説明

アプリケータ

【課題】再使用の防止に適した挿入物挿入用のアプリケータを提供する。
【解決手段】挿入物2を保持しかつ先端部3aから排出可能な外筒3と、該外筒3内に移動自在に配置され、その基端部を押圧して外筒3内に挿入された挿入物2を先端部3aから排出させるプランジャ4とを備えたアプリケータにおいて、プランジャ4には、係合部21、22が設けられ、外筒3には、プランジャ4を押圧して挿入物2の排出を完了させたときに係合部21、22と係合してプランジャ4の外筒3の基端部3b方向への移動を規制する被係合部6a〜6cが設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入物挿入用のアプリケータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人が膣内等の体内に自ら薬剤やタンポン等の挿入物を挿入できるようにしたアプリケータとして、所定の長さ寸法を有する外筒とプランジャとから構成され、外筒の内部先端に挿入物を配置し、更にこの外筒の基端側にプランジャを挿入した状態で人の体内に挿入し、プランジャを押圧して挿入物を前進させ、外筒先端から挿入物を外部へ送り出して使用されるものが知られている。
【0003】
これらのアプリケータには、挿入物の外筒へのセット時又は挿入途中に過ってプランジャが外筒から抜け落ち、押圧操作を中断させてしまったりする不都合を回避すべく、外筒の内壁面とプランジャの先端部とに係合部及び被係合部をそれぞれ備えてプランジャの抜出防止を図ったものがあり、例えば下記特許文献1又は2のようなアプリケータが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−201761号公報
【特許文献2】特表2009−530055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなアプリケータによれば、プランジャを押圧して挿入物を排出した後にプランジャを外筒の基端側に引いて係合部と被係合部とが係合する位置まで後退させることができ、外筒の先端領域に再び空間を形成して挿入物を挿入させ得る構成とされていたため、一度使用されたアプリケータが再利用されてしまうおそれがあり、不衛生な利用が生じるおそれがあるという問題があった。
【0006】
また、上記アプリケータにおいては、プランジャが外筒から抜け落ちるのを防止するための構成が複雑であり、アプリケータの製作のコストが高くなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記問題を解消するために、以下の手段を提供している。
第1の発明は、挿入物を保持しかつ先端部から排出可能な外筒と、該外筒内に移動自在に配置され、その基端部を押圧して前記外筒内に挿入された挿入物を前記先端部から排出させるプランジャとを備えたアプリケータにおいて、前記プランジャには、係合部が設けられ、前記外筒には、前記プランジャを押圧して前記挿入物の排出を完了させたときに前記係合部と係合して前記プランジャの前記外筒の基端部方向への移動を規制する被係合部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、前記係合部が前記被係合部に係合した際に、前記プランジャの基端部の少なくとも縁部が前記外筒内に埋設されていることを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、前記外筒の基端部外周面には、該外筒の軸線を中に挟んで対向する位置に一対の把持部が形成され、前記プランジャの基端部端面には、前記外筒への挿入方向に向けて窪む谷型形状の押圧面が形成され、該プランジャが、前記押圧面における谷型形状の谷底面の延在する方向を前記一対の把持部間方向に直交させた挿入姿勢としたときに、前記外筒内へ挿入可能とされていることを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、前記外筒の内面と前記プランジャの外面とのいずれか一方に突条が形成され、同他方に、前記外筒に対して前記プランジャを前記挿入姿勢としたときに前記突条と嵌合して該プランジャの挿入を可能とし、前記プランジャを前記挿入姿勢以外としたときに該プランジャの挿入を阻止する凹部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
