説明

アゾメチンおよびα−ハロアセトアニリドの製造プロセス

【課題】アゾメチン製造の工程において、物質の反応時間または滞留時間(residence time)を最短にすること。
【解決手段】アニリンとホルムアルデヒドとの反応により芳香族アゾメチンを製造するプロセスであって、該ホルムアルデヒドが、触媒量の塩基の存在下において、パラホルムアルデヒドと、1個〜4個の炭素原子を有する脂肪族アルコールの0.25モル当量〜3モル当量とを接触させることにより製造される生成物の形態で供給され、該プロセスが、(a)該反応を連続的に実施する工程;および(b)該反応混合物から、反応水を連続的にエバポレートする工程;を包含することを特徴とする、プロセス。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景および先行技術
本発明は、アニリンとホルムアルデヒドの供給源(source)(本明細書の以下に記載される)との反応によるアゾメチンの製造に関する。本発明はまた、アニリンとホルムアルデヒド供給源との反応によりアゾメチンを形成し、このアゾメチンとハロゲン化アシルとの反応により(N,N-二置換ハロアセトアニリドが最終生成物である場合、適切な試薬(例えば、アルコール)とのさらなる反応により)、アニリンからハロアセトアニリドを製造するための改善されたプロセスに関する。
【0002】
一般に、この様式のハロアセトアニリドの製造プロセスは、米国特許第3,630,716号;同第3,637,847号;同第4,097,262号;および同第5,399,759号に記載されている。
【0003】
後者の特許(the latter patent)は特に、触媒量の塩基の存在下において、アニリンと、ホルムアルデヒド供給源(この特許において、「ホルムアルデヒド-アルコール複合体」と呼ぶ;これは、パラホルムアルデヒドと1個〜4個の炭素原子を有する脂肪族アルコールの約0.25モル当量〜約3モル当量とを接触させることにより製造される)とを反応させることによりアゾメチンおよび最終的にα-ハロアセトアニリドを製造するプロセスを記載している。この特許に記載されるプロセスはバッチプロセスであり、そして、最終的にα-ハロアセトアニリドの生成をもたらすいくつかの工程は、別々のリアクターまたは反応装置のいずれかで行われ得るか、あるいは「ワンポット」操作(すなわち、全ての工程が単一のリアクター中で行われる)でさえも行われ得る。
【0004】
米国特許第5,399,759号に記載されるプロセスは、ホルムアルデヒド供給源とアニリンとのより速い反応、パラホルムアルデヒドの昇華および装置への堆積などの従来の問題なしにパラホルムアルデヒドをこのプロセスの供給物(feed)として使用することを可能にしたことなど、先行技術に対する多くの利点を提供する。しかし、これらのプロセスには未だに改善の余地がある。
【0005】
例えば、反応水(water of reaction)を除去する方法において改善がなされ得る。この特許に開示されるように、水は、共沸蒸留により反応生成物から除去される。好ましくは、蒸留は、一連の反応のほとんどの間、連続的に実施され、反応そのものが開始した直後に開始される。しかし、反応を完結させるために、反応水の完全な除去が望まれ、そして、たとえ実際に完全に除去されるとしても、この様式による蒸留は、全ての水を除去するのに極めて長い時間がかかる。
【0006】
さらに、アゾメチン製造の工程において、物質の反応時間または滞留時間(residence time)を最短にすることが所望される。なぜなら、望ましくない長い滞留時間は、生成物の分解を引き起こし得るからである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明によって以下が提供される:
1.アニリンとホルムアルデヒドとの反応により芳香族アゾメチンを製造するプロセスであって、該ホルムアルデヒドが、触媒量の塩基の存在下において、パラホルムアルデヒドと、1個〜4個の炭素原子を有する脂肪族アルコールの0.25モル当量〜3モル当量とを接触させることにより製造される生成物の形態で供給され、該プロセスが、(a) 該反応を連続的に実施する工程;および(b) 該反応混合物から、反応水を連続的にエバポレートする工程;を包含することを特徴とする、プロセス。
2.前記工程(a)および(b)が、前記反応混合物を1つ以上のエバポレーターに通過させることにより実施される、項目1に記載のプロセス。
3.前記エバポレーターが、向流接触式のエバポレーターである、項目2に記載のプロセス。
4.前記工程(a)が、連続撹拌タンクリアクター中で実施される、項目1に記載のプロセス。
