説明

アリルエーテル化合物の製造法

【課題】 入手容易な原料から温和な条件で効率よくアリルエーテル化合物を製造する方法を提供する。
【解決手段】 下記式(i)
【化1】


[式中、Xは酸素原子又は−OR基(Rは水素原子又はヒドロキシル基の保護基を示す)を示す。2つの炭素原子から左方に伸びる線はそれぞれ結合手を示す]
で表される骨格を環の構成要素として含む窒素原子含有環状化合物の存在下、酸素と反応させて、該アリル位に酸素原子が結合した対応するアリルエーテル化合物を得ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアリルエーテル化合物の製造法に関し、より詳しくはアリル位に水素原子を有する不飽和化合物と該化合物の分子内に存在するヒドロキシル基部位又は分子外のヒドロキシ化合物とを酸素の存在下で反応させて対応するアリルエーテル化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アリルエーテル化合物は汎用の有機化学品として用いられるほか、香料、医薬品、農薬等の精密化学品やその中間体などとして有用である。アリルエーテル化合物の製造法として、ハロゲン化アリルとアルコール、又はアリルアルコールとハロゲン化アルキルとを強塩基の存在下で反応させる方法が知られている。しかし、この方法は、原料又は生成物が塩基に弱い化合物の場合には目的物を収率良くで得ることができない。また、構造が比較的複雑なアリルエーテルを得る場合には、その原料が入手困難なことが多い。
【0003】
アリルエーテル化合物の他の製造法として、酸触媒の存在下、ジエン化合物にアルコールを付加させる方法が知られている。例えば、ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(J.O.C)、第47巻、1982年、第47頁には、希硫酸を用いて、分子内に共役二重結合とヒドロキシル基を有するデヒドロシトロネロールを分子内環化して4−メチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)テトラヒドロ−2H−ピラン(ローズオキサイド)を製造する方法が記載されている。しかし、この方法は、原料又は生成物が酸に弱い化合物の場合には目的物を高い収率で得ることができない。また、原料となるジエン化合物の合成に多段階の反応を要する場合が多い。
【0004】
【非特許文献1】ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(J.O.C)、第47巻、1982年、第47頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、入手容易な原料から温和な条件下で効率よくアリルエーテル化合物を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、アリル位に水素原子を有し且つ分子内にヒドロキシル基を有する不飽和化合物、又はアリル位に水素原子を有する不飽和化合物と分子内にヒドロキシル基を有する化合物を、特定の触媒の存在下、酸素と反応させると、該アリル位に酸素原子が結合した対応するアリルエーテル化合物が収率良く得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、アリル位に水素原子を有し且つ分子内にヒドロキシル基を有する不飽和化合物、又はアリル位に水素原子を有する不飽和化合物と分子内にヒドロキシル基を有する化合物を、下記式(i)
【化1】

[式中、Xは酸素原子又は−OR基(Rは水素原子又はヒドロキシル基の保護基を示す)を示す。2つの炭素原子から左方に伸びる線はそれぞれ結合手を示す]
で表される骨格を環の構成要素として含む窒素原子含有環状化合物の存在下、酸素と反応させて、該アリル位に酸素原子が結合した対応するアリルエーテル化合物を得ることを特徴とするアリルエーテル化合物の製造法を提供する。
【0008】
なお、本明細書において、「アリル位」にはいわゆるベンジル位(芳香環のα位)も含まれるものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、入手容易な化合物から温和な条件下で効率よくアリルエーテル化合物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明では、原料として、(a)アリル位に水素原子を有し且つ分子内にヒドロキシル基を有する不飽和化合物を用いるか、又は(b)アリル位に水素原子を有する不飽和化合物と分子内にヒドロキシル基を有する化合物を用いる。
【0011】
前記アリル位に水素原子を有し且つ分子内にヒドロキシル基を有する不飽和化合物には、下記式(1a)
【化2】

(式中、A1は2価の有機基を示し、R1、R2、R3、R4は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を示す。R2、R3、R4は、2以上が結合して、隣接する炭素原子又は炭素−炭素二重結合とともに環を形成していてもよい)
で表される化合物が含まれる。
【0012】
