(3)一種以上の環化剤と反応させることを含む。
【0100】
好ましくは、シリル化剤は、シリルエノールエーテルである。適切なシリルエノールエーテルの非限定的な例は、ビストリメチルシリルアセトアミド、N−メチル−O−トリメチルシリルアセトアミドまたはイソプロペニルオキシトリメチルシランを含む。シリル化剤は、化学量論的な量まで、または過剰に添加することができる。
【0101】
本発明のプロセスにおいて、適切な環化剤(一種または複数種)は:(a)カルボン酸アルカリ金属塩、第四級アンモニウムカルボキシレート、水酸化第四級アンモニウム、第四級アンモニウムアルコキシド、第四級アンモニウムアリールオキシドおよびその水和からなる群より選択されるか、または(b)
(i)少なくとも一種のハロゲン化第四級アンモニウムと、少なくとも一種のカルボン酸アルカリ金属塩;もしくは
(ii)少なくとも一種の塩化第四級アンモニウム、臭化第四級アンモニウム、もしくはヨウ化第四級アンモニウムと、少なくとも一種のフッ化アルカリ金属、との反応生成物であり、
該環化剤の第四級アンモニウム部分は、未置換(即ち、第四級アンモニウム)であるか、またはアルキル、アリールアルキルおよびアリールアルキル−アルキルからなる群より独立して選択される1〜4個の基で置換されている。
【0102】
適切な第四級アンモニウム部分の非限定的な例は、1〜6個の炭素原子からなるアルキル基を含むアルキルアンモニウム基、例えばテトラn−ブチルアンモニウムを含む。適切なアリールアルキル−アルキルアンモニウム基の例は、ベンジルトリエチル−アンモニウムおよびベンジル−トリメチルアンモニウムを含み、アリール−アルキル−アンモニウムの例は、フェニルトリエチルアンモニウムおよびフェニルトリメチル−アンモニウムを含む。
【0103】
カルボン酸アルカリ金属塩は、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびセシウムからなる群より選択されるアルカリ金属、好ましくはカリウムのカルボン酸塩であってもよい。
【0104】
一実施形態において、カルボン酸アルカリ金属塩または第四級アンモニウムカルボキシレートは、ホルメート、アセテート、プロピオネート、ブチレート、バレレート、カプロエート、カプリレート、ラウレート、ミリステート、パルミテート、ステアレート、オレエート、リノレエート、リノレネート、シクロヘキサンカルボキシレート、フェニルアセテート、ベンゾエートおよびトルエートからなる群より選択されるカルボキシレート部分、好ましくはアセテートを含む。
【0105】
別の好ましい実施形態において、第四級アンモニウムカルボキシレートは、テトラn−ブチルアンモニウムアセテートである。別の好ましい実施形態において、シリル化剤は、ビストリメチルシリルアセトアミドであり、環化剤は、テトラn−ブチルアンモニウムアセテートである。
【0106】
さらに別の好ましい実施形態において、水酸化第四級アンモニウムは、水酸化テトラn−ブチルアンモニウムである。
【0107】
上で考察した通り、環化剤は、(i)少なくとも一種のハロゲン化第四級アンモニウムと、触媒量〜化学量論的に過剰な量の少なくとも一種のカルボン酸アルカリ金属塩、との反応生成物であってもよい。適切な第四級アンモニウム部分については、上で考察されている。ハロゲン化第四級アンモニウムは、フッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物からなる群、好ましくはフッ化物より選択されるハロゲン化物を含んでいてもよい。好ましい実施形態において、カルボン酸アルカリ金属塩は、酢酸カリウムである。
【0108】
別の実施形態において、環化剤は、(ii)少なくとも一種の塩化第四級アンモニウム、臭化第四級アンモニウム、またはヨウ化第四級アンモニウムと、触媒量〜化学量論的に過剰な量の少なくとも一種のフッ化アルカリ金属、との反応生成物であってもよい。好ましい実施形態において、環化剤は、臭化テトラn−ブチルアンモニウムと酢酸カリウムとの反応生成物である。別の好ましい実施形態において、環化剤は、臭化テトラn−ブチルアンモニウムとフッ化セシウムとの反応生成物である。