5.前記工程(a)および/または(b)が、2つ以上の連続アップフローエバポレーター中で実施される、項目1に記載のプロセス。
6.前記工程(a)および/または(b)が、1つ以上のフォーリングフィルムエバポレーター、ダウンフローフラッデッドエバポレーター、または上部にフォーリングフィルム部を有し、下部にフラッデッド部を有する組み合わせエバポレーター中で実施される、項目1に記載のプロセス。
7.前記工程(a)および/または(b)が、1つ以上のエバポレーター中で実施され、不活性気体または濃縮可能な気体が該エバポレーターの下部にスパージされる、項目1に記載のプロセス。
8.前記アゾメチン製造が、不活性溶媒の存在下で行われる、項目1に記載のプロセス。
【0008】

9.前記アゾメチン製造が、不活性溶媒の非存在下で行われる、項目1に記載のプロセス。
10.前記工程(b)のアゾメチン生成物を、ハロアセチル化試薬と連続的に反応させて、α-ハロ-N-ハロメチルアセトアニリドを製造する工程をさらに包含する、項目1に記載のプロセス。
11.前記α-ハロ-N-ハロメチルアセトアニリドを、脂肪族アルコールと連続的に反応させて、N-アルコキシアルキル-α-ハロアセトアニリドを製造する工程をさらに包含する、項目10に記載のプロセス。
【0009】
発明の要旨
本発明は、以下を包含する:
アニリンとホルムアルデヒド供給源との反応により芳香族アゾメチンを製造するプロセスであって、このホルムアルデヒドは、触媒量の塩基の存在下において、パラホルムアルデヒドと1個〜4個の炭素原子を有する脂肪族アルコールの約0.25モル当量〜約3モル当量とを接触させることにより製造される生成物の形態で供給され、そしてこのプロセスは、(a)上記反応を連続的に実施する工程;および(b)上記反応混合物から、反応水を連続的にエバポレートする工程;を包含することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
発明の詳細な説明
アゾメチンの製造およびα-ハロアセトアニリドの最終的な製造の両方を包含する全プロセスは、米国特許第5,399,759号に記載され、その開示は本明細書中で参考として援用される。一般に、この特許は、アゾメチンおよび最終的にα-ハロアセトアニリドを製造するためのバッチプロセスを記載する。アゾメチン工程において、以下に記載のように供給されるホルムアルデヒドの反応性形態を、アニリンと反応させてアゾメチンを製造する。

アニリンは、一般的に以下の式を有する:
【0011】
【化1】

【0012】
ここで、Rは、水素、あるいはホルムアルデヒドと比較的非反応性である1つ以上の置換基(特に、アルキル、アルコキシ、またはハロゲン)であり;nは、一般に、0〜5の値であり、好ましくは、0、1、2、または3である。除草性のアニリドまたはハロアセトアニリドは、1つ以上のこのような置換基をオルト位に有するアニリンからしばしば調製される。除草性のアニリドまたはハロアセトアニリドを最終的に調製するのに使用される場合、このプロセスのためのいくつかの代表的な出発アニリンには、2,6-ジメチルアニリン、2,6-ジエチルアニリン、2-メチル-6-エチルアニリン、2-メチル-6-tert-ブチルアニリン、2-tert-ブチル-6-ハロアニリン、2,4-ジメチルアニリン、2-tert-ブチル-5,6-ジメチルアニリン、2,6-ジメチル-3,4,5-トリクロロアニリン、2-メチルアニリン、2-エチルアニリン、2-メトキシアニリン、および2-エトキシアニリンが挙げられる。
【0013】
反応生成物は、主にアゾメチンおよび水であり、種々の副生成物または不純物を伴う。
【0014】
ホルムアルデヒド供給源は、触媒量の塩基の存在下で、固体のパラホルムアルデヒドと、1個〜4個の炭素原子を有する脂肪族アルコールの約0.25モル当量〜約3モル当量とを接触させることにより製造される生成物の形態で供給される。接触工程は、別々の装置中で行われても、アゾメチン製造用の主要なリアクター中で行われてもよく、一般に、約85℃〜95℃の温度にて行われる。不活性溶媒(例えばキシレンのような芳香族溶媒)が存在し得るが、これは必ずというわけではない。
【0015】