第5の発明は、前記把持部は、前記外筒の内方へ窪む凹所であることを特徴とする。
【0012】
第6の発明は、前記プランジャは、一方向に延びる軸線において互いに交叉する板状の壁部を具備し、前記外筒内に挿入したときに、前記板状の壁部の外縁が前記把持部の内周面に当接自在とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明のアプリケータによれば、プランジャにより挿入物を排出させたときに該プランジャの係合部と外筒の被係合部とが係合し、プランジャを外筒の基端部側に引くことが規制されるため、外筒先端に挿入物を再びセットしプランジャで押圧可能な状態にすることが妨げられ、使用済みのアプリケータが再利用されることを防止できるという効果を奏する。
また、挿入物が一度排出された場合挿入されたプランジャを外筒の基端側に引くことができないことから、アプリケータが未使用のものか使用済みのものかを判別しやすいという効果を奏する。
【0014】
第2の発明のアプリケータによれば、係合部と被係合部とが係合した時点でプランジャの基端部の縁部が外筒内に埋設され、該プランジャの基端部を把持できなくするため、挿入物の排出後にプランジャが操作不能となり、アプリケータの再利用をより確実に防止できるという効果を奏する。
【0015】
第3の発明のアプリケータによれば、外筒の把持部とプランジャの押圧面によってアプリケータを所定の持ち方にガイドすることができ、かつ一定の挿入方向に挿入されるよう形成されているため、アプリケータを操作しやすく、係合部と被係合部とが係合するまで確実にプランジャを押圧することができるという効果を奏する。
【0016】
第4の発明は、プランジャ及び外筒のそれぞれに形成された突条と凹部との嵌合により、プランジャが外筒内で回転することなく一方向に移動することができ、アプリケータの操作が容易となり、係合部と被係合部とが係合するまで確実にプランジャを押圧することができるという効果を奏する。
【0017】
第5の発明のアプリケータによれば、把持部から該把持部を挟む指がずれ難く、アプリケータの操作を確実に行うことができるという効果を奏する。
【0018】
第6の発明のアプリケータによれば、外筒の把持部の内周面に板状の壁部の外縁が当接するので、把持部を強く把持した際にも板状の壁部によって外筒の変形が抑えられ、係合部と被係合部が係合するまで円滑にプランジャを操作することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】は、本発明の実施の形態として示したアプリケータの半部を断面視した正面図である。
【図2】は、本発明の実施の形態として示したアプリケータを図1の矢印P方向に視た側面図である。
【図3】(a)、(b)は、本発明の実施の形態として示したアプリケータの構成部品を示す図であって、(a)は外筒の半部を断面視した平面図であり、(b)はプランジャの平面図である。
【図4】(a)、(b)は、本発明の実施の形態として示したアプリケータにおける構成部品の断面を示す図であって、(a)は図3(a)のA−A線視断面図であり、(b)は図3(b)のB−B線視断面図である。
【図5】(a)〜(d)は、本発明の実施の形態として示したアプリケータの使用状態を示す説明図である。
【図6】は、本発明の実施の形態として示したアプリケータの使用が完了した状態を示す一部断面図である。
【図7】は、本発明の実施の形態として示したアプリケータを把持した状態を示す図である。
【図8】は、本発明の実施の形態として示したアプリケータのキャップを示した図であり、(a)は、同キャップの半部を断面視した正面図であり、(b)は、同キャップの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のアプリケータを人の膣内等に錠剤等の挿入物を挿入するためのアプリケータに適用した場合を例として、図1から図5を参照して説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のアプリケータ1は、挿入物である錠剤2を内部に保持し先端から排出させ得る外筒3と、この外筒3内に移動自在に挿入され、錠剤2をその基端から押圧し移動させるプランジャ4とを備えて構成されている。
【0022】
