説明

アミノ基含有粒子およびその製造方法ならびに該粒子を含む機能性製品

【課題】ニトリル基を含有する重合体からなる粒子を改質して得られる、アニオン交換、吸湿、抗菌、抗かび、抗ウイルスなどのさまざまな機能を有する粒子および該粒子の効率的な製造方法ならびに該粒子を含む機能性製品を提供すること。
【解決手段】ニトリル基を含有する重合体からなる粒子を1分子中の全アミノ基数が3以上であり、かつ、1級アミノ基数が2以上であって、アミノ基間をアルキレン基で結合した構造を有するアミノ基含有有機化合物で処理することによって粒子中に架橋構造とアミノ基を同時に導入して得られるアミノ基含有粒子および該粒子を含む機能性製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ基含有粒子に関する。詳細には、ニトリル基を含有する重合体からなる粒子とアミノ基含有有機化合物とを反応させることで、架橋構造とアミノ基を同時に導入して得られるアミノ基含有粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、さまざまな製品に特定の機能を付加する目的で、該製品の製造中あるいは製造後に機能性を有する粒子を付与し、目的とする機能の発現を達成しようとする試みが多くなされている。
【0003】
かかる目的に利用される機能性粒子としては、例えば、ヒドラジン架橋を有するアクリロニトリル系重合体微粒子に塩型カルボキシル基を導入して得られる吸放湿性微粒子(特許文献1)やイオン交換またはイオン配位可能な極性基を含有する架橋ポリマー粒子中に金属超微粒子や金属錯体超微粒子を含有させた抗菌・抗黴ポリマー粒子(特許文献2)などが知られている。しかし、前者の粒子は、架橋導入し、その後加水分解によってカルボキシル基を導入し、さらにカルボキシル基の塩型を調整するという製造工程を有し、後者の粒子は該製造工程に加え、金属イオンを導入し、還元するという工程を有するものであり、多くの製造工程を経なければ得ることができない。また、これらの粒子はヒドラジン架橋や金属微粒子を含有するため、着色しており、経時による変色も起こりやすい。
【0004】
また、特許文献3には、アミノ基を利用した酸・アルデヒド吸収性を有する重合体が開示されており、アミノ基の導入方法について、ヒドラジンで高ニトリル系重合体を処理し、架橋構造とアミン構造を同時に導入することが好ましいとされている。しかし、かかる方法では、窒素含有官能基は多量に導入できるものの、アルキル基やアルキレン基などの電子供与的性質を有する基と結合したアミノ基は導入されず、一般的な弱塩基性陰イオン交換樹脂よりも塩基性が弱くなり、加えて架橋構造も短く、密となる。このため、測定値としてのアニオン交換容量は高いものの、実際の酸・アルデヒド吸収性能としてはそれほど高いものとならない。
【0005】
【特許文献1】特開平8−225610号公報
【特許文献2】特開2004−091798号公報
【特許文献3】特開平10−156179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、かかる事情に鑑み、鋭意検討を進めた結果、ニトリル基を含有する重合体からなる粒子を特定のアミノ基含有有機化合物で処理することによって粒子中に架橋構造とアミノ基を同時かつ効率的に導入でき、得られた粒子が優れた性能を有することを見出し本発明に到達した。本発明の目的は、ニトリル基を含有する重合体からなる粒子を改質して得られる優れた機能を有する粒子および該粒子の効率的な製造方法ならびに該粒子を含む機能性製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、以下の手段により達成される。すなわち、
[1]ニトリル基を含有する重合体からなる粒子を1分子中の全アミノ基数が3以上であり、かつ、1級アミノ基数が2以上であって、アミノ基間をアルキレン基で結合した構造を有するアミノ基含有有機化合物で処理することによって粒子中に架橋構造とアミノ基を同時に導入して得られるアミノ基含有粒子。
[2]アミノ基含有有機化合物が、アミノ基間を炭素数が3以上のアルキレン基で結合した構造を有するものであることを特徴とする[1]に記載のアミノ基含有粒子。
[3]アミノ基量が0.1mmol/g以上であることを特徴とする[1]または[2]に記載のアミノ基含有粒子。
[4]20℃65%RHにおける飽和吸湿率が15質量%以上であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のアミノ基含有粒子。
