説明

アッセイ

本開示は、前立腺がんの診断/予後判定アッセイに関し、これには、前記アッセイに用いられるキットが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前立腺がんの診断/予後判定アッセイに関し、これには、前記アッセイに用いるキットが含まれる。
【背景技術】
【0002】
がんは、1つまたは複数の細胞集団の制御されない増殖が正常な生物学的機能に干渉する異常な疾患状態である。増殖の変化は、あまり組織的でない状態への逆戻りを含む、細胞特性のその他の変化を通常伴う。がん細胞は、典型的には、「形質転換している」といわれる。形質転換している細胞は、全般的に、以下の特性のいくつかを示す:球状の形態、胎児性抗原の発現、増殖因子非依存性、接触阻害の欠如、足場非依存性および高い密度までの増殖。がん細胞は腫瘍を形成し、「原発」または「続発」腫瘍とよばれる。原発腫瘍は、元の形質転換している細胞が発達する臓器におけるがん細胞増殖をもたらす。続発腫瘍は、原発腫瘍からのがん細胞の逸脱および別の臓器での続発腫瘍の確立に起因する。この過程は、転移とよばれ、この過程は、例えば肝細胞がんまたは肺がんでの場合のように侵襲性であり得る。前立腺がんは、比較的有害でないかまたは非常に侵襲性であることがある。いくつかの前立腺腫瘍は、緩慢に成長し、ほとんど臨床症状を引き起こさない。侵襲性前立腺腫瘍は、リンパ節およびその他の臓器、特に骨に迅速に広がる。前立腺がんの成長は、テストステロンのような男性ホルモンの供給を遮断することにより阻害できることが知られている。しかし、前立腺がんは、結局は発達し、男性ホルモンに非依存性になる(すなわち、これらは、アンドロゲン非依存性前立腺がん細胞になる)。これらの細胞は、侵襲性で悪性の前立腺がんと関連する。前立腺がんに罹患するのは、イヌおよびヒトの2種だけである。
【0003】
以前の研究は、上皮組織の細胞周期過程における重要な制御因子としてミニ染色体維持タンパク質(MCM)を同定している(WO99/21014およびGonzalezら;Nature Reviews/Cancer、第5巻:135〜141頁、2005年2月を参照されたい)。MCMは、「細胞周期状態」、すなわち細胞が、静止状態または老化しているよりもむしろ増殖できるかどうかの有用なバイオマーカーとして同定された。6つ全てのMCM(MCM2〜7)の発現が、細胞周期の全ての段階にわたって見られ、細胞周期から出て静止状態、分化または老化へ入った後に下方制御される。アンドロゲン受容体[AR]は、アンドロゲンであるテストステロンおよびジヒドロテストステロンと結合する核タンパク質である。ARは、転写因子であり、男性の性決定に関与する遺伝子の制御に関与する。ARのクローニングおよび配列決定はWO89/09791に開示され、これは、原核および真核の発現系におけるARの発現と、モノクローナル抗体の開発におけるその使用とについて記載している。前立腺がんを検出するための診断試験としてのPSAの検出は、よく確立されている。PSAは、前立腺の細胞により分泌されるプロテアーゼである。血液試料中のPSAの検出は、対象における前立腺がんを示すとみなされる。これは、対象がさらなる調査を必要とするかどうかを明確に同定することに関連するかなりの問題を有する。PSAの高い血清レベルを示す対象の一部は、疾患を有さないことが結局は見出される。このことは、精神的ストレスと不必要な身体調査との両方を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
我々は、生体試料からの単離細胞試料中の前立腺がん細胞の検出の信頼できる検査を提供し、男性の対象の血清試料中の前立腺特異抗原の検出に関連する現在の問題点を取り除くアッセイを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様によると、生体試料中の前立腺がん細胞を検出するための診断または予後判定の方法であって、
i)前記生体試料から単離細胞試料を得て、単離細胞試料を、少なくとも1つのMCMポリペプチドと特異的に結合する結合剤と接触させるステップと、
ii)単離細胞試料を、核受容体ポリペプチドと特異的に結合するさらなる結合剤と接触させるステップと、場合によって、
iii)単離細胞試料を、前立腺特異抗原[PSA]と特異的に結合するさらなる結合剤と接触させるステップと、
iv)2つ以上の結合剤の結合を検出するステップと、
v)前記単離細胞試料中の、2つ以上の結合剤と陽性に結合する細胞の数を決定するステップであって、陽性細胞の数が、生体試料中の前立腺がん細胞の存在の指標であるステップと
を含む方法が提供される。
【0006】
本発明の好ましいアッセイでは、上記の核受容体ポリペプチドは、アンドロゲン受容体ポリペプチド(AR)である。
【0007】
本発明の好ましいアッセイでは、上記のMCMポリペプチドは、MCM2、MCM3、MCM4、MCM5、MCM6またはMCM7ポリペプチドからなる群より選択される。
【0008】
本発明の好ましいアッセイでは、上記のMCMポリペプチドは、MCM2および/またはMCM7である。
【0009】
本発明の好ましいアッセイでは、上記のMCMポリペプチドは、MCM2である。
【0010】
本発明の代替の好ましいアッセイでは、上記のMCMポリペプチドは、MCM7である。
【0011】
本発明のさらなる好ましいアッセイでは、上記のMCMポリペプチドは、MCM2およびMCM7である。
【0012】
本発明の好ましいアッセイでは、上記の細胞試料を、ARと特異的に結合する結合剤およびPSAと特異的に結合する結合剤と接触させる。
【0013】
本発明の好ましいアッセイでは、上記のアッセイは、少なくとも1つのMCMポリペプチド、ARおよびPSAを検出する。
【0014】
本発明の好ましいアッセイでは、上記のアッセイは、MCM2および/またはMCM7、ARならびにPSAを検出する。
【0015】
本発明の好ましいアッセイでは、ステップ(ii)および(iii)は、逆である。
【0016】
本発明の好ましいアッセイでは、上記の結合剤は、モノクローナル抗体またはその活性結合断片である。
【0017】
このアッセイが、対象が前立腺がんに対する素因を有するか否かを決定するための診断ツールを提供することが明らかである。このアッセイは、診断され、療法、例えば化学療法または放射線療法を受ける対象が、治療に応答しているか、またはさらなるもしくは代替の治療計画を必要とするかを決定する手段も提供する。本発明は、よって、対象の疾患をよりよく管理するための対象のための治療計画を提供する。
