説明

アゾ化合物の製造方法

【課題】シアゾニウム塩が不安定なために合成が容易でない化合物を、収率よくかつ純度よく製造する方法を提供する。
【解決手段】5−アミノピラゾール誘導体と5−ヒドロキシピラゾール誘導体とを反応させることによる下記で表されるアゾ化合物の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアゾ化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジアゾ化合物は写真用添加剤,増感色素,染料,顔料,電子材料,医農薬品などの機能性化合物の中間体、製品として有用な化合物であり、合成法は古くから知られている。
中でもアゾ染料は従来ハロゲン化銀カラー写真感光材料の分野において、画像形成用の色素および染料として広く用いられている。一方、近年インクジェット記録方法、カラー電子写真、感熱転写方式、印刷インク、記録ペン等の新しいカラー画像形成方法が実用に供されている。また、エレクトロニックイメージングの発展に伴って固体撮像の管や撮影機器ではCCDなどの撮像素子において、ディスプレーではICDやPDPにおいて、カラー画像を記録・再現するためにカラーフィルターが使用されている。
一般的にこれらのアゾ染料はジアゾカップリング反応を介して合成される。即ち、芳香族性アミンに亜硝酸ナトリウム等のジアゾ化剤を反応させ、ジアゾニウム塩とした後にカップラー(色素発色剤)との反応に付すことで望むアゾ化合物を得ることができる。
しかしながら一般的にジアゾニウム塩は、脂肪族アミン、電子吸引性の高い芳香族のアミンでは不安定であり、ジアゾ化反応を行うと分解、脱窒素反応、加水分解反応が起こるため、望むジアゾニウム塩を安定して得ることは困難である場合が多い。
ジアゾニウム塩を安定させるために強酸溶媒を用いる、ジアゾニウム塩を反応溶液から析出しやすい系を設計する、反応を非水系にする等の手法で抑制できる場合もあるが、これも安定製造することが困難である場合が多い。
一方、アゾ化合物はMills反応を用いても合成することができる(非特許文献1、2、3、4、5、6)。即ち、カプラーの反応活性部位をニトロソ化し、芳香族アミンと脱水縮合すると望むアゾ化合物が得られる。一般的にこの反応は酢酸等の弱酸中で反応が進行することが知られている。
しかし、ジアゾニウム塩が不安定な場合その原料であるアニリンは芳香環中に電子吸引性基を有していることが多く、これはMills反応時の求核性も同時に低下させる傾向にあるため、従来の方法では反応が全く進行しない、あるいはわずかしか生成しなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J. Chem. Soc., Perkin Trans. I, 2001, 1908-1915
【非特許文献2】J. Org. Chem., 1999, 64, 4976-4979
【非特許文献3】Tetrahedron lett., 1999, 40, 6557-6560
【非特許文献4】J. Am. Chem. Soc., 1966, 88, 5015
【非特許文献5】Bioorg. Med. Chem. Lett., 1994, 4(17), 2145-2146
【非特許文献6】Chem. Pharm. Bull., 1983, 31(4), 1228-1234
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シアゾニウム塩が不安定なために合成が容易でない化合物を、収率よくかつ純度よく製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来のこうした課題は次の手段により解決された。
(1)下記一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物とを反応させ、下記一般式(III)で表される化合物を得ることを特徴とするアゾ化合物の製造方法。
【0006】
【化1】

【0007】
【化2】

【0008】
【化3】

【0009】
式中、R、R,R,R、Rは水素原子又は置換基を表す。
(2)脱水剤の存在下で反応させることを特徴とする(1)に記載の製造方法。
(3)脱水剤として硫酸またはポリリン酸を用いることを特徴とする(2)に記載の製造方法。
(4)R、Rの少なくとも一方が電子吸引性基を有する基であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明方法によればアゾ化合物を高収率かつ高純度で製造することができる。
本発明の目的は医薬中間体、画像形成材料、光記録素子および光学フイルム材料等として有用なアゾ化合物の製造方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は下記一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物を脱水縮合反応に付し、下記一般式(III)を得ることを特徴とする製造方法である。
【0012】
【化4】

