説明

アドレス設定装置及びアドレス設定方法

【課題】アドレス設定の操作が容易で、安価であって、重複したアドレス設定の可能性が皆無なアドレス設定装置を提供する。
【解決手段】I/O制御用通信ネットワークに接続される複数の端末装置24の各々に対して、固有のアドレスを設定するアドレス設定装置であって、端末装置24に設けられている複数のアドレス端子の各々に電気的接続される複数のアドレス設定接点42a〜42dと、基準電位に対応する基準電位用接点42eとを有する設定装置本体を複数用意する。前記各設定装置本体の基準電位用接点42eといくつかのアドレス設定接点42a〜42dとを相互に電気的接続するための固有のパターンの配線部54が形成されているアドレス設定用カード34を複数用意する。端末装置24に対してアドレス設定用カード34を一つずつ割り当て、アドレス設定用カード34の配線部54と基準電位用接点42eといくつかのアドレス設定接点42a〜42dとを接触させた状態で通信端末にアドレスを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アドレス設定装置に関し、特に、ネットワークに接続される複数の通信端末の各々に対して、固有のアドレスを設定するアドレス設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネットワークに接続される複数の通信端末の各々に対して固有にアドレスを設定するために、ディップスイッチが用いられていることが多い(特許文献1)。あるいは、ディップスイッチに代えて、ロータリースイッチを用いて、複数の通信端末の各々に対して固有にアドレスを設定することもある(特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−291772号公報
【特許文献2】特開2001−339392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ロータリースイッチは、アドレス設定の操作が容易であるが、高価であるという問題がある。一方、ディップスイッチは、安価であるが、アドレス設定時の操作が煩雑であるという問題がある。
【0005】
また、いずれのスイッチも、アドレス設定時の操作の誤りにより、重複したアドレス設定の可能性が否定できない。そして、実際に、重複したアドレス設定をしてしまうと、重複しているかアドレスがいずれであるかを特定することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、アドレス設定の操作が容易で、安価であって、重複したアドレス設定の可能性が皆無なアドレス設定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、ネットワークに接続される複数の通信端末の各々に対して、固有のアドレスを設定するアドレス設定装置であって、
前記通信端末に設けられている複数のアドレス端子の各々に電気的接続される複数の第1接点と、基準電位に対応する第2接点とを有する複数の設定装置本体と、
前記各設定装置本体の前記第2接点といくつかの第1接点とを相互に電気的接続するための固有のパターンの接続部が形成されている複数の部材とを備え、
前記各通信端末に対して前記部材を一つずつ割り当て、当該部材の接続部を通じて前記第2接点といくつかの第1接点とを接触させた状態で通信端末にアドレスを設定する。
【0008】
また、本発明は、ネットワークに接続される複数の通信端末の各々に対して、固有のアドレスを設定するアドレス設定装置であって、
前記通信端末に設けられている複数のアドレス端子の各々に電気的接続されているスイッチを有する複数の設定装置本体と、
前記各設定装置本体のいくつかのスイッチをオンするための固有のパターンの凹凸が形成されている複数の部材とを備え、
前記各通信端末に対して前記部材を一つずつ割り当て、当該部材の凹凸によっていくつかの前記スイッチをオンさせることによって通信端末にアドレスを設定する。
【0009】
さらに、本発明は、上記アドレス設定装置を構成する複数の部材であって、
アドレスの設定に先立って前記設定装置本体に接続される。
【0010】
さらにまた、本発明は、ネットワークに接続される複数の通信端末の各々に対して、固有のアドレスを設定するアドレス設定方法であって、
前記通信端末に設けられている複数のアドレス端子の各々に電気的接続される複数の第1接点と、基準電位に対応する第2接点とを有する複数の設定装置本体に対して、
前記各設定装置本体の前記第2接点といくつかの第1接点とを相互に電気的接続するための固有のパターンの接続部が形成されている複数の部材のうち所望の部材を割り当て、
当該部材の接続部を通じて前記第2接点といくつかの第1接点とを接触させた状態で通信端末にアドレスを設定する。
【0011】
