説明

アッセイ用デバイス

【課題】免疫学的測定等のアッセイ法において、溶液中の各成分試薬を担体に均一に送液すると共に、気泡の混入を防止する。
【解決手段】免疫学的測定等のアッセイ用デバイス1において、被験物質に対する特異的結合物質が固定された検出部位41を有する不溶性担体40と、この不溶性担体40に対向する対向面を有する対向部51であって、検出部位41と対向面との間に間隙70(充填部位)を形成するように構成された対向部51と、間隙70に流路を介して連結し、この間隙70に液体62bを注入するための液体注入部63aとを備え、上記流路において、液体62bとこの液体中に存在する気泡とを分離する気液分離部80をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学的測定等のアッセイ法を用いて、試料中に存在する被験物質を検出するアッセイ用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被験物質を含有する試料(検体溶液)を担体に送液し、免疫学的測定等のアッセイ法を用いてこの被験物質を簡便かつ迅速に検出するデバイスが数多く開発されており、体外診断薬や毒物検出等の各種デバイスが市販されている。このようなデバイスの一例としてイムノクロマトグラフ法を利用したものが挙げられる。イムノクロマトグラフ法を用いた場合には、その判定・測定に重厚な設備・機器を必要とせず、操作が簡便であり、被験物質を含む可能性のある検体溶液を担体上に滴下した後、約5〜10分間静置するだけで測定結果が得られる。そのため、免疫学的測定等のアッセイ法を用いた測定手法は、簡便かつ迅速な特異性の高い測定手法として、多くの場面、例えば病院における臨床検査あるいは研究室における検定試験等で広く使われている。
【0003】
ところで、天然物、毒素、ホルモン、又は農薬等の生理活性物質あるいは環境汚染物質は、従来の一般的なアッセイ法では検出できない極微量で生体に作用する物質が多いため、それらの物質の簡便、迅速、かつ高感度なアッセイ法の開発が求められている。このため、例えば、検体溶液を担体に滴下して、被験物質を特異的に担体に固定化させた後、担体中に非特異的に残存する被験物質を洗浄液で洗浄し、固定化した被験物質を標識する標識物質の量に相関性のあるシグナル(例えば、蛍光標識から生じる蛍光、散乱標識から生じる散乱光および酵素によって変換された蛍光性基質等)を増幅し、この増幅されたシグナルを検出する等、被験物質の濃度が低い場合にも検出が可能となる方法の開発が行われている。
【0004】
例えば被験物質を高感度に分析することができるアッセイ法として、特許文献1には、シグナルを増幅するための増幅溶液として金属イオンを含有する溶液を用いて、金属コロイドを含む標識物質の近傍で上記金属イオンの還元反応を生じせしめ、金属イオンの還元により生じた金属粒子を上記金属コロイドに沈着せしめて、当該金属コロイドからのシグナルを増幅して検出を行う方法が記載されている。また特許文献2には、酵素を含む標識物質(酵素標識抗体)と被験物質とを、被験物質を捕捉する捕捉試薬が結合された担体に滴下することにより、捕捉試薬−被験物質−酵素標識抗体の複合体を担体中に形成させ、この複合体に含まれる酵素に多量の基質を反応させて発色性基質を生成させ、これにより複合体を構成する被験物質の量に相関性のあるシグナルを増幅して検出を行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−202307号公報
【特許文献2】特許第3309977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本出願人は、特許文献1および2に記載のアッセイ法では、増幅溶液や洗浄液等の溶液中の各成分試薬と担体との分子的な相互作用(例えば、親疎水性作用や静電的作用等)の差により、当該各成分試薬が担体に均一に送液されず、送液速度の遅い成分試薬に起因して所望の反応(例えば、抗原抗体反応、還元反応および酵素基質反応等)を効率よく進行せしめることができないことにより、検出感度の向上に限界があることを見出した。
【0007】
そこで本出願人は、アッセイ法において、担体の検出部位に対向する面を有する部を用いて、当該部と検出部位との間に間隙を形成し、この間隙を通して溶液を担体に送液する方法を検討した。この方法により、この間隙を充填するように溶液を供給することで、上記溶液中の各成分試薬は、当該溶液を検出部位上体による相互作用を受けることなく均一に担体に送液されるため、効率よく所望の反応を進行せしめることが可能となった。
一方、この方法では、溶液を間隙に供給する際に気泡も混入してしまうという問題が生じ得る。混入された気泡は、溶液と担体との接触を妨げ所望の反応の進行を制限する場合があるため、検出感度の向上を制限する要因と成り得る。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、免疫学的測定等のアッセイ法において、溶液中の各成分試薬を担体に均一に送液すると共に、気泡の混入を防止して、より高い検出感度のアッセイ法を可能とするアッセイ用デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るアッセイ用デバイスは、
被験物質に対する特異的結合物質が固定された検出部位を有する不溶性担体と、不溶性担体に対向する対向面を有し検出部位と対向面との間に間隙を形成するように構成された対向部と、間隙に流路を介して連結された液体注入部と、液体注入部から注入された液体から、気泡を分離して気泡の間隙への混入を防止する気液分離部とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
本明細書において上記の「液体注入部」とは、検出部位と対向面との間の間隙に液体を注入するため流路に開口した開口部を意味する。なお、その液体を貯蔵する貯蔵ポットを備えた実施形態においては、この貯蔵ポットから流路に液体を注入するための流路の開口部を意味するものとする。
【0011】
さらに、本発明に係るアッセイ用デバイスは、上記不溶性担体を収容するハウジング本体を備え、
このハウジング本体は、被験物質を含む検体溶液を不溶性担体に注入するための検体溶液注入部と、上記液体注入部と、上記対向部と、上記気液分離部とを有することが好ましい。
【0012】
本明細書において「検体溶液注入部」とは、ハウジング本体に設けられた、検体溶液を注入するために必要な開口部を意味するものとする。例えば検体溶液注入部は、上記不溶性担体に検体溶液を滴下して注入する場合には、上記不溶性担体に通じるようにハウジング本体に形成された注入孔の開口部である。
【0013】
気液分離部は、流路から分岐した、気泡を流路から除去するための気泡排出部を備えるものであり、流路と間隙とを接続する狭窄接続口の開口径が、気泡排出部と流路とを接続する排出接続口の開口径よりも小さいことが好ましい。ここで、「開口径」とは、接続口に内接する最大の円の直径を意味するものとする。
【0014】
狭窄接続口の開口径に対する排出接続口の開口径の比は2以上であることが好ましい。
【0015】
狭窄接続口の開口径は、0.01mm〜0.8mmであることが好ましい。特に0.03〜0.2mmであることが好ましい。
【0016】
狭窄接続口は、狭窄リブによって形成された1つ以上のスリットであることが好ましい。ここで、「スリット」とは、狭窄リブの設置により形成され開口径が0.01〜0.8mmである開口であって、当該開口の面積に対する狭窄リブ未設置時の開口の面積の比が2以上となるような開口を意味するものとする。なお、「狭窄リブ未設置時の開口の面積」とは、狭窄リブがないと仮定した場合における狭窄接続口の開口の面積である。この場合、スリットは、スリットの開口の面積に対する狭窄リブ未設置時の開口の面積の比が5以上となるように形成されたものであることが好ましい。
【0017】
対向部は、対向面における液体の接触角が20°以下となるように構成されたものであることが好ましい。
【0018】
また、気液分離部は、流路から分岐した、気泡を流路から除去するための気泡排出部であって、分岐した位置よりも液体の注入時に上方となる位置にある気泡排出部を備えるものであり、気泡の浮力を利用して気液分離を行うものとすることができる。
【0019】
また、本発明に係るアッセイ用デバイスは、上記不溶性担体である第1の不溶性担体と接触しない状態でハウジング本体に収容されて、検出部位の一部と重なるように検出部位上に保持された、第2の液体を送液するための第2の不溶性担体と、
