説明

アミノ化ヘミセルロース分子およびその製造方法

本願発明は水溶性糖質の還元的アミノ化方法に関する。アミノ化水溶性糖質は、セルロースをさらに修飾するための方法における前提条件である。この分子の合成は、水溶性糖質、アミンおよび還元剤を用意し、それを酸性条件下で反応させ、単離し、60%より大きな收率でアミノ化水溶性糖質を得ることからなる。該方法はまた、分子量が少なくとも1kDaのアミノ化ヘミセルロース分子、特にキシログルカンに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は水溶性糖質の還元的アミノ化法に関する。この分子の合成は、水溶性糖質、アミンおよび還元剤を準備し、それらを酸性条件下で反応させて60%より大きな收率でアミノ化水溶性糖質を得ることを含む。本願発明はまた、分子量が少なくとも1.0kDaのアミノ化ヘミセルロース分子、特にキシログルカンに関する。
【背景技術】
【0002】
還元的アミノ化は、カルボニル基を中間体のイミンを介してアミンに変換することを含む、化学反応である。カルボニル基は、通常、ケトンまたはアルデヒドである。還元的アミノ化はまた、還元末端(ヘミアセタール)を有する糖質についても可能である(反応経路1を参照)。
【0003】
還元末端を有する糖質の還元的アミノ化は、イミン形成と、同時に起こる還元で、ワンポットにて行われうる。このことは直接的還元的アミノ化として知られており、水中で安定しており、酸性条件下で反応性である、還元剤、例えばシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN)を用いて実施される(反応経路1を参照)。
【0004】
糖質の還元的アミノ化法は多くの用途で必要とされる。一つの例が還元的アミノ化を用いてキシログルカンおよびキシログルカンオリゴ糖を修飾することであり、さらにはセルロースまたはセルロース材料の修飾に用いられ得る。
【0005】
Charmotらの発明などの特許文献1において、セルロース材料をポリマーで修飾する方法が記載されている。この特許は、4つの参考文献、Danielssonら、Laarmら、特許文献2および特許文献3に従って、セルロース材料の末端グルコース残基が水素化ホウ素ナトリウムまたはシアノ水素化ホウ素ナトリウムのいずれかと共に、高圧の水素下にて、アミンで変換される還元的アミノ化手段を記載する。ジョージア大学の発明者らは、キシログルカンに化学的に結合されている染料が織物の染色に用いられ得ることを示す(特許文献4)。この方法において、彼らはアミノ染料を還元的アミノ化でキシログルカンオリゴ糖(XGO)の還元末端に結合させる。
【0006】
セルロース材料の修飾について記載されているすべての方法において、キシログルカン(XG)またはキシログルカンオリゴ糖(XGO)を還元的アミノ化により還元末端で修飾させる必要がある。その方法は高收率かつ安価で極めて効率的でなければならない。反応経路2はキシログルカンフラグメントについての還元的アミノ化を示す。
【0007】
(糖質の還元的アミノ化について現在提示されている方法)
分子を糖質に導入するのに一般的に使用される標準方法は、還元的アミノ化によるものであり、それにより糖質の還元末端は過剰量の第一アミンによりイミンに変換され、ついでそれを還元してアミンが得られる。
【0008】
還元末端で遊離の第一アミン(1−アミノ−1−デオキシ糖)を一工程で得るために、糖質はアンモニウム塩および還元剤、例えばシアノ水素化ホウ素ナトリウムで処理されるのが一般的である。反応経路3は炭酸アンモニウムおよびシアノ水素化ホウ素ナトリウムを用いるキシログルカンフラグメントの還元的アミノ化を示す。
【0009】
キシログルカンオリゴ糖のこれらの還元的アミノ化操作は低収率(2−50%)であり、その反応時間は約6−20日と長い(DanielssonおよびGrey 1986、非特許文献1;非特許文献2および非特許文献3)。
【0010】
精製操作にも時間を要し、費用がかかり、大規模合成に向いていない。XGOの還元的アミノ化は、一般に、大過剰量のアンモニウム塩および還元剤、100−150当量の炭酸水素アンモニウムおよび10−20当量のシアノ水素化ホウ素ナトリウムと一緒に水中で行われる(非特許文献3)。これらの塩はイオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーまたは透析により反応混合物から除去される必要があり、そのすべては大規模な工業環境で用いられる場合に費用がかかる。
【0011】
ある著者は、有機第一アミンを用いる場合に、pHが初期反応にて重要であることを示唆している。特許文献4において、反応物は、3ないし4のpHを得るように、酢酸で酸性にされ、この米国特許出願に記載の実験の一つでは、3.85のpHが使用されている。Evangelistaら(1996)によれば、pHは3より低くする必要があり、酢酸を添加することでこの値が達成される。YoshidaおよびLee(1994)は氷酢酸を用いてその反応環境の最適pH7を含む6−9のpHを得る。さらには、Schwartz & Gray(1977)は最適pHが8−9の範囲にあることを明らかにした。この部分の反応は高温で実施される。
【0012】
これらの工程は、各々、酸触媒に供され、酸の存在下での速度の改善はそれ自体意外なものではない[Evangelistaら、1996]。しかしながら、糖を効果的に還元的アミノ化に供するのに必要な酸性度は、単純なアルデヒドの場合に要求される酸性度よりもずっと高く、このことは酸触媒が必要とされることを示唆する。酸性条件を用いると、還元剤、例えばシアノ水素化ホウ素ナトリウムの反応性も高められる。
【0013】
文献中の還元的アミノ化反応の多くは、マンノース、グルコース、NAc−グルコース、ガラクトースなどの単糖類、またはラクトースなどの二糖類でなされている。三糖類および四糖類などのより大きなオリゴ糖を使用する、2または3の例が認められるにすぎない。
【0014】