【0018】
本発明の好ましい方法では、上記の生体試料は、単離体液、例えば尿、精液または精漿の試料である。
【0019】
生体試料は、典型的に、試料の分解を低減し、選択されたマーカーの発現の信頼できる尺度を提供するために、迅速に処理される。例えば、試料は冷却され[例えば4℃]、採取してから少なくとも1時間以内に処理される。
【0020】
本発明の好ましいアッセイでは、上記の生体試料は、ろ過され、上記のろ過された試料は、上記の単離細胞試料を提供する。
【0021】
本発明の実行において有用なろ過デバイスの例は、参照により組み込まれているWO2009/087375において本出願人により開示されている。このろ過デバイスは、所定のサイズの細胞を回収するように適合されたフィルタと、フィルタへおよびフィルタから流体を伝達するように配置された流体経路と、流体経路に沿ってフィルタへ流体を送る陽圧および流体経路に沿ってフィルタから流体を引き出す陰圧をもたらすポンプとを含む。
【0022】
本発明のさらなる態様によると、対象における前立腺がんを決定するための診断または予後判定アッセイであって、
i)第1単離生体試料を得て、試料を、PSAと特異的に結合する結合剤と接触させるステップと、場合によって、
ii)上記の試料中のPSAの存在を検出するステップと、
iii)対象から第2生体試料を得て、単離細胞試料を調製して、前記細胞試料を、少なくとも1つのMCMポリペプチドおよびアンドロゲン受容体ポリペプチドと特異的に結合する第1および第2の結合剤と接触させるステップと、
iv)前記MCMポリペプチド[複数可]およびアンドロゲン受容体の存在を検出するステップと、
v)前記単離細胞試料中の、MCMおよびアンドロゲン受容体の両方と陽性に結合する細胞の数を決定するステップであって、陽性細胞の数が、前立腺がん細胞の存在の指標であるステップと
を含むアッセイが提供される。
【0023】
本発明の好ましいアッセイでは、上記の第1生体試料は、血清を含む。
【0024】
本発明のさらなる好ましいアッセイでは、上記の第2生体試料は、尿または精液である。
【0025】
本発明の好ましいアッセイでは、上記のMCMポリペプチドは、MCM2および/またはMCM7である。
【0026】
本発明の好ましいアッセイでは、上記のMCMポリペプチドは、MCM2である。
【0027】
本発明の代替の好ましいアッセイでは、上記のMCMポリペプチドは、MCM7である。
【0028】
本発明の好ましいアッセイでは、結合剤の上記の検出は、蛍光放射による。
【0029】
本発明の代替の好ましいアッセイでは、結合剤の上記の検出は、酵素的手段による。
【0030】
正常試料および試験試料に対する抗体などの特異的結合剤の結合は、任意の適当な手段により決定してよい。標識は、蛍光色素、燐光体、または分光的に孤立した吸収もしくは放射特徴を有するレーザ色素を含む。適切な蛍光色素は、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリスリンおよびテキサスレッドを含む。適切な色素産生性色素は、ジアミノベンジジンを含む。その他の標識は、巨大分子コロイド粒子または着色、磁性もしくは常磁性であるラテックスビーズなどの微粒子物質、および視覚的に観察されるか、電気的に検出されるかもしくはそうでなければ記録される検出可能なシグナルを直接的または間接的に引き起こすことができる生物学的あるいは化学的に活性な物質を含む。これらの分子は、例えば、色を発生するかもしくは変化させるか、または電気的特性の変化を引き起こす反応を触媒する酵素であってよい。これらは、分子的に励起して、エネルギー状態間の電子遷移が特徴的な分光的吸収または放射をもたらすことができる。これらは、バイオセンサに関連して用いられる化学的実体を含んでよい。以下に記載する実施例では、アルカリホスファターゼまたはセイヨウワサビペルオキシダーゼを採用している。
【0031】
本発明のさらなる態様によると、第1、第2および第3の結合剤を含むキットであって、前記結合剤が、それぞれMCMポリペプチド、アンドロゲン受容体ポリペプチドおよび前立腺特異抗原ポリペプチドと結合するキットが提供される。
【0032】
本発明の好ましい実施形態では、上記の結合剤は、モノクローナル抗体である。
【0033】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、上記のキットは、上記の第1、第2および第3モノクローナル抗体と結合する2次抗体をさらに含み、上記の2次抗体のそれぞれは、上記のポリペプチドの検出を容易にする蛍光標識を有する。
【0034】
本明細書の記載および特許請求の範囲を通して、語句「含む(comprise)」および「含有する」ならびにこれらの語句の変形、例えば「含み」および「含む(comprises)」は、「含むがそれに限定されない」ことを意味し、その他の部分、添加物、成分、整数またはステップを除外することを意図しない(かつ除外しない)。
【0035】
本明細書の記載および特許請求の範囲を通して、単数形は、文脈がそうでないことを必要としない限り、複数形を包含する。特に、不定冠詞を用いる場合、本明細書は、文脈がそうでないことを必要としない限り、単数形とともに複数形を企図すると理解される。
【0036】
本発明の具体的な態様、実施形態または実施例と関連して記載される特性、整数、特徴、化合物、化学部分または基は、本明細書に記載する任意のその他の態様、実施形態または実施例に、それと非適合性でない限り、適合できると理解される。
【0037】
定義
本明細書で用いる場合、「結合剤」は、互いに結合特異性を有する分子の対の物質である。特定の結合対のメンバーは、天然に由来するか、または全体的もしくは部分的に合成して生成されてよい。分子の対の一方のメンバーは、その表面上に、突出もしくは空隙であり得、分子の対の他方のメンバーの特定の空間的および極性的機構と特異的に結合し、よって相補的である領域を有する。よって、対のメンバーは、互いに特異的に結合する特性を有する。
【0038】
特異的結合剤の対の型の例は、抗原−抗体、ビオチン−アビジン、ホルモン−ホルモン受容体、受容体−リガンド、酵素−基質、DNA−DNA(例えばオリゴヌクレオチド)である。本発明は、全般的に、抗原−抗体型の反応に関するが、これは、本明細書で定義する抗原と結合する小分子にも関する。
【0039】