外筒3は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の合成樹脂により有底筒状に形成されたものであり、先端部3aは半円球状にすぼむように形成され、基端部3bは外筒3の軸線L1に対して略垂直な面上で開口され、錠剤2及びプランジャ4を挿入できるように形成されている。また、外筒3の外周面は把持部5を除いて滑らかな面に形成されており、内周面3cは第1の凸部6a〜6c、第2の凸部7及び突条8a、8bを備えて形成されている。
【0023】
外筒3の先端部3aには、図1及び図2に示すように、錠剤2を排出可能な排出孔9と、該排出孔9に連通する複数の切れ目10とが形成されており、これら複数の切れ目10の間に複数の舌片11が形成されている。
この舌片11は、プランジャ4を外筒3内に挿入して錠剤2を外方へ送り出す際に弾性変形して互いに拡開し、錠剤2が外部へ排出された際に弾性復帰して元の形状に戻るように形成されたものである。
【0024】
複数の切れ目10は、各舌片11が均等に拡開し得るように、外筒3の先端部3a側から矢印P方向に視て排出孔9から放射線状かつ先端部3aを周方向に6等分するように均等に形成されている。この外筒3の内部は、排出孔9の手前側の一定の領域が錠剤2を排出開始可能とする排出待機領域Wとして設定されている。
【0025】
第1の凸部6a〜6c及び第2の凸部7は、図1及び図3(a)に示すようにプランジャ4の第1の係合部21又は第2の係合部22との係合により、該第1及び第2の係合部21、22と協働して錠剤2の外筒3内における位置を知覚させるものであり、本実施形態においては、図5(a)に示すように、錠剤2を外筒3から排出開始可能とする排出待機領域Wに位置させたこと、同図(b)に示すように錠剤2の先端部が外筒3の排出孔9から僅かに突出し、錠剤2が排出を始めた位置にあること、及び同図(d)に示すように、錠剤2が外筒3の排出孔9から完全に排出完了したこと、を知覚させるものである。
【0026】
第1の凸部6a〜6cは、図3(a)に示すように排出待機領域W近傍の基端部3b側に位置する外筒3の長さ方向中間部に形成されており、第2の凸部7は、第1の凸部6aから一定寸法基端部3b方向へ離間した位置に形成されている。
【0027】
第1の凸部6aは、第1の凸部のうち最も基端部3b側に形成された凸部で、第1及び第2の係合部21、22が乗越えた際にプランジャ4が外筒3の基端部3b方向へ移動するのを規制する被係合部を構成するものであり、外筒3の内周面3cに複数内方に向けて突出して形成されており、それぞれが内周面3cに等間隔環状配置されている。
第1の凸部6bは、錠剤2が排出待機領域Wに配置されたことを知覚させる凸部であり、上記の凸部6aと同様に内周面3cに複数内方に向けて突出して形成されている。
第1の凸部6cは、錠剤2の先端が外筒3の先端部3aから突出したことを知覚させる凸部であり、上記の凸部6a、6bと同様に内周面3cに複数内方に向けて突出して形成されている。
【0028】
これら第1の凸部6a、6b、6cは、外筒3の基端部3bから先端部3a方向に互いに隣接して配置され、凸部6aと凸部6bとの間に凹部Eが形成され、凸部6bと凸部6cとの間に凹部Fが形成されている。
【0029】
第2の凸部7は、プランジャ4の第2の係合部22が乗越えた際に該係合部22と係合することによりプランジャ4が外筒3の基端部3b側に移動するのを防止するように、第1の凸部6aの補助凸部として形成されたものであり、上記の第1の凸部6a〜6cと同様に外筒3の内周面3cに内方に向けて突出して形成され、それぞれが内周面3cに等間隔環状配置されている。
【0030】
第1の凸部6a〜6c及び第2の凸部7の内周面3cからの突出寸法は、プランジャ4をその基端部を押圧して先端部3a方向へ移動させたときに第1の係合部21又は第2の係合部22を乗越えさせるが、押圧することなく不用意に乗越えさせない寸法に設定されている。また、本実施形態において第1の凸部6a及び第2の凸部7は、断面視略山形の形状をしている。
【0031】
外筒3の基端部3b側の内周面3cには、図3(a)及び図4(a)に示すように、該基端部3b側の外筒3の壁部を補強するとともにプランジャ4の摺動をガイドする突条8a、8a、8b、8b・・が形成されている。
【0032】