(一般式(I)〜(III)中R、R、R、R、Rは、水素原子または置換基を表す。)
【0013】
次に一般式(I)〜(III)で表される化合物におけるR〜Rについて説明する。
〜Rは水素原子又は置換基を表し、更に置換基を有していてもよい。
【0014】
以下、一般式(I)〜(III)で表される化合物上の置換基について述べる。置換基は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基および置換アラルキル基が脂肪族基として挙げられる。アルキル基は分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。アルキル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜18であることが更に好ましい。置換アルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。アルケニル基は分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。アルケニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜18であることが更に好ましい。置換アルケニル基のアルケニル部分は、上記アルケニル基と同様である。アルキニル基は分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。アルキニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜18であることが更に好ましい。置換アルキニル基のアルキニル部分は、上記アルキニル基と同様である。アラルキル基および置換アラルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。アラルキル基および置換アラルキル基のアリール部分は下記アリール基と同様である。
【0015】
置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基および置換アラルキル基のアルキル部分の置換基の例にはハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、アミノ基(好ましくはアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N-メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p-クロロフェノキシカルボニルアミノ、m-n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)を表わす。
【0016】
上記の官能基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていても良い。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0017】
置換アラルキル基のアリール部分の置換基の例は、下記置換アリール基の置換基の例と同様である。
【0018】
また置換基として芳香族基を有しているときは芳香族基としては、アリール基および置換アリール基が挙げられる。またこれらの芳香族基は脂肪族環、他の芳香族環または複素環が縮合していてもよい。芳香族基の炭素原子数は6〜40が好ましく、6〜30が更に好ましく、6〜20が更に好ましい。またその中でもアリール基としてはフェニルまたはナフチルであることが好ましく、フェニルが特に好ましい。
【0019】
置換アリール基のアリール部分は、上記アリール基と同様である。置換アリール基の置換基の例としては、先に置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基及び置換アラルキル基のアルキル部分の置換基の例として挙げたものと同様である。
【0020】
本発明における電子求引性基とは、電子効果で電子求引的な性質を有する置換基であり、置換基の電子求引性や電子供与性の尺度であるハメットの置換基定数σp値を用いれば、σp値が大きい置換基である。例えば、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、スルホ基、トリフルオロメチル基、アルコキシカルボニル基、アシル基などが挙げられる。
ハメットの置換基定数σp値について若干説明する。ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるため、1935年にL.P.Hammettより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編“Lange’s Handbook of Chemistry”第12版、1979年(Mc Graw-Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)に詳しく記載されている。
【0021】
上記一般式(I),(II),(III)で表される化合物中の置換基の中で好ましいものの例を以下に述べる。
、R、R、R、Rとして好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基であり、更に好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、イミド基、シリル基であり、更に好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アミノ基であり、最も好ましくは水素原子、アルキル基またはアリール基である。これらの基又は原子中の炭素原子数は前記のとおりである。
【0022】
本発明においてR及びRの少なくとも一方が電子吸引性基を有する基であることが好ましく、Rが電子吸引性基であることがより好ましい。
電子求引性基としてはハメットの置換基定数σp値が0.20以上の電子求引性基であることが好ましく、σp値が0.30以上の電子求引性基であることがより好ましい。σp値の上限は特に制限はないが、通常は0.85以下とする。
σp値が0.20以上の電子求引性基であるRの具体例としては、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、σp値が0.20以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、又はセレノシアネート基が挙げられる。
13としては、ニトロ基、シアノ基、又は−CO−Rであり、Rは水素原子、脂肪族基、芳香族基、アルコキシ基、アミノ基を表す。特に好ましくはシアノ基およびニトロ基である。
【0023】
一般式(III)で表される化合物におけるR、R、R、R及びRとしての置換基の好ましい組み合わせを以下に挙げる。
【0024】
【化5】