本明細書で用いる場合、「抗体」との用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち天然でまたは部分的もしくは全体的に合成により生成されたいずれかの抗原と特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子のことをいう。この用語は、抗体結合ドメインであるかもしくはそれに相同な結合ドメインを有する任意のポリペプチドまたはタンパク質もカバーする。これらは、天然の供給源に由来できるか、またはこれらは、部分的もしくは全体的に合成により生成できる。抗体の例は、免疫グロブリンアイソタイプ(例えばIgG、IgE、IgM、IgDおよびIgA)およびそれらのアイソタイプサブクラス;Fab、scFv、Fv、dAb、Fdなどの抗原結合ドメインを含む断片;ならびに二価抗体である。抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであってよい。
【0040】
抗体は、いくつかの方法で改変できるので、「抗体」との用語は、要求される特異性を有する結合ドメインを有する任意の特異的結合剤または物質をカバーすると解釈される。つまり、この用語は、天然または全体的もしくは部分的に合成のいずれかの免疫グロブリン結合ドメインを含む任意のポリペプチドを含む抗体断片、誘導体、抗体の機能的等価物および相同体、ヒト化抗体をカバーする。
【0041】
MCMまたはARまたはPSAなどの興味対象の標的に特異的な抗体は、当該技術において標準的な技術を用いて得ることができる。抗体を生成する方法は、哺乳動物(例えばマウス、ラット、ウサギ)を、タンパク質もしくはその断片あるいはタンパク質もしくは断片を発現する細胞またはウイルスで免疫することを含む。抗体は、免疫された動物から、当該技術において知られる様々な技術のいずれかを用いて得て、例えば興味対象の抗原との抗体の結合を用いてスクリーニングできる。
【0042】
抗原結合ドメインは、抗原の部分もしくは全体に特異的に結合し相補的である領域を含む抗体の一部分である。抗原が大きい場合、抗体は、抗原の特定の部分にだけ結合し、この部分をエピトープと称する。抗原結合ドメインは、1つまたは複数の抗体可変ドメインによりもたらされることがある。抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)と抗体重鎖可変領域とを含むことがある。
【0043】
「特異的」は、特異的結合対の一方のメンバーが、その特異的結合パートナー(複数可)以外の分子といずれの著しい結合も示さない、例えば任意の他の分子と約30%、好ましくは20%、10%または1%未満の交差反応性を有する状況のことをいうために、通常、用いられる。
【0044】
本発明の特異的結合剤は、好ましくは、本発明に従って、「単離」形である。メンバーは、通常、それらがそれらの天然の環境またはそれらが調製される環境(例えば細胞培養)(そのような調製がin vitroまたはin vivoで実施される組換えDNA技術による場合に)で一緒に見出されるその他のポリペプチドなどのそれらが天然で関連する物質を含まないかまたは実質的に含まない。
【0045】
つまり、本発明の特異的結合剤は、好ましくは、抗体またはその断片である。つまり、例えば特異的結合剤は、PSAまたはARに特異的な抗原結合ドメインを有する抗体またはその断片であり得る。例えば、特異的結合剤は、MCM、例えばMCM2またはMCM7に特異的な抗原結合ドメインを有する抗体またはその断片であり得る。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体または上記のいずれかの断片であり得る。好ましくは、特異的結合剤は、モノクローナル抗体である。MCM、ARおよびPSAに特異的なモノクローナル抗体は、当該技術において知られている。
【0046】
本発明の実施形態を、ここで、例によってのみ、以下の図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】a)抗PSA(茶色、細胞質)、b)抗PSA(茶色、細胞質)および抗MCM2(赤色、核)を用いる培養C4−2b前立腺がん細胞系のDAKO比色分析染色の図である。プレートa)は、抗PSA抗体が、前立腺細胞の細胞質(1)を標識し、核が大きく肥大している(青色ヘマトキシリン染色)ことを示す。プレートb)は、細胞の細胞質を抗PSAで茶色に(1)、そして核を抗MCM2抗体で赤色に(2)する二重染色を示す。
【図2】Vector Stain ImmPRESS試薬を用いるC4−2b細胞系の比色分析単一染色の図である。プレートは、次のようにして標識する:a)N末端特異的抗AR抗体を用いる核だけのDAB染色(1)と、対比染色された細胞質(2);b)C末端特的抗AR抗体を用いる細胞の非局在化DAB染色;c)抗PSA抗体を用いる細胞質(矢印)のDAB染色;d)抗MCM2抗体を用いる核(矢印)のnovaRED染色;およびe)抗MCM2抗体を用いる核(矢印)のnovaRED染色。
【図3】Vector Stain ImmPRESS試薬を用いるC4−2b細胞系の比色分析二重染色の図である。プレートは、DAB−Ni(灰色)標識抗PSA細胞質(1)と、novaRED(赤色)抗MCM2抗体標識核(2)とを示す。
【図4】培養C4−2b前立腺がん細胞系の蛍光(Alexafluor)染色の図である。抗PSA抗体(緑色、細胞質)を用いたプレートa);b)抗MCM7(赤色、核);c)2つの細胞の場所の明らかに別々の染色を示す合成およびd)別々の局在化を示す、抗PSA(緑色、細胞質)および抗MCM2(赤色、核)抗体を用いる合成画像。
【図5】培養C4−2b前立腺がん細胞系の蛍光(Alexafluor)染色の図である。抗AR抗体(緑色、核)を用いたプレートa);b)抗MCM7(赤色、核);およびc)ARおよびMCM7抗原の核での共局在化を示す合成。
【図6】確認された前立腺がんの患者からの尿臨床試料から単離されたC4−2b前立腺がん細胞の、抗AR(緑色)および抗CM7(赤色)抗体を用いる二重蛍光染色の図である。
【図7】損傷細胞および細胞破片の除去の図である。a)Immunosolv DeadCert粒子で前処理しなかった尿試料、およびb)死滅したかもしくは死滅しかけている細胞およびその他の細胞破片を除去する処理の後の尿試料から単離した、ヘマトキシリン染色された膀胱内皮細胞。