突条8a、8a、8b、8b・・は、外筒3の基端部3bから外筒3の長さ方向中央部にかけて外筒3の長さ方向に延在するように形成されたものであり、内周面3cの周方向に等間隔環状配置されている。突条8a、8bの内周面3cからの突出寸法は、突条8aより突条8bの方が大とされている。突条8a、8aは、内周面3c内において互いに対向する位置に配置されているが、この突条8a、8aの位置する壁部の外周面には、基端部3bに近接する位置に把持部5、5が形成されている。
【0033】
把持部5、5は、このアプリケータ1を使用する際に外筒3において使用者に把持させる部分である。
この把持部5、5は、突条8aに隣接する突条8b、8bの間に位置して壁部外周面に形成されており、使用者が指で把持した際に触覚的に該把持部5を容易に認識し得るように、把持部5周辺の壁部の肉厚よりも僅かに薄肉に形成して窪ませ、周辺と段差を設けてあり、かつ把持部5の外縁をやや隆起させて縁取部23としている。
また、把持部5の外表面上には、滑り止め及び該把持部5の補強のためのリブ24が周方向に延在するように複数形成されている。
【0034】
一方、把持部5、5間に位置する外筒3の壁部は、基端部3bを補強するべく、やや厚肉に形成されている。
また、外筒3の基端部3bには、外筒3の径方向外方へ張り出す張出壁部25が形成されている。
【0035】
プランジャ4は、外筒3と同様に、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の合成樹脂により構成されたものであり、図1、図3(b)に示すように、錠剤2を外筒3の排出待機領域Wにセットする際に、外筒3内に挿入されて該外筒3内を摺動する摺動部26と、該摺動部26の基端部に設けられ、錠剤2が排出待機領域Wに配置された状態において外筒3の基端部3bから軸線方向外方へ突出し、錠剤2の排出に際して更に外筒3内に進入して摺動部26を前進させる押圧部27とを備えて構成されている。
【0036】
図3(b)、図4(b)に示すように、摺動部26は、一定の厚みを有する2つの板状の壁部28を軸線L2上において互いに直交するように交叉させて形成されたものである。
摺動部26には、その先端に形成され錠剤2を押し出す押出壁部29と、外筒3に形成された第1又は第2の凸部6a〜6c、7に係合し得る第1及び第2の係合部21、22と、外筒3に形成された各突条8a、8bに嵌合してプランジャ4の挿入方向をガイドする第1及び第2のフランジ部30、31が形成されている。
【0037】
押出壁部29は、先端方向に膨出する壁部であって、先端面が略球面状に形成された壁部である。
【0038】
第1の係合部21は、プランジャ4の軸線L2に直交する方向に外筒3の内径より極僅か小寸法に張り出した円板形状の壁部であり、図5(a)に示すように錠剤2を排出待機領域Wにセットした際に、外筒3の第1の凸部6bの基端部3b側の面に係合し、凹部E内に位置するよう形成されている。
【0039】
第2の係合部22は、第1の係合部21と略同様形状に形成されたものであり、第1の係合部21から略錠剤2の長さ寸法分間隙を隔てて基端側に形成され、図5(d)に示すように、押出壁部29が錠剤2を排出孔9から排出した際に、第1の凸部6bの基端部3b側の面に係合し、凹部E内に位置するように形成されている。
【0040】
この際、図3(b)に示すようにプランジャ4の押出壁部29から第2の係合部22の基端側近傍までの間に位置する板状の壁部28pは、その張り出し寸法が第1及び第2の係合部21、22の張り出し寸法よりも小となるように形成されている。
【0041】
一方、第2の係合部22よりも後方側に位置する板状の壁部28qの張り出し寸法は、略外筒3の内径よりも極僅かに小寸法に形成され、図4(b)に示すように、一方の板状の壁部28qの張り出し寸法が他方の板状の壁部28qの張り出し寸法よりも更に僅かに小寸法となるように形成されている。
【0042】
第1及び第2のフランジ30、31は、それぞれ略同形状をしており、図4(a)に示す外筒3の開口部40に挿入された際に突条8a、8b・・に嵌合し得る形状に形成され、その周縁部に切欠(凹部)41、41と直線切截部42、42とが形成されている。
【0043】
上記の構成を有する摺動部26は、図3(b)に示すように全体として、第1の係合部21が凹部Eに嵌合した状態で、第2のフランジ31が外筒3の開口部40に位置する長さ寸法となるように形成されている。
