説明

アナログ信号入力装置

【課題】アナログ入力回路及びA/D変換器を含むアナログ信号入力装置の故障を、高精度かつ汎用性をもって診断できるようにすることを目的とする。
【解決手段】アナログ信号入力装置1は、マルチプレクサ2、アナログ入力回路3、A/D変換器4、D/A変換器5、マイコン6を備えている。そして、故障診断時には、マイコン6からD/A変換器5に対してディジタル信号D2を出力し、D/A変換器5が、ディジタル信号D2をD/A変換して得たアナログ信号A2を、マルチプレクサ2を介してアナログ入力回路3に入力させる。そして、アナログ入力回路3が出力するアナログ信号Afを、A/D変換器4でA/D変換して得たディジタル信号D1をマイコン6に取り込ませる。マイコン6は、ディジタル信号D1が、ディジタル信号D2に見合う範囲内の信号であるか否かに基づいて、マルチプレクサ2、アナログ入力回路3、A/D変換器4、D/A変換器5を含む回路における故障の有無を診断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログ信号入力装置に関し、詳しくは、外部からのアナログ信号を、アナログ処理手段及びA/D変換手段を介して、演算処理手段がディジタル信号として取り込むようにした、アナログ信号入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のアナログ信号入力装置として、例えば、特許文献1に記載されるような装置があった。
このアナログ信号入力装置は、アナログ信号をA/D変換手段によってディジタル信号に変換して演算処理手段(マイコン)に取り込む装置であり、前記A/D変換手段の入力をマルチプレクサによって基準電圧源に切り替え、基準電圧源の電圧をA/D変換手段で変換して得たディジタル信号と、予め記憶してある初期値とを比較し、A/D変換手段の変換精度の劣化を検出するA/D変換監視手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−244000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アナログ信号を、フィルタ回路などのアナログ処理手段を介してA/D変換手段に入力させる場合、アナログ処理手段が故障していると、たとえA/D変換手段が故障していなくても、演算処理手段は、実際のアナログ信号に合致しないディジタル信号を取り込むことになってしまう。このため、アナログ処理手段が故障すると、演算処理手段は、実際のアナログ信号に対応しない制御演算結果に基づき、誤った制御出力を発生してしまう可能性があるという問題があった。
【0005】
また、従来装置において、A/D変換手段に入力させる基準電圧源は、直流であるため、アナログ処理手段として交流結合回路(直流除去回路)を備える場合、A/D変換手段に対してA/D変換の基準とすべき交流信号を与えることができず、A/D変換手段の変換精度の劣化検出が不能になってしまうという問題があった。
更に、従来装置においては、A/D変換手段に入力させる基準電圧が、基準電圧源における1つの電圧値に限定されるため、基準電圧近傍の電圧域では所期の変換精度を維持できていれば、基準電圧から離れた電圧域で変換精度の劣化が発生していても、このような劣化を検知できないという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に着目してなされたものであり、アナログ処理手段及びA/D変換手段を含むアナログ信号入力装置の故障を、高精度かつ汎用性をもって診断できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、請求項1に係る発明は、アナログ信号を入力してアナログ処理するアナログ処理手段と、前記アナログ処理手段を通過したアナログ信号を入力してA/D変換するA/D変換手段と、前記A/D変換手段が出力するディジタル信号を取り込んで演算処理する演算処理手段と、前記演算処理手段が出力するディジタル信号をD/A変換するD/A変換手段と、前記演算処理手段が出力する選択制御信号に応じて、前記D/A変換手段が出力するアナログ信号と外部から取り込んだアナログ信号とのいずれか一方を、前記アナログ処理手段に入力させる選択出力手段と、を含み、前記演算処理手段が、前記D/A変換手段が出力したアナログ信号を前記アナログ処理手段に入力させたときに、前記A/D変換手段が出力するディジタル信号に基づき、故障の有無を診断するようにした。
【0008】
係る構成では、演算処理手段は、既知のアナログ信号を出力させるべくD/A変換手段に対してディジタル信号を出力し、D/A変換手段が出力したアナログ信号を、アナログ処理手段及びA/D変換手段を介して取り込むから、D/A変換手段に出力したディジタル信号に見合うディジタル信号をA/D変換手段が出力したか否かによって、D/A変換手段,アナログ処理手段,A/D変換手段における故障の有無を診断できる。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、アナログ信号を入力してアナログ処理するアナログ処理手段と、前記アナログ処理手段を通過したアナログ信号を入力してA/D変換する第1A/D変換手段と、前記第1A/D変換手段が出力するディジタル信号を取り込んで演算処理する第1演算処理手段と、前記第1A/D変換手段と並列に設けられ、前記アナログ処理手段を通過したアナログ信号を入力してA/D変換する第2A/D変換手段と、前記第2A/D変換手段が出力するディジタル信号を取り込んで演算処理する第2演算処理手段と、前記第1演算処理手段又は前記第2演算処理手段が出力するディジタル信号をD/A変換するD/A変換手段と、前記D/A変換手段が出力するアナログ信号と外部から取り込んだアナログ信号とのいずれか一方を、前記第1演算処理手段又は前記第2演算処理手段が出力する選択制御信号に応じて、前記アナログ処理手段に入力させる選択出力手段と、を含み、前記第1演算処理手段及び第2演算処理手段が、前記D/A変換手段が出力するアナログ信号を前記アナログ処理手段に入力させたときに取り込んだディジタル信号に基づき、故障の有無をそれぞれに診断するようにした。