【図8】尿中で4時間にわたる培養C4−2b前立腺細胞の核の生存/健康の図である。はっきりした赤色の核染色は、細胞が良好な状態にあることを示す。より強度が弱い赤色の染色、染色が欠如していることおよび細胞質染色が増加していることは、細胞が生存性を喪失し、患者試料において、前立腺がん細胞として明確に同定されないことを示す。
【図9】確認された前立腺がんの患者からの尿臨床試料から単離された前立腺がん細胞の、(a)抗AR(緑色)および(b)抗MCM7(赤色)抗体を用いる二重蛍光染色、ならびに(c)ARとMCMとを用いる二重染色の合成画像の図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0048】
PSAおよびMCM抗原に対するDAKO二重染色キットを用いる培養前立腺がん細胞の比色分析標識。
C4−2b細胞を、T75フラスコで、10%FBSおよび2% penstrepを含有するRPMI培地中で、37℃および5%COにて、90%集密まで培養した。培地をピペット操作により除去し、細胞を、温めたPBSで2回洗浄した。これらを、10mlトリプシン溶液で37℃にて2〜3分インキュベートした後に、穏やかにかき混ぜることにより、フラスコ表面から剥した。細胞懸濁物を50mlファルコンチューブに移し、存在する細胞数を、試料を血球計上で計数することにより決定した。これらを、次いで、遠心分離によりペレットにし、温めたPBSに1×10細胞/mlまで再懸濁した。150μlの分割量を、20mlのPreservCyt溶液を含有するバイアルに加え、Thinprep−T2000処理機に移した。これは、いずれの細胞破片も穏やかに砕き、細胞の均質な懸濁物を提供する。懸濁物を、細胞の均質な層を回収するフィルタを通して引き出した。流れ抵抗を監視することにより、この装置は、少なすぎるかまたは多すぎる細胞を含有する層を回収することを妨げる。捕捉された細胞を、10mm直径の円のUroCyteガラススライドに移した。次いで、スライドを、spirit(Cell Path Ltd.EGK−019500A)に浸し、排出し、10cmの距離からSurgipathコーティング固定溶液を1回噴霧し、平坦な表面において風乾した。
【0049】
細胞染色:細胞を、DAKO G/2二重染色キット(K5631)を用いて、次のようにして染色した。
【0050】
スライドを50%メタノールに5分間浸し、蒸留水ですすいだ後に、TBS(Tris−HCl緩衝食塩水、DAKO試薬)ですすいだ。これらを、次いで、蒸留水、その後でDAKO洗浄緩衝液(S3006)を用いてすすぎ、自動染色機(DAKO)に移した。スライドを、200μlのDAKO二重内因性酵素ブロック(製品コード(K5361))で5分間ブロックし、次いで、TBSで2回すすいだ。200μlの1次抗体A0562ウサギ抗ヒトPSAポリクローナル抗体(または対照ウサギ抗体)を、0.3μg/mlで加え、30分間インキュベートした。全てのインキュベーションステップは、そうでないと示さない限り、室温にて行った。スライドをTBSで2回すすぎ、200μlのEnvision(抗ウサギ)ポリマーセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート(DAKO K5361)を加え、30分間インキュベートした。スライドを、TBSで再び2回すすぎ、DAKO DAB基質を加え、スライドを5分間インキュベートした。スライドを自動染色機から取り出し、水道水で3分間すすいだ。
【0051】
次に、熱回復ステップを行って、MCM抗原を抗体に近づくことができるようにした。
【0052】
スライドを、1mM EDTA熱回復緩衝液、pH7.8(DAKO)に浸し、全出力でマイクロ波処理した(800W、10分)。熱回復緩衝液を補給し、マイクロ波処理を10分間繰り返した。スライドを、このようにして、10のバッチで調製した。より少数の試料を調製する場合、ブランクのスライドを含めて、熱処理の一貫性のために合計数を10にした。スライドを5分間冷却し、自動染色機に戻した。
【0053】
スライドを、DAKO二重染色ブロック(補助試薬)を用いて再び、3分間ブロックし、TBS緩衝液で2回すすいだ。第2の1次抗体であるマウス抗MCM2 D1.12A3(MRC、Cambridge、UK)または対照マウス抗体を加え(1μg/mlにて200μl)、60分間インキュベートした。スライドをTBSで2回すすぎ、Envisionポリマー−アルカリホスファターゼコンジュゲート(DAKO K5361)を15分間加えた(200μl)。TBSでさらに2回すすいだ後に、200μlの液体パーマネントレッドalk−phos基質(vol、DAKAコード)を7分間加えた。この試薬は新しく調製し、使用30分前に自動染色機に加えた。これに、1滴/mlのDAKO X3021レバミソール(DAKO X3021)を補って、内因性alk−phos活性をブロックした。
【0054】
染色の後に、スライドを蒸留水ですすぎ、CuSO溶液(2Lの水に10g CuSO、17g NaCl)に5分間浸し、次いで、水で再びすすいだ。これらを、次いで、ヘマトキシリンで10秒間対比染色し、水ですすいだ。最後に、スライドをキシレンに5分間浸し、風乾し、カバーガラスをかけて、分析の準備ができた。
【0055】
抗体を、ストック溶液から、DAKO抗体希釈液(S0809またはS2022)中で所望の濃度に希釈した。スライドを、白色光の下で、Prog Res C14カラーカメラを備えたZeiss AxioSKOP40顕微鏡を用いて視覚化した。白色光での視覚化に加えて、MCM抗原を標識するために用いたアルカリホスファターゼ基質は、蛍光を放射する。これは、白黒カメラAxiocam MRmおよび赤色フィルタを有するZeiss−Imager M2を用いて観察した。画像は、Axiovisionソフトウェアを用いて分析した(図1)。
【0056】
代替のアッセイフォーマットでは、0.3μg/mlでのDAKOウサギ抗PSAポリクローナル抗体A0562を、以下の1つで置換した:
i)0.3μg/mlでのInsight Biotechnology N−20ウサギ抗アンドロゲン受容体N末端特異的ポリクローナル抗体(sc816)
ii)1/50希釈でのGenetex抗PSGR抗体(GTX72749)
iii)0.3μg/mlでのAbcamマウスモノクローナル抗PSAエピトープ3抗体PS2(ab10189)。
iv)0.3μg/mlでのAbcamマウスモノクローナル抗PSAエピトープ4抗体5G6(ab10186)。
v)0.3μg/mlでのAbcamウサギ抗PSAポリクローナル抗体(ab9537)。
【0057】
