説明

アルキルアリールカーボネートの製造法

【課題】本発明は、芳香族ヒドロキシ化合物とジアルキルカーボネートのエステル交換反応を、効率よく行うアルキルアリールカーボネートの製造方法の提供等を課題とする。
【解決手段】芳香族ヒドロキシ化合物とジアルキルカーボネートを、チタンと、周期律表第V族及び/または第VI族の金属からなる第2金属成分を含む金属複合酸化物の存在下で気相反応により反応させるアルキルアリールカーボネートの製造法において、前記金属複合酸化物中の周期律表の第V族または第VI族の金属含有量がチタン含有量に対して0.1〜2.0mol%であるものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
炭酸エステルは、ホスゲンを使用しないポリカーボネートの原料、リチウム電池電解液やオクタン価向上のためのガソリン添加剤、各種反応におけるアルキル化剤、カルボニル化剤などで有用な化合物である。
従来の炭酸エステルの製造方法としては、まず、ホスゲンをカルボニル化剤としてメタノール、エタノールなどのアルコール、もしくはフェノールなどと反応させて炭酸エステルを製造する方法が知られており、工業的な規模で製造されている。しかし この方法では、極めて毒性が強く、また腐食性も有するホスゲンを用いるため、その輸送や貯蔵など取り扱いに注意が必要であり、製造設備の維持管理や廃棄物処理、作業員の安全性確保などのために多大なコストがかかっていた。そのため、ホスゲンを使用しないで炭酸エステルを製造する方法が望まれ、様々な方法が検討されてきた。ホスゲンを使用しない炭酸エステルの製造法としては一酸化炭素をカルボニル化剤としてアルコール及び酸素と反応させる酸化的カルボニル化法、オキシランと二酸化炭素を反応させる方法、尿素とアルコールを反応させる方法などが知られている(非特許文献1)。
【0002】
ジアリールカーボネートの製造法としては、ジメチルカーボネートのように安価で一般に入手しやすいジアルキルカーボネートとフェノール類などのアリール化合物とをエステル交換反応させて、目的とするジアリールカーボネートを製造する方法が知られており、通常、以下のような反応の組み合わせにより進行していることが知られている。
【0003】
1)ジアルキルカーボネートと芳香族ヒドロキシ化合物をエステル交換反応させて、アルキルアリールカーボネートを生成する。
2)アルキルアリールカーボネートと芳香族ヒドロキシ化合物をエステル交換反応させて、ジアリールカーボネートを生成する。
3)アルキルアリールカーボネートの不均化により、ジアリールカーボネートとジアルキルカーボネートを生成させ、精製分離する。
上記の反応は、共に平衡反応であるが、特に1)に記載の反応の平衡状態が原料側(ジアルキルカーボネート側)に偏っているので、ジアリールカーボネート製造反応全体の反応性の向上させるためには、1)に記載の反応における平衡状態を製品側(アルキルアリールカーボネート側)にずらすことが重要となる。
【0004】
これまで、上記1)に記載の反応における平衡状態を製品側に移動させる方法として、1)に記載の反応を気相状態で、シリカ担体に酸化チタンを担持させた触媒を用いて、高い反応温度で実施することにより平衡を製品側(アルキルアリールカーボネート側)に偏らせ、反応を進行させる方法が開示されている(非特許文献2、特許文献1)。しかし、上記の反応では、高温で反応を実施しているので、副反応の反応速度も増加し、アルキルアリールカーボネートの選択性が低下する傾向が見られるという難点があった。
【非特許文献1】Ullmann’s Encyclopedia Of Industrial Chemistry,6th Edition, Vol.6 P427-455
【非特許文献2】Catalysis Letters,59, 83-89 (1999)
【特許文献1】WO2001-00560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、芳香族ヒドロキシ化合物とジアルキルカーボネートのエステル交換反応を効率よく行うアルキルアリールカーボネートの製造方法の提供を課題とする。さらには、上記で製造されたアルキルアリールカーボネートを用いたジアリールカーボネートの製造方法、および該ジアリールカーボネートを用いたポリカーボネートの製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、芳香族ヒドロキシ化合物とジアルキルカーボネートのエステル交換反応を気相で行う場合、チタンと、周期律表の第V族または第VIの金属からなる第2金属成分を特定の含有率で含む金属複合酸化物を触媒として用いることにより、充分な反応速度を保ちながら、選択性を向上させることが出来ることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、