【0010】
係る構成では、アナログ処理手段を通過したアナログ信号は、第1A/D変換手段及び第2A/D変換手段にそれぞれ入力し、第1A/D変換手段が出力するディジタル信号は、第1演算処理手段が取り込んで演算処理し、第2A/D変換手段が出力するディジタル信号は、第2演算処理手段が取り込んで演算処理する。
ここで、アナログ処理手段にD/A変換手段が出力したアナログ信号を入力させると、既知のアナログ信号を、アナログ処理手段がアナログ処理し、アナログ処理手段が出力するアナログ信号が、第1,第2A/D変換手段を経て第1,第2演算処理手段それぞれに取り込まれ、第1,第2演算処理手段それぞれで、既知のアナログ信号に見合ったディジタル信号を取り込んだか否かに基づき、故障の有無を診断する。
【0011】
上記請求項1又は2の構成において、請求項3のように、前記演算処理手段、又は、前記第1演算処理手段と第2演算処理手段との少なくとも一方が、前記選択出力手段からのアナログ信号の出力を停止させたときに、前記A/D変換手段が出力するディジタル信号に基づき、故障の有無を診断するようにできる。
係る構成では、選択出力手段からのアナログ信号の出力を停止させれば、A/D変換手段が入力するアナログ信号が零になるから、A/D変換手段が入力したアナログ信号が零でないことを、A/D変換手段が出力するディジタル信号から判断した場合に、選択出力手段,A/D変換手段の故障の発生を診断できる。
【0012】
上記請求項2又は3の構成において、請求項4のように、前記第1演算処理手段における故障診断の結果と、前記第2演算処理手段における故障診断の結果とを照合する照合手段を設けることができる。
係る構成では、第1演算処理手段での診断結果と、第2演算処理手段での診断結果とを照合することで、診断が正しく行われたかを判断できる。
【0013】
上記請求項2〜4のいずれか1つの構成において、請求項5のように、前記第1演算処理手段と第2演算処理手段との少なくとも一方が、自系が取り込んだディジタル信号を他系に送信し、自系が取り込んだディジタル信号と他系が取り込んだディジタル信号とを照合し、故障の有無を診断するようにできる。
係る構成では、第1A/D変換手段及び第2A/D変換手段は、アナログ処理手段を通過した同じアナログ信号を入力してディジタル信号に変換するから、第1A/D変換手段が出力するディジタル信号と第2A/D変換手段が出力するディジタル信号とが略同等である状態が正常であり、第1演算処理手段と第2演算処理手段との少なくとも一方が、他方が取り込んだディジタル信号と、自らが取り込んだディジタル信号とを照合することで、故障の有無を診断する。
【0014】
上記請求項5の構成において、請求項6のように、前記第1A/D変換手段が出力するディジタル信号と前記第2A/D変換手段が出力するディジタル信号との差が閾値よりも大きい場合に、故障の発生を判定することができる。
係る構成では、第1A/D変換手段が出力するディジタル信号と第2A/D変換手段が出力するディジタル信号とが略同等である状態が正常であるから、両ディジタル信号の差が閾値よりも大きく、A/D変換誤差を超える差が生じている場合に、故障の発生を判定する。
【発明の効果】
【0015】
係るアナログ信号入力装置によれば、アナログ処理手段及びA/D変換手段の故障を、アナログ処理手段が交流結合回路であっても診断することができ、更に、アナログ処理手段に入力させるアナログ信号を任意に設定でき、高精度に故障診断を行える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本願発明に係るアナログ信号入力装置の第1実施形態を示すブロック図
【図2】上記第1実施形態における故障診断処理を示すフローチャート
【図3】上記第1実施形態における故障診断処理の別の例を示すフローチャート
【図4】本願発明に係るアナログ信号入力装置の第2実施形態を示すブロック図
【図5】上記第2実施形態における故障診断処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本願発明に係るアナログ信号入力装置の第1実施形態を示すブロック図であり、このアナログ信号入力装置は、例えば、アナログの制御条件信号を入力して動作するディジタル電子リレーに用いられる。但し、アナログ信号入力装置の適用を、ディジタル電子リレーに限定するものではない。
図1に示すアナログ信号入力装置1は、マルチプレクサ(選択出力手段)2、アナログ入力回路(アナログ処理手段)3、A/D変換器(A/D変換手段)4、D/A変換器(D/A変換手段)5、CPU,RAM,ROMなどを含むマイクロコンピュータ(演算処理手段)6を備えている。
【0018】
尚、A/D変換器4,D/A変換器5及びマイクロコンピュータ(以下、マイコンと称する)6は、1チップマイコンであるマイクロ・コントローラ・ユニット(MCU)7を構成する。
