説明

アルキルオキシヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法

【課題】感熱記録材料の顕色剤として有用なアルキルオキシヒドロキシジフェニルスルホンを、煩雑な精製を必要とせず、穏和な条件で効率よく高純度でしかも高収率で得ることができるアルキルオキシヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法を提供する。
【解決手段】一般式[1]で表される化合物の不飽和炭化水素基に、ヒドラジン化合物と酸化剤を用いて水素添加することにより、一般式[2]で表される化合物とすることを特徴とするアルキルオキシヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。ただし、式中、R1は、炭素数2〜8の不飽和炭化水素基であり、R2は、炭素数2〜8のアルキル基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルオキシヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、感熱記録材料の顕色剤として有用なアルキルオキシヒドロキシジフェニルスルホンを、煩雑な精製を必要とせず、穏和な条件で効率よく高純度でしかも高収率で得ることができるアルキルオキシヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱記録材料は、紙、合成紙、プラスチックフィルムなどの支持体上に、加熱などのエネルギーにより発色する発色層を有する材料であり、各種携帯端末などのサーマルプリンター、超音波エコーなどに付属する医療画像プリンター、心電図や分析機器などのサーモペンレコーダ、航空券、乗車券、商品のPOS用ラベルなどに利用されている。
これらの感熱記録材料は、通常、発色物質としての無色又は淡色のロイコ染料と、発色物質と反応してデータを記録させる顕色剤とを、それぞれ微粉砕により溶媒に分散し、必要に応じて、発色物質や顕色剤の効果を高めるための増感剤、ワックス、界面活性剤、消泡剤、無機顔料などを添加し、さらに水溶性樹脂などの結合剤を加えて、これを紙などの支持体上に塗布して発色層を形成し、乾燥して製造する。顕色剤としては、主に各種のフェノール化合物が多用されており、中でもジフェニルスルホン系化合物が、発色感度、保存性、耐光性の点で優れている。
例えば、発色感度の向上した低温で鮮明な発色をする感熱記録紙として、無色ないし淡色の発色性物質と、4−ブトキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンを含有する感熱記録紙が提案され、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホンとブチルブロマイドとをナトリウムエトキシドの存在下に反応させ、未反応のブチルブロマイドと副生成物の4,4'−ジブトキシジフェニルスルホンを除去し、クロロホルム抽出により得られた4−ブトキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンの粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフで精製する方法が記載されている(特許文献1)。
発色性を向上させた感熱記録材料として、電子供与性無色染料と、4−アルキルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンなどの電子受容性化合物を含有する感熱記録材料が提案され、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホンとオクチルブロマイドとを炭酸カリウムの存在下に反応させ、得られた生成物をシリカゲルカラムを使用して精製する方法が例示されている(特許文献2)。
発色感度が高く、保存性に優れた熱感応性発色性記録材料として、酸性物質によって発色する無色又は淡色の発色性染料と、4−イソプロポキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンを含有する熱感応性発色性記録材料が提案され、4,4'−ジヒドロキジフェニルスルホンとイソプロピルブロマイドを臭化カリウムの存在下に反応させ、生成物をクロロホルムにより抽出し、シリカゲルカラムを使用して精製する方法が例示されている(特許文献3)。
上記の文献には、4−アルキルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンを得るために、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホンと対応するアルキルハライドとをほぼ等モルずつ、エタノールやジメチルホルムアミド中で反応させる方法が記載されている。しかし、これらの反応においては、反応の選択性を向上させることが困難であるという欠点があり、ジエーテル化合物、すなわち、4,4'−ジアルキルオキシジフェニルスルホンが副生する。一方で、4,4'−ジアルキルオキシジフェニルスルホンが大量に副生するのを抑えるために、アルキルハライドの使用量を少なくしたり、穏やかな反応条件を採用したりすると、ジヒドロキシジフェニルスルホンが未反応のまま残り、感熱記録材料の地肌カブリが発生する原因となる。したがって、これらの副生物や未反応物を除去するために精製工程を必要としていた。
例えば、4−置換ヒドロキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンを純度よく工業的に容易に製造する方法として、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホンをアルキル化、シクロアルキル化又はベンジル化して4−置換ヒドロキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンを製造するに際し、反応生成物である4−置換ヒドロキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンとそれと共存している未反応の4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホンの水非混和性有機溶媒溶液を炭酸水素塩水溶液と振盪することによって、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホンを水層中に移行させて除去する方法が提案され、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホンとn−ブチルブロマイドとを炭酸カリウムの存在下に反応させ、生成物をクロロホルムに溶解し、炭酸水素ナトリウム水溶液により未反応の4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホンを除去し、トルエンを用いて4−n−ブトキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンを再結晶する方法が例示されている(特許文献4)。