(1)芳香族ヒドロキシ化合物とジアルキルカーボネートを、チタンと、周期律表第V族及び/または第VIの金属からなる第2金属成分を含む金属複合酸化物の存在下で気相反応により反応させるアルキルアリールカーボネートの製造法において、前記金属複合酸化物中の第2金属成分の含有量がチタン含有量に対して0.1〜2.0mol%であることを特徴とするアルキルアリールカーボネートの製造法、
(2)前記第2金属成分がバナジウムである上記(1)に記載のアルキルアリールカーボネートの製造法、
(3)前記芳香族ヒドロキシ化合物がフェノールであり、前記ジアルキルカーボネートがジメチルカーボネートであり、前記アルキルアリールカーボネートがメチルフェニルカーボネートである上記(1)もしくは(2)に記載のアルキルアリールカーボネートの製造法、
(4)上記(1)〜(3)に記載の方法により製造されたアルキルアリールカーボネートをエステル交換反応させることを特徴とするジアリールカーボネートの製造法、
(5)前記ジアリールカーボネートがジフェニルカーボネートである上記(4)に記載のジアリールカーボネートの製造法、
(6)上記(5)に記載の方法により製造されたジフェニルカーボネートとビスフェノールAを溶融重合させることを特徴とするポリカーボネートの製造法、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、芳香族ヒドロキシ化合物とジアルキルカーボネートのエステル交換反応でアルキルアリールカーボネートを製造する方法において、充分な反応速度を保ちながら、選択性の高い方法が提供された。また、このように製造されたアルキルアリールカーボネートを原料としてジアリールカーボネートを製造し、さらにこれを用いてポリカーボネートを効率よく、有害な成分を用いることなく製造する方法が提供された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のアルキルアリールカーボネートの製造方法は、芳香族ヒドロキシ化合物とジアルキルカーボネートを、チタンと、周期律表の第V族または第VI族の金属からなる第2金属成分を含む金属複合酸化物の存在下で気相反応により反応させるアルキルアリールカーボネートの製造法において、前記金属複合酸化物中の第2金属成分の含有量が金属含有量がチタン含有量に対して0.1〜2.0mol%であることを特徴とするものである。
【0010】
(原料)
本発明の方法に用いられる芳香族ヒドロキシ化合物としては、芳香環に置換されているヒドロキシ基の数によって芳香族モノヒドロキシ化合物、芳香族ジヒドロキシ化合物、芳香族トリヒドロキシ化合物などがあるが、好ましくは芳香族モノヒドロキシ化合物がよい。具体的には、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、2−(又は3−、4−)エチルフェノール等の炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキルフェノールや、2−(又は3−、4−)メトキシフェノール、2−(又は3−、4−)エトキシフェノール等の炭素数1〜12のアルコキシ基を有するアルコキシフェノールや、2−(又は3−、4−)ニトロフェノール等のニトロ基を有するニトロフェノールや、2−(又は3−、4−)フルオロフェノール、2−(又は3−、4−)クロロフェノール等のハロゲン原子を有するハロゲノフェノールや、α−ナフトール、β−ナフトール等のナフトール等が挙げられるが、これらのうち、特にフェノールが好ましい。
【0011】
また、ジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、ジオクチルカーボネート等の炭素数1〜12の直鎖アルキル基および分岐アルキル基を有するカーボネートがよい。また、メチルエチルカーボネートのような異なる二つのアルキル基を有するカーボネートでもよく、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートのような環状カーボネートでもよい。この中でも特にジメチルカーボネートが好ましい。
【0012】
(金属複合酸化物)
本発明の方法で用いられる金属複合酸化物とは、チタンと、周期律表の第V族または第VI族の金属からなる第2金属成分を含み、かつ、該金属複合酸化物中の第2金属成分の含有量がチタン含有量に対して0.1〜2.0mol%であることを特徴とするものである。この金属複合酸化物は、通常の複合酸化物触媒を調製する方法を用いて調製することが出来る。具体的には、例えば、チタンおよび上記第2金属成分の金属元素、またはその化合物を含有する水溶液(または水分散液)を乾燥して得られた粉体を熱処理した後、成型、焼成処理をして得る方法等(例えば、講談社サイエンティフィク 触媒調製化学、講談社(1980)、p214-215)が挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。