1における2価の有機基としては、例えば、2価の炭化水素基又は2価の複素環式基を含む2価の基が挙げられる。2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタンメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン、ドデカメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基(C1-12アルキレン基など);1,2−シクロペンチレン、1,3−シクロペンチレン、1,2−シクロヘキシレン、1,3−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレン基などのシクロアルキレン基(3〜12員のシクロアルキレン基など);シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン基などのシクロアルキリデン基(3〜12員のシクロアルキリデン基など);1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン基などのアリレン基(C6-20アリレン基など);これらが2以上結合した基などが挙げられる。
【0013】
2価の炭化水素基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子)、オキソ基、保護基で保護されたヒドロキシル基(アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基等を含む)、保護基で保護されたメルカプト基(アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アシルチオ基等を含む)、保護基で保護されたアミノ基(モノ又はジアルキル置換アミノ基、アシルアミノ基等を含む)、保護基で保護されたカルボキシル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基等の置換オキシカルボニル基;カルバモイル基、モノ又はジアルキルカルバモイル基等のアミド基を含む)、ニトロ基、アシル基、シアノ基、アルキル基(例えば、メチル、エチル基などのC1-4アルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)、複素環式基などが挙げられる。前記保護基としては、有機合成の分野で慣用の保護基を使用できる。
【0014】
2価の複素環式基に対応する複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、フラン、テトラヒドロフラン、オキサゾール、イソオキサゾールなどの5員環、4−オキソ−4H−ピラン、テトラヒドロピラン、モルホリンなどの6員環、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメン、クロマン、イソクロマンなどの縮合環など)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾールなどの5員環、4−オキソ−4H−チオピランなどの6員環、ベンゾチオフェンなどの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾールなどの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジンなどの6員環、インドール、インドリン、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリンなどの縮合環など)などが挙げられる。2価の複素環式基は、置換基(例えば、前記2価の炭化水素基が有していてもよい置換基と同様の基)を有していてもよい。
【0015】
2価の有機基は2価の炭化水素基と2価の複素環式基の両方を含んでいてもよい。また、2価の有機基は、2価の炭化水素基及び/又は2価の複素環式基に加えて、酸素原子(エーテル結合)、硫黄原子(チオエーテル結合)、−NH−(アルキル基等の置換基を有していてもよい)、カルボニル基、チオカルボニル基、これらが2以上結合した基などを含んでいてもよい。
【0016】
1における2価の有機基としては、直鎖状又は分岐鎖状のC1-10アルキレン基が好ましく、特に、直鎖状又は分岐鎖状のC3-7アルキレン基が好ましい。
【0017】
1、R2、R3、R4における有機基としては、例えば、炭化水素基、複素環式基、保護基で保護されたヒドロキシル基(アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基等を含む)、保護基で保護されたメルカプト基(アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アシルチオ基等を含む)、保護基で保護されたアミノ基(モノ又はジアルキル置換アミノ基、アシルアミノ基等を含む)、保護基で保護されたカルボキシル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基等の置換オキシカルボニル基;カルバモイル基、モノ又はジアルキルカルバモイル基等のアミド基を含む)、アシル基(C1-10アシル基等)、シアノ基、これらが2以上結合した基などが挙げられる。前記保護基としては、有機合成の分野で慣用の保護基を使用できる。
【0018】