【0044】
プランジャ4の押圧部27は、の軸線L2に直交する断面形状が扁平形状とされた支持部43と、該支持部43に形成された指当接部44とを備えて構成されている。
【0045】
指当接部44は、その端面44aが外筒3の開口部40に嵌入し得る大きさに形成されているとともに、プランジャ4の外筒3への挿入方向に向けて緩やかに窪む側面視略谷型形状となるように形成され、谷型形状の谷底面45の延在する方向が板状の壁部28のやや張り出し寸法が小となるよう形成された前記一方の壁部28qの張り出し方向と一致するように形成されている。
【0046】
押圧部27の長さ寸法は、排出待機領域Wに位置する錠剤2を先端部3aから排出させることのできる長さ、すなわち錠剤2の長さ寸法と略同寸法となるように設定されており、図6に示すように、錠剤2の排出が完了した際に、指当接部44の外縁部を含むプランジャ4の全体が外筒3内に収納されるように形成されている。
【0047】
錠剤2は、扁平状に形成されており、図3(a)に示すように、基端部が先端に向けてやや窪んだ砲弾状の形状とされ、扁平状の基部の両面に膨出部が形成されている。
【0048】
上記の構成を有するアプリケータ1の使用に際しては、外筒3の開口部40から錠剤2、プランジャ4をこの順に挿入し、軸線L1を中心としてプランジャ4を回転させて図4(a)に示す外筒3の開口部40の内周面3cの形状に同図(b)に示すプランジャ4の第1のフランジ部30を嵌合させてプランジャ4の挿入向きを定める。
【0049】
この際、図4(a)、(b)のそれぞれに示す外筒3とプランジャ4の形状において、プランジャ4におけるフランジ30の切欠41、41・・に外筒3の突条8b、8b・・を位置させ、フランジ30の直線切截部42、42を外筒3の突条8a、8aに対向させた状態でプランジャ4を外筒3内に挿入する。
【0050】
かくして、図7に示すようにプランジャ4を外筒3に挿入した場合には、把持部5、5間方向に対して指当接部44の谷底部45の延在方向が略直交する方向に位置決めされた状態でプランジャ4の回動を防止することができ、外筒3の把持部5、5を親指と中指で把持しプランジャ4の押圧部27の指当接部44に人差し指をフィットさせることのできる姿勢を維持することができる。
【0051】
上記の姿勢でプランジャ4を更に挿入し、第1の係合部21を外筒3に形成された第1の凸部6aに当接させ、アプリケータ1を体内に挿入する。この際、把持部5、5は薄肉に形成されているが、突条8a及びリブ24により補強されているとともに、図4(a)に示す該突条8aに同図(b)に示す板状の壁部28qの外縁が当接して支持されるため、凹みを僅かにして把持される。
【0052】
アプリケータ1が体内の適切な位置までに挿入されたら、プランジャ4を押圧して錠剤2を排出待機領域Wまで移動させる。この際、プランジャ22の押出壁部29が錠剤2を排出待機領域Wに位置させた状態で第1の係合部21が、外筒3に形成された第1の凸部6aを乗越えて凸部6bの基端部3b側の面に係合し、凹部E内に位置する。ここでアプリケータ1の使用者は、プランジャ4の第1の係合部21が第1の凸部6bに係合することによって触覚により錠剤2が図5(a)に示す排出待機領域Wに位置したことを知覚することができる。
【0053】
次いで、プランジャ4を更に押圧すると、図5(b)に示すように第1の係合部21が第1の凸部6bを乗越えて第1の凸部6cの基端部3b側の面に係合し、凹部F内に位置することになる。
この際錠剤2は、押出壁部29に押圧されて前進し、図5(b)に示すようにその先端部が僅かに外筒3の排出孔9から突出する。
ここで、アプリケータ1の使用者は、錠剤2の排出が開始されたことを知ることができる。
【0054】
更にプランジャ4を押圧すると、同図(c)に示すように第1の係合部21が第1の凸部6cを乗越え、錠剤2が外筒3の舌片11を拡開させつつ排出孔9から排出され、最終的にプランジャ4の押圧壁部29が排出孔9に近接するとともに、同図(d)に示すように第2の係合部22が第1の凸部6aを乗越えて凸部6bに係合し、凹部E内に位置した時に錠剤2の排出が完了する。なお、第2の係合部22が凹部E内に位置したとき、プランジャ4の押出壁部29の先端面は、外筒3における先端部3aの舌片11よりやや手前に位置しているが、錠剤2は舌片11の弾性復帰力により前方へ押し出され、排出孔9から完全に排出される。