さらに、1.0μg/mlでのD1.12A3マウス抗ヒトMCM2モノクローナル抗体を、以下の1つで置き換えた:
i)3.0μg/mlでのSantacruz141.2マウス抗MCM7モノクローナル抗体sc−9966(核よりもむしろ細胞質中のN末端またはC末端標識MCM7のいずれかに対して特異的に産生され、よって比色分析アッセイにおいて抗AR抗体とともに用いるためだけに適切である抗体)、
ii)1/200希釈での細胞系JCC07からのVision Biosystems(Novocastra)マウス抗ヒトMCM3モノクローナル抗体(NCL−MCM3)、
iii)1/20希釈での細胞系CRCT5.1からのVision Biosystems(Novocastra)マウス抗ヒトMCM5モノクローナル抗体(NCL−CM5)。
【0058】
細胞質抗原(PSA)を評価するための単一抗原染色アッセイのために、熱回復ステップおよび2次染色ステップを省略した。核染色抗原(AR、MCMの)を評価するための単一染色アッセイのために、1次染色ステップを省略した。
【0059】
細胞質PSAを、培養前立腺細胞において、D1.12.A3抗体で標識できたことが見出された(図1a)。PSAは、「エピトープ」3および4に対する抗体を用いても検出されたが、「エピトープ」1に対する抗体を用いては検出されなかった(示さず)。同様に、前立腺特異的酸性ホスファターゼに対する抗体は前立腺細胞の細胞質を標識したが、前立腺特異的G共役型受容体(PSGR)に対する抗体は効果的でなかった。さらに、核抗原であるミニ染色体維持タンパク質MCM2およびMCM7、ならびにアンドロゲン受容体(AR)は強い標識をもたらしたが、MCM3およびMCM5は効果がより小さかった(示さず)。二重染色アッセイにおいて組み合わせて用いた場合に、PSAとMCM5(図1b)およびPSAとMCM7(示さず)はともに前立腺細胞を標識でき、ちょうどそれらの異なる細胞の位置で個別に同定できた。
【実施例2】
【0060】
PSAアンドロゲン受容体(AR)およびMCM抗原に対するVector Laboratories ImmPRESS試薬を用いる培養C4−2b前立腺がん細胞系の比色分析標識。
スライドを、実施例1に記載するようにして、Thinprep T2000装置を用いて調製した。全ての標識および洗浄ステップは、手動で行った。スライドを、まず、50%メタノールに5分間浸し、200μlのDAKO二重内因性酵素ブロック(製品コード(K5361))を5分間加えた。スライドを、次いで、蒸留水で3回およびDAKO洗浄緩衝液(S3006)で5回すすいだ。すぐに使用できるImmPRESS正常ウマ血清(NHS)を2.5%でスライドに20分間加えてブロックし、その後に200μlのDAKO A0562ウサギ抗ヒトPSAポリクローナル抗体(または対照ウサギ抗体)を0.3μg/mlで加え、10分間インキュベートした。全てのインキュベーションステップは、そうでないと示さない限り、室温にて行った。スライドをDAKO洗浄緩衝液で5回すすぎ、200μlのImmPRESS試薬(ユニバーサルHRP標識抗ウサギおよび抗マウス)を30分間加えた。スライドをDAKO洗浄緩衝液で5回すすぎ、200μlのImmPRESS基質を5分間加えた。用いた基質は、Vector VIP(SK−4600、紫色)、DAB(SK−4100、茶色)、DAB−Ni(SK−4100、灰色/黒色)またはVector NovaRED(SK−4800、赤色)のいずれか1つであった。スライドを洗浄緩衝液で5回洗浄した。
【0061】
次に、熱回復ステップを行って、MCM抗原を抗体に近づくことができるようにした。
【0062】
スライドを1mM EDTA熱回復緩衝液、pH7.8(DAKO)に浸し、全出力でマイクロ波処理した(800W、10分)。熱回復緩衝液を補給し、マイクロ波処理を10分間繰り返した。スライドを、このようにして、10のバッチで調製した。より少数の試料を調製する場合、ブランクのスライドを含めて、熱処理の一貫性のために合計数を10にした。スライドを5分間冷却させた。
【0063】
スライドを、2.5%正常ウマ血清で20分間、再びブロックした。第2の1次抗体であるマウス抗MCM2 D1.12A3(MRC、Cambridge、UK)または対照マウス抗体を加え(1μg/mlにて200μl)、10分間インキュベートした。これらを洗浄緩衝液で5回すすぎ、200μlのImmPRESS試薬(上記のとおり)を30分間加えた。洗浄緩衝液でさらに5回すすいだ後に、200μlのImmPRESS基質を5分間加えた。基質は、上で列挙した4つのうちのいずれか1つであったが、前のステップで用いたものと同じではなかった。
【0064】
染色の後に、スライドを蒸留水ですすぎ、CuSO溶液(2Lの水に10g CuSO、17g NaCl)に5分間浸し、水で再びすすいだ。これらを、次いで、ヘマトキシリンまたはメチルグリーンで10秒間対比染色し、水ですすいだ。最後に、スライドをキシレンに5分間浸し、風乾し、カバーガラスをかけて、分析の準備ができた。
【0065】
抗体を、ストック溶液から、希釈2.5%NHSを含むDAKO抗体希釈液(S0809またはS2022)中で所望の濃度に希釈した。スライドを、白色光の下で、Prog Res C14カラーカメラを備えたZeiss AxioSKOP40顕微鏡を用いて視覚化した。核染色抗原(AR、MCMの)を評価するための単一染色アッセイのために、1次染色ステップを省略した。細胞質抗原(PSA)を評価するための単一抗原染色アッセイのために、熱回復ステップおよび2次染色ステップを省略した。
【0066】
代替のアッセイフォーマットでは、0.3μg/mlでのDAKOウサギ抗PSAポリクローナル抗体A0562を、0.3μg/mlでのInsight Biotechnology N−20ウサギ抗アンドロゲン受容体N末端特異的ポリクローナル抗体(sc816)または0.3μg/mlでの抗アンドロゲン受容体C末端特異的ポリクローナル抗体(sc815)で置換した。1.0μg/mlでのD1.12A3マウス抗ヒトMCM2モノクローナル抗体を、3.0μg/mlでのSantacruz141.2マウス抗MCM7モノクローナル抗体sc−9966で置き換えた。染色は、以下のImmPRESS基質を様々に用いて達成した:単独または組み合わせて、かつ対比染色ありまたはなしでのDAB(茶色)、DAB−Ni(灰色、黒色)、novaRED(赤色)またはVIP(紫色)。
【0067】