前記炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基などが含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、アリル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜6)程度の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基)が挙げられる。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロオクチル基などの炭素数3〜15(好ましくは炭素数3〜8)程度の脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基、橋架け炭素環式基等)が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜14程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。これらの炭化水素基は、種々の置換基、例えば、前記2価の炭化水素基が有していてもよい置換基と同様の置換基を有していてもよい。
【0019】
前記有機基の例としての複素環式基を構成する複素環には、前記2価の複素環式基に対応する複素環として例示したものが含まれる。
【0020】
2、R3、R4のうち2以上が結合して、隣接する炭素原子又は炭素−炭素二重結合とともに形成する環としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロオクタン、シクロデカン、シクロドデカン環、デカリン環、アダマンタン環などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜15員、特に5〜8員)程度の非芳香族性炭素環又は非芳香族性複素環(シクロアルカン環、シクロアルケン環、橋架け炭素環など);ベンゼン環などの芳香族性炭素環又は芳香族性複素環などが挙げられる。これらの環は、置換基(例えば、前記2価の炭化水素基が有していてもよい置換基と同様の基)を有していてもよく、また他の環(非芳香族性環又は芳香族性環)が縮合していてもよい。
【0021】
好ましいR1、R2、R3、R4には、水素原子、C1-10脂肪族炭化水素基(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル基など;特にC1-6アルキル基)、脂環式炭化水素基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル基などのC3-15シクロアルキル基又はシクロアルケニル基等)、C6-14アリール基、複素環式基、これらが2以上結合した基などが含まれる。また、R2、R3、R4のうち2以上が結合して、隣接する炭素原子又は炭素−炭素二重結合とともに3〜15員(特に5〜8員)程度の非芳香族性環又は芳香族性環を形成するのも好ましい。
【0022】
式(1a)で表される化合物の代表的な例として、5−ヘプテン−1−オール、6−オクテン−1−オール、3−メチル−6−オクテン−1−オール、3,7−ジメチル−6−オクテン−1−オール、5−フェニル−1−ペンタノール;これらに種々の置換基が結合した化合物などが挙げられる。
【0023】
前記アリル位に水素原子を有する不飽和化合物には、下記式(1b)
【化3】

(式中、A2、R1、R2、R3、R4は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を示す。R2、R3、R4は、2以上が結合して、隣接する炭素原子又は炭素−炭素二重結合とともに環を形成していてもよい)
で表される化合物が含まれる。
【0024】
2、R1、R2、R3、R4における有機基としては、前記と同様のものが例示される。R2、R3、R4のうち2以上が結合して、隣接する炭素原子又は炭素−炭素二重結合とともに形成する環としても前記と同様のものが挙げられる。好ましいA2は好ましいR1等と同様である。
【0025】
式(1b)で表される化合物の代表的な例として、例えば、プロペン、1−ブテン、2−ブテン、2−メチル−2−ブテン、2,3−ジメチル−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−2−ペンテン、2,3−ジメチル−2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等のアルケン類;トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ブチルベンゼン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、1−エチルナフタレン、2−エチルナフタレンなどのアルキル基が芳香環に結合したアルキル置換芳香族化合物;これらに種々の置換基が結合した化合物などが挙げられる。
【0026】
前記分子内にヒドロキシル基を有する化合物には、下記式(1c)
【化4】

(式中、R5は有機基を示す)
で表される化合物が含まれる。R5における有機基としては、前記と同様なものが例示される。好ましいR5は、前記好ましいR1等と同様である(水素原子を除く)。