第1の不溶性担体および第2の不溶性担体と接触しない状態でハウジング本体に収容されて、検出部位の他の一部と重なるように検出部位上に保持された、第2の液体を吸収するための第3の不溶性担体とを備え、
ハウジング本体は、
第2の液体を第2の不溶性担体に注入するための第2の液体注入部と、
対向部を含有する押付け部とをさらに備えるものであり、
押付け部が、第1の不溶性担体側へ押圧された際に検出部位において、対向部によって上記間隙を形成すると共に、第2の不溶性担体および第3の不溶性担体の検出部位とそれぞれ重なった部分を第1の不溶性担体に押し付けるように構成されたものとすることができる。
【0020】
本明細書において「第2の液体注入部」とは、第2の不溶性担体に第2の液体を注入するために必要な開口部を意味するものとする。例えば第2の液体注入部は、第2の不溶性担体に第2の液体を滴下して注入する場合には、第2の不溶性担体に通じるように形成された注入孔の開口部であり、第2の液体が貯蔵された貯蔵ポットに第2の不溶性担体を浸漬して注入する場合には、第2の不溶性担体を浸漬するためにこの貯蔵ポットに開口された開口部であり、第2の液体が貯蔵された貯蔵ポットからこの貯蔵ポットに接続された注入孔を通して注入する場合には、この注入孔の開口部である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るアッセイ用デバイスは、不溶性担体の検出部位と不溶性担体に対向する対向部(対向面)とにより形成された間隙を用いて、溶液中の各成分試薬を担体に均一に送液すると共に、溶液を上記間隙に注入する際に生じる気泡の混入を気液分離部によって防止するように構成されている。したがって、本発明に係るアッセイ用デバイスによって、溶液による上記間隙の充填率を向上させて溶液と担体との効率的な接触が可能となり、所望の反応の進行が制限されることを防止することができる。これにより、不溶性担体の検出部位における呈色を効率よく検出することができ、検出感度の高いアッセイ法が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のアッセイ用デバイスの一実施の態様を示す分解概略斜視図である。
【図2】第1のデバイス部品の不溶性担体装填前の構成を示す概略斜視図である。
【図3】第2のデバイス部品の担体装着側の担体装着時の構成を示す概略斜視図である。
【図4】第2のデバイス部品の担体装着側の担体未装着時の構成を示す概略斜視図である。
【図5】図1のアッセイ用デバイスのI−I線における概略切断部端面図である。
【図6】図5において、押付け部が押圧された状態を示す概略切断部端面図である。
【図7】第2のデバイス部品と第1の不溶性担体との関係において、充填部位および気泡排出部の一実施の態様を示すII−II線における概略切断部端面図である。
【図8】第2のデバイス部品と第1の不溶性担体との関係において、充填部位および気泡排出部の他の実施の態様を示すII−II線における概略切断部端面図である。
【図9】第2のデバイス部品の他の実施の態様を示す概略斜視図である。
【図10】第2のデバイス部品と第1の不溶性担体との関係において、充填部位および気泡排出部の他の実施の態様を示すII−II線における概略切断部端面図である。
【図11】図10において、気泡排出部側から第1の不溶性担体の長さ方向に沿って狭窄接続口を眺めた場合の概略切断部端面図である。
【図12】第2のデバイス部品と第1の不溶性担体との関係において、充填部位および気泡排出部の他の実施の態様を示すII−II線における概略切断部端面図である。
【図13】テフロン(登録商標)チューブにより強制的に気泡を送る方法を示す概略図である。
【図14】実施例および比較例の実験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明するが、本発明はこれに限られるものではない。なお、視認しやすくするため、図面中の各構成要素の縮尺等は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0024】
<アッセイ用デバイスの第1の実施形態>
まず、第1の実施形態に係るアッセイ用デバイス1の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るアッセイ用デバイス1の全体構成を示す概略斜視図である。図1に示すように、本実施形態のアッセイ用デバイス1は、検査に必要な複数の不溶性担体(第1の不溶性担体40、第2の不溶性担体45および第3の不溶性担体47)および複数の液体と、これらを含むハウジング本体2とにより構成され、このハウジング本体2は第1のデバイス部品10と第2のデバイス部品20と第3のデバイス部品30とにより構成される。なお、図1においては、内部を理解しやすくするために便宜上これらのデバイス部品が分けて示されている。つまり、実際に使用する際はこれらのデバイス部品が嵌合させて使用される。そして、図2は第1のデバイス部品10の不溶性担体未装填時の構成を示す概略斜視図、図3および図4は第2のデバイス部品20の不溶性担体装着側の担体装着時および担体未装着時の構成をそれぞれ示す概略斜視図、図5および図6は図1のI−I線におけるアッセイ用デバイス1の概略切断部端面図、図7は第2のデバイス部品20と第1の不溶性担体40との関係において、後述する間隙70および気泡排出部80の実施の態様および位置関係を示すII−II線における概略切断部端面図である。なお、以下ではアッセイ法の一実施の態様として、サンドイッチ法のイムノアッセイ法を例にとって説明するが、特にこれに限定されるものではなく、競合法などのその他イムノアッセイも好適に実施することが可能である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係るアッセイ用デバイス1は、第2のデバイス部品20が嵌合された第1のデバイス部品10と第3のデバイス部品30とが上下に係合されてなるハウジング本体2と、このハウジング本体2に装填された3つの不溶性担体(被験物質に対する特異的結合物質が固定された検出部位41を有する第1の不溶性担体40、アッセイにおいて必要な液体を送液するための第2の不溶性担体45、および上記液体を吸収するための第3の不溶性担体47)とを備えている。ここで、図1から図3に示すように、第1のデバイス部品10と第2のデバイス部品20とは、第1のデバイス部品10に形成された嵌合突起部12および13が、第2のデバイス部品20に形成された嵌合口であってこれらの嵌合突起部にそれぞれ対応する嵌合口22および23に挿入されることにより、嵌合される。また図1に示すように、第1のデバイス部品10と第3のデバイス部品30とは、第1のデバイス部品10に形成された係合突起部18が、第3のデバイス部品30に形成された係合口であって上記係合突起部に対応する係合口38に挿入されることにより、係合される。
【0026】
第1の不溶性担体40は、一般的なクロマトグラフ法で使用されるいわゆるテストストリップであり、検体溶液を滴下する部分である試料添加パッド、被験物質と結合可能な標識物質が固定された標識物質保持パッド、被験物質に対する特異的結合物質が固定された検出部位41を有するクロマトグラフ担体、及び送液された検体溶液等を吸収する吸収パッドを有している。なお、ここでは説明を簡単にするために検出部位41として検出ライン42を1つ設けた態様について説明するが、検出ラインは複数設けてもよく、またそれらの検出ラインにはそれぞれ異なる特異的結合物質を固定してもよい。こうすることによって検体溶液に複数の被験物質が含まれる場合に、一度に複数の被験物質を検出することが可能となる。また、クロマトグラフ担体には、所望により、コントロ−ル用特異的結合物質を固定化した領域(コントロ−ルライン)を設けてもよい。第1の不溶性担体40のより詳細な説明、第2の不溶性担体45および第3の不溶性担体47の詳細な説明については後述する。
【0027】
第1のデバイス部品10は、図2に示すように、第1の不溶性担体40の横に設けられたリブ15を有している。このリブ15によって、第2の不溶性担体45と第3の不溶性担体47とが、第1の不溶性担体40の検出部位41においてそれぞれ重なる位置関係で保持されると共に、第1の不溶性担体40、第2の不溶性担体45および第3の不溶性担体47が通常状態で互いに接触しないように、第1のデバイス部品10と第2のデバイス部品20との距離が調整されている。図2に示すように、第1のデバイス部品10には、第1の不溶性担体40の下になる部分に、第1の不溶性担体40の検出部位41を第1のデバイス部品10の外側(アッセイ用デバイス1の裏面側)から観察できるようにする観察窓16が設けられている。