【0055】
ここで、アプリケータ1の使用者は、第2の係合部22が第1の凸部6bに係合したことによって錠剤2の挿入完了を知覚することができるので、アプリケータ1を体内からゆっくりと抜出し投薬を終了させる。
【0056】
上記のようにアプリケータ1の使用を完了した状態においては、図6に示すようにプランジャ4の押圧部27が外筒3内に完全に挿入され、かつ第2の係合部22が第1の凸部6aの先端部3a側の面に係合するため、外筒3からプランジャ4の抜出が困難となる。
【0057】
以上のように、本発明のアプリケータ1によれば、プランジャ4を外筒3内に挿入して錠剤2が排出完了した場合には、第2の係合部22が第1の凸部6の基端側3bの凸部6aを乗越え、これら凸部6aと第2の係合部22とが係合する設計とされているためプランジャ4が不用意に外筒3の基端部3b側に移動しないよう構成されている。また、該排出完了時にプランジャ4の指当接部44の外縁が外筒3内に完全に挿入されるとともに、指当接部44の中央部が凹む谷形形状とされているためプランジャ4の把持が不能となる。したがって、一旦挿入されたプランジャ4の抜出が不可能となり、使用済みのアプリケータ1の再使用を防止して、衛生状態を確保することが可能となる。
また、錠剤2が一旦排出された場合、挿入されたプランジャ4の全体が外筒3内に挿入され、外筒3からの取出しが不能とされていることから、アプリケータ1が未使用のものか使用済みのものかを判別しやすくなるという効果が得られる。
【0058】
また、外筒3に形成された突条8bと、プランジャ4に形成された第1及び第2のフランジ部30、31の切欠41との嵌合により、外筒3に対し定められた位置関係となった場合に該外筒3にプランジャ4が挿入され、外筒3内で回動することなく移動可能となる構成とされているため、外筒3の把持部5に対してプランジャ4の指当接部44を常に片手で把持しやすい姿勢にセットすることができ、アプリケータ1の使用時に常に操作が容易となる姿勢を確保することができるため、第2の係合部22が第1の凸部6aを乗越えるまでプランジャ4を押圧しやすくなるという効果が得られる。
【0059】
また更に、第2の係合部22に係合する第2の凸部7を設けたので、第1の係合部21が第1の凸部6aを乗越えた際に第2の係合部22が補助凸部7を乗越え係合し、プランジャ4の外筒3からの抜け出し防止を補助することができるという効果が得られる。
【0060】
また、把持部5、5が僅かに弾性変形可能であるため、図7に示すように、親指と中指とを把持部5、5の表面になじませて当接させることができるとともに、リブ24、24・・により滑りを防止して把持部5、5を堅固に把持することができ、かつ指当接部44の端面44aが窪んでいることによって人差し指の側方への滑りを防止してプランジャ4の押圧を確実かつスムーズに行うことができる。
【0061】
また更に、プランジャ4の摺動部26が互いに直交する板状の壁部28により形成され、該板状の壁部28の基端部側の壁部28qの外縁が把持部5、5の内面に当接し得る構成とされているため、把持部5を把持した際に、薄肉に形成された該把持部5を支持し得るとともに、プランジャ4と外筒3との摩擦面を最小にすることが可能となり、プランジャ4の外筒3内における移動を円滑に行うことができるという効果が得られる。
【0062】
また、外筒3に形成された第1の凸部6a〜6c、第2の凸部7とプランジャ4に形成された第1、第2の係合部21、22との係合により、錠剤2が外筒3内の排出待機領域Wに配置されたこと、錠剤2が排出され始めたこと、及び排出完了したことを使用者が順次連続的に知覚することができるので、いつ排出されるのかが不明なことによりアプリケータ1を必要以上に慎重に操作して投薬に時間がかかるとともに使用者に無用の精神的負担を掛けることを防止し、錠剤2の一連の排出状態を適時に確認しながらアプリケータ1を安心してかつ円滑に操作することができるという効果が得られる。
【0063】
また、第1の凸部6aに第1及び第2の係合部21、22を係合させて錠剤2が排出待機領域Wに配置されたこと、及び、錠剤2の排出が完了したことを知覚させることができるため、錠剤2の位置に応じて設ける被係合部の共通化を図ってアプリケータ1をシンプルに構成することができるという効果が得られる。
【0064】