【0027】
式(1c)で表される化合物の代表的な例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ヘキサノール、オクタノール、エチレングリコール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、1−アダマンタノール、1,3−アダマンタンジオール、2−メチル−2−アダマンタノール、α,α−ジメチルアダマンタンメタノールなどの1価又は多価の第1級、第2級又は第3級アルコール(脂肪族アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコール);フェノール、クレゾールなどのフェノール類;これらに種々の置換基が結合した化合物などが挙げられる。
【0028】
本発明では、前記の原料成分を、前記式(i)で表される骨格を環の構成要素として含む窒素原子含有環状化合物の存在下、酸素と反応させる。
【0029】
酸素としては分子状酸素を用いることができる。分子状酸素は特に制限されず、純粋な酸素を用いてもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスで希釈した酸素や空気を使用してもよい。酸素は系内で発生させてもよい。酸素の使用量は、基質[式(1a)又は(1b)で表される化合物等]の種類によっても異なるが、通常、基質1モルに対して0.5モル以上(例えば、1モル以上)、好ましくは1〜100モル、さらに好ましくは2〜50モル程度である。基質に対して過剰モルの酸素を使用する場合が多い。
【0030】
前記式(i)において、Xは酸素原子又は−OR基(Rは水素原子又はヒドロキシル基の保護基を示す)を示す。2つの炭素原子から左方に伸びる線はそれぞれ結合手を示す。式(i)において、窒素原子とXとの結合は単結合又は二重結合である。前記窒素原子含有環状化合物は、分子中に、式(i)で表される骨格を複数個有していてもよい。また、この窒素原子含有環状化合物は、前記Xが−OR基であり且つRがヒドロキシル基の保護基である場合、式(i)で表される骨格のうちRを除く部分が複数個、Rを介して結合していてもよい。式(i)中、Rで示されるヒドロキシル基の保護基としては、有機合成の分野で慣用のヒドロキシル基の保護基を用いることができる。
【0031】
また、Xが−OR基である場合において、式(i)で表される骨格のうちRを除く部分(N−オキシ環状イミド骨格)が複数個、Rを介して結合する場合、該Rとして、例えば、オキサリル、マロニル、スクシニル、グルタリル、アジポイル、フタロイル、イソフタロイル、テレフタロイル基などのポリカルボン酸アシル基;カルボニル基;メチレン、エチリデン、イソプロピリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、ベンジリデン基などの多価の炭化水素基(特に、2つのヒドロキシル基とアセタール結合を形成する基)などが挙げられる。
【0032】
好ましいRには、例えば、水素原子;メトキシメチルなどのヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール基を形成可能な基;カルボン酸、スルホン酸、炭酸、カルバミン酸、硫酸、リン酸、ホウ酸などの酸からOH基を除した基(アシル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基等)などの加水分解により脱離可能な加水分解性保護基などが含まれる。
【0033】
前記窒素原子含有環状化合物には、例えば、下記式(I)
【化5】

[式中、nは0又は1を示す。Xは酸素原子又は−OR基(Rは水素原子又はヒドロキシル基の保護基を示す)を示す]
で表されるN−置換環状イミド骨格を有する環状イミド系化合物が含まれる。前記環状イミド系化合物は、分子中に、式(I)で表されるN−置換環状イミド骨格を複数個有していてもよい。また、この環状イミド系化合物は、前記Xが−OR基であり且つRがヒドロキシル基の保護基である場合、N−置換環状イミド骨格のうちRを除く部分(N−オキシ環状イミド骨格)が複数個、Rを介して結合していてもよい。
【0034】
式(I)において、nは0又は1を示す。すなわち、式(I)は、nが0の場合は5員のN−置換環状イミド骨格を表し、nが1の場合は6員のN−置換環状イミド骨格を表す。
【0035】
好ましいイミド化合物のうち5員のN−置換環状イミド骨格を有する化合物の代表的な例として、例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α−メチルコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸ジイミド、N,N′−ジヒドロキシナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、α,β−ジアセトキシ−N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,β−ビス(プロピオニルオキシ)コハク酸イミドなどの式(I)におけるXが−OR基で且つRが水素原子である化合物;これらの化合物に対応する、Rがアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