【0028】
第3のデバイス部品30は、図1に示すように、第1のデバイス部品10に収容されている第1の不溶性担体40に対して被験物質を含有する検体溶液を注入するための検体溶液注入孔31と、後述する貯蔵ポット62、65および押付け部50がそれぞれ二又棒で押圧されることを可能にする押圧用開孔32、33、34とを備えている。つまり、本実施形態において、検体溶液注入孔31の開口部が本発明の検体溶液注入部として機能する。なお図1に示すように、第2のデバイス部品20は、検体溶液注入孔31から注入された検体用液の第1の不溶性担体40への注入を妨害しないように構成されている。
【0029】
第2のデバイス部品20の表側には、図1に示すように、第1の不溶性担体40に対して増幅溶液を供給するための増幅溶液貯蔵ポット62が装着された増幅溶液貯蔵ポット受け部61と、第2の不溶性担体45に対して洗浄液を供給するための洗浄液貯蔵ポット65が装着された洗浄液貯蔵ポット受け部64とが設けられている。増幅溶液貯蔵ポット受け部61には、増幅溶液が充填された状態でラミネートフィルムにより封止された増幅溶液貯蔵ポット62が、この封止された部分を下にしてセットされている。また増幅溶液貯蔵ポット受け部61の内部には、増幅溶液貯蔵ポット62に充填されている増幅溶液を第1の不溶性担体40に対して供給するために、増幅溶液貯蔵ポット62を押し込むと増幅溶液貯蔵ポット62のラミネートフィルムを破ることが可能な封止破り突起部(図示せず)が設けられている。さらに図3に示すように、増幅溶液貯蔵ポット受け部61には、第2のデバイス部品20の裏側(第2および第3の不溶性担体が装着される側)へと続く増幅溶液注入孔63aが接続されている。洗浄液貯蔵ポット65および洗浄液貯蔵ポット受け部64についても、増幅溶液貯蔵ポット62および増幅溶液貯蔵ポット受け部61とほぼ同様の構成であり、図4に示すように、洗浄液貯蔵ポット受け部64には、貯蔵されている洗浄液を第2の不溶性担体45に注入するように、洗浄液貯蔵ポット受け部64から第2のデバイス部品20の裏側へと続く洗浄液注入孔66が接続されている。本実施形態において、増幅溶液注入孔63aの増幅溶液貯蔵ポット受け部61に接続された開口部が、本発明の第1の液体注入部として機能しており、洗浄液注入孔66の洗浄液貯蔵ポット受け部64に接続された開口部が、本発明の第2の液体注入部として機能しているといえる。
【0030】
第2のデバイス部品20の裏側には、図3および図4に示すように、第2の不溶性担体45を装着し固定するためのL型突起部46aおよび突起部46bと、第3の不溶性担体47を装着し固定するためのL型突起部48aおよび突起部48bとが形成されている。そして、これらの不溶性担体は、上記L型突起部に係合すると共に上記突起部に嵌合する(ここで、不溶性担体には当該突起部に嵌合する開口が形成されている。)ことにより、第2のデバイス部品20の裏側に装着される。
【0031】
第2のデバイス部品20において、図3〜図6に示すように、第1の不溶性担体40の検出部位41に対向する位置には、第1の不溶性担体40に対して平行な対向部51と充填リブ52と押付け面53とを有する押付け部50が設けられている。この押付け部50は、第3のデバイス部品30の押圧用開孔34を通して挿入された二又棒90によって押圧可能となるように形成されている。この押付け部50は、図6に示すように検出部位41に向けて押圧されることにより、押付け部50が変位して、押付け面53によって第2の不溶性担体45と第3の不溶性担体47とをそれぞれ第1の不溶性担体40に接触させるとともに、第1の不溶性担体40と対向面との間に間隙70を形成するように構成されている。充填リブ52は、上記間隙70に充填される液の充填能力を高めるように押付け部50に形成されており、また、この充填リブ52の高さ(突出具合)を調整することにより、間隙の高さd(第1の不溶性担体40と変位が規制された対向面との距離)を調節することができる。
【0032】
前述した増幅溶液注入孔63aは、封止破り突起部によって増幅溶液貯蔵ポット62のラミネートフィルムが破られた場合に、この増幅溶液注入孔63aを通して、増幅溶液貯蔵ポット62に貯蔵されている増幅溶液62bが、第1の不溶性担体40と対向部51との間に形成された間隙70に充填されるように設けられている。以後、このような機能に基づいてこの間隙を「充填部位」と称する場合がある。すなわち、増幅溶液注入孔63aは、増幅溶液62bを充填部位70へ送液し充填するための流路の一部となっている。また、押付け部50には、充填部位70への増幅用液62bの充填を効率よく行うため、上記充填部位70にもともと存在していた空気を逃がすための通気孔63bが設けられている。
【0033】
図7は、充填部位70および気泡排出部80の実施の態様および位置関係を示すII−II線における概略切断部端面図である。ただし、図7では説明を簡略化するために第1の不溶性担体と第2のデバイス部品20との関係についてのみ図示している。図7に示すように第2のデバイス部品20の裏側には、増幅溶液62bが増幅溶液貯蔵ポット62から供給され増幅溶液注入孔63aを通して充填部位70に送液されるまでの流路に、増幅溶液62bに含まれる気泡をハウジング本体外へ排出するための気泡排出部80を形成することを可能とする溝部67が設けられている。具体的に本実施形態では、上記押付け部50が押圧された際に、この溝部67と第1の不溶性担体40とにより囲まれる空間であって、上記流路とハウジング本体2外部とを繋ぐ空間が、本願発明における気泡排出部80となる。気泡排出部80は、上記流路から分岐して形成されており、増幅溶液62bと共に流路を流れる気泡を排出して、気泡が充填部位70に混入されるのを防止する役割を担っている。ただし、気泡排出部80は、必ずしも第2のデバイス部品20と第1の不溶性担体40とによって挟まれて形成される必要は無く、例えば予め第2のデバイス部品20に形成された気泡排出のための孔を、気泡排出部80として或いはその一部として用いてもよい。
【0034】
気泡排出部80は、図7に示すように、増幅溶液62bにふくまれる気泡を排出しやすくするために、気泡排出部80と上記流路とを接続する排出接続口82の開口径が充填部位70と上記流路とを接続する狭窄接続口72の開口径よりも大きく(狭窄接続口72の開口径が排出接続口82の開口径よりも小さく)なるように、形成されていることが好ましい。ここで、それぞれの接続口の「開口径」とはその接続口に内接する最大の円の直径を意味するものであり、例えば接続口が長方形状である場合にはその開口径は短辺の長さを意味する。つまり、これらの接続口は、狭窄接続口72の開口径に対する排出接続口82の開口径の比(開口径比)が1.0よりも大きくなるように形成されることが好ましく、特に2以上となるように形成されることが好ましい。これにより気泡は、開口径の小さい狭窄接続口72よりも開口径の大きい排出接続口82から排出されやすくなり、気泡が充填部位70に混入することを防止することが可能となる。特に後述する実施例より明らかなように開口径比が2以上であれば、気泡の混入数を一桁以下に抑えることが可能となる。
【0035】
通常増幅溶液62bに混入する気泡の大きさを考慮すると、気泡を効率よく排出するために、狭窄接続口72の開口径は1.0mm以下であることが好ましく、0.01mm〜0.8mmであることがより好ましく、特に0.03〜0.2mmであることが好ましい。開口径が小さい程気泡を圧縮するのにより大きな力が必要となり、気泡が充填部位70へ混入することを効率よく防止することができるという観点から、上記上限値を定めた。また、狭窄接続口72の開口径が小さすぎると充填部位70に増幅溶液62bが注入されにくくなるという観点から、上記下限値を定めたさらに、図8に示すように、狭窄接続口72を狭窄リブ74により形成することもできる。このようにした場合には、充填部位70の充填容量(間隙の空間体積)を充分確保すると共に、効率よく気泡の混入を防止しうる程度に狭窄接続口72を小さくすることが可能となる。狭窄リブ74は、図8に示すように1つのスリットを形成するような形状に限定されず、後述するように複数のスリットを形成するようなリブでもよく、さらにはメッシュ状の狭窄接続口72を形成するようなリブでもよい。スリットの開口面積に対する狭窄リブ未設置時の開口面積の比は、大きな気泡排除効果を得る観点から、5以上であることがより好ましい。
【0036】
