説明

アミノ酸バイオセンサー、フィッシャー比バイオセンサー、及び健康情報管理システム

複数のアミノ酸の合計濃度を単一の極板系で測定できるバイオセンサーを提供する。
複数の特定のアミノ酸の濃度の合計値を測定するためのアミノ酸バイオセンサー(200)は、当該複数の特定のアミノ酸を選択的に基質とする酵素、及びメディエータを構成因子とする測定極(202)と対極(203)とを有し、当該酵素は当該複数の特定のアミノ酸のそれぞれに基質親和性を有し、当該酵素は当該特定のアミノ酸を基質とした反応により反応生成物を生成し、メディエータはアミノ酸の濃度の測定時に反応生成物と測定極との間で電子を運搬し、及びアミノ酸バイオセンサーの測定極と対極との間の測定時印加電圧は、複数の特定のアミノ酸のそれぞれについて印加電圧と電流値の関係を表わした検量線において、それぞれのアミノ酸についての同じ印加電圧における電流値の分布が所定の範囲内であるような印加電圧を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸バイオセンサーに関し、より詳しくは、フィッシャー比などを一回の測定操作で測定できるアミノ酸バイオセンサーに関する。また本発明は健康情報管理システムに関し、より詳しくは、アミノ酸バイオセンサーを使用して個人が自宅などで測定したフィッシャー比などを管理・評価する健康情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向の高まりにつれ、健康状態の指標を客観的な数値として測定することに関する社会的要請が高まっている。体重、体脂肪率、血圧などの大局的な生体情報については、それを計測して電気的情報に変換する装置は既に実用化されている。しかし、個々の生体成分に関する数値を直接的に測定する装置はまだあまり実用化されていない。特に血中などにおける複数の種類のアミノ酸の濃度を簡便に測定するための実用に即した装置は存在しない。
一方、いくつかのアミノ酸については健康状態の指標となりうることが知られており、中でも分岐鎖アミノ酸(ロイシン、イソロイシン及びバリン)濃度及び芳香族アミノ酸(フェニルアラニン及びチロシン)濃度については、肝臓の健康状態を反映するものとして知られている。そのため、分岐鎖アミノ酸濃度と芳香族アミノ酸濃度から計算される健康指標は臨床検査の項目としても知られている。具体的には、フィッシャー比として、分岐鎖アミノ酸(Branched Chain Amino Acid,BCAA)と芳香族アミノ酸(Aromatic Amino Acid,AAA)のモル比(BCAA/AAA)、また、フィッシャー比よりより簡便な値であるBTR値として、分岐鎖アミノ酸(BCAA)とチロシンのモル比(BCAA/Y)が用いられるが、いずれも肝臓の状態を表わす指標として用いられている。分岐鎖アミノ酸(BCAA)としては、ロイシン、バリン、及びイソロイシンがあり、これらの濃度は肝臓の繊維化が進行した肝硬変患者で低下することが知られている。芳香族アミノ酸(AAA)としては、フェニルアラニン及びチロシンがあり、これらの濃度は肝硬変患者で増加する。このように、肝機能が悪化するとフィッシャー比及びBTR値は低下するため、フィッシャー比及びBTR値は肝臓の状態を反映した健康状態の指標として用いられる。また、分岐鎖アミノ酸の濃度も健康状態の指標として用いられている。
【0003】
アミノ酸濃度の測定は、アミノ酸の標識による高感度化と液体クロマトグラフィーを組み合わせた方法などが広く使われているが、その測定方法では、試料の調整などの作業が煩雑で、測定にも長時間を要する。一方、数種類のアミノ酸に限っては、そのアミノ酸を簡便かつ迅速に定量する方法として、アミノ酸の酵素による反応を電気化学的に検出することによってアミノ酸濃度を測定するバイオセンサーが用いられるようになってきた。酵素としては脱水素酵素が用い、その際に補酵素も必要とされることが多い。従来の脱水素酵素と補酵素が関与する酵素反応を用いたバイオセンサーでのアミノ酸濃度などの測定には、D−グルコース、L−乳酸、エタノール、コレステロール等のアミノ酸以外の物質に加えて、アミノ酸の一種であるL−ロイシン等を、バイオセンサーを用いてそれぞれ単独に電気化学的に測定する技術がある(例えば、特許文献1参照。)。その技術によれば、絶縁性支持体に導電性材料を用いて形成された電極系と、電極反応部分に反応用試薬として少なくとも脱水素酵素、補酵素、ならびに電子メディエータが含有された吸収性担体が配置されたバイオセンサーにおいて、該吸収性担体は試料と反応用試薬との酵素反応および電子メディエータと電極表面との電極反応の双方の反応層となることを特徴とするバイオセンサーによって、脱水素酵素と補酵素が関与する酵素反応において、高精度にかつ短時間で簡便に基質濃度を電気化学的に定量するための、安価で作製が容易なバイオセンサーを提供することができる。また、脱水素酵素と補酵素を用いたバイオセンサーには、電子メディエータおよびテトラゾリウム塩からなる反応試薬を用いたバイオセンサーによって、種々の試料に含まれる基質を煩雑な前処理を必要としない簡便でしかも迅速な基質の定量を行う技術がある(例えば、特許文献2参照)。しかし、それらのいずれの技術においても、複数の種類のアミノ酸の濃度を同時に測定することはできない。
【0004】
【特許文献1】特開2000−35413号公報
【特許文献2】国際公開第00/57166号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生体成分の情報に基づく指標は色々存在するが、本発明では、主として、アミノ酸の情報に基づく指標について取り扱う。特に健康状態と関連があることで知られている分岐鎖アミノ酸濃度、及びアミノ酸濃度から計算して得られる健康指標、例えばフィッシャー比又はBTR値について取り扱う。フィッシャー比のような健康状態の指標を求めるためのアミノ酸測定については、診断薬キットが存在する。しかしこのような診断薬キットは、診断試薬の他に、比色計などの分析機器が必要であるため、通常は、血液などの生体サンプルを検査機関などに移管して測定する必要がある。そのため、利用者自身が測定してその場で体調・健康状態を知ることはできない。
【0006】
アミノ酸の濃度を測定するためには、ニンヒドリン反応等を利用したアミノ酸の標識と液体クロマトグラフィーを組み合わせた方法や、アミノ酸を基質とする酵素反応により生成した反応生成物を吸光光度法等で定量する方法等がある。しかし、これらの方法では試料の希釈や分離等の前処理を必要とし、装置も大規模となることから、簡便で迅速な測定は困難であった。また、市販のアミノ酸分析機をもちいて分岐鎖アミノ酸の濃度の合計値を算出するためには、ロイシン、イソロイシン、及びバリンの濃度を独立に測定し、それらの濃度を合計する必要があった。一方、アミノ酸等を簡便に測定可能なバイオセンサーが知られている。しかし従来技術では、数種類のアミノ酸についてのみ、それぞれ単独のアミノ酸濃度を測定することはできるが、分岐鎖アミノ酸の合計濃度のように、当該バイオセンサーに使われている酵素が基質としうる複数のアミノ酸が同時に存在する条件下では、それらを独立に測定することは不可能であり、さらに複数の特定のアミノ酸の合計濃度を測定することもできなかった。そのため、分岐鎖アミノ酸の合計濃度を単体で測定可能なバイオセンサーは存在しなかった。さらに、複数のアミノ酸濃度から計算して得られる健康指標を求めるためには、健康指標に関連するそれぞれのアミノ酸濃度を測定した上で、計算により算出しなければならず、健康指標を単一の測定操作で測定可能なバイオセンサーも存在しなかった。また、そのようなアミノ酸による健康指標を個人的に簡便に測定することができなかったため、そのような健康指標を利用した健康情報管理システムも存在しなかった。本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、複数のアミノ酸の合計濃度を単一の操作で測定可能なバイオセンサー及び健康情報管理システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題の解決は、以下の特徴を有する本発明によって達成される。請求項1に記載の発明は、少なくとも複数の特定のアミノ酸を選択的に基質とする酵素、及びメディエータを構成因子とする測定極と、対極とを有する、当該複数の特定のアミノ酸の濃度の合計値を測定するためのアミノ酸バイオセンサーであって、当該酵素は、当該複数の特定のアミノ酸のそれぞれに基質親和性を有し、当該酵素は、当該特定のアミノ酸を基質とした反応により反応生成物を生成し、当該メディエータは、アミノ酸の濃度の測定時に当該反応生成物と当該測定極との間で電子を運搬し、及び当該アミノ酸バイオセンサーの当該測定極と当該対極との間の測定時印加電圧は、当該複数の特定のアミノ酸のそれぞれについて特定の濃度における印加電圧と電流値の関係を表わした検量線において、同じ濃度であるそれぞれのアミノ酸についての同じ印加電圧における電流値の分布が所定の範囲内であるような印加電圧を含むことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の特徴に加えて、当該アミノ酸バイオセンサーの当該測定極と当該対極との間の測定時印加電圧は、当該複数の特定のアミノ酸のそれぞれについて特定の濃度における印加電圧と電流値の関係を表わした検量線において、同じ濃度であるそれぞれのアミノ酸についての同じ印加電圧における電流値の分布が、全体の20%以内であるような印加電圧を含むことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明の特徴に加えて、当該測定極は、補酵素をさらに構成因子とし、当該酵素は、脱水素酵素であり、当該反応生成物は、当該補酵素が還元された還元型補酵素であり、及び当該メディエータは、アミノ酸の濃度の測定時に当該還元型補酵素から当該測定極へ電子を運搬することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明の特徴に加えて、当該複数の特定のアミノ酸は、ロイシン、バリン、及びイソロイシンを含む分岐鎖アミノ酸であり、当該脱水素酵素は、ロイシンデヒドロゲナーゼであり、及び当該補酵素は、ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチドであることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明の特徴に加えて、当該メディエータは、PMSであることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項3に記載の発明の特徴に加えて、当該複数の特定のアミノ酸は、フェニルアラニン及びチロシンを含む芳香族アミノ酸であり、当該脱水素酵素はフェニルアラニンデヒドロゲナーゼであるであることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項4に記載の分岐鎖アミノ酸バイオセンサーと、請求項6に記載の芳香族アミノ酸バイオセンサーと、当該分岐鎖アミノ酸バイオセンサーで測定される分岐鎖アミノ酸濃度を当該芳香族アミノ酸バイオセンサーで測定される芳香族アミノ酸濃度で除することによってフィッシャー比を算出するフィッシャー比算出手段と、を有することを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、会員の生体情報を管理する生体情報管理手段と、会員が当該生体情報管理手段と通信するための会員端末とからなる生体情報管理システムであって、当該生体情報管理手段は、アミノ酸濃度を含む会員の生体情報のデータを管理する生体情報データ管理手段と、当該会員端末から当該アミノ酸濃度をネットワークを介して受信する第1の受信手段と、当該アミノ酸濃度を所定の基準と比較することによって生体情報評価を導出する生体情報評価手段と、導出された当該生体情報評価を当該会員端末にネットワークを介して送信する第1の送信手段と、を備え、及び当該会員端末は、請求項1に記載のアミノ酸バイオセンサーと、当該アミノ酸バイオセンサーによって測定されるアミノ酸濃度を当該生体情報管理手段にネットワークを介して送信する第2の送信手段と、当該生体情報管理手段から当該生体情報評価をネットワークを介して受信する第2の受信手段と、受信された当該生体情報評価を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする生体情報管理システム。