[5]20℃95%RHおよび20℃50%RHにおける飽和吸湿率の差が50パーセントポイント以上であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のアミノ基含有粒子。
[6]ニトリル基を含有する重合体からなる粒子に1分子中の全アミノ基数が3以上であり、かつ、1級アミノ基数が2以上であって、アミノ基間をアルキレン基で結合した構造を有するアミノ基含有有機化合物を反応させることによって粒子中に架橋構造とアミノ基を同時に導入することを特徴とするアミノ基含有粒子の製造方法。
[7]アミノ基含有有機化合物が、アミノ基間を炭素数が3以上のアルキレン基で結合した構造を有するものであることを特徴とする[6]に記載のアミノ基含有粒子の製造方法。
[8][1]〜[5]のいずれかに記載のアミノ基含有粒子を含む機能性製品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ニトリル基を含有する重合体からなる粒子に架橋構造とアミノ基を1工程で導入できるため、工程が簡略化でき、製造コストの低減、廃棄物の減少などが期待できる。また、得られる粒子は、導入されたアミノ基がアルキレン基に結合しているため良好な塩基性を示すものであり、従来技術のように改めて加水分解を行わなくても高い飽和吸湿率および飽和吸湿率差を発現するものであって、しかも着色の少ない粒子である。さらに、本発明のアミノ基含有粒子は良好な塩基性を示すアミノ基の作用により、優れた抗菌、抗かび、抗ウイルス性をも発現するものである。かかる本発明のアミノ基含有粒子は酸性ガス除去、水の脱塩、アニオン交換、吸湿、調湿、抗菌、抗かび、抗ウイルスなど、衣料分野も含め、様々な用途へ展開することができ、製品価格の低下などに寄与できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳述する。本発明のアミノ基含有粒子は、ニトリル基を含有する重合体からなる粒子を1分子中の全アミノ基数が3以上であり、かつ、1級アミノ基数が2以上であって、アミノ基間をアルキレン基で結合した構造を有するアミノ基含有有機化合物で処理することによって粒子中に架橋構造とアミノ基を同時に導入したものである。ここで、架橋構造は、親水性の高いアミノ基含有粒子が水に膨潤して粒子の形状が変化したり、強度が低下したりすることを抑制する効果があり、また、アミノ基はアニオン交換性能、吸湿性能、抗菌性能、抗かび性能あるいは抗ウイルス性能などの諸性能に寄与する。
【0010】
本発明に採用するニトリル基を含有する重合体からなる粒子としては、ニトリル基を含有するものであれば、特に制限はなく、例えば、ニトリル基を有するポリエステル、ポリアミド、ビニル系重合体などからなる粒子が挙げられる。特に、アクリロニトリル(以下ANという)系重合体により形成された粒子は、効率よくニトリル基を含有させることができ、ニトリル基の量の調節も容易であるため、好ましく採用できる。
【0011】
かかるAN系重合体としては、AN単独重合体あるいはANと他の単量体との共重合体のいずれでも採用しうる。また、本発明において、アミノ基はニトリル基とアミノ基含有有機化合物の反応により導入されるので、ANの共重合量が少なすぎる場合、導入されるアミノ基量が少なくなる。このため、AN共重合量としては、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上のとき良好な結果を得られやすい。
【0012】
AN系重合体としてANと他の単量体との共重合体を採用する場合、AN以外の共重合成分としてはメタリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸等のスルホン酸基含有単量体及びその塩、(メタ)アクリル酸、イタコン酸等のカルボン酸基含有単量体及びその塩、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド等の単量体など、ANと共重合可能な単量体であれば特に限定されない。ただし、高いアニオン交換性能が求められる場合には、酸性基を有する単量体の量は少ないほうが望ましい。
【0013】
また、かかるAN系重合体により形成された粒子の製造手段としては特に制限はなく、乳化重合、懸濁重合、シード重合、分散重合などの公知の方法をそのまま適用して製造すればよい。
【0014】
