説明

アリールスルホン酸とホルムアルデヒドとからの縮合物の製法及びこれからなる分散剤

【発明の詳細な説明】
産業上の利用分野 本発明はアリールスルホン酸とホルムアルデヒドとからの縮合物の製法及びこれからなる分散剤に関する。
従来技術 アリールスルホン酸、特にα−及びβ−ナフタリンスルホン酸からの縮合物はすでに長いこと公知である。西ドイツ国特許第1137005号明細書にはα−及びβ−ナフタリンスルホン酸並びにメチルナフタリンスルホン酸及び相応するナフタリンジスルホン酸とアルデヒドとからの縮合生成物の製法が記載されている。この縮合は100〜200℃の温度で、かつ高めた圧力で実施される。このようにして得られる縮合生成物は皮なめしにおける助剤として、染料のための分散剤として、並びに紙製造においてピツチ障害の回避のために使用される。
米国特許第3277162号明細書からナフタリンスルホン酸及びホルムアルデヒドからの水溶性縮合生成物の製造が公知である。この特許明細書の教示によれば、まずナフタリンを濃硫酸、例えば96%硫酸を用いて、70〜175℃でスルホン化する。この際、それぞれ反応における温度により1−及び2−ナフタリンスルホン酸が生じる。両方のナフタリンスルホン酸の混合物中の異性体の比はホルムアルデヒドとの縮合生成物を製造するためには重大ではない。このように得られた縮合生成物は界面活性剤として、又はポリアクリロニトリル繊維の染色における緩染剤として使用される。
特開昭58−179218号公報から、ナフタリンを発煙硫酸でスルホン化し、引き続き、このスルホン化生成物をホルムアルデヒドと不活性ガス圧下に縮合させることによりナフタリンスルホン酸とホルムアルデヒドとから縮合生成物を製造するための方法が公知である。この方法において、純粋なナフタリンを使用するのが有利であるが、アルキルナフタリンを使用することもできる。このようにして製造した生成物はセメントのための分散剤として使用される。
西ドイツ国特許第2745449号明細書からは分散染色剤及び水中に難溶性〜不溶性の光学澄明化剤の安定な微細分散水性組成物が公知であり、これは分散剤としてスルホン化した、特別なフエノールへのアルキレンオキシドの付加生成物を含有する。その中に記載されている分散染料の微細に分散した組成物は染色工程の間染料の濾別なしに申し分のない均質な巻き物染色(Wickelk■rper f■rbung)を可能にする。この文献中には、この中に記載された分散剤の他にリグニンスルホネートだけが巻き物染色に好適であることが記載されている。
しかしながら、リグニンスルホネートはすべての染料に効果があるわけではなく、かつ染色工程において敏感なアゾ染料は減じられ、こうして染色において強く減じられた色収率が得られる。ナフタリンスルホン酸とホルムアルデヒドとからの縮合生成物を分散剤として含有する染料組成物は巻き物染色に関して特に不所望であると認められている。
発明が解決しようとする課題 本発明の課題はアリールスルホン酸とホルムアルデヒドとからの縮合物の製法であつて、この際従来記載されたこの種の縮合生成物とは異なり、染色工程の際に染料の濾別なしに申し分のない均質な巻き物染色か達せられる安定な染料組成物の製造を可能とする縮合生成物が得られる製法を提供することである。
課題を解決するための手段 この課題はアリール化合物をスルホン化し、このアリールスルホン酸をホルムアルデヒドと水性媒体中で縮合することによりアリールスルホン酸とホルムアルデヒドとから縮合物を製造するために、(a) スルホン化の際に、ナフテン系残留油の熱分解及び分解生成物の分留により得られる、100〜120℃で1013ミリバールで生じるフラクシヨンであるアリール化合物を使用し、(b) 120〜160℃の温度で、発煙硫酸でスルホン化を実施し、かつ(c) (a)によるアリール化合物1重量部あたり、SO3−含量24重量%の発煙硫酸0.7〜1.2重量部を使用することにより本発明において解決する。
このように製造可能な縮合生成物は有効な分散剤であり、長期間にわたつて貯蔵安定であり、染色工程において染料の濾別なしに均質な巻き物染色の製造のためにも使用することのできる、水性染料組成物の製造を可能にする。
スルホン化においては、ナフテン系残留油の熱分解及び分解生成物の分留によつて得られるアリール化合物を使用する。ナフテン系残留油は例えば軽ベンジンのクラツキングにおいて生じる。例えば、これは西ドイツ国特許公開第2947005号公報においては高沸点芳香族炭化水素油としてあらわされている。