基である化合物;N−メトキシメチルオキシフタル酸イミド、N−(2−メトキシエトキシメチルオキシ)フタル酸イミド、N−テトラヒドロピラニルオキシフタル酸イミドなどの式(I)におけるXが−OR基で且つRがヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール結合を形成可能な基である化合物;N−メタンスルホニルオキシフタル酸イミド、N−(p−トルエンスルホニルオキシ)フタル酸イミドなどの式(I)におけるXが−OR基で且つRがスルホニル基である化合物;N−ヒドロキシフタル酸イミドの硫酸エステル、硝酸エステル、リン酸エステル又はホウ酸エステルなどの式(I)におけるXが−OR基で且つRが無機酸からOH基を除した基である化合物などが挙げられる。
【0036】
好ましいイミド化合物のうち6員のN−置換環状イミド骨格を有する化合物の代表的な例として、例えば、N−ヒドロキシグルタルイミド、N−ヒドロキシ−α,α−ジメチルグルタルイミド、N−ヒドロキシ−β,β−ジメチルグルタルイミド、N−ヒドロキシ−1,8−デカリンジカルボン酸イミド、N,N′−ジヒドロキシ−1,8;4,5−デカリンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド(N−ヒドロキシナフタル酸イミド)、N,N′−ジヒドロキシ−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなどの式(I)におけるXが−OR基で且つRが水素原子である化合物;これらの化合物に対応する、Rがアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基である化合物;N−メトキシメチルオキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド、N,N′−ビス(メトキシメチルオキシ)−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなどの式(I)におけるXが−OR基で且つRがヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール結合を形成可能な基である化合物;N−メタンスルホニルオキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド、N,N′−ビス(メタンスルホニルオキシ)−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなどの式(I)におけるXが−OR基で且つRがスルホニル基である化合物;N−ヒドロキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド又はN,N′−ジヒドロキシ−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドの硫酸エステル、硝酸エステル、リン酸エステル又はホウ酸エステルなどの式(I)におけるXが−OR基で且つRが無機酸からOH基を除した基である化合物などが挙げられる。
【0037】
前記窒素原子含有環状化合物には、上記環状イミド系化合物の他に、下記式(II)
【化6】

[式中、mは1又は2を示す。Gは炭素原子又は窒素原子を示し、mが2のとき、2つのGは同一でもよく異なっていてもよい。Rは前記に同じ]
で表される環状アシルウレア骨格を有する環状アシルウレア系化合物が含まれる。前記環状アシルウレア系化合物は、分子中に、式(II)で表される環状アシルウレア骨格を複数個有していてもよい。また、この環状アシルウレア系化合物は、式(II)で表される環状アシルウレア骨格のうちRを除く部分(N−オキシ環状アシルウレア骨格)が複数個、Rを介して結合していてもよい。前記環状アシルウレア骨格を構成する原子G、及び該Gに結合している窒素原子は各種置換基を有していてもよく、また、前記環状アシルウレア骨格には非芳香族性又は芳香族性環が縮合していてもよい。さらに、前記環状アシルウレア骨格は環に二重結合を有していてもよい。
【0038】
好ましい環状アシルウレア系化合物の代表的な例として、例えば、3−ヒドロキシヒダントイン、1,3−ジヒドロキシヒダントイン、4−ヒドロキシ−1,2,4−トリアゾリジン−3,5−ジオン、4−ヒドロキシ−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン、ヘキサヒドロ−3−ヒドロキシ−1,3−ジアジン−2,4−ジオン、ヘキサヒドロ−1,3−ジヒドロキシ−1,3−ジアジン−2,4−ジオン、ヘキサヒドロ−1,3−ジヒドロキシ−1,3−ジアジン−2,4,6−トリオン、3−ヒドロキシウラシル、ヘキサヒドロ−4−ヒドロキシ−1,2,4−トリアジン−3,5−ジオン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリヒドロキシ−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン、1,3,5−トリアセトキシ−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン、1,3,5−トリス(ベンゾイルオキシ)−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(メトキシメチルオキシ)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン、ヘキサヒドロ−1−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジン−2,6−ジオン、ヘキサヒドロ−1−ヒドロキシ−3,5−ジメチル−1,3,5−トリアジン−2,6−ジオン、1−アセトキシ−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン−2,6−ジオン、1−アセトキシ−ヘキサヒドロ−3,5−ジメチル−1,3,5−トリアジン−2,6−ジオン、1−ベンゾイルオキシ−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン−2,6−ジオン、1−ベンゾイルオキシ−ヘキサヒドロ−3,5−ジメチル−1,3,5−トリアジン−2,6−ジオン、ヘキサヒドロ−5−ヒドロキシ−1,2,3,5−テトラジン−4,6−ジオン等が挙げられる。
【0039】
前記窒素原子含有環状化合物のうち、Xが−OR基で且つRが水素原子である化合物(N−ヒドロキシ環状化合物)は、公知の方法に準じて、又は公知の方法の組み合わせにより製造することができる。また、前記窒素原子含有環状化合物のうち、Xが−OR基で且つRがヒドロキシル基の保護基である化合物は、対応するRが水素原子である化合物(N−ヒドロキシ環状化合物)に、慣用の保護基導入反応を利用して、所望の保護基を導入することにより調製することができる。
【0040】
具体的には、前記環状イミド系化合物のうち、Xが−OR基で且つRが水素原子である化合物(N−ヒドロキシ環状イミド化合物)は、慣用のイミド化反応、例えば、対応する酸無水物とヒドロキシルアミンとを反応させ、酸無水物基の開環及び閉環を経てイミド化する方法により得ることができる。例えば、N−アセトキシフタル酸イミドは、N−ヒドロキシフタル酸イミドに無水酢酸を反応させたり、塩基の存在下でアセチルハライドを反応させることにより得ることができる。また、これ以外の方法で製造することも可能である。
【0041】
特に好ましいイミド化合物は、脂肪族多価カルボン酸無水物(環状無水物)又は芳香族多価カルボン酸無水物(環状無水物)から誘導されるN−ヒドロキシイミド化合物(例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸ジイミド、N−ヒドロキシグルタルイミド、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド、N,N′−ジヒドロキシ−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなど);及び該N−ヒドロキシイミド化合物のヒドロキシル基に保護基を導入することにより得られる化合物などが含まれる。
【0042】
前記環状アシルウレア系化合物のうち、例えば、1,3,5−トリアセトキシ−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン(=1,3,5−トリアセトキシイソシアヌル酸)は、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリヒドロキシ−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン(=1,3,5−トリヒドロキシイソシアヌル酸)に無水酢酸を反応させたり、塩基の存在下でアセチルハライドを反応させることにより得ることができる。
【0043】
式(i)で表される骨格を環の構成要素に含む窒素原子含有環状化合物は、反応において、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。例えば、式(I)で表される環状イミド骨格を有する環状イミド系化合物と、式(II)で表される環状アシルウレア骨格を有する環状アシルウレア系化合物などとを併用することもできる。窒素原子含有環状化合物は反応系内で生成させてもよい。窒素原子含有環状化合物は、活性炭、シリカなどの担体に担持した形態で用いてもよい。
【0044】
前記窒素原子含有環状化合物の使用量は、広い範囲で選択でき、例えば、前記基質1モルに対して0.0000001〜1モル、好ましくは0.000001〜0.5モル、さらに好ましくは0.00001〜0.4モル程度であり、0.0001〜0.35モル程度である場合が多い。
【0045】
本発明では、前記窒素原子含有環状化合物触媒とともに、助触媒を用いることもできる。助触媒として金属化合物(周期表2〜15族の金属元素を含む化合物)が挙げられる。金属化合物として、例えば、コバルト化合物、マンガン化合物、銅化合物、ジルコニウム化合物、セリウム化合物、鉄化合物、バナジウム化合物、モリブデン化合物、タングステン化合物などの遷移金属化合物が好ましい。
【0046】
