説明

アナログ腕時計

【課題】文字板の読み取り性に優れたアナログ腕時計を提供すること。
【解決手段】時刻モード、電波モードなどの複数種目のモードの中の一種目のモードがユーザ又は自動で選択された際に、ユーザ又は自動で選択された一種目のモードに対応するモード指標部20A、20B、20Cを点灯させるとともに、点灯したモード指標部20A、20B、20Cに対応するモードに関連する細目情報をインジケータ針10aにて指示させ、ユーザがどの細目表示を読めば良いかを直ぐに判断できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕時計に関し、特に、文字板の読み取り性を向上したアナログ腕時計に係わる。
【背景技術】
【0002】
近年、アナログ腕時計として、文字板のインジケータ針の回りに複数種目のインジケータが表示され、例えば、モード切り替えを行った際に、インジケータ針が指示するインジケータ部分の情報をユーザが読み取ることによって、必要な情報を得られるようにしたものが知られている。
このインジケータの具体例としては、時字や切分目盛の他に、都市コードや電波状況を示すインジケータが挙げられる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−203134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなアナログ腕時計においては、小さい文字板に複数種目のインジケータが密度高く表示されているため、インジケータ自体が見にくく、その上、複数種目のインジケータが同心的に表示されたものでは、ユーザ自らが所望モードを選択しているにも拘わらず、インジケータ針がどのインジケータ部分を指示しているのかを判別しにくい場合も多々ある。特に、ユーザが普段から慣れ親しんでいるモードを選択する場合は兎も角、ユーザが普段あまり使用しないか、偶にしか使用しないモードを選択した場合は尚更である。
本発明の課題は、文字板の読み取り性に優れたアナログ腕時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、
複数種目のモードの中で現在どの種目のモードにあるかを表示するためのモード指標部が設けられ、該モード指標部の中又は脇に、該モード指標部に対応するモードに関連する細目情報が表記されている文字板と、
前記複数種目のモードにそれぞれ対応するモード指標部を種目毎に点灯可能に構成された照明手段と、
所定の軸を中心に回転可能に構成され前記細目情報を指示するためのインジケータ針と、
前記インジケータ針を回転させるインジケータ針駆動手段と、
前記複数種目のモードの中の一種目のモードがユーザ又は自動で選択された際に、前記照明手段を制御して、ユーザ又は自動で選択された一種目のモードに対応する前記モード指標部を点灯させるとともに、前記インジケータ針駆動手段を制御して、前記点灯したモード指標部に対応するモードに関連する前記細目情報を前記インジケータ針にて指示させる制御手段と、
を備えることを特徴とするアナログ腕時計である。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のアナログ腕時計において、前記制御手段は、前記複数種目のモードの中のモードがユーザ又は自動で選択された際に、前記照明手段及び前記インジケータ針駆動手段を制御して、選択されたモードに対応する前記モード指標部として前記細目情報を点灯させるとともに、該細目情報の中の1つを前記インジケータ針に指示させることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のアナログ腕時計において、前記文字板は、前記モード指標部が設けられている箇所が透明部分となっており、前記照明手段は、前記透明部分の裏側に設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアナログ腕時計において、前記モードは時刻モードであり、前記細目情報は時字又は切分目盛中の1つによって構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のアナログ腕時計において、前記モードはワールドタイムモードであり、前記細目情報は都市コードによって構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のアナログ腕時計において、前記モードは電波モードであり、前記細目情報は電波状況を示す文字又は図形によって構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユーザによって又は自動的にモードが選択された際に、選択されたモードに対応するモード指標部が点灯されるとともに、選択されたモードに関連する所定の細目情報が該インジケータ針によって指示されるので、ユーザはどの細目表示を読めば良いかを直ぐに判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るアナログ腕時計の本体の正面図である。
【図2】図1のアナログ腕時計の一部を側方から見た場合の断面図である。
【図3】図1のアナログ腕時計の回路構成図である。
【図4】図1の腕時計本体の時刻モード時の正面図である。
【図5】図1の腕時計本体の電波モード時の正面図である。
【図6】図1の腕時計本体のワールドタイムモード時の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施形態]
このアナログ腕時計100は、図1及び図2に示すように、腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1の上部には時計ガラス2が取り付けられている。また、腕時計ケース1の内部には、時計モジュール3が収納されており、腕時計ケース1の下面には、裏蓋4が防水リング4aを介して取り付けられている。さらに、この腕時計ケース1の3時側と9時側の各側面には第1〜第4操作子5a〜5d(特定しない場合には操作子5を用いる。)が取り付けられている。また、腕時計ケース1の内部には文字板12が設けられている。また、この文字板12の上にはインジケータ針10a、分針10b、時針10cが設けられている。