【0109】
反応生成物(3)(b)は、反応物(1)および(2)の存在下においてインサイチュで形成することもできれば、または反応物(1)と(2)の反応の前に形成することもできる。反応生成物(3)(b)をインサイチュで形成することの利点には、無水反応物が取り扱いやすく、反応物から環化剤をより安価で調製できる場合があるということが挙げられる。
【0110】
水酸化第四級アンモニウム環化剤を使用する場合、該試薬は、触媒量、即ち、約1〜約20モルパーセント、好ましくは約5モルパーセントにて添加し、無水第四級アンモニウム環化剤を使用する場合、該試薬は触媒量から化学量論的な量まで添加することができる。カルボン酸アルカリ金属塩を使用する場合、該試薬は、出発物質β−アミノ化合物と比べて、触媒量から化学量論的な量まで添加する。シリル化剤の後に反応混合物に添加する場合、フッ素化物試薬は、シリル化から得られた反応混合物に直接添加して、約0℃〜110℃、好ましくは約20℃〜60℃で約0.5〜約6時間、好ましくは約1時間反応させる。
【0111】
代表的な実施形態において、一種以上のフッ化物イオン触媒環化剤を、上述の環化剤と組み合わせて使用することができる。適切なフッ化物イオン媒環化剤の非限定的な例は、フッ化第四級アルキル−、フッ化アリール−アルキル−もしくはフッ化アリールアルキル−アルキルアンモニウム塩、もしくはその水和物、もしくはそれら混合物を含み、ここでアルキル−、アリール−アルキル−もしくはアリールアルキル−アルキルアンモニウムは、上に定義した通りであり、または例えばフッ化セシウムもしくはフッ化カリウム等のフッ化アルカリ金属塩もしくはその水和物である。フッ化物イオン触媒環化剤を使用する場合、該薬剤は、所望に応じて、上述の環化剤を、1:1モルベースで代替するに十分な量で添加する。シリル化剤の後に反応混合物に添加する場合、フッ化物試薬は、シリル化から得られた反応混合物に直接添加して、約0℃〜110℃、好ましくは約20℃〜60℃で約0.5〜約6時間、好ましくは約1時間反応させる。シリル化試薬、環化剤およびフッ化物試薬を同時に添加する場合、反応は、同様の条件下で実施される。
【0112】
この工程の成分の添加順序は、アゼチジノン生成物の調製に重要なことではない。例えば、出発物質β−(置換アミノ)アミド、β−(置換アミノ)酸エステル、またはβ−(置換アミノ)チオール炭酸エステルは、最初にシリル化剤と反応させた後、環化剤と反応させてもよく、または出発化合物を、シリル化剤と環化剤の混合物に添加してもよい。
【0113】
シリル化は、例えばビストリメチルシリルアセトアミド(BSA)、N−メチル−O−トリメチルシリルアセトアミドまたはイソ−プロペニルオキシトリメチルシラン等のシリル−エノールエーテルシリル化剤、好ましくはBSAと出発物質とを、適切な不活性有機溶媒中にて0℃〜110℃、好ましくは約20℃〜90℃、さらにより好ましくは周囲温度(例えば、約25℃)で反応させることにより達成される。反応は、好ましくは乾燥した、不活性雰囲気中で実施され、例えば溶媒を一般にモレキュラーシーブを使用して乾燥させ、反応を窒素下で実施する。シリル化および環化が連続して行われる場合、即ち、最初にシリル化剤が出発物質と反応する場合、シリル化反応は、約2時間まで継続することができるが、好ましくはシリル化の直後に環化工程を実施するか、またはシリル化剤と環化剤を同時に添加する。
【0114】
本発明の別の態様は、構造式(I)で表されるアゼチジノン、または構造式(I)のアゼチジノンの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を調製するプロセスである:
【0115】
【化30】

上記の構造式(I)中、R、R、R、R、R、R、R10、Q、Q、Q、Q、Q、X’、Y’、Z、m、n、p、q、rは、上述の通りであり、
該プロセスは、
(a)構造式(II):
【0116】
【化31】

(式中、R、R、Q、Q、Q、Q、Q、X’、Y’、Z、m、n、p、q、rは、上述の通りであり、Bは、
【0117】
【化32】

(式中、Xは、−O−、−S−または−N(C−Cアルキル)−であり;Yは、=Oまたは=Sであり;R12およびR13は、各々アルキル、アリールおよびアルコキシカルボニルからなる群より独立して選択されるか、またはR12もしくはR13の一方は上に定義した通りであり、他方は水素である)からなる群より選択される脱プロトン化キラル補助剤、またはBは、(R14)(R15)N−であり、ここでR14およびR15は、各々アルキルおよびアリールからなる群より独立して選択される)である)の化合物を;
上述の(b)少なくとも一種のシリル化剤、および(c)少なくとも一種の環化剤と反応させる工程を包含する。
【0118】
好ましい実施形態において、上述のプロセスは、構造式(IV):
【0119】
【化33】

で表されるアゼチジノンの調製に使用され、該プロセスは、
上記の構造式(III)のβ−(置換アミノ)アミドを、上述の(b)少なくとも一種のシリル化剤、および(c)少なくとも一種の環化剤と反応させることを包含する。
【0120】
本発明の別の態様は、上記の構造式(IV)で表される化合物を調製するプロセスであり、該プロセスは:
(a)構造式Vのp−フルオロベンゾイル酪酸を、塩化ピバロイルと反応させ、生成物を構造式VIのキラル補助剤でアシル化して、構造式VIIのケトンを得る工程:
【0121】
【化34】

(式中、Xは、−O−、−S−または−N(C−Cアルキル)であり;Yは、=Oまたは=Sであり;Rは、アルキル、アリールまたはアルコキシカルボニルである);
(b)構造式VIIのケトンを、キラル触媒の存在下で還元して、構造式VIIIのアルコールを得る工程:
【0122】
【化35】

(c)構造式VIIIのキラルアルコールを、構造式IXのイミンおよびシリル保護剤と反応させた後、シリル保護化合物を縮合させて、構造式XIIのβ−(置換アミノ)アミドを得る工程:
【0123】
【化36】

(式中、Protは、シリル保護基である);
(d)構造式XIIのβ−(置換アミノ)アミドを、上述のシリル化剤および環化剤で環化して、構造式XIの化合物を得る工程:
【0124】
【化37】

(e)シリル保護基を除去する工程を包含する。
【0125】
別の実施形態において、本発明は、上記の構造式(IV)で表される化合物を調製するプロセスを提供し、該プロセスは、構造式VIIIのキラルアルコールを、構造式IXのイミンおよびシリル保護剤と反応させた後、シリル保護化合物を縮合させて、構造式XIIのβ−(置換アミノ)アミドを得る工程(式中、Xは、−O−、−S−または−N(C−Cアルキル)であり;Yは、=Oまたは=Sであり;Rは、アルキル、アリールまたはアルコキシカルボニルであり、Protは、シリル保護基である):
【0126】
【化38】

構造式XIIのβ−(置換アミノ)アミドを、上述のシリル化剤および環化剤で環化して、構造式XIの化合物を得る工程:
【0127】
【化39】

シリル保護基を除去する工程を包含する。
【0128】
本発明の別の態様は、構造式(IV):
【0129】
【化40】

で表される化合物を調製するプロセスであり、
構造式XII:
【0130】
【化41】

のβ−(置換アミノ)アミドを、
上述のシリル化剤および環化剤で環化して、構造式XI:
【0131】
【化42】

の化合物を得る工程;ならびに
シリル保護基を除去する工程を包含する。
【0132】
好ましい反応条件を、以下のスキームに示す:
【0133】
【化43】

上記の反応スキームにおいて、TEAはトリエチルアミンであり、DMAPは4−ジメチル−アミノピリジンであり、DIPEAはジイソプロピルエチルアミンであり、BSAはビストリメチルシリルアセトアミドであり、TBAOAcはテトラn−ブチル−アンモニウムアセテートであり、t−BuOMeはt−ブチルメチルエーテルであり、Protは、上に定義したシリル保護基である。
【0134】
構造式Vおよび構造式VIの出発物質は、当該技術分野で既知であり、構造式Vの化合物と構造式VIの化合物とを反応させる(a)の工程は、当該技術分野で既知である。好ましくは、構造式VIのキラル補助剤は、以下の構造式により例示される:
【0135】
【化44】