コバルト化合物としては、例えば、ギ酸コバルト、酢酸コバルト、プロピオン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、乳酸コバルトなどの有機酸塩;水酸化コバルト、酸化コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、リン酸コバルトなどの無機化合物;コバルトアセチルアセトナートなどの錯体等の2価又は3価のコバルト化合物などが挙げられる。また、マンガン化合物としては、例えば、ギ酸マンガン、酢酸マンガン、プロピオン酸マンガン、ナフテン酸マンガン、ステアリン酸マンガン、乳酸マンガンなどの有機酸塩;水酸化マンガン、酸化マンガン、塩化マンガン、臭化マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン、リン酸マンガンなどの無機化合物;マンガンアセチルアセトナートなどの錯体等の2価又は3価のマンガン化合物などが挙げられる。銅化合物としては、前記コバルト化合物に対応する化合物などが例示される。これらの遷移金属化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。中でも、コバルト化合物、マンガン化合物、銅化合物又はこれらの混合物(例えば、コバルト化合物とマンガン化合物、コバルト化合物と銅化合物など)が好ましい。
【0047】
金属化合物の総使用量は、例えば、前記触媒(窒素原子含有環状化合物触媒)1モルに対して、0.001〜10モル、好ましくは0.001〜8モル、さらに好ましくは0.1〜5モル程度である。
【0048】
本発明では、また、助触媒として、少なくとも1つの有機基が結合した周期表15族又は16族元素を含む多原子陽イオン又は多原子陰イオンとカウンターイオンとで構成された有機塩を使用することもできる。好ましい有機塩には、例えば、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などが含まれる。有機塩の使用量は、例えば、前記触媒1モルに対して、0.001〜0.1モル程度、好ましくは0.005〜0.08モル程度である。
【0049】
また、助触媒として、強酸(例えば、pKa2(25℃)以下の化合物)が使用されることもある。好ましい強酸には、例えば、ハロゲン化水素、ハロゲン化水素酸、硫酸、ヘテロポリ酸(例えば、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイタングステン酸等)などが含まれる。なかでも、ヘテロポリ酸が好ましい。例えば、ヘテロポリ酸と前記コバルト化合物及び銅化合物(又はマンガン化合物)を組み合わせて用いると、高い収率でアリルエーテル化合物が得られる。強酸の使用量は、前記触媒1モルに対して、例えば0.0001〜3モル、好ましくは0.001〜0.2モル程度である。
【0050】
さらに、助触媒として、電子吸引基が結合したカルボニル基を有する化合物が用いられる場合もある。電子吸引基が結合したカルボニル基を有する化合物の代表的な例として、ヘキサフルオロアセトン、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロフェニルケトン、ペンタフルオロフェニルケトン、安息香酸などが挙げられる。この化合物の使用量は、シクロアルカン類(基質)1モルに対して、例えば0.0001〜3モル程度である。
【0051】
また、反応系内にラジカル発生剤やラジカル反応促進剤を存在させることもある。このような成分として、例えば、ハロゲン(塩素、臭素など)、過酸(過酢酸、m−クロロ過安息香酸など)、過酸化物(過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)等のヒドロペルオキシドなど)、硝酸又は亜硝酸若しくはそれらの塩、二酸化窒素、ベンズアルデヒド等のアルデヒドなどが挙げられる。これらの成分を系内に存在させると、反応が促進される場合がある。これらの成分の使用量は、前記触媒1モルに対して、例えば0.001〜3モル程度である。
【0052】
反応は通常溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、例えば、ベンゼンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;t−ブタノール、t−アミルアルコールなどのアルコール類;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸;ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドなどのアミド類などが例示でき、これらの溶媒は混合して使用してもよい。
【0053】
反応温度は、例えば0〜200℃、好ましくは10〜150℃、さらに好ましくは15〜120℃である。反応温度が0℃未満では反応速度が遅くなり、反応温度が高すぎると、目的物の選択率が低下しやすくなる。反応圧力は、常圧、加圧下の何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。
【0054】
上記反応により、原料化合物のアリル位に酸素原子が結合した対応するアリルエーテル化合物が生成する。例えば、前記式(1a)で表されるアリル位に水素原子を有し且つ分子内にヒドロキシル基を有する不飽和化合物を原料として用いた場合には、下記式(2a)で表されるアリルエーテル化合物(2位にアルケニル基又は芳香族環式基を有する環状エーテル化合物)が、また、式(1b)で表されるアリル位に水素原子を有する不飽和化合物と、式(1c)で表される分子内にヒドロキシル基を有する化合物とを原料として用いた場合には、下記式(2b)で表されるアリルエーテル化合物(ベンジルエーテル化合物を含む)が生成する。式中の符号は前記と同じである。