N末端に特異的なAR抗体は、核をはっきりと標識できたが(図2a)、C末端特異的抗体は、いずれのはっきりした細胞の局在化も示さず、よって適切でないことが見出された(図2b)。PSA抗原も、細胞の細胞質で検出された(図2c)。細胞周期抗原MCM2およびMCM7に対する抗体はともに、核を標識できた(図2dおよびe)。全ての異なる基質は、単一染色のために用いた場合に、効果的であることが見出された(示さず)。二重染色について、いくつかの組合せは、それらの外観が類似するので、他のものよりもあまり適切でなかった。DAB−NiとnovaREDおよびDABとvecta VIPは、良好な画像を生成することが見出された(図3)。このアッセイフォーマットでは、PSAは、1つまたは複数のMCM抗原と組み合わせた前立腺細胞特異的マーカーとして用いなければならない。その核局在性のために、ARは、このフォーマットにおいて適切でない。
【実施例3】
【0068】
前立腺細胞系C4−2bの蛍光標識。
前立腺がん細胞系C4−2bを培養し、「Thinprep」スライドを、上の実施例1に詳細に記載するようにして調製した。
【0069】
細胞染色:
スライドを、50%メタノールに5分間浸し、蒸留水で5分間洗浄し、DAKO洗浄緩衝液で1回すすいだ。200マイクロリットルの0.1%TritonX−100をスライドに5分間加えて、細胞を透過性にした。これらを、次いで、洗浄緩衝液で3回および水で1回すすいだ。100マイクロリットルのImage−IT FXシグナルエンハンサー(Invitrogen I36933)を加え、室温にて30分間インキュベートした。スライドを洗浄緩衝液で3回すすいだ後に、蒸留水で1回すすいだ。
【0070】
1次抗体ミックスまたは対照抗体(0.3μg/mlでのウサギ抗PSAおよび1μg/mlでのマウス抗MCM2)をスライドに加え(各100μl)、90分間インキュベートした。ミックスは、以下の組合せの1つを含んだ:i)DAKOウサギ抗PSAポリクローナル抗体A0562(0.3μg/ml)およびマウス抗MCM2 D1.12A3(1.0μg/ml);ii)DAKOウサギ抗PSAポリクローナル抗体A0562およびSantacruz141.2マウス抗MCM7モノクローナル抗体sc−9966(1.0μg/ml);iii)Insight Biotechnology N−20ウサギ抗アンドロゲン受容体N末端特異的ポリクローナル抗体sc816(0.3μg/ml)およびマウス抗MCM2 D1.12A3;またはiv)Insight Biotechnology N−20ウサギ抗アンドロゲン受容体N末端特異的ポリクローナル抗体sc816およびSantacruz141.2マウス抗MCM7モノクローナル抗体sc−9966。
【0071】
スライドを、洗浄緩衝液で3回、および水で1回すすいだ。200μlの2種のAlexafluor2次抗体のミックス(1/1000希釈)をスライドに加え、30分間インキュベートした。用いたミックスは、上記の1次抗体ミックスと関連して次のとおりであった:i)およびiii)Alexafluor488(緑色)抗ウサギ抗体(Invitrogen A11034)およびAlexafluor594(赤色)抗マウスIgG2b抗体(Invitrogen A21145);ii)およびiv)Alexafluor488(緑色)抗ウサギ抗体(Invitrogen A11034)およびAlexafluor594(赤色)抗マウスIgG1抗体(Invitrogen A21125)。
【実施例4】
【0072】
患者の尿からの前立腺細胞の蛍光標識。
尿試料を、確認された前立腺がんの2名の患者から得て、次のようにして直ちに処理した。試料を、50mlファルコンチューブ中で600gにて5分間遠心分離して、細胞をペレットにし、上清を処分した。細胞ペレットを、小容量のCytolyt(Cytyc Corp)に穏やかにかき混ぜることにより再懸濁し、チューブに30mlまでCytoLytを足した。懸濁物を5分間ボルテックスし、再び遠心分離した。細胞ペレットを100μlのPreservCyt溶液に再懸濁し、20mlのPreservCytを含有するバイアルに移した。バイアルをThinprep T2000に入れ、上の実施例3に記載するようにしてスライドを調製した。
【0073】
細胞を、1.0μg/mlでのSantacruz141.2マウス抗MCM7モノクローナル抗体sc−9966、および0.3μg/mlでのDAKOウサギ抗PSAポリクローナル抗体A0562または0.3μg/mlでのInsight Biotechnology N−20ウサギ抗アンドロゲン受容体N末端特異的ポリクローナル抗体(sc816)のいずれかで標識した(図6)。前立腺細胞は、両方の試料中で同定された。これらは、尿への長期の曝露の後の細胞の乏しい状態のために、全て、不規則な形態のものであり、様々な程度の細胞質染色を示した。
【実施例5】
【0074】
尿試料からの破片の除去の効果。
尿試料を600gにて10分間遠心分離して、細胞をペレットにした。細胞を、1ml PBSに再懸濁した。全細胞数を、血球計を用いて決定した。細胞懸濁物の容量を、100μlが5×10細胞を含有するように調整した(PBSの添加によるか、または再びペレットにして適当な容量のPBSに再懸濁することのいずれかにより)。
【0075】
Immunosolv Dead Certナノ粒子(Imunosolv Ltd.、Edinburgh、UK)のストックバイアルを、30秒間ボルテックスした。25マイクロリットルのナノ粒子を、1ml PBSを含有するエッペンドルフチューブに移した。チューブを、付属する磁性分離器に3〜5分間、粒子が磁石に反発して集まるまで入れた。緩衝液をピペット操作により除去し、チューブを取り出した。粒子を、100μlのPBSにボルテックスすることにより再懸濁した。100マイクロリットルの細胞(5×10細胞)を粒子懸濁物に加え、混合物を4℃にて40分間インキュベートした。このインキュベーションの間に、磁性ナノ粒子は、任意の死滅したまたは死滅しかけている細胞の表面上に選択的に発現される抗原と結合する。さらに800μlのPBSをチューブに加え、穏やかに混合し、次いで、チューブを磁性分離器に5分間戻した。生存性の健常細胞を含有する上清をピペット操作により取り出し、PreservCytのバイアル(20ml)に加えた。DeadCert粒子を用いて予め枯渇させていない細胞の第2の100μl分割量を、PreservCyteの別のバイアルに加えた。両方の試料を、次いで、実施例1に記載するようにしてThinprep T200中で処理した。スライドを、視覚化のためにヘマトキシリンで染色した(図7)。