【0025】
【表1】

【0026】
本発明の一般式(I)で表される化合物および一般式(II)で表される化合物は市販されており、また常法に従って容易に合成することもできる。
【0027】
また、本発明では、一般式(I)から一般式(III)で表される化合物は、構造中に同位元素(例えば、H、H、13C、15N)を含有していてもよい。
【0028】
本発明に用いられる化合物には、その合成過程や単離法などによって対塩を伴っているものも含まれる。対塩はいずれのものでもよいが、例えば、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、スルホン酸イオン、リン酸イオン、酢酸イオン、金属イオン、アンモニウムイオンなどが挙げられる。構造によっては分子内塩を形成しても良い。
【0029】
本発明の製造方法において一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物とを反応させる反応温度は−30〜200℃であることが好ましく、より好ましくは20〜150℃、最も好ましくは60〜120℃である。
【0030】
反応混合物中に含まれる1モルの一般式(I)で表される化合物の量に対する一般式(II)で表される化合物は1.0〜6.0モル、更に好ましくは1.0〜5.0モルであり最も好ましくは1.0〜4.0モルの範囲である。
【0031】
反応を行わせるに当り、一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物の反応系内への添加順序は任意であり、特に限定されない。
【0032】
本発明において反応には溶媒を用いることが好ましい。溶媒としては例えば水、アミド系溶媒(例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチルー2−ピロリドン)、スルホン系溶媒(例えばスルホラン)、スルホキシド系溶媒(例えばジメチルスルホキシド)、ウレイド系溶媒(例えばテトラメチルウレア)、エーテル系溶媒(例えばジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル)、ケトン系溶媒(例えばアセトン、シクロヘキサノン)、炭化水素系溶媒(例えばトルエン、キシレン、n−デカン)、ハロゲン系溶媒(例えばテトラクロロエタン,クロロベンゼン)、アルコール系溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、シクロヘキサノール、フェノール)、ピリジン系溶媒(例えばピリジン、γ―ピコリン、2,6−ルチジン)、エステル系溶媒(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル)、カルボン酸系溶媒(例えば酢酸、プロピオン酸)およびニトリル系溶媒(例えばアセトニトリル)を単独或いは併用して用いる。このうち好ましくは水、スルホン系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、ハロゲン系溶媒であり、最も好ましくは水、スルホン系溶媒である。
【0033】
本発明において一般式(I)で表される化合物に対する溶媒量は質量比で100倍以下であり、より好ましくは50倍以下であり、更に好ましくは10倍以下である。また、溶媒兼酸を用いている場合は溶媒を用いなくても良い。
【0034】
本発明方法において反応の際に存在させる酸としては無機酸(鉱酸とも呼ばれる)および有機酸が使用できる。有機酸としては例えば、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸を好ましく用いることができる。無機酸としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸等を好ましく用いることができる。酸は、上記した酸の1種のみを用いてもよく、また、2種以上を併用して用いてもよい。
この酸の使用量は、一般式(I)で表される化合物に対し重量比で100%以上、好ましくは100〜1000%とする。
【0035】
また、脱水剤としては例えば、濃硫酸(98%以上)、ポリリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、無水リン酸、五酸化二リン、モレキュラーシーブス(3A)、モレキュラーシーブス(4A)、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウム、有機カルボン酸無水物、N,N−ジアルキルカルボジイミド類、低級脂肪酸ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸無水物、アリールホスホン酸ジハロゲン化物およびチオニルハロゲン化物等が挙げられ、好ましくは濃硫酸、ポリリン酸、メタリン酸、無水リン酸である。
本発明において脱水剤の使用量は一般式(I)で表される化合物に対し、重量比で300質量%以上が好ましく、300〜1000質量%が好ましい。この脱水剤の量が多すぎると分解反応が見られる場合があり、少なすぎると反応速度が遅くなる、または反応が進行しない。脱水剤として前記の酸に同一のものを用いる場合は前記酸の量を減量して反応させることとする。
【実施例】
【0036】
以下に本発明を実施例に基づき、更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
アミノ化合物ならびにニトロソ化合物は既知の合成法で容易に合成することができる。
【0038】
(実施例1)化合物例(3)の合成
濃硫酸中20mlに5−アミノー4−メトキシカルボニルー3−メチルピラゾール5g、5−ヒドロキシー3−メチルー4−ニトロソピラゾール4.1gを溶解し、80℃にて5時間加熱攪拌した。その後、氷水300mlに反応液を滴下し、析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物(3)5.0g(59%)を得た。
このもののマススペクトルを測定したところM=264であった。
【0039】
(実施例2)化合物例(5)の合成
濃硫酸中20mlに5−アミノー4−メチルー3−メチルピラゾール5g、5−ヒドロキシー3−メチルー4−ニトロソピラゾール5.2gを溶解し、80℃にて5時間加熱攪拌した。その後、氷水300mlに反応液を滴下し、析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物(5)5.3g(56%)を得た。
このもののマススペクトルを測定したところM=231であった。
【0040】
(実施例3)化合物例(7)の合成
濃硫酸中20mlに5−アミノー3−t―ブチルー4−メトキシカルボニルピラゾール5g、5−ヒドロキシー3−メチルー4−ニトロソ−1−フェニルピラゾール5.2gを溶解し、80℃にて5時間加熱攪拌した。その後、氷水300mlに反応液を滴下し、析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物(7)5.1g(53%)を得た。