(式中、Yは、=Oであり、Xは、−O−であり、Rは、フェニル、ベンジルまたはC−Cアルキルである)。好ましいキラル補助剤は、以下である:
【0136】
【化45】

。一般的な反応条件については、以下の例を参照されたい。
【0137】
同様に、例えば(R)−テトラヒドロ−1−メチル−3,3−ジフェニル−1H,3H−ピロロ(1,2−c)(1,3,2)オキサザ−ボロリジン等のキラル触媒の存在下、例えばBH・S(CH等のボラン還元剤を使用して、ケトンをヒドロキシ基に還元する(b)の工程も既知である:各々参考として本明細書に組み入れられる米国特許第RE37,721号、米国特許第6,207,822号および米国特許第6,627,757号を参照されたい。
【0138】
工程(c)において、キラルアルコール、VIII、およびイミン、IXを、適切なヒドロキシ保護基、好ましくは、例えばクロロトリメチルシラン(TMSCl)またはt−ブチルジメチル−シリルクロリド(TBDMSCI)から誘導したシリル保護基を使用して保護する。アルコール(1等量)およびイミン(好ましくは1〜3等量)を、例えばCHCl等の無水溶媒に添加し、反応混合物を−10℃〜15℃に冷却し、例えばDIPEA等の第三級アミン塩基(好ましくは2〜4等量)、および十分なシリル化試薬を添加して、両方のアルコールと反応させ、イミンを添加する(例えば、2〜4等量)。シリル化が完了した後、アルコールおよびイミンを、例えばDIPEA等の第三級アミン塩基(好ましくは1〜3等量)の存在下、少なくとも1等量の例えばTiCl等のLewis酸と−20℃〜−35℃で2〜4時間反応させることにより縮合させる。反応を、例えば氷酢酸のような酸で処理してクエンチし、その後、酒石酸水溶液で処理し;得られた生成物を、従来の手順を使用して抽出し、結晶化させる。
【0139】
本発明のプロセスから得られたアゼチジノンは、例えばカラムクロマトグラフィーまたは結晶化等の適切な標準的手順により精製することができる。
【0140】
上で使用した「適切な不活性有機溶媒」という用語は、実施している反応において非反応性であり、反応物にための溶媒である任意の有機溶媒、または溶媒の組み合わせを意味する。一般的な適切な溶媒は、例えばジクロロメタン等のハロゲン化化合物;例えばテトラヒドロフラン(THF)等の複素環化合物;DMSO;ジメチル−ホルムアミド(DMF);アセトニトリル;および例えばトルエン等の炭素環式芳香族である。好ましい溶媒は、トルエン、THFおよびジクロロメタンである。
【0141】
以下の実施例に、本発明のプロセスを説明する。実施例は、C−3、C−4二置換化合物に関し、又、以下の実施例に示される様々な構造式に、反応物および中間体の立体化学が指示されるが、本発明のプロセスは、立体化学にかかわらずアゼチジノンに有効であり、生成物の所望の立体配置をもたらす、所望のラセミ構造または立体化学的構造を有する反応物の選択、および反応条件の選択のみが関与することを理解するべきである。
【実施例】
【0142】
本発明のプロセスに有用な出発物質は、以下の手順で製造することができる:
4−(4−フルオロベンゾイル)酪酸の調製:
【0143】
【化46】