マルチプレクサ2は、外部からの制御条件信号であるアナログ信号A1と、D/A変換器5の出力であるアナログ信号A2とを入力し、マイコン6からの選択制御信号Sに応じて、アナログ信号A1とアナログ信号A2とのいずれか一方を出力する。
【0019】
アナログ入力回路3は、コンデンサや抵抗からなるフィルタ回路などのアナログ回路であり、マルチプレクサ2が出力するアナログ信号Aを入力して処理し、アナログ信号Afとして出力する。このアナログ入力回路3は、微分回路などの交流結合回路(直流除去回路)であってもよく、また、直流成分を通過させる回路であってもよい。
A/D変換器4は、アナログ入力回路3が出力するアナログ信号Afを入力し、このアナログ信号Afをディジタル信号D1に変換する。
【0020】
マイコン6は、A/D変換器4が出力するディジタル信号D1を入力し、該ディジタル信号D1を演算処理することで、外部機器を制御する制御出力、即ち、リレーの動作・落下を制御する信号を出力する。尚、本実施形態では、リレーを落下させることで、アナログ信号入力装置を含むシステムを、安全側に導くことになるものとする。
D/A変換器5は、マイコン6が出力するディジタル信号D2を入力してアナログ信号A2に変換し、このアナログ信号A2をマルチプレクサ2に出力する。アナログ信号A2は、アナログ信号入力回路1の故障診断用として出力され、マイコン6は、アナログ信号A2をアナログ入力回路3に入力させたときに、A/D変換器4が出力するディジタル信号D1に基づいて、アナログ信号入力装置1における故障の有無を自己診断する。
【0021】
図2のフローチャートは、マイコン6による故障診断処理の詳細を示す。
図2のフローチャートにおいて、まず、ステップS101では、故障診断の実行タイミングであるか否かを判断する。故障診断の実行タイミングは、例えば、アナログ信号入力装置1を含むシステムの起動時や、起動後の一定時間毎とすることができ、また、外部からの診断指示信号を受信した時点とすることもできる。
【0022】
ステップS101で、故障診断の実行タイミングであると判断すると、ステップS102へ進み、D/A変換器5に対して、診断用の基準信号としてのディジタル信号D2を出力する。ディジタル信号D2は、マイコン6が備えるメモリに予め故障診断用として記憶してある任意のデータである。
次のステップS103では、マルチプレクサ2に対して、D/A変換器5が出力するアナログ信号A2の出力を指示する選択制御信号Sを出力する。
【0023】
これにより、ディジタル信号D2はD/A変換器5でアナログ信号A2に変換され、アナログ信号A2は、マルチプレクサ2からアナログ入力回路3に出力され、更に、アナログ入力回路3を通過したアナログ信号Afが、A/D変換器4でディジタル信号D1に変換されることになる。
ステップS104では、アナログ信号A2をアナログ入力回路3に入力させた状態で、A/D変換器4が出力したディジタル信号D1を取り込む。
【0024】
そして、ステップS105では、ステップS104で取り込んだディジタル信号D1が、D/A変換器5に出力したディジタル信号D2に見合う許容誤差範囲内(正常範囲内)の信号であるか否かを判定する。
例えば、アナログ入力回路3が直流信号を通過させる回路である場合、ディジタル信号D2を一定電圧値として、アナログ信号A2として直流を出力させる。この場合、アナログ入力回路3でのアナログ処理後の電圧値を予め基準電圧値Vthとして求めておき、該基準電圧値Vthを含む正常範囲(許容範囲)内の電圧値が、ディジタル信号D1として取り込まれたか否かを判定する。
【0025】
また、アナログ入力回路3が直流信号を通過させない交流結合回路である場合、ディジタル信号D2を電圧値が一定周期で変化する信号とし、アナログ信号A2として交流を出力させる。この場合、アナログ入力回路3でのアナログ処理後の交流信号の周波数や振幅や平均電圧などを基準特性値として予め求めておき、該基準特性値を含む正常範囲(許容範囲)内の特性値の交流信号が、ディジタル信号D1として取り込まれたか否かを判定する。
上記のように、マイコン6が既知のディジタル信号D2を出力し、このディジタル信号D2をD/A変換器5でアナログ信号A2に変換し、このアナログ信号A2を、マルチプレクサ2を介してアナログ入力回路3に出力することで、A/D変換器4が出力するディジタル信号D1は、D/A変換器5に出力したディジタル信号D2に対応する予定された信号になる。
【0026】
従って、ディジタル信号D1がディジタル信号D2に対応する信号でない場合(特性が許容レベルを超えてずれている場合)には、マルチプレクサ2,アナログ入力回路3,A/D変換器4,D/A変換器5のうちの少なくとも1つ及び/又はこれらのデバイスを結ぶライン・コネクタに故障(劣化)が生じているものと推定できる。
特に、外部からのアナログ信号A1を処理するマルチプレクサ2,アナログ入力回路3,A/D変換器4を含む回路に故障が発生していると、アナログ信号A1のレベル(電圧)をマイコン6が正確に判断することができず、誤った制御出力を発生させることになってしまう。
【0027】
そこで、ディジタル信号D1が、D/A変換器5に出力したディジタル信号D2に見合う許容誤差範囲内(正常範囲内)の信号である場合は、ステップS106へ進んで、マルチプレクサ2,アナログ入力回路3,A/D変換器4,D/A変換器5を含む回路が正常であると判定する。