また、粒子の大きさや形状に特に制限はなく、用途に応じて適宜選定することができる。平均粒子径が1000μm以下、より好ましくは100μm以下の微粒子状である場合、表面積が大きくなり、より多くのアミノ基が活用されるようになるので、アニオン交換速度、吸湿速度等の特性が向上し、より良好な結果を得ることができる。また、該粒子の形状も、球状、塊状、針状、棒状、紡錘状、円柱状など、特に制限はなく、ラテックスなどの粒子を水分散させた状態のものも好ましく採用できる。
【0015】
本発明に採用するアミノ基含有有機化合物は、1分子中の全アミノ基数が3以上であり、かつ、1級アミノ基数が2以上であって、アミノ基間をアルキレン基で結合した構造を有するものである必要がある。かかるアミノ基含有有機化合物を用いることで、架橋構造とアミノ基を1工程で同時に導入することが可能となる。すなわち、該化合物中には1級アミノ基が2個以上あり、これらのアミノ基がニトリル基を含有する重合体からなる粒子のニトリル基と反応することにより該重合体間に架橋構造が形成される。そして、架橋反応で消費されなかった残りのアミノ基はそのまま該ニトリル基を含有する重合体からなる粒子に固定化され、アニオン交換性能や吸湿性能などが発現される。
【0016】
ここで、アミノ基含有有機化合物において、全アミノ基数が3未満であると架橋反応に全てのアミノ基が消費され、十分なアニオン交換性能や吸湿性能が得られにくくなり、1級アミノ基数が2未満であると架橋構造が導入されにくくなる。また、アミノ基間をアルキレン基で結合した構造でない場合、アミノ基への電子供与が少なく、塩基性が不十分となって、アニオン交換性能などの性能が十分に得られない。
【0017】
かかるアミノ基含有有機化合物の具体例としては、3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、N−メチル−3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、ラウリルイミノビスプロピルアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,3−プロピレンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,3−ブチレンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,4−ブチレンジアミン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミンなどのポリアミン類などが挙げられる。
【0018】
なかでも、3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、N−メチル−3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、ラウリルイミノビスプロピルアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,3−プロピレンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,3−ブチレンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,4−ブチレンジアミン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジンなどのアミノ基間を炭素数が3以上のアルキレン基で結合した構造を有するアミノ基含有有機化合物はニトリル基を含有する重合体からなる粒子と反応速度が速く、コスト的に有利で好ましい。さらに、かかる構造を有するアミノ基含有有機化合物の場合、反応後の粒子を着色の少ないものにできる。なお、ここで言う炭素数とは、アミノ基を直接結ぶ炭素の数のことであって、分岐鎖や置換基などの炭素の数は含まない。なお、アミノ基間を炭素数が5以上のアルキレン基で結合した構造を有するアミノ基含有有機化合物は特殊で市場からの入手が困難であり、工業的に利用しにくい。
【0019】
抗菌性および抗かび性の観点からは、3,3’−イミノビス(プロピルアミン)やN−メチル−3,3’−イミノビス(プロピルアミン)が好適である。これらのアミノ基含有有機化合物は単独の状態では弱い抗菌性や抗かび性しか有していないにもかかわらず、これらを用いて得られた本発明のアミノ基含有粒子は優れた抗菌性および抗かび性を発現することができる。
【0020】