使用される塩基は、アルカリ金属の水酸化物、アルコキシド、カーボネート、またはオキシド、あるいは第3級アミンのような有機塩基または無機塩基であり得、第3級アミンが好ましい。この技術のための代表的な触媒には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、トリアルキルアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、およびトリ-n-ブチルアミン)、およびヘテロ環式アミン(ピリジン、N-アルキルピペリジンおよびN-ピロリジン(例えば、N-エチルピペリジンおよびN-メチルピロリジン)を含む)、テトラ-アルキルグアニジン、ならびに融合二環式アミン(例えば、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデク-7-エンおよび1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノン-5-エン)が挙げられる。塩基性触媒は、一般に、ホルムアルデヒドを基準として、約0.01モル当量〜約1モル当量、好ましくは0.01モル当量〜約0.05モル当量の量で用いられる。
【0016】
アゾメチン製造工程は、溶媒の還流温度にて水と共沸物を形成する炭化水素溶媒の存在下で行われ得る。代表的な溶媒には、芳香族溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、およびキシレン)ならびに脂肪族および環式脂肪族の溶媒(例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、およびシクロヘキサン)が挙げられる。溶媒に依存して、反応混合物の還流温度は、約80℃〜約140℃の範囲にある。好ましくは、反応温度は80℃〜約100℃の間である。
【0017】
あるいは、本発明の実施において、反応は溶媒を使用することなく行われ得る。
【0018】
アゾメチンの製造プロセスが、除草性ハロアセトアニリドを製造するための多段階プロセスにおける最初の工程である場合、最終生成物(代表的には、α-ハロアセトアニリド、あるいはより一般的にはα-クロロアセトアニリドと呼ばれる)は、以下の一般式を有する:
【0019】
【化2】

【0020】

ここで、Rおよびnは上記の通りであり;Xはハロゲン(通常はクロロまたはブロモであり、そして最も一般的にはクロロである)であり、そしてRは、除草性化合物の成分として記載された多くの置換基のいずれかであり、それらの最も一般的なものは、種々のアルキル基およびアルコキシアルキル基である傾向がある。他の置換基は、例えば米国特許第4,097,262号に記載されている。
【0021】
当然のことながら、水は、アゾメチン製造反応の生成物であり、水の除去は反応を完結させるために必要である。従来は、反応の間または反応の完結が明らかになった後のいずれかにおいて、蒸留により水を除去していた。しかし、バッチプロセスでのアゾメチン製造反応の実施は、これまでに用いられた水の除去手段を伴うが、完全に満足できるものではないことが明らかになった。反応時間または滞留時間が過度に長くなり、従って生成物が分解する可能性のリスクをもたらすことがある。さらに、反応混合物から残存量の水を除去するのは難しいことが明らかになった。
【0022】
本発明によれば、アゾメチン製造工程は、バッチプロセスではなく連続的に行われ、そして、反応水は、以下により詳細に記載される連続的なエバポレーションにより除去される。
【0023】
以下は、本発明の多くの実施態様の一般的な説明である。
【0024】
第1の実施態様では、アニリンとホルムアルデヒド-アルコール複合体を含有するアゾメチン反応混合物(必要に応じて溶媒の存在下で)を混合し、加熱し、そして1つまたは一連のいくつかのダウンフローフラッデッドエバポレーター(downflow flooded evaporator)内に供給する。このシステムの作動温度は、一般に約75℃〜105℃であり、そして圧力は約0.200bar〜0.400bar(150mmHg〜300mmHg)である。供給混合物をエバポレーターの上部から導入して、蒸気との向流接触(countercurrent contact)を確立する。アゾメチン生成物を、一連のエバポレーターの最後のエバポレーターの下部から回収し、そして、新たな量のホルムアルデヒド-アルコール複合体を調製するために、留出物を再循環させる。
【0025】
第2の実施態様では、アゾメチン製造工程は、2つ以上の一連の連続アップフローエバポレーター(upflow evaporator)中で行われ、温度は約75℃〜115℃であり、そして圧力は約0.400bar〜1.013bar(300mmHg〜760mmHg)である。この実施態様において、反応混合物をエバポレーターの下部から供給し、液体および蒸気の並流フロー(co-current flow)を各エバポレーター中で確立させる。次いで、一連のエバポレーターの最後のエバポレーターの上部からの液体を、フォーリングフィルムエバポレーター(falling film evaporator)またはダウンフローフラッデッドエバポレーターに供給して、残存する水を除去し、そして反応を完結させる。