【0076】
主に、未処理試料中の非生存細胞から多数の破片の粒子が生じた。これらは、しばしば、非特異的に標識されることがあり、頻繁に観察される真のがん細胞の様々な細胞形態のために、真のがん細胞からしばしば区別できない。これとは対照的に、処理した試料は、かなりより少ない破片の粒子を含有し、このことにより、患者のより正確で堅固な評価を行うことが可能になる。
【実施例6】
【0077】
尿中での前立腺がん細胞の生存。
前立腺細胞系C4−2bを、実施例1に記載するようにして培養した。培養フラスコが80%集密に到達したときに、細胞を遠心分離により採集し、PBS(リン酸塩緩衝食塩水)に再懸濁し、計数した。5mlのPBS中のおよそ2×10細胞を、健常提供者から提供された25mlの尿に加え、4℃にて貯蔵した。試料を、冷蔵庫から1時間、2時間、3時間および4時間後に取り出し、実施例1に詳細に記載するようにして、Thinprep T2000装置を用いてスライドを調製した。スライドを、マウス抗MCM2 D1.12A3抗体およびDAKO抗マウスアルカリホスファターゼ試薬を用いて、実施例1のようにして染色し、ともに白色光の下で観察した(図8)。1時間および2時間では、細胞は、強い強度のはっきりした核染色を示した。3時間までに、染色は核でよりはっきりしなくなり、強度がより低くなった。この点で、いくつかの細胞は、MCMについて陽性に染色されなかった。4時間までに、健常細胞の割合は、著しく低減した(データは示さず)。
【0078】
MCMで染色される細胞が、核の完全性が4時間まで高いままであり、72時間以降は徐々に劣化する(データは示さず)ことを示したことは、特に重要である。保護性の細胞膜の消失/解体が1時間目以降から始まり、前立腺特異的細胞の細胞質の細胞完全性染色の指針であるPSAが、1時間目以降から急激に悪化したことが示された(データは示さず)。
【実施例7】
【0079】
アンドロゲン受容体(AR)およびミニ染色体維持タンパク質(MCM)抗体を用いる前立腺がん細胞系の染色。
前立腺がんの患者についての以前の研究は、前立腺上皮細胞が、高い血清前立腺特異抗原(PSA)の値を示す患者の尿中に捕捉され得ることを示した。細胞は、数がほとんどなく、排尿から1時間以内に処理しなければならない。我々は、核マーカーとしてMCMおよび細胞質マーカーとしてPSAを用いる尿中の前立腺細胞検出のための方法を既に確立した。尿中でのこれらの細胞の迅速な劣化は、しかし、特に細胞膜であり、よって、細胞の細胞質は、より堅固な抗体マーカーを必要とした。
【0080】
排尿後4時間まで、前立腺上皮細胞の核が無傷のままであることがわかった(実施例6を参照されたい)。前立腺組織に特異的親和性を有する核マーカーを選択して調査した。前立腺がん細胞系および前立腺がんの患者または血清PSA値が高い患者の尿の両方を用いて、アンドロゲン受容体抗体を用いて前立腺細胞が良好に画定された。
【0081】
樹立前立腺がん細胞系(C42b)をスパイクした正常尿を、Hologic T2000機械上でurocyteスライドを用いて実験室にて調製した。スライドを、50%メタノールに5分間浸し、脱イオン水で洗浄し、200ulの0.2%TritonX−100を5分間加えて、細胞を透過性にした。DAKO緩衝液で3回および脱イオン水で1回さらにすすいだ後に、2滴(100ul)のImage−IT Fxシグナルエンハンサーまたは十分な容量を用いて各カバーガラスまたは区画を覆い、次いで、室温にて30分間インキュベートした。緩衝液で3回および水で1回さらにすすいだ後に、200ulの1次抗体AR(0.3ug/ml AR−N20、Santa Cruzカタログ番号sc−816を供給源とする)および1.15ug/ml MCM(MCM7、Santa Cruzカタログ番号sc9966を供給源とする)と、0.5%粉乳中で60分間インキュベートする。スライドを、緩衝液で3回および脱イオン水で1回すすぎ、関連する2次Alexafluor抗体(alexafluor488ヤギ抗ウサギIgG(H+L;Invitrogenカタログ番号A−11034、およびAlexafluor594ヤギ抗マウスIgG1(γ1);Invitrogenカタログ番号A−21125)と、暗所にて30分間インキュベートする。スライドを、緩衝液で3回および水で1回再びすすいだ後に、1滴のProlong Gold退色防止剤を室温にて加え、その後、全てのスライドにカバーガラスをかける。スライドを、戴置された試料を平坦な乾燥面に置き、暗所で室温にて24時間インキュベートすることにより硬化させる。蛍光を、異なる蛍光フィルタを有する蛍光顕微鏡を10秒間用いて検出した(図9)。
【0082】
実験は、アンドロゲン受容体およびミニ染色体維持タンパク質の両方について、はっきりと画定した核染色を示した。
【0083】
同一の実験を、MCM7(1:100希釈)およびウサギモノクローナルアンドロゲン受容体抗体(AR)(Epitomics Inc.を供給源とする)を用いて行った。さらに、1:50希釈でのMCM2およびウサギモノクローナルアンドロゲン受容体抗体(AR)(Epitomics Inc.を供給源とする)を用いて別の実験を行った。MCM2またはMCM7とアンドロゲン受容体との組合せによる前立腺の核の特異性および固定化の評価のために、陰性対照としてC42b前立腺上皮細胞およびEJ28膀胱がん細胞の混合集団を用いて、スライドを、2つの異なる組合せで染色した。採用した方法は、アンドロゲン受容体ポリクローナル抗体(上記)およびMCM7を組み込んだC42b細胞系において用いたものと同一であった。この実験では、C42b細胞を、1:50希釈でのMCM2および1:100希釈でのRabMAb ARを用いて染色した。個別の核染色要素は、1:100希釈でのアンドロゲン受容体を有するAF488−1/1000、および1:50希釈でのMCM2との組合せでのAF594−1/1000を用いて、蛍光顕微鏡の下で明確に同定された(データは示さず)。これらの状況で染色された前立腺細胞系の個別の画像は、同定された前立腺細胞の核における染色特性の明確な同定を示した。アンドロゲン受容体およびMCM2抗体を関連するAlexafluor蛍光抗体と組み合わせた場合、はっきりと画定した核染色パターンの良好な証拠があり、このことにより、アンドロゲン受容体の緑色の着色が、MCM2核染色の赤色の着色と一緒に、二重核染色特徴により、標準化された前立腺悪性細胞系から、前立腺上皮細胞を同定するオレンジ色の着色された組合せを生成した(データは示さず)。C42bおよびEJ28のそれぞれ前立腺および膀胱悪性細胞系の混合集団をともに用いるさらなる研究は、アンドロゲン受容体およびMCM7と組み合わせた場合に、染色された黄色の核を有する前立腺細胞の良好な証拠を示した。EJ28膀胱がん細胞は、全く染色されなかった。同様に、C42bおよびEJ28細胞系の混合集団は、1:100でのアンドロゲン受容体および1:50希釈でのMCM2で染色した場合に、C42bおよびEJ28染色細胞の混合集団の合成画像を示し、ここでは、EJ28染色細胞は、アンドロゲン受容体染色の証拠を示さなかった。