【0014】
文字板12は、文字板本体13と、第1の見切り部材14と、第2の見切り部材15とによって構成されている。
【0015】
図1及び図4に示すように、文字板本体13の上には円周に沿って時字13aが1時間毎に表示されている。このうち12時を示す時字13aは時刻モード時の細目情報を構成している。
【0016】
また、第1の見切り部材14は環状に形成され、図2に示すように、文字板本体13における時字13aの外側部分の表面を覆うように設置されている。この第1の見切り部材14の表面は斜面となっており、文字板本体13の中心に向けて下り勾配を有している。この第1の見切り部材14の表面には、図1及び図5に示すように、切分目盛14aが表示されているとともに、その切分目盛14a内に、電波状況を示す文字14bが表示されている。このうち文字14bは、電波モード時の細目情報を構成している。この「電波モード」とは、標準電波の状況をユーザに知らせる際のモードである。
この文字14bとしては、「Y」、「N」、「R」、「W」、「ON」、「OFF」の文字が表示されている。ここで、「Y」は電波受信成功、「N」は電波受信失敗、「R」は電波受信準備中、「W」は電波受信中、「ON」は電波受信状態、「OFF」は電波非受信状態を表している。
【0017】
また、第2の見切り部材15は環状に形成され、図2に示すように、第1の見切り部材14における切分目盛14a及び文字14bの外側部分の表面を覆うように設置されている。この第2の見切り部材15の表面は斜面となっており、文字板本体13の中心に向けて下り勾配を有している。この第2の見切り部材15の表面には、図1及び図6に示すように、複数の都市コード15aが表示されている。複数の都市コード15aは、ワールドタイムモード時の細目情報を構成している。「ワールドタイムモード」とは、世界各都市の時間をユーザに知らせる際のモードである。
【0018】
上記文字板12(つまり文字板本体13,第1の見切り部材14及び第2の見切り部材15)は透明材料によって形成されている。この文字板12には第1〜第3のモード指標部20A,20B,20Cが設けられている。なお、文字板12は第1〜第3のモード指標部20A,20B,20Cが設けられる箇所だけ透明であってもよい。
【0019】
第1のモード指標部20Aは文字板本体13に設けられている。
すなわち、文字板本体13の下側には、第1の見切り部材14の直ぐ内側となる位置に、ELシート20aが設置されている。このELシート20aは円環状となっており、ちょうど時字13aの直下に位置するよう文字板本体13の全周に亘って設けられている。このELシート20aの電極(図示せず)は時計モジュール8の回路基板(図示せず)に接続されている。このEL発光シート20aは、基板に形成された電極で挟まれた有機材料が電気を通すことによって励起され発光するものである。上記文字板本体13において、このEL発光シート20aの発光により点灯し顕在化した部分が第1のモード指標部20Aを構成している。
【0020】
また、第2のモード指標部20Bは第1の見切り部材14に設けられている。
すなわち、第1の見切り部材14の下側にはELシート20bが設置されている。このELシー20bは円環状となっており、切分目盛14a及び文字14bの直下に位置するよう第1の見切り部材14の全周に亘って設けられている。このEL発光シート20bは、基板に形成された電極で挟まれた有機材料が電気を通すことによって励起され発光するものである。上記第1の見切り部材14において、このEL発光シート20bの発光により点灯し顕在化した部分が第2のモード指標部20Bを構成している。
【0021】
また、第3のモード指標部20Cは第2の見切り部材15に設けられている。
すなわち、第2の見切り部材15の下側にはELシート20cが設置されている。このELシー20cは円環状となっており、都市コード15aの直下に位置するよう第2の見切り部材15の全周に亘って設けられている。このEL発光シート20cは、基板に形成された電極で挟まれた有機材料が電気を通すことによって励起され発光するものである。上記第2の見切り部材15において、このEL発光シート20cの発光により点灯し顕在化した部分が第3のモード指標部20Cを構成している。
【0022】
次に、図3のブロック図を参照して、このアナログ腕時計の回路構成について説明する。
この回路構成は、回路全般を制御するCPU(中央演算処理装置)35、予め定められたプログラム(モード処理プログラムを含む。)が格納されたROM(リードオンリーメモリ)36、処理データを格納するRAM(ランダムアクセスメモリ)37、CPU35を動作させるためのパルスを生成する発振回路38、この発振回路38で生成したパルスを適正な周波数(CPU35を動作させるための適正な周波数)に変換する分周回路39、指針(インジケータ針10a、分針10b、時針10c)を運針させる時計ムーブメント8、針合わせのための歯車位置検出部13を備えている。時計ムーブメント8は請求項に言うインジケータ針駆動手段を構成している。また、CPU35及びプログラムは請求項に言う制御部を構成している。
【0023】
さらに、この回路構成は、上記のほかに、電池などの電源部40、標準時刻電波を受信するアンテナ41、受信した標準時刻電波を検波処理する検波回路42、EL発光シート20a,20b,20cから構成される照明部43、この照明部43を駆動するための照明駆動回路44、報音をするスピーカ45、このスピーカ45を駆動するめのブザー回路46を備えている。このうち照明部43及び照明駆動回路44は照明手段を構成している。
【0024】
続いて、このアナログ腕時計100の動作を説明する。このアナログ腕時計100は、少なくとも、時刻モード、電波モード及びワールドワイドタイムモードを有している。
【0025】
(時刻モード)
所定の操作子5を操作すると時刻モードとなる。
この時刻モードでは、CPU35は、照明部43及び照明駆動回路44を制御して、図4に示すように、EL発光シート20aを発光させて第1のモード指標部20Aを点灯させる。同時に、CPU35は、時計ムーブメント8を制御して、図4に示すように、インデックス針10aを12時位置まで回転させた後に停止させる。