ナフテン系残留油を有利に1400〜1700℃の温度で熱分解する。この分解生成物を分留に導びく。常圧(1013ミリバール)で100〜120℃で沸騰するフラクシヨンを集めてスルホン化する。このフラクシヨンは公知アセチレン−油−急冷性(Acetylen−Oil−Quench−Process)において通常副生成物として得られる(Ullmann′s Encyclopedia of Industrial Chemistry,VCH出版GmbH、ヴアインハイム、1985年、第71巻、第107〜112頁参照)
この芳香族フラクシヨンは多くの芳香族物質の混合物からなり、その構造及び量は実質的には詳細に知ることはできない。次のアリール化合物はこの芳香族フラクシヨンの最も代表的なものである:



芳香族フラクシヨンは同定された成分に関して更に、次のアリール化合物を0.1〜約2重量%の量で含有する:アセナフテン、フルオレン、インダン、メチルスチロール、フエナントレン、メチルインダン、ジメチルナフタリン、エチルナフタリン、キシロール、テトラリン、スチロール、メチルエチルベンゾール、アントラセン、フルオルアントレン、ピレン、アセトナフチレン及びトルオール。
スルホン化においては有利にナフタリン40〜45重量%を含有する芳香族フラクシヨンを使用する。多くの芳香族物質の混合物を意味する、前記アリール化合物のフラクシヨンを発煙硫酸で、温度120〜160℃、有利に135〜145℃でスルホン化する。高い温度では低い温度でよりより短かい反応時間が必要である。例えば、145℃の温度におけるスルホン化は1.6〜2.6時間の時間範囲内で終了し、温度140℃の場合には2.25〜4時間で、135℃の場合には3.25〜6時間が必要である。芳香族フラクシヨン中に含有されているナフタリンに対して発煙硫酸をモルにおいて過剰に使用しても、同様に反応時間は短縮される。こうして発煙硫酸の10%モル過剰において一定の反応温度140℃で2.45〜4時間の反応時間、発煙硫酸の20%の過剰において同じ温度で1.4〜3時間の反応時間が必要である。
(a)により得られた芳香族フラクシヨンのスルホン化における条件は、その中に含有されるナフタリンがα−及びβ−ナフタリンスルホン酸に変換し、その際α−対β−ナフタリンスルホン酸の比が10:1〜1:2であるような条件である。(a)によるアリール化合物1重量部あたり、スルホン化においてSO3−含量が24重量%である発煙硫酸に関して発煙硫酸0.7〜1.2重量部を使用する。もちろん、他のSO3−含量の硫酸、例えばSO3含量10〜65重量%の発煙硫酸を使用することもできる。発煙硫酸中のSO3−含量が少ない場合、スルホン化のためにSO3−含量に相応して24%発煙硫酸の使用におけるより多量の発煙硫酸を必要とし、一方高濃度発煙硫酸においては相応して少量使用しなければならない。発煙硫酸の量は発煙硫酸中のSO3含量により決まる。(a)によるアリール化合物に関連して、スルホン化における温度及び発煙硫酸の量の保持がα−及びβ−ナフタリンスルホン酸を20:1〜1:3、有利に10:1〜1:2の比で含有するスルホン化生成物に導びく。
引き続き、スルホン化アリール化合物を常法でホルムアルデヒドと縮合する。このためには直接スルホン化混合物から出発し、これを水で希釈し、90〜105℃の温度範囲でホルムアルデヒドを添加することにより縮合する。縮合は105〜150℃において高めた圧力下にも実施することができる。縮合反応のために約4〜12時間、有利に7〜9時間が必要である。(a)によるアリール化合物の重量部あたり、縮合においてホルムアルデヒド0.07〜0.17重量部(100%濃度のホルムアルデヒドとして計算)を使用する。縮合において、ホルムアルデヒドを有利に10〜50%水溶液として使用する。縮合反応の終了後反応混合物を中和する。このためには水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムを使用することができる。縮合物を含有する溶液のpH値を6〜11の値に調節する。この溶液を直接分散剤として使用することができる。しかしながら、これから縮合生成物を純粋な形で、又は溶液の噴霧乾燥により取得することも可能である。この縮合生成物は水中に易容性であり、特に染料組成物中の分散剤として好適である。このためには、染料100重量部に関し、縮合生成物8〜500、有利に25〜400重量部を必要とする。