250gの無水AlCl(1.87モル)を、2Lの3頸丸底フラスコに入れ、300mLのフルオロベンゼン(307.5g;3.2モル)を添加して、混合物を氷浴内で5℃に冷却した。付加漏斗を介して、100gのグルタル酸無水物(0.86モル)の、400mLのフルオロベンゼン(4.3モル)の霞んだ縣濁液を45分かけて添加し、温度を12℃未満に維持した。反応混合物を徐々に周囲温度に暖め、室温で約90分間撹拌し;NMRにより完了を検査した。反応混合物を0〜5℃に冷却した後、該混合物に1N
HClの冷水溶液(700mL)を注意深く添加して、任意の未反応AlClを壊した。酸添加の早期の間は混合物の温度を20℃未満に維持し、それ以外の時間は40℃未満に維持した。全混合物を2Lの水および氷の1:1混合物(v/w)に注いで、粗生成物を沈殿させ、白色縣濁液を濾過して、水でよく洗浄した。白色残留物を3LのNaHCO飽和水溶液(〜5%)に添加し、塩基性混合物を蒸気浴上で1時間加熱し、バッチを熱いうちにセライトの薄いパッドで濾過した。濾液を室温に冷却し、約320mLの濃HClを一滴ずつ濾液に添加してpH 1として生成物を結晶化させ、白色縣濁液を氷浴内で30分間撹拌した。バッチを濾過し、湿潤ケーキを氷冷水で洗浄し、真空炉内にて50℃で16時間乾燥させて、143.2gの4−(4−フルオロベンゾイル)酪酸を得た;融点141〜142℃、単離収率:79.3%。
【0144】
イミンの調製:
【0145】
【化47】

3首の1Lフラスコに、機械的スターラー、温度計および付加漏斗を装着した。480mLのイソプロパノール、144g(1.18モル)のp−ヒドロキシベンズアルデヒドを添加し(吸熱)、混合物を50℃の温度に加熱しながら撹拌した。混合物を50℃で15分間撹拌し(全材料が溶液中に存在することを確実にし)、次いで付加漏斗を介して114mL(1.2モル)のp−フルオロアニリンをゆっくり添加した(発熱反応)。添加が完了した後、高粘度のスラリーを50℃で1時間撹拌し、室温に冷却し、30分間撹拌した。生成物を濾過し、ケーキを150mLのイソプロパノールで洗浄し、湿潤ケーキを排気炉内にて50℃で24時間、または乾き切るまで乾燥させて、222gのイミン(88%)を得た;融点:180〜182℃。
【0146】
プロセス例:
工程(a):
【0147】
【化48】

3首の500mL丸底フラスコに、温度計、付加漏斗および窒素吸気口を装着した。p−フルオロ−ベンゾイル酪酸(20g、95.15mmol)、CHCl(100mL)およびTEA(23mL、165mmol)を添加して、混合物を室温で5分間撹拌した。塩化トリメチルアセチル(11.3mL、91.75mmol)を30分間かけてゆっくり添加した。混合無水物の形成の完了を、NMRで検査した。
【0148】
構造式VIの化合物(10g、61.3mmol)、DMAP(1.6g、13mmol)および乾燥DMF(10mL)を添加し、混合物を約7時間、またはNMRにより反応が完了するまで(<3%化合物III)加熱還流した。室温に冷却し、2N HSO(80mL)を収容するフラスコに撹拌しながらバッチをゆっくり移動して、撹拌を約30分間継続した。層を分離し、有機層を5%NaHCO(80mL)で洗浄した。
【0149】
有機層を濃縮し、生成物をイソプロピルアルコール(100mL)から結晶化させ、濾過し、乾燥させた。収率:20g(92%モル);融点:92〜94℃。
【0150】
工程(b):
【0151】
【化49】

3首の250mL丸底フラスコに、温度計、付加漏斗および窒素吸気口を装着した。乾燥CHCl(20mL)、ニートのボランジメチルスルフィド(2.82mL、28.2mmol)を添加し、混合物を−5℃〜0℃に冷却した。以前調製した(R)−テトラヒドロ−1−メチル−3,3−ジフェニル−1H,3H−ピロロ(1,2−c)(1,3,2)オキサザ−ボロリジン(1.4mL、1.4mmol、5モル%)のトルエン溶液を混合物に添加し、<0℃で15分間撹拌した。化合物VII(10g、28.1mmol)のCHCl(30mL)溶液を3〜4時間かけてゆっくり添加し、反応温度を−5°〜0℃間に維持した。撹拌を1〜2時間、またはNMRにより反応が完了するまで(<0.1%化合物VII)継続した。温度を<0°Cに維持しながら、CHOH(4mL)をゆっくり添加して、反応をクエンチした。5%過酸化水素(20mL)を添加した後、4N HSO(1.5mL)を添加した。混合物を15分間撹拌し、有機層を分離し、2N HSO(20mL)、5%NaSO(50mL)および10%NaCl(50mL)で洗浄した。水の含有量が<0.05%となるまで、有機層を低容積に濃縮した。生成物を次の工程に直接使用した。溶液収率:>95%;光学収率:98%。
【0152】
工程(c):
【0153】
【化50】