【0013】
チタン、周期律表の第V族、第VI族の金属元素の化合物としては、具体的には、チタン、周期律表の第V族、第VI族の金属化合物のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、酸化物、カルボン酸塩、カルボン酸アンモニウム塩、ハロゲン化アンモニウム塩、水素酸、アセチルアセトナート、アルコキシド等が挙げられる。これらのうち、チタン化合物としては四塩化チタン、周期律表の第V族、第VI族の金属化合物としてはアンモニウム塩が好ましい。
【0014】
本発明の金属複合酸化物中の第2金属成分は、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン等であり、金属複合酸化物中には、第2金属成分としてこの中の少なくとも1種以上が含まれる。これらのうち、バナジウム、モリブデンが好ましく、特にバナジウムが好ましい。これらの第2金属成分の、金属複合酸化物中のチタンに対する含有量は、その合計量として、0.1〜2.0mol%である、さらに好ましくは0.1〜1.0mol%である。金属複合酸化物中の第2金属成分の含有量がチタン含有量に対して0.1mol%より少ないと、比表面積、細孔容積が十分に得られないという問題があり、逆に2mol%より多いと、酸強度に対する影響が大きく、酸強度が強くなりすぎる、あるいは弱くなりすぎるという問題がある。酸強度については、例えば上記非特許文献2に記載の方法等に基づき、混合する2種類以上の金属の選出、混合する際の組成、触媒の焼成条件等により、より最適な酸強度を有する金属複合酸化物を調製することも可能である。
本発明の金属複合酸化物には、上記のチタン、周期律表の第V族もしくは第VI族の金属以外に、ナトリウム、マグネシウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ジルコニウム、セリウム、タングステンなどの金属をさらに含んでいてもよい。
【0015】
(エステル交換反応)
本発明のアルキルアリールカーボネートの製造方法で行われるエステル交換反応は、気相で行われる。反応条件、方法は、反応原料、触媒、装置などに応じて、一般的に用いられる方法から適宜選択することができるが、原料である芳香族ヒドロキシ化合物、ジアルキルカーボネートが共に気体状態となる温度、条件であることが必要である。具体的には、320〜600℃の温度で反応を行うことが好ましい。また、金属複合酸化物の量は、空間速度(SV)が1000〜10000となる範囲が好ましい。
【0016】
本発明のエステル交換反応では、通液を開始してからしばらくは安定化しないので、ある程度反応液を通液してから反応を開始させることがよい。この安定化のための通液時間は、好ましくは通液開始後8時間以上であり、さらに好ましくは12時間以上である。
かくして製造された、アルキルアリールカーボネートはそれ自体公知の通常用いられる方法により適宜精製され、取得することができる。
【0017】
(ジアリールカーボネートの製造方法)
本発明のアルキルアリールカーボネートの製造方法により得られたアルキルアリールカーボネートを、酸性触媒存在下、液相で不均化反応させて、生成するジアルキルカーボネートを除去することによりジアリールカーボネートが製造される。酸性触媒は公知の触媒を用いることができる。
上記不均化反応は、公知の温度、圧力で行うことが出来るが、150〜250℃、0.01〜2.0Paの反応条件で反応させることが好ましい。生成するジアルキルカーボネートの除去方法に制限はないが、反応蒸留装置により、生成物を除去しながら反応を進行させる方法が好ましい。必要に応じて、残存触媒の除去などの精製をさらに行っても良い。
【0018】
(ポリカーボネートの製造方法)
上述のごとく得られたジアルキルカーボネートとして、ジフェニルカーボネートについては、ビスフェノールAをアルカリ触媒存在下、反応させてポリカーボネートを製造することができる。このポリカーボネートの製造方法としては、それ自体公知の通常用いられる方法が挙げられるが、例えば、プラスティック材料講座 ポリカーボネート樹脂、第2版 p62-65、日刊工業新聞社(1976)に記載の方法等が用いられる。また、アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウムのようなアルカリ金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸セシウムのような炭酸塩などの各種塩、水酸化テトラメチルアンモニウムのような水酸化アンモニウム化合物などを使用することができる。
【0019】
反応温度は、120〜300℃の範囲において重合が進行するに従い、段階的に温度をあげていくのが好ましく、最終重合段階の温度は250℃〜300℃が好ましい。反応圧力も重合が進行するに従い、段階的に減圧度をあげていくのが好ましく、最終重合段階の減圧度は1kPa以下が好ましい。
【実施例】
【0020】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
(1) 金属複合酸化物調製
四塩化チタン(和光純薬社製、特級試薬)500gを、純水1.5Lに10℃以下で滴下し、25wt%四塩化チタン水溶液とした。この四塩化チタン水溶液400ml(チタニア換算で51.67g)を、4規定に調製したアンモニア水溶液(和光純薬社製、特級試薬)により5〜10℃の低温で中和処理し、生成したヒドロゲルを、吸引ろ過、純水洗浄して、チタンのヒドロゲルケーキとした。得られたヒドロゲルケーキを純水に分散し、メタバナジン酸アンモニウム(新興化学工業社製、工業試薬)302.7mgを水溶液として添加した後、分散器で混合撹拌(7500rpm、15分)し、得られたスラリー溶液を、恒温乾燥機にて300℃で一晩濃縮乾燥、塩分解を行った。
【0021】
次いで、得られた固体に水を添加し、クリーム状になるまで自動乳鉢により粉砕、混合した。このクリーム状スラリーを、テフロン(登録商標)バットに移して、循環式乾燥機で、150℃、一晩乾燥した。得られた固体をプレス成型器により約2cmφのディスク状に成型した後、マッフル炉にて450℃、3時間焼成して金属複合酸化物とした。以上の操作はすべて空気中で行った。仕込み量により算出した触媒中の金属成分モル組成を表1に示す。
【0022】
(2) 反応および分析
上記(1)で得られた金属複合酸化物を、触媒としての評価のために10〜20メッシュに粉砕製粒し、内径10mmのSUS製反応管に充填した。その後、反応器の周りにセラミックヒーターを取り付け、窒素ガスを0.5L/hrで流しながら1時間かけて400℃に加熱した。次いで炭酸ジメチル−フェノール混合液(炭酸ジメチル:フェノール(モル比)=10:1)をプランジャーポンプを用いて12ml/hrで12時間、反応管にフィードした。このときの空間速度(SV)は1800であった。
【0023】
得られた反応生成物を、1時間毎に採取して、ガスクロマトグラフィー(島津GC−1700及び2014 カラム:GLScience社製TC−5、カラム温度:50℃〜300℃、注入口温度:300℃)により分析したところ、通液時間8時間の採取液で炭酸メチルフェニルの収率は26.5%、選択率は96.6%、通液時間12時間の採取液で炭酸メチルフェニルの収率は23.6%、選択率は96.9%であった。この結果を表1に示した。
【0024】
実施例2
実施例1の触媒調製において、メタバナジン酸アンモニウムの添加量を151.4mgとした他は実施例1と同様に触媒調製、反応および、分析を行った。
反応及び、分析において、通液時間8時間の採取液で炭酸メチルフェニルの収率は21.9%、選択率は96.4%、通液時間29時間の採取液で炭酸メチルフェニルの収率は13.1%、選択率は95.0%であった。この結果を表1に示した。
【0025】
実施例3
実施例1の触媒調製において、メタバナジン酸アンモニウムの添加量を717.1mgとした他は実施例1と同様に触媒調製、反応および、分析を行った。
反応及び、分析において、通液時間8時間の採取液で炭酸メチルフェニルの収率は14.6%、選択率は90.5%、通液時間29時間の採取液で炭酸メチルフェニルの収率は9.6%、選択率は91.0%であった。この結果を表1に示した。
【0026】
実施例4
実施例1の触媒調製において、四塩化チタン水溶液を200ml(チタニア換算で25.83g)使用して、パラモリブデン酸アンモニウム(日本無機化学工業製、工業試薬)228.5mgを水溶液として添加した。また触媒の焼成条件を500℃、4時間とした他は実施例1と同様に触媒調製を行った。
実施例1と同様に反応、分析を行った結果、通液時間8時間の採取液で炭酸メチルフェニルの収率は18.1%、選択率は95.5%、通液時間30時間の採取液で炭酸メチルフェニルの収率は12.1%、選択率は97.6%であった。実施例1〜4において使用した触媒の組成、反応の結果を表1に示した。
【0027】
比較例1
実施例1の触媒調製において、メタバナジン酸アンモニウムの添加量を7.171gとした他は実施例1と同様に触媒調製、反応および、分析を行った。
反応及び、分析において、通液時間8時間の採取液で炭酸メチルフェニルの収率は2.7%、選択率は82.3%、通液時間29時間の採取液で炭酸メチルフェニルの収率は1.4%、選択率は81.2%であった。この結果を表1に示した。
【0028】
比較例2
実施例1の触媒調製において、四塩化チタン水溶液を652ml(チタニア換算で84.22g)使用して、メタバナジン酸アンモニウムの代わりにシリカゲルアエロジエル(日本アエロジエル製、工業試薬)57.03gを固体で添加した。また触媒の焼成条件を500℃、4時間とした他は実施例1と同様に触媒調製を行った。
実施例1と同様に反応、分析を行った結果、通液時間8時間の採取液で炭酸メチルフェニルの収率は6.6%、選択率は91.5%であった。この結果を表1に示した。
【0029】
比較例3
実施例1の触媒調製において、四塩化チタン水溶液100ml(チタニア換算で38.74g)を使用して、メタバナジン酸アンモニウムの代わりに50重量%メタタングステン酸アンモニウム水溶液(日本無機化学工業製)22.50gを添加した。また触媒の焼成条件を500℃、3時間とした他は実施例1と同様に触媒調製を行った。
反応、分析を行った結果、通液時間8時間の採取液で炭酸メチルフェニルの収率は2.0%、選択率は62.5%、通液時間30時間の採取液で炭酸メチルフェニルの収率は1.3%、選択率は78.4%であった。この結果を表1に示した。
【0030】
比較例4
実施例1の触媒調製において、四塩化チタン水溶液200ml(チタニア換算で25.83g)を使用して、メタバナジン酸アンモニウム(新興化学工業製)151.3mgに加え、50重量%メタタングステン酸アンモニウム水溶液(日本無機化学工業製)15.00gを添加した。また触媒の焼成条件を500℃、3時間とした他は実施例1と同様に触媒調製を行った。
【0031】
実施例1と同様に反応、分析を行った結果、通液時間8時間の採取液で炭酸メチルフェニルの収率は3.9%、選択率は68.3%、通液時間30時間の採取液で炭酸メチルフェニルの収率は2.9%、選択率は83.7%であった。比較例1〜4において使用した触媒の組成、反応の結果を表1に示した。
【0032】
【表1】

【0033】
実施例5 ジフェニルカーボネートの製造
高さ30cmの充填塔が備え付けられた容積1Lのステンレス製オートクレーブに、実施例1で得られたメチルフェニルカーボネート380g(2.5mol)と、ジブチルスズオキシド6.3g(0.025mol)加え、窒素雰囲気下180℃,9.5atmで反応蒸留した。反応は充填塔上部より抜き出されるジメチルカーボネートが留出しなくなるまで行った。
塔底よりジフェニルカーボネートを主成分とする塔底液269gを得た。これをさらに窒素雰囲気下 180℃、20Torrで減圧蒸留することにより、搭頂より高純度のジフェニルカーボネート245gを得た。
【0034】
実施例6 ポリカーボネートの製造
実施例5で得られたジフェニルカーボネート220g(1.03mol)と、ビスフェノールA(三菱化学社製)226g(1.00mol)、触媒として炭酸セシウムを水溶液(0.005mol/l)で0.1mlで加え、高粘度における攪拌が可能な重合装置に充填し、窒素置換した後に210℃まで加熱溶融させた。100Torrまで減圧にし、留出してくるフェノールを除去しながら60分間反応させたのちに、さらに 240℃、15Torr、260℃,0.5Torr、270℃,0.5Torrと減圧度と温度を段階的に上昇させながら、それぞれ各60分づつ反応させて、透明なポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートの粘度平均分子量はMv=20000であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ヒドロキシ化合物とジアルキルカーボネートを、チタンと、周期律表第V族及び/または第VI族の金属からなる第2金属成分を含む金属複合酸化物の存在下で気相反応により反応させるアルキルアリールカーボネートの製造法において、前記金属複合酸化物中の第2金属成分の含有量がチタン含有量に対して0.1〜2.0mol%であることを特徴とするアルキルアリールカーボネートの製造法。
【請求項2】
前記第2金属成分がバナジウムである請求項1に記載のアルキルアリールカーボネートの製造法。
【請求項3】
前記芳香族ヒドロキシ化合物がフェノールであり、前記ジアルキルカーボネートがジメチルカーボネートであり、前記アルキルアリールカーボネートがメチルフェニルカーボネートである請求項1もしくは2に記載のアルキルアリールカーボネートの製造法。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の方法により製造されたアルキルアリールカーボネートをエステル交換反応させることを特徴とするジアリールカーボネートの製造法。
【請求項5】
前記ジアリールカーボネートがジフェニルカーボネートである請求項4に記載のジアリールカーボネートの製造法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法により製造されたジフェニルカーボネートとビスフェノールAを溶融重合させることを特徴とするポリカーボネートの製造法。




【公開番号】特開2009−242301(P2009−242301A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91015(P2008−91015)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】