また、毛細管現象を利用して気泡を排出しやすくするために、対向部51の対向面(狭窄接続口72近傍の部材の表面を含む)における増幅溶液62bの接触角が、気泡排出部80を構成している部材表面における増幅溶液62bの接触角よりも小さくなるように、対向部51の部材若しくは気泡排出部80を構成している部材の材料選択を行う、或いはこれらの部材にコーティング等の表面処理を行うことが好ましい。このような場合には、必ずしも狭窄接続口72の開口径が排出接続口82の開口径よりも小さい必要はない。対向部51は、対向面における増幅溶液62bの接触角が20°以下となるように構成されることが好ましい。これにより、毛細管現象をより効率よく起こすことができる。ここでの接触角とは、気温25℃、湿度40〜60%の環境において、増幅液20μlの液滴を、対向面に滴下してから5秒後の接触角測定値とする。
【0037】
なお上記説明において、充填部位70に充填される溶液を増幅溶液として説明してきたが、本発明は増幅溶液に限られることはない。つまり、他の溶液が貯蔵ポット62に貯蔵された場合においても、気泡を分離しうることおよび適切な接触角について同様の議論を行うことができる。
【0038】
次に、本実施形態に係るアッセイ用デバイスを用いた被験物質のアッセイ法の手順を説明する。ここでは検出に使用する液体として、被験物質を含有する検体溶液、試薬溶液としての洗浄液、および増幅溶液を用いる場合を例にとって説明する。
【0039】
まず、検体溶液を、第3のデバイス部品30の検体溶液注入孔31から、第1のデバイス部品10に収容されている第1の不溶性担体40の試料添加パッドに点着する。点着した検体溶液は第1の不溶性担体40の毛細管力によって標識物質保持パッドの方向へと送液される。標識物質保持パッドには被験物質と特異的に結合可能な標識物質が含有されているため、検体溶液中の被験物質は、標識物質保持パッドを送液される間に、この標識物質によって標識される。
【0040】
標識された被験物質は毛細管力によってクロマトグラフ担体の方向へとさらに移動し、特異的結合物質を固定化した領域である検出ライン42で捕捉される。つまり、検出ライン42では特異的結合物質−被験物質−標識物質の複合体が形成されることになる。捕捉されなかった被験物質や結合しなかった未反応標識物質等は吸収パッドに吸収される。この検体溶液を送液する段階においては、図5に示すように第1の不溶性担体40と、第2の不溶性担体45および第3の不溶性担体47とは互いに接触しない状態となっている。このように、第1の不溶性担体40、第2の不溶性担体45および第3の不溶性担体47を互いに接触しない状態とすることにより、検体溶液を送液する段階においては、第1の不溶性担体40にのみ検体溶液を送液することが可能となり、第2の不溶性担体45および第3の不溶性担体47に検体溶液が浸潤することがなく、稀少な検体溶液を検出ライン42で無駄なく捕捉することが可能となる。
【0041】
次に、検出ライン42に特異的結合反応以外で残存している未反応標識物質等をクロマトグラフ担体から洗浄することで除去する。図6を用いて説明する。図6は図5において、洗浄液貯蔵ポット受け部64に装着された洗浄液貯蔵ポット65が押圧用開孔33を通して二又棒で押圧された後に、押付け部50が押圧された状態を示す概略断面図である。この洗浄工程においては、第2のデバイス部品20に設けられている押付け部50を、第1の不溶性担体側に向けて押圧する。これによって、第2のデバイス部品20に設けられた対向部51および押付け面53が変位して、押付け面53によって検出部位41と第2の不溶性担体45および第3の不溶性担体47とがそれぞれ部分的に接触する状態になる。
【0042】
このとき、押付け部50に設けられた充填リブ52が第1の不溶性担体40に当接するため、対向部51の変位は規制される。この結果、第1の不溶性担体40と対向部51の対向面との間には間隙70(充填部位)が形成される。この間隙70の高さdは0.01〜1mm程度が好ましい。0.01mm未満の場合には、後述する増幅溶液等が浸潤することが困難であり、一方、1mmよりも大きくなると毛細管力が発揮されず、洗浄液や増幅溶液等の均一な液展開が難しくなる。充填リブ52は、上記間隙70の高さdが上記範囲となるように構成されることが好ましい。
【0043】
一方、第2のデバイス部品20に設けられた洗浄液貯蔵ポット65には洗浄液65bが充填されており、洗浄液貯蔵ポット65が押圧用開孔33を通して二又棒で押圧されたことによって、洗浄液貯蔵ポット65の底部を封止しているラミネートフィルム65aが破れ、洗浄液65bが洗浄液注入孔66を介して第2の不溶性担体45に注入される(図6)。そして、これらの不溶性担体の毛細管力によって、第2の不溶性担体45から第1の不溶性担体40へ、第1の不溶性担体40から第3の不溶性担体47に向けて洗浄液が送液される。
【0044】
また、上記のとおり、検体溶液が流れる流路(第1の不溶性担体40に沿った経路)と洗浄液が流れる流路(第2の不溶性担体45から第1の不溶性担体40を通って第3の不溶性担体47へ至る経路)の交わりが最小限であるため、検体溶液の送液によって送液方向の下流(吸収パット)に溜まった未結合の被験物質や検体溶液に含まれる夾雑物が再度、検出部位41に流れることがなく、洗浄液を多量に用いなくても、検出部位41の洗浄を効果的に行うことが可能であり、高精度の検出を行うことが可能である。
【0045】
続いて検出部位41に第2のデバイス部品20に設けられた増幅溶液貯蔵ポット62より、増幅溶液62bを送液する(図7または図8)。増幅溶液62bの送液は、増幅溶液貯蔵ポット62を第1のデバイス部品10の方向に押圧することにより行う。この押圧により増幅溶液貯蔵ポット受け部61の内部に設けられた封止破り突起部が、増幅溶液貯蔵ポット62の底部のラミネートフィルムを破り、第2のデバイス部品20に設けられた増幅溶液注入孔63aから、第1の不溶性担体40に向けて増幅溶液62bが送液される。
【0046】
このとき、第1の不溶性担体40と対向部51の対向面との間に充填部位70を形成し、この充填部位70によって増幅溶液62bは第1の不溶性担体40上を均一に送液されることになる。これによって、検出部位41に捕捉されている複合体の標識物質は均一に増幅されることになる。また、増幅溶液62bの送液は検出部位41に対して垂直方向からの送液となり、このように送液することによって、増幅溶液62bの液量を節約することも可能である。さらに、本発明においては、増幅溶液貯蔵ポット62から注入された増幅溶液62bが充填部位70に送液されるまでの流路に、この流路に分岐するように気泡排出部80が形成されるため、増幅溶液62bに混入している気泡が充填部位70に混入することを防止することが可能となる。
【0047】
増幅後、第1のデバイス部品10の観察窓16より、検出ライン42を目視あるいは光検出器等を利用して観察、測定することにより被験物質の検出を高精度かつ高感度に行うことができる。
【0048】
以下、本発明のアッセイ用デバイスに用いられる検体溶液、試薬溶液等の各種溶液、標識物質、不溶性担体等について詳細に説明する。
【0049】
(検体溶液)
本発明のアッセイ用デバイスを用いて分析することのできる検体溶液としては、被験物質(天然物、毒素、ホルモンまたは農薬等の生理活性物質あるいは環境汚染物質等)を含む可能性のあるものである限り、特に限定されるものではない。例えば検体溶液として、生物学的試料、特には動物(特にヒト)の体液(例えば、血液、血清、血漿、髄液、涙液、汗、尿、膿、鼻水、又は喀痰)若しくは排泄物(例えば、糞便)、臓器、組織、粘膜や皮膚、それらを含むと考えられる搾過検体(スワブ)、うがい液、又は動植物それ自体若しくはそれらの乾燥体を後述の希釈剤で希釈したもの等を挙げることができる。
【0050】
上記検体溶液はそのままで、あるいは、検体溶液を適当な抽出用溶媒を用いて抽出して得られる抽出液の形で、さらには、この抽出液を適当な希釈剤で希釈して得られる希釈液の形、若しくは抽出液を適当な方法で濃縮した形で用いることができる。抽出用溶媒としては、通常の免疫学的分析法で用いられる溶媒(例えば、水、生理食塩液、又は緩衝液等)、あるいは、これらの溶媒で希釈することにより直接特異的な結合反応(例えば、抗原抗体反応)を実施することができる水混和性有機溶媒を用いることもできる。
【0051】
(標識物質)
本発明で使用することができる標識物質としては、一般的なイムノクロマトグラフ法で用いられるような金属微粒子(金属コロイド)、着色ラテックス粒子、酵素など、有色で視認できる、または、反応により検出できるようになる標識物であれば特に限定されることなく用いることができる。ここで、標識物質を触媒とした金属イオンの還元反応によって、標識物質への金属の沈着でシグナルを増幅する場合には、その触媒活性の観点から金属微粒子が好ましい。