またさらに、本発明は、ネットワークに接続される複数の通信端末の各々に対して、固有のアドレスを設定するアドレス設定装置であって、
前記通信端末に設けられている複数のアドレス端子の各々に電気的接続されているスイッチを有する設定装置本体に対して、
前記設定装置本体のいくつかのスイッチをオンするための固有のパターンの凹凸が形成されている複数の部材のうち所望の部材を割り当て、
当該部材の凹凸によっていくつかの前記スイッチをオンさせることによって通信端末にアドレスを設定する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る模式的な通信システムの構成図である。
【図2】端末装置24の一部とアドレス設定用カード34との関係を示す図である。
【図3】アドレス設定用カード34〜3nの配線部54の構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態2に係るアドレス設定用カード34〜3nの配線部54の構成例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態3に係るアドレス設定装置本体及びアドレス設定用カードの模式的な構成図である。
【図6】本発明の実施例1のアドレス設定用カードの模式的な外観図である。
【符号の説明】
【0013】
10 I/O制御用通信ネットワーク
22 中央通信装置
24〜2n 端末装置
34〜3n アドレス設定用カード
40 スロット
42a〜42d アドレス設定接点
42e 基準電位用接点
44 ガイド部
52a〜52e 端子
54 配線部
【発明の実施の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態に係る模式的な通信システムの構成図である。図1には、いわゆるマルチドロップ式の通信システムを示している。この通信システムは、プログラマブルリレーコントローラ(PLC)用ネットワークに代表される有線または無線のI/O制御用通信ネットワーク10と、I/O制御用通信ネットワーク10に対して接続されている中央通信装置22と、中央通信装置22に対して直列的に接続されていて固有のアドレスが設定される端末装置24〜2nと、端末装置24〜2nに対して固有にアドレスを設定するための一意に接続されるアドレス設定用カード34〜3nとを備える。
【0016】
図2は、端末装置24の一部とアドレス設定用カード34との関係を示す図である。図2に示すように、端末装置24は、アドレス設定用カード34が挿し込まれるスロット40と、スロット40内に設けられていて端末装置24の通信制御を司るICのアドレス設定端子(図示せず)と電気的に接続されている例えば4つのアドレス設定接点42a〜42dと、アドレス設定接点42a〜42dに隣接して設けられているグランドなどの基準電位用接点42eと、各接点42a〜42eとアドレス設定用カード34の端子52a〜52eとの位置ずれを防止するガイド部44とを備える。なお、スロット40と各接点42a〜42eとガイド部44とを含む部分を、アドレス設定装置本体とも称する。
【0017】
一方、アドレス設定用カード34は、アドレス設定接点42a〜42d及び基準電位用接点42eに各々電気的接続される端子52a〜52eと、端子52eと端子52a〜52dのいくつかとを相互にするための配線部54とを備えている。なお、アドレス設定用カード34の筐体には、他のアドレス設定用カード35〜3nとの目視によって容易に区別ができるようにアドレス等の固有の番号(図示せず)が付されている。
【0018】
図3(a)〜図3(d)は、アドレス設定用カード34〜3nの配線部54の構成例を示す図である。図3(a)〜図3(d)に示すように、アドレス設定用カード34〜3nの配線部54は、相互に異なるパターンとされている。
【0019】
具体的には、例えば4台の端末装置24〜27に対して、固有のアドレス設定を行う場合には、
端末装置24に「0000」というアドレス、
端末装置25に「0001」というアドレス、
端末装置26に「0010」というアドレス、
端末装置27に「0011」というアドレス、
というように、2進数で表現されたアドレス設定を行うことができる。
【0020】
また、
アドレス番号のビット0が端子52aに対応し、
アドレス番号のビット1が端子52bに対応し、
アドレス番号のビット2が端子52cに対応し、
アドレス番号のビット3が端子52dに対応する。
【0021】
図3(a)に示す配線部54は、端子52eから端子52a〜52dの近傍まで延びているが、端子52a〜52eのいずれにも接続されていない。
【0022】
図3(b)に示す配線部54は、端子52eから端子52a〜52dの近傍まで延びていて、端子52aにのみ接続されている。
【0023】
図3(c)に示す配線部54は、端子52eから端子52a〜52dの近傍まで延びていて、端子52bにのみ接続されている。