【0055】
【化7】

【0056】
式(2a)で表されるアリルエーテル化合物の代表的な例として、例えば、2−ビニルテトラヒドロフラン、2−ビニルテトラヒドロ−2H−ピラン、2−(1−プロペニル)テトラヒドロ−2H−ピラン、2−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン、4−メチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)テトラヒドロ−2H−ピラン(ローズオキサイド)、及びこれらに種々の置換基が結合した化合物などが挙げられる。
【0057】
式(2b)で表されるアリルエーテル化合物の代表的な例として、例えば、アリルメチルエーテル、アリルエチルエーテル、アリルプロピルエーテル、アリルイソプロピルエーテル、アリルヘキシルエーテル、アリルシクロヘキシルエーテル、アリルフェニルエーテル、ベンジルメチルエーテル、ベンジルエチルエーテル、ベンジルフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、及びこれらに種々の置換基が結合した化合物などが挙げられる。
【0058】
反応生成物は、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段により分離精製できる。
【0059】
本発明によれば、中性に近い液性条件下、低い温度及び圧力で反応が進行するので、酸やアルカリに弱い原料を用いても良好な収率で目的化合物を得ることができる。また、単純な構造を有する原料を使用できるので、製造コストも低減できる。したがって、本発明は各種アリルエーテル化合物の工業的製法として極めて有用である。
【実施例】
【0060】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0061】
実施例1
冷却管と撹拌装置を装備した2Lのガラス製フラスコに、3,7−ジメチル−6−オクテン−1−オール198.27g(1.27モル)、N−ヒドロキシフタルイミド62.45g(0.38モル)、硝酸コバルト(II)六水塩7.37g(25.3ミリモル)、酢酸マンガン(II)四水和物6.30g(25.7ミリモル)、アセトニトリル806gを入れ、酸素雰囲気下(0.1MPa)、75℃で7時間撹拌した。得られた反応混合液中の組成をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、ローズオキサイドが68.11g(0.44モル、収率34.8%)、原料の3,7−ジメチル−6−オクテン−1−オールが65.23g(0.42モル、回収率32.9%)含まれていた。ローズオキサイドのシス体の比率は65.1%(ガスクロマトグラフィーによる分析値)であった。
上記で得られた反応混合液中の固形物を濾別し、濾液中のアセトニトリルをロータリーエバポレーターにより留去し、残渣を蒸留して得られた留分[留出温度48〜118℃/25mmHg(=3.3kPa)64.9g]には、ローズオキサイドが45.6g(純度70.4%)含まれており、そのシス体の比率は65.5%(ガスクロマトグラフィーによる分析値)であった。
【0062】
実施例2
冷却管と撹拌装置を装備した20mlのガラス製フラスコに、3,7−ジメチル−6−オクテン−1−オール1.98g(12.7ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド311mg(1.91ミリモル)、硝酸コバルト(II)六水塩74mg(0.25ミリモル)、酢酸銅(II)一水和物13mg(0.064ミリモル)、12−タングストリン酸水和物55mg、(0.019ミリモル)、アセトニトリル8.1gを入れ、酸素雰囲気下(0.1MPa)、25℃で8時間撹拌した。得られた反応混合液中の組成をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、ローズオキサイドが0.47g(3.0ミリモル、収率24%)、原料の3,7−ジメチル−6−オクテン−1−オールが0.97g(6.22ミリモル、回収率49%)が含まれていた。ローズオキサイドのシス体の比率は67.3%(ガスクロマトグラフィーによる分析値)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリル位に水素原子を有し且つ分子内にヒドロキシル基を有する不飽和化合物、又はアリル位に水素原子を有する不飽和化合物と分子内にヒドロキシル基を有する化合物を、下記式(i)
【化1】

[式中、Xは酸素原子又は−OR基(Rは水素原子又はヒドロキシル基の保護基を示す)を示す。2つの炭素原子から左方に伸びる線はそれぞれ結合手を示す]
で表される骨格を環の構成要素として含む窒素原子含有環状化合物の存在下、酸素と反応させて、該アリル位に酸素原子が結合した対応するアリルエーテル化合物を得ることを特徴とするアリルエーテル化合物の製造法。