【0026】
第3の実施態様において、アゾメチン製造を、ダウンフローフラッデッドエバポレーター中または連続アップフローエバポレーター中のいずれかで行い得る。残存する水は、1つ以上のエバポレーター(これらは各々、2つの部分(フォーリングフィルム部である上部およびフラッデッド(flooded)である下部)からなる)において反応混合物から除去される。この実施態様において、蒸気の大部分は、各エバポレーターのフォーリングフィルム部において除去される。各エバポレーターの下部のフラッデッド部は、反応を完結させるためのさらなる滞留時間を提供する。上部において蒸気のほとんどが除去されると、下部のフラッデッド部において放出される蒸気の量は、エバポレーターを流体力学的に安定な状態に保つのに十分に少なくなる。
【0027】
第4の実施態様において、アゾメチン製造工程は、1つ以上の連続的撹拌タンクリアクター中で行われる。次いで、反応生成物を、95℃〜139℃の温度および0.267bar〜1.013bar(200mmHg〜760mmHg)の圧力で作動する1つ以上のフォーリングフィルムエバポレーターおよび/または75℃〜105℃の温度および0.200bar〜0.400bar(150mmHg〜300mmHg)の圧力で作動する1つ以上のフラッデッドダウンフローエバポレーターに通す。
【0028】
上記実施態様のいずれかにおいて、1つまたは複数のエバポレーターは、充填カラムであり得る。このようなエバポレーターの使用は、僅かに長い反応混合物の滞留時間およびより多くの蒸気-液体接触をもたらし得る。充填カラムがダウンフローエバポレーターである場合、その充填は、エバポレーターの流体力学的安定性を増大させ、そして熱伝達および物質移動の効率を改善する。多くの場合、より長い滞留時間は、生成物の分解をもたらし得るので望ましくないが、より良好な熱伝達および/または物質移動の効率を得るためにはある程度許容され得る。
【0029】
アゾメチン製造工程から残存する水を除去するのに使用されるエバポレーターは、最も好ましくは、液体と蒸気との向流接触を伴う。
【0030】
さらに、上記実施態様における任意のエバポレーターがまた、不活性気体(例えば、窒素)または不活性な濃縮可能な蒸気(例えば、キシレン)をエバポレーターの下部にスパージング(sparging)させるための条件を伴い得る。キシレンをスパージング蒸気として用いた場合、これは、このプロセスにおける下降流のキシレン溶媒(xylene solvent downstream)を回収し、そして再循環させることにより得られ得る。
【0031】
本発明のさらなる実施態様では、上記した水の除去の後、アゾメチン生成物を2つの追加工程にてα-ハロアセトアニリドに転化する。ここで、追加工程の一方または両方は、連続的に行われる。
【0032】
第2の工程において、アゾメチンを、適切な溶媒中でハロアセチル化試薬(通常はクロロアセチルクロライドである)と反応させる。これは、2-ハロまたはα-ハロ(好ましくはクロロ)N-ハロメチル(好ましくはクロロメチル)アセトアニリドを生成し、これは以下の式を有する:
【0033】
【化3】

【0034】
ここで、Xはハロ(通常、クロロまたはブロモである)であり、そしてRはハロメチル(クロロメチルまたはブロモメチル)である。このタイプのハロアセトアニリドは、除草剤として米国特許第3,630,716号および同第3,637,847号に記載されている。
【0035】
この工程は、アゾメチンおよびハロアセチル化剤を、単一または一連の連続撹拌タンクリアクター中に連続的に供給することにより行われ得る。これらは、大気圧下において、室温〜約80℃の範囲の温度で作動される。あるいは、アゾメチンおよびハロアセチル化剤を、プラグフローリアクター(plug flow reactor)またはポンプリアクターのいずれかの中に連続的に供給する。
【0036】
最終工程において、N-ハロアセチル生成物を適切な脂肪族アルコールと反応させて、上記の式Iを有するN-アルコキシアルキル-α-ハロアセトアニリドを製造する。この工程もまた、例えば大気圧下において室温〜約80℃の温度で作動される1つまたは一連の連続的なタンクリアクター中で、連続的に行われる。一連のリアクターの最後のリアクターからの生成物を、塩基(例えば、アンモニア、トリエチルアミン、またはトリ-(n-ブチル)アミン)と接触させ、次いで、貯蔵タンクまたはさらなる連続撹拌タンクリアクターに移して滞留時間をより長くし、そして反応を完結させる。
【0037】