【0024】
図3(d)に示す配線部54は、端子52eから端子52a〜52dの近傍まで延びていて、端子52a,52bに接続されている。
【0025】
このように配線部54を形成することによって、端末装置24〜27に対して、固有のアドレス設定を行うことができ、しかも、アドレス設定用カード34〜3nの各配線部54は相互に固有のパターンとしているので、端末装置24〜27に重複したアドレスが設定される可能性は皆無となる。
【0026】
端末装置24〜2nのスロット40に、アドレス設定用カード34〜3nを一意に挿し込めば、通信端末24〜2nの各々に固有のアドレスを設定することができる。
【0027】
(実施形態2)
図4(a)〜図4(d)は、本発明の実施形態2に係るアドレス設定用カード34〜3nの配線部54の構成例を示す図である。図4(a)〜図4(d)は、図3(a)〜図3(d)に対応する。
【0028】
図3(a)〜図3(d)に示した例の場合には、端子52a〜52eのすべてを設け、端子52a〜52dと端子52eとを選択的に配線部54によって電気的接続をしていた。これに対して、図4(a)〜図4(d)に示す例の場合には、当該電気的接続に係る端子のみを形成している。
【0029】
すなわち、
図4(a)の場合には、端子52a〜52eのいずれも形成しない。
【0030】
図4(b)の場合には、端子52a及び端子52eは形成するが、端子52b〜52dは形成しない。
【0031】
図4(c)の場合には、端子52b及び端子52eは形成するが、端子52a,52c,52dは形成しない。
【0032】
図4(d)の場合には、端子52a,52b及び端子52eは形成するが、端子52c,52dは形成しない。
【0033】
このようにアドレス設定用カード34等を構成した場合であっても、実施形態1と同様に、端末装置24〜2nのスロット40に、アドレス設定用カード34〜3nを一意に挿し込めば、通信端末24〜2nの各々に固有のアドレスを設定することができる。
【0034】
(実施形態3)
図5(a)〜図5(c)は、本発明の実施形態3に係るアドレス設定装置本体及びアドレス設定用カードの模式的な構成図である。実施形態1,2では、端子52a〜52eと各接点42a〜42eとを選択的に電気的接触させる場合を説明した。本実施形態では、これらを選択的に物理的接触させる。
【0035】
図5(a)の場合には、アドレス設定用カード34に対して、接点42a〜42eに代えて、選択的にユニークなパターンの溝部54を形成している。一方、スロット40に対して、接点42a〜42eに代えて、溝部54によりオン/オフが切り替わるスイッチ端子42を設けている。
【0036】
本実施形態の場合には、溝部54は、4か所のいずれかに選択的に切り欠きが設けられている。一方、スロットには、当該4か所に対応する位置にスイッチ端子42が設けられている。
【0037】
ここで、実施形態1,2の場合には、基準電位用接点42eとの電気的接続を通じて、接点42a〜42dを基準電位に設定していたが、本実施形態の場合には、オン/オフによってアドレスビットの正負論理を切り替えられるので、同じビット数のアドレスを実現する場合には、基準電位用接点42eに相当する溝部54の切り欠き及びスイッチ端子42が不要となる点に留意されたい。
【0038】
換言すると、相対的に多数の端末装置を備える通信システムの場合には、アドレス設定用カード34の接点42a等又は切り欠きの形成スペースを考慮すると、本実施形態の方が、アドレスビット数を稼げるため好ましいといえる。
【0039】
なお、溝部54及びスイッチ端子42の位置は、図6(a)に示す場合に限定されず、図5(b)に示すように、スロット40の側面にスイッチ端子42を設け、これに対応する位置に溝部54を設けてもよい。
【0040】
さらに、より多数の端末装置を備える通信システムの場合には、図5(c)に示すように、アドレス設定用カード34の表面及び裏面に溝部54を形成し、かつ、スロット40の表面及び裏面にスイッチ端子42を形成すればよい。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
図6は、本発明の実施例1のアドレス設定用カードの模式的な外観図である。本実施例のアドレス設定用カード34等は、カード本体に対して取手部分60を備えている。取手部分60のサイズは、縦の長さ5mm〜10mm(例えば7mm)、横の長さ15mm〜30mm(例えば20mm)、奥行き5mm〜10mm(例えば7mm)程度とすればよい。取手部分60には、既述の固有の番号を付してもよく、ここでは、当該番号としてアドレス「0001」を付記している。なお、当該番号は、取手部分60の上面ではなく、側面或いは裏面に付記するようにしてもよい。
【0042】
一方、カード本体のサイズは、厚さは1.0mm〜2.0mm(例えば1.5mm)、幅10mm〜25mm(例えば15mm)、長さ10mm〜20mm(例えば15mm)とすることができる。