【0015】
請求項9に記載の発明は、会員の健康情報を管理する健康情報管理手段と、会員が当該健康情報管理手段と通信するための会員端末とからなる健康情報管理システムであって、当該健康情報管理手段は、血中分岐鎖アミノ酸濃度を含む会員の健康情報のデータを管理する健康情報データ管理手段と、当該会員端末から当該血中分岐鎖アミノ酸濃度をネットワークを介して受信する第1の受信手段と、当該血中分岐鎖アミノ酸濃度を所定の基準と比較することによって健康情報評価を導出する健康情報評価手段と、導出された当該健康情報評価を当該会員端末にネットワークを介して送信する第1の送信手段と、を備え、及び当該会員端末は、請求項4に記載の分岐鎖アミノ酸バイオセンサーと、当該分岐鎖アミノ酸バイオセンサーによって測定される血中分岐鎖アミノ酸濃度を当該健康情報管理手段にネットワークを介して送信する第2の送信手段と、当該健康情報管理手段から当該健康情報評価をネットワークを介して受信する第2の受信手段と、受信された当該健康情報評価を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、会員の健康情報を管理する健康情報管理手段と、会員が当該健康情報管理手段と通信するための会員端末とからなる健康情報管理システムであって、当該健康情報管理手段は、フィッシャー比を含む会員の健康情報のデータを管理する健康情報データ管理手段と、当該会員端末から当該フィッシャー比をネットワークを介して受信する第1の受信手段と、当該フィッシャー比を所定の基準と比較することによって健康情報評価を導出する健康情報評価手段と、当該会員端末へ導出された当該健康情報評価をネットワークを介して送信する第1の送信手段と、を備え、及び当該会員端末は、請求項8に記載のフィッシャー比バイオセンサーと、当該フィッシャー比バイオセンサーによって測定される血中アミノ酸のフィッシャー比を当該健康情報管理手段にネットワークを介して送信する第2の送信手段と、当該健康情報管理手段から当該健康情報評価をネットワークを介して受信する第2の受信手段と、受信された当該健康情報評価を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の発明は、少なくとも複数の特定のアミノ酸を選択的に基質とする酵素、及びメディエータを構成因子として有することを特徴とする測定極と、対極とを有しており、当該酵素は、当該複数の特定のアミノ酸のそれぞれに基質親和性を有し、当該酵素は、当該特定のアミノ酸を基質とした反応により反応生成物を生成し、及び当該メディエータは、アミノ酸の濃度の測定時に当該反応生成物と当該測定極との間で電子を運搬する、そのようなアミノ酸バイオセンサーを用いて被検溶液中の複数の特定のアミノ酸濃度の合計値を測定する方法であって、当該アミノ酸バイオセンサーを当該被検溶液と接触させるステップと、当該アミノ酸バイオセンサーの当該測定極と当該対極との間に、当該複数の特定のアミノ酸のそれぞれについて特定の濃度における印加電圧と電流値の関係を表わした検量線において、同じ濃度であるそれぞれのアミノ酸についての同じ印加電圧における電流値の分布が所定の範囲内であるような電圧を印加するステップと、当該印加電圧下での当該測定極と当該対極との間の応答電流値を測定するステップと、当該検量線における当該印加電圧及び当該応答電流値に対応するアミノ酸濃度を、当該被検溶液中の当該複数の特定のアミノ酸濃度の合計値として求めるステップと、を有することを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載の発明は、少なくとも複数の特定のアミノ酸を選択的に基質とする酵素、及びメディエータを構成因子とする測定極と、対極とを有しており、当該酵素は、当該複数の特定のアミノ酸のそれぞれに基質親和性を有し、当該酵素は、当該特定のアミノ酸を基質とした反応により反応生成物を生成し、及び当該メディエータは、アミノ酸の濃度の測定時に当該反応生成物と当該測定極との間で電子を運搬する、そのような第1のアミノ酸バイオセンサーと、当該複数の特定のアミノ酸以外の単一のアミノ酸を選択的に基質とする酵素、及びメディエータを構成因子とする測定極と、対極とを有しており、当該酵素は、当該単一のアミノ酸を基質とした反応により反応生成物を生成し、及び当該メディエータは、アミノ酸の濃度の測定時に当該反応生成物と当該測定極との間で電子を運搬する、そのような第2のアミノ酸バイオセンサーと、を用いて生体由来の被検溶液から健康指標を導出する健康指標測定方法であって、当該第1のアミノ酸バイオセンサー及び当該第2のアミノ酸バイオセンサーを生体由来の被検溶液と接触させるステップと、当該第1のアミノ酸バイオセンサーの当該測定極と当該対極との間に、当該複数の特定のアミノ酸のそれぞれについて特定の濃度における印加電圧と電流値の関係を表わした検量線において、同じ濃度であるそれぞれのアミノ酸についての同じ印加電圧における電流値の分布が所定の範囲内であるような電圧を印加するステップと、当該印加電圧下での当該測定極と当該対極との間の応答電流値を測定するステップと、当該検量線における当該印加電圧及び当該応答電流値に対応するアミノ酸濃度を、当該被検溶液中の当該複数の特定のアミノ酸濃度の合計値として求めるステップと、当該第2のアミノ酸バイオセンサーの当該測定極と当該対極との間に所定の電圧を印加するステップと、当該印加電圧下での当該測定極と当該対極との間の応答電流値を測定するステップと、当該所定の印加電圧及び当該応答電流値に対応するアミノ酸濃度を、当該被検溶液中の当該単一のアミノ酸濃度として求めるステップと、当該求められた複数の特定のアミノ酸濃度と、当該求められた単一のアミノ酸濃度とを入力情報とした所定の演算により所定の健康指標を導出するステップと、を有することを特徴とする。
【0019】
請求項13に記載の発明は、少なくとも複数の特定のアミノ酸を選択的に基質とする酵素、及びメディエータを構成因子とする測定極と、対極とを有しており、当該酵素は、当該複数の特定のアミノ酸のそれぞれに基質親和性を有し、当該酵素は、当該特定のアミノ酸を基質とした反応により反応生成物を生成し、及び当該メディエータは、アミノ酸の濃度の測定時に当該反応生成物と当該測定極との間で電子を運搬する、そのような第1のアミノ酸バイオセンサーと、当該複数の特定のアミノ酸以外の複数の他の特定のアミノ酸を選択的に基質とする酵素、及びメディエータを構成因子とする測定極と、対極とを有しており、当該酵素は、当該複数の他の特定のアミノ酸のそれぞれに基質親和性を有し、当該酵素は、当該複数の他の特定のアミノ酸を基質とした反応により反応生成物を生成し、及び当該メディエータは、アミノ酸の濃度の測定時に当該反応生成物と当該測定極との間で電子を運搬する、そのような第2のアミノ酸バイオセンサーと、を用いて生体由来の被検溶液から健康指標を導出する健康指標測定方法であって、当該第1のアミノ酸バイオセンサー及び当該第2のアミノ酸バイオセンサーを生体由来の被検溶液と接触させるステップと、当該第1のアミノ酸バイオセンサーの当該測定極と当該対極との間に、当該複数の特定のアミノ酸のそれぞれについて特定の濃度における印加電圧と電流値の関係を表わした検量線において、同じ濃度であるそれぞれのアミノ酸についての同じ印加電圧における電流値の分布が所定の範囲内であるような電圧を印加するステップと、当該印加電圧下での当該測定極と当該対極との間の応答電流値を測定するステップと、当該検量線における当該印加電圧及び当該応答電流値に対応するアミノ酸濃度を、当該被検溶液中の当該複数の特定のアミノ酸濃度の合計値として求めるステップと、当該第2のアミノ酸バイオセンサーの当該測定極と当該対極との間に、当該複数の他の特定のアミノ酸のそれぞれについて特定の濃度における印加電圧と電流値の関係を表わした検量線において、同じ濃度であるそれぞれのアミノ酸についての同じ印加電圧における電流値の分布が所定の範囲内であるような電圧を印加するステップと、当該印加電圧下での当該測定極と当該対極との間の応答電流値を測定するステップと、当該検量線における当該印加電圧及び当該応答電流値に対応するアミノ酸濃度を、当該被検溶液中の当該他の複数の特定のアミノ酸濃度の合計値として求めるステップと、当該求められた複数の特定のアミノ酸濃度と、当該求められた他の複数のアミノ酸濃度とを入力情報とした所定の演算により所定の健康指標を導出するステップと、を有することを特徴とする。
【0020】
請求項14に記載の発明は、少なくとも複数の特定のアミノ酸を選択的に基質とする酵素、及びメディエータを構成因子とする測定極と、対極とを有しており、当該酵素は、当該複数の特定のアミノ酸のそれぞれに基質親和性を有し、当該酵素は、当該特定のアミノ酸を基質とした反応により反応生成物を生成し、及び当該メディエータは、アミノ酸の濃度の測定時に当該反応生成物と当該測定極との間で電子を運搬する、そのようなアミノ酸バイオセンサーと、特定の生体成分を選択的に基質とする酵素、及びメディエータを構成因子とする測定極と、対極とを有しており、当該酵素は、当該生体成分を基質とした反応により反応生成物を生成し、及び当該メディエータは、生体成分の濃度の測定時に当該反応生成物と当該測定極との間で電子を運搬する、そのような生体成分バイオセンサーと、を用いて生体由来の被検溶液から健康指標を導出する健康指標測定方法であって、当該アミノ酸バイオセンサー及び当該生体成分バイオセンサーを生体由来の被検溶液と接触させるステップと、当該アミノ酸バイオセンサーの当該測定極と当該対極との間に、当該複数の特定のアミノ酸のそれぞれについて特定の濃度における印加電圧と電流値の関係を表わした検量線において、同じ濃度であるそれぞれのアミノ酸についての同じ印加電圧における電流値の分布が所定の範囲内であるような電圧を印加するステップと、当該印加電圧下での当該測定極と当該対極との間の応答電流値を測定するステップと、当該検量線における当該印加電圧及び当該応答電流値に対応するアミノ酸濃度を、当該被検溶液中の当該複数の特定のアミノ酸濃度の合計値として求めるステップと、当該生体成分バイオセンサーの当該測定極と当該対極との間に所定の電圧を印加するステップと、当該印加電圧下での当該測定極と当該対極との間の応答電流値を測定するステップと、当該所定の印加電圧及び当該応答電流値に対応する生体成分濃度を、当該被検溶液中の当該生体成分濃度として求めるステップと、当該求められた複数の特定のアミノ酸濃度と、当該求められた生体成分濃度とを入力情報とした所定の演算により所定の健康指標を導出するステップと、を有することを特徴とする。