また、安価な溶媒を使用し、目的物が選択性よく、経済的に製造できる4−アルキルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンなどの製造方法として、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン1モルに対し、1.5〜3モルのアルカリの存在下、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン1質量部に対し、0.3〜1.5質量部の水溶媒中でアルキルハライドなどを反応させる方法が提案され、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホンとn−プロピルブロマイドとを水酸化ナトリウムの存在下に反応させ、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン25%、4−n−プロポキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホン68%、4,4'−ジ−n−プロポキシジフェニルスルホン7%の混合物とし、トルエンによりジエーテル体を抽出除去したのち、4−n−プロポキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンを酢酸エチル層に、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホンを水層に移行させて分離する方法が例示されている(特許文献5)。
しかしながら、上記のような方法では4−置換ヒドロキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンを単離するためには複数の精製工程を必要とするために、作業が煩雑であったり、収率が低下するという問題があった。また、このような複数の精製を行っても4−置換ヒドロキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンの純度が不十分であって高純度品が得られないという問題を有している。
【特許文献1】特開昭58−20493号公報
【特許文献2】特開昭58−82788号公報
【特許文献3】特開昭60−13852号公報
【特許文献4】特開昭60−56949号公報
【特許文献5】特開平4−210955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、感熱記録材料の顕色剤として有用なアルキルオキシヒドロキシジフェニルスルホンを、煩雑な精製を必要とせず、穏和な条件で効率よく高純度でしかも高収率で得ることができるアルキルオキシヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、アルケニルオキシヒドロキシジフェニルスルホンのアルケニル基の不飽和結合に、ヒドラジン化合物と酸化剤を用いて水素添加することにより、目的とするアルキルオキシヒドロキシジフェニルスルホンを穏和な条件で効率よく高純度でしかも高収率で製造し得ることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)一般式[1]で表される化合物の不飽和炭化水素基に、ヒドラジン化合物と酸化剤を用いて水素添加することにより、一般式[2]で表される化合物とすることを特徴とするアルキルオキシヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法、
【化1】

(ただし、式中、R1は、炭素数2〜8の不飽和炭化水素基であり、R2は、炭素数2〜8のアルキル基である。)、
(2)一般式[1]で表される化合物が4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンであり、一般式[2]で表される化合物が4−n−プロポキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンである(1)記載のアルキルオキシヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法、及び、
(3)酸化剤が、過ヨウ素酸、その塩、過酸化物、過酸化水素又は酸素である(1)記載のアルキルオキシヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の製造方法によれば、アルキルオキシヒドロキシジフェニルスルホンを、従来方法での副生物であるジアルキルエーテル化合物を生成することなく、穏和な条件で効率よく高純度でしかも高収率で製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のアルキルオキシヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法においては、一般式[1]で表される化合物の不飽和炭化水素基に、ヒドラジン化合物と酸化剤を用いて水素添加をすることにより、一般式[2]で表される化合物とする。
【化2】

ただし、式中、R1は、炭素数2〜8の不飽和炭化水素基であり、R2は、炭素数2〜8のアルキル基である。
一般式[1]においてR1で表される炭素数2〜8の不飽和炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよい。このような不飽和炭化水素基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−メチルアリル基、イソブテニル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、へキセニル基、1−ブチル−2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、2−ペンテン−4−イニル基などを挙げることができる。これらの基の中で、R1が、炭素数2〜8のアルケニル基であることが好ましく、炭素数2〜6のアルケニル基であることがより好ましく、アリル基であることがさらに好ましい。R1の炭素数が9以上であると、アルキルオキシヒドロキシジフェニルスルホン又はその塩の反応溶媒への溶解性が低下して、ヒドラジン化合物による水素添加反応が進行しにくくなるおそれがある。
【0007】
一般式[2]においてR2で表される炭素数2〜8のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよい。このような基としては、例えば、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、へキシル基、オクチル基などを挙げることができる。これらの中で、R2が炭素数2〜6のアルキル基であることが好ましく、プロピル基であることがより好ましい。