また、錠剤2が外筒3の先端部3aから完全に排出されたときに第2の係合部22と第1の凸部6bとが係合するように形成されており、錠剤2の排出が完了したことを使用者が確認することができるため、錠剤2の排出が不完全な状態でアプリケータ1を排出しようとしてしまう等の不都合を回避し、アプリケータ1の操作を安全に行うことができるという効果が得られる。
【0065】
また、第1の凸部6a〜6c、又は第2の凸部7の突出寸法が、プランジャ4の第1の係合部21及び第2の係合部22を乗越えさせることができるが不用意に前進及び後退させない寸法に設定されているので、凹所E、Fに第1又は第2の係合部21、22を位置させた時点で錠剤2の排出状態を一時停止させやすくなり、アプリケータ1の操作を確実に行うことができるという効果が得られる。
【0066】
本実施形態においては、プランジャ4により外筒3内に配置された錠剤2が排出された際に第2の係合部22が乗越える第1の凸部6aは、断面視略山形の形状とされているが、これに限られるものではなく、第2の係合部22が乗越え可能なように外筒3の基端部3b側に外筒3の先端部3aに向かって立ち上がる傾斜面を有し、第2の係合部22が一旦乗越えると該第2の係合部22と係合してプランジャ4の後退を困難とさせる面(例えば軸線L1に直交する面)を有するものであってもよい。
【0067】
また、本実施形態においては、第1の凸部6a、6b、6c及び第2の凸部7が外筒3の内周面3cに複数環状配置された構成とされているが、これに限られるものではなく、第1及び第2の係合部21、22を乗越えさせ、不用意に後退させないものであれば、外筒3の内周面3cに一つずつ形成されたものであってもよく、あるいは、内周面3cに周方向に延在する畝であっても良い。
【0068】
第1の凸部6aを上記のような形状とした場合には、錠剤2の外筒3からの排出時にプランジャ4の指当接部44の外縁部が外筒3内に埋設されていなくても、プランジャ4の外筒3の基端部3b側への移動を阻止することが可能となる。
したがって、本実施形態においてプランジャ4は、外筒3の排出孔9から錠剤2を排出完了させた際に、該プランジャ4の先端が外筒3内の先端部3aに極近接する位置に至る構成とされているため、アプリケータ1により一旦錠剤2を排出した後は、外筒3内に再び錠剤2を配置する排出待機領域Wを有しない状態でプランジャ4の抜出が阻止され、アプリケータ1の再使用をより確実に防止することが可能となる。
【0069】
また、上記の実施形態においては、プランジャ4を外筒3内に挿入して錠剤2の排出待機領域Wに配置した際又は排出を完了した際に第2の係合部22が第1の凸部6a、第2の凸部7に係合してプランジャ4の基端部3b側への移動を困難とさせるものとしたが、該第2の係合部22及び第1の凸部6a、第2の凸部7に加え、錠剤2の排出完了時にプランジャ4の先端部3a側への移動も困難とする別の係合部及び被係合部を形成したものであっても良い。
上記の別の係合部及び被係合部を形成することにより、プランジャ4を押圧して錠剤2を排出した際に該プランジャ4の前後方向への移動が困難となるので、一旦使用したアプリケータ1を再使用することをより確実に防止することが可能となる。
【0070】
本実施形態において、アプリケータ1は、錠剤2が排出待機領域Wに配置された時、錠剤2が排出開始した時、及び排出完了した時を知覚させる第1及び第2の凸部6a〜6c、7及び第1及び第2の係合部21、22を備えた構成としたが、これに限られるものではなく、錠剤2の排出途中、又は排出終了直前を知覚させる位置において互いに係合する係合部と被係合部とを備えた構成とするものであっても良い。また、把持部5についても触覚的、視覚的に該把持部を容易に認識し得るような形態であれば、上記実施形態の形状に限られるものではなく、例えばリブ24の代わりにエンボス加工を施し、縁取部23を設けないものであっても良い。
【0071】
また、本実施形態において、アプリケータ1は、錠剤2を人の膣に錠剤を投薬する場合を例として説明したが、これに限らず人その他動物の鼻、耳、その他の体内にアプリケータを挿入して該アプリケータから挿入物を排出するのに適しているものに広く適用することができる。
【0072】
また、外筒3先端の保護のために、外筒3の先端3aに被冠させるキャップ等を利用してもよい。