そして、正常時であれば、更にステップS107へ進み、マルチプレクサ2に対して、外部からのアナログ信号A1の出力を指示する選択制御信号Sを出力し、外部からのアナログ信号A1を、アナログ入力回路3,A/D変換器4を介して取り込むようにする。
【0028】
ステップS108では、A/D変換器4が出力したディジタル信号D1を取り込み、ステップS109では、ステップS108で取り込んだディジタル信号D1を演算処理することで、リレーの動作・落下を決定し、該決定に対応する制御出力を発生させる。
即ち、ステップS109では、外部から取り込んだ制御条件信号としてのアナログ信号A1に応じて制御出力(制御信号)を演算し、演算結果としての制御出力を外部に出力することで、外部機器(リレー)を制御する。
【0029】
一方、ディジタル信号D1が、D/A変換器5に出力したディジタル信号D2に見合う許容誤差範囲内(正常範囲内)の信号でない場合は、ステップS110へ進んで、マルチプレクサ2,アナログ入力回路3,A/D変換器4,D/A変換器5を含む回路に故障が発生していると判定する。
そして、故障発生時である場合には、更にステップS111へ進んで、制御出力を安全サイドに制御して保持させ(リレーを落下させる制御出力に保持させ)、外部からのアナログ信号A1に応じた出力制御を停止させる、フェイル処理を実行する。
前記フェイル処理には、ランプや警報などの警告手段を動作させる警報動作信号の出力や、故障診断履歴の記憶などの処理を含めることができる。
【0030】
上記構成によると、A/D変換器4における変換精度の劣化が生じた場合の他、アナログ入力回路3に故障が発生した場合にも、故障の発生を検知でき、A/D変換器4やアナログ入力回路3の劣化・故障によって、外部からのアナログ信号A1の電圧レベルをマイコン6が正しく判定できない状態で、外部からのアナログ信号A1に基づいて出力制御(リレー制御)を行ってしまうことを未然に防止できる。
更に、アナログ入力回路3及びA/D変換器4の健全性を検証するために設けるマルチプレクサ2やD/A変換器5に劣化・故障が発生した場合にも故障判定を行って、制御出力を安全サイド(リレーを落下させる側)に制御するから、マルチプレクサ2やD/A変換器5に劣化・故障によって、アナログ入力回路3及びA/D変換器4の健全性を確認できない状態のまま、外部からのアナログ信号A1に基づいて出力制御(リレー動作)を行ってしまうことがない。
【0031】
また、マイコン6が出力するディジタル信号D2の設定によって、基準アナログ信号としてアナログ入力回路3に入力させるアナログ信号A2を直流・交流のいずれにも設定できるので、アナログ入力回路3が交流結合回路であっても、アナログ入力回路3を含む回路の故障診断を行える。
また、マイコン6が出力するディジタル信号D2は任意に設定でき、一定値に限定されないので、アナログ信号入力装置1を適用するシステムにおけるアナログ信号A1の出力範囲などに基づいて、ディジタル信号D2を最適値に設定できる。更に、ディジタル信号D2を複数種に切り替え、各ディジタル信号D2の出力状態それぞれで故障の有無を診断させることができ、これによって、より精度の高い故障診断が可能となる。
【0032】
ところで、マルチプレクサ2の故障診断に適した診断方法として、マルチプレクサ2の全チャンネルをオフに制御し、マルチプレクサ2からのアナログ信号Aの出力を停止させたときに、アナログ入力回路3及びA/D変換器4の入力が実際に零になっているか否かを判断する方法がある。
係る故障診断と、前述したディジタル信号D2(アナログ信号A2)に基づく故障診断とを組み合わせた実施形態を、図3のフローチャートに従って説明する。
【0033】
図3のフローチャートにおいて、まず、ステップS201では、前述のステップS101と同様に、故障診断の実行タイミングであるか否かを判断する。
ステップS201で、故障診断の実行タイミングであると判断すると、ステップS202へ進み、D/A変換器5に対して、診断用の基準信号としてのディジタル信号D2を出力する。
【0034】
次のステップS203では、外部からのアナログ信号A1、及び、D/A変換器5が出力するアナログ信号A2の双方をマルチプレクサ2から出力させずに出力を零とすべく、マルチプレクサ2に対して、全チャンネルをオフとする選択制御信号Sを出力する。
そして、ステップS204では、マルチプレクサ2の出力を零とした状態、即ち、アナログ入力回路3及びA/D変換器4の入力を零とした状態で、A/D変換器4が出力したディジタル信号D1を取り込む。
【0035】
ステップS205では、ステップS204で取り込んだディジタル信号D1が、零又は零を中心としたA/D変換の許容誤差内であるか否かを判定する。
マルチプレクサ2の出力を停止させることで、アナログ入力回路3及びA/D変換器4の入力が零となるから、ディジタル信号D1が零又は零近傍の値となるのが正常状態であり、ディジタル信号D1が零又は零近傍の値でない場合には、マルチプレクサ2の出力が実際には停止してなく、マルチプレクサ2がアナログ信号A1又はアナログ信号A2を出力しているか、A/D変換器4の出力の異常シフトが発生しているものと推定できる。
尚、アナログ信号A1及びアナログ信号A2は、零ではないものとする。
【0036】
従って、ステップS205で、ディジタル信号D1が、零からA/D変換の誤差範囲を超えてずれた値であると判定した場合には、マルチプレクサ2及び/又はA/D変換器4の故障が発生しているものと判断できるので、ステップS213へ進んで、故障の発生を判定し、次のステップS214では、制御出力を安全サイドに制御して保持させ(リレーを落下させる制御出力に保持させ)、外部からのアナログ信号A1に応じた出力制御を停止させる、フェイル処理を実行する。