3首の500mL丸底フラスコに、温度計、付加漏斗および窒素吸気口を装着した。工程(b)からの化合物VIIIのCHCl溶液(10g等量の化合物VIII、28.1mmol)および化合物IX(12.05g)を添加し、乾燥CHClを使用して反応混合物の総容積を150mLに調整した。混合物を−10℃に冷却し、DIPEA(25.7mL、147.5mmol)をゆっくり添加し、温度を<−5℃に維持した。反応温度を<−5℃に維持しながら、TMSCl(13.5mL、92.3mmol)を30分間かけて添加した。反応物を1時間、またはNMRによりシリル化が完了したことが判定されるまで撹拌した。反応温度を−25〜−30℃に低下させた。TiCl(3.4mL、30.8mmol)をゆっくり添加し、温度を<−25℃に維持した。反応物を<−25℃で3時間撹拌し、NMRにより反応の完了を検査した。反応温度を−25〜−30℃に維持しながら、氷酢酸(8mL)を反応混合物にゆっくり添加した。反応混合物を7%酒石酸水溶液(140mL)中に0℃で注ぎ、1〜2時間撹拌し、温度を徐々に室温まで上昇させた。20%NaHSO水溶液(50mL)を添加し、撹拌をさらに2時間継続した。有機層を分離し、水(120mL)で洗浄した。有機層を低容積に濃縮して、ビストリメチルシリルアセトアミド(8.4mL)を添加し、混合物を、30分間加熱還流した。混合物を濃縮してCHClを除去し、酢酸エチルとヘプタンの混合物から生成物を結晶化させ、濾過し、洗浄し、乾燥させて、13g(化合物VIIIから65%モル収率)の化合物IIIを得た。H NMR(CDCl、400MHz)δ7.18(7Hm)、7.06(2H、t、J=7.6Hz)、6.98(2H、t、J=8.66Hz)、6.77(4H、m)、6.43(2H、dd、J=8.84、4.4Hz)、5.43(1H、dd、J=8.13、2.21Hz)、4.47(1H、t、J=8.57Hz)、4.46(2H、m)、4.29(1H、d、J=9.51Hz)、4.21(1H、dd、J=8.71、2.91Hz)、1.55(3H、m)、1.41(1H、m)、0.28(9H、s)、−0.07(9H、s)。
【0154】
工程(d):
実施例1:
酢酸テトラブチルアンモニウムによる化合物IIIの分子内環化:
【0155】
【化51】

1首の50mL丸底フラスコに、マグネットスターラーおよび栓を装着した。化合物III(1.0g、1.4mmol)、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(1.0mL)、テトラブチルアンモニウムアセテート(0.020g、0.066mモルまたは5モル%)およびメチルt−ブチルエーテル(10mL)を添加した。混合物を室温で約15分間撹拌した。H NMR(CDCl、400MHz)による反応混合物の分析は、化合物IIIの消失(詳細には、特徴的なδ6.43ppmにおける二重線の二重線の消失、および3.04ppmにおける三重線(J=7.51、2.2Hz)の二重線および4.54における二重線(J=2.2Hz)の出現)を示した。これら二つのピークは各々、transβ−ラクタムのC−3およびC−4プロトンに特徴的である。反応混合物の酸性化サンプルのHPLC分析も、21.2分(96%面積)にピークを与え、化合物XIの真のサンプルの保持時間と一致していた。
【0156】
実施例2:
酢酸カリウムおよび臭化テトラブチルアンモニウムによる化合物IIIの分子内環化:
【0157】
【化52】