数種の提供されている方法の要約を表に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第7030187号
【特許文献2】WO98/15566
【特許文献3】EP0725082
【特許文献4】米国2006/0242770
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Fryら、Plant J. 1997
【非特許文献2】Bourquinら、Plant cell., 2002
【非特許文献3】Brumerら、J. Am. Soc. 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
提示されている方法はいずれも、その收率が許容可能な低コストでの工業的規模では十分でなかった。かくして、再現性および收率の高い、還元末端でアミノ化される糖質の生成方法に対する要求がある。さらには、糖質の還元的アミノ化は低コストでなされうることが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
水溶性糖質を還元的アミノ化に付す新規な方法であって、従前に提示されている標準的な方法よりも優れている方法が開発された。合成は、糖質を溶解させ、ベンジルアミン、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸(光学的光沢剤(OBA))、4−ニトロアニリン、ドデシルアミンまたはアリルアミンなどのアミンと、還元条件の下で反応させる、ワンポット操作である。該方法を開発する間は、收率が60%より、さらには89ないし98%ほども高くなるとは考えてもいなかった。アミノ化されたヘミセルロース分子、特に分子量が少なくとも1kDaのキシログルカンが生成される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本願発明を以下の図面を用いて説明する:
【図1】従来の反応経路1
【図2】本願発明の反応経路2
【図3】従来の反応経路3
【図4】本願発明の反応経路4
【図5】キシログルコースの例
【発明を実施するための形態】
【0020】
水溶性糖質とアミンとを含む反応混合物中、還元条件下でアミノ化された水溶性糖質を生成する方法であって、
I)反応混合物を酸性にし(pHを7よりも低く調整し)、ついでインキュベートし、
II)インキュベーションの後で、生成されたアミノ化水溶性糖質を沈殿させてもよい
ことを含む方法が創作された。
【0021】
該反応における第一アミンは、式:RNHで示される。反応経路2に従って、このアミンが第二アミンを生成する。
【0022】
は、該アミンから除去可能であっても、除去できなくてもよい、化学基である。
【0023】
一の実施態様によれば、R基が除去され、第一アミノ基が糖質上にクリエートされる。このことはアミノ化糖質を加水分解することにより、またはアミノ化糖質を異性化し、加水分解することによってなされうる。
【0024】
かくして、本願発明はまた、
III)生成されたアミノ化糖質を
a)その生成されたアミノ化糖質を水および酸に溶かし、それを水素気体と触媒の存在下で高圧で反応させ、
b)触媒を除去し、
c)その後でアミノ化水溶性糖質の生成物を沈殿させてもよい
ことで水素化分解するか、
または
IV)アミノ化糖質を
a)その生成されたアミノ化糖質を水および酸に溶かし、それを触媒の存在下で反応させ、
b)触媒を除去し、
c)その後でアミノ化水溶性糖質の生成物を沈殿させてもよい
ことで異性化および加水分解する、
ことにより、R基を除去し、糖質上にアミノ基をクリエートする工程を含む方法にも関する。
【0025】
本願発明はまた、Rがベンジル基である場合、
III)生成されたアミノ化糖質を
a)その生成されたアミノ化糖質を水および酸に溶かし、それを触媒の存在下、高圧で水素気体と反応させ、
b)触媒を除去し、
c)その後でアミノ化水溶性糖質の生成物を沈殿させてもよい
ことで水素化分解することにより、R基を除去し、糖質上に第一アミノ基をクリエートする工程をさらに含む方法にも関する(反応経路4)。
【0026】
がアリル基である場合の本願発明の方法のさらなる変形は、
IV)アリル基を、
a)その生成されたアミノ化糖質を水および酸に溶かし、それを触媒の存在下で反応させ、
b)触媒を除去し、
c)その後でアミノ化水溶性糖質の生成物を沈殿させてもよい
ことでエナミンに異性化し、加水分解する、
ことからなる。
【0027】
上記した方法の工程Iは、塩を付加することなく、例えばアンモニウム塩を付加することなく行われる。
【0028】
酸性条件下で切断可能である、2,4−ジメトキシベンジルアミン、4−メトキシベンジルアミンまたは2,4,6−トリメトキシベンジルアミンなどの他のアミンは、他の除去可能なR基を導入するのにベンジルアミンまたはアリルアミノの代わりに使用されていてもよい。
【0029】
当業者であれば認識可能な、除去できるR基を有する他のアミンを用いることもできる。
【0030】
工程I)で得られる第二アミンは、反応混合物中に含まれるものとして用いられてもよく、あるいはさらに工程III)またはIV)にて反応させ、第一アミンに変換される前に、沈殿かつ単離されてもよい。
【0031】
アミノ化された水溶性糖質を生成する本願発明の方法の好ましい実施態様において、生成されるアミノ化水溶性糖質の收率は60%よりも高い。このことは、第二アミンが生成されるなどの工程I)に、および工程I)と、第二アミンを第一アミンに変換する工程III)またはIV)の組み合わせにも関する。
【0032】
本願発明の方法の一の実施態様において、工程I)の還元条件は、水素雰囲気、ならびに白金、白金誘導体などの触媒、または好ましくは水中で安定している還元剤、例えばシアノ化水素化ホウ素ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウムまたはピリジンボラン、ジメチルアミンボランまたは2−ピコリンボランなどのアミンボラン複合体であってもよい。
【0033】