図8(a)に示すように、キャップ50は、合成樹脂、エラストマー等により形成されており、先端部51aが半円球状にすぼむように形成され基端部51bが開口された筒状部51と、該筒状部51の先端部51aに融着された板状部52とが一体成形により形成されている。
基端部51bの内周面の断面径寸法は、外筒3の外形の断面径寸法と略同一又は極僅かに小寸法に形成され、外筒3の先端部3aに被冠した際にキャップ50が先端部3aから徒に離脱しないように形成されている。
また、板状部52は、同図(b)に示すように、略矩形に形成され、四方の角部52a〜52dが水平方向外方へ張り出すよう形成されている。
【0073】
上記のような構成キャップ50は、外筒3の先端部3aに被冠されることにより使用の直前まで外筒3の先端部3aを衛生的に保護することができる。
また、キャップ50は、略矩形の板状部52を有していることにより、キャップ50を被冠したままアプリケータ1を体内に挿入できないようになっており、アプリケータ1の誤用を防止することができる。また更に、アプリケータ1の使用の直前に該アプリケータ1を棚等に置いた際の転がりを防止することができる。
【0074】
なお、上記のキャップ50の筒状部51は、外筒3が体内に挿入される位置付近まで外筒3を被覆し得る長さ寸法とされていてもよく、また、板状部52を平面視した際の形状は、キャップ50を被冠したままでのアプリケータ1の体内への挿入を阻止し得る形状及び寸法のものであれば良く、三角形又はその他の多角形とされていても良い。
【符号の説明】
【0075】
1 アプリケータ
2 錠剤(挿入物)
3 外筒
3a 先端部
4 プランジャ
6a 第1の凸部(被係合部)
6b 第1の凸部(被係合部、一の凸部)
6c 第1の凸部(被係合部、他の凸部)
7 第2の凸部(補助凸部)
8b 突条
21 第1の係合部(係合部)
22 第2の係合部(係合部)
27 押圧部(基端部)
41 切欠(凹部)
W 排出待機領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入物を保持しかつ先端部から排出可能な外筒と、該外筒内に移動自在に配置され、その基端部を押圧して前記外筒内に挿入された挿入物を前記先端部から排出させるプランジャとを備えたアプリケータにおいて、
前記プランジャには、係合部が設けられ、
前記外筒には、前記プランジャを押圧して前記挿入物の排出を完了させたときに前記係合部と係合して前記プランジャの前記外筒の基端部方向への移動を規制する被係合部が設けられていることを特徴とするアプリケータ。
【請求項2】
前記係合部が前記被係合部に係合した際に、前記プランジャの基端部の少なくとも縁部が前記外筒内に埋設されていることを特徴とする請求項1に記載のアプリケータ。
【請求項3】
前記外筒の基端部外周面には、該外筒の軸線を中に挟んで対向する位置に一対の把持部が形成され、
前記プランジャの基端部端面には、前記外筒への挿入方向に向けて窪む谷型形状の押圧面が形成され、
該プランジャが、前記押圧面における谷型形状の谷底面の延在する方向を前記一対の把持部間方向に直交させた挿入姿勢としたときに、前記外筒内へ挿入可能とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアプリケータ。
【請求項4】
前記外筒の内面と前記プランジャの外面とのいずれか一方に突条が形成され、
同他方に、前記外筒に対して前記プランジャを前記挿入姿勢としたときに前記突条と嵌合して該プランジャの挿入を可能とし、
前記プランジャを前記挿入姿勢以外としたときに該プランジャの挿入を阻止する凹部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のアプリケータ。
【請求項5】
前記把持部は、前記外筒の内方へ窪む凹所であることを特徴とする請求項3又は4に記載のアプリケータ。
【請求項6】
前記プランジャは、一方向に延びる軸線において互いに交叉する板状の壁部を具備し、
前記外筒内に挿入したときに、前記板状の壁部の外縁が前記把持部の内周面に当接自在とされていることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載のアプリケータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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