また、抗ウイルス性の観点からは、アミノ基含有有機化合物として、N−メチル−3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、ラウリルイミノビスプロピルアミン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジンのような3級アミノ基を有するものを採用することがより望ましい。このようなアミノ基含有有機化合物を採用することでより優れた抗ウイルス性能を発現させることが可能である。3級アミノ基はアミノ基への電子供与が多く、このことが抗ウイルス性能向上に影響しているものと推定される。
【0021】
本発明のアミノ基含有粒子のアミノ基量、すなわち、アニオン交換容量としては、必要とする性能に応じて変化しうるが、一般的には0.1mmol/g以上が好ましく、0.5mmol/g以上であることがより好ましい。0.1mmol/g未満の場合には、アミノ基に由来する性能のいずれも得られない場合がある。各性能別に見ると、抗ウイルス性能については0.1mmol/gであれば十分な性能が得られる。アニオン交換性能については0.5mmol/g以上であればアニオン交換粒子として実用的レベルである。また、原料となるニトリル基を含有する重合体からなる粒子の組成や架橋構造量にもよるが、後述する飽和吸湿率を発現させるにはアミノ基量を1.0mmol/g以上、飽和吸湿率差を発現させるにはアミノ基量を1.5mmol/g以上とすることが望ましい。また、上限については特に制限はないが、5mmol/g以下であれば、通常の反応条件の調整によって得ることが可能である。
【0022】
本発明のアミノ基含有粒子は、上述した特許文献1に代表されるカルボキシル基を利用する吸湿性粒子に匹敵する飽和吸湿率を有しており、広範囲にわたって飽和吸湿率を調節することが可能である。吸湿性粒子として使用する場合であれば、飽和吸湿率として20℃65%RHの雰囲気下において、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上とすることが望ましい。
【0023】
また、本発明のアミノ基含有粒子は相対湿度によって飽和吸湿率が大きく変化することが大きな特徴の一つである。すなわち、本発明のアミノ基含有粒子においては、雰囲気湿度が高いときは吸湿し、雰囲気湿度が低いときは放湿するという調湿性を発現させることが可能である。調湿材として使用する場合、20℃95%RH雰囲気下と20℃50%RH雰囲気下での飽和吸湿率の差が50パーセントポイント以上とすることが望ましい。
【0024】
上記のアミノ基量は、採用するアミノ基含有有機化合物の種類、すなわち、該化合物のアミノ基数および導入量により調節することができる。また、架橋構造量はアミノ基量に比例して増加する傾向となる。しかし、採用するアミノ基含有有機化合物の種類を選択することにより、架橋構造量とアミノ基量のバランスを調節することも可能である。例えば、1分子中に多くの2級あるいは3級アミノ基を有する化合物を用いれば、アミノ基量を多くしつつ、架橋構造を少なくすることができる。反対に、1分子中のアミノ基の数が少ない化合物を用いれば、アミノ基量を少なくしつつ、架橋構造を多くすることもできる。
【0025】
アミノ基含有有機化合物でニトリル基を含有する重合体からなる粒子を処理する方法としては、特に制限されるものではないが、アミノ基含有有機化合物の水溶液を用意し、ニトリル基を含有する重合体からなる粒子を該水溶液に浸漬、もしくは、ニトリル基を含有する重合体からなる粒子に該水溶液を噴霧する方法などが挙げられる。
【0026】
アミノ基含有有機化合物でニトリル基を含有する重合体からなる粒子を処理する条件としては、特に制限はなく、採用するアミノ基含有有機化合物とニトリル基を含有する重合体からなる粒子との反応性や所望のアミノ基量および架橋構造量、すなわちアニオン交換性能、飽和吸湿率、飽和吸湿率差などの必要とする性能を勘案し、適宜選定することができる。例えば、上述したニトリル基を含有する重合体からなる粒子をアミノ基含有有機化合物水溶液に浸漬する方法の場合であれば、アミノ基含有有機化合物水溶液の濃度を、ニトリル基を含有する重合体からなる粒子に対し1質量%以上となるようにした場合、上述した0.1mmol/g以上のアミノ基量が得られやすい。
【0027】