【0052】
金属微粒子としては、金属コロイド、金属硫化物、その他金属合金、または金属を含むポリマ−粒子標識を用いることができる。粒子(又はコロイド)の平均粒径は、1nm〜10μmの範囲が好ましい。ここで、平均粒径とは、透過型電子顕微鏡(TEM)により実測された複数の粒子の径(粒子の最長径)の平均値である。より詳細には、金コロイド、銀コロイド、白金コロイド、鉄コロイド、水酸化アルミニウムコロイド、およびこれらの複合コロイドなどが挙げられ、好ましくは、金コロイド、銀コロイド、白金コロイド、およびこれらの複合コロイドであることが望ましい。特に、金コロイドと銀コロイドが適当な粒径において、金コロイドは赤色、銀コロイドは黄色を示し視認度が高いという観点からより好ましい。金属コロイドの平均粒径としては、約1〜500nmが好ましく、さらには1〜100nmがより好ましい。
【0053】
(特異的結合物質)
特異的結合物質としては、被検物質に対して親和性を持つものならば特に限定されることはなく例えば、被験物質が抗原である場合には当該抗原に対する抗体、被験物質がたんぱく質、金属イオンまたは低分子量有機化合物である場合にはこれらに対するアプタマー、被験物質がDNAやRNAなど核酸である場合にはこれらに対して相補的な配列を持つDNAやRNA等の核酸分子、被験物質がアビジンである場合にはビオチン、被験物質が特定のペプチドの場合にはこれに特異的に結合する錯体、等を挙げることができる。また、上記した例では特異的結合物質と被験物質との関係を入れ替えることもでき、例えば被験物質が抗体である場合には当該抗体に対する抗原を、特異的結合物質として用いることもできる。さらに、上記のような被検物質に対して親和性を持つ物質を一部に含有する化合物等を特異的結合物質として用いることもできる。
上記抗体としては具体的に、その被験物質によって免疫された動物の血清から調製する抗血清、抗血清から精製された免疫グロブリン画分、その被験物質によって免疫された動物の脾臓細胞を用いる細胞融合によって得られるモノクローナル抗体、あるいは、それらの断片[例えば、F(ab’)2、Fab、Fab’、又はFv]を用いることができる。これらの抗体の調製は、常法により行なうことができる。
【0054】
(標識物質のシグナル増幅)
標識物質として金属コロイド標識、金属硫化物標識、その他金属合金標識、または金属を含むポリマ−粒子標識を用いるアッセイの場合には、これら金属系標識の信号を増幅させることができる。具体的には、被験物質と標識物質の複合体の形成後に、無機銀塩、有機銀塩などの銀を含む化合物から供給される銀イオンおよび還元剤を接触させ、還元剤によって銀イオンを還元して銀粒子を生成させると、その銀粒子が金属系標識を核として金属系標識上に沈着するので、金属系標識が増幅され、被験物質の分析を高感度に実施することができる。
【0055】
(第1の不溶性担体)
第1の不溶性担体(イムノクロマトグラフ用のテストストリップともいう)は図1に示すように、被験物質と結合可能な特異的結合物質を含む少なくとも1つの検出ラインを有する担体であり、例えば展開方向の上流から下流に向かって、試料添加パッド、標識物質保持パッド、クロマトグラフ担体、及び吸収パッドに分画され、この順に、粘着シート上に配置されてなる。第1の不溶性担体の材質は、多孔性であることが好ましく、例えば、ニトロセルロース膜、セルロース膜、アセチルセルロース膜、ポリスルホン膜、ポリエーテルスルホン膜、ナイロン膜、ガラス繊維、不織布、布、または糸等が好ましく挙げられる。
【0056】
クロマトグラフ担体には、被験物質に対する特異的結合物質を固定化させて検出ラインや所望によりコントロールラインが作製される。特異的結合物質は、特異的結合物質をクロマトグラフ担体の一部に物理的または化学的結合により直接固定化させてもよいし、特異的結合物質をラテックス粒子などの微粒子に物理的または化学的に結合させ、この微粒子をクロマトグラフ担体の一部にトラップさせて固定化させてもよい。なお、クロマトグラフ担体は、特異的結合物質を固定化後、不活性蛋白による処理等により非特異的吸着防止処理を施され用いられることが好ましい。
【0057】
標識物質保持パッドは、前述の標識物質を含む懸濁液を調製し、その懸濁液を適当なパッド(例えば、グラスファイバーパッド)に塗布した後、それを乾燥することにより調製することができる。標識物質保持パッドの材質としては、例えば、セルロース濾紙、グラスファイバー、及び不織布等が挙げられる。
【0058】
試料添加パッドは添加された被験物質を含む検体試料を点着する部分であって、試料中の不溶物粒子等を濾過する機能をも兼ねる部分である。その材質は、セルロース濾紙、ガラス繊維、ポリウレタン、ポリアセテート、酢酸セルロース、ナイロン、及び綿布等の均一な特性を有するものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、分析の際、試料中の被験物質が試料添加部の材質に非特異的に吸着し、分析の精度を低下させることを防止するため、試料添加パッドは予め非特異的吸着防止処理を施され用いられることが好ましい。
【0059】
吸収パッドは、添加された試料がクロマト移動により物理的に吸収されると共に、クロマトグラフ担体の検出ラインに不溶化されない未反応標識物質等を吸収除去する部位であり、セルロ−ス濾紙、不織布、布、セルロースアセテート等吸水性材料が用いられる。添加された試料のクロマト先端部が吸収部に届いてからのクロマトの速度は、吸収材の材質、大きさなどにより異なるので、その選定により被験物質の測定に合った速度を設定することができる。
【0060】
(第2の不溶性担体−送液用不溶性担体)
第2の不溶性担体は、洗浄液を毛細管力により第1の不溶性担体に送液することができるものであれば特に限定されるものではなく、グラスファイバーパッドやセルロースメンブレン、ニトロセルロースメンブレンなどを用いることができる。
【0061】
(第3の不溶性担体−吸収用不溶性担体)
第3の不溶性担体は、第1の不溶性担体に浸潤した洗浄液を吸水することができる物質であれば特に限定されるものではなく、グラスファイバーパッドやセルロースメンブレン、ニトロセルロースメンブレン、それらの混合体などを用いることができる。
【0062】
(試薬溶液)
試薬溶液は、増幅溶液や検出溶液の補足的な役割を持つ薬品を含む溶液を意味し、アッセイにおいて洗浄機能を有する液、洗浄液もこれに含まれる。例えば増幅溶液が後述する銀イオン溶液である場合には、試薬溶液としてはその銀イオンの還元剤となるハイドロキノンや2価鉄イオン溶液などが挙げられる。また、ペルオキシダーゼ酵素での増幅をする場合には、試薬溶液としては過酸化水素の溶液が挙げられる。また、上記の還元剤や過酸化水素の溶液等は洗浄液としても機能する。
【0063】
洗浄液は、特異的な結合反応以外でクロマトグラフ担体内に残存している、つまり非特異的に残存している標識物質を、洗浄するための液体であれば特に限定されるものではない。単なる水やエタノールなどの溶剤単独でも良いし、例えば1%BSA入りのPBSバッファや界面活性剤等の溶液等を用いることができる。また、洗浄液として、後述する銀イオンを含む液体、銀イオンの還元剤を含む液体を用いることもできる。なお、洗浄液は展開途中に非特異的に残存した標識物質を洗浄しながら展開するので標識物質を含みながら展開されることになるが、展開される前の洗浄液は洗浄効果を高めるために、標識物質を含んでいない液を用いる。なお、洗浄効果を上げる為にそのpHを調整したり、界面活性剤成分やBSAなどのタンパク質、ポリエチレングリコールなどの高分子化合物を加えたりした洗浄液を用いてもよい。
【0064】
(増幅溶液)
増幅溶液は、含まれる薬剤が標識物質や被験物質の触媒作用によって反応することにより、呈色或いは発光する化合物などを生じ、シグナルの増幅を起こすことができる溶液である。例えば、金属標識上で、物理現像により金属銀の析出を起こす銀イオン溶液である。詳細には、写真化学の分野での一般書物(例えば、「改訂写真工学の基礎-銀塩写真編-」(日本写真学会編、コロナ社)、「写真の化学」(笹井明、写真工業出版社)、「最新処方ハンドブック」(菊池真一他、アミコ出版社))に記載されているような、いわゆる現像液を用いることができる。例えば、増幅溶液として銀イオン含有化合物を含む物理現像液を用いれば、銀イオンの還元剤により液中の銀イオンを、現像の核となるような金属コロイド等を中心に還元させることができる。
【0065】