【0084】
これらの実験から、MAb AR+MCM7の組合せを用いて核がはっきりと画定して染色され、同様に、MAb ARおよびMCM2の染色活性があることが確認される。これらのデータから、上皮前立腺がん細胞系を、核レベルにて、MCM2およびMCM7の両方を、アンドロゲン受容体抗体、この場合はMAb ARとともに用いて染色できることが確認される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料中の前立腺がん細胞を検出するための診断または予後判定のアッセイであって、
i)前記生体試料から単離細胞試料を得て、単離細胞試料を、少なくとも1つのMCMポリペプチドと特異的に結合する結合剤と接触させるステップと、
ii)単離細胞試料を、アンドロゲン受容体ポリペプチド[AR]と特異的に結合するさらなる結合剤と接触させるステップと、場合によって、
iii)単離細胞試料を、前立腺特異抗原[PSA]と特異的に結合するさらなる結合剤と接触させるステップと、
iv)2つ以上の結合剤の結合を検出するステップと、
v)前記単離細胞試料中の、2つ以上の結合剤と陽性に結合する細胞の数を決定するステップであって、陽性細胞の数が、生体試料中の前立腺がん細胞の存在の指標であるステップと
を含むアッセイ。
【請求項2】
前記MCMポリペプチドが、MCM2、MCM3、MCM4、MCM5、MCM6またはMCM7ポリペプチドからなる群より選択される、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項3】
前記MCMポリペプチドが、MCM2および/またはMCM7である、請求項2に記載のアッセイ。
【請求項4】
前記MCMポリペプチドが、MCM2である、請求項2または3に記載のアッセイ。
【請求項5】
前記MCMポリペプチドが、MCM7である、請求項2または3に記載のアッセイ。
【請求項6】
前記MCMポリペプチドが、MCM2およびMCM7である、請求項3に記載のアッセイ。
【請求項7】
前記MCMポリペプチドが、図1、2、3、4、5または6のアミノ酸配列で表される、請求項1から6のいずれかに記載のアッセイ。
【請求項8】
前記細胞試料を、ARと特異的に結合する結合剤およびPSAと特異的に結合する結合剤と接触させる、請求項1から7のいずれかに記載のアッセイ。
【請求項9】
少なくとも1つのMCMポリペプチド、ARおよびPSAを検出する、請求項8に記載のアッセイ。
【請求項10】
MCM2および/またはMCM7、ARならびにPSAを検出する、請求項9に記載のアッセイ。
【請求項11】
ステップ(ii)および(iii)が逆である、請求項1から10のいずれかに記載のアッセイ。
【請求項12】
前記結合剤が、モノクローナル抗体またはその活性結合断片である、請求項1から11のいずれかに記載のアッセイ。
【請求項13】
前記生体試料が、単離体液の試料である、請求項1から12のいずれかに記載のアッセイ。
【請求項14】
前記体液が、尿、精液または精漿である、請求項13に記載のアッセイ。
【請求項15】
前記生体試料が、ろ過され、前記ろ過された試料が、前記単離細胞試料を提供する、請求項13または14に記載のアッセイ。
【請求項16】
対象における前立腺がんを決定するための診断または予後判定アッセイであって、
i)第1単離生体試料を得て、試料を、PSAと特異的に結合する結合剤と接触させるステップと、場合によって、
ii)前記試料中のPSAの存在を検出するステップと、
iii)対象から第2生体試料を得て、単離細胞試料を調製して、前記細胞試料を、少なくとも1つのMCMポリペプチドおよびアンドロゲン受容体ポリペプチドと特異的に結合する第1および第2の結合剤と接触させるステップと、
iv)前記MCMポリペプチドおよびアンドロゲン受容体の存在を検出するステップと、
v)前記単離細胞試料中の、MCMおよびアンドロゲン受容体の両方と陽性に結合する細胞の数を決定するステップであって、陽性細胞の数が、前立腺がん細胞の存在の指標であるステップと
を含むアッセイ。
【請求項17】
前記第1生体試料が、血清を含む、請求項16に記載のアッセイ。
【請求項18】
前記第2生体試料が、尿または精液である、請求項16に記載のアッセイ。
【請求項19】
前記MCMポリペプチドが、MCM2および/またはMCM7である、請求項16から18のいずれかに記載のアッセイ。
【請求項20】
前記MCMポリペプチドが、MCM2である、請求項19に記載のアッセイ。
【請求項21】
前記MCMポリペプチドが、MCM7である、請求項19に記載のアッセイ。
【請求項22】
前記MCMポリペプチドが、MCM2およびMCM7である、請求項19に記載のアッセイ。
【請求項23】
結合剤の前記検出が、蛍光放射による、請求項1から22のいずれかに記載のアッセイ。
【請求項24】
結合剤の前記検出が、酵素的手段による、請求項1から22のいずれかに記載のアッセイ。
【請求項25】
第1、第2および第3の結合剤を含むキットであって、前記結合剤が、それぞれMCMポリペプチド、アンドロゲン受容体ポリペプチドおよび前立腺特異抗原ポリペプチドと結合するキット。
【請求項26】
前記結合剤が、モノクローナル抗体である、請求項25に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−513812(P2013−513812A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543890(P2012−543890)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/GB2010/002274
【国際公開番号】WO2011/073619
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(510188148)サイトシステムズ リミテッド (3)