【0043】
このようなサイズのアドレス設定用カードとすると、スロット40に対して挿抜する際に取手部分60を把持すればよいので、その操作性が向上する。
【0044】
また、取手部分60に固有の番号を付せば、アドレス設定用カードをスロット40に差し込んだ場合でも、取手部分60はスロット40の外に位置することになるので、カード本体部分に番号を付すよりも、当該番号の視認性が向上する。
【0045】
(実施例2)
つぎに、本発明の実施例2のアドレス設定用カードについて説明する。実施例1のアドレス設定用カードは、取手部分60を備えているために、既述のようなメリットがあるが、場合によっては、アドレス設定用カードの厚みが増加することによるデメリットも考えられ得る。
【0046】
そこで、アドレス設定用カードの厚みを増加させたくない場合には、取手部分60に代えて、たとえば、カード本体の長さを増やし、カード本体の縁を摘むことでスロット40に抜挿可能としてもよい。この場合、カード本体の上面に固有の番号を付せばよい。
【0047】
(実施例3)
つぎに、本発明の実施例3のアドレス設定用カードについて説明する。アドレス設定装置本体は、汎用的なカードメモリ、例えば、SDカード(登録商標)、コンパクトフラッシュ(登録商標)用のカードソケットと同一規格で構成することもできる。この場合、カード本体は、SDカード(登録商標)、コンパクトフラッシュ(登録商標)と同一サイズのものとしてもよいし、実施例2のようなサイズのものとしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続される複数の通信端末の各々に対して、固有のアドレスを設定するアドレス設定装置であって、
前記通信端末に設けられている複数のアドレス端子の各々に電気的接続される複数の第1接点と、基準電位に対応する第2接点とを有する複数の設定装置本体と、
前記各設定装置本体の前記第2接点といくつかの第1接点とを相互に電気的接続するための固有のパターンの接続部が形成されている複数の部材とを備え、
前記各通信端末に対して前記部材を一つずつ割り当て、当該部材の接続部を通じて前記第2接点といくつかの第1接点とを接触させた状態で通信端末にアドレスを設定するアドレス設定装置。
【請求項2】
ネットワークに接続される複数の通信端末の各々に対して、固有のアドレスを設定するアドレス設定装置であって、
前記通信端末に設けられている複数のアドレス端子の各々に電気的接続されているスイッチを有する複数の設定装置本体と、
前記各設定装置本体のいくつかのスイッチをオンするための固有のパターンの凹凸が形成されている複数の部材とを備え、
前記各通信端末に対して前記部材を一つずつ割り当て、当該部材の凹凸によっていくつかの前記スイッチをオンさせることによって通信端末にアドレスを設定するアドレス設定装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のアドレス設定装置を構成する複数の部材であって、
アドレスの設定に先立って前記設定装置本体に接続される複数の部材。
【請求項4】
ネットワークに接続される複数の通信端末の各々に対して、固有のアドレスを設定するアドレス設定方法であって、
前記通信端末に設けられている複数のアドレス端子の各々に電気的接続される複数の第1接点と、基準電位に対応する第2接点とを有する複数の設定装置本体に対して、
前記各設定装置本体の前記第2接点といくつかの第1接点とを相互に電気的接続するための固有のパターンの接続部が形成されている複数の部材のうち所望の部材を割り当て、
当該部材の接続部を通じて前記第2接点といくつかの第1接点とを接触させた状態で通信端末にアドレスを設定するアドレス設定方法。
【請求項5】
ネットワークに接続される複数の通信端末の各々に対して、固有のアドレスを設定するアドレス設定装置であって、
前記通信端末に設けられている複数のアドレス端子の各々に電気的接続されているスイッチを有する設定装置本体に対して、
前記設定装置本体のいくつかのスイッチをオンするための固有のパターンの凹凸が形成されている複数の部材のうち所望の部材を割り当て、
当該部材の凹凸によっていくつかの前記スイッチをオンさせることによって通信端末にアドレスを設定するアドレス設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−160771(P2012−160771A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121822(P2009−121822)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(596081625)株式会社ステップテクニカ (4)
【Fターム(参考)】