実施例 例中にあげた部は重量部を表わす。%での記載も重量に関連する。
すべての例において、ナフテン系残留油の分解生成物の分留により生じたアリール化合物を使用した。この際、常圧(1013ミリバール)下に100〜120℃で蒸留するフラクシヨンを使用した。ナフテン系残留油の熱分解を1400〜1700℃の範囲の温度で実施した。分解生成物の分留において得られるアリール化合物混合物中には詳細には次の化合物か同定された: 化合物 % ナフタリン 44.60 2−メチルナフタリン 10.00 1−メチルナフタリン 6.20 インデン 7.40 ジフエニル 2.20 メチルインデン 1.95 アセナフテン 1.70 フルレン 1.30 インダン 1.22 フエナントレン 1.10 メチルインダン 1.10 ジメチルナフタリン 1.13 エチルナフタリン 0.82 p−m−キシロール 0.80 テトラリン 0.80 スチロール 0.60 例 1 前記アリール化合物の混合物128部を撹拌機を備える加熱可能な反応容器中に装入し、撹拌下に温度70℃に加熱した。SO3 24%を含有する発煙硫酸108部を1.5時間かけて加え、温度が75℃を越えて上昇しないように注意を払う。発煙硫酸の添加後、反応混合物を90℃で2時間、引き続き135℃で55.時間撹拌した。次いで、70℃に冷却し、水150部を加え、その後30%ホルムアルデヒド水溶液50部を加え、この混合物を温度100℃に8時間加熱することにより縮合した。その後、水167部を加え、引き続き50%水酸化ナトリウム水溶液51部を加えた。その後、26%水酸化カルシウム水溶液83部を加え、pH値を4.5とした。反応混合物を濾過し、引き続き濾液のpH値を18%炭酸ナトリウム水溶液45部及び50%水酸化ナトリウム水溶液10部を添加することにより10.5に調節した。次いで、この混合物を90℃で1時間撹拌し、20%硫酸水溶液25部を加え、pH8.5にした。この溶液をもう1回濾過し;これは固体含量28.5%であつた。
スルホン化生成物においてはα−対β−ナフタリンスルホン酸の比は1:1.4を有した。
例 2 例1を繰り返すが、SO3−含量24%の発煙硫酸118部を使用し、かつ5.5時間のかわりに135℃で4.5時間のみスルホン化した。スルホン化生成物中のα−対β−ナフタリンスルホン酸の比は1:1.2であつた。分散剤の水溶液は固体含量26%を有した。
例 3 例1を繰り返したが、この反応混合物をスルホン化のために温度140℃に2時間加熱した。スルホン化混合物においてはα−対β−ナフタリンスルホン酸の比は1:1であつた。その他にも、例1に記載した方法を次のようにわずかに変えた;縮合の後、反応混合物に50%水酸化ナトリウム水溶液104部を加え、反応混合物をpH値11とし、次いで90℃で1時間撹拌した後、濃塩酸21部の添加によりpH値を8.5に下げた。このように得られた分散液は固体含量25%を有した。α−対β−ナフタリンスルホン酸の比は1:1であつた。
比較例1 例1を繰り返したが、スルホン化を98%硫酸157部を用いて実施した。この場合、α−対β−ナフタリンスルホン酸の比は1:5.3を有した。
適用例例 4 色番号No11345の青色分散染料20部(乾燥重量に関して)を水分を有する圧縮ケーキの形で、例1により製造した分散剤15部(固体含量に関して)、70%水溶液としてソルビツト10部、プロピレングリコール5部、市販の殺菌剤(プロピレングリコール中の9.5%溶液として1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン)1部及び水と共に、全重量100部で迅速撹拌機中で混練し、サンドミル中で良好な微細分散が達成されるまで十分に混和する。染料分散液のpH値は8であつた。染料の十分な分散は遠心分離テスト(Schleuder test;Richter及びVescia著、Melliand Textilberichte 1965年、第6巻、第622頁)を用いて、かつフイルターテスト(Schlottmann著、Textilpraxis,1957年、第1巻、第63頁)を用いて調べられた。遠心分離値は2/3/25/70を有した。
得られた染料組成物は希液性で、かつ貯蔵安定性であり、このために好適なすべての染色法によりポリエステル繊維及びポリエステル織物の染色のために著しく好適である。特にポリエステル/綿からなる混織物の熱ゾル(Thermosol)法による染色の際に、この染料調剤は高い綿リザーブにより優れている。テクスチヤード加工したポリエステル繊維からの巻き物の染色において(綾巻染色;Kreuz spulf■rbung)全く濾別物が観察されなかつた。
比較例2 例4を繰り返したが、そこに使用した分散剤のかわりに比較例1により製造した分散剤を使用した。この際、貯蔵安定な染料組成物が得られるが、これは巻き物染色の条件下に不安定であり糸巻の内側及び前面に強い沈着が生じた。
例 5 カラー・インデツクスNo47023の黄色分散染料17部(染料の乾燥重量に関して)を湿つた圧縮ケーキの形で、例3により製造した分散剤12部(固体含量に関して)、グリセリン15部、例1にあげた殺菌剤1部及び水と、全体で100部まで加えて迅速撹拌機中で混練した。染料組成物のPh値は8であつた。引き続き、この混合物をビーズミル中で良好な遠心分離値が達せられるまで混和した。遠心分離値は6/9/22/63であつた。
このように得られた調剤は希液性で、かつ貯蔵安定性であり、すべての公知染色法によりポリエステルからの織物及び繊維の染色に著しく好適である。ポリエステル/綿からの混合織物の染色において、この染料組成物は木綿部の著しくわずかな着色並びに木綿繊維上に付着した分散染料分の良好な洗出性を示した。更に、テクスチヤード加工したポリエステル繊維からの巻き物の染色のためにも著しく良好であつた。
例 6 例1に記載された青色分散染料60部(乾燥重量で計算)を湿つた圧縮ケーキの形で例2により製造した分散剤40部(固体含量に関して)及び水50部と混練し、十分な微細分散が達せられるまでサンドミル中で混和した。この微細分散を遠心分離値を用いて調べた。これは4/13/25/58を示した。引き続き、例2により得られた分散剤の26%水溶液50部を加え、このようにして固体含量25%の分散液が得られた。この分散液を噴霧乾燥機中でガス導入温度120℃で乾燥させた。
この際得られた染料粉末は湿潤混和工程で達せられた微細分散を示した。水中で撹拌した後、安定な染料が得られ、これはHT−染色条件下に全くフロキユレーシヨンを示さず、かつテクスチヤード加工したポリエステル繊維からなる巻き物の染色のためにも、ポリエステル/綿−混織物の熱ゾル染色にも著しく好適であつた。この際、木綿は非常に僅かに染色された、、分散染料は木綿繊維から著しく容易に洗出可能であつた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】アリール化合物をスルホン化し、このアリールスルホン酸をホルムアルデヒドと水性媒体中で縮合することによりアリールスルホン酸とホルムアルデヒドとから縮合物を製造するために、(a)ナフテン系残留油の熱分解及びこの分解生成物の分留により得られ、100〜120℃でかつ1013ミリバールで生じるフラクションであるアリール化合物をスルホン化の際に使用し、(b)スルホン化を120〜160℃の温度で発煙硫酸を用いて実施し、かつ(c)(a)によるアリール化合物1重量部あたり、SO3含量24重量%の発煙硫酸に関して、発煙硫酸0.7〜1.2重量部を使用することを特徴とするアリールスルホン酸とホルムアルデヒドとからの縮合物の製法。
【請求項2】(a)によるアリール化合物1重量部あたり、SO3含量24重量%の発煙硫酸に関して、発煙硫酸0.8〜0.9重量部を使用する請求項1記載の製法。
【請求項3】縮合の際に、(a)によるアリール化合物1重量部あたり、100%濃度のホルムアルデヒドとして計算して、ホルムアルデヒド0.07〜0.17重量部を使用する請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】請求項1から3までのいずれか1項記載の方法により得られた縮合物からなる分散剤。
【請求項5】請求項1から3までのいずれか1項記載の方法により得られた縮合物を分散剤として含有する染料組成物。

【特許番号】第2831403号
【登録日】平成10年(1998)9月25日
【発行日】平成10年(1998)12月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平1−322797
【出願日】平成1年(1989)12月14日
【公開番号】特開平2−202508
【公開日】平成2年(1990)8月10日
【審査請求日】平成8年(1996)8月14日
【出願人】(999999999)ビーエーエスエフ・アクチエンゲゼルシヤフト