また、反応温度としては、使用するアミノ基含有有機化合物の種類によって程度の差はあるが、低すぎる場合には、反応速度が遅くなって長時間の反応時間が必要となり、高すぎる場合には、アミノ基含有有機化合物の分解が懸念される。そのため、好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは80〜150℃で反応させた場合好ましい結果を得る場合が多い。反応時間については、反応温度等にもよるが通常30分〜48時間ぐらいで目的とする量の架橋構造とアミノ基を導入することができる。特に、本発明に採用するアミノ基含有有機化合物において、アミノ基間を炭素数が3以上のアルキレン基で結合した構造を有するものの場合、30分〜4時間程度で目的とする量の架橋構造とアミノ基を導入することができる。
【0028】
本発明のアミノ基含有粒子の粒子径には特に限定はなく、利用される用途に応じて適宜選択することができる。例えば、吸湿速度を速くしたい場合、粒子表面積を大きくとる必要があるため粒子径を10μm以下とすることが好ましく、さらに好ましくは1μm以下した場合良好な結果が得られる。また塗料等への添加剤として使用した時に、被添加物の外観・物性に影響を与えないという点からは粒子径が10μm以下であるものが好ましい。一方、樹脂等へ添加する場合は取り扱い、混練の点から10〜100μmが好ましいなど用途によって使い分けることができる。
【0029】
本発明のアミノ基含有粒子は、粒子状であるため、樹脂成形体、プラスチックフォーム、フィルム、塗膜、紙、不織布、合成繊維などのさまざまな形態の材料の製造時に添加したり、製造後のこれらの材料にバインダーなど用いて固着させたりするなど、さまざまな方法で各種材料に適用することができる。
【0030】
本発明のアミノ基含有粒子を適用した材料は、アニオン交換、吸湿、抗菌、抗かび、抗ウイルスなどの機能を有する機能性製品として利用することができる。具体的には、アニオン交換性能を利用した、水の軟化・脱塩用の素材、ケミカルフィルター、たばこフィルター、浄水器用吸着材、原子力発電所用イオン交換濾過材、消臭材、あるいは、吸湿性能を利用した、結露防止素材、吸放湿素材(建材、壁紙等)、環境の調湿、調温素材、あるいは押入れ、地下室、床下、浴室等の乾燥素材、水分を非常に嫌う電子材料等の被覆素材の一部、さらには、抗菌、抗かび、抗ウイルスを利用した各種フィルター、マスク、タオル、靴下、インソール、壁紙など、さまざまな分野において有用な機能性製品として利用することができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。本発明は、これらの実施例の記載によってその範囲を何等限定されるものではない。実施例中の部及び百分率は、断りのない限り質量基準で示す。なお、各測定値は以下の方法により求めた。
【0032】
(1)アミノ基量(アニオン交換容量)
充分に乾燥した試料約0.5gを精秤し(X[g])、イオン交換水中で分散させる。この分散液に、0.1N塩酸標準液を滴下し、滴定曲線を作成した。滴定曲線より求めた0.1N塩酸標準水溶液の滴定量をY[ml]、ファクターをf[HCl]として、次式により、アミノ基量を算出した。
アミノ基量[mmol/g]=(0.1×Y×f〔HCl〕)/ X
【0033】
(2)飽和吸湿率および飽和吸湿率差
充分に乾燥した試料約5gを精秤する(W1[g])。該試料を20℃、所定の相対湿度(50%RH、65%RH及び95%RH)下で24時間静置する。このようにして吸湿させた試料の質量を測定する(W2[g])。以上の測定結果から、次式によって各相対湿度における飽和吸湿率を算出した。
飽和吸湿率[%]=(W2−W1)/W1×100
なお、飽和吸湿率差は、以上のようにして求めた20℃50%RHの飽和吸湿率と20℃95%RHの飽和吸湿率の差である。
【0034】
(3)平均粒子径
島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置「SALD−200V」を使用して水を分散媒として測定し、体積基準で表した粒子径分布から、平均粒子径[μm]を求めた。
【0035】
(実施例1)
メタクリル酸/p-スチレンスルホン酸ソーダ=70/30の水溶性重合体300部、及び硫酸ナトリウム30部を6595部の水に溶解し、攪拌機付き重合槽に仕込んだ。次に、アクリロニトリル2700部及びアクリル酸メチル300部に、2、2’アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)15部を溶解して重合槽に仕込み60℃、2時間重合を行うことにより、平均粒子径78μmのニトリル基を含有する重合体からなる原料粒子Aを得た。
【0036】