本発明の実施について、α-ハロアセトアニリドの製造における全ての3つの段階は、必ずしも連続的に行われなくともよいことに留意するべきである。全ての3つの段階が連続的に行われるのは、最も好ましい実施態様のみである。先行技術のように、第1の段階(すなわち、アゾメチン製造工程)のみが連続的に行われ、かつ第2および第3の段階がバッチプロセスとして行われたとしても、このプロセスは満足なものであり得る。あるいは、このプロセスの第1の段階および第2の段階が連続的に行われ、そして簡便であり得るように、第3の段階がバッチプロセスで行われ得る。
【0038】
第1の段階および必要に応じてそれに続く段階を連続的に行うことの利点は、より小さい(従って、より安価な)リアクターを使用することの可能性および上記した他の利点を含む。
【0039】
本発明を、以下の実施例によりさらに例示する。
【実施例】
【0040】
実施例1
本実施例は、ダウンフローフラッデッド管状エバポレーターを用いる、2-メチル-6-エチル-N-エトキシメチル-2-クロロアセトアニリドの芳香族アゾメチン中間体を製造するための2工程連続プロセスの実施を例示する。
【0041】
リアクター/エバポレーターは、5mmガラスビーズで充填された、1.1cm(7/16インチ)の内径を有する、83.8cm(33インチ)の長さの304ステンレス鋼カラムからなり、管内において一定の液体レベルを制御し維持するためのオーバーヘッド凝縮器(overhead condenser)およびシールレッグ(seal leg)を備えた。管の上部の温度を75℃〜90℃に維持し、そして管の下部の温度を80℃〜100℃に維持した。
【0042】
ホルムアルデヒド-エタノール複合体の供給物(supply)を、20モル(920g)のエタノールおよび0.6モル(61g)のトリエチルアミンを混合し、続いて20モル(659g)のパラホルムアルデヒドのプリル(91%)を導入し、そして透明な溶液が形成するまで、得られたスラリーを89℃〜90℃で加熱還流することによって調製した。
【0043】
アゾメチンリアクターへの供給物は、以下の組成を有した:
物質 モル 重量
2−メチル−6−エチルアニリン 1.0 138 gms
キシレン 8.0 848
ホルムアルデヒド−エタノール複合体 1.6 128
(79.1g/モル CH2O濃度)
供給物を0.78g/分〜3.25g/分の範囲の速度で119時間(中断された)の間連続的にポンプで供給し、12分〜47分の範囲の保持時間を得た。エバポレーター中の反応を、蒸気との向流接触により、水を蒸発させるために絶対的な0.133bar〜0.400bar(100mmHg〜300mmHg)の真空下で実施し、アゾメチンの反応を完結させた。
【0044】
アゾメチン生成物を、種々の温度および圧力条件下で回収した。次いで、サンプルを誘導体化の手順により2-メチル-6-エチル-N-エトキシメチル-2-クロロアセトアニリド生成物に転化した。まず、クロロアセチルクロライドを用いて、室温条件にて、N-クロロメチル-α-クロロアセトアニリドを形成した。次いで、クロロアセトアニリドを、12モル当量の無水エタノールと15分間反応させた;次いで、気体アンモニアを添加して、pHを8〜9にし、2-メチル-6-エチル-N-エトキシメチル-2-クロロアセトアニリド生成物への転化を完結させた。粗生成物を、ガスクロマトグラフィーにより分析した。このアゾメチンは、高品質の生成物を製造し、そして、表1に要約される結果に示されるように、2-メチル-6-エチル-N-エトキシメチル-2-クロロアセトアニリドへの比較的高い転化率(95%〜97%の範囲の試験結果(assay)を有する)をもたらす。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例2
ホルムアルデヒド-エタノール複合体を製造するために、1363.8リットル(300ガロン)リアクターに、136.08kg(300ポンド)の95%パラホルムアルデヒド(9.5ポンドモル)、198.22kg(437ポンド)のエタノール(9.5ポンドモル)、および8.62kg(19ポンド)(0.19ポンドモル)のトリエチルアミンを仕込んだ。混合物を66℃に加熱し、次いで、400.07kg(882ポンド)の98%2,6-メチルエチルアニリン(6.4ポンドモル)を仕込んだ。混合物を88℃で2時間、加熱還流し、次いで大気圧下で蒸留して、生成した水の一部を除去した。リアクターの温度が95℃に達したとき、蒸留を停止した。
【0047】
混合物を冷却し、そして227.3リットル(50ガロン)の撹拌タンクおよびプレヒータを通して、フォーリングフィルムエバポレーター(これは、7.6cm(3インチ)の内径および487cm(16インチ)の長さを有する、被覆されたステンレス鋼パイプからなる)内に供給した。蒸気(主に水、エタノール、およびホルムアルデヒド誘導体)をオーバーヘッドで濃縮し、そして受器に集めた。エバポレーターの下部からの液体を、アゾメチン生成物として集めた。