本発明方法に用いるヒドラジン化合物に特に制限はなく、例えば、無水ヒドラジン、ヒドラジン一水和物、中性硫酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、炭酸ヒドラジン、リン酸ヒドラジン、臭化水素酸ヒドラジン、二臭化水素酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジンなどを挙げることができる。これらのヒドラジン化合物は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの中で、反応時間が短くなることから、無水ヒドラジン及びヒドラジン一水和物を好適に用いることができ、安全性や取り扱い性の面からヒドラジン一水和物を特に好適に用いることができる。
【0008】
本発明方法に用いる酸化剤に特に制限はなく、例えば、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムなどの過マンガン酸塩、硫酸マンガン(III)、酢酸マンガン(III)、トリス(アセチルアセトナト)マンガン(III)などのマンガン(III)塩、酸化マンガン(IV)などの酸化マンガンなどのマンガン化合物;クロム酸カリウム、重クロム酸ナトリウムなどのクロム酸化合物;酢酸鉛(IV)、酸化鉛(II)、酸化鉛(IV)などの鉛化合物;酢酸水銀(II)、酸化水銀(II)などの水銀化合物;酸化セレン(IV)、亜セレン酸などのセレン化合物;臭素、塩素、ヨウ素などのハロゲン、次亜臭素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウムなどの次亜ハロゲン酸塩、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウムなどのハロゲン酸塩、フッ化ペルクロリルなどのハロゲン酸フッ化物、オルト過ヨウ素酸、メタ過ヨウ素酸ナトリウム、メタ過ヨウ素酸カリウムなどの過ヨウ素酸及びその塩、次亜ヨウ素酸t−ブチル、次亜臭素酸t−ブチル、次亜塩素酸t−ブチルなどの次亜ハロゲン酸エステル;過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−t−ブチル、過酸化ジクミル、過酸化クミルt−ブチル、過安息香酸t−ブチル、過安息香酸t−へキシル、ジオキシランなどの過酸化物;酸化銀(I)、酸化銀(II)、硝酸銀(I)、酢酸銀(I)などの銀化合物;塩化鉄(III)、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウムなどの鉄化合物;酢酸タリウム(III)、硝酸タリウム(III)、硫酸タリウム(III)などのタリウム化合物;酢酸セリウム(IV)、硝酸セリウム(IV)、硫酸セリウム(IV)などのセリウム化合物;五酸化バナジウム、バナジン酸ナトリウム、三塩化酸化バナジウムなどのバナジウム化合物;ビスマス酸ナトリウム、酢酸ビスマス(III)などのビスマス化合物;塩化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)などのパラジウム化合物;二酸化ニッケルなどの酸化ニッケル;二酸化窒素、四酸化二窒素などの窒素化合物;過酸化水素;酸素;オゾンなどを挙げることができる。これらの酸化剤は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの中で、水素添加の反応性を高めることができることから、過ヨウ素酸及びその塩、過酸化物、過酸化水素、酸素を好適に用いることができ、純度や収率を高め、環境負荷が小さく、取り扱いが容易であることから、過酸化水素、酸素を特に好適に用いることができる。本発明に用いられる酸素は、空気中に含まれる酸素を空気のまま用いることができる。
【0009】
一般式[1]においてR1で表される不飽和炭化水素基に水素添加する際には、一般式[1]で表される化合物1モルに対して、ヒドラジン化合物1〜10モルを用いることが好ましく、1.2〜5モルを用いることがより好ましい。一般式[1]で表される化合物1モルに対して、ヒドラジン化合物の使用量が1モル未満であると、水素添加反応が十分に進行せず、一般式[1]で表される化合物が未反応のまま残存するおそれがある。一般式[1]で表される化合物1モルに対して、ヒドラジン化合物の使用量が10モルを超えても、水素添加の反応性は向上せず、経済性及び廃液処理などの作業性の点から問題が生ずるおそれがある。
一般式[1]においてR1で表される不飽和炭化水素基に水素添加する際には、ヒドラジン化合物1モルに対して、酸化剤0.1〜1.5モルを用いることが好ましく、0.3〜1.2モルを用いることがより好ましい。ヒドラジン化合物1モルに対して、酸化剤の使用量が0.1モル未満であると、水素添加の反応性向上が十分に発現しないおそれがある。ヒドラジン化合物1モルに対して、酸化剤の使用量が1.5モルを超えても、水素添加の反応性は向上せず、経済性及び廃液処理などの作業性の点から問題が生ずるおそれがある。
本発明方法においては、ヒドラジン化合物と酸化剤による水素添加反応の補助剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;硫酸銅(II)、塩化銅(I)、塩化銅(II)、酢酸銅(II)、酸化銅(II)などの銅化合物などを使用することができる。ヒドラジン化合物による水素添加反応の補助剤を使用することにより、反応速度をさらに向上させることができる。
【0010】
本発明方法においては、反応溶媒として、水又は有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、ヒドラジン化合物により還元されない溶媒であれば特に制限はなく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類、グリコール類のモノアルキルエーテル類、グリコール類のジアルキルエーテル類、飽和脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類などを挙げることができる。これらの溶媒は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの中で、水、アルコール類、グリコール類及びそれらの混合溶媒を好適に用いることができる。
本発明方法において、水素添加反応は、反応容器に、一般式[1]で表される化合物、反応溶媒、必要に応じて添加する補助剤を仕込み、いったん溶解させたのちに、ヒドラジン化合物を注加又は滴下して加え、そこに酸化剤を注加又は滴下して行うことができる。反応温度及び反応時間は、常圧において、40〜100℃で0.5〜20時間であることが好ましく、60〜90℃で1〜6時間であることがより好ましい。反応終了後、反応生成物を析出させ、単離して洗浄したのち、必要に応じて再結晶することにより高純度のアルキルオキシヒドロキシジフェニルスルホンを得ることができる。