また別の例としては、酵素反応を用いた例がある。例えば、ペルオキシダーゼ標識と過酸化水素の作用により色素となる、フェニレンジアミン化合物とナフトール化合物の溶液などが挙げられる。さらに、非特許文献「臨床検査 Vol.41 no.9 p.1020 H−POD系を利用した染色」に記載されているような、西洋わさびペルオキシダーゼ検出の発色基質などでもよい。また、特開2009−156612に記載の発色基質は特に好ましく用いることができる。なお、酵素の代わりに白金微粒子などの金属触媒を用いる系でもよい。
【0066】
別の酵素を用いた例としては、アルカリホスファターゼを標識とし、5−ブロモ−4クロロ−3−インドリル−リン酸二ナトリウム塩(BCIP)を基質として発色させるような系もある。以上、呈色する反応を代表に挙げたが、一般的にエンザイムイムノアッセイで用いられるような、酵素と基質の組み合わせであればなんでも良く、化学発光する基質であっても、蛍光を発する基質であってもよい。
【0067】
以下、増幅溶液として銀イオンを含む化合物と銀イオンの還元剤等について説明する。
【0068】
(銀イオンを含む化合物)
銀イオン含有化合物としては、有機銀塩、無機銀塩、もしくは銀錯体を用いることができる。好ましくは、水などの溶媒に対して溶解度の高い銀イオン含有化合物であり、硝酸銀、酢酸銀、乳酸銀、酪酸銀、チオ硫酸銀などが挙げられる。特に好ましくは硝酸銀である。銀錯体としては、水酸基やスルホン基など水溶性基を有する配位子に配位された銀錯体が好ましく、ヒドロキシチオエーテル銀等が挙げられる。無機銀塩、もしくは銀錯体は、銀として一般に0.001モル/m〜0.2モル/m、好ましくは0.01モル/m〜0.05モル/m含有されることが好ましい。
【0069】
(銀イオンの還元剤)
銀イオンの還元剤は、銀イオンを銀に還元することができれば、無機・有機のいかなる材料、またはその混合物でも用いることができる。
【0070】
無機還元剤としては、Fe2+、V2+、Ti3+、などの金属イオンで原子価の変化し得る還元性金属塩、還元性金属錯塩を好ましく挙げることができる。無機還元剤を用いる際には、酸化されたイオンを錯形成するか還元して、除去するか無害化する必要がある。例えば、Fe2+を還元剤として用いる系では、クエン酸やEDTAを用いて酸化物であるFe3+の錯体を形成し、無害化することができる。本系ではこのような無機還元剤を用いることが好ましく、より好ましくはFe2+の金属塩が好ましい。
【0071】
なお、湿式のハロゲン化銀写真感光材料に用いられる現像主薬(例えばメチル没食子酸塩、ヒドロキノン、置換ヒドロキノン、3−ピラゾリドン類、p−アミノフェノール類、p−フェニレンジアミン類、ヒンダードフェノール類、アミドキシム類、アジン類、カテコール類、ピロガロール類、アスコルビン酸(またはその誘導体)、およびロイコ色素類)、および本分野での技術に熟練しているものにとって明らかなその他の材料、例えば米国特許第6,020,117号に記載されている材料も用いることができる。
【0072】
還元剤としては、アスコルビン酸還元剤が好ましい。有用なアスコルビン酸還元剤は、アスコルビン酸と類似物、異性体とその誘導体を含み、例えば、D−またはL−アスコルビン酸とその糖誘導体(例えばγ−ラクトアスコルビン酸、グルコアスコルビン酸、フコアスコルビン酸、グルコヘプトアスコルビン酸、マルトアスコルビン酸)、アスコルビン酸のナトリウム塩、アスコルビン酸のカリウム塩、イソアスコルビン酸(またはL−エリスロアスコルビン酸)、その塩(例えばアルカリ金属塩、アンモニウム塩または当技術分野において知られている塩)、エンジオールタイプのアスコルビン酸、エナミノールタイプのアスコルビン酸、チオエノ−ルタイプのアスコルビン酸等を好ましく挙げることができ、特にはD、LまたはD,L−アスコルビン酸(そして、そのアルカリ金属塩)若しくはイソアスコルビン酸(またはそのアルカリ金属塩)が好ましく、ナトリウム塩が好ましい塩である。必要に応じてこれらの還元剤の混合物を用いることができる。
【0073】
(検出溶液)
検出溶液とは、含まれる薬剤が標識物質や被験物質などと反応し、変色、着色した化合物の生成、発光等の変化が生じる溶液を意味する。例えば、被験物質であるカルシウムイオンと錯体化することで呈色するオルソクレゾールフタレインコンプレキソンや、被験物質であるタンパク質と反応し変色する銅イオン溶液などが挙げられる。また、被験物質に対して特異的に結合する標識化された複合体の溶液もこれに含まれる。例えば、ハイブリダイゼーションによりDNAやRNAを検出する標識化DNAや標識化RNA、抗原を検出する抗体感作粒子や抗体標識化酵素などが挙げられる。
【0074】
(その他の助剤)
試薬溶液、検出溶液および増幅溶液以外のその他の助剤としては、緩衝剤、防腐剤、例えば酸化防止剤または有機安定剤、速度調節剤を含む場合がある。緩衝剤としては、例えば、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウムまたはこれらの塩、またはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを用いた緩衝剤、その他一般的化学実験に用いられる緩衝剤を用いることができる。これら緩衝剤を適宜用いて、その増幅溶液に最適なpHに調整することができる。
【0075】
以上のように、本実施形態に係るアッセイ用デバイス1は、不溶性担体の検出部位とこの不溶性担体に対向する対向部(対向面)とにより形成された間隙を用いて、溶液中の各成分試薬を担体に均一に送液すると共に、溶液を上記間隙に注入する際に生じる気泡の混入を気液分離部によって防止するように構成されているから、溶液による上記間隙の充填率を向上させて溶液と担体との効率的な接触を可能とし、所望の反応の進行が制限されることを防止することができる。これにより、第1の不溶性担体の検出部位における呈色を効率よく検出することができ、検出感度の高いアッセイ法が可能となる。
【0076】
さらに、本実施形態においては、検出部位に液体を注入する際に、第1の不溶性担体とこの不溶性担体に対向する対向部(対向面)とにより形成された間隙(充填部位)を利用することにより、毛細管現象によって検出部位に均一に液体を展開することができ、より高精度かつ高感度な測定を行うことが可能となる。
【0077】
<アッセイ用デバイスの第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係るアッセイ用デバイス1の構成について説明する。図9は本実施形態に係るアッセイ用デバイス1における第2のデバイス部品20の裏側の構成を示す概略斜視図、図10は第2のデバイス部品20と第1の不溶性担体40との関係において、本実施形態の充填部位70および気泡排出部80の実施の態様および位置関係を示すII−II線における概略切断部端面図、図11は図10において気泡排出部80側から第1の不溶性担体の長さ方向に沿って狭窄接続口72を眺めた場合の概略切断部端面図である。本実施形態に係るアッセイ用デバイス1は、上記第1の実施形態とほぼ同様の構成であるが、第2のデバイス部品20において狭窄接続口72を形成するための狭窄リブ74が複数のスリット構造を形成するように設けられている点で第1の実施形態と異なる。したがって、特に必要のない限り第1の実施形態と同様の構成についての詳細な説明は省略する。
【0078】
図9から11に示すように、本実施形態に係る第2のデバイス部品20の対向部51には、押付け部50が押圧された際に狭窄接続口72を形成するための狭窄リブ74が設けられている。この狭窄リブ74は、図11に示すようにその押付け部50が押圧された際に、その底面は第1の不溶性担体40と接触するが、狭窄リブ74同士の間にスリットを形成するように構成されている。それぞれのスリット72(狭窄接続口)の開口径やアスペクト比等については第1の実施形態と同様である。このような構成にすることで、狭窄接続口72の数や開口径の長さの調節が容易となり、気液分離機能の性能を落とさず(開口径の長さを変えず)に狭窄接続口72の面積を稼ぐことができるため、より効率よく充填部位70に増幅溶液を充填することが可能となる。
【0079】
以上のように、本実施形態に係るアッセイ用デバイス1も、第1の不溶性担体の検出部位と第1の不溶性担体に対向する対向部(対向面)とにより形成された間隙を用いて、溶液中の各成分試薬を担体に均一に送液すると共に、溶液を上記間隙に注入する際に生じる気泡の混入を気液分離部によって防止するように構成されているから、第1の実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。さらに本実施形態においては、気液分離機能の性能を落とさずに狭窄接続口の面積を稼ぐことができるため、より効率よく充填部位に増幅溶液を充填することが可能となる。