【0037】
一方、ステップS205で、ディジタル信号D1が、零若しくはA/D変換の誤差範囲内の値であると判定した場合には、マルチプレクサ2の選択出力機能及びA/D変換器4の変換精度は正常であると見なして、ステップS206へ進む。
ステップS206では、マルチプレクサ2に対して、D/A変換器5が出力するアナログ信号A2の出力を指示する選択制御信号Sを出力する。
【0038】
次のステップS207では、アナログ信号A2を、アナログ入力回路3に入力させたときのA/D変換器4の出力として、ディジタル信号D1を取り込む。
ステップS208では、前述のステップS105と同様に、ステップS207で取り込んだディジタル信号D1が、D/A変換器5に出力したディジタル信号D2に見合う許容誤差範囲内(正常範囲内)の信号であるか否かを判定する。
【0039】
そして、ディジタル信号D1が、D/A変換器5に出力したディジタル信号D2に見合う許容誤差範囲内の信号である場合は、ステップS209へ進んで、マルチプレクサ2,アナログ入力回路3,A/D変換器4,D/A変換器5を含む回路が正常であると判定する。
正常時であれば、更にステップS210へ進み、マルチプレクサ2に対して、外部からのアナログ信号A1の出力を指令する選択制御信号Sを出力し、外部からのアナログ信号A1を、アナログ入力回路3,A/D変換器4を介して取り込むようにする。
【0040】
ステップS211では、A/D変換器4が出力したディジタル信号D1を取り込み、ステップS212では、ステップS211で取り込んだディジタル信号D1を演算処理することで、外部に出力する制御出力を決定し、この制御出力を外部に出力して、外部からのアナログ信号A1に応じた制御動作(リレーの動作・落下の制御)を行わせる。
一方、ディジタル信号D1が、D/A変換器5に出力したディジタル信号D2に見合う許容誤差範囲内の信号でない場合は、ステップS213へ進んで、マルチプレクサ2,アナログ入力回路3,A/D変換器4,D/A変換器5を含む回路に故障が発生していると判定する。
【0041】
そして、故障発生時である場合には、更にステップS214へ進んで、制御出力を安全サイドに制御して保持させ(リレーを落下させる制御出力に保持させ)外部からのアナログ信号A1に応じた出力制御を停止させる、フェイル処理を実行する。
上記構成では、マルチプレクサ2からの出力を停止させた状態で診断し、更に、ディジタル信号D2をD/A変換して得たアナログ信号A2を、マルチプレクサ2から出力させた状態で診断するので、より高い診断精度を得ることができる。
【0042】
ところで、以上に説明したアナログ入力装置1は、MCUを1系統のみ備えるが、2個のMCUが、入力・演算・出力などの処理を同期して行い、相互にデータを定周期で比較照合し、外部機器(リレー)を動作させるための制御出力を得る構成とした2重系アナログ入力装置1においても、既述した故障診断を適用することができる。
【0043】
図4は、第2実施形態の2重系アナログ入力装置を示すブロック図である。
図4に示す2重系のアナログ入力装置51は、マルチプレクサ(選択出力手段)52、アナログ入力回路(アナログ処理手段)53、第1MCU(マイクロ・コントローラ・ユニット)60、第2MCU(マイクロ・コントローラ・ユニット)70、フェイルセーフ照合回路90を備えている。
第1MCU60は、A/D変換器(第1A/D変換手段)61、D/A変換器(D/A変換手段)62、CPU,RAM,ROMなどを含むマイコン63(第1演算処理手段)を備えた1チップマイコンであり、第2MCU70は、A/D変換器(第2A/D変換手段)71、CPU,RAM,ROMなどを含むマイコン73(第2演算処理手段)を備えた1チップマイコンである。
【0044】
マルチプレクサ52は、外部からのアナログ信号A1と、第1MCU60のD/A変換器62の出力であるアナログ信号A2とを入力し、第1MCU60のマイコン63が出力する選択制御信号Sに応じて、アナログ信号A1とアナログ信号A2とのいずれか一方を出力する。
尚、本実施形態では、診断のために用いるディジタル信号D2を、第1MCU60のD/A変換器62から出力させるので、第2MCU70にD/A変換器72を設けていないが、第1MCU60と第2MCU70とを同じデバイスで構成して、第1MCU60と第2MCU70との双方にD/A変換器を備えることができる。
【0045】
アナログ入力回路53は、コンデンサや抵抗からなるフィルタ回路などのアナログ回路であり、マルチプレクサ52が出力するアナログ信号Aを入力して処理し、アナログ信号Afとして出力する。アナログ入力回路53が出力するアナログ信号Afは、アナログ入力回路53に対して並列に接続される第1MCU60のA/D変換器61及び第2MCU70のA/D変換器71にそれぞれ入力される。
アナログ入力回路53は、微分回路などの交流結合回路(直流除去回路)であってもよく、また、直流成分を通過させるアナログ回路であってもよい。
【0046】
A/D変換器61,71は、アナログ入力回路53が出力するアナログ信号Afを入力し、このアナログ信号Afをディジタル信号D1に変換する。
マイコン63,73は、A/D変換器61,71が出力するディジタル信号D1を入力し、該ディジタル信号D1を演算処理することで、外部機器(リレー)に出力する制御出力を決定する。