本発明のアルキルオキシヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法は、4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンの水素添加による4−n−プロポキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンの製造に特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0011】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた4ツ口フラスコに、水酸化ナトリウム4gと水116gを入れ、溶解したのち、4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホン(純度99質量%、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン他の成分が1質量%)29gを入れて加熱溶解させた。80℃まで加熱し、ヒドラジン一水和物の60質量%水溶液16.7gを30分かけて滴下したのち、溶液中に常温の空気を、液温を80℃に保ちながら12時間、空間速度(SV)30h-1にて吹き込み続けた。その後、常温まで冷却し、50質量%硫酸水溶液にてpH5に調整したところ白色結晶が析出した。この結晶をろ別し、水洗、乾燥したところ反応生成物28gが得られた。反応生成物の組成を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析し、ピーク面積比から、4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンが3質量%、4−n−プロポキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンが96質量%、その他の成分が1質量%であった。
実施例2
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた4ツ口フラスコに、水酸化ナトリウム4gと水116gを入れ、溶解したのち、4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホン(純度99質量%、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン他の成分が1質量%)29gを入れて加熱溶解させた。80℃まで加熱し、ヒドラジン一水和物の60質量%水溶液16.7gを30分かけて滴下したのち、さらに過酸化水素の30質量%水溶液22.7gを5時間かけて滴下し反応させた。その後、常温まで冷却し、50質量%硫酸水溶液にてpH5に調整したところ白色結晶が析出した。この結晶をろ別し、水洗、乾燥したところ反応生成物28gが得られた。反応生成物の組成を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析し、ピーク面積比から、4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンが1質量%、4−n−プロポキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンが98質量%、その他の成分が1質量%であった。
実施例3
実施例2で使用したヒドラジン一水和物の60質量%水溶液16.7gと過酸化水素の30質量%水溶液22.7gの代わりに、ヒドラジン一水和物の60質量%水溶液33.4gと過酸化水素の30質量%水溶液17.0gを使用した以外は、実施例2と同じ操作を行って、反応生成物28gを得た。反応生成物の組成を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析し、ピーク面積比から、4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンが2質量%、4−n−プロポキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンが97質量%、その他の成分が1質量%であった。
実施例4
実施例2で使用した4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホン29gの代わりに、4−(2−メチル−2−プロぺニル)オキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホン(純度99質量%、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン他の成分が1質量%)30gを使用した以外は、実施例2と同じ操作を行って、反応生成物29gを得た。反応生成物の組成を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析し、ピーク面積比から、4−(2−メチル−2−プロペニル)オキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンが1質量%、4−イソブトキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンが98質量%、その他の成分が1質量%であった。
実施例5
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた4ツ口フラスコに、4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホン(純度99質量%、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン他の成分が1質量%)29g及びエタノール116gを入れて加熱溶解させた。50℃まで加熱し、ヒドラジン一水和物の60質量%水溶液16.7gを30分かけて滴下したのち、溶液中に常温の空気を、液温を50℃に保ちながら12時間、空間速度(SV)30h-1にて吹き込み続けた。その後、使用したエタノールの溶媒濃度が50質量%となるよう水を添加し、エタノールを共沸にて65g留去し、常温まで冷却したところ白色結晶が析出した。この結晶をろ別し、水洗、乾燥したところ反応生成物28gが得られた。反応生成物の組成を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析し、ピーク面積比から、4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンが3質量%、4−n−プロポキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンが96質量%、その他の成分が1質量%であった。
実施例6
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた4ツ口フラスコに、4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホン(純度99質量%、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン他