説明

アルカリイオン水

【課題】アルカリイオン整水器は高価な設備であり、しかも電気分解を必要とするためエネルギー消費も大きい。
【解決手段】マグネシウム等の必須ミネラルを含有する水酸化カルシウム系固溶体の造粒物に水を通過、接触させるだけで簡単にアルカリイオン水を製造できる。しかも同時に、カルシウム、マグネシウム等の必須ミネラルを摂取することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルカリイオン水の新規な製造方法、アルカリイオン水製造剤および同剤を使用して生成されるアルカリイオン水に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリイオン水は健康に良いと言われている。そのため、乳酸カルシウム等を水に添加し、この水を電気分解することによりアルカリイオン水と酸性水を製造する機器が広く販売されている。この装置は比較的高価であり、且つ電気分解を必要とする。
この方法で製造されるアルアカリイオン水は、添加した乳酸カルシウム由来のCaイオンが含まれるが、その量はたかだか10ppmである。したがって、この水を1リットル飲んでも、10mgのCa接取量にしかならない。この量は人間が1日に摂取せねばならないと言われている約700mgと比較するとはるかに少ない。日本人はCaの摂取不足と言われており、その不足量約300mgと比較しても明らかに少ない。
さらに、Caの摂取だけでは不十分で、Mgの摂取も必要且つ重要であると言われている。そのためサプリメントとして、あるいは食品例えばパンなどに、ドロマイトのごときCaとMgの両方を含有する鉱物が使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来のアルカリイオン水製造法の欠点である高い設備コストおよびランニングコスト(電気代)を克服して、しかも不足しがちな必須ミネラルCaとかMgを同時に供給できる新規なアルカリイオン水の製造方法、アルカリイオン水及びアルカリイオン生成剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は下記式(1)
【0005】
【化1】

(但し、式中、M2+はCa以外のMg,Zn,Fe,Mn,CuおよびCoの中から選ばれた少なくとも1種以上の必須ミネラルを示し、An−はIおよび/またはSe,VおよびMoの酸素酸塩の中から選ばれた少なくとも1種以上を示し、xとyはそれぞれ次の範囲:0<x<0.5,0≦y<0.1にある)で表わされる水酸化カルシウム系化合物を水と接触させるだけでアルカリイオン水を製造できる。しかも、電気エネルギーを必ずしも必要としない。したがって、本発明は安価で環境にやさしい技術を提供する。
【0006】
さらに、本発明はCaだけでなく、必須ミネラルであって、しかも不足しがちなMg,Zn,Fe,Se,V等をも同時に供給できる。したがって、本発明のアルカリイオン水は、人間および動物、魚等の飲料水だけでなく、自宅で楽しめる温泉としても利用できる。ミネラルを多く含有する温水はまさに温泉であり、これらミネラルは皮膚を通して吸収されるので、皮膚および体内の健康に寄与することが期待できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のアルカリイオン水生成剤の使用により、安価な設備で、簡単な操作で、しかも省エネで、且つ動植物に必須なミネラルを供給できる、アルカリイオン水を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
式(1)の水酸化カルシウム系化合物は、水酸化カルシウム結晶のCaの一部をMg,Zn,Mn,Fe,CuおよびCoの少なくとも1種以上の必須ミネラルで置換した、いわゆる固溶体または、該固溶体とM2+(OH)の混合物である。
【0009】
式(1)のxの範囲は0<x<0.5、好ましくは0.01<x<0.4、特に好ましくは0.05≦x≦0.25である。
【0010】
さらに、式(1)の化合物は、Iおよび/またはSe,VおよびMoの少なくとも1種以上の酸素酸が、プラスに荷電している水酸化カルシウム系化合物の結晶表面に吸着、またはOH基の一部を代替することができ、そうさせたものを用いることもできる。
【0011】
これら必須ミネラルの酸素酸の量yの範囲は0≦y<0.1、好ましくは0<y<0.05である。Se,VおよびMoの酸素酸の具体的な例としては、例えば、(SeO2−,(SeO3−,(VO,(VO3−,(MoO2−等をあげることができる。
【0012】
本発明のアルカリイオン水生成剤は、式(1)の水酸化カルシウム系化合物に、水に溶解している人体に有害なトリハロメタン等の有機物とか悪臭物質を除去する目的で活性炭を追加使用できる。さらに、水道水に残留する塩素殺菌剤を中和無害化するために、亜硫酸カルシウム等の金属の亜硫酸塩および/またはSOまたはS型ハイドロタルサイト類を追加使用できる。そして、更にMgおよびZnイオン供給剤として酸化マグネシウムと酸化亜鉛も使用できる。
本発明のアルカリイオン生成剤は、好ましくは、式(1)の水酸化カルシウム系化合物に活性炭と塩素中和剤を追加して併用使用する。このことで水の有害成分が減少し安全性が向上するとともに、香りおよび味が向上する。
【0013】
上記追加添加剤の量は適宜選択できるが、好ましくは、式(1)の水酸化カルシウム系化合物100重量部に対して、活性炭が150〜300重量部、塩素中和剤が50〜200重量部、マグネシウムと亜鉛の添加剤が1〜50重量部である。
【0014】
本発明のアルカリイオン水生成剤は、適度の通水性を持たせるために、球形または円柱状等の形に造粒成型したものを、あるいは例えばポリエチレンとかポリプロピレン等の熱可塑性樹脂と混練成型したものを、用いることが好ましい。この場合造粒物の最大径は0.5〜5mmの範囲にあることが好ましい。
【0015】
造粒は水だけでバインダー無しでも製造できるが、珪藻土、ベントナイト等の粘土をバインダーとして用いても良い。造粒は、従来公知の種々の方法、例えば押し出し造粒、転動造粒、ロール成型、ブリケットマシーン等で実施出来る。
【0016】
アルカリイオン水の製造は、式(1)のアルカリイオン生成剤をカラムに充填し、このカラムを例えば水道の蛇口とかポンプに連結し、カラムの上または下から通水することにより実施できる。この場合の通水速度は遅くなるほどアルカリ性(pHが高くなる)になる傾向がある。したがって目的のPH(例えば8〜10)により通水速度を変更すればよい。通常通水速度は例えば1分間に100〜5000mlである。好ましくは200〜1000ml/分である。
【0017】
アルカリイオン生成剤の使用量は目的のアルカリイオン水の製造量と、風味等により変更すればよい。例えば1000リットルのアルカリイオン水の製造に好ましくは10〜20gのアルカリイオン水生成剤を用いる。
【0018】
本発明で用いる式(1)の水酸化カルシウム系固溶体の製造は、本発明者の発明である特開平6−72709に開示されている方法で実施できる。
【0019】
例えば、塩化カルシウム等の水溶性カルシウム塩の水溶液と、塩化マグネシウム等の式(1)に示すM2+の水溶性金属(M2+)塩の水溶液との混合水溶液と、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液との共沈反応により製造できる。あるいは、水酸化カルシウムを懸濁、分散させ、これにM2+の水溶性塩の水溶液を添加、反応させることにより製造できる。この後、両反応法で得られた反応物はろ過、水洗、乾燥、粉砕、造粒等の慣用の手段を適宜選択使用して目的の形態にすることができる。
【0020】
以下実施例により本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0021】
塩化カルシウムと塩化マグネシウムの混合水溶液(Ca=0.8モル/リットル,Mg2+=0.2モル/リットル)5リットルと2モル/リットルの水酸化ナトリウム約5リットルを容量約2リットルの反応槽に、それぞれ約100ml/分の流速で計量ポンプを用いて供給し、反応pHを約12.4〜12.6、反応温度を約40〜42℃に保って共沈反応させた。反応物はオーバーフローしたものを捕集し、減圧濾過、水洗後、乾燥機に入れ、約120℃で10時間乾燥した。乾燥物をアトマイザーで粉砕後、ニーダーに入れ、水を加えて約20分混練し、混練物を二軸押出機に供給し、直径約2mmの円柱状に成型した。
【0022】
乾燥後粉砕して得られた粉末を用いて、X線回折を行った結果、少し高角側にシフトしているがCa(OH)のみの回折パターンが得られた。したがって、この物質はMgがCa(OH)に固溶していることがわかる。この粉末の化学分析の結果、組成は次の通りであった。(Ca)0.80(Mg)0.20(OH)
【0023】
作成した造粒物10gを直径30mm、長さ100mmのアクリル製カラムに充填し、水道水を600ml/分の下向流でポンプを使用して通水した。通水後の水を10リットル毎に分取し、水質分析を行った。その結果を表1に示す。使用した水道水の水質を、CaとMgはICPで、残留塩素量はJISK0102で、pHはpHメーターでそれぞれ分析した結果、Ca=6.6ppm、Mg=0.8ppm、塩素=0.68ppm、pH=7.2であった。
【実施例2】
【0024】
実施例1において、共沈反応で得られた固溶体を1,000g含有するスラリー5リットルに攪拌下、メタバナジン酸ソーダNaVOを3g含有する水溶液100mlを添加反応させた。反応物を濾過、乾燥、粉砕後、水を加えニーダーで混練し、押出機により造粒し、乾燥して、直径約1mmの円筒状造粒物を作成した。
【0025】
この物質のX線回折は、実施例1と同じパタ−ンであり、Mgが固溶したCa(OH)であることが分かる。化学組成は、キレート滴定法でCaとMgを、ICPでVを分析し、次の如く決定された。(Ca)0.80(Mg)0.20(OH)1.999(VO0.001
【0026】
作成した造粒物5gを直径3cmのカラムに入れ、これを垂直にし、これに水道水を1分間に440mlの流速で計量ポンプを用いてカラムの下から供給した。カラムを通過した水を採取し、CaとMgをキレート滴定法で、バナジウムをICPで、そしてpHをpHメーターで測定した。その結果を表1に示す。
【実施例3】
【0027】
塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化第一鉄および硝酸マンガンの混合水溶液(Ca=0.75モル/リットル、Mg=0.15モル/リットル、Zn=0.05モル/リットル、Fe=0.03モル/リットル、Mn=0.02モル/リットル)と4モル/リットルのNaOH水溶液を実施例1の要領で、反応pH=12.4〜12.6、温度=30〜32℃で共沈させた。その後、実施例1と同様にして造粒物を作成した。
【0028】
この物質のX線回折から、Ca(OH)に相当する回折パターンであり、但し、Ca(OH)よりわずかに高角度側にシフトしていた。したがって、この物質はCa(OH)にMg,Zn,FeおよびMnが固溶していることが分かる。化学組成は、キレート滴定とICP法で次のように決定された。(Ca)0.75(Mg)0.15(Zn)0.05(Fe)0.03(Mn)0.02(OH)
【0029】
ここで作成した造粒物5gと直径約1mmの亜硫酸カルシウム5g、および直径が約2mmの活性炭10gを実施例1で用いたカラムに混合後充填した。このカラムの下から軽量ポンプを使い水道水を1分間に200mlの流速で通水処理した。得られた水の水質分析結果を表2に示す。
【0030】
ここで作成した造粒物5gと直径約1mmの亜硫酸カルシウム5g、および直径が約2mmの活性炭10gを実施例1で用いたカラムに混合後充填した。このカラムの下から軽量ポンプを使い水道水を1分間に200mlの流速で通水処理した。得られた水の水質分析結果を表3に示す。
【0031】
【表1】




【0032】
【表2】




【0033】
【表3】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(但し、式中、M2+はMg,Zn,Fe,Mn,Cuの中から選ばれた少なくとも1種以上を示し、An−はIおよび/またはSe,VおよびMoの酸素酸塩の中から選ばれた少なくとも1種以上を示し、xとyは次の範囲: 0<x<0.5,0≦y<0.1にある)で表わされる水酸化カルシウム系化合物と水を接触させることを特徴とするアルカリイオン水の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、式(1)のM2+がMgである請求項1記載のアルカリイオン水の製造方法。
【請求項3】
請求項1において、式(1)のM2+がMgおよび/またはZnである請求項1記載のアルカリイオン水の製造方法。
【請求項4】
請求項1において、水酸化カルシウム系化合物にさらに活性炭を加えて水と接触させることを特徴とする、主として有害有機成分の低減されたアルカリイオン水の製造方法。
【請求項5】
請求項1および4において、金属の亜硫酸塩をさらに添加することにより、
遊離塩素が低減されたアルカリイオン水の製造方法。
【請求項6】
請求項1,4および5において、酸化マグネシウムをさらに添加することを特徴とするマグネシウムイオンが強化されたアルカリイオン水の製造方法。
【請求項7】
水と接触させる水酸化カルシウム系化合物、活性炭および金属の亜硫酸塩が粒状または繊維状である請求項1,4,5記載のアルカリイオン水の製造方法。
【請求項8】
下記式(1)
【化1】

(但し、式中、M2+はMg,Zn,Fe,Mn,Cuの中から選ばれた少なくとも1種以上を示し、An−はIおよび/またはSe,VおよびMoの酸素酸塩の中から選ばれた少なくとも1種以上を示し、xとyは次の範囲: 0<x<0.5,0≦y<0.1にある)で表わされる水酸化カルシウム系化合物を有効成分とするアルカリイオン水の製造剤。
【請求項9】
下記式(1)
【化1】

(但し、式中、M2+はMg,Zn,Fe,Mn,Cu,およびCoの中から選ばれた少なくとも1種以上を示し、An−はIおよび/またはSe,VおよびMoの酸素酸塩の中から選ばれた少なくとも1種以上を示し、xとyはそれぞれ次の範囲: 0<x<0.5,0≦y<0.1にある)で表わされる水酸化カルシウム系化合物と水を接触させて得られるアルカリイオン水。
【請求項10】
請求項9において、水酸化カルシウム系化合物に、活性炭および/または金属の亜硫酸塩をさらに添加して得られるアルカリイオン水。

【公開番号】特開2011−92877(P2011−92877A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250119(P2009−250119)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(391001664)株式会社海水化学研究所 (26)
【Fターム(参考)】