第1MCU60と第2MCU70との間を、I/Oポート80で接続し、互いの処理結果(診断結果及び取り込んだディジタル信号D1を含む)を読み込むことができるようになっている。
【0047】
D/A変換器62は、マイコン63が出力するディジタル信号D2を入力してアナログ信号A2に変換し、このアナログ信号A2をマルチプレクサ2に出力する。
アナログ信号A2は、故障診断用として出力され、アナログ信号A2をアナログ入力回路3に入力させたときに、A/D変換器61,71が出力するディジタル信号D1に基づいて、マイコン63,73が故障の有無をそれぞれに診断する。
【0048】
第1MCU60は、A/D変換器61及びD/A変換器62における変換動作に用いる基準電圧源Vref1を備え、第2MCU70は、A/D変換器71における変換動作に用いる基準電圧源Vref2を備えている。
フェイルセーフ照合回路90は、論理回路を有し、第1MCU60が出力する制御出力と、第2MCU70の制御出力とを入力して照合し、出力が正常である場合のみリレーを動作させるようにする。
尚、本実施形態では、第1MCU60がアナログ信号A2をマルチプレクサ2に出力し、かつ、第1MCU60がマルチプレクサ2に選択制御信号Sを出力するが、第1MCU60と第2MCU70とのいずれか一方が診断用のアナログ信号A2をマルチプレクサ2に出力し、他方がマルチプレクサ2に選択制御信号Sを出力する構成とすることができる。
【0049】
図5のフローチャートは、第1MCU60及び第2MCU70による故障診断の詳細を示す。
図5のフローチャートにおいて、ステップS301〜ステップS315は、第1MCU60(マイコン63)が実施する処理を示し、ステップS401〜ステップS407及びステップS411〜ステップS414は、第2MCU70(マイコン73)が実施する処理を示す。
【0050】
ステップS301では、ステップS101と同様にして、故障診断の実行タイミングであるか否かを判断する。
ステップS301で、故障診断の実行タイミングであると判断すると、ステップS302へ進み、D/A変換器5に対して、診断用の基準信号としてのディジタル信号D2を出力する。ディジタル信号D2は、マイコン63が備えるメモリに予め故障診断用として記憶してある任意のデータである。
【0051】
次のステップS303では、マルチプレクサ52に対して、D/A変換器62が出力するアナログ信号A2の出力を指示する選択制御信号Sを出力する。
これにより、ディジタル信号D2はD/A変換器62でアナログ信号A2に変換され、アナログ信号A2は、マルチプレクサ52からアナログ入力回路53に出力され、更に、アナログ入力回路53を通過したアナログ信号Afが、第1MCU60側のA/D変換器61及び第2MCU70側のA/D変換器71でそれぞれにディジタル信号D1に変換されることになる。
【0052】
ステップS304では、A/D変換器61が出力したディジタル信号D1を取り込む。
そして、ステップS305では、前述のステップS105と同様に、ステップS304で取り込んだディジタル信号D1が、D/A変換器62に出力したディジタル信号D2に見合う許容誤差範囲内(正常範囲内)の信号であるか否かを判定する。
ここで、ステップS304で取り込んだディジタル信号D1が、D/A変換器62に出力したディジタル信号D2に見合う許容誤差範囲内の信号であれば、ステップS306へ進み、マルチプレクサ52,アナログ入力回路53,A/D変換器61,D/A変換器62を含む回路が正常であると判定する。
【0053】
一方、ステップS304で取り込んだディジタル信号D1が、D/A変換器62に出力したディジタル信号D2に見合う許容誤差範囲内の信号でない場合、ステップS307へ進み、マルチプレクサ52,アナログ入力回路53,A/D変換器61,D/A変換器62を含む回路のいずれかに故障が発生しているものと判定する。
上記の故障診断は、第2MCU70(マイコン73)側でも同時に並行して実施され、ステップS401では、A/D変換器71が出力したディジタル信号D1を取り込み、次のステップS402では、前述のステップS105と同様に、ステップS401で取り込んだディジタル信号D1が、第1MCU60側でD/A変換器62に出力したディジタル信号D2に見合う許容誤差範囲内(正常範囲内)の信号であるか否かを判定する。
【0054】
ここで、ステップS401で取り込んだディジタル信号D1が、第1MCU60側でD/A変換器62に出力したディジタル信号D2に見合う許容誤差範囲内の信号であれば、ステップS403へ進み、マルチプレクサ52,アナログ入力回路53,A/D変換器71,D/A変換器62を含む回路が正常であると判定する。
一方、ステップS401で取り込んだディジタル信号D1が、第1MCU60側でD/A変換器62に出力したディジタル信号D2に見合う許容誤差範囲内の信号でない場合、ステップS404へ進み、マルチプレクサ52,アナログ入力回路53,A/D変換器71,D/A変換器62を含む回路のいずれかに故障が発生しているものと判定する。
【0055】
そして、ステップS308及びステップS405では、第1MCU60側での診断結果と、第2MCU70(マイコン73)側での診断結果とを相互に読み込む。
第2MCU70(マイコン73)側での診断結果を取り込んだ第1MCU60側では、ステップS309(照合手段)において、自身が正常であると診断し、かつ、第2MCU70でも正常であると診断しているか、換言すれば、正常であるという診断結果で一致しているか否かを判断する。