【0021】
請求項15に記載の発明は、請求項14に記載の発明の特徴に加えて、当該生体成分は2種類以上あり、当該生体成分バイオセンサーは、当該2種類以上の各生体成分に対応して2つ以上設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数の特定のアミノ酸の濃度の合計値を測定するためのアミノ酸バイオセンサー(200)は、当該複数の特定のアミノ酸を選択的に基質とする酵素、及びメディエータを構成因子とする測定極(202)と対極(203)とを有し、当該酵素は当該複数の特定のアミノ酸のそれぞれに基質親和性を有し、当該酵素は当該特定のアミノ酸を基質とした反応により反応生成物を生成し、メディエータはアミノ酸の濃度の測定時に反応生成物と測定極との間で電子を運搬し、及びアミノ酸バイオセンサーの測定極と対極との間の測定時印加電圧は、複数の特定のアミノ酸のそれぞれについて印加電圧と電流値の関係を表わした検量線において、それぞれのアミノ酸についての同じ印加電圧における電流値の分布が所定の範囲内であるような印加電圧を含むため、単一の極板系で複数のアミノ酸の合計濃度を測定することができるアミノ酸バイオセンサーを提供できるという効果が得られる。
【0023】
さらに本発明によれば、上記のアミノ酸バイオセンサーにおいて、酵素にロイシンデヒドロゲナーゼを使用し、補酵素にニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチドを使用するため、単一の極板系で分岐鎖アミノ酸の濃度を測定することができるという効果が得られる。ここでメディエータにPMSを使用することにより、精度の高い測定を行うことができるという効果が得られる。
【0024】
さらに本発明によれば、それぞれ単一に極板系で測定を行うことができる分岐鎖アミノ酸バイオセンサーと芳香族アミノ酸バイオセンサーとを組み合わせ、測定された分岐鎖アミノ酸濃度を芳香族アミノ酸濃度で除することによってフィッシャー比を求めるため、1回の測定操作でフィッシャー比を測定することができるフィッシャー比バイオセンサーを提供することができるという効果が得られる。
【0025】
さらに本発明によれば、フィッシャー比バイオセンサーで個人が測定したフィッシャー比をユーザ端末(502)からサーバ(506)に送信し、サーバはそのフィッシャー比を基準値と比較して判定及びコメント抽出を行い、それをユーザ端末に表示させるため、測定が難しかったために十分には活用されてこなかったフィッシャー比を利用した健康管理システムを構成することができるという効果が得られる。
【0026】
さらに本発明によれば、単一の極板系のアミノ酸バイオセンサーで複数のアミノ酸の合計濃度を測定する方法、単一のアミノ酸濃度と複数のアミノ酸濃度とから計算されるBTR比などの健康指標や複数のアミノ酸濃度と他の複数のアミノ酸濃度とから計算されるフィッシャー比などの健康指標をアミノ酸バイオセンサーで測定する方法、及び複数のアミノ酸の合計濃度と1種類以上の生体成分の濃度とから計算される健康指標を提供することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(実験系の構成)
本発明において対象とする健康指標とは、本発明のバイオセンサーにより測定される複数のアミノ酸濃度の合計値、又はそれを用いて計算される指標である。複数のアミノ酸濃度の合計値から計算される指標としては、複数のアミノ酸濃度の合計値と複数のアミノ酸濃度の合計値又は単独のアミノ酸濃度から計算されるものであっても良い。二種の異なる複数のアミノ酸濃度の合計値から計算される健康指標としては、例えばフィッシャー比を挙げることが出来、また、複数のアミノ酸濃度の合計値と単独のアミノ酸濃度から計算される健康指標としては、例えばBTR値が挙げられる。
【0028】
本発明のバイオセンサーが測定対象とする複数の特定のアミノ酸とは、一の酵素に対する基質として共通するアミノ酸同士であれば良く、例えばロイシンデヒドロゲナーゼに対して共通する基質として、分岐鎖アミノ酸である、バリン・ロイシン・イソロイシン(BCAA)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼに対して共通する基質として、芳香族アミノ酸であるチロシン・フェニルアラニンが挙げられる。
【0029】
ここで、一般的な、NADを補酵素としたαアミノ酸の酸化還元反応式は以下の通りである。
【化1】


フェニルアラニンデヒドロゲナーゼを酵素とし、NADを補酵素としたL−フェニルアラニンの酸化還元反応式は以下の通りである。
【化2】


ロイシンデヒドロゲナーゼを酵素とし、NADを補酵素としたL−ロイシンの酸化還元反応式は以下の通りである。
【化3】

【0030】
なお、以下の説明においては、BTR値も含めてフィッシャー比と表記する。ここで用いられる酵素としては、複数の特定のアミノ酸との反応性を有し、その反応に際して電子供受を伴う酵素であれば、全て本発明において使用可能であり、測定目的物に応じて適宜選択する。この際酵素は、市販で入手可能な酵素を用いても良いし、また微生物などから抽出したものを用いてもよい。これらの酵素は、基質特異性や反応速度を高めるべく、遺伝子工学的手法などにより適宜改変を加えた変異型酵素を用いても良い。通常一の基質としか反応性を有しないものとして知られている酵素に改変を加え、複数の基質と反応性を有するように改変を加えたものであっても良い。アミノ酸との反応性を有し、かつ反応に際して電子供受を伴う酵素としては、デヒドロゲナーゼ、オキシドリダクターゼ等の酸化還元反応を伴う反応を媒介する酵素、具体的にはロイシンデヒドロゲナーゼ、チロシンデヒドロゲナーゼ、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ、ロイシンオキシドリダクターゼ、チロシンモノオキシゲナーゼ、アラニンデヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ等が一例として挙げられる。また、アミノ酸以外の生体成分との反応性を有し、かつ反応に際して電子供受を伴う酵素としては、デヒドロゲナーゼ、オキシドリダクターゼ等の酸化還元反応を伴う反応を媒介する酵素、具体的にはアルコールデヒドロゲナーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ等が挙げられる。
また、本発明において用いられる酵素は電子供受を伴う反応を媒介するものであるが、当該反応には補酵素の反応を伴う場合があり、好ましい補酵素としては、NADH又はNADPHが挙げられる。
【0031】
本発明においては、まず、反応槽を用いた実験系100を用いて、分岐鎖アミノ酸の合計濃度を単一の極板系を有するバイオセンサーで測定できることを確認した。図1は、この実験に用いた実験形100の概要構成を表わす構成図である。実験系100は、3電極方式の電気化学セルを構成している。実験系100は、被検溶液11、塩化物水溶液12、反応槽13、塩化物水溶液槽14、作用電極21、対極22、参照電極23、塩橋24、吸気口25、ポテンショスタット31、レコーダ32、ファンクションジェネレータ33、及びマルチマグネティックスターラー34から構成される。被検溶液11は、測定されるアミノ酸、当該アミノ酸に基質親和性を有する酵素、酵素と協働する補酵素、メディエータを適切な濃度で溶解したものである。塩化物水溶液12は、参照電極23とともに電池を形成し、基準となる電圧を参照電極23から出力させるための溶液である。作用電極21は、対極23との間で所定の電圧を印加し、その上で化学反応を起こさせる電極である。この際に流れる電流を測定することによって、アミノ酸の定量化が行えるかどうかの検討を行うことができる。塩橋24は、反応槽13と塩化物水溶液槽14とを同電位に保ち、参照電極23の電位を作用電極21の校正に使用することができるようにする。吸気口25からは、反応槽13の円滑な反応を継続させるために、それの上部空間に窒素ガスを導入する。ポテンショスタット31は、電圧を一定に保つように電流を流すことによって、電圧−電流特性を測定する装置であり、ファンクションジェネレータ33にプログラムされた時間−電圧曲線に従って電圧を変化させながら電流を測定する。レコーダ32は、ポテンショスタット31の測定結果を記録する。マルチマグネティックスターラー34は、反応槽13内の被検溶液11を撹拌する。
【0032】
(実験系)
実験では、実験系100において、作用電極21と対極22の間における被検溶液11の電圧−電流特性を、被検溶液11のアミノ酸などの濃度を変化させて測定した。アミノ酸は、分岐鎖アミノ酸であり、ロイシン、イソロイシン、バリン、あるいはそれらの混合物を使用した。一般に、アミノ酸濃度の電気化学的な測定は、酵素によって測定対象のアミノ酸に反応を生じさせて変化させ、その際に生じる反応生成物の濃度を測定することによって行われる。濃度が測定される反応生成物としては、アミノ酸自身が当該反応によって変化した物質でもよいし、アミノ酸が当該反応をする際に生じる副生成物であってもよいが、一般には副生成物の濃度が測定されることが多い。濃度測定においては、ある電圧を被検溶液に印加した場合に流れる電流を測定し、その電圧−電流特性から濃度を求めることが通常である。なお、その副生成物の濃度測定において、直接副生成物を電極上で反応させるのではなく、電子を副生成物と電極間で運搬するメディエータを使用し、そのメディエータの媒介によって流れる電流を測定することも多い。本実施例では、酵素としてロイシンの脱水素酵素であるロイシンデヒドロゲナーゼを使用した。ここで用いた中等度高熱性細菌Bacillus Stearothermophilus由来のロイシンデヒドロゲナーゼは、脱水素反応によってロイシンを酸化する酵素である。ロイシンデヒドロゲナーゼは、ロイシンのみならず、イソロイシン及びバリンとも基質親和性を有しているため、イソロイシン及びバリンもロイシンデヒドロゲナーゼによって脱水素反応が引き起こされる。ロイシン(並びにイソロイシン及びバリン)の脱水素反応においては、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下、NADと略記する。)が補酵素として機能し、NADそれ自身は還元されて還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下、NADHと略記する。)に変化する。この反応生成物であるNADHの濃度を測定することによって、ロイシンなどのアミノ酸の濃度を測定することができる。なお、その他のアミノ酸の脱水素反応を触媒する酵素を用いる場合には、補酵素としてニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(以下、NADPと略記する)が機能している場合もあり、その際にはNADPが還元されて生じる還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレチドリン酸(以下、NADPHと略記する。)の濃度を測定することによって、測定対象のアミノ酸濃度を測定することができる。生成されたNADHはHを放出して酸化されやすい性質を有するので、プラス側の作用電極で酸化反応を起こさせ、その際に作用電極へ電子が流入することによって流れる電流を測定することにより、発生したNADHの量、すなわち酸化されたロイシンの量を測定することができる。なお、電極上でのNADHの酸化反応は非常に反応速度が遅いことが知られている。そのような反応が起こりやすくするため、電子を運ぶメディエータを介在させ、NADH、メディエータ、電極の順に電子を受け渡すようにすることが通常である。その際、NADHは電子を電極に与えて酸化され、NADに戻ることになる。本実験でも、メディエータを被検溶液11に入れて電流を測定した。また単体のバイオセンサーとしては、酵素、補酵素、メディエータをバイオセンサーの作用電極に固定化することが通常であるが、本実施例では、被検溶液11中にそれらを溶解させて実験を行った。
【0033】
(適切なメディエータの選択)
まず、上記のロイシンデヒドロゲナーゼの至適反応条件であるアルカリ性(pH10.5)条件下において、メディエータとして適切なものを選択するための実験を行った。適切なメディエータの候補としては、(1)Meldola's Blue(又はメルドラブルー。以下、MBと略記する。)、(2)1-methoxy-5-methylphenazirium methyl sulfate(以下、PMSと略記する。)、(3)pyrroloquinoline quinone(以下、PQQと略記する。)を使用した。なお、酵素の選択によっては最適反応条件が異なるため、メディエータも酵素に併せて適宜選択する。その他、メディエーターとしては、酵素反応によって生成されたNADH又はNADPHにより電気化学的に還元され、電極において酸化される物質であれば特に制限はない。例えば、キノン類、シトクロム類、フェレドキシン類、フェロセン及びその誘導体等から適宜選択可能である。それぞれのメディエータについて、本条件における電気化学的な特性を把握するために一般的な方法により、メディエータのみの場合と、そのメディエータにNADHを加えた場合の電圧−電流特性を比較した。電圧−電流特性は、一般的な方法に従いポテンショスタットを使用して電圧を徐々に変化させながら測定した。NADHは測定するアミノ酸の濃度に依存し、酵素反応によって生成するため、これを測定することでアミノ酸の濃度を測定できる。なお以下の説明は、メディエータ選択にあたっての予備的検討の一例を示すものであって、本発明はこれらの条件には限定されず、実際のメディエータ選択にあたっては測定対象、酵素の選択等、他の条件に依存してメディエータ選択が異なる場合もある。メディエータの選択に当たっては、メディエータのみ場合の電圧−電流特性と、そのメディエータにNADHを加えた場合の電圧−電流特性とを測定し、特徴を把握しやすいようにグラフにする。これらのグラフは、メディエータがNADHにどの程度反応するのかということを表わしていると考えてよい。すなわち、メディエータ単体の場合のグラフの形状と、メディエータにNADHを加えた場合のグラフとの差異が大きければ、NADHの存在に鋭敏に反応して電圧−電流特性が変化するということであり、NADHの濃度、ひいてはアミノ酸の濃度の測定に好適であるということである。グラフの差異については、絶対値の差異のみならず、形状全体の差異も大きい方が、NADHの濃度測定により適していると考えられるが、これは以下のような理由による。ポテンショスタットによる測定において、極板への印加電圧を被検溶液の平衡電位より正方向にシフトすると、その極板上での反応が酸化反応側に傾くことによってアノード電流が極板に流れ、逆に極板への印加電圧を被検溶液の平衡電位より負方向にシフトすると、その極板上での反応が還元反応側に傾くことによってカソード電流が極板に流れる。このため、印加電圧を増加させるときと減少させるときとでは、異なる反応が異なる場所(極板)で起こることになる。ここで、メディエータが反応生成物(ここではNADH)に特異的に作用しているのであれば、NADHの有無により電圧−電流特性のグラフの形状が大きく変化するのが通常である。これは、メディエータが反応物との間で特異的に酸化還元反応を行うとすると、NADHが添加されている場合は、印加電圧がその酸化還元反応が開始される電圧に達すると、流れる電流値が急に大きくなるのに対し、NADHが添加されていない場合は、そのような急な変化は生じないからである。従って、グラフの形状の差異が大きいということは、NADHに特異的な反応がメディエータに起こっているということであり、電圧−電流特性の変化がNADHの濃度の変化を適正に反映しているということになる。
【0034】
MB、PMS、PQQを使用して、種々の条件を適当に設定した上で、上記の電圧−電流特性を測定・比較してみた。この条件の下では、MB又はPMSがグラフの絶対値及び形状が、NADHの有無によって大きく変動していることが確認された。従って、この条件の下でのこれらの検量線のグラフからは、まず、MB又はPMSがメディエータとして適切であると考えられた。
【0035】
しかし、以下のような理由により、MBはそのままではメディエータとして不適当であると考えられる。ロイシンデヒドロゲナーゼの反応至適条件はpH10.5程度のアルカリ性の液性であるため、液性をそのように調整して実験を行ったが、このようなアルカリ性の液性では、時間が経つに連れてMBが不溶化して沈殿してしまうことが判明した。従って、そのままではMBはロイシンデヒドロゲナーゼのメディエータとしては不適当であると考えられる。なお、MBの不溶化を防止するような化合物の存在下では、MBもメディエータとして使用できると考えられる。これ以降の測定は、PMSをメディエータとして行ったものである。
【0036】
(PMS濃度−NADH特異性)
PMSをメディエータとして使用するに当たり、適切なPMSの濃度範囲を確認するために、PMS濃度をパラメータとして、NADHを加えた場合と加えない場合における電圧−電流特性を測定した。これにより、NADHの有無による電圧−電流特性の差異の程度、すなわちNADHに対する特異性の、PMS濃度に対する依存性を知ることができる。すなわち、NADHの有無に対して電流値の変化の大きいPMS濃度を決定することができる。図2は、PMSの濃度を0.01mMに保持したときの、NDAHの有無のそれぞれの場合における電圧−電流特性のグラフであり、図3はPMS濃度が0.1mMの場合、図4はPMS濃度が1mMの場合の同様のグラフである。図5は、PMS濃度が0.01mMと0.1mMの場合の特性をまとめたグラフである。これらのグラフはメディエータの濃度設定にあたっての予備的検討の一例を示すものであって、本発明はこれらの条件には限定されず、実際のメディエータ濃度設定にあたっては他の条件に依存して濃度設定も異なる場合がある。図2からは、PMS濃度が0.01mMの場合は、NADHが存在しない場合の電流が−0.0004mA〜0.0003mAの範囲内であるのに、NADHが存在する場合の電流は、0mA〜0.0025mMにまで範囲が約3.5倍に拡大していることが分かる。また電流のピーク値も、0.0003mAから0.0025mAへと約8倍に増加している。図3からは、PMS濃度が0.1mMの場合は、NADHが存在しない場合の電流が−0.0015mA〜0.0012mAの範囲内であるのに、NADHが存在する場合の電流は、0mA〜0.007mAにまで範囲が約2.5倍に拡大していることが分かる。また電流のピーク値も、0.0012mAから0.007mAへと約6倍に増加している。一方、図4からは、PMS濃度が1Mの場合は、NADHが存在しない場合の電流が−0.015mA〜0.07mAの範囲内であるのに、NADHが存在する場合の電流は、0mA〜0.04mAにまで範囲が約1/2に減少していることが分かる。また、電流のピーク値においても、0.07mAから0.04mAへと約1/2に減少している。従って、PMS濃度が0.01mM及び0.1mMの場合は、NADHの存在により、電流の範囲及び電流のピーク値とも数倍に拡大しているため、NADHに高い特異性を有しており、NADHの濃度の測定に適していると言える。図5から一方、PMS濃度が1mMの場合は、NADHの存在により電流の範囲及び電流のピーク値とも増加していないばかりかむしろ減少しており、NADHの濃度の測定には適していない。従って、この実験の条件下では、PMS濃度を0.01M〜0.1M程度に保持すると、NADHの濃度の測定に非常に適した特性が得られることが確認された。重要なことは、以上のようにPMS濃度−NADH特異性の関係を調べることにより、NADHの濃度の測定のために適したPMS濃度を得ることができるということである。
【0037】
(電圧−電流特性)
次に、NADH濃度をパラメータとして、電圧と電流との関係を測定した。この電圧−電流特性においてNADH濃度に依存して電流値の変化が大きな条件(すなわち電流値が大きい範囲)を測定点に含ませることにより、あるNADH濃度における電流を大きくすることができ、NADH濃度に対する電流の変化分を大きくすることができる。従って、そのような電流の絶対値が大きい個所を測定点に含ませることによって、測定の精度を高めることができる。図6は、NADH濃度を一定に保持し、電圧を変化させた場合の電流を測定した電圧−電流特性のグラフである。このグラフは電圧―電流設定にあたっての予備的検討の一例を示すものであって、本発明はこれらの条件には限定されず、実際の電圧―電流設定にあたっては選択したメディエータや補酵素の種類、その他の条件に依存して電圧―電流設定も異なる場合がある。NADH濃度としては、0mM、1mM、2mM、4mM、6mM、8mM、及び10mMを使用した。図6から分かるように、−0.2V付近を測定点とすると、そのときに流れる電流の値を大きくすることができ、測定の精度を高めることができることが分かる。
【0038】
(NADH濃度−電流特性)
次に、印加電圧をパラメータとして、NADH濃度と電流との関係を測定した。このNADH濃度−電流の関係が直線的であれば、NADH濃度の変化に対して電流がリニアに反応するということであり、測定上好適である。従って、そのようにNADH濃度−電流の関係が直線的になるような電圧があるかどうかを測定した。図7は、電圧を一定に保持し、NADHの濃度を変化させた場合の電流を測定したNADH濃度−電流特性のグラフである。電圧としては、−200mV、−180mV、及び−100mVを使用した。このグラフは電圧設定並びに補酵素濃度設定にあたっての予備的検討の一例を示すものであって、本発明はこれらの条件には限定されず、実際の電圧設定並びに補酵素濃度設定にあたっては選択したメディエータや補酵素の種類、濃度、その他の条件に依存して電圧設定並びに補酵素濃度設定も異なる場合がある。図7から分かるように、いずれの電圧においてもNADH濃度と電流はほぼ比例している。従ってPMSは、NADH濃度の測定に非常に望ましい特性を、それらのいずれの電圧においても提供できることが分かる。
【0039】
(分岐鎖アミノ酸の電圧−電流特性の比較)
次に、分岐鎖アミノ酸のそれぞれについての電圧−電流特性を測定した。アミノ酸の測定時の印加電圧における電流の値は、そのアミノ酸と酵素との反応の程度を表わしており、それは酵素のそのアミノ酸に対する基質親和性の程度と反応速度とに深く関係する。ロイシンデヒドロゲナーゼに対する基質親和性の程度と反応速度とは、ロイシン、イソロイシン、及びバリンではそれぞれ異なる値であるはずであるので、印加電圧に対する電流は、それぞれ異なるはずである。しかし、ロイシン、イソロイシン、及びバリンの3種類のアミノ酸の電圧−電流特性がある程度近似していれば、同じ構成の実験系でそれぞれのアミノ酸の濃度を測定することができる。またそうであれば、これらの3種類のアミノ酸の濃度の合計を単一の極板系を有するアミノ酸バイオセンサーによる1回の測定操作で同時に測定することもできる。さらには、電圧−電流特性にある程度の違いがあっても、それら3種類のアミノ酸についての同じ印加電圧における電流値の分布が所定の範囲内となるような印加電圧であり、その所定の範囲が誤差として許容できる程度であれば、それら3種類のアミノ酸の濃度の合計を1回の測定操作で測定することが可能となる。すなわち、アミノ酸バイオセンサーの測定極と対極との間の測定時印加電圧は、複数の特定のアミノ酸のそれぞれについて印加電圧と電流値の関係を表わした検量線において、それぞれのアミノ酸についての同じ印加電圧における電流値の分布が所定の範囲内であるような印加電圧を含むとよい。この所定の範囲であるが、3種類のアミノ酸の電流の内の最大の電流に対する最小の電流の比が80%以上程度、すなわち差異の分布が全体の20%以下程度であれば好適である。この程度の差異の分布であれば、電流値に基づいて、3種類のアミノ酸の濃度を最大誤差20%以下程度の実用的な正確さで導き出すことができるからである。より好適には、それら3種類のアミノ酸の電流値の分布が最小となるような印加電圧であればよい。
【0040】
さらには、基質特異性や反応速度が異なる複数の酵素をそれぞれ適切な濃度で同時に使用し、それらを総合した反応結果としての、それぞれのアミノ酸に対する基質特異性や反応速度を同等に調整することによって、測定対象のそれぞれのアミノ酸について、同じ濃度に対する電流値の分布がより小さくなるようなものとすることもできる。このようにすることによって、複数の特定のアミノ酸の合計濃度を、より高精度かつ簡便に同時に測定することが可能になる。
【0041】
従来の測定点の印加電圧の決定方法においては、電流が最大になる点を測定点とすることが通常であるが、本発明の方法では、複数のアミノ酸それぞれに対する電流の出力値の幅が最小となるような電圧を測定点の印加電圧とする点で異なっている。このようにすることによって、それら複数のアミノ酸を、単一の極板系を有するアミノ酸バイオセンサーの単一の操作で測定することができる。なお、測定点の印加電圧の決定にあたっては、複数のアミノ酸に対する電流の広がり(分布)をできるだけ低くしつつ、電流の絶対値も大きくなるように、それらの中間的な電圧を測定点の印加電圧としてもよい。このようにすると、複数のアミノ酸を単一の操作で測定する際の誤差を小さくすることができるとともに、精度も向上させることができる。
【0042】
図8は、濃度が1mMにおける、ロイシン、イソロイシン、及びバリンの3種類のアミノ酸の電圧−電流特性を表わす検量線のグラフである。この図から、それら3種類のアミノ酸の電流の差異の分布が小さい電圧を見つけることができる。図からわかるように、ロイシン、イソロイシン、バリンとも、グラフの全体的形状はほとんど同じであるが、全般的にロイシンが一番電流が大きく、イソロイシン、バリンの順に電流が小さくなる。ある電圧に対する電流の絶対値の差が小さく、かつ、電流の絶対値が大きいところが、電流の差異の分布が小さいところである。図を見ると、電圧が−0.275Vから−0.225Vの間で電流の絶対値の差が小さくなっていることが分かる。この範囲内で電流の絶対値が一番大きいところである電圧が−0.225Vの点においては、一番電流の大きいロイシンの電流は約0.0006mVであり、一番電流の小さいバリンの電流は約0.00048mVである。従って、この点でのロイシンの電流に対するバリンの電流の比は、0.00048/0.0006=80%であり、3種類のアミノ酸の電流の差異の分布が全体の20%に収まっている。従って、−0.225Vの電圧を測定点の印加電圧とすることができる。なお、電圧が−0.1Vの点では、一番電流の大きいロイシンの電流は約0.00048mVであり、一番電流の小さいバリンの電流は約0.0003mVである。この点でのロイシンの電流に対するバリンの電流の比は、0.0003/0.00048=62.5%であり、3種類のアミノ酸の電流の差異の分布が全体の40%近くに広がっている。従って、−0.1Vの電圧を測定点の印加電圧とすることは不適切と言える。
【0043】
(分岐鎖アミノ酸の濃度−電流特性の一致度)
図9は、測定点の印加電圧をパラメータとし、アミノ酸の種類ごとのアミノ酸濃度−電流特性を表わす検量線のグラフである。このグラフからは、種類の異なるアミノ酸あるいはそれの混合物のアミノ酸濃度と電流との関係が読み取れる。測定点の印加電圧を一定に保った条件の下で、アミノ酸濃度−電流の関係が、種類の異なるアミノ酸(あるいはそれの混合物)において近似していれば、その印加電圧においてはそれらのアミノ酸を単一の極板系を有するアミノ酸バイオセンサーで測定することが可能ということになる。グラフは、それぞれのアミノ酸ごとについて実測点にシンボルをプロットし、それらに直線の近似線を付加している。複数のアミノ酸の混合物については、実測点をプロットした。図のキャプションにおいて、Vのアルファベット文字はバリンを、Lはロイシンを、Iはイソロイシンを表わし、アルファベット文字の連結はそれらのアミノ酸の混合を表わす。アルファベット文字の後の数値は測定点における印加電圧を示しており、−100mVと−225mVとがある。まず、印加電圧が−100mVの場合については、ロイシンとイソロイシンのグラフほぼ近似しているが、バリンのグラフはそれらから大きく異なっており、近似線の傾きで比較すると他のものの傾きの1/3から1/2の傾きしかない。従って、印加電圧が−100mVの状況では、3種類の分岐鎖アミノ酸の濃度を単一の極板系を有するアミノ酸バイオセンサーで測定することには不適切であると考えられる。一方、印加電圧が−225mVの状況では、3種類の分岐鎖アミノ酸のグラフは非常に近似している。詳しくは、ロイシンとイソロイシンのグラフは傾きがほとんど同じであり、イソロイシンの方が電流が約0.025μAだけ大きいに過ぎない。バリンのグラフはそれらよりわずかに傾きが小さいものの、濃度が0mM付近における電流はロイシンの電流とほぼ同じである。従って、3種類の分岐鎖アミノ酸の濃度を単一の極板系を有するアミノ酸バイオセンサーで測定することができることが分かる。ここで、印加電圧が−225mVの状態で、複数の分岐鎖アミノ酸の混合物の濃度が正確に測定できることの確認を行った。ロイシンとイソロイシンの濃度:2mMの混合物(LI−225)、ロイシンとバリンの濃度:1mMの混合物(LV−225)、イソロイシンとバリンの濃度:1mMの混合物(IV−225)、ロイシンとイソロイシンとバリンの濃度:1.5mMの混合物(LIV−225)は、いずれも電圧:−225mVにおける3種類の分岐鎖アミノ酸の近似線に近接しており、特にロイシンとイソロイシンの近似線に非常に近接している。このことより、この実験条件においては−225mVの印加電圧においては3種類の分岐鎖アミノ酸の濃度の合計値を単一の極板系を有するアミノ酸バイオセンサーを用いて非常に正確に測定できることが分かる。従って、異なる種類の酵素、補酵素、メディエータ等を設定し、異なる種類のアミノ酸の合計値を測定する場合においても同様の手法により最適な印加電圧を設定することが出来る。
【0044】
(分岐鎖アミノ酸バイオセンサー)
これから本発明の一実施形態に係る分岐鎖アミノ酸バイオセンサー200の構造について図面を参照して説明する。図10は、分岐鎖アミノ酸バイオセンサー200の構造を表わす構成図である。図10においては、センサー部の構造を平面図で表わし、回路部の構成をブロック図で表わしている。分岐鎖アミノ酸バイオセンサー200は、支持体201、測定極202、対極203、測定極リード部204、対極リード部205、測定極端子206、対極端子207、電圧−電流特性測定部251、及び濃度計算部252から構成される。支持体201は、センサー部の基板であり、樹脂などで構成される。測定極202は、その上で反応を起こさせることによって電子の授受を行う極板であり、その表面には、酵素(ロイシンデヒドロゲナーゼ)、補酵素(NAD)、メディエータ(PMS)が固定化されている。この際、酵素、補酵素、メディエーターは必ずしも電極表面に固定化されている必要はなく、当該電極系の電極間に生ずる反応空間部分に吸収性担体等を用いて配置しても良い。また、血液試料等の測定においては、酵素反応による測定を阻害する物質が試料中に存在する場合があり、それらの阻害物質を除外する手段を設けても良い。測定極202は、作用電極21に対応する。それらの要素を固定化する方法は公知の方法を使用することができる。測定極202は、測定極リード部204を介して測定極端子206に接続される。対極203は、測定極202との間で電圧を印加するための測定極202と対向する電極である。対極203は、好適には測定極202を包囲する形状をしている。測定極202と対極203からなる極板系は被検溶液11中に浸すことができ、測定極202と対極203とは極板系を構成しており、それらの間の間隙部に被検溶液11を測定のために保持することができる。対極203は対極リード部205を介して対極端子207に接続される。この構成は、2電極方式であるが、参照電極を加えた3電極方式としてもよい。電圧−電流特性測定部251は、測定極端子206と対極端子207に測定のための電圧を印加し、そのときに流れる電流を測定する構成要素である。測定のための印加電圧は、一定でもよく、時間とともに変化させてもよいが、その印加電圧には、分岐鎖アミノ酸のそれぞれについて印加電圧と電流値の関係を表わした検量線において、それぞれのアミノ酸についての同じ印加電圧における電流値の分布が所定の範囲内であるような印加電圧が含まれることが必要である。このような印加電圧において測定された電流は、分岐鎖アミノ酸の濃度の合計を正確に定量化することができるからである。濃度計算部252は、電圧−電流特性測定部251から測定された電圧−電流特性を受け取り、それを検量線上の基準データと比較することによって分岐鎖アミノ酸濃度を算出する。なお、電流から分岐鎖アミノ酸濃度を定量化するために、印加電圧と時間との関係まで考慮した検量線に基づいて、分岐鎖アミノ酸濃度を算出するようにすると、時間的な変化を反映した、より正確な測定ができる。また、温度特性まで考慮した検量線をあらかじめ測定・定義しておき、極板系近傍に温度センサーを設置することによって温度も測定し、温度まで考慮して分岐鎖アミノ酸濃度を算出してもよい。
【0045】
次に分岐鎖アミノ酸バイオセンサー200の動作について説明する。まず、測定される分岐鎖アミノ酸が含まれた被検溶液11中に、電圧−電流特性測定部251によって測定のための電圧が印加された極板系を浸す。生体情報を測定する場合には、被検溶液11は血液などの生体由来のものである。極板系が被検溶液11に浸されると、測定極202上に固定化されたロイシンデヒドロゲナーゼ、NAD、PMSが被検溶液11中に溶解する。被検溶液11中の分岐鎖アミノ酸は、ロイシンデヒドロゲナーゼによって脱水素反応を起こし、その際にNADは還元型のNADHに変化する。NADHはPMSの媒介により電子を測定極202に受け渡し、自らは酸化されて再びNADに変化する。その際に測定極202は電子を受け取るため、対極203から測定極202へと電流が流れる。電圧−電流特性測定部251はこの電流値を測定し、その測定結果を受け取った濃度計算部252は、分岐鎖アミノ酸濃度を算出する。算出されたアミノ酸濃度は、データとして出力される。
【0046】
(芳香族アミノ酸バイオセンサー)
次に、測定対象のアミノ酸を芳香族アミノ酸にした本発明の他の実施形態について説明する。フェニルアラニンとチロシンからなる芳香族アミノ酸は、ベンゼン環を共通に有しているという構造上の類似性があるため、それらに共通した基質親和性を有する酵素が存在する。例えば、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼをそのような目的に使用することができる。そのような酵素であって、芳香族アミノ酸のそれぞれに対する濃度−電流特性が近似するような測定時の印加電圧を有するものを使用することによって、芳香族アミノ酸の合計濃度を単一の極板系を有するアミノ酸バイオセンサーで測定することが可能になる。従って、分岐鎖アミノ酸バイオセンサー200において、酵素をそのようなものに替え、電圧−電流特性測定部251を芳香族アミノ酸の測定点を提供するものに替え、及び濃度計算部252を芳香族アミノ酸の濃度を計算するものに替えた構成を有するバイオセンサーが、芳香族アミノ酸バイオセンサー300(図示せず。)である。補酵素、メディエータも、適切なものを選択することができる。芳香族アミノ酸バイオセンサー300は、分岐鎖アミノ酸バイオセンサー200と同様な動作を行う。
【0047】
(フィッシャー比バイオセンサー)
次に、フィッシャー比を測定対象とする本発明のさらに他の実施形態について説明する。フィッシャー比バイオセンサー400のセンサー部は、前述の分岐鎖アミノ酸バイオセンサー200のセンサー部と芳香族アミノ酸センサー300のセンサー部を、それらの極板系を近接させて複合した構造を有している。このような構成にすることによって、被検溶液11の分岐鎖アミノ酸濃度と芳香族アミノ酸濃度とを同時に測定することが可能となる。図11は、フィッシャー比バイオセンサー400の構造を表わす構成図である。図11においては、センサー部の構造を平面図で表わし、回路部の構成をブロック図で表わしている。図11において図10の分岐鎖アミノ酸バイオセンサー200の構成要素に対応する構成要素には同じ符号を付している。フィッシャー比バイオセンサー400は、支持体201を共通にする分岐鎖アミノ酸バイオセンサー200と芳香族アミノ酸バイオセンサー300、並びにフィッシャー比計算部450から構成される。フィッシャー比計算部450は、濃度測定部252及び352からそれぞれ分岐鎖アミノ酸濃度と芳香族アミノ酸濃度を受け取り、分岐鎖アミノ酸濃度を芳香族アミノ酸濃度で除することによって、フィッシャー比を算出する。BTR値を算出する場合には、芳香族アミノ酸バイオセンサーに換えてチロシンバイオセンサーを用いればよく、この際酵素としてはチロシンモノオキシゲナーゼが挙げられる。このフィッシャー比バイオセンサー400によれば、1回の測定操作で、フィッシャー比を求めることができる。フィッシャー比バイオセンサー400は、分岐鎖アミノ酸濃度及び芳香族アミノ酸濃度も独立して出力することができる。
【0048】
(他のバイオセンサー)
上記の実施形態では、分岐鎖アミノ酸濃度、芳香族アミノ酸濃度、フィッシャー比を測定するためのバイオセンサーについて説明してきたが、本発明は、それ以外の複数のアミノ酸の合計濃度を単一の極板系で測定することができるアミノ酸バイオセンサーにも拡張できる。すなわち、測定対象の複数のアミノ酸について、測定時の印加電圧が、その複数のアミノ酸のそれぞれについて印加電圧と電流値の関係を表わした検量線において、それぞれのアミノ酸についての同じ印加電圧における電流値の分布が所定の範囲内であるような印加電圧が存在するような酵素、補酵素、メディエータを選択し、その印加電圧を測定点に含むようにするとよい。なお、本発明にかかるバイオセンサーは、アミノ酸に限られず、コレステロール、ホルモンなどにも適用することができる。すなわち、アミノ酸以外の複数の物質のそれぞれにほぼ同等の基質親和性を有する酵素を使用することによって、それらの複数の物質の合計濃度を単一の極板系で測定することができるバイオセンサーを構成することができる。また、複数のアミノ酸を測定するバイオセンサーと単独のアミノ酸や生体成分を測定するバイオセンサーを組み合わせて、1のバイオセンサーとすることも出来る。即ち、センサー内に測定回路を二経路以上設けてなるバイオセンサーを作成することにより、求めたい健康指標の算出に必要な複数の入力値を同時に得ることの出来るバイオセンサーを提供することが出来る。
【0049】
(健康情報管理システム)
上述の分岐鎖アミノ酸バイオセンサー200、芳香族アミノ酸バイオセンサー300、及びフィッシャー比センサー400は、いずれも単一の測定操作で、フィッシャー比などの複合的なアミノ酸の検査値を簡便に測定することができる。従来、そのようなアミノ酸の検査値は、検査機関などに採取した血液などの生体サンプルを移管しなければ測定することができず、また、測定結果が分かるまでに時間がかかっていた。従って、フィッシャー比などは、健康上、非常に重要な意味を有する検査値であるにもかかわらず、その測定に必要となる手間が災いし、十分に活用されてこなかったのが現状である。しかし、本発明のバイオセンサーを使用すると、入院患者がベッドサイドで検査を受けたり、健康人が自宅などで簡便にフィッシャー比などを測定することができる。このように簡単に個人でフィッシャー比が測定できるようになるため、個人が測定したフィッシャー比をネットワークを通じて収集・分析することによってアミノ酸に関する適切な健康情報を提供するシステムの構築が可能となる。本発明の一実施形態に係る健康情報管理システム500はそのような目的のために構成されたシステムである。以下にそれの説明をする。
【0050】
これから図12を参照して、本発明の一実施形態に係る健康情報管理システム500の構成について説明する。図12は、健康情報管理システム500の概略構成を表わす構成図である。健康情報管理システム500は、大きく、フィッシャー比バイオセンサー400、ユーザ端末502、及びサーバ506から構成される。フィッシャー比バイオセンサー400は、ユーザ端末502に接続されており、測定したフィッシャー比をユーザ端末502に出力する。フィッシャー比バイオセンサー400は、好適には、フィッシャー比だけでなく、分岐鎖アミノ酸濃度や、芳香族アミノ酸濃度も出力する。ユーザ端末502は、ユーザが自宅などに設置する、サーバ506にネットワーク501を介してアクセスするための端末であり、好適には、そのためのアプリケーションをインストールした、ネットワーク機能を有するPC、PDA、電話機、携帯電話機などの情報端末である。ユーザ端末502は、そのアプリケーションとハードウェアとの協働により、フィッシャー比送信手段503、健康情報評価受信手段504、及び出力手段505の機能要素を提供する。フィッシャー比送信手段503は、フィッシャー比バイオセンサー400から受け取ったフィッシャー比、分岐鎖アミノ酸濃度、芳香族アミノ酸濃度を、ネットワーク501を介してサーバ506へと送信する。健康情報評価受信手段504は、ネットワーク501を介してサーバ6からユーザのフィッシャー比などの測定値に関する健康情報評価を受信する。出力手段505は、受信した健康情報評価を画面などに出力する構成要素であり、ディスプレイを通じて情報を出力するWebブラウザなどの形態である。サーバ506は、健康情報管理のサービスを提供するサーバであり、典型的にはWebのネットワーク上に設置されており、Webを通じてサービスを提供することができる。サーバ506は、健康情報管理のアプリケーションとハードウェアとの協働により、フィッシャー比受信手段507、健康情報評価手段508、健康基準データ管理手段509、健康情報更新手段510、健康情報データ管理手段511、及び健康情報評価送信手段512の機能要素を提供する。フィッシャー比受信手段507は、ユーザ端末502からフィッシャー比などを受信する。健康情報評価手段508は、受信されたフィッシャー比などを、健康基準データ管理手段509に記憶されたフィッシャー比などの測定値の評価のための基準データと比較することによって、測定値の判定、それに対するコメントなどの健康情報評価を導出する。健康情報更新手段510は、ユーザに関するフィッシャー比などの測定値を、それを記憶している健康情報データ管理手段511から取得し、新しい測定値で更新して、健康情報データ管理手段511に記憶させる。健康情報送信手段512は、導出された健康情報評価をユーザ端末502に送信する。
【0051】
これから、健康情報管理システム500の動作について説明する。健康情報管理システム500を使用するユーザは、好適には事前に会員として登録する。登録は、例えば、インターネットのWebサイトを通じて行うことができる。図13は、会員登録画面のイメージ図である。この画面を通じて、健康情報管理システム500に、会員の基本的な情報を登録する。登録する情報は、氏名、性別、生年月日、住所、電話番号、メールアドレスなどの基本情報である。基本情報に加えて、身長、体重、血液型、既往歴、飲酒頻度、喫煙の有無、肝臓に関する検査値(GOT、GPT、γ−GTPなど)などの健康に関する情報を含んでもよい。このような情報は、健康情報を導出する際に補強的に使用することができる。この登録により、当該会員のための健康情報のレコードが作成され、健康情報データ管理手段511に記憶される。
【0052】
会員は、自宅などにおいて自分で少量の組織液又は血液を採取し、それをフィッシャー比バイオセンサー400の極板系の部分に滴下する。これによって、フィッシャー比バイオセンサー400は、血液の分岐鎖アミノ酸濃度、芳香族アミノ酸濃度、及びフィッシャー比を測定し、その測定値をデータ化してフィッシャー比送信手段503に出力する。フィッシャー比送信手段503は、その測定値に会員を特定する情報を加えて、ネットワーク501を通じてフィッシャー比受信手段507に送信する。なお、ユーザ端末502は、フィッシャー比バイオセンサー400から測定値を受け取った段階で、出力手段505からそれを表示させると好適である。図14は、そのための測定値出力画面のイメージである。フィッシャー比受信手段507は、受信した測定値を健康情報評価手段508に送る。健康情報評価手段508は、健康基準データ管理手段509から、フィッシャー比などの基準値を取得し、測定値をそれと比較することによって、測定値の判定、測定値に対するコメントの抽出を行い、健康情報評価を作成する。この基準値は、年齢、性別ごとに作成されていて、会員の年齢、性別と一致する基準値を使用すると好適である。健康情報更新手段510は、健康情報データ管理手段511に当該会員の健康情報を検索させてそれを取得し、それに新しい測定値を反映させた上で、健康情報データ管理手段511に記憶させる。健康情報更新手段510は、測定値の推移を表わすデータも作成する。好適には、測定値の推移グラフを構成する。健康情報評価送信手段512は、導出された健康情報評価や測定値の推移グラフなどを、ネットワーク501を介してユーザ端末502に送信する。健康情報評価受信手段504は、健康情報評価や測定値の推移グラフをネットワーク501を介して健康情報評価受信手段512から受信する。出力手段505は、受信した測定値の推移グラフや健康情報評価を表示する。図15は、測定値の推移を表示する測定値推移出力画面のイメージ図である。その画面では、フィッシャー比と分岐鎖アミノ酸(BCAA)濃度が測定日を横軸としてプロットされ、時間的な推移が示されている。基準値の範囲内と範囲外とでプロットするシンボルの色を変えて表示するなどして、視覚的に分かりやすく表示すると好適である。図16は、健康情報評価を表示する健康情報評価出力画面のイメージ図である。図の例では、フィッシャー比については、基準値を下回っているので「要検査」の「判定」がなされており、測定値が下降基調であって基準値を下回っているのでその旨が「コメント」に記述されている。また、分岐鎖アミノ酸濃度については、基準値内であるので「正常」の「判定」がなされており、測定値が下降基調であるのでその旨が「コメント」に記述されている。「コメント」としては、他には、体調・健康状態に関する情報や、体調・健康状態を維持・改善するための方法に関する情報や、食事メニュー情報や食品の成分・商品に関する情報なども使用できる。このように、健康情報管理システム500によれば、フィッシャー比などのアミノ酸を利用した測定値を簡便に測定・管理し、それに基づく健康情報の提供を行うことができる。
【0053】
本発明に係るバイオセンサーは、各種のアミノ酸や生体成分などの測定を行うように拡張可能である。従って、そのようなバイオセンサーを利用した健康情報管理システムは、直接的には健康に関連しないような生体情報の管理システムにも適用することができる。従って、本明細書における「健康情報」の用語の意義は、生体に関する情報であれば、直接的には健康との関連が知られていない指標に関する情報であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実験形100の概要構成を表わす構成図である。
【図2】PMSの濃度を0.01mMに保持したときの、NADHの有無のそれぞれの場合における電圧−電流特性のグラフである。
【図3】PMSの濃度を0.1mMに保持したときの、NADHの有無のそれぞれの場合における電圧−電流特性のグラフである。
【図4】PMSの濃度を1mMに保持したときの、NADHの有無のそれぞれの場合における電圧−電流特性のグラフである。
【図5】PMSの濃度を0.01mM及び0.1mMに保持したときの、NADHの有無のそれぞれの場合における電圧−電流特性のグラフである。
【図6】NADH濃度を一定に保持し、電圧を変化させた場合の電流を測定した電圧−電流特性のグラフである。
【図7】電圧を一定に保持し、NADHの濃度を変化させた場合の電流を測定したNADH濃度−電流特性のグラフである。
【図8】濃度が1mMにおける、ロイシン、イソロイシン、及びバリンの3種類のアミノ酸の電圧−電流特性を表わす検量線のグラフである。
【図9】測定点の印加電圧をパラメータとし、アミノ酸の種類ごとのアミノ酸濃度−電流特性を表わす検量線のグラフである。
【図10】分岐鎖アミノ酸バイオセンサー200の構造を表わす構成図である。
【図11】フィッシャー比バイオセンサー400の構造を表わす構成図である。
【図12】健康情報管理システム500の概略構成を表わす構成図である。
【図13】会員登録画面のイメージ図である。
【図14】測定値出力画面のイメージである。
【図15】測定値の推移を表示する測定値推移出力画面のイメージ図である。
【図16】健康情報評価を表示する健康情報評価出力画面のイメージ図である。
【符号の説明】
【0055】
11 被検溶液
12 塩化物水溶液
13 反応槽
14 塩化物水溶液槽
21 作用電極
22 対極
23 参照電極
24 塩橋
25 吸気口
31 ポテンショスタット
32 レコーダ
33 ファンクションジェネレータ
34 マルチマグネティックスターラー
100 実験系
200 分岐鎖アミノ酸バイオセンサー
201 支持体
202 測定極
203 対極
204 測定極リード部
205 対極リード部
206 測定極端子
207 対極端子
251 電圧−電流特性測定部
252 濃度計算部
300 芳香族アミノ酸バイオセンサー
302 測定極
303 対極
304 測定極リード部
305 対極リード部
306 測定極端子
307 対極端子
351 電圧−電流特性測定部
352 濃度計算部
400 フィッシャー比バイオセンサー
500 健康情報管理システム
501 ネットワーク
502 ユーザ端末
503 フィッシャー比送信手段
504 健康情報評価受信手段
505 出力手段
506 サーバ
507 フィッシャー比受信手段
508 健康情報評価手段
509 健康基準データ管理手段
510 健康情報更新手段
511 健康情報データ管理手段
512 健康情報評価送信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも複数の特定のアミノ酸を選択的に基質とする酵素、及びメディエータを構成因子とする測定極と、対極とを有する、当該複数の特定のアミノ酸の濃度の合計値を測定するためのアミノ酸バイオセンサーであって、
前記酵素は、前記複数の特定のアミノ酸のそれぞれに基質親和性を有し、
前記酵素は、前記特定のアミノ酸を基質とした反応により反応生成物を生成し、
前記メディエータは、アミノ酸の濃度の測定時に前記反応生成物と前記測定極との間で電子を運搬し、及び
前記アミノ酸バイオセンサーの前記測定極と前記対極との間の測定時印加電圧は、前記複数の特定のアミノ酸のそれぞれについて特定の濃度における印加電圧と電流値の関係を表わした検量線において、同じ濃度であるそれぞれのアミノ酸についての同じ印加電圧における電流値の分布が所定の範囲内であるような印加電圧を含むことを特徴とするアミノ酸バイオセンサー。
【請求項2】
請求項1に記載のアミノ酸バイオセンサーにおいて、
前記アミノ酸バイオセンサーの前記測定極と前記対極との間の測定時印加電圧は、前記複数の特定のアミノ酸のそれぞれについて特定の濃度における印加電圧と電流値の関係を表わした検量線において、同じ濃度であるそれぞれのアミノ酸についての同じ印加電圧における電流値の分布が、全体の20%以内であるような印加電圧を含むことを特徴とするアミノ酸バイオセンサー。
【請求項3】
請求項1に記載のアミノ酸バイオセンサーにおいて、
前記測定極は、補酵素をさらに構成因子とし、
前記酵素は、脱水素酵素であり、
前記反応生成物は、前記補酵素が還元された還元型補酵素であり、及び
前記メディエータは、アミノ酸の濃度の測定時に前記還元型補酵素から前記測定極へ電子を運搬することを特徴とするアミノ酸バイオセンサー。
【請求項4】
請求項3に記載のアミノ酸バイオセンサーにおいて、
前記複数の特定のアミノ酸は、ロイシン、バリン、及びイソロイシンを含む分岐鎖アミノ酸であり、
前記脱水素酵素は、ロイシンデヒドロゲナーゼであり、及び
前記補酵素は、ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチドであることを特徴とする分岐鎖アミノ酸バイオセンサー。
【請求項5】
請求項4に記載の分岐鎖アミノ酸バイオセンサーにおいて、
前記メディエータは、PMSであることを特徴とする分岐鎖アミノ酸バイオセンサー。
【請求項6】
請求項3に記載のアミノ酸バイオセンサーにおいて、
前記複数の特定のアミノ酸は、フェニルアラニン及びチロシンを含む芳香族アミノ酸であり、
前記脱水素酵素はフェニルアラニンデヒドロゲナーゼであるであることを特徴とする芳香族アミノ酸バイオセンサー。
【請求項7】
請求項4に記載の分岐鎖アミノ酸バイオセンサーと、
請求項6に記載の芳香族アミノ酸バイオセンサーと、
前記分岐鎖アミノ酸バイオセンサーで測定される分岐鎖アミノ酸濃度を前記芳香族アミノ酸バイオセンサーで測定される芳香族アミノ酸濃度で除することによってフィッシャー比を算出するフィッシャー比算出手段と、を有することを特徴とするフィッシャー比バイオセンサー。
【請求項8】
会員の生体情報を管理する生体情報管理手段と、会員が当該生体情報管理手段と通信するための会員端末とからなる生体情報管理システムであって、
前記生体情報管理手段は、
アミノ酸濃度を含む会員の生体情報のデータを管理する生体情報データ管理手段と、
前記会員端末から前記アミノ酸濃度をネットワークを介して受信する第1の受信手段と、
前記アミノ酸濃度を所定の基準と比較することによって生体情報評価を導出する生体情報評価手段と、
導出された前記生体情報評価を前記会員端末にネットワークを介して送信する第1の送信手段と、を備え、及び
前記会員端末は、
請求項1に記載のアミノ酸バイオセンサーと、
前記アミノ酸バイオセンサーによって測定されるアミノ酸濃度を前記生体情報管理手段にネットワークを介して送信する第2の送信手段と、
前記生体情報管理手段から前記生体情報評価をネットワークを介して受信する第2の受信手段と、
受信された前記生体情報評価を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする生体情報管理システム。
【請求項9】
会員の健康情報を管理する健康情報管理手段と、会員が当該健康情報管理手段と通信するための会員端末とからなる健康情報管理システムであって、
前記健康情報管理手段は、
血中分岐鎖アミノ酸濃度を含む会員の健康情報のデータを管理する健康情報データ管理手段と、
前記会員端末から前記血中分岐鎖アミノ酸濃度をネットワークを介して受信する第1の受信手段と、
前記血中分岐鎖アミノ酸濃度を所定の基準と比較することによって健康情報評価を導出する健康情報評価手段と、
導出された前記健康情報評価を前記会員端末にネットワークを介して送信する第1の送信手段と、を備え、及び
前記会員端末は、
請求項4に記載の分岐鎖アミノ酸バイオセンサーと、
前記分岐鎖アミノ酸バイオセンサーによって測定される血中分岐鎖アミノ酸濃度を前記健康情報管理手段にネットワークを介して送信する第2の送信手段と、
前記健康情報管理手段から前記健康情報評価をネットワークを介して受信する第2の受信手段と、
受信された前記健康情報評価を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする健康情報管理システム。
【請求項10】
会員の健康情報を管理する健康情報管理手段と、会員が当該健康情報管理手段と通信するための会員端末とからなる健康情報管理システムであって、
前記健康情報管理手段は、
フィッシャー比を含む会員の健康情報のデータを管理する健康情報データ管理手段と、
前記会員端末から前記フィッシャー比をネットワークを介して受信する第1の受信手段と、
前記フィッシャー比を所定の基準と比較することによって健康情報評価を導出する健康情報評価手段と、
前記会員端末へ導出された前記健康情報評価をネットワークを介して送信する第1の送信手段と、を備え、及び
前記会員端末は、
請求項8に記載のフィッシャー比バイオセンサーと、
前記フィッシャー比バイオセンサーによって測定される血中アミノ酸のフィッシャー比を前記健康情報管理手段にネットワークを介して送信する第2の送信手段と、
前記健康情報管理手段から前記健康情報評価をネットワークを介して受信する第2の受信手段と、
受信された前記健康情報評価を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする健康情報管理システム。
【請求項11】
少なくとも複数の特定のアミノ酸を選択的に基質とする酵素、及びメディエータを構成因子として有することを特徴とする測定極と、対極とを有しており、
前記酵素は、前記複数の特定のアミノ酸のそれぞれに基質親和性を有し、
前記酵素は、前記特定のアミノ酸を基質とした反応により反応生成物を生成し、及び
前記メディエータは、アミノ酸の濃度の測定時に前記反応生成物と前記測定極との間で電子を運搬する、そのようなアミノ酸バイオセンサーを用いて被検溶液中の複数の特定のアミノ酸濃度の合計値を測定する方法であって、
前記アミノ酸バイオセンサーを前記被検溶液と接触させるステップと、
前記アミノ酸バイオセンサーの前記測定極と前記対極との間に、前記複数の特定のアミノ酸のそれぞれについて特定の濃度における印加電圧と電流値の関係を表わした検量線において、同じ濃度であるそれぞれのアミノ酸についての同じ印加電圧における電流値の分布が所定の範囲内であるような電圧を印加するステップと、
前記印加電圧下での前記測定極と前記対極との間の応答電流値を測定するステップと、
前記検量線における前記印加電圧及び前記応答電流値に対応するアミノ酸濃度を、前記被検溶液中の前記複数の特定のアミノ酸濃度の合計値として求めるステップと、を有することを特徴とする被検溶液中の複数の特定のアミノ酸濃度の合計値を測定する方法。
【請求項12】
少なくとも複数の特定のアミノ酸を選択的に基質とする酵素、及びメディエータを構成因子とする測定極と、対極とを有しており、
前記酵素は、前記複数の特定のアミノ酸のそれぞれに基質親和性を有し、
前記酵素は、前記特定のアミノ酸を基質とした反応により反応生成物を生成し、及び
前記メディエータは、アミノ酸の濃度の測定時に前記反応生成物と前記測定極との間で電子を運搬する、そのような第1のアミノ酸バイオセンサーと、
前記複数の特定のアミノ酸以外の単一のアミノ酸を選択的に基質とする酵素、及びメディエータを構成因子とする測定極と、対極とを有しており、
前記酵素は、前記単一のアミノ酸を基質とした反応により反応生成物を生成し、及び
前記メディエータは、アミノ酸の濃度の測定時に前記反応生成物と前記測定極との間で電子を運搬する、そのような第2のアミノ酸バイオセンサーと、を用いて生体由来の被検溶液から健康指標を導出する健康指標測定方法であって、
前記第1のアミノ酸バイオセンサー及び前記第2のアミノ酸バイオセンサーを生体由来の被検溶液と接触させるステップと、
前記第1のアミノ酸バイオセンサーの前記測定極と前記対極との間に、前記複数の特定のアミノ酸のそれぞれについて特定の濃度における印加電圧と電流値の関係を表わした検量線において、同じ濃度であるそれぞれのアミノ酸についての同じ印加電圧における電流値の分布が所定の範囲内であるような電圧を印加するステップと、
前記印加電圧下での前記測定極と前記対極との間の応答電流値を測定するステップと、
前記検量線における前記印加電圧及び前記応答電流値に対応するアミノ酸濃度を、前記被検溶液中の前記複数の特定のアミノ酸濃度の合計値として求めるステップと、
前記第2のアミノ酸バイオセンサーの前記測定極と前記対極との間に所定の電圧を印加するステップと、
前記印加電圧下での前記測定極と前記対極との間の応答電流値を測定するステップと、
前記所定の印加電圧及び前記応答電流値に対応するアミノ酸濃度を、前記被検溶液中の前記単一のアミノ酸濃度として求めるステップと、
前記求められた複数の特定のアミノ酸濃度と、前記求められた単一のアミノ酸濃度とを入力情報とした所定の演算により所定の健康指標を導出するステップと、を有することを特徴とする健康指標の測定方法。
【請求項13】
少なくとも複数の特定のアミノ酸を選択的に基質とする酵素、及びメディエータを構成因子とする測定極と、対極とを有しており、
前記酵素は、前記複数の特定のアミノ酸のそれぞれに基質親和性を有し、
前記酵素は、前記特定のアミノ酸を基質とした反応により反応生成物を生成し、及び
前記メディエータは、アミノ酸の濃度の測定時に前記反応生成物と前記測定極との間で電子を運搬する、そのような第1のアミノ酸バイオセンサーと、
前記複数の特定のアミノ酸以外の複数の他の特定のアミノ酸を選択的に基質とする酵素、及びメディエータを構成因子とする測定極と、対極とを有しており、
前記酵素は、前記複数の他の特定のアミノ酸のそれぞれに基質親和性を有し、
前記酵素は、前記複数の他の特定のアミノ酸を基質とした反応により反応生成物を生成し、及び
前記メディエータは、アミノ酸の濃度の測定時に前記反応生成物と前記測定極との間で電子を運搬する、そのような第2のアミノ酸バイオセンサーと、を用いて生体由来の被検溶液から健康指標を導出する健康指標測定方法であって、
前記第1のアミノ酸バイオセンサー及び前記第2のアミノ酸バイオセンサーを生体由来の被検溶液と接触させるステップと、
前記第1のアミノ酸バイオセンサーの前記測定極と前記対極との間に、前記複数の特定のアミノ酸のそれぞれについて特定の濃度における印加電圧と電流値の関係を表わした検量線において、同じ濃度であるそれぞれのアミノ酸についての同じ印加電圧における電流値の分布が所定の範囲内であるような電圧を印加するステップと、
前記印加電圧下での前記測定極と前記対極との間の応答電流値を測定するステップと、
前記検量線における前記印加電圧及び前記応答電流値に対応するアミノ酸濃度を、前記被検溶液中の前記複数の特定のアミノ酸濃度の合計値として求めるステップと、
前記第2のアミノ酸バイオセンサーの前記測定極と前記対極との間に、前記複数の他の特定のアミノ酸のそれぞれについて特定の濃度における印加電圧と電流値の関係を表わした検量線において、同じ濃度であるそれぞれのアミノ酸についての同じ印加電圧における電流値の分布が所定の範囲内であるような電圧を印加するステップと、
前記印加電圧下での前記測定極と前記対極との間の応答電流値を測定するステップと、
前記検量線における前記印加電圧及び前記応答電流値に対応するアミノ酸濃度を、前記被検溶液中の前記他の複数の特定のアミノ酸濃度の合計値として求めるステップと、
前記求められた複数の特定のアミノ酸濃度と、前記求められた他の複数のアミノ酸濃度とを入力情報とした所定の演算により所定の健康指標を導出するステップと、を有することを特徴とする健康指標の測定方法。
【請求項14】
少なくとも複数の特定のアミノ酸を選択的に基質とする酵素、及びメディエータを構成因子とする測定極と、対極とを有しており、
前記酵素は、前記複数の特定のアミノ酸のそれぞれに基質親和性を有し、
前記酵素は、前記特定のアミノ酸を基質とした反応により反応生成物を生成し、及び
前記メディエータは、アミノ酸の濃度の測定時に前記反応生成物と前記測定極との間で電子を運搬する、そのようなアミノ酸バイオセンサーと、
特定の生体成分を選択的に基質とする酵素、及びメディエータを構成因子とする測定極と、対極とを有しており、
前記酵素は、前記生体成分を基質とした反応により反応生成物を生成し、及び
前記メディエータは、生体成分の濃度の測定時に前記反応生成物と前記測定極との間で電子を運搬する、そのような生体成分バイオセンサーと、を用いて生体由来の被検溶液から健康指標を導出する健康指標測定方法であって、
前記アミノ酸バイオセンサー及び前記生体成分バイオセンサーを生体由来の被検溶液と接触させるステップと、
前記アミノ酸バイオセンサーの前記測定極と前記対極との間に、前記複数の特定のアミノ酸のそれぞれについて特定の濃度における印加電圧と電流値の関係を表わした検量線において、同じ濃度であるそれぞれのアミノ酸についての同じ印加電圧における電流値の分布が所定の範囲内であるような電圧を印加するステップと、
前記印加電圧下での前記測定極と前記対極との間の応答電流値を測定するステップと、
前記検量線における前記印加電圧及び前記応答電流値に対応するアミノ酸濃度を、前記被検溶液中の前記複数の特定のアミノ酸濃度の合計値として求めるステップと、
前記生体成分バイオセンサーの前記測定極と前記対極との間に所定の電圧を印加するステップと、
前記印加電圧下での前記測定極と前記対極との間の応答電流値を測定するステップと、
前記所定の印加電圧及び前記応答電流値に対応する生体成分濃度を、前記被検溶液中の前記生体成分濃度として求めるステップと、
前記求められた複数の特定のアミノ酸濃度と、前記求められた生体成分濃度とを入力情報とした所定の演算により所定の健康指標を導出するステップと、を有することを特徴とする健康指標の測定方法。
【請求項15】
請求項14に記載の健康指標の測定方法において、
前記生体成分は2種類以上あり、
前記生体成分バイオセンサーは、前記2種類以上の各生体成分に対応して2つ以上設けられることを特徴とする健康指標の測定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【国際公開番号】WO2005/075970
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【発行日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517771(P2005−517771)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001781
【国際出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)