図4に示す場合は、インデックス針10aが12時位置にあり、第1のモード指標部20Aのみが点灯していることによって、ユーザは現在、時刻モードであり、インデックス針10aが指し示している位置から、12時であることを認識することができる。
【0026】
(電波モード)
所定の操作子5を操作した場合、あるいは自動受信の際には自動的に電波モードとなる。
この電波モードでは、CPU35は、照明部43及び照明駆動回路44を制御して、図5に示すように、EL発光シート20bを発光させて第2のモード指標部20Bを点灯させる。そして、CPU35は、時計ムーブメント8を制御して、図5に示すように、インデックス針10aを「Y」、「N」、「R」、「W」、「ON」、「OFF」のいずれかの位置まで回転させた後に停止させる。
図5に示す場合は、インデックス針10aが電波受信準備中を示す「R」の位置にあり、第2のモード指標部20Bのみが点灯していることによって、ユーザは、現在、電波受信準備中の電波モードにあり、インデックス針10aが指し示している「R」から、電波受信準備中であることを認識することができる。
【0027】
(ワールドタイムモード)
所定の操作子5を操作するとワールドタイムモードとなる。
このワールドタイムモードでは、CPU35は、照明部43及び照明駆動回路44を制御して、図6に示すように、EL発光シート20bを発光させて第3のモード指標20Cを点灯させる。この状態で、所定の操作子5を操作すると、CPU35は、時計ムーブメント8を制御して、インデックス針10aを回転させ、該操作子5の操作毎に、インデックス針10aが都市コード13aを1つずつ順送りで指示する。秒針13aが所望の都市コード13aを指示した所で、所定の操作子5を操作すれば、該都市コード13aに対応した時間が表示される。
図6に示す場合は、インデックス針10aが「SYDNEY(シドニー)」の位置にあり、第3のモード指標部20Cのみが点灯していることによって、ユーザは、現在、ワールドタイムモードであり、インデックス針10aが指し示している位置から、「SYDNEY(シドニー)」の時刻であることを認識することができる。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0029】
上記実施形態では、時刻モード時に、文字板本体13の全周に亘る第1のモード指標部20Aを点灯させたが、時字13aが表記されている部分だけを点灯させるようにしてもよい。
【0030】
また、上記実施形態では、電波モード時に、第1の見切り部材14の全周に亘る第2のモード指標部20Bを点灯させたが、文字14bが表記されている部分だけを点灯させるようにしてもよい。この場合には、時刻モード時に切目目盛14aを点灯させてもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、モード指標部の中に細目情報が標記されていたが、モード指標部の脇に細目情報が表記されていてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 腕時計ケース
5,5a〜5d 操作子
10a インジケータ針
12 文字板
13 文字板本体
14 第1の見切り部材
15 第2の見切り部材
20A 第1のモード指標部
20B 第2のモード指標部
20C 第3のモード指標部
20a〜20c EL発光シート
43 照明部
44 照明駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種目のモードの中で現在どの種目のモードにあるかを表示するためのモード指標部が設けられ、該モード指標部の中又は脇に、該モード指標部に対応するモードに関連する細目情報が表記されている文字板と、
前記複数種目のモードにそれぞれ対応するモード指標部を種目毎に点灯可能に構成された照明手段と、
所定の軸を中心に回転可能に構成され前記細目情報を指示するためのインジケータ針と、
前記インジケータ針を回転させるインジケータ針駆動手段と、
前記複数種目のモードの中の一種目のモードがユーザ又は自動で選択された際に、前記照明手段を制御して、ユーザ又は自動で選択された一種目のモードに対応する前記モード指標部を点灯させるとともに、前記インジケータ針駆動手段を制御して、前記点灯したモード指標部に対応するモードに関連する前記細目情報を前記インジケータ針にて指示させる制御手段と、
を備えることを特徴とするアナログ腕時計。
【請求項2】
前記制御手段は、前記複数種目のモードの中のモードがユーザ又は自動で選択された際に、前記照明手段及び前記インジケータ針駆動手段を制御して、選択されたモードに対応する前記モード指標部として前記細目情報を点灯させるとともに、該細目情報の中の1つを前記インジケータ針に指示させることを特徴とする請求項1に記載のアナログ腕時計。
【請求項3】
前記文字板は、前記モード指標部が設けられている箇所が透明部分となっており、前記照明手段は、前記透明部分の裏側に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアナログ腕時計。
【請求項4】
前記モードは時刻モードであり、前記細目情報は時字又は切分目盛中の1つによって構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアナログ腕時計。
【請求項5】
前記モードはワールドタイムモードであり、前記細目情報は都市コードによって構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のアナログ腕時計。
【請求項6】
前記モードは電波モードであり、前記細目情報は電波状況を示す文字又は図形によって構成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のアナログ腕時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−163857(P2011−163857A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25381(P2010−25381)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】