【0056】
そして、第1MCU60側と第2MCU70側との少なくとも一方が、故障の発生を判定している場合には、ステップS310へ進み、制御出力として、リレーを落下させる安全サイドの出力(フェイル出力)を発生させる。
一方、第1MCU60側と第2MCU70側との双方が正常であると判定している場合には、正常であるとする診断結果が正しいものと判断し、ステップS311へ進み、マルチプレクサ52に対して、外部からのアナログ信号A1の出力を指示する選択制御信号Sを出力する。
【0057】
第1MCU60(マイコン63)側での診断結果を取り込んだ第2MCU70側でも、診断結果が正常で一致しているか否かを判断する。
即ち、ステップS406(照合手段)において、自身が正常であると診断し、かつ、第1MCU60でも正常であると診断しているか、換言すれば、正常であるという診断結果で一致しているか否かを判断する。
【0058】
そして、第1MCU60側と第2MCU70側との少なくとも一方が、故障の発生を判定している場合には、ステップS407へ進み、制御出力として、リレーを落下させる安全サイドの出力を発生させる。
第1MCU60側での診断結果の照合によって、双方が正常診断していると判断して、ステップS311で外部からのアナログ信号A1の取り込みを指示すると、第1MCU60側と第2MCU70側との双方で、外部からのアナログ信号A1をアナログ入力回路53で処理した後のアナログ信号AfをA/D変換して得たディジタル信号D1を取り込み、かつ、他方が取り込んだディジタル信号D1を読み込む処理を並行して行う(ステップS312、ステップSS411)。
【0059】
ステップS313では、自系で取り込んだディジタル信号D1と、第2MCU70側でA/D変換器71の出力を取り込んだ結果とを比較する。
ステップS313で比較する2つのディジタル信号D1は、同じアナログ信号Afを異なるA/D変換器61,71で変換した値であり、2つのディジタル信号D1間には、A/D変換器61,71間における許容変換誤差による差が生じるが、前記変換誤差を超える差が生じている場合には、少なくとも一方のA/D変換器61,71に故障が発生している可能性がある。
尚、A/D変換器61,71の故障には、付属する基準電圧源Vref1,Vref2の故障(電圧レベルの変化)が含まれる。
【0060】
そこで、2つのディジタル信号D1間に、A/D変換器61,71間における許容変換誤差(閾値)を超える差が発生している場合には、ステップS314へ進んで、制御出力として、リレーを落下させる安全サイドの出力(フェイル出力)を発生させる。
一方、2つのディジタル信号D1間の差が充分に小さく、A/D変換器61,71間における許容変換誤差内であると判断した場合には、ステップS315へ進み、A/D変換器61が出力したディジタル信号D1を演算処理することで、外部に出力する制御出力を決定して出力する。
【0061】
上記のディジタル信号D1の照合は、第2MCU70側でも行われ、ステップS412では、自系で取り込んだディジタル信号D1と、第1MCU60側でA/D変換器61の出力を取り込んだ結果とを比較する。
そして、2つのディジタル信号D1間に、A/D変換器61,71間における許容変換誤差(閾値)を超える差が発生している場合には、ステップS413へ進んで、制御出力として、リレーを落下させる安全サイドの出力(フェイル出力)を発生させる。
【0062】
一方、2つのディジタル信号D1間の差が充分に小さく、A/D変換器61,71間における許容変換誤差内であると判断した場合には、ステップS414へ進み、A/D変換器71が出力したディジタル信号D1を演算処理することで、外部に出力する制御出力を決定して出力する。
第1MCU60が出力する制御出力と、第2MCU70が出力する制御出力は、フェイルセーフ照合回路90に入力され、フェイルセーフ照合回路90は、少なくとも一方の制御出力が、リレーを落下させ、システムを安全サイドに導くフェイル出力である場合、最終的に出力する制御出力をフェイル出力とし、双方の制御出力がリレーを動作させる信号で一致している場合にのみ、最終的に出力する制御出力としてリレーを動作させる出力を発生する。
【0063】
従って、第1MCU60側と第2MCU70側との少なくとも一方で故障の発生が診断された場合、更に、第1MCU60側と第2MCU70側との少なくとも一方で、双方が取り込んだディジタル信号D1の差が異常に大きいと診断された場合には、最終的に出力する制御出力がフェイル出力とされ、リレーを落下させてシステムを安全サイドに導くことになる。
上記2重系のアナログ信号入力装置であれば、第1MCU60側で正常であると診断しても、第2MCU70側で故障の発生を診断すれば、制御出力を安全サイドに制御して保持させることができ、より一層のフェイルセーフを図ることができる。
【0064】
また、第1MCU60側が取り込んだディジタル信号D1と、第2MCU70側が取り込んだディジタル信号D1とを比較することで、A/D変換器61,71に付属する基準電圧源Vref1,Vref2の電圧変化による変換精度の劣化を判断でき、変換精度が低下した状態で得られたディジタル信号D1に基づき、外部に出力する制御信号が決定されてしまうことを回避できる。
更に、第1MCU60側で演算した制御出力と第2MCU70側で演算した制御出力とを比較し、両者が一致する場合に制御出力を外部に出力し、一致しない場合には、安全サイドの信号を出力させるので、制御出力の演算結果が相反する場合に、安全サイドではない制御出力を外部に出力してしまうことがなく、フェイルセーフを図ることができる。