原料粒子A10部を、該粒子に対して300%のN−メチル−3,3’−イミノビス(プロピルアミン)を含む水溶液200部に浸漬し、処理温度85℃、処理時間2時間で処理、水洗、乾燥し、実施例1のアミノ基含有粒子を得た。該粒子の評価結果を表1に示す。
【0037】
(実施例2〜4、比較例1、2)
実施例1において、表1に示す原料および条件に変更して粒子を作成し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0038】
(実施例5)
アクリロニトリル440部、アクリル酸メチル50部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ16部、及び水1181部をオートクレーブ内に仕込み、更に重合開始剤としてジ−t−ブチルパーオキサイドを単量体全体に対して0.5%添加した後、密閉し、次いで攪拌下において130℃で、23分間重合を行うことにより、平均粒子径200nmのニトリル基を含有する重合体からなる原料粒子Bの水分散体を得た。
【0039】
原料粒子Bの水分散体に固形分が10%となるように水を加えて得た水分散液100部に、該粒子に対して300%のN−メチル−3,3’−イミノビス(プロピルアミン)を含む水溶液100部を加え、処理温度115℃、処理時間2時間で処理し、実施例5のアミノ基含有粒子の水分散体を得た。該粒子の評価結果を表1に示す。なお、該粒子の評価については、得られた水分散体にメチルアルコールを加えて粒子を沈降させ、ろ紙でろ過後、充分に洗浄、乾燥したものを用いて評価を行った。
【0040】
【表1】

【0041】
実施例1〜5では、良好なアニオン交換性能、吸湿性能を有するアミノ基含有繊粒子が得られた。特に、アミノ基含有有機化合物としてアミノ基間を炭素数が3以上のアルキレン基で結合した構造を有するものを採用した実施例2および3は、実施例4に比べて短い反応時間でも同等の量のアミノ基が導入され、着色も少ないものであった。これに対して、比較例1および2では採用したアミノ基含有有機化合物のアミノ基数が2以下であり、ニトリル基との反応でほとんどのアミノ基が消費されたため、本発明に比べ、性能の低いものとなったと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトリル基を含有する重合体からなる粒子を1分子中の全アミノ基数が3以上であり、かつ、1級アミノ基数が2以上であって、アミノ基間をアルキレン基で結合した構造を有するアミノ基含有有機化合物で処理することによって粒子中に架橋構造とアミノ基を同時に導入して得られるアミノ基含有粒子。
【請求項2】
アミノ基含有有機化合物が、アミノ基間を炭素数が3以上のアルキレン基で結合した構造を有するものであることを特徴とする請求項1に記載のアミノ基含有粒子。
【請求項3】
アミノ基量が0.1mmol/g以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のアミノ基含有粒子。
【請求項4】
20℃65%RHにおける飽和吸湿率が15質量%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアミノ基含有粒子。
【請求項5】
20℃95%RHおよび20℃50%RHにおける飽和吸湿率の差が50パーセントポイント以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアミノ基含有粒子。
【請求項6】
ニトリル基を含有する重合体からなる粒子に1分子中の全アミノ基数が3以上であり、かつ、1級アミノ基数が2以上であって、アミノ基間をアルキレン基で結合した構造を有するアミノ基含有有機化合物を反応させることによって粒子中に架橋構造とアミノ基を同時に導入することを特徴とするアミノ基含有粒子の製造方法。
【請求項7】
アミノ基含有有機化合物が、アミノ基間を炭素数が3以上のアルキレン基で結合した構造を有するものであることを特徴とする請求項6に記載のアミノ基含有粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載のアミノ基含有粒子を含む機能性製品。

【公開番号】特開2010−132715(P2010−132715A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306923(P2008−306923)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000004053)日本エクスラン工業株式会社 (58)
【Fターム(参考)】