このもののマススペクトルを測定したところM=382であった。
【0041】
(実施例4)化合物例(8)の合成
濃硫酸中20mlに5−アミノー3−t―ブチルー4−シアノピラゾール5g、5−ヒドロキシー3−メチルー4−ニトロソ−1−フェニルピラゾール6.2gを溶解し、80℃にて5時間加熱攪拌した。その後、氷水300mlに反応液を滴下し、析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物(8)6.5g(61%)を得た。
このもののマススペクトルを測定したところM=349であった。
【0042】
(実施例5)化合物例(10)の合成
濃硫酸中20mlに5−アミノー4−シアノー3−フェニルピラゾール5g、3−t−ブチルー5−ヒドロキシー1−メチルー4−ニトロソピラゾール5.0gを溶解し、80℃にて5時間加熱攪拌した。その後、氷水300mlに反応液を滴下し、析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物(10)5.2g(55%)を得た。
このもののマススペクトルを測定したところM=349であった。
【0043】
(実施例6)化合物例(13)の合成
濃硫酸中20mlに5−アミノー4−メトキシカルボニルー1、3−ジメチルピラゾール5g、5−ヒドロキシー3−メチルー4−ニトロソピラゾール3.8gを溶解し、80℃にて5時間加熱攪拌した。その後、氷水300mlに反応液を滴下し、析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物(13)4.3g(52%)を得た。
このもののマススペクトルを測定したところM=278であった。
【0044】
(実施例7)化合物例(15)の合成
濃硫酸中20mlに5−アミノー4−シアノー1、3−ジメチルピラゾール5g、5−ヒドロキシー3−メチルー4−ニトロソピラゾール4.7gを溶解し、80℃にて5時間加熱攪拌した。その後、氷水300mlに反応液を滴下し、析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物(15)5.0g(55%)を得た。
このもののマススペクトルを測定したところM=245であった。
【0045】
(実施例8)化合物例(18)の合成
濃硫酸中20mlに5−アミノー3−t−ブチルー4−シアノー1−メチルピラゾール5g、5−ヒドロキシー3−メチルー4−ニトロソ−1−フェニルピラゾール5.7gを溶解し、80℃にて5時間加熱攪拌した。その後、氷水300mlに反応液を滴下し、析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物(18)6.2g(56%)を得た。
このもののマススペクトルを測定したところM=396であった。
【0046】
(実施例9)化合物例(20)の合成
濃硫酸中20mlに5−アミノー4−シアノー1−メチルー3−フェニルピラゾール5g、3−t−ブチルー5−ヒドロキシー1−メチルー4−ニトロソピラゾール4.6gを溶解し、80℃にて5時間加熱攪拌した。その後、氷水300mlに反応液を滴下し、析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物(20)5.8g(63%)を得た。
このもののマススペクトルを測定したところM=363であった。
【0047】
(実施例10)化合物例(25)の合成
濃硫酸中20mlに5−アミノー4−シアノー3−メチルー1−フェニルピラゾール5g、5−ヒドロキシー3−メチルー4−ニトロソピラゾール3.2gを溶解し、80℃にて5時間加熱攪拌した。その後、氷水300mlに反応液を滴下し、析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物(25)4.8g(62%)を得た。
このもののマススペクトルを測定したところM=307であった。
【0048】
(実施例11)化合物例(28)の合成
濃硫酸中20mlに5−アミノー3−t−ブチルー4−シアノー1−フェニルピラゾール5g、5−ヒドロキシー3−メチルー4−ニトロソ−1−フェニルピラゾール4.2gを溶解し、80℃にて5時間加熱攪拌した。その後、氷水300mlに反応液を滴下し、析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物(28)5.4g(57%)を得た。
このもののマススペクトルを測定したところM=459であった。
【0049】
(実施例12)化合物例(30)の合成
濃硫酸中20mlに5−アミノー4−シアノー1、3−ジフェニルピラゾール5g、3−t−ブチルー5−ヒドロキシー1−メチルー4−ニトロソピラゾール3.5gを溶解し、80℃にて5時間加熱攪拌した。その後、氷水300mlに反応液を滴下し、析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥し目的の化合物(30)4.7g(57%)を得た。
このもののマススペクトルを測定したところM=426であった。
【比較例】
【0050】
化合物(30)の合成
酢酸20mlに5−アミノー4−シアノー1、3−ジフェニルピラゾール5g、3−t−ブチルー5−ヒドロキシー1−メチルー4−ニトロソピラゾール3.5gを溶解し、80℃にて5時間加熱攪拌した。HPLCにて測定したものの化合物(30)は全く生成していなかった。
そこで更に昇温し加熱還流下にて5時間攪拌したものの、生成物は確認されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物とを反応させ、下記一般式(III)で表される化合物を得ることを特徴とするアゾ化合物の製造方法。
【化1】

【化2】

【化3】

式中、R、R,R,R、Rは水素原子又は置換基を表す。
【請求項2】
脱水剤の存在下で反応させることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
脱水剤として硫酸またはポリリン酸を用いることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
、Rの少なくとも一方が電子吸引性基を有する基であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−241914(P2010−241914A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90540(P2009−90540)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)