還元剤および糖質は、100対1、90対1、80対1、70対1、60対1、50対1、40対1、30対1、20対1、10対1、9対1、8対1、7対1、6対1、5対1、4対1、3対1、2対1、1.5対1、1.2対1、1.1対1、1対1、好ましくは1.2対1の当量比にて用いられ得る。
【0034】
アミノ化水溶性糖質を生成する本願発明の方法の好ましい実施態様において、工程I)のアミンは第一有機アミンである。本願発明の第一アミンは、式:RNで示され、ここでRはアルキルまたは芳香族基である。アルキル基は、炭素数1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29および30のアルキル基より選択され得る。アルキル基は直鎖であっても、分岐鎖であっても、または環状であってもよく、飽和であっても、例えば、上記した炭素原子数を有するアルケンおよびアルキンなどの不飽和であってもよい。アルキル基は、Oなどの1個または複数のヘテロ原子を含んでもよい6個の環原子を有する環状飽和基であってもよい。Oなどの1個または複数のヘテロ原子を含んでもよい6個の環原子を有するそのような1個または複数の環状飽和基が一緒に結合されていてもよい。当該基が一緒に縮合するか、またはグリコシド結合により相互に結合されてもよい。
【0035】
芳香族基は3と14個の間の環原子を有する基より選択され得る。それらは単、二および多環であってもよく、環原子として炭素原子だけを含んでもよく、あるいはN、SおよびOより選択される1個または複数のヘテロ原子を含んでもよい。
【0036】
ヘテロ芳香族基の例は、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ピロール、インドール、イソインドール、チオフェン、ベンゾチオフェン、ベンゾ[c]チオフェン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、プリン、ピラゾール、インダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、イソキサゾール、ベンズイソキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールである。それらはベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリミジンおよびピリダジンなどの6員であってもよい。それらはナフタレン、キノリン、キノキサリン、イソキノリン、キナゾリンおよびシンノリンなどの縮合二環式環であってもよく、アントラセン、アクリジンなどの縮合多環式環であってもよい。
【0037】
アルキルおよびアリール基は、OH、NH、Cl、I、Br、F、上記した炭素数のアルキル、上記した炭素数のアルコキシ、例えばメトキシより選択される1個または複数の基で置換されていてもよい。
【0038】
さらには、Rは、カルボニル含有誘導体、リン含有誘導体、ケイ素含有化合物、ホウ素含有誘導体、セレン含有誘導体、含硫黄誘導体、アルコール含有誘導体、エーテル含有誘導体、エポキシド含有誘導体、ヘテロサイクル、アセタール含有化合物、−NH−アルキル誘導体、−NH−アリール誘導体、−NH−ベンジル誘導体、−NH−CO−アルキル誘導体、−NH−CO−アリール誘導体、−NH−CO−ベンジル誘導体、例えば、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸(OBA)、ベンジルアミン、アリルアミン、ドデシルアミンまたは4−ニトロアニリンであってもよい。
【0039】
アミノ化水溶性糖質を生成する本願発明の方法の好ましい実施態様において、水溶性糖質はヘミセルロース、特にキシログルカンである。
【0040】
アミノ化水溶性糖質を生成する本願発明の方法の好ましい実施態様において、水溶性糖質はキシログルカンオリゴ糖である。
【0041】
アミノ化水溶性糖質を生成する本願発明の方法のもう一つ別の実施態様において、糖質は三糖類などの少なくとも3個の単糖類を含む。
【0042】
アミノ化水溶性糖質を生成する本願発明の方法のもう一つ別の実施態様において、水溶性糖質は、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個または少なくとも10個の単糖類、例えば4ないし10500個の、4ないし13500個の単糖類を含む、可溶性糖質である。
【0043】
アミノ化水溶性糖質を生成する本願発明の方法のもう一つ別の実施態様において、水溶性糖質は、分子量が少なくとも1kDa、少なくとも1.35kDa、少なくとも1.4kDa、少なくとも2kDa、少なくとも3kDa、少なくとも4kDa、または少なくとも10kDa、例えば1kDaないし1.5百万Da、例、1kDaないし1.5百万Da、1.35kDaないし1.5百万Da、1.4kDaないし1.5百万Da、2kDaないし1.5百万Da、3kDaないし1.5百万Da、4kDaないし1.5百万Da、10kDaないし1.5百万Daのキシログルカンである。
【0044】
アミノ化水溶性糖質を生成する本願発明の方法のもう一つ別の実施態様において、水溶性糖質は、分子量が1kDaないし1.5百万Daの、例えば1350Daから50kDaまでのキシログルカンである。
【0045】
多糖類の分子量を測定するのは一般に困難である。上記した値は平均分子量である。
【0046】
本願発明のある実施態様において、澱粉、デキストラン、デキストリン、アガロースまたはセファロースは水溶性糖質として含まれない。
【0047】
アミノ化水溶性糖質を生成する本願発明の方法の一の実施態様において、I)の反応混合物のpHは約pH5に調整される。
【0048】
本願発明の方法のもう一つ別の実施態様において、工程I)の反応混合物のpHは、pH4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、pH4.7、pH4.8、pH4.9、pH5.0、pH5.1、pH5.2、pH5.3、pH5.4、pH5.5、pH5.6、pH5.7、pH5.8またはpH5.9などのpH4.0からpH6.0の範囲にある。
【0049】
本願発明の方法のもう一つ別の実施態様において、工程I)の反応混合物のpHは、pH4.5またはpH4.5より低い値であってはならない。本願発明の方法のもう一つ別の実施態様において、工程I)の反応混合物のpHは、pH6またはpH6よりも高い値であってはならない。本願発明の方法のもう一つ別の実施態様において、工程I)の反応混合物のpHは、pH4.5より高く、pH6よりも低い。
【0050】
本願発明の一の実施態様において、反応混合物は工程Iの後で塩基性(pH>7)とされ、その後で生成されたアミノ化水溶性糖質を沈殿させてもよい。
【0051】
工程I)の後の反応混合物のpHは、プロトン化アミンのpKa値より上のpHに、例えば、約pH7、pH7.5、pH8、pH8.5、pH9、pH9.5、pH10、pH10.5、pH11、pH11.5またはpH12などのpH7ないしpH12に、例えば、pH9などのpH9−10に調整されてもよい。水性アンモニアが用いられてもよい。
【0052】
工程I、工程III)a)およびIV)a)において使用される酸は、HClなどのいずれの無機酸、あるいは酢酸などのいずれの有機酸であってもよい。
【0053】
工程I)、II)、III)およびIV)において、反応溶媒は、成分の実質的に大部分を溶解する、水または実質的に水であってもよい。
【0054】
アミノ化水溶性糖質を生成する本願発明の方法のさらにもう一つ別の実施態様において、メタノール、エタノール、1−または2−プロパノール、1−、2−または3−ブタノール、好ましくはメタノールなどの炭素数1−4のアルコールが、インキュベーションの前に工程I)の反応混合物に添加される。
【0055】
アルコールと水の混合物が溶媒として用いられるのに好ましい。というのは、この混合物が高收率を付与するからである。アルコールと水の間で1−10:1、特に4:1の割合が使用される。一の実施態様に従って、メタノールと水を4:1の割合で用いる。
【0056】
工程I)の反応混合物にアルコール、好ましくはメタノールを任意に添加した後で、反応が実質的に完了した後に、例えば、蒸発によりアルコールを除去してもよい。pHを塩基性にする場合、pHを調整し、塩基性にする前に、アルコールが除去されてもよい。
【0057】
工程I)、III)およびIV)の反応の実質的な完了は、例えばTLC(薄層クロマトグラフィー)、MALDI−TOF、NMR、IRまたはGPCのより決定されてもよい。
【0058】
好ましい実施態様において、收率は、60%と100%の間などの、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%にずっと近い値、あるいは上記した%値を組み合わせて得られるその間にある値である。
【0059】
本願発明の方法のもう一つ別の実施態様において、工程I)およびIV)は高温で実施される。したがって、温度は約室温、25℃であってもよいが、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃または100℃であってもよい。温度は室温と100℃の間にあればよく、あるいは上記した温度を組み合わせて得られるその間にある値であってもよい。
【0060】
本願発明の方法の好ましい実施態様において、工程I)の温度は約55℃である。
【0061】
本願発明の方法のもう一つ別の実施態様において、工程I)のインキュベーション時間は一晩である。
【0062】
本願発明の方法のもう一つ別の実施態様において、工程I)のインキュベーション時間は、約12、14、16、18、20、22、24、48、60、72または84時間などの1と100時間の間にある。
【0063】
本願発明の方法のもう一つ別の実施態様において、工程I)のインキュベーション時間は、約18時間である。
【0064】
本願発明の方法の好ましい実施態様において、触媒が工程IIIa)およびIVa)にて添加される。
【0065】
本願発明の方法の好ましい実施態様において、工程IIIa)およびIV)の触媒は、活性炭上パラジウムであってもよい。該触媒は活性炭上2%−25%パラジウムを含んでもよい。
【0066】
本願発明の方法の好ましい実施態様において、工程IIIa)およびIV)にて添加される触媒は活性炭上10%パラジウムである。
【0067】
本願発明の方法の好ましい実施態様において、触媒が工程IIIb)およびIVb)にて添加される触媒は、化合物を沈殿させる前に取り除かれる。
【0068】
本願発明の方法の一の実施態様において、沈殿はアセトンなどの非プロトン性有機溶媒またはいずれのアルコール、特にエタノールなどのプロトン性有機溶媒でなされてもよい。
【0069】
合成操作は、糖質が還元条件下でベンジルアミンまたはアリルアミンなどの第一アミンと一緒に濃縮されている、反応混合物を含んでもよい。
【0070】
多量の第一アミンを用いる代わりに、1.5当量の第一アミンを1.5当量のシアノ水素化ホウ素ナトリウムと一緒に用いるのが好ましい。メタノールなどのアルコールと水の混合物を溶媒として用いることで高收率が達成されるため、そのような混合物が好ましい。4:1の割合のこれらの溶媒は出発物質の良好な溶解度および最高の收率をもたらした。
【0071】
反応は、塩基性条件と比べてより望ましい結果をもたらした、わずかに酸性の条件にて特に実施される。酢酸を添加することで得られるpH5が最高の結果をもたらした。ほぼ塩不含の反応条件は精製を簡素化し、試薬および副生成物は抽出および蒸発で除去した。生成物を沈殿により単離し、遠心分離により白色固体を集めた。
【0072】
トリアセトキシボロ水素化物、ピリジンボラン、ジメチルアミンボランまたは2−ピコリンボランなどのアミンボラン、亜ジチオン酸ナトリウムまたは水素化雰囲気下で用いる酸化白金などの他の還元剤を、シアノ水素化ホウ素ナトリウムの代わりに用い、還元条件を生成することができる。
【0073】
合成工程は、糖質がベンジルアミンまたはアリルアミンなどのアミンと還元条件下で凝縮されている、反応混合物を含む。さらなる反応において、ベンジル基およびアリル基は、各々、例えば、第一アミノ基を有する糖質に至る加水分解および/または触媒作用により切断されてもよい(反応経路4を参照のこと)。触媒量の活性炭上パラジウムをその切断工程にて触媒として用いるのが好ましく、この触媒は再使用して環境を守り、この工程の製造コストを下げることができる。
【0074】
工程IIIa)の水素化分解反応において、水素化分解は反応速度を上げるのに酸性条件下で実施されてもよい。有機酸(酢酸)は沈殿および遠心分離工程の間に生成物より容易に除去され得るので、該酸が用いられた。この反応の速度をさらに上げるのに、さらに高い水素圧が用いられてもよい。6−10psiの水素圧が用いられたが、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、または少なくとも100psiの圧力が使用されてもよく、その上さらに高い、200、500、700または1000psiなどの圧力が使用され得る。6−1000psiの圧力または6−10psiなどの上記した圧力の数値を組み合わせることで得られる中間の値の圧力を用いてもよい。
【0075】
本願発明はまた、すべての工程I)、III)およびIV)を含み、インキュベーション工程I)がpHを限定することなく実施されてもよい、アミノ基を水溶性糖質に導入する方法に関する。このように、本願発明の方法は、インキュベーション工程I)においていずれのpHで、好ましくは上記したpH値で実施されてもよい。
【0076】
したがって、本願発明は、水溶性糖質と、式:RNH(ここで、Rはアミンより除去可能な化学基である)で示されるアミンを含む、反応混合物中にてアミノ化された水溶性糖質を生成する方法であって、
I)反応混合物をインキュベートし、
II)ついで、生成されたアミノ化水溶性糖質を沈殿させ、
III)R基、例えばベンジル基をアミンから
生成されたアミノ化糖質を
a)その生成されたアミノ化糖質を水および酸に溶かし、それを水素気体と触媒の存在下で高圧で反応させ、
b)触媒を除去し、
c)その後でアミノ化水溶性糖質の生成物を沈殿させてもよい
ことで水素化分解することで除去するか、
または
IV)R基、例えばアリル基をアミンから
IV)アミノ化糖質をエナミンに異性化し、該エナミンを酸加水分解によって除去することにより除去する、方法に関する。
【0077】
工程IV)のアミノ化糖質の異性化および加水分解は、
a)その生成されたアミノ化糖質を水および酸に溶かし、それを触媒の存在下で反応させ、
b)触媒を除去し、
c)その後でアミノ化水溶性糖質の生成物を沈殿させてもよい
ことで実施されてもよい。
【0078】
工程II、IIIおよびIVに関して本願明細書に記載の情報および詳細はすべて、変更すべき個所は変更して、この操作に適用に適用され、およびその逆も同様であり、違いは工程IにてpHに限定があるかどうかに過ぎない。このように、工程II)、III)およびIV)はすべて、工程IにていかなるpHが使用されるかに関わりなく、同じ条件下で実施されてもよい。
【0079】
この方法のいくつかの利点は、少量のベンジルアミン(1ないし3当量、好ましくは1.5当量)およびNaCNBH(1ないし3当量、好ましくは1.5当量)が使用されることなどである。触媒量のパラジウム/活性炭が水素化分解工程の触媒として用いられるのに好ましく、この触媒は再使用され、環境を守り、この工程の生産コストを下げることができる。
【0080】
さらには、該方法は、大規模生産に移行した場合に、好ましい点がいくつかある。該反応では塩がほとんど含まれないため、例えば、蒸発させ、有機溶媒に抽出することで試薬を除去することができ、沈殿および遠心分離を行うのに工業的規模の標準的装置を用いることができる。
【0081】
該合成は、従前の方法と比べて、大規模で、高收率75−98%にて実施され得る。第一工程の反応時間は、55℃の高温で約18時間であり、この反応時間はこれまで使用されていた約3ないし20日間と比べてずっと短い。このことは、該方法が高分子量の多糖類に適用可能であるから、特に顕著である。
【0082】
さらには、初期の報告でpHは4より小さくなければならない、あるいは約7−8でなければならず、收率は89と98%の間であったとされていることから、工程I)の反応環境で最適pHが5であることは予期できないことであった。米国2006/0242770(WO2004/094646)にて提供される実験と比較した場合に、pH4(実施例(ex.)1にてpH3.85)およびpH4.5(実施例4のアセテート緩衝液)が用いられており、その收率が約40%であり、この効果はさらに予期せぬこととなった。
【0083】
本願発明はまた、少なくとも2kDaの分子量を有する、アミノ化ヘミセルロース分子、特にキシログルカン分子に関する。特に、本願発明は、本願明細書に記載の方法により生成され、上記したアミン基を含む、アミノ化ヘミセルロース分子に関する。
【0084】
一の実施態様において、アミノ化ヘミセルロース分子の分子量は、1kDaから15kDa、例えば、1kDから15kDa、1.35kDaから15kDa、1.4kDaから15kDa、2kDaから15kDa、3kDaから15kDa、4kDaから15kDa、10kDaから15kDaのような、少なくとも1kDa、少なくとも1.35kDa、少なくとも1.4kDa、少なくとも2kDa、少なくとも3kDa、少なくとも4kDa、または少なくとも10kDaである。
【0085】
本願発明はまた、式:
【化1】

[式中:
R1は化学基であり、RはH、ガラクトース、アラビノースまたはフコースであり;
nは2と2000の間にあるように1よりも大きな数であり、分子量は1350Daよりも大きく;
nは2と2000の間にあり;および
分子量は6500Daよりも大きい]
で示されるアミノ化ヘミセルロース分子に関する。
【0086】
本願発明の方法を用いて生成されるアミノ化ヘミセルロースの分子量に関して上記されている事項は上記した式の分子にも関する。
【0087】
引用されているすべての文献は出典明示により本願明細書の一部とする。
【0088】
本願発明は、次に記載の、発明を限定するものではない、実施例により支持されている。
【0089】
実施例1−5
XGOを用い、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを還元剤として用いる反応が反応経路2に示される。
【0090】
実施例1
=ベンジル基(Bn)
XGO(50g、39ミリモル)をMeOH/HO(4:1、700mL)に55℃にて溶かした。ベンジルアミン(6.4mL、59ミリモル)およびNaCNBH(3.7g、59ミリモル)を添加した。ついで、酢酸(8mL)を添加してpHを5にし、反応混合物を55℃で一夜攪拌した。TLC(アセトニトリル/HO 2:1)およびMALDI−TOFに従って反応が完了した後、反応混合物を蒸発させてメタノールを除去した。ついで、該生成物を冷エタノール(3L)に沈殿させ、ついで遠心分離により白色固体を集めた。生成物を真空下で乾燥させ、49gの生成物(36ミリモル、92%)(R=Bn)を得た。
【0091】
実施例2
=アリル基(All)
XGO(3g、2.34ミリモル)を25mL MeOH、5mL HOおよび0.30mL 酢酸の混合物に溶かした。NaCNBH(0.220g、3.5ミリモル)およびアリルアミン(0.277mL、3.69ミリモル)を添加し、反応物を55℃で一夜攪拌した。TLC(アセトニトリル−HO 2:1)およびMALDI−TOFに従って完了した後、該混合物を氷冷エタノール中に沈殿させた。遠心分離により白色物質を集め、水に溶かし、濃縮させた。凍結乾燥に付して、2.65mgの生成物(0.20ミリモル、85%)(R=All)を得た。
【0092】
実施例3
=4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸(OBA)
XGO(8.18g、6.4ミリモル)を80mLの水に溶かした。4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸(23.2g、62.7ミリモル)およびNaCNBH(2.36、37.6ミリモル)を添加し、混合物のpHを1M NaOH(15mL)で6に調整した。該混合物を48時間攪拌し、ついで濾過(ガラスフィルター)して過剰な4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸を除去した。濾液に、1M HCl(25mL)をpHが2−3に達するまで加えた。該混合物を逆相シリカゲルのプラグ(C−18)を介する濾過に付して精製した。濃縮および凍結乾燥に付し、12.57gの生成物を得、それは未反応の4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸の少量の不純物(R=4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸)を含有した。
【0093】
実施例6−9
異なる還元剤を用いるXGOのベンジルアミンでの還元的アミノ化が反応経路2に示される。
【0094】
実施例6
還元剤=トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、Na(OAc)BH
XGO(1g、0.78ミリモル)を4mL MeOH、1mL HOに溶かした。Na(OAc)BH(0.331g、1.56ミリモル)およびベンジルアミン(0.17mL、1.56ミリモル)を添加した。酢酸を加え、pHを5にし、反応物を55℃で一夜攪拌した。さらにNa(OAc)BH(0.331g、1.56ミリモル)およびベンジルアミン(0.17mL、1.56ミリモル)を加え、該混合物を55℃で48時間撹拌した。TLC(アセトニトリル−HO 2:1)およびMALDI−TOFに従って完了した後、該混合物を氷冷エタノール中に沈殿させた。遠心分離により白色物質を集め、水に溶かし、濃縮させた。該生成物をエタノールに再度沈殿させ、生成物の単離を繰り返した。凍結乾燥に付して、616mgの生成物(0.48ミリモル、62%)(R=Bn)を得た。
【0095】
実施例7
還元剤=ジメチルアミンボラン複合体((CHNH BH
XGO(1g、0.781ミリモル)を8mL MeOH、2mL HOおよび0.1mL 酢酸の混合物に溶かした。ベンジルアミン(0.128mL、1.17ミリモル)およびジメチルアミンボラン複合体(0.220g、3.5ミリモル)を添加し、反応物を30℃で一夜攪拌した。TLCによれば、ほんの少量の生成物しか形成されなかった。該混合物をジメチルアミンボラン複合体(3x70mg)をさらに3回加えて40℃で72時間以上撹拌し、TLC(アセトニトリル−HO 2:1)およびMALDI−TOFによれば反応は完了した。混合物を濃縮し、生成物を氷冷エタノール中に沈殿させた。遠心分離により白色物質を集め、水に溶かし、濃縮させた。凍結乾燥に付して、788mgの生成物(0.58ミリモル、74%)(R=Bn)を得た。
【0096】
実施例8
還元剤=2−ピコリンボラン複合体(CN BH
XGO(1g、0.781ミリモル)を8mL MeOH、2mL HOおよび0.1mL 酢酸の混合物に溶かした。ベンジルアミン(0.128mL、1.17ミリモル)およびピコリンボラン複合体(125mg)を添加し、反応物を40℃で一夜攪拌した。TLCによれば、ほんの少量の出発物質が残っているだけで、さらにピコリンボラン複合体(125mg)を加え、混合物を再度40℃で一夜撹拌した。TLC(アセトニトリル−HO 2:1)およびMALDI−TOFは、今度は、変換の完了を示し、反応を停止させた。混合物を濃縮し、生成物を氷冷エタノール中に沈殿させた。遠心分離により白色物質を集め、水に溶かし、濃縮させた。凍結乾燥に付して、747mgの生成物(0.55ミリモル、70%)(R=Bn)を得た。
【0097】
実施例9
還元剤=亜ジチオン酸ナトリウム
0.5gのXGOを0.5M NaOAc緩衝液(pH5.5)(2mL)に溶かし、つづいて84mg(2当量)のベンジルアミンおよび0.27g(4当量)のNaを添加した。反応物を55℃撹拌し、TLC(水:アセトニトリル 1:2)でモニター観察した。(R=Bn)
【0098】
実施例10−11
ベンジル基およびアリル基の切断、反応経路4
【0099】
実施例10
=H(ベンジル基の水素化分解)
XGONHBn(50g、36.6ミリモル)をHO(150mL)に溶かし、酢酸(3mL)を加え、pHを5にした。活性炭上10%パラジウム(2.5g)を加え、混合物を6−10psiの圧で水素化分解に付した。反応をMALDI−TOFでモニターし、72時間後に反応が完了した。遠心分離により触媒を除去し、ついで、透明な溶液を濃縮した。生成物を冷エタノール(3L)中に沈殿させ、遠心分離により白色物質を集めた。沈殿物をHOに溶かし、凍結乾燥に付して、38gの生成物(29.7ミリモル、81%)(R=H)を得た。
【0100】
実施例11
=H(アリル基の除去)
XGONHAll(0.1g、0.076ミリモル)を3mLのMeOH、2mLのHOおよび40μLの酢酸に溶かした。微量(スパテラ先端量)の活性炭上10%パラジウムを加え、混合物を60℃で48時間撹拌した。MALDI−TOFに従って完了した後、遠心分離により活性炭上パラジウムを除去し、透明な溶液を濃縮し、凍結乾燥に付して、85mgの生成物(0.066ミリモル、87%)(R=H)を得た。
【0101】
実施例12−13
分子量が15kDのキシログルカンを用いた、反応経路2
【0102】
実施例12
=4,4−ジアミノスチルベン−2,2‘−ジスルホン酸(OBA)
キシログルカン 15kD(1g、0.067ミリモル)を20mLの水(Milli−Q)に溶かした。4,4‘−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸(OBA)(123mg、0.33ミリモル)およびNaCNBH(21mg、0.33ミリモル)を加えた。1M NaOHでpHを5に調整した。混合物を55℃で撹拌した。反応経路をGPCでモニター観察し、48時間後には、出発物質はすべて消費された。混合物を遠心分離に付し、透明な溶液を濃縮し、NH(25%)で塩基性(pH9)にした。生成物をエタノール(500mL)に沈殿させ、沈殿物を遠心分離(4400rpm)で集めた。沈殿操作を繰り返し、すべての4,4‘−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸を除去した。ついで、生成物を水に溶かし、エタノールを蒸発させ、凍結乾燥に付して990mg(97%)の生成物を得た(R=4,4‘−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸)。
【0103】
実施例13
R1=ベンジル基(Bn)
キシログルカン 15kD(1g、0.067ミリモル)を15mLの水に溶かした。ベンジルアミン(36μL、0.33ミリモル)およびNaCNBH(21mg、0.33ミリモル)を加えた。酢酸を加え、反応混合物のpHを5にした。混合物を55℃で18時間撹拌し、生成物をエタノールに沈殿させ、遠心分離により集め、沈殿操作を繰り返した。生成物を水に溶かし、エタノールを蒸発させ、凍結乾燥に付して900mg(89%)の生成物を得た(R=Bn)。
【0104】
実施例14−16
分子量が4kDaのキシログルカン(XGO)を用いた、反応経路2
【0105】
実施例14
=4,4−ジアミノスチルベン−2,2‘−ジスルホン酸(OBA)
XGO(1g,0.25ミリモル)を20mLのMeOH/水(2:1)に溶かした。4,4−ジアミノスチルベン−2,2‘−ジスルホン酸(OBA)(463mg、1.25ミリモル)およびNaCNBH(79mg、1.25ミリモル)を加えた。1M NaOHでpHを5に調整した。混合物を55℃で撹拌した。反応経路をGPCでモニター観察し、18時間後には、出発物質はすべて消費された。混合物を遠心分離に付し、透明な溶液を濃縮し、メタノールを除去した。溶液をNH(25%)を添加して塩基性(pH9)にした。生成物をエタノール(500mL)に沈殿させ、沈殿物を濾過で集めた。濾液をエタノールで十分に洗浄し、それを水に溶かし、濃縮した。該溶液を凍結乾燥に付して1.0g(98%)の生成物を得た(R=4,4‘−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸)。
【0106】
実施例15
=ベンジル基(Bn)
XGO(1g,0.25ミリモル)を20mLのMeOH/水(2:1)に溶かした。ベンジルアミン(136μL、1.25ミリモル)およびNaCNBH(79mg、1.25ミリモル)を加えた。酢酸を加え、反応混合物のpHを5にした。混合物を55℃で撹拌し、18時間後、MALDI−TOFによれば反応が完了した。混合物を濃縮し、生成物をエタノール(500mL)に沈殿させた。混合物を濾過し、沈殿物をエタノールで洗浄し、それを水に溶かした。濃縮し、つづいて凍結乾燥に付して970mg(96%)の生成物を得た(R=Bn)。
【0107】
実施例16
=ドデシル
XGO(1g,0.25ミリモル)を20mLのMeOH/水(1:1)に溶かした。ドデシルアミン(140mg、0.75ミリモル)およびNaCNBH(50mg、0.75ミリモル)を加えた。酢酸を加え、反応混合物のpHを5にした。混合物を55℃で18時間撹拌した。さらにドデシルアミン(140mg)およびNaCNBH(50mg)を加え、反応物を55℃で18時間撹拌した。MALDI−TOFによれば反応が完了した。混合物を濃縮し、生成物をアセトンに沈殿させた。白色物質を遠心分離により集め、水に溶かし、濃縮し、凍結乾燥に付して0.71g(71%)の生成物を得た(R=ドデシル)。
【0108】
表1 文献に記載の糖質についての還元的アミノ化反応の要約
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性糖質および第一アミンを含む反応混合物中、還元条件下でアミノ化水溶性糖質を製造する方法であって、
I)反応混合物を酸性にし(pHを7よりも低く調整し)、インキュベートし、および
II)ついで、アミノ化水溶性糖質を沈殿させてもよい
ことを含む、方法。
【請求項2】
第一アミンが、式:RNHで示され、ここでRがアミンより除去可能な、または除去できない化学基である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
基を除去し、第一アミノ基を糖質上にクリエートする工程をさらに含む、請求項1および2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
III)Rがベンジル基である場合、
a)生成されたアミノ化糖質を水および酸に溶かし、それを触媒の存在下、高圧下で水素気体と反応させ、
b)触媒を除去し、
c)ついで、アミノ化水溶性糖質の生成物を沈殿させてもよい、
ことで生成されたアミノ化糖質を水素化分解に付すことにより、R基を除去し、第一アミノ基を糖質上にクリエートする工程をさらに含む、請求項1および2のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
IV)R基がアリル基である場合、
a)生成されたアミノ化糖質を水および酸に溶かし、それを触媒の存在下で反応させ、
b)触媒を除去し、
c)ついで、アミノ化水溶性糖質の生成物を沈殿させてもよい、
ことで生成されたアミノ化糖質を異性化および加水分解に付すことにより、R基を除去し、第一アミノ基を糖質上にクリエートする工程をさらに含む、請求項1および2のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
工程I)の還元条件が、水素雰囲気と、白金、白金誘導体などの触媒、またはイミンおよびエナミンを還元する還元剤、好ましくはシアノ水素化ホウ素ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウムまたはピリジンボラン、ジメチルアミンボランまたは2−ピコリンボランなどのアミンボラン複合体である、請求項1および2のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
アミンが、ベンジルアミン、アリルアミン、ドデシルアミン、4−ニトロアニリンまたは4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸などの有機第一アミンである、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
水溶性糖質が、キシログルカンなどのヘミセルロースである、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
水溶性糖質がキシログルカンオリゴ糖である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
炭素数1−4のアルコール、例えばメタノールなどのアルコールを、工程I)の反応の前に反応混合物に添加する、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
工程I)の反応混合物のpHが約5に調整される、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
アルコールの任意の添加および反応の実質的な完了後に、アルコールが除去されるように、工程II)が修飾されている、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
水溶性糖質および式:RNH(ここでRはアミンより除去可能な化学基である)で示されるアミンを含む反応混合物中にてアミノ化水溶性糖質を製造する方法であって、
I)反応混合物をインキュベートし、
II)ついで、生成されたアミノ化水溶性糖質を沈殿させてもよく、
III)
a)生成されたアミノ化糖質を水および酸に溶かし、それを触媒の存在下、高圧下で水素気体と反応させ、
b)触媒を除去し、
c)ついで、アミノ化水溶性糖質の生成物を沈殿させてもよい、
ことで生成されたアミノ化糖質を水素化分解に付すことにより、R基、例えばベンジル基をアミンより除去するか、
IV)アミノ化糖質をエナミンに異性化し、該エナミンを酸加水分解により除去することでR基、例えばアリル基をアミンより除去する
ことを含む、方法。
【請求項14】
分子量が6400Daより大きなアミノ化ヘミセルロース分子、特にキシログルカン分子。
【請求項15】
分子量が少なくとも1kDaである、OBA−キシログルカン分子である、請求項12記載のアミノ化ヘミセルロース分子。
【請求項16】
式:
【化1】

[式中:
が化学基であり、
RがH、ガラクトース、アラビノースまたはフコースであり、
nが2と2000の間にあるような1より大きな数であって、分子量が1350Daより大きく、
nが2と2000の間にあり、および
分子量が6500Daより大きい]
で示される、アミノ化ヘミセルロース分子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2012−516928(P2012−516928A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549123(P2011−549123)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【国際出願番号】PCT/SE2010/050138
【国際公開番号】WO2010/090591
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(502325708)スウェツリー・テクノロジーズ・アクチボラゲット (4)
【氏名又は名称原語表記】SweTree Technologies AB
【Fターム(参考)】