3首の125mL丸底フラスコにマグネットスターラーを装着した。化合物III(5g、7.0mmol)、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(5.0mL)、酢酸カリウム(0.035g、0.36mモルまたは5モル%)、およびテトラヒドロフラン(50mL)を添加した。混合物を室温で0.5時間撹拌した。反応の進行を
NMRで検査した所、何れの反応も全く示さなかった。臭化テトラブチルアンモニウム(0.112g、0.35mmolまたは5モル%)を添加した。混合物を室温で0.7時間撹拌した。H NMRによる反応混合物の分析を、例えば上記の実施例1と同様に実施した。
【0158】
実施例3:
フッ化セシウムおよび臭化テトラブチルアンモニウムによる化合物IIIの分子内環化:
【0159】
【化53】

3首の250mL丸底フラスコに、温度計、付加漏斗および窒素吸気口を装着した。化合物III(5g、6.97mmol)、および無水テトラヒドロフラン(50mL)を添加した。混合物を室温で約10分間、または固体が全部溶解するまで、撹拌した。N,Oビストリメチルシリルアセトアミド(BSA、5mL、20.2mmol)を添加した。溶液を室温で約15分間撹拌した。フッ化セシウム(CsF、52.9mg、0.35mmol、5モル%)を添加した。混合物を室温で約45分間撹拌した。臭化テトラ−N−ブチルアンモニウム(TBABr、112mg、0.35mmol、5モル%)を入れた。混合物を室温で約1時間撹拌した。H NMRによる反応混合物の分析を、例えば上記の実施例1と同様に実施した。
【0160】
実施例4:
水酸化テトラブチルアンモニウムによる化合物の分子内環化:
【0161】
【化54】

1首の50mL丸底フラスコに、マグネットスターラーおよび栓を装着した。化合物III(1.0g、1.4mmol)、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(1.0mL)、およびテトラヒドロフラン(10mL)を添加した。混合物を室温で約10分間撹拌した。水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液(0.05mL;40w/w%;0.077mモルまたは5.5モル%)を添加した。混合物を室温で1.3時間撹拌した。H NMRによる分析は、反応が半分のみ完了したことを示した。さらにN,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(1.0mL)を添加した。混合物を室温で1時間撹拌した。H NMRによる反応混合物の分析を、例えば上記の実施例1と同様に実施した。
【0162】
実施例5:
酢酸カリウムによる化合物IIIの分子内環化:
【0163】
【化55】

1首の50mL丸底フラスコに、マグネットスターラーおよび栓を装着した。化合物III(1.0g、1.4mmol)、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(1.0mL)、酢酸カリウム(0.14g、1.4mmol)、およびテトラヒドロフラン(10mL)を添加した。混合物を室温で約1.5時間撹拌した。H NMRによる分析は、反応を全く示さなかった。混合物を約50℃に加熱し、その温度で約3時間撹拌した。H NMRによる分析は、反応が約65%のみ完了したことを示した。再度、混合物を約60℃に加熱し、その温度で約1時間撹拌した。H NMRによる反応混合物の分析を、例えば上記の実施例1と同様に実施した。
【0164】
工程(e):
予め混合してあるイソプロピルアルコールおよび2N HSOの溶液を、工程(d)の生成物に添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。化合物IVをイソプロピルアルコール水溶液から結晶化させた。生成物を濾過し、希釈イソプロピルアルコール水溶液、次いで水で、洗浄液のpHが<5になるまで洗浄した。生成物を排気炉内にて60℃でまたは真空下にて乾燥させて、化合物IVを得た。
【0165】
上述の実施形態は、その広い発明概念から逸脱することなく、変更される可能性があることを、当業者は理解する。従って、本発明は、開示した特定の実施形態に限定されることはなく、添付の特許請求の範囲に定義する本発明の趣旨および範囲内に含まれる改良を包含するものとして意図されることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【公開番号】特開2012−36224(P2012−36224A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−252865(P2011−252865)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【分割の表示】特願2007−546997(P2007−546997)の分割
【原出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation