説明

アミロイドβペプチドの検出のための新規アッセイ

本発明は、特に血漿中のAβペプチドの検出のための新規の方法、及びアルツハイマー病の診断のためのAβペプチドの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、バイオマーカーとしてのAβ(1-40)の使用を伴うアルツハイマー病の検出及び診断に関し、さらに、生物学的試料中のAβ(1-40)を測定するための新規の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病は、認知症の最も一般的な形態であり、全認知症障害の中で約65〜70%の罹患率を有する(Blennowらの文献, 2006)。平均寿命の延長に起因して、この疾患は、日本及び中国のような高度先進工業国、並びに米国及び欧州で特別な問題になっている。アルツハイマー患者の数は、2001年の2400万人から2040年には8100万人に増加すると推定されている(Ferriらの文献, 2005)。現在、全世界のAD患者の治療及び介護の費用は、年間約2500億米ドルに達する。
【0003】
アルツハイマー病の進行は比較的緩徐であり、この疾患は、最初の症状の発症後、通常約10〜12年間持続する。現在、信頼できる早期のAD診断を行ない、それを認知症の他の形態と区別することは極めて困難である。90%を上回る信頼度の正確な診断は、この疾患の後期にのみ可能となる。それ以前は、アルツハイマー病の可能性があるか又はその可能性が高いことを予測することしかできず、その場合の診断は、Knopmanらの文献, 2001; Waldemarらの文献, 2007、又はDuboisらの文献, 2007による特定の基準の使用に頼っている。しかしながら、神経変性は、最初の臨床症状が認められる20〜30年前に始まる(Blennowらの文献, 2006; Jellinger KAの文献, 2007)。臨床期の開始は、通常、いわゆる「軽度認知障害」(MCI)によって特徴付けられる。この場合、患者は、測定可能な認知欠陥を示すが、この欠陥は、明確な形での認知症疾患の診断を可能にするほど十分でない(Petersenらの文献, 1999; Chetkowらの文献, 2008)。MCIを有する多くの患者はADに典型的な神経病理学的変化を有するが、この変化は、ADの初期段階の可能性はあるが、確実ではないことを意味する(Scheffらの文献, 2006; Markesberyらの文献, 2006; Bouwmanらの文献, 2007)。しかしながら、アルツハイマー病に進行しないMCI症例が多数ある。こうした症例では、他の因子が認知欠陥の原因となっている(Saitoらの文献, 2007; Jichaらの文献, 2006、及びPetersenらの文献, 2006)。その状態の悪化を全く示さないか又はある種の改善すら示すMCI患者もいるが、ほとんどのMCI症例の場合、認知欠陥は臨床的認知症に進む。この転換の年率は、約10〜19%である(Gauthierらの文献, 2006; Fischerらの文献, 2007)。現在、軽度認知障害の様々な亜型を識別することができる臨床的過程、神経心理学的過程、及び画像診断過程の組合せがある(Devanandらの文献, 2007; Rossiらの文献, 2007; Whitwellらの文献, 2007; Panzaらの文献, 2007)。しかしながら、認知症のさらなる進行に関して、これらの亜型間に顕著な違いはない(Fischerらの文献, 2007)。したがって、初期段階で、好ましくは、その発症時に又はMCIの間に、アルツハイマー病の明確でかつ信頼できる診断を可能にする方法を開発することが最も重要である。
【0004】
(先行技術のバイオマーカー)
アルツハイマー病のバイオマーカーは先行技術で既に記載されている。例えば、ADAS-cog、MMSE、DemTect、SKT、又は時計描画テストのような周知の心理テストとともに、バイオマーカーは、最初の診断の診断感度及び特異性を改善するだけでなく、疾患の進行を監視するとも考えられている。AD/MCIのバイオマーカーの開発の現状との関連で、将来の疾患を他の診断基準と関連付けることが提案された(Whitwellらの文献, 2007; Panzaらの文献, 2007; Hyman SEの文献, 2007)。バイオマーカーは、将来、古典的な神経-心理テストを支援するか又はそれに取って替わると考えられている。それらは、アルツハイマー病に対する薬剤の開発の代用マーカーとして非常に重要であるという共通の考えがある(Blennow Kの文献, 2004; Blennow Kの文献, 2005; Hampelらの文献, 2006; Lewczukらの文献, 2006; Irizarry MC, 2004)。
【0005】
構造バイオマーカー
「磁気共鳴画像診断」(MRI)は、脳の変性萎縮の検出を可能にする画像診断過程である(Barnes Jらの文献, 2007; Vemuriらの文献, 2008)。例えば、内側側頭葉の萎縮(MTA)は、高齢患者の脳の海馬領域の変性による影響を受けやすく、これは、MRIによって非常に明確に可視化することができるが、アルツハイマー病に特異的ではない。軽度のMTAは、他の認知症でより高頻度に見られるわけではないが(Barkhofらの文献, 2007)、それは確かにMCIと相関する(Mevelらの文献, 2007)。このため、神経変性がアルツハイマー病であるのか又はアルツハイマー病の初期段階であるのかをMRIデータのみから判定するのは不可能である。さらなる画像診断法は、アミロイド沈着物上の検出器分子(PIB)の蓄積を可視化することができる陽電子放出断層撮影法(PET)である。チオフラビンT-類似体(11C)PIBが、それぞれ、MCI又は軽度アルツハイマー病を有する患者の脳の特定の領域で蓄積することが見出されている(Kemppainenらの文献, 2007; Klunkらの文献, 2004; Roweらの文献, 2007)。しかしながら、これは、認知症の症状を示さない対象でも検出可能である(Pikeらの文献, 2007)。この現象がさらなる研究で確認されることになれば、これはおそらく、PETによるアミロイド沈着物の検出によってアルツハイマー病の前臨床段階の検出が可能になることを示すであろう。最もよく利用されるプロセスである、MRI及びPETの他に、アルツハイマー病のさらなる構造バイオマーカーが知られている:CBF-SPECT、CMRg1-PET(グルコース代謝プロトン分光法(H-1 MRS)、高磁場強度の機能的MRI、ボクセルに基づく形態計測法(voxel-based morphometry)、(fMRIによって検出される)内側基底側頭葉の増強された活性化、ミクログリア細胞の検出のための(R)-[(11)C]PK11195 PET(Huangらの文献, 2007; Kantarciらの文献, 2007; Petrellaらの文献, 2007; Hamalainenらの文献, 2007; Kircherらの文献, 2007; Krophollerらの文献, 2007)。
【0006】
CSFバイオマーカー
老人斑は、アルツハイマー病の病理学的特徴の1つである。これらの斑は、主にAβ(1-42)ペプチドからなる(Attems J, 2005)。いくつかの研究では、MCI患者のCSFでの低レベルのAβ(1-42)がアルツハイマー病の進行と特異的に相関することを示すことができた(Blennow及びHampelの文献, 2003; Hanssonらの文献, 2006及び2007)。CSFでの減少は、おそらく、脳におけるAβ(1-42)の凝集の増強によるものである(Faganらの文献, 2006; Princeらの文献, 2004; Strozykらの文献, 2003)。別の考えられる説明は、CSFでのより低いレベルの検出をもたらす半可溶性Aβ(1-42)オリゴマー(Walshらの文献, 2005)の出現である。特に、アルツハイマー病の初期段階では、Aβ(1-42)の濃度の減少が検出されると同時に、CSF 中のタウタンパク質及びホスホ-タウタンパク質の量の増加がそれぞれ検出され得る(Ewersらの文献, 2007; Lewczukらの文献, 2004)。バイオマーカーのより良好な予測可能性を提供するために、通常、タウ/Aβ(1-42)比を用いて、それを認知症を有さない高齢者の認知欠陥の予測と関連付けることが試みられる(Faganらの文献, 2007; Gustafsonらの文献, 2007; Hanssonらの文献, 2007; Liらの文献, 2007; Stomrudらの文献, 2007)、及びMCI患者 (Hampelらの文献, 2004; Maccioniらの文献, 2006; Schnknechtらの文献, 2007)。Aβ(1-42)、タウ、ホスホ-タウ-Thr231の生前のCSFレベルと死後の脳の組織病理学的変化とのさらなる相関がAD患者で検出された(Clarkらの文献, 2003; Buergerらの文献, 2006)。しかしながら、他の研究では、CSFバイオマーカーと、Aβ(1-42)、APOE ε4-アレルの場合の総タウ及びホスホ-タウ、剖検後の斑及びもつれの量(tangle load)との間に相関を検出することはできなかった(Engelborghsらの文献, 2007; Buergerらの文献, 2007)。興味深い側面が多施設研究で見出された。総タウ及びホスホ-タウ(181)のレベルの増加は、Aβ(1-42)/Aβ(1-40)の比の低下と相関するが、Aβ(1-42)レベル単独とは相関しないようである(Wiltfangらの文献, 2007)。しかしながら、CSFタウのレベルの増加は、どれもニューロンの喪失と関連するクロイツヘルト-ヤコブ病、脳梗塞、及び脳血管認知症のような他のCNS疾患でも検出された(Buergerらの文献, 2006(2); Biblらの文献, 2008)。さらなる可能なバイオマーカーは、MCIの指標としてのCSF中のBACE 1活性の増加である(Zhongらの文献, 2007)。BACE 1活性の増加が、Aβ産生の増加、したがって、ペプチドの凝集の増加をもたらすことも論じられている。アルツハイマー病は、神経炎症過程を伴うと考えられる。したがって、CSF中の抗ミクログリア細胞抗体は、ADにおけるこれらの炎症過程の可能なバイオマーカーである(McReaらの文献, 2007)。
【0007】
アルツハイマー病の早期診断を可能にすると考えられるバイオマーカーが多数あるにもかかわらず、この疾患の信頼できる明確な診断を保証する利用可能な単一のバイオマーカーは今のところない。それゆえ、アルツハイマー病の分野における大半の研究は、それぞれのバイオマーカーの判定の結果と臨床診断の比較を用いて、アルツハイマー病の病期及び重症度を判定している。対照的に、バイオマーカーとアルツハイマー病の病理学的原因との相関は、この疾患の明らかにより信頼できる診断を与えることになるであろう。
【0008】
そのような可能なアプローチは、Aβ(1-40)及びAβ(1-42)が実際に好適な神経化学的認知症マーカー(Jellingerらの文献, 2008)であるかどうかを明らかにするための、明確に特定され、定義された神経病理学的認知症疾患の免疫沈降されたCSF試料の反復解析である。アルツハイマー病のこれまで知られていない新規のバイオマーカーを発見するために、通常、CSF試料を比較プロテオミクス解析で解析して感度が強化されたADの診断を行ない、他の変性認知症障害との識別も可能にする(Finehoutらの文献, 2007; Castanoらの文献, 2006; Zhangらの文献, 2005; Simonsenらの文献, 2007; Lescuyerらの文献, 2004; Abdiらの文献, 2006)。プロテオミクス解析の後、潜在的な新しいバイオマーカーは、その好適性及び病理学的原因との相関について詳細に解析しなければならない。プロテオミクス解析によって発見されたバイオマーカーの典型例は、多発性硬化症のバイオマーカーとしての切断されたシスタチン Cである。このバイオマーカーは、後に、貯蔵アーティファクトであることが分かった(Iraniらの文献, 2006; Hanssonらの文献, 2007(2))。
【0009】
血漿バイオマーカー
頻繁に用いられる血漿バイオマーカー、すなわち、Aβペプチドの他に、さらなる炎症血漿マーカーが、認知症(Ravagliaらの文献, 2007; Engelhartらの文献, 2004)、及び特にアルツハイマー病(Mottaらの文献, 2007)の早期診断に用いられる。アルツハイマー病の診断に対するこれらの炎症マーカーの好適性及び特異性は今なお議論されている。さらなる可能なバイオマーカーは、AD患者及び健康対象由来の血漿の比較プロテオミクス解析によっても発見された (Germanらの文献, 2007; Rayらの文献, 2007)。前述のバイオマーカーのいずれかについての説得力のある又は好適なデータは、今のところ入手できない。
【0010】
CSF中のアミロイドβの解析とは対照的に、血漿中の好適なAβバイオマーカーに関して今までに得られている結果は、信頼性がなく、明確性もない。いくつかの研究では、血漿中のAβ(1-42)/Aβ(1-40)の比の減少と、認知健常者のそれぞれMCI又はアルツハイマー患者への転換の増加との間の相関が認められた(Graff-Radfordらの文献, 2007; van Oijenらの文献, 2006; Sundelofらの文献, 2008)。しかしながら、他の研究では、Aβ(1-42)血漿レベルの低下は、MCIからADへの転換のマーカーである可能性がより高く(Songらの文献, 2007)、アルツハイマー病の場合に直面する、神経変性目的のマーカーとしては適さない(Pesaresiらの文献, 2006)ことが見出された。しかしながら、これらの研究の大半は、健康対照と孤発性アルツハイマー病を有する患者とのAβ血漿レベルの違いを示していない(Fukumotoらの文献, 2003; Kosakaらの文献, 1997; Scheunerらの文献, 1996; Sobowらの文献, 2005; Tamaokaらの文献, 1996; Vandersticheleらの文献, 2000)。いくつかの研究は、血漿中のAβのレベルが、脳で見られるようなレベルと相関せず(Faganらの文献, 2006; Freemanらの文献, 2007)、また、それがCSFで見られるレベルとも相関しないことも示した(Mehtaらの文献, 2001; Vandersticheleらの文献, 2000)。最近の研究で、Aβ(1-40)及びAβ(1-42)についてCSFと血漿との間で相関が検出されたが、これは健康対照でしか見られなかった。この相関は、MCI及びADでは検出することができなかった。これは、脳内のAβ沈着物によるCSF Aβと血漿Aβの間のバランスの破壊によって説明される(Giedraitisらの文献, 2007)。一般に、血漿Aβ(1-42)レベルがMCI又はADの信頼できるバイオマーカーではないと考えられているのに対し(Blaskoらの文献, 2008; Mehtaらの文献, 2000; Brettschneiderらの文献, 2005)、血漿Aβ(1-38)/Aβ(1-40)比の減少は血管性認知症のバイオマーカーと考えられ、CSFマーカーの予測可能性に近づいている(Biblらの文献, 2007)。
【0011】
EP2020602及びUS20020182660は、血漿試料中で、Aβ(1-40)及びAβ(1-42)などの特定の全長Aβペプチドを検出する方法を開示している。この方法は、2つの異なる捕捉抗体を利用しているが、免疫沈降工程を含んでいない。
【0012】
EP1944314は、 Aβ(21-37)又はAβ(4-10)に対する自己抗体などの、Aβペプチドに対する自己抗体を検出する方法を開示している。この方法では、それぞれの自己抗体を結合及び検出するために、Aβペプチドのアミノ酸配列を含むポリペプチドは担体に固定される。
【0013】
したがって、信頼性があり、かつアルツハイマー病段階の早期発症の明確な予測可能性だけでなく、アルツハイマー病と他の認知症疾患との識別にもつながるバイオマーカーに対する明確な必要性がある。CSFとは対照的に、患者から容易に入手することができる血漿由来の該バイオマーカーを提供する必要性もある。さらに、該バイオマーカーの信頼できる明確な判定をもたらす、該バイオマーカーの検出のための方法を提供する必要性がある。
【0014】
しかしながら、特に、血漿Aβをバイオマーカーとして用いるそのような方法は、Aβペプチドが非常に疎水性であるために、確立することが極めて困難である。現在知られ、記載されているアッセイシステム及び方法は全て、極めて不十分な解析感度しか達成せず、検体とマトリックス、すなわち、血漿との非常に複雑な相互作用に関する大きな問題に直面する。これは、上記の複数の研究における非常に矛盾した結果を説明している。それはさらに、血漿中の特定のAβペプチドのレベルはADのバイオマーカーとして適さないという科学コミュニティの考えにつながった。
【0015】
ELISA又はELISAタイプのシステム(マルチプレックス)は、従来、血漿中のAβの定量に用いられている。そのような研究の検証パラメータは、通常、不十分にしか解析されないか又は完全に無視される。例えば、回復率のような重要項目は、解析されないか又はそれぞれの刊行物で言及されない。しかしながら、回復率は、血漿中に生じるAβペプチドのレベルの正確な決定のための決定的なパラメータである。したがって、異なる研究で生じる、血漿中のAβペプチドのレベルの違いは、回復率の不正確な決定が原因で生じる可能性がある。ELISA又はマルチプレックスシステムのさらなる重要なパラメータは、その線形性である。例えば、Hanssonらの文献, 2008では、1:20希釈物について算出された血漿Aβ(1-42)濃度のレベルは、同じ試料の1:2希釈物の場合よりも3倍高かった(Hanssonらの文献, 2008)。この例のみから、これまでに知られているいくつかの研究における同じ血漿試料の異なる希釈物は比較できないことが示される。さらに、そのような方法は、信頼できる診断アッセイを確立するのに全く適していない。1つの研究における異なる希釈物の使用は、アーティファクトを生じさせ、結局、完全に間違った結果を生むことになる。血漿Aβの解析のための標準化されたプロトコル及び方法が存在しない限り、そのような研究は相矛盾し、将来の診断方法に適さないものとなるであろう。
【0016】
したがって、特に血漿中のAβの検出を可能にする、信頼性の高い新規の方法を提供することが本発明の目的である。
さらに、本発明は、信頼できる方法を用いて判定することができ、かつアルツハイマー病の信頼できる明確な予測に用いることができる診断マーカーを提供する。
本発明はさらに、生物学的試料を様々な測定サイクルで解析する多患者研究での使用に特に好適な信頼できる方法を提供する。
【発明の概要】
【0017】
本発明の目的は、生物学的試料中のアミロイドβペプチド(Aベータ又はAβ)の検出のための方法を提供することによって解決される。この方法は、生物学的試料を免疫沈降工程で少なくとも2つの異なる捕捉抗体と接触させることを特徴とする。得られる複合体を単離し、破壊し、その後、捕捉されたAβペプチドをAβ特異的ELISAで解析する。このAβ特異的ELISAはサンドイッチ-ELISAであることが好ましい。
【0018】
Aβペプチドは、酵素β-及びγ-セクレターゼによる連続的な切断の後、アミロイド前駆体タンパク質(APP)から遊離する。γ-セクレターゼ切断は、上述のAβ(1-40)及びAβ(1-42)ペプチドの生成をもたらす。これらは、そのC-末端が異なり、かつ凝集、原線維形成、及び神経毒性の異なる効力を示す。
【0019】
したがって、本発明は、Aβ(1-40)及びAβ(1-42)ペプチドのレベルの決定のための方法を提供する。同様に、Aβ(1-40)又はAβ(1-42)の機能的等価物が検出されることも想定される。本発明の方法は、Aβ(1-40)及び/又はその機能的等価物のレベルの決定に特に好適である。
【0020】
したがって、上記の方法の好ましい実施態様によれば、決定されるべきAβペプチドは、Aβ(1-40)(配列番号:1)、Aβ(1-42)(配列番号:2)、及びそれらの機能的等価物からなる群から選択される。
【0021】
特に好ましい実施態様では、検出されるべきAβペプチドは、Aβ(1-40)(配列番号:2)である。
【0022】
さらに好ましい実施態様によれば、生物学的試料は、血液、血清、尿、脳脊髄液(CSF)、血漿、リンパ液、唾液、汗、胸水、滑液、涙液、胆汁、及び膵分泌物からなる群から選択される。特に好ましい実施態様では、生物学的試料は血漿である。
【0023】
生物学的試料は、当業者に周知の方法で患者から得ることができる。特に、血液試料は対象から得ることができ、血液試料は、従来法によって、血清と血漿に分離することができる。生物学的試料が得られる対象は、アルツハイマー病に罹患している、アルツハイマー病を発症するリスクがある、及び/又は任意の他の種類の認知症のリスクがあるかもしくはそれを有することが疑われる。
【0024】
特に、それは、軽度認知障害(MCI)を有する、及び/又はアルツハイマー病の初期段階にあることが疑われる対象である。
【0025】
本方法は、当技術分野で公知の方法に優るいくつかの利点を有する。すなわち、本発明の方法は、初期段階のアルツハイマー病を検出するために、並びに疾患の発症及び進行の初期段階でアルツハイマー病と他のタイプの認知症とを識別するために用いることができる。1つの考えられる初期段階は軽度認知障害(MCI)である。当技術分野で現在知られている方法では、アルツハイマー病の初期段階の明確でかつ信頼できる診断を行なうことは不可能であり、特に、該初期段階においてアルツハイマー病の発症と他の形態の認知症とを識別することは不可能である。これは、特に、MCIに罹患した患者の場合に当てはまる。
【0026】
対照的に、本発明によって提供される方法は、アルツハイマー病の鑑別診断に好適である。特に、本発明は、Aβペプチドを、上記の対象のいずれかから得られる生物学的試料中で再現性高く検出することができる方法を提供する。本発明の方法の高い再現性は、最初の免疫沈降工程で少なくとも2つの異なる捕捉抗体を用いることによって達成される。これらの少なくとも2つの異なる捕捉抗体は、Aβ標的ペプチドの異なるエピトープに対するものであることが好ましい。
【0027】
本発明の方法でAβ(1-40)を用いることが特に好ましい。
さらに好ましい実施態様では、生物学的試料は血漿である。
上述の「Aβ標的ペプチド」は、全てのその機能的等価物を含むAβ(1-40)及びAβ(1-42)を包含する。
【0028】
本発明によって克服されなければならなかった具体的な問題は、使用しようとするバイオマーカーが、アルツハイマー病の初期段階、例えば、軽度認知障害の間に変化することである。本発明の発明者らは、Aβペプチド、特にAβ(1-40)を信頼できるやり方で測定することができることを示し、また、実際に、Aβ(1-40)が早期発症性アルツハイマー病の診断に特に好適であることも初めて明らかになった。
【0029】
さらに、Aβ(1-40)のレベルは、初期段階のアルツハイマー病の発症の最初の早期マーカーであることが本発明で明らかになったが、それは、その血漿レベルが、アルツハイマー病の初期段階に増加し、かつ軽度認知障害であると分類された人で特に高いからである。本発明を用いた場合にのみ、Aβ(1-40)の高い血漿濃度がアルツハイマー病の陽性の臨床診断と関連していたことを示すことができる。これは、Aβ(1-40)がADの好適なマーカーではないという先行技術における従来の考えに反する。というのも、相関を示そうとする数々の試みは、統計的に有意でないデータを出して終わってしまい、いかなる統計的に有意な相関も確立しなかったからである。
【0030】
本発明のこれらの驚くべき結果は、最初の免疫沈降工程に新規の二価捕捉システムを利用する本発明の方法を用いることによって達成された。この二価捕捉システムは、Aβペプチドの少なくとも2つの異なるエピトープを認識する2つの抗体分子、又は3つ以上の抗体分子により定義される。これにより、Aβ(1-40)の有意な増加がアルツハイマー病の進行の初期事象であることが示されている。好ましい実施態様によれば、少なくとも2つの異なる捕捉抗体は、Aβペプチド、特にAβ(1-40)ペプチドの異なるエピトープに各々特異的である。
【0031】
免疫沈降工程はいくつかの理由で有利である。この工程は、マトリックス効果を軽減する、すなわち、それは、各生物学的試料に通常含まれる不純物を取り除き、それによって、本発明の方法をより感度の高いものにする。さらに、免疫沈降工程によって、Aβペプチドの事前濃縮が起こり、後で用いられる検出抗体の親和性の増強が生じる。
【0032】
定義
本出願の意味における「捕捉抗体」は、標的Aβペプチドに結合する抗体を包含することが意図される。
【0033】
捕捉抗体は、高親和性でAβペプチドに結合することが好ましい。本発明との関連で、高親和性は、10-7M以下のKD値、好ましくは10-8M以下のKD値、又はさらにより好ましくは10-9M〜10-12MのKD値を有する親和性を意味する。
【0034】
用語「抗体」は、最も広範な意味で使用され、かつ具体的には、それらが所望の生物学的活性を示す限りは、無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成された多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を対象としている。抗体は、例えばIgM、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4)、IgD、IgA、又はIgEであることができる。しかしながら、本抗体はIgMでないことが好ましい。「所望の生物学的活性」は、Aβペプチドへの結合である。
【0035】
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、一般には無傷の抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFv断片:ダイアボディ;単鎖抗体分子;並びに抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
【0036】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体をいい、すなわちその集団を構成している個々の抗体は、少量で存在し得る可能性のある天然の突然変異以外は、同一である。モノクローナル抗体は、単一の抗原性部位に対する高度な特異性がある。さらに、典型的には様々な抗原決定基(エピトープ)に対する様々な抗体を含む「ポリクローナル抗体」調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の抗原決定基に対するものである。その特異性に加え、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンが夾雑しないハイブリドーマ培養により合成される点で、それらは有利であり得ることが多い。「モノクローナル」とは、抗体の実質的に均質な集団から得られるものとしての抗体の特徴を示すものであり、かつ任意の特定の方法による抗体産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerらの文献(Nature, 256:495 (1975))で最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製することができるか、又は一般に周知の組換えDNA法によって作製することができる。「モノクローナル抗体」は、例えば、Clacksonらの文献(Nature, 352:624-628 (1991))及びMarksらの文献(J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991))に記載された技術を用いて、ファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0037】
モノクローナル抗体は、本明細書では特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であるが、この鎖(複数)の残りは、別の種に由来する抗体又は別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同である、キメラ抗体(免疫グロブリン)、さらには所望の生物学的活性を示す限り、そのような抗体の断片を含む。
【0038】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含む、キメラ免疫グロブリン、その免疫グロブリン鎖又は断片(Fv、Fab、Fab'、F(ab')2、又は抗体の他の抗原結合性部分配列)である。大部分に関して、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット又はウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基により置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基により置き換えられている。さらにヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDR又はフレームワーク配列にも認められない残基を含むことができる。
【0039】
これらの修飾は、抗体性能をさらに純化しかつ最適化するために行われる。概してヒト化抗体は、少なくとも1つの、及び典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで、全て又は実質的に全てのCDR領域は、非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、かつ全て又は実質的に全てのFR領域は、ヒト免疫グロブリン配列のFR領域である。ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)の、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部も含む。さらなる詳細に関しては、Jonesらの文献, Nature, 321:522-525(1986), Reichmannらの文献, Nature, 332:323-329(1988):及びPrestaの文献, Curr. Op. Struct. Biel., 2:593-596(1992)を参照されたい。ヒト化抗体は、抗体の抗原結合領域が関心対象の抗原によるマカクザルの免疫化により産生された抗体に由来するPrimatized(商標)抗体、又は「ラクダ化」抗体を含む。
【0040】
「単鎖Fv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含み、ここでこれらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。一般に、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、このリンカーによって、sFvは、抗原結合のための望ましい構造を形成することができる。sFvの総説については、Pluckthunの文献、「モノクローナル抗体の薬理学(The Pharmacology of Monoclonal Antibody)」, 第113巻, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, ニューヨーク, 269-315頁(1994)を参照されたい。
【0041】
用語「ダイアボディ」は、その断片が、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(VD)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む、2つの抗原結合部位を伴う小型の抗体断片(VH-VD)をいう。同じ鎖上の2つのドメインを対合させるには短すぎるリンカーを使用することにより、これらのドメインは、別の鎖の相補ドメインと対合するように強制され、かつ2つの抗原結合部位を形成する。ダイアボディは、Hollingerらの文献, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)でより十分に説明されている。
【0042】
「単離された」抗体は、同定されかつその天然の環境の成分から分離及び/又は回収されたものである。その天然の環境の夾雑成分は、この抗体の診断的又は治療的使用を妨げる物質であり、かつこれは、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質を含むことができる。好ましい実施態様では、抗体は、(1)Lowry法で決定したときに抗体の95重量%を上回るまで、及び最も好ましくは99重量%を上回るまで、(2)スピニングカップシーケネーター(spinning cup sequenator)の使用により、N-末端又は内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、又は(3)クマーシーブルーもしくは好ましくは銀染色を用いる還元もしくは非還元条件下のSDS-PAGEによって均質になるまで精製される。単離された抗体は組換え細胞内のインサイチュの抗体を含む。というのは、抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないからである。しかしながら、通常、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0043】
本明細書で使用される表現「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養物」は、互換的に使用され、かつそのような表記は全て子孫を含む。したがって、語句「形質転換体」及び「形質転換された細胞」は、継代(transfer)された数とは関係なく、それらから派生した初代の対象細胞及び培養物を含む。全ての子孫は、故意の又は故意でない突然変異のために、DNA含有量が正確には同一でないことがあり得ることも理解される。最初に形質転換された細胞でスクリーニングされたものと同じ機能又は生物学的活性を有する突然変異体子孫が含まれる。はっきりと区別できる表記が意図される場合、これは文脈から明からになるであろう。
【0044】
本明細書で使用される用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、互換性があり、かつペプチド結合により連結されたアミノ酸で構成された生体分子を意味すると定義される。
本明細書で使用される用語「ある(a、an及びthe)」は、「1以上」を意味するように定義され、かつ文脈が不適切でない限りは、複数を含む。
【0045】
「アミロイドβ、Aβ、又はβ-アミロイド」は、当技術分野で認識された用語であり、アミロイドβタンパク質及びペプチド、アミロイドβ前駆体タンパク質(APP)、ならびにそれらの修飾物、断片、及び任意の機能的等価物をいう。特に、本明細書で使用されるアミロイドβとは、APPのタンパク質分解的切断によって産生される任意の断片を意味するが、とりわけ、アミロイド病理に関与又は関連する断片を意味し、これには、限定するものではないが、Aβ1-38、Aβ1-40、Aβ1-42が含まれる。
【0046】
「機能的等価物」は、本発明によって記載されているような検出のための方法又は診断のための方法を受けるよう選択された患者群で天然に生じ得るAβ(1-40)及び/又はAβ(1-42)の全ての突然変異体又は変異体を包含する。より具体的には、本発明の文脈での「機能的等価物」は、Aβ(1-40)又はAβ(1-42)の機能的等価物がその突然変異体又は変異体であり、かつアルツハイマー病で蓄積することが示されていることを意味する。機能的等価物は、Aβ(1-40)及び/又はAβ(1-42)と比較して、30以下、好ましくは20、より好ましくは10、特に好ましくは5つ、及び最も好ましくは2つ、又はたった1つの突然変異を有する。機能的等価物は突然変異した変異体も包含し、それには、例として、アミノ酸Asp-Ala-Gluで始まり、それぞれ、Gly-Val-Val及びVal-Ile-Alaで終わる全てのAβペプチドが含まれる。
【0047】
本文脈での特に有用なAβ(1-40)及びAβ(1-42)等価物は、Irieらの文献, 2005によって記載されているもの、すなわち、Aβの鳥取型、フラマン型、オランダ型、イタリア型、北極型、及びアイオワ型突然変異である。機能的等価物は、スウェーデン型、オーストリア型、フランス型、ドイツ型、フロリダ型、ロンドン型、インディアナ型、及びオーストラリア型変異体のようなβ-又はγ-セクレターゼ切断部位に隣接する突然変異を有するアミロイド前駆体タンパク質に由来するAβペプチドも包含する(Irieらの文献, 2005)。
【0048】
「サンドイッチELISA」は、通常、検出しようとするタンパク質の異なる免疫原性部分、すなわち、エピトープに各々結合することができる2つの抗体の使用を伴う。サンドイッチアッセイでは、被験試料検体は、固体支持体に固定された第1の抗体によって結合させられ、その後、第2の抗体が検体に結合し、その結果、不溶性の3つの部分からなる複合体を形成する。第2の抗体それ自体は、検出可能部分で標識されていてもよいし(直接サンドイッチアッセイ)、又は検出可能部分で標識された抗免疫グロブリン抗体を用いて測定されてもよい(間接サンドイッチアッセイ)。例えば、サンドイッチアッセイの1つの好ましいタイプは、ELISAアッセイであり、その場合、検出可能部分は酵素である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】二価免疫沈降システムは捕捉効率を改善する(A)様々な抗体組合せの使用によるCyp18溶液及びヒト血漿からのAβ1-40の回収(B)二価捕捉システムの概略図(網掛け:4G8抗体, 灰色:x-40抗体、黒色:磁気ビーズにコンジュゲートされた抗マウス抗体)。
【図2】DemTectテスト。DemTectスケールによるAD患者及び健康対象の分類の違いの結果の平均値(平均±SD)。
【図3】ミニメンタルステートテスト(Mini-Mental-State Test)。ミニメンタルステートテストによるAD患者及び健康対象の分類の違いの結果の平均値(平均±SD)。
【図4】時計描画テスト。時計描画テストによるAD患者及び健康対象の分類の違いの結果の平均値(平均±SD)。
【図5】それぞれ、DemTect(A)及びMMSE(B)の得点に対するAβ(1-40)濃度のプロット。
【図6】内部血漿標準(ITS)、平均値、及びSEMに対して正規化された、相対的な血漿Aβ(1-40)レベル。
【0050】
配列
【化1】

【化2】

【発明を実施するための形態】
【0051】
(発明の詳細な説明)
本発明は、生物学的試料中のAβペプチドの検出及び測定のための方法を提供する。本方法は、生物学的試料を免疫沈降工程で少なくとも2つの異なる捕捉抗体と接触させることを特徴とする。得られる複合体を単離し、破壊し、その後、捕捉されたAβペプチドをAβ特異的ELISAで解析する。このAβ特異的ELISAはサンドイッチ-ELISAであることが好ましい。
【0052】
上で述べたように、Aβペプチドの異なるエピトープに対して異なる特異性を有する、最初の捕捉工程用の少なくとも2つの抗体を選択すべきである。
【0053】
本発明の方法は、以下の工程を含む:
i)生物学的試料を免疫沈降工程で少なくとも2つの異なる捕捉抗体と接触させること。
該生物学的試料を前述の少なくとも2つの異なる捕捉抗体と接触させた後、該少なくとも2つの異なる捕捉抗体とAβペプチドとの間で免疫複合体が形成される。この工程は、全長Aβ(1-40)及び/又はAβ(1-42)を特異的に単離する役割を果たすのではなく、むしろ、特に、位置40及び/又は位置42で終わる、全てのAβ種を捕捉し、分離する役割を果たす。
ii)次に、この複合体を二次抗体によって検出する。該二次抗体は、磁気ビーズに固定されていることが好適である。該磁気ビーズとともに、該免疫複合体は、磁気分離装置を用いて、体液(血漿/血清、CSFなど)から容易に分離することができる。
iii)該免疫複合体を該ビーズから溶出させる。溶出工程は、該免疫複合体を担持する該ビーズを、50%メタノール/0.5%ギ酸を含む溶液中、室温で1時間インキュベートすることによって行なわれることが好適である。それによって、全ての分子間相互作用が破壊され、該生物学的試料から単離された全てのAβペプチド分子が、該溶液中の該ビーズから放出される。
iv)放出され、単離されたAβペプチドを、次の工程で、例えば、全長Aβ(1-40)及び/又はAβ(1-42)を特異的に検出するサンドイッチELISAによって定量する。
【0054】
例えば、100個を上回る生物学的試料を解析しなければならない多患者診断研究では、数週間又は数ヶ月の期間をかけて、いくつかの測定サイクルを行なわなければならない。この延長された期間及び異なる時点で行なわれる異なる測定サイクルが原因で、異なる測定サイクル間のアッセイ間変動が高い確率で生じる場合がある。アッセイ間変動は、特定の工程で、例えば、免疫沈降工程(例えば、沈降抗体のロットが異なるため)、又はAβ(1-40)ELISA(ELISAキットのロットが異なるため)で生じる場合がある。これらのアッセイ間変動のために、生物学的試料中で決定されるAβ標的ペプチドの量は、異なる測定サイクル間で比較できない場合があり、さらに、該多患者研究で得られる全ての生物学的試料を含むAβ標的ペプチドの量の統計解析、及びAD患者と健康対象の識別は不可能となる場合がある。
【0055】
該アッセイ間変動を回避するために及び異なる測定サイクルからの結果を統計解析のために比較可能かつ実現可能にするために、本発明の方法は、内部標準試料の存在下で実施されることが好ましい。そのような内部標準は、例えば、内部血漿標準-試料(ITS)である。これは、十分に規定された対照対象から得られるべきであり、それは健康対象であることが好ましい。Aβ標的ペプチド、例えば、Aβ(1-40)又はAβ(1-42)の濃度は、各ITS試料で一定である。したがって、異なる測定サイクルで見られるITS試料中のAβ標的ペプチド濃度の変動は、アッセイ間変動を反映する。
【0056】
本発明の好ましい実施態様によれば、1以上のITS試料が各測定サイクルに含まれる。生物学的試料、例えば、血漿試料中のAβペプチドのレベルを決定した後、該生物学的試料のAβ標的ペプチド濃度、例えば、Aβ(1-40)又はAβ(1-42)濃度を、該ITS試料で決定されたそれぞれのAβ標的ペプチドの濃度に対して正規化し、各被験試料の相対的なAβ標的ペプチドレベルを得る。
【0057】
さらに好ましい実施態様では、本発明の方法は、さらなる工程として、生物学的試料のAβ標的ペプチド濃度、例えば、Aβ(1-40)又はAβ(1-42)濃度を、該ITS試料で決定されたそれぞれのAβ標的ペプチドの濃度に対して正規化し、各生物学的試料の相対的なAβ標的ペプチドレベルを生じさせることを含む。
【0058】
結果として、異なる測定サイクル(時点、抗体ロット、ELISAロット)で決定された生物学的試料中の相対的なAβ標的ペプチドレベルの比較は、正規化されていないAβ標的ペプチドレベルの比較よりも信頼性が高い。
【0059】
本発明の方法におけるITSの使用は、特にAβ(1-40)及び/又はAβ(1-42)の濃度の決定に好ましく、Aβ(1-40)の濃度の決定に最も好ましい。
【0060】
本発明の方法は血漿試料に限定されない。他の体液(脳脊髄液、尿、リンパ液、唾液、汗、胸水、滑液、房水、涙液、胆汁、膵分泌物)を本発明の方法で用いる場合、これらの流体は、本明細書で血漿試料について示されたように、十分に規定された対照対象、好ましくは健康対象から採取されなければならない。その後、これらの流体は、内部標準として用いられなければならない。
【0061】
したがって、本発明による内部標準試料は、血漿試料、脳脊髄液試料、尿試料、リンパ液試料、唾液試料、汗試料、胸水試料、滑液試料、房水試料、涙液試料、胆汁試料、膵分泌物試料から選択されることが好ましい。内部標準試料は血漿試料であることが最も好ましい。
【0062】
本発明の方法を検証することが好適であり、その場合、生物学的試料のドナーである対象を神経変性疾患の状態に関して十分に特徴付ける。この特徴付けは、従来の心理テスト、例えば、DemTect、ミニメンタルステートテスト、時計描画テスト、ADAS-Cog(アルツハイマー病評価尺度-認知(Alzheimer's Disease Assessment Scale-Cognitive))、聖なるテスト(Blessed Test)、CANTAB(ケンブリッジ神経心理学テスト自動バッテリー(Cambridge Neuropsychological Test Automated Battery))、Cognistat(神経行動学的認知状態検査(Neurobehavioral Cognitive Status Examination))、神経精神症状評価(NPI)、アルツハイマー病行動病理学尺度(Behavioral Pathology in Alzheimer's Disease Rating Scale)(BEHAVE-AD)、CERAD(アルツハイマー病の登録設立協会(The Consortium to Establish a Registry for Alzheimer's Disease))の臨床及び神経心理テスト(Clinical and Neuropsychological Tests)、コーネル認知症抑うつ尺度(Cornell Scale for Depression in Dementia)(CSDD)、老年うつ病スケール(GDS)、及び7分間スクリーニング(The 7 Minute Screen)を用いて実施することができる。
【0063】
本文脈で好適な、免疫沈降用の考えられる抗体は、以下:
3D6、エピトープ:1-5(Elan Pharmaceuticals, Innogenetics)
pAb-EL16、エピトープ:1-7
2H4、エピトープ:1-8(Covance)
1E11、エピトープ:1-8(Covance)
20.1、エピトープ:1-10(Covance, Santa Cruz Biotechnology)
ウサギ抗-Aβポリクローナル抗体、エピトープ:1-14(Abcam)
AB10、エピトープ:1-16(Chemicon/Upstate - Milliporeの1部門)
82E1、エピトープ:1-16(IBL)
pAb1-42、エピトープ:1-11
NAB228、エピトープ:1-11(Covance, Sigma-Aldrich, Cell Signaling, Santa Cruz Biotechnology, Zymed/Invitrogen)
DE2、エピトープ:1-16(Chemicon/Upstate - Milliporeの1部門)
DE2B4、エピトープ:1-17(Novus Biologicals, Abcam, Accurate, AbD Serotec)
6E10、エピトープ:1-17(Signet Covance, Sigma-Aldrich)
10D5、エピトープ:3-7(Elan Pharmaceuticals)
WO-2、エピトープ:4-10(The Genetics Company)
1A3、エピトープ5-9(Abbiotec)
pAb-EL21、エピトープ5-11
310-03、エピトープ5-16(Abcam, Santa Cruz Biotechnology)
ニワトリ抗ヒトAβポリクローナル抗体、エピトープ12-28(Abcam)
ニワトリ抗ヒトAβポリクローナル抗体、エピトープ25-35(Abcam)
ウサギ抗ヒトAβポリクローナル抗体、エピトープ:N-末端(ABR)
ウサギ抗ヒトAβポリクローナル抗体(Anaspec)
12C3、エピトープ10-16(Abbiotec, Santa Cruz Biotechnology)
16C9、エピトープ10-16(Abbiotec, Santa Cruz Biotechnology)
19B8、エピトープ9-10(Abbiotec, Santa Cruz Biotechnology)
pAb-EL26、エピトープ:11-26
BAM90.1、エピトープ:13-28(Sigma-Aldrich)
ウサギ抗β-アミロイド(汎)ポリクローナル抗体、エピトープ:15-30(MBL)
22D12、エピトープ:18-21(Santa Cruz Biotechnology)
266、エピトープ:16-24(Elan Pharmaceuticals)
pAb-EL17;エピトープ:15-24
4G8、エピトープ:17-24(Covance)
ウサギ抗Aβポリクローナル抗体, エピトープ:22-35(Abcam)
G2-10;エピトープ:31-40(The Genetics Company)
ウサギ抗-Aβ、aa 32-40ポリクローナル抗体(GenScript Corporation)
EP1876Y、エピトープ:x-40(Novus Biologicals)
G2-11、エピトープ:33-42(The Genetics Company)
16C11、エピトープ:33-42(Santa Cruz Biotechnology)
21F12、エピトープ:34-42(Elan Pharmaceuticals, Innogenetics)
1A10、エピトープ:35-40(IBL)
D-17ヤギ抗Aβ抗体、エピトープ:C-末端(Santa Cruz Biotechnology)
であるが、本発明は、それらの特定の実施例(working example)に限定されない。
【0064】
免疫沈降用の特に好ましい抗体は、3D6(Elan)、BAN50(Takeda)、82E1(IBL)、6E10(Covance)、WO-2(The Genectics Company)、266(Elan)、BAM90.1(Sigma)、4G8(Covance)、G2-10(The Genetics Company)、1A10(IBL)、BA27(Takeda)、11A5-B10(Millipore)、12F4(Millipore)、21F12(Elan)である。
【0065】
免疫沈降用の特に好ましい抗体ペアは、
4G8及び11A5-B10、3D6及び4G8、6E10及び4G8、82E1及び4G8、4G8及び12F4、4G8及び21F12、3D6及び21F12、6E10及び21F12、BAN50及び4G8、3D6及び11A5-B10、3D6及び1A10、3D6及びBA27、6E10及び11A5-B10、6E10及び1A10、6E10及びBA27、4G8及び11A5-B10、4G8及び1A10、4G8及びBA27、4G8及び12F4、4G8及び21F12である。
【0066】
上に示した抗体以外に、免疫沈降に好適な他の全てのアミロイドベータ特異的抗体(モノクローナル及びポリクローナル)を本発明の方法に用いることができる(さらなる好適な抗体は、例えば、www.alzforum.orgから取得することができる)。異なるエピトープを有する2つ、3つ、又はそれより多くの異なる抗体の使用は、良好な捕捉効率にとって決定的であり、したがって、本発明の重要な要素を構成する。Aβペプチドの免疫沈降に対する2以上の抗体タイプの使用は、協調的でかつ驚くほど相乗的な結合効果(結合力)をもたらし、これにより、非常に高い捕捉効率を達成することが最終的に可能になる(図1参照)。
【0067】
工程ii)における二次抗体は、捕捉抗体の宿主抗体タイプに対して特異的である。好ましい二次抗体は、抗マウス抗体及び抗ウサギ抗体である。
【0068】
工程iii)における複合体と磁気ビーズとのインキュベーションの後、ビーズを洗浄バッファーで洗浄してもよい(本発明の実施例を参照されたい)。洗剤又は非特異的結合を防ぐ他の添加物を含む洗浄バッファーをこの工程に用いることができる。洗浄バッファーの非限定的な例は、以下である:
- 10mg/ml サイクロフィリン18(Cyp 18)及び0.05% Tween-20を含むD-PBS、
- PBS + 0.05% Tween-20、
- TBS + 0.05% Tween-20、
- PBS + 1%(w/v) BSA + 0.05% Tween-20、
- TBS + 1%(w/v) BSA + 0.05% Tween-20、並びに
- Pierce ELISA Blocker(Tween-20を含む)。
【0069】
工程iv)におけるビーズからの免疫複合体の溶出後、溶液を希釈バッファーに希釈する。表面及び固定された第1のELISA抗体との非特異的相互作用を防ぐことができる任意の希釈バッファーをこの工程に用いることができる。希釈バッファーの非限定的な例は、以下のものである:
- EIAバッファー(IBL 1-40(N) ELISAキットの希釈バッファー)、
- PBS + 1%(w/v) BSA + 0.05% Tween-20、
- TBS + 1%(w/v) BSA + 0.05% Tween-20、及び
- Pierce ELISA Blocker(Tween-20を含む)。
【0070】
全長Aβ(1-40)を定量することができるELISAキットは市販されている。本発明の方法におけるAβ(1-40)の定量のための好適なELISAキットは、例えば、アミロイド-β(1-40)(N)ELISA(IBL, JP27714); Aβ[1-40]ヒトELISAキット(Invitrogen);ヒトアミロイドベータ(アミロイド-β)、aa 1-40 ELISAキット(Wako Chemicals USA, Inc.);アミロイドベータ1-40 ELISAキット(The Genetics Company)である。
【0071】
全長Aβ(1-42)を定量することができるELISAキットも市販されている。本発明の方法におけるAβ(1-42)の定量のための好適なELISAキットは、例えば、アミロイド-β(1-42)(N)ELISA(IBL, JP27712); Aβ[1-42]ヒトELISAキット(Invitrogen)、ヒトアミロイドベータ(アミロイド-β)、aa 1-42 ELISAキット(Wako Chemicals USA, Inc.)、アミロイドベータ1-40 ELISAキット(The Genetics Company)、INNOTEST(登録商標)β-アミロイド(1-42)(Innogenetics)である。
【0072】
本発明の方法は、Aβ(1-40)又はAβ(1-42)用の例示的な上述の市販ELISAキットに限定されない。全長Aβ(1-40)又はAβ(1-42)用の多くのさらなるサンドイッチELISAが先行技術で利用可能であり得るか、又は当業者によって開発され得る。これら全ての全長Aβ1-40又はAβ1-42 サンドイッチELISAもまた、本発明の方法によって包含されるものとし、通常、Aβ(1-40)及び/又はAβ(1-42)の完全なN-末端、並びにアミノ酸40又は42で終わるC-末端にそれぞれ特異的な、捕捉抗体及び検出抗体の好適なペアを含むべきである。
【0073】
そのような全長Aβ(1-40)サンドイッチELISAは、Aβ(1-40)のC-末端を特異的に認識する第1の固定された抗体及びAβ(1-40)の完全なN-末端を特異的に認識する第2の標識された検出抗体を含むことができる。
【0074】
全長Aβ(1-42)サンドイッチELISAは、Aβ(1-42)のC-末端を特異的に認識する第1の固定された抗体及びAβ(1-42)の完全なN-末端を特異的に認識する第2の標識された検出抗体を含むことができる。
【0075】
全長Aβ(1-40)サンドイッチELISAはまた、Aβ(1-40)の完全なN-末端を特異的に認識する第1の固定された抗体及びAβ(1-40)のC-末端を特異的に認識する第2の標識された検出抗体を含むことができる。
【0076】
全長Aβ(1-42)サンドイッチELISAはまた、Aβ(1-42)の完全なN-末端を特異的に認識する第1の固定された抗体及びAβ(1-42)のC-末端を特異的に認識する第2の標識された検出抗体を含むことができる。
【0077】
本発明の方法における使用のための好適なAβ(1-40/42)N-末端特異的抗体は、例えば、3D6(Elan)、WO-2(The Genetics Company)、82E1(IBL)、BAN-50(Takeda)である。多くのさらなるAβ(1-40/42)N-末端特異的抗体が先行技術で利用可能であり得るか、又は当業者によって開発され得る。これら全てのAβ(1-40/42)N-末端特異的抗体もまた、本発明の方法によって包含される。
【0078】
好適なAβ(1-40)C-末端特異的抗体は、例えば、G2-10(The Genetics Company); 11A5-B10(Millipore); 1A10(IBL); BA27(Takeda); EP1876Y(Novus Biologicals)である。多くのさらなるAβ(1-40)C-末端特異的抗体が先行技術で利用可能であり得るか、又は当業者によって開発され得る。これら全てのAβ(1-40)C-末端特異的抗体もまた、本発明の方法によって包含される。
【0079】
好適なAβ(1-42)C-末端特異的抗体は、例えば、G2-11(The Genetics Company); 12F4(Millipore);抗ヒトAβ(38-42)ウサギIgG(IBL); 21F12(Elan); BC05(Takeda); 16C11(Santa Cruz Biotechnology)である。多くのさらなるAβ(1-42)C-末端特異的抗体が先行技術で利用可能であり得るか、又は当業者によって開発され得る。これら全てのAβ(1-42)C-末端特異的抗体もまた、本発明の方法によって包含される。
【0080】
好ましい実施態様によれば、検出抗体は標識されている。
【0081】
診断用途のために、検出抗体は、通常、検出可能部分で標識されている。多くの標識が利用可能であり、それらは、通常、以下のカテゴリーに分類することができる:
(a)放射性同位体、例えば、35S、14C、125I、3H、及び131I。抗体は、例えば、「免疫学最新プロトコル(Current Protocols in Immunology)」, 第1巻及び第2巻, Gtigenら編, Wiley-Interscience. New York, New York. Pubs.,(1991)に記載されている技術を用いて放射性同位体で標識することができ、放射能は、シンチレーションカウンティングを用いて測定することができる。
(b)蛍光標識、例えば、希土類キレート(ユーロピウムキレート)又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、リサミン、フィコエリスリン、並びにテキサスレッドが利用可能である。蛍光標識は、例えば、「免疫学最新プロトコル(Current Protocols in Immunology)」(前掲)に開示されている技術を用いて、抗体にコンジュゲートすることができる。蛍光は、蛍光光度計を用いて定量することができる。
(c)様々な酵素-基質標識が利用可能である。酵素は一般に、様々な技術を用いて測定することができる発色基質の化学的変化を触媒する。例えば、酵素は、基質の色の変化を触媒することができ、この変化は、分光光度法によって測定することができる。あるいは、酵素は、基質の蛍光又は化学発光を変化させることができる。蛍光の変化を定量するための技術は上に記載されている。化学発光基質は、化学反応によって電子的に励起されるようになり、その後 (例えば、化学発光計を用いて)測定可能な光を放出することができるか、又は蛍光受容体にエネルギーを供与することができる。酵素的標識の例は、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、0-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環オキシダーゼ(例えば、ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどを含む。酵素を抗体にコンジュゲートさせるための技術は、O'Sullivanらの文献,「酵素イムノアッセイにおける使用のための酵素-抗体コンジュゲートの調製方法(Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay)」,Methods in Enzym.(Langone & H. Van Vunakis編), Academic Press, New York, 73:147-166(1981)に記載されている。
【0082】
酵素-基質の組合せの例は、例えば、以下のものを含む:
(i)セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRPO)と、基質としての水素ペルオキシダーゼ、ここで、この水素ペルオキシダーゼは、色素前駆体(例えば、オルトフェニレンジアミン(OPD)又は3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する;
(ii)アルカリホスファターゼ(AP)と、発色基質としてのパラ-ニトロフェニルホスフェート;及び
(iii)β-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)と、発色基質 (例えば、p-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)又は蛍光基質4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼ。
【0083】
他の多くの酵素-基質の組合せが、当業者に利用可能である。
(d)検出抗体用の別の考えられる標識は、短いヌクレオチド配列である。その場合は、濃度をRT-PCRシステム(Imperacer(商標), Chimera Biotech)で決定する。
【0084】
標識は、抗体と間接的にコンジュゲートされている場合もある。当業者であれば、これを達成するための様々な技術を知っているであろう。例えば、抗体をビオチンとコンジュゲートさせることができ、上述の3つの幅広いカテゴリーの標識のいずれかをアビジンとコンジュゲートさせることができるし、又はその逆も可能である。ビオチンはアビジンと選択的に結合し、そのため、この間接的な方法で、標識を抗体とコンジュゲートさせることができる。あるいは、標識と抗体との間接的コンジュゲーションを達成するために、抗体を小さいハプテン(例えば、ジゴキシン)とコンジュゲートさせ、上述の異なるタイプの標識のうちの1つを抗ハプテン抗体(例えば、抗ジゴキシン抗体)とコンジュゲートさせる。このようにして、標識と抗体との間接的コンジュゲーションを達成することができる。
【0085】
本発明の抗体を、任意の既知のアッセイ方法、例えば、競合結合アッセイ、直接的及び間接的サンドイッチアッセイ、並びに免疫沈降アッセイで利用することができる。Zolaの文献,「モノクローナル抗体 技術マニュアル(Monoclonal Antibodies A Manual of Techniques)」, pp.147-158(CRC Press. Inc., 1987)。
【0086】
競合結合アッセイは、限定された量の抗体との結合を被験試料検体と競合する標識された標準の能力に依存する。被験試料中のAβペプチドの量は、抗体に結合するようになる標準の量に反比例する。結合するようになる標準の量を決定しやすくするために、抗体は、通常、競合の前後に不溶化され、その結果、抗体に結合している標準及び検体を、未結合のままの標準及び検体から好都合に分離することができる。
【0087】
ヒトにおけるAβ(1-40)濃度の解析のために、以下の全ての体液を用いることができる:血液、脳脊髄液(CSF)、尿、リンパ液、唾液、汗、胸水、滑液、房水、涙液、胆汁、膵分泌物。
【0088】
血液試料を用いて、本発明者らにより、新規の方法が確立された(本発明の実施例を参照されたい)。しかしながら、本方法は、血液試料に限定されるものとみなされるべきではない。本方法は、CSF、脳抽出物、及び尿試料、並びに他の全てのヒト体液、例えば、上で述べたものを同じように用いて、利用することもできる。特に好ましいのは、血漿試料である。
【0089】
免疫組織化学的解析のために、組織試料は、新鮮なものもしくは凍結されたものであってもよく、又はパラフィンに包埋され、例えば、ホルマリンなどの防腐剤を用いて固定されたものであってもよい。
【0090】
本発明の方法は、工程iv)において、定量手段としてのサンドイッチELISAに限定されない。本発明の方法は、免疫沈降工程後の、Aβ標的ペプチド、特に、Aβ(1-40)の定量のための任意の他の方法も包含する。例えば、Aβ(1-40)の定量のための好適な方法は、以下である:
【0091】
(1.アミロイドβ1-40 HTRF(登録商標)アッセイ(CisBio Bioassays)):
アッセイ原理はTR-FRETをベースにしている。これは、時間分解蛍光とフェルスター共鳴エネルギー転移を組み合わせたものである。通常のサンドイッチELISAと同様に、Aβ(1-40)は2つの抗体によって結合される。しかしながら、これらの抗体は、この場合は、表面に結合されず、相互作用は溶液中で生じる。両方の抗体は蛍光団で標識されている。これら2つの蛍光団が生体分子相互作用によって集合したとき、励起中に供与体蛍光団によって捕捉されたエネルギーの一部がFRETを介して受容体蛍光団に転移され、それが結果として励起される。この受容体蛍光団の蛍光が測定される。計測シグナルは、FRETの量、したがって、溶液中のAβ(1-40)に量と相関する。
【0092】
同様に、同等の原理に基づいて、Lilly社のAlphascreen(商標)アッセイを用いることができる。
【0093】
(2.マルチプレックスアッセイシステム)
マルチプレックスアッセイシステムはいくつかの製造業者から入手可能であり、かつ本分野において周知で、広く用いられている。本発明の方法における使用の好適な例は、INNO-BIA 血漿Aβ形態アッセイ(Innogenetics)である。このアッセイは、xMAP(登録商標)技術(xMAPはLuminex社の登録商標である)を用いる、血漿中のヒトβ-アミロイド形態Aβ(1-42)及びAβ(1-40)又はAβ(X-42)及びAβ(X-40)の同時定量のための多重パラメータビーズに基づく十分に標準化されたイムノアッセイである。
【0094】
このアッセイシステムは、最大100個の異なる検体を並行して定量することができる。この方法の基盤は、マイクロスフェア又はビーズと呼ばれる、小さな球状ポリスチロール粒子である。ELISA及びウェスタンブロットと同様に、これらのビーズは、生化学的検出のための固相としての役割を果たす。これらのビーズは色分けされており、そのため、100個の異なるビーズ種類を区別することができる。各ビーズ種類は、マイクロスフェア表面に固定された(例えば、Aβ(1-40)に対する)1つの特異的な抗体を有する。Aβ(1-40)濃度が増加する場合は、より多くのペプチド分子がこの種類のビーズによって結合される。検体の結合の検出は、緑色の光を発する別の蛍光色素で標識された第2の抗Aβ(1-40)抗体によって行なわれる。試料は、FACS解析と同じように操作される。マイクロスフェアは、流体力学的絞り込みによって単数化され、レーザーに基づく検出システムによって解析される。これにより、緑色蛍光に基づく定量を行ない、結合した検体をビーズの特異的な着色によって同定することができる。このようにして、1つの試料中で複数の検体の濃度を決定することができる。
【0095】
(3.質量分析による定量)
- Aβ(1-40)の定量のために、SELDI-TOF質量分析も用いた (Simonsenらの文献, 2007(2))。
- 免疫沈降及びMALDI-TOF質量分析を用いたAβペプチドの定量的解析。15N標識標準Aβペプチドを較正に用いる。(Gelfanovaらの文献, 2007)。
【0096】
(4. ウェスタンブロット解析)
ウェスタンブロット解析を伴う2D-ゲル電気泳動法は、Aβペプチドを定量するための好適な方法であり得る(Sergeantらの文献, 2003; Casasらの文献, 2004)。
【0097】
診断キット
便宜上、本発明の抗体を、キット、すなわち、所定の量の試薬と診断アッセイを実施するための指示書とを包装して組み合わせたものとして提供することができる。抗体が酵素で標識されている場合、キットは、その酵素が必要とする基質及び補因子 (例えば、検出可能な発色団又は蛍光団を提供する基質前駆体)を含む。さらに、他の添加剤、例えば、安定化剤、バッファー(例えば、ブロックバッファー又は溶解バッファー)などが含まれていてもよい。アッセイの感度を実質的に最適化する試薬の溶液中濃度を提供するために、様々な試薬の相対量を幅広く変化させることができる。特に、試薬は、溶解時に適切な濃度を有する試薬溶液を提供する賦形剤を含む、通常凍結乾燥された乾燥粉末として提供することができる。
【0098】
本発明の診断キットは、アミロイド関連の疾患及び状態、好ましくはアルツハイマー病の検出及び診断に特に有用である。
【0099】
使用
本発明の方法は、Aβペプチド、特に、Aβ(1-40)、又はその機能的等価物を信頼できる形で検出し、定量することを初めて可能にする。特に、本発明は、特に、疾患の初期段階でのアルツハイマー病の鑑別診断に好適な血漿バイオマーカーとしてのAβ(1-40)を提供する。
【0100】
それゆえ、一実施態様では、本発明は、特に、疾患の初期段階でのアルツハイマー病の診断、好ましくは、アルツハイマー病の鑑別診断のための、Aβ標的ペプチドの検出方法の使用に関する。アルツハイマー病の初期段階は軽度認知障害であることが好ましい。
【0101】
さらなる実施態様では、本発明は、特に、疾患の初期段階でのアルツハイマー病の診断、好ましくは、アルツハイマー病の鑑別診断のための、Aβ標的ペプチドの使用に関する。アルツハイマー病の初期段階は軽度認知障害であることが好ましい。
【0102】
特に、アルツハイマー病の診断に用いるAβ標的ペプチドは、本発明による方法を用いて検出され、定量されることが好ましい。
【0103】
好ましい実施態様では、Aβ標的ペプチドは、Aβ(1-40)又はその機能的等価物である。
【0104】
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、これは、いかなる点においても決して本発明を限定するものとみなされるべきではなく、本発明は、本明細書とともに添付される特許請求の範囲によってのみ、その範囲が定義される。
【実施例】
【0105】
(本発明の実施例)
(1.材料及び方法)
(1.1 患者及び健康対照)
ADの臨床診断を有する患者及び健康対照を採用した。研究前の検査で、研究の参加者全員の神経心理学的機能をいくつかの心理テスト(DemTect、ミニメンタルステートテスト、時計描画テスト)で試験した。
【0106】
DemTectテスト
DemTectスケールは、5つの短い下位テスト(10単語のリストの反復、数字の変換、意味的単語の流暢性課題、逆方向数唱、単語リストの遅延再生)を含む認知症についての簡易スクリーニングテストである(Kesslerらの文献, 2000)。素点を変換して年齢及び教育に依存しない得点を出し、「認知症が疑われる」(8点以下)、「軽度認知障害」(9〜12点)、及び「年齢相応」(13〜18点)に分類する。
【0107】
MMSE
ミニメンタルステート検査(MMSE)又はFolsteinテストは、認知を評価するために用いられる30点の簡易アンケートテストである。それは、認知症についてスクリーニングするために医療で一般に用いられる。約10分間で、それは、計算力、記憶、及び見当識を含む様々な機能を試験する。それは、Folsteinらの文献, 1975によって導入され、少し修正されて広く用いられている。
【0108】
MMSEは、いくつかの領域の簡単な質問及び問題を含む:試験の時間及び場所、単語リストの反復、計算力、言語使用及び理解、並びに基本的な運動能力。例えば、ある質問では、2つの5角形の図を書き写すことが求められる(表1参照)。(30点中)27点以上の得点はいずれも事実上正常である。これ未満では、20〜26点は軽度の認知症を示し、10〜19点は中等度の認知症を示し、10点未満は重度の認知症を示す。正常値も教育の程度及び年齢について補正される。低い得点から極めて低い得点は、認知症の存在と密接に相関するが、他の精神障害もMMST検査での異常所見をもたらすことがある。
【0109】
時計描画テスト
時計の採点は、Shulmannらの文献, 1986が用いた尺度の変法をベースにした。円は全て予め描かれており、対象に対する指示は、「11時10分を正しい位置に配置する」ことであった。採点システム(表2参照)の範囲は1点〜6点であり、より高い得点は、より多くの間違いとより多くの障害を反映する。この採点システムは、経験的に導かれ、臨床診療に基づいて修正される。必然的に、このシステムには個々の判断に任される余地がかなり残されるが、高水準の評価者間の信頼度を有するのに十分な簡易さがある。本発明者らの研究は、3つの主要な要素の分析に役立つ。これらは、時計描画テストと認知機能の他の評価基準との横断的比較;時計描画テストの経時的な長期的記載、及び時計描画テストの悪化と施設への収容決定との関係性を含む。
【0110】
【表1】

【0111】
【表2】

【0112】
(1.2 血液試料)
(1.2.1 被験試料)
研究前の検査の後、研究を開始し、2週間後に参加者全員から採血した。
ADバイオマーカーの決定用の全血液試料を、それぞれ、以下の3本のポリプロピレンチューブに回収した:
1.EDTA血漿用のカリウム-EDTAを含むもの(Sarstedt Monovette, 02.1066.001)
2.ヘパリン血漿用のLi-ヘパリンを含むもの(Sartstedt Monovette, 02.1065.001)
3.血清用のブランク(Sarstedt Monovette, 02.1063.001)。
【0113】
静脈穿刺によるか、又は挿入された前腕静脈留置カニューレからの反復採血によって、全試料を回収した。(上の第1.1章に記載したような)選択された時間スケジュールに従って血液を回収した。それを1550g(3000rpm)にて4℃で10分間遠心分離して、血漿を得た。各々別々の試料の血漿又は血清をピペッティングして除去し、1本の5mlポリプロピレンクライオチューブ(Carl-Roth, E295.1)に充填し、80℃で凍結保存した。試料は採血後1時間以内に遠心分離した。
【0114】
(1.2.2 内部EDTA血漿標準対照(ITS)を確立するための試料)
静脈穿刺によるか、又は挿入された前腕静脈留置カニューレからEDTA血漿用のカリウム-EDTA(Sarstedt Monovette, 02.1066.001)を含む5本のポリプロピレンチューブへの反復採血によって、十分に特徴付けられた対照者から血液試料(45ml)を採取した。5本全てのチューブを1550 g(3000 rpm)にて4℃で10分間遠心分離して、血漿を得た。血漿を2mlポリプロピレンチューブ(Eppendorf, 0030120.094)に移して、1mlのアリコートにした。この内部血漿標準のアリコートを-80℃で保存した。試料は採血後1時間以内に遠心分離した。対照血漿には「内部EDTA血漿標準対照」(ITS)とラベルした。他の体液(脳脊髄液、尿、リンパ液、唾液、汗、胸水、滑液、房水、涙液、胆汁、膵分泌物)を本発明の方法で用いる場合、これらの流体は、血漿試料について本明細書で示されたような、十分に特徴付けられた対照者から採取しなければならない。
【0115】
(1.3 実験室的方法)
(1.3.1 被験試料)
免疫沈降
(4mlの血漿を含む)EDTA血漿試料(ここで、本発明は、EDTA 血漿に限定されるものではなく、例えば、ヘパリン血漿、又は血清を用いることもできる)を融解し、2mlポリプロピレンチューブ(Eppendorf, 0030120.094)に1mlずつ分注した。1錠のプロテアーゼ阻害剤(Roche, コンプリートミニプロテアーゼ阻害剤カクテル, 11836153001)を1mlのD-PBS(Invitrogen, 14190-094)に溶解させた。25μlのプロテアーゼ阻害剤溶液を1mlのEDTA血漿に添加した。各試料の1本のチューブを除く、全てのアリコートを凍結させ、80℃で再び保存した。これらの残りの血漿試料のチューブに10μlの10% Tween-20を添加した(spiked)。各チューブに、2.5μgの抗アミロイドβ(17-24)抗体4G8(Millipore, MAB1561)、2.5μgの抗アミロイドβ(x-42)抗体12F4(Millipore, 05-831)、及び2.5μgの抗アミロイドβ(x-40)抗体11A5-B10(Millipore, 05-799)を添加した。
【0116】
全ての血漿チューブをオーバーヘッドシェーカーにて4℃で一晩インキュベートした。アミロイドβ-抗体複合体の固定のために、100μlの抗マウス磁気ビーズ(Invitrogen, 112-02D)を各1mlの血漿試料に用いた。磁気ビーズ上にコンジュゲートされたこれらの特殊な抗マウス抗体の代わりに、他の全ての抗マウス抗体又は抗宿主抗体(宿主:上に記載した一次抗体の起源)を用いることができる。これらの抗体は、様々なコンジュゲーション戦略によっていくつかのマトリックス(カラムマトリックス及びビーズマトリックス)上に固定することができ、非限定的な例は、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用、トシル活性化表面、エポキシ活性化表面、アミン表面、又はカルボキシル表面である。使用前に、100μlのビーズをもとのボトルから2mlチューブに移し、1mlのPBSで3回洗浄した。洗浄後、ビーズを200μlのPBSに再懸濁した。血漿チューブを2000× gで短く(30秒)遠心分離した。上清を抗マウス磁気ビーズを含むチューブに移した。チューブをオーバーヘッドシェーカーにて4℃で一晩インキュベートした。
【0117】
-翌日、チューブを磁気分離装置内に置き、ビーズをチューブ壁に引き付けさせた。約1分後、上清を慎重に除去し、ビーズを10mg/mlのサイクロフィリン18及び0.05%のTween-20を含む500μlのD-PBSで2回洗浄した。
【0118】
捕捉されたアミロイドβの溶出
最後の洗浄工程の後、溶液を完全に取り除き、チューブを磁気分離装置から取り外し、100μlの50%(v/v)メタノール/0.5%(v/v)ギ酸を各チューブに添加し、軽く振ってビーズを再懸濁した。全てのチューブを室温で1時間インキュベートした。その後、チューブを再び磁気分離装置内に置き、各チューブからの40μlを440μlのEIA緩衝液(IBL 1-40(N)ELISAキットの希釈緩衝液)と混合した。希釈した試料のpHを、16μlの400mM Na2HPO4、400mM KH2PO4 pH 8.0を用いて、EIA緩衝液のpHに合わせた。
【0119】
溶出したアミロイドβペプチドの定量
ペプチド濃度の測定は、IBL 1-40(N)ELISAキット(IBL, JP27714)を用いて実施した。
上記のAβ(1-40)ELISAの代わりに、全長Aβ1-40を検出することができる他の全ての市販ELISAキットを用いることができる。
【0120】
希釈した試料をELISAプレートに適用した(ウェル当たり100μl、反復測定)。ELISA標準をキットから取り出し、製造元の指示プロトコルに従って溶解させ、希釈した。全ての試料及び濃度標準の適用後、ELISAプレートを4℃で18時間インキュベートした。翌日、ELISAを製造元の指示プロトコルに従って発色させた。
【0121】
比色反応を停止させた後、各ウェル中の吸光度をプレートリーダー(TECAN Sunrise)を用いて450nmで測定し、550nmの吸光度で補正した。
【0122】
補正された450nmでの吸光度を、対応する標準ペプチド濃度に対してプロットすることによって、標準曲線の決定を行なった。この曲線を、Origin 7.0(Microcal)を用いて、4-パラメータ方程式(方程式1)を用いて、フィッティングした。
【数1】

yは測定された吸光度を、xは対応する濃度を、A1は下方漸近線を、A2は上方漸近線を表す。
【0123】
各試料のELISAに対するAβ(1-40)濃度の計算は、方程式2を用いて、応分吸光度値に基づいて行なわれた。
【数2】

【0124】
血漿試料中の濃度を決定するために、算出した濃度を、12.4倍のEIA緩衝液希釈(pH調整を含む)、及び免疫沈降の(1mlから100μlへの)0.1倍の濃度効果によって補正した。決定された血漿Aβ(1-40)濃度をpg/mlで表した。
【0125】
統計解析
Aβ(1-40)の血漿濃度とアルツハイマー病の陽性の臨床診断の存在との相関を、スチューデントのt-検定を用いて検討した。
【0126】
1.3.2 内部EDTA血漿標準-対照(ITS)試料
免疫沈降
ITS試料の免疫沈降は、通常、上記の被験試料に用いたのと同じ方法に従って実施した。
【0127】
(1mlのEDTA血漿を含む)ITS試料(ヘパリン血漿、血清も可能)及び被験試料を同時に解凍した。1錠のプロテアーゼ阻害剤(Roche, コンプリートミニプロテアーゼ阻害剤カクテル, 11836153001)を1mlのD-PBS(Invitrogen, 14190-094)に溶解させた。25μlのプロテアーゼ阻害剤溶液を1mlのITS試料に添加した。被験試料の方法及び取扱いに準じて、ITS血漿試料に10%のTween-20、2.5μgの抗アミロイドβ(17-24)抗体4G8(Millipore, MAB1561)、2.5μgの抗アミロイドβ(x-42)抗体12F4(Millipore, 05-831)、及び2.5μgの抗アミロイドβ(x-40)抗体11A5-B10(Millipore, 05-799)10μlを添加した。
【0128】
以下の全ての工程を上記の被験試料に用いたのと同じ方法に従って実施した。
【0129】
捕捉されたアミロイドβの溶出
ITS試料を上記の被験試料に用いたのと同じ方法に従って処理した。
【0130】
溶出されたアミロイドβペプチドの定量
ITS試料中の溶出されたアミロイドβペプチドの定量を上記の被験試料に用いたのと同じ方法に従って実施した。
【0131】
統計解析
1回の測定で、ITS試料及び試験血漿試料のAβ(1-40)濃度を1枚のELISAプレート上で一緒に決定した。その後、被験試料の決定された血漿Aβ(1-40)濃度を、方程式3に従って、ITS試料の決定された濃度に対して正規化した。:
【数3】

【0132】
(2.結果)
(2.1 人口統計学的特徴)
全体で、30名の健康対照及び15名のAD患者(AD患者を以下「患者」と表記する)の、45名の人が本研究に参加した。血漿Aβに対する年齢の影響の可能性を観察するために、対照の人を幅広い年齢にわたって選択し、3つの群に亜分類した。第I群は、18〜30歳の対象を含み、第II群は、31〜45歳の対象を含み、第III群は、46〜65歳の対象を含む。人口統計学的特徴を表3に示す。
【0133】
【表3】

【0134】
(2.2 心理テスト)
神経心理学的機能の評価のために、参加者全員が、上に記載したようなDemTect、ミニメンタルステートテスト、及び時計描画テストを実施した。これらのテストは、研究前、並びに研究の開始から3カ月後、6カ月後、9カ月後、及び12カ月後に行なわれた。
【0135】
DemTectテスト
素点を変換して年齢及び教育に依存しない得点を出し、「認知症が疑われる」(8点以下)、「軽度認知障害」(9〜12点)、及び「年齢相応」(13〜18点)に分類する。全往診についてのテスト結果を図2に示す。
【0136】
患者と比較すると健康対象の3つの群との間に明確な違いがある。特に、AD患者の平均得点は健康対照の平均得点の半分未満であることが分かる。患者の平均は経時的に変化しなかったため、図2では1度しか示していない。
【0137】
ミニメンタルステートテスト
MMSテストでは、(30点中)27点以上の得点はいずれも事実上正常である。これ未満では、20〜26点は軽度の認知症を示し、10〜19点は中等度の認知症を示し、10点未満は重度の認知症を示す。正常値も教育の程度及び年齢について補正される。低い得点から極めて低い得点は、認知症の存在と密接に相関するが、他の精神障害もMMST検査での異常所見をもたらすことがある。テスト結果を図3に示す。同じ健康対照及びAD患者がこのテストに参加した。
【0138】
患者と比較すると健康対象の3つの群との間に明確な違いがある。これを、図2と同様に図3に示す。
【0139】
時計描画テスト
時計描画テストの採点システムの範囲は1点〜6点であり、より高い得点は、より多くの間違いとより多くの障害を反映する。この採点システムは、経験的に導かれ、臨床診療に基づいて修正される。必然的に、このシステムには個々の判断に任される余地がかなり残されるが、高水準の評価者間の信頼度を有するのに十分な簡易さがある。この場合にも、上記の2つのテストの場合と同じ健康対照及びAD患者の群が参加した。
【0140】
本研究は、3つの主要な要素の分析に役立つ。これらは、時計描画テストと認知機能の他の評価基準との横断的比較;時計描画テストの経時的な長期的記載、及び時計描画テストの悪化と施設への収容決定との関係性を含む。
テスト結果を図4に示す。
患者と比較すると健康対象の3つの群との間に明確な違いがある。結果を、図2及び3と同様の様式で図4に示す。
【0141】
(2.3 正規化していない血漿Aβ(1-40)濃度)
Aβ(1-40)濃度を、上に記載したように、T0 + 9カ月シリーズのEDTA血漿中で決定した。T0 + 9シリーズのさらなる試料を用いて、新しい免疫沈降法を最適化し、確立した。全体では、最適化された最終的な方法を10個のAD試料及び26個の対照試料を用いて試験した。決定された血漿Aβ(1-40)濃度を表4に示す。
【0142】
【表4】

【0143】
全ての対照群について、健康ボランティアとAD群の間で有意差が得られた。1つの群の中で個々の濃度をさらによく再検討してみると、2人の対象が目を引いた。AD対象Nr. 22は、健康対照に典型的なAβ(1-40)濃度を示している。この濃度は、AD群に当てはまらない。研究前の心理テスト(下記の図2〜4及び表4参照)の個々の結果を比較した場合、対象No. 22は、AD群に分類された、解析された参加者全員のうち群を抜く最高得点を有することが明らかになった。DemTect得点は、「年齢相応」の範囲であり、MMSE得点は、MCI対象の範囲の上限である。対照的に、対照対象No. 23は、AD群に典型的なAβ(1-40)濃度を示している。研究前の心理テスト(下記の図2〜4及び表5参照)により、No. 23は、対照群に分類された、解析された参加者全員のうち群を抜く最低得点を有することが示されている。血漿Aβ(1-40)レベルの増加がアルツハイマー病の発症の最初の兆候であることが明白である。
【0144】
【表5】

【0145】
心理テスト及び血漿解析の結果に基づくと、AD対象No. 22が正しく分類されていると考えることはできない。対照対象No. 23の場合、アルツハイマー病の初期段階の可能性が考えられる。したがって、これら2つの対象を含めて又は除外して、データを統計的に解析した(下記の表6)。
【0146】
【表6】

【0147】
好ましくはさらなる症状がまだ利用できない段階での、早期臨床診断を可能にするためには、使用しようとするバイオマーカーが、アルツハイマーの初期段階、例えば、軽度認知障害(MCI)の間に、既に変化していることが重要である。これは、個人の寿命を延ばし、生活の質を高めるために早期発症型治療が必要とされる場合には、特に重要である。
【0148】
Aβ(1-40)レベルがAD の早期発症マーカーとして適しているかどうかを決定するために、Aβ(1-40)の血漿濃度とDemTect及びMMSE得点との関連(図5)をさらなる実験で評価した。
【0149】
本発明者らの上記の研究の結果から予想されるように、最も低いAβ(1-40)濃度は、それぞれ、高いDemTect及びMMSE得点に対応する対照対象に認められた。最も高い濃度は、軽度認知障害であると分類された人に認められた。中程度又は重度の認知症を示す、さらなる得点の低下は、事実上正常とMCIの間に位置する血漿Aβ(1-40)レベルの減少も示している。この結果は、有意に増加した血漿Aβ(1-40)のレベルが、アルツハイマーの初期段階の発症の最初の早期マーカーであることを示している。アルツハイマーの初期段階の時点では、認知機能の低下は全く認められないか、又はわずかな認知機能の低下しか認められない。
【0150】
(2.4 ITS試料の包含後に正規化された血漿Aβ(1-40)濃度)
EDTA血漿試料の第2シリーズの測定(T0 + 6カ月)で相対的なAβ(1-40)濃度の比較を行なった。最初の工程で、対照対象及びAD患者由来の被験試料を1枚のELISAプレート上で一緒に解析した。決定された血漿Aβ(1-40)レベルを、この測定サイクルで解析される対照対象由来の全試料の平均値に対して正規化した。Aβレベルの正規化を方程式4に従って行なった:
【数4】

【0151】
全体で、10個の対照及び10個のAD試料を2つの異なる測定サイクルで解析した。相対的なAβ(1-40)濃度を表7に示す。
【0152】
【表7】

【0153】
表7に示すように、測定サイクル毎の内部標準の使用は信頼度を改善し、異なる測定サイクルで決定されたAβペプチドレベルの値間の良好な比較を可能にする。しかしながら、盲検試験では、AD試料と対照試料を識別することができない。したがって、測定サイクル毎に同時に解析される内部血漿標準(ITS)の使用は、異なる測定サイクルからのAβペプチド値を比較する唯一の方法である。
【0154】
したがって、T0 + 6カ月試料の血漿Aβ(1-40)レベルをITSの存在下で解析した。全ての値をITSのAβ(1-40)濃度に対して正規化した。結果を図6に示す。図6に示すように、相対的なAβ(1-40)レベルの平均値は、解析された全てのAD試料については1.31、解析された全ての健康対照対象由来試料については0.94 である。これらの値と表7の平均値との比較により、健康対照と比較したAD患者における約32%の血漿Aβ(1-40)レベルの増加に関して極めて良好な一貫性が示される。これらのデータは、測定サイクル毎に未知の血漿試料と一緒に解析される内部血漿標準の使用が、異なる測定サイクルで決定された決定Aβ(1-40)レベルの信頼性及び比較可能性を高めることを示している。
【0155】
(3.考察)
本発明者らは、Aβ(1-40)の高い血漿濃度がアルツハイマー病の陽性臨床診断と関連することを示すことができた。以前の研究(van Oijenらの文献, 2006; Mayeuxらの文献, 2003; Mehtaらの文献, 2000)で、この相関を示そうと試みられたが、統計的有意性に説得力がなかった。これは、統計的に有意な相関を確立することができず、好適な決定法がないことも考慮されて、Aβ(1-40)がADのマーカーとして適さないという考えにつながった。本研究では、Aβ(1-40)濃度を二重抗体決定法で直接決定した。Rotterdamの研究(van Oijenらの文献, 2006)では、全試料の平均濃度値は192.0pg/mlであった。Mayeux及び共同研究者らは、ベースライン時のADで153.6pg/ml、及び非認知症高齢者で133.3pg/mlを見出し、Mehta及び共同研究者らは、孤発性ADを有する患者及び健康対照で、それぞれ、272pg/ml及び219pg/mlを得た。本研究では、本発明者らは、それぞれ、385pg/ml(AD患者)及び304pg/ml(健康対照)の平均血漿 Aβ(1-40)濃度を得た。検出された血漿Aβ(1-40)の増加は、新規の二価捕捉システムを使用した結果である。このシステムに関して上で詳細に説明したように、Aβペプチド1分子は、2つの異なるエピトープを認識する2つの抗体分子によって結合される。第1の(捕捉)抗体は、Aβ(1-40)のアミノ酸17-24と相互作用する。第2の捕捉抗体はAβ(1-40)のC-末端に結合する。好ましい実施態様では、両方の抗体を1種の抗マウス抗体によって磁気ビーズ上に固定した。この仮説に束縛されることを望むものではないが、ヒト血漿中で2つの捕捉抗体とAβペプチドとの協調的結合を達成することができると考えられる。この結合は、特に強力でかつ特異的であることが証明されているが、これにより、所与の試料、例えば、血漿に由来する全てのAβ(1-40)ペプチド分子が捕捉され、ELISAによる定量を妨げる他の血漿タンパク質の除去がさらに保証される。AD患者と対照の間の有意差は、所与の試料のAβ(1-40)ペプチド分子を定量的に検出することができる本研究によって明らかになった。
【0156】
アルツハイマー病の予測のための従来の方法では、Aβ(1-42)レベルをCSF又は血漿中で決定することが好ましい。脳におけるAβペプチドの凝集が亢進するため、このレベルはAD患者では減少する。驚くべきことに、Aβ(1-40)濃度は、それとは対照的に、増加する。Kim及び共同研究者らは、インビボでのAβ(1-40)の強い抗アミロイド原性効果を見出した(Kimらの文献, 2007)。彼らは、Tg2576又はBRI-Aβ42Aマウスの脳における増加するAβ(1-40)レベルがアミロイド病理を防御することを示すことができた。さらに、この効果の大きさは全く予想外であった:BRI-Aβ40/Tg2576マウスの前脳におけるAβ(1-40)レベルの約2倍の増加は、Tg2576同腹子におけるAβ沈着と比較して、11カ月での約80%低下から20カ月での約50%低下までのAβ沈着に対する生涯にわたる抑制効果を有していた。他のいくつかの研究により、この結果が裏付けられている(Dengらの文献, 2006; Muckeらの文献, 2000, McGowanらの文献, 2005)。AD患者の血漿又はCSF中のAβ(1-40)レベルの増加は、この意図しない反応を抑制するためのAβペプチドの凝集傾向の亢進の結果としての、脳における産生の増加によって引き起こされると考えられる。
【0157】
本明細書で示した血漿Aβ(1-40)濃度と神経心理テストとの相関は、本発明の新しい方法の適用によってのみ可能となったが、これは、Aβ(1-40)レベルの有意な増加が、アルツハイマー病の進行の初期事象であることを示している。その結果、現在、血漿Aβ(1-40)のレベルをアルツハイマー病の発症の診断用のマーカーとして用いることができる。
【0158】
本明細書で示したような、測定サイクル毎に未知血漿試料と一緒に解析される内部血漿標準(ITS)の使用は、異なる測定サイクルで決定された決定Aβ(1-40)レベルの信頼性及び比較可能性をさらに高めた。
【0159】
参考文献
【化3】















【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的試料中のAβ標的ペプチドの検出のための方法であって、以下の工程:
i)生物学的試料を少なくとも2つの異なる捕捉抗体と接触させること、
ii)得られる免疫複合体の検出、
iii)前記免疫複合体の破壊、及び
iv)捕捉されたAβペプチドを定量すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記方法が内部標準試料の存在下で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記内部標準試料が、血漿試料、脳脊髄液試料、尿試料、リンパ液試料、唾液試料、汗試料、胸水試料、滑液試料、房水試料、涙液試料、胆汁試料、膵分泌物試料から選択される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記内部標準試料が内部標準血漿試料(ITS)である、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、さらなる工程として、生物学的試料の前記Aβ標的ペプチド濃度、例えば、Aβ(1-40)又はAβ(1-42)濃度を、前記内部標準試料中で決定されたそれぞれのAβ標的ペプチドの濃度に対して正規化し、各々の生物学的試料の相対的なAβ標的ペプチドレベルを生じさせることを含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記Aβ標的ペプチドが、その機能的等価物を含むAβ(1-40)である、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
前記Aβ標的ペプチドが、その機能的等価物を含む配列番号:1のAβ(1-40)である、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記Aβ標的ペプチドが、その機能的等価物を含むAβ(1-42)である、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記Aβ標的ペプチドが、その機能的等価物を含む配列番号:2のAβ(1-42)である、請求項1〜5又は8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記生物学的試料が、血液、血清、尿、脳脊髄液(CSF)、血漿、リンパ液、唾液、汗、胸水、滑液、涙液、胆汁、及び膵分泌物からなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記生物学的試料が血漿である、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも2つの異なる捕捉抗体が各々、前記Aβ標的ペプチド上の異なるエピトープに特異的である、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
前記捕捉抗体が、
3D6、エピトープ:1-5、
pAb-EL16、エピトープ:1-7、
2H4、エピトープ:1-8、
1E11、エピトープ:1-8、
20.1、エピトープ:1-10、
ウサギ抗Aβポリクローナル抗体、エピトープ:1-14(Abcam)、
AB10、エピトープ:1-16、
82E1、エピトープ:1-16、
pAb1-42、エピトープ:1-11、
NAB228、エピトープ:1-11、
DE2、エピトープ:1-16、
DE2B4、エピトープ:1-17、
6E10、エピトープ:1-17、
10D5、エピトープ:3-7、
WO-2、エピトープ:4-10、
1A3、エピトープ5-9、
pAb-EL21、エピトープ5-11、
310-03、エピトープ5-16、
ニワトリ抗ヒトAβポリクローナル抗体、エピトープ12-28(Abcam)、
ニワトリ抗ヒトAβポリクローナル抗体、エピトープ25-35(Abcam)、
ウサギ抗ヒトAβポリクローナル抗体、エピトープ:N-末端(ABR)、
ウサギ抗ヒトAβポリクローナル抗体(Anaspec)、
12C3、エピトープ10-16、
16C9、エピトープ10-16、
19B8、エピトープ9-10、
pAb-EL26、エピトープ:11-26、
BAM90.1、エピトープ:13-28、
ウサギ抗β-アミロイド(汎)ポリクローナル抗体、エピトープ:15-30(MBL)、
22D12、エピトープ:18-21、
266、エピトープ:16-24、
pAb-EL17;エピトープ:15-24、
4G8、エピトープ:17-24、
ウサギ抗Aβポリクローナル抗体、エピトープ:22-35(Abcam)
G2-10;エピトープ:31-40、
ウサギ抗Aβ、aa 32-40ポリクローナル抗体(GenScript Corporation)、
EP1876Y、エピトープ:x-40、
G2-11、エピトープ:33-42、
16C11、エピトープ:33-42、
21F12、エピトープ:34-42、
1A10、エピトープ:35-40、及び
D-17ヤギ抗Aβ抗体、エピトープ:C-末端
からなる群から選択される、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記捕捉抗体が、3D6、BAN50、82E1、6E10、WO-2、266、BAM90.1、4G8、G2-10、1A10、BA27、11A5-B10、12F4、及び21F12からなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
以下の抗体ペア:
4G8及び11A5-B10、
3D6及び4G8、
6E10及び4G8、
82E1及び4G8、
4G8及び12F4、
4G8及び21F12、
3D6及び21F12、
6E10及び21F12、
BAN50及び4G8、
3D6及び11A5-B10、
3D6及び1A10、
3D6及びBA27、
6E10及び11A5-B10、
6E10及び1A10、
6E10及びBA27、
4G8及び11A5-B10、
4G8及び1A10、
4G8及びBA27、
4G8及び12F4、並びに
4G8及び21F12
が捕捉抗体として用いられる、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
前記複合体の検出が、各捕捉抗体と特異的に反応する二次抗体を用いることによって実施される、請求項1〜15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
前記二次抗体が、抗マウス抗体又は抗ウサギ抗体である、請求項1〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
前記二次抗体が標識されている、請求項16又は17記載の方法。
【請求項19】
前記二次抗体が磁気ビーズ上に固定されている、請求項1〜18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
前記免疫複合体を担持する前記磁気ビーズが、磁気分離装置を用いて前記生物学的試料から分離される、請求項1〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
前記免疫複合体の破壊が、50%(v/v)メタノール/0.5%(v/v)ギ酸の存在下で行なわれる、請求項1〜20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
前記検出された免疫複合体が定量される、請求項1〜21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
前記捕捉されたAβペプチドが、サンドイッチELISA、アミロイドβ1-40 HTRF(登録商標)アッセイ、Alphascreen(商標)アッセイ、マルチプレックスアッセイシステム、質量分析、及びウェスタンブロット解析からなる群から選択される定量手段によって定量される、請求項1〜22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
前記捕捉されたAβペプチドが、定量手段としてのサンドイッチELISAによって定量される、請求項1〜23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
前記サンドイッチELISAが、Aβ(1-40)の完全なN-末端に特異的である第1の抗体;及びAβ(1-40)のアミノ酸40で終わるC-末端に特異的である検出抗体を含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記サンドイッチELISAが、Aβ(1-42)の完全なN-末端に特異的である第1の抗体;及びAβ(1-42)のアミノ酸42で終わるC-末端に特異的である検出抗体を含む、請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記サンドイッチELISAが、Aβ(1-40)のC-末端に特異的である第1の抗体;及びAβ(1-40)のAsp-Ala-Gluで始まる完全なN-末端に特異的である検出抗体を含む、請求項24記載の方法。
【請求項28】
前記サンドイッチELISAが、Aβ(1-42)のC-末端に特異的である第1の抗体;及びAβ(1-42)のAsp-Ala-Gluで始まる完全なN-末端に特異的である検出抗体を含む、請求項24記載の方法。
【請求項29】
前記第1の抗体が固定されている、請求項25〜28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
前記検出抗体が標識されている、請求項25〜28のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
Aβ(1-40)の定量のためのELISAキットが用いられる、請求項24記載の方法。
【請求項32】
前記ELISAキットが、アミロイド-β(1-40)(N)ELISA(IBL, JP27714); Aβ[1-40]ヒトELISAキット(Invitrogen);ヒトアミロイドベータ(アミロイド-b)、aa 1-40 ELISAキット(Wako Chemicals USA, Inc.);及びアミロイドベータ1-40 ELISAキット(The Genetics Company)からなる群から選択される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
Aβ(1-42)の定量のためのELISAキットが用いられる、請求項24記載の方法。
【請求項34】
前記ELISAキットが、アミロイド-β(1-42)(N)ELISA(IBL, JP27712); Aβ[1-42]ヒトELISAキット(Invitrogen)、ヒトアミロイドベータ(アミロイド-β)、aa 1-42 ELISAキット(Wako Chemicals USA, Inc.)、アミロイドベータ1-40 ELISAキット(The Genetics Company)、INNOTEST(登録商標)β-アミロイド(1-42)(Innogenetics)からなる群から選択される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記生物学的試料のドナーである対象の神経変性疾患の状態が、1以上の心理テストで特徴付けられる、請求項1〜34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
前記心理テストが、DemTectテスト、ミニメンタルステートテスト(Mini-Mental-State Test)、時計描画テスト、ADAS-Cog、聖なるテスト(Blessed Test)、CANTAB、Cognistat、NPI、BEHAVE-AD、CERAD、CSDD、GDS、及び7分間スクリーニング(The 7 Minute Screen)から選択される、請求項1〜35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
アルツハイマー病の診断のための、請求項1〜36のいずれか一項記載のAβ標的ペプチドの検出のための方法の使用。
【請求項38】
アルツハイマー病の鑑別診断のための請求項37記載の使用。
【請求項39】
アルツハイマー病の初期段階の診断のための請求項37又は38記載の使用。
【請求項40】
軽度認知障害の診断のための請求項38又は39記載の使用。
【請求項41】
請求項1〜36のいずれか一項記載のAβ標的ペプチドの検出のための方法が用いられる、アルツハイマー病の診断のためのインビトロ法。
【請求項42】
アルツハイマー病の診断のためのAβ標的ペプチドの使用。
【請求項43】
アルツハイマー病の鑑別診断のための請求項42記載の使用。
【請求項44】
アルツハイマー病の初期段階の診断のための請求項40又は41記載の使用。
【請求項45】
軽度認知障害の診断のための請求項43又は44記載の使用。
【請求項46】
前記Aβ標的ペプチドが、その機能的等価物を含むAβ(1-40)である、請求項37〜45のいずれか一項記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−505438(P2013−505438A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529278(P2012−529278)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063664
【国際公開番号】WO2011/033046
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(505403119)プロビオドルグ エージー (39)
【Fターム(参考)】