【0065】
尚、第1MCU60側での診断結果と第2MCU70側での診断結果との照合も、フェイルセーフ照合回路90(照合手段)で行わせることができ、また、双方の制御出力が一致するか否かの照合を含めて、全て照合を第1MCU60及び第2MCU70におけるソフトウェア処理で行わせることができる。また、照合処理を、第1MCU60と第2MCU70とのいずれか一方のみで行わせることができる。
また、診断用のアナログ信号A2をアナログ入力回路53に入力させている状態で、第1MCU60が取り込んだディジタル信号D1と、第2MCU70が取り込んだディジタル信号D1とを、第1MCU60と第2MCU70との少なくとも一方で比較し、A/D変換器61,71(基準電圧源Vref1,Vref2)に故障が発生しているか否かを診断できる。
【0066】
更に、2重系のアナログ信号入力装置において、1重系の実施形態に示したように、マルチプレクサ52からの出力を停止させた状態でのディジタル信号D1に基づき、マルチプレクサ52の故障の有無を診断することができる。この他、1重系の実施形態に示した実施態様は、適宜2重系のアナログ信号入力装置に適用することができることは明らかである。
【符号の説明】
【0067】
1 アナログ信号入力装置
2 マルチプレクサ(選択出力手段)
3 アナログ入力回路(アナログ処理手段)
4 A/D変換器(A/D変換手段)
5 D/A変換器(D/A変換手段)
6 マイコン(演算処理手段)
51 アナログ信号入力装置
52 マルチプレクサ(選択出力手段)
53 アナログ入力回路(アナログ処理手段)
60 第1MCU
61 A/D変換器(第1A/D変換手段)
62 D/A変換器(D/A変換手段)
63 マイコン(第1演算処理手段)
70 第2MCU
71 A/D変換器(第2A/D変換手段)
73 マイコン(第2演算処理手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ信号を入力してアナログ処理するアナログ処理手段と、
前記アナログ処理手段を通過したアナログ信号を入力してA/D変換するA/D変換手段と、
前記A/D変換手段が出力するディジタル信号を取り込んで演算処理する演算処理手段と、
前記演算処理手段が出力するディジタル信号をD/A変換するD/A変換手段と、
前記演算処理手段が出力する選択制御信号に応じて、前記D/A変換手段が出力するアナログ信号と外部から取り込んだアナログ信号とのいずれか一方を、前記アナログ処理手段に入力させる選択出力手段と、
を含み、
前記演算処理手段が、前記D/A変換手段が出力したアナログ信号を前記アナログ処理手段に入力させたときに、前記A/D変換手段が出力するディジタル信号に基づき、故障の有無を診断するアナログ信号入力装置。
【請求項2】
アナログ信号を入力してアナログ処理するアナログ処理手段と、
前記アナログ処理手段を通過したアナログ信号を入力してA/D変換する第1A/D変換手段と、
前記第1A/D変換手段が出力するディジタル信号を取り込んで演算処理する第1演算処理手段と、
前記第1A/D変換手段と並列に設けられ、前記アナログ処理手段を通過したアナログ信号を入力してA/D変換する第2A/D変換手段と、
前記第2A/D変換手段が出力するディジタル信号を取り込んで演算処理する第2演算処理手段と、
前記第1演算処理手段又は前記第2演算処理手段が出力するディジタル信号をD/A変換するD/A変換手段と、
前記D/A変換手段が出力するアナログ信号と外部から取り込んだアナログ信号とのいずれか一方を、前記第1演算処理手段又は前記第2演算処理手段が出力する選択制御信号に応じて、前記アナログ処理手段に入力させる選択出力手段と、
を含み、
前記第1演算処理手段及び第2演算処理手段が、前記D/A変換手段が出力するアナログ信号を前記アナログ処理手段に入力させたときに取り込んだディジタル信号に基づき、故障の有無をそれぞれに診断するアナログ信号入力装置。
【請求項3】
前記演算処理手段、又は、前記第1演算処理手段と第2演算処理手段との少なくとも一方が、前記選択出力手段からのアナログ信号の出力を停止させたときに取り込んだディジタル信号に基づき、故障の有無を診断する請求項1又は2記載のアナログ信号入力装置。
【請求項4】
前記第1演算処理手段における故障診断の結果と、前記第2演算処理手段における故障診断の結果とを照合する照合手段を設けた請求項2又は3記載のアナログ信号入力装置。
【請求項5】
前記第1演算処理手段と第2演算処理手段との少なくとも一方が、自系が取り込んだディジタル信号を他系に送信し、自系が取り込んだディジタル信号と他系が取り込んだディジタル信号とを照合し、故障の有無を診断する請求項2〜4のいずれか1つに記載のアナログ信号入力装置。
【請求項6】
前記第1A/D変換手段が出力するディジタル信号と前記第2A/D変換手段が出力するディジタル信号との差が閾値よりも大きい場合に、故障の発生を判定する請求項5記載のアナログ信号入力装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−39423(P2012−39423A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178271(P2010−178271)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】