【0048】
エバポレーターを、0.029bar〜0.031bar(22mmHg〜23mmHg)の真空下で、125℃〜128℃の範囲の下部温度で、6.5時間作動させた。エバポレーターへの供給流は、0.28gpm〜0.52gpmの間で変化した。
【0049】
評価の目的のために、アゾメチンとクロロアセチルクロライドとを反応させてN-クロロメチル-2-クロロアセトアニリドを作製し、次いでこの化合物を、米国特許第5,399,759号に記載の手順に従ってエタノールと反応させることにより、アゾメチン生成物から採取したサンプルを、2-メチル-6-エチル-N-エトキシメチル-2-クロロアセトアニリドに転化した。このエトキシメチルアセトアニリド生成物の純度は、95%〜98%の範囲内にあることが見出された。
【0050】
実施例3
本実施例は、リアクター中の供給混合物を大気圧下で110℃まで蒸留して、バルクの反応水を除去した以外は、実施例2と同様の条件下で行った。
【0051】
この場合、エバポレーターを、0.15gpm〜0.25gpmの範囲の供給流で、0.027bar〜0.037bar(20mmHg〜28mmHg)の範囲の真空で、かつ107℃〜124℃の範囲の下部温度で、約28時間作動させた。
【0052】
フォーリングフィルムエバポレーターの下部からのアゾメチン生成物のサンプルを、実施例2に記載のように、2-メチル-6-エチル-N-エトキシメチル-2-クロロアセトアニリドに転化した。98.6%程度の高い純度と、0.5%程度の低い非クロロメチル化ハロアセトアニリド不純物濃度を得た。
【0053】
実施例4
本実施例は、連続撹拌タンクリアクター(CSTR)中でのプロセスの第2の工程の実施を例示する。マグネチックミキサー、オーバーヘッド凝縮器、サーモウォッチ、および加熱浴を備えた50mlのガラスリアクターに、キシレン中のアゾメチン24%溶液(10.2g/分)およびクロロアセチルクロライド(2.4g/分)を連続的に仕込んだ。リアクターを114℃に保持した。リアクターの外部のN-クロロメチル-2-クロロアセトアニリド流を調節して、1.8分の滞留時間を維持した。評価の目的のために、リアクターから取り出したN-クロロメチル-2-クロロアセトアニリド生成物を多量のエタノールでクエンチして、2-メチル-6-エチル-N-エトキシメチル-2-クロロアセトアニリドに転化した。生成物を分析すると、96.8重量%の純度を有していた。非クロロメチル化ハロアセトアニリドの濃度は、0.7重量%であった。収率(アゾメチン製造に用いられたメチルエチルアニリンに対して)は、92.7%であった。
【0054】
実施例5
本実施例は、CSTR中での第3の工程の実施を例示する。加熱マントルおよび温度制御を備えた500mlのガラスCSTRに、キシレン中のN-クロロメチル-2-クロロアセトアニリド33%溶液(米国特許第5,399,759号の実施例IV Bに記載の手順を用いて調製した)を、3.0g/分で、連続的に仕込んだ。反応混合物の容積を調節して、34分の一定の滞留時間を達成した。リアクターからの流出物を、マグネチックアジテーターおよびpH制御システムを備えた150mlのガラスCSTRからなるニュートライザーに、連続的に仕込んだ。ニュートライザーへのトリブチルアミン仕込み物を、pH制御システムにより調節して、ニュートライザー中のpHを7.5〜8.5の範囲に維持した。ニュートライザーからの2-メチル-6-エチル-N-エトキシメチル-2-クロロアセトアニリド生成物を受器に集め、受器から生成物をサンプリングし、これを洗浄し、そしてロータリーエバポレーターでストリッピングした。生成物の純度は97.2重量%であり、2.8重量%の非クロロメチル化ハロアセトアニリド不純物を有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニリンとホルムアルデヒドとの反応により芳香族アゾメチンを製造するプロセス。

【公開番号】特開2007−106773(P2007−106773A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340607(P2006−340607)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【分割の表示】特願平9−512480の分割
【原出願日】平成8年9月19日(1996.9.19)
【出願人】(500371307)シンジェンタ リミテッド (141)
【Fターム(参考)】