【0080】
<アッセイ用デバイスの第3の実施形態>
次に、第3の実施形態に係るアッセイ用デバイス1の構成について説明する。図12は第2のデバイス部品20と第1の不溶性担体40との関係において、本実施形態の充填部位70および気泡排出部80の実施の態様および位置関係を示すII−II線における概略切断部端面図である。本実施形態に係るアッセイ用デバイス1は、上記第1の実施形態とほぼ同様の構成であるが、第2のデバイス部品20において流路から分岐した気泡排出部80が、分岐した位置よりも増幅溶液(第1の液体)の注入時に上方となる位置にある点で第1の実施形態と異なる。したがって、特に必要のない限り第1の実施形態と同様の構成についての詳細な説明は省略する。
【0081】
図12に示すように、本実施形態に係る第2のデバイス部品20には、この第2のデバイス部品20を貫通する気泡排出部80が設けられている。また、この気泡排出部80は、押付け部50が押圧され充填部位70が形成された際に、増幅溶液貯蔵ポット62から注入された増幅溶液62bが充填部位70に送液されるまでの流路から、増幅溶液の注入時に上方となる方向へ分岐するように構成されている。例えば、本実施形態の気泡排出部80は、この気泡排出部80の上記増幅溶液の注入時に下方となる部分において、排出接続口82により上記流路と接続されている。狭窄接続口72の開口径やアスペクト比等については第1の実施形態と同様である。このような構成にすることで、気泡自身の上方へ浮上しようとする浮力を利用して気液分離を効率よく行うことが可能となる。
【0082】
以上のように、本実施形態に係るアッセイ用デバイス1も、第1の不溶性担体の検出部位と第1の不溶性担体に対向する対向部(対向面)とにより形成された間隙を用いて、溶液中の各成分試薬を担体に均一に送液すると共に、溶液を上記間隙に注入する際に生じる気泡の混入を気液分離部によって防止するように構成されてから、第1の実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。さらに本実施形態においては、気泡の浮力を利用して気液分離を効率よく行うことが可能となる。
【0083】
(設計変更)
上記第1から第3の実施形態に係るアッセイ用デバイスの説明では、検体溶液、洗浄液(試薬溶液)、増幅溶液の3種類の液体を例にとって説明したが、検体溶液を含むものであれば、検体溶液、増幅溶液および検出溶液といった組合せ、検体溶液、試薬溶液および検出溶液といった組合せの他、検体溶液とその他各種溶液とを用いた組合せにも適用が可能である。特に、本発明に係るアッセイ用デバイスに付随する第1の液体および第2の液体としてそれぞれ増幅溶液および洗浄液を用いて説明したが、本発明はこれに限られるものではない。また、第2および第3の不溶性担体は必ずしも使用する必要はなく、2つの溶液を第1の不溶性担体の両端にそれぞれ供給し、もう1つ溶液を貯蔵ポット62から注入するようにしてもよい。また、上記の実施形態では、検体用液を含む3種の液体を用いた場合について説明したが、検体用液を含む2種でもよい。この場合も、第2および第3の不溶性担体、貯蔵ポット65は必要ない。上記第1から第3の実施形態に係るアッセイ用デバイスの特徴は、それぞれ任意に組み合わせることが可能である。
【0084】
上記実施形態においては、アッセイ法としてイムノクロマトグラフ法について説明したが、本発明のアッセイ法はこれに限定されない。いわゆる免疫反応を用いない系でもよく、例えば、抗体を用いずにDNAやRNAなどの核酸で被験物質を捕捉する系でもよいし、さらには被験物質に対する親和性を持つ別の小分子やペプチド、たんぱく質、錯体形成物質等、によって被験物質を捕捉する系であってもよい。
【0085】
以下に本発明に係るアッセイ用デバイスの実施例を用いてさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0086】
(イムノクロマトグラフ用ストリップ(第1の不溶性担体)の作製)
バック粘着シート (20mm×150mm(ARcare9020、ニップンテクノクラスタ社)) の一端(長辺側の一端である。以下同じ。)に、抗体固定化メンブレン(25mm×200mm(プラスチックの裏打ちあり、HiFlow Plus HF120、ミリポア社))の一端を3mm重なるように貼り付けた。次ぎに、抗体固定化メンブレンの上記一端に3mm重なるように金コロイド抗体保持パッド(8mm×150mm(Glass Fiber Conjugate Pad、ミリポア社))を上記バック粘着シートに貼り付けた。そして、バック粘着シートの他の一端(抗体固定化メンブレンを貼っていない側の一端)に試料添加パッド(18mm×150mm(Glass Fiber Conjugate Pad、ミリポア社))の一端を合わせ、金コロイド保持パッドを挟み込むように貼り付けた。続いて、抗体固定化メンブレンの他の一端(金コロイド保持パッドを貼っていない側の一端)を、バック粘着シート(20mm×150mm) の一端と吸収パッド(20mm×150mm)の一端とで挟み込むように貼り付けた。これら重ね張り合わせたイムノクロマト本体部を、この本体部の長辺側を7mm幅になるように短辺に平行にギロチン式カッター(CM4000、ニップンテクノクラスタ社)で切断していくことで、7mm×60mmのイムノクロマトグラフ用ストリップを作製した。
【0087】
(銀イオン増幅溶液の作製)
水66gに、硝酸銀溶液8ml(10gの硝酸銀を含む)と1mol/lの硝酸鉄水溶液24mlを加えた。さらに、この溶液と、硝酸(10重量%)5.9ml、ドデシルアミン(和光純薬、123-00246)0.1g、界面活性剤C1225-C-O-(CHCHO)50H 0.1gをあらかじめ47.6gの水に溶解した溶液を混合し、これを銀イオン増幅溶液とした。
【0088】
(アッセイ用デバイスの作製)
第1のデバイス部品10(射出成形によるポリプロピレン製)に、図1で示すようにイムノクロマトグラフ用のテストストリップ40を装填し、第2の不溶性担体45および第3の不溶性担体47として、グラスファイバーパッド(Glass Fiber Conjugate Pad、ミリポア社)を装填した。そして、下記に示すように狭窄接続口72および排出接続口82の開口径についてそれぞれ異なるアッセイ用デバイスを用いて実施例および比較例とした。
【0089】
<実施例1>
第1の実施形態で説明したアッセイ用デバイスにおいて、図7に示すような狭窄接続口72を有するアッセイ用デバイスを用いた。狭窄接続口72の大きさは3.0mm×0.2mmであり、排出接続口82の大きさは3.0mm×0.1mmである。したがって、狭窄接続口の開口径に対する排出接続口の開口径の比(開口径比)は0.5である。なお、図7で示す対向部51の対向面の位置を調整することにより、狭窄接続口72の大きさを調整した。
【0090】
<実施例2>
狭窄接続口72の大きさは3.0mm×0.2mmであり、排出接続口82の大きさは3.0mm×0.2mmである以外は、実施例1と同タイプのアッセイ用デバイスを用いた。したがって、開口径比は1である。
【0091】
<実施例3>
狭窄接続口72の大きさは3.0mm×0.1mmであり、排出接続口82の大きさは3.0mm×0.1mmである以外は、実施例1と同タイプのアッセイ用デバイスを用いた。したがって、開口径比は1である。なお、図7で示す対向部51の対向面の位置を実施例1に対し0.1mm下げた構造の第2のデバイス部品をもちいることで、狭窄接続口72の大きさを調整した。
【0092】
<実施例4>
狭窄接続口72の大きさは3.0mm×0.2mmであり、排出接続口82の大きさは3.0mm×0.3mmである以外は、実施例1と同タイプのアッセイ用デバイスを用いた。したがって、開口径比は1.5である。
【0093】
<実施例5>
狭窄接続口72の大きさは3.0mm×0.2mmであり、排出接続口82の大きさは3.0mm×0.4mmである以外は、実施例1と同タイプのアッセイ用デバイスを用いた。したがって、開口径比は2である。
【0094】
<実施例6>
狭窄接続口72の大きさは3.0mm×0.1mmであり、排出接続口82の大きさは3.0mm×0.2mmである以外は、実施例1と同タイプのアッセイ用デバイスを用いた。したがって、開口径比は2である。なお、図7で示す対向部51の対向面の位置を実施例1に対し0.1mm下げた構造の第2のデバイス部品をもちいることで、狭窄接続口72の大きさを調整した。
【0095】
<実施例7>
狭窄接続口72の大きさは3.0mm×0.1mmであり、排出接続口82の大きさは3.0mm×0.4mmである以外は、実施例1と同タイプのアッセイ用デバイスを用いた。したがって、開口径比は4である。なお、図7で示す対向部51の対向面の位置を実施例1に対し0.1mm下げた構造の第2のデバイス部品をもちいることで、狭窄接続口72の大きさを調整した。
【0096】
<実施例8>
第2の実施形態で説明したアッセイ用デバイスにおいて、複数の狭窄リブ74を用いて図11に示すような複数の縦長スリット型の狭窄接続口72を有するアッセイ用デバイスを用いた。狭窄接続口72(スリット)の数は6である。それぞれの狭窄接続口72の大きさは0.5mm×0.1mmであり、排出接続口82の大きさは3.0mm×0.4mmである。したがって、開口径比は4である。また、上記狭窄リブ74が設置されていないと仮定した場合の開口の面積は、0.6(=3.0mm×0.2mm)mmである。したがって、スリットの開口の面積に対する狭窄リブ未設置時の開口の面積の比は12である。
【0097】
<実施例9>
狭窄接続口72の大きさは3.0mm×0.03mmであり、排出接続口82の大きさは3.0mm×0.4mmである以外は、実施例1と同タイプのアッセイ用デバイスを用いた。したがって、開口径比は13である。なお、図7で示す対向部51の対向面の位置を実施例1に対し0.17mm下げた構造の第2のデバイス部品をもちいることで、狭窄接続口72の大きさを調整した。
【0098】
<実施例10>
それぞれの狭窄接続口72の大きさは0.5mm×0.03mmであり、排出接続口82の大きさは3.0mm×0.4mmである以外は、実施例8と同タイプのアッセイ用デバイスを用いた。したがって、開口径比は13であり、スリットの開口の面積に対する狭窄リブ未設置時の開口の面積の比は40である。
【0099】
<比較例1>
狭窄接続口72の大きさは3.0mm×0.2mmであり、排出接続口82を設置しなかったこと以外は、実施例1と同タイプのアッセイ用デバイスを用いた。したがって、開口径比は0である。
【0100】
<比較例2>
狭窄接続口72の大きさは3.0mm×0.03mmであり、排出接続口82を設置しなかったこと以外は、実施例1と同タイプのアッセイ用デバイスを用いた。したがって、開口径比は0である。なお、図7で示す対向部51の対向面の位置を実施例1に対し0.17mm下げた構造の第2のデバイス部品をもちいることで、狭窄接続口72の大きさを調整した。
【0101】
(気泡供給強制実験)
上記のように作成したアッセイ用デバイス1の増幅溶液注入孔63aに、図13に示すようなφ1mmのテフロン(登録商標)チューブを増幅溶液貯蔵ポット受け部61側から接続して、8μlの空気と半径0.8mm以下の気泡入り(計約2μl)の増幅溶液4μlとを連続的に交互に注入し充填部位を充填させた。空気および増幅溶液は、シリンジポンプを用いて送り出し、ポンプは、80μl/秒の速度で、総計120μl送り出すように設定した。気泡の混入の程度の評価は、観察窓16から撮影し、混入した半径0.1mm以上の気泡を1つずつカウントすることにより行った。
【0102】
(評価)
図14は、上記実施例および比較例の実験結果を示す表である。なお、気泡混入のカウント数は、上記実験を10回行いその平均を取ったものである。
【0103】
図14より、本発明に係るアッセイ用デバイスによれば、開口径比が高いほど気泡の混入量を低減できることがわかった。具体的には、開口径比が1.5以上ではその混入量を12カウント以下にすることができ、特に開口径比が2以上である場合には1カウント程度以下に抑えることができた。また、開口径比が同程度であっても、スリットを複数設ける方が効率よく溶液を充填することができることが実証された。これは、縦長スリット型の方が、容易に接続口の長辺の長さを短くすることができ、より効果的に気泡の侵入を防いだためと推定される。
【符号の説明】
【0104】
1 アッセイ用デバイス
2 ハウジング本体
10 第1のデバイス部品
15 リブ
16 観察窓
20 第2のデバイス部品
30 第3のデバイス部品
40、45、47 不溶性担体
41 検出部位
42 検出ライン
50 押付け部
51 対向部
52 充填リブ
31 検体溶液注入孔
61 増幅溶液貯蔵ポット受け部
62 増幅溶液貯蔵ポット
62b 増幅溶液(第1の液体)
63a 増幅溶液注入孔
64 洗浄液貯蔵ポット受け部
65 洗浄液貯蔵ポット
67 気泡排出部を形成するための溝部
70 間隙(充填部位)
72 狭窄接続口
74 狭窄リブ
80 気泡排出部
82 排出接続口
d 間隙(充填部位)の高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験物質に対する特異的結合物質が固定された検出部位を有する不溶性担体と、該不溶性担体に対向する対向面を有し該検出部位と該対向面との間に間隙を形成するように構成された対向部と、該間隙に流路を介して連結された液体注入部と、該液体注入部から注入された液体から、気泡を分離して気泡の間隙への混入を防止する気液分離部とを備えたアッセイ用デバイス。
【請求項2】
前記不溶性担体を収容するハウジング本体を備え、
該ハウジング本体が、前記被験物質を含む検体溶液を前記不溶性担体に注入するための検体溶液注入部と、前記液体注入部と、前記対向部と、前記気液分離部とを有することを特徴とする請求項1に記載のアッセイ用デバイス。
【請求項3】
前記気液分離部が、前記流路から分岐した気泡を流路から除去するための気泡排出部を備えるものであり、該流路と前記間隙とを接続する狭窄接続口の開口径が、該気泡排出部と該流路とを接続する排出接続口の開口径よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載のアッセイ用デバイス。
【請求項4】
前記狭窄接続口の開口径に対する前記排出接続口の開口径の比が2以上であることを特徴とする請求項3に記載のアッセイ用デバイス。
【請求項5】
前記狭窄接続口の開口径が、0.01mm〜0.8mmであることを特徴とする請求項3または4に記載のアッセイ用デバイス。
【請求項6】
前記狭窄接続口が、狭窄リブによって形成された1つ以上のスリットであることを特徴とする請求項3から5いずれかに記載のアッセイ用デバイス。
【請求項7】
前記スリットが、該スリットの開口の面積に対する前記狭窄リブ未設置時の開口の面積の比が5以上となるように形成されたものであることを特徴とする請求項6に記載のアッセイ用デバイス。
【請求項8】
前記対向部が、前記対向面における前記液体の接触角が20°以下となるように構成されたものであることを特徴とする請求項1から7に記載のアッセイ用デバイス。
【請求項9】
前記気液分離部が、前記流路から分岐した、前記気泡を前記流路から除去するための気泡排出部であって、分岐した位置よりも前記液体の注入時に上方となる位置にある気泡排出部を備えるものであり、
前記気泡の浮力を利用して気液分離を行うことを特徴とする請求項2から8いずれかに記載のアッセイ用デバイス。
【請求項10】
前記不溶性担体である第1の不溶性担体と接触しない状態で前記ハウジング本体に収容されて、該検出部位の一部と重なるように該検出部位上に保持された、第2の液体を送液するための第2の不溶性担体と、
前記第1の不溶性担体および前記第2の不溶性担体と接触しない状態で前記ハウジング本体に収容されて、前記検出部位の他の一部と重なるように該検出部位上に保持された、前記第2の液体を吸収するための第3の不溶性担体とを備え、
前記ハウジング本体が、
前記第2の液体を前記第2の不溶性担体に注入するための第2の液体注入部と、
前記対向部を含有する押付け部とをさらに備えるものであり、
該押付け部が、前記第1の不溶性担体側へ押圧された際に前記検出部位において、前記対向部によって前記間隙を形成すると共に、前記第2の不溶性担体および前記第3の不溶性担体の前記検出部位とそれぞれ重なった部分を、前記第1の不溶性担体に押し付けるように構成されたものであることを特徴とする請求項2から9いずれかに記載のアッセイ用デバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−99724(P2011−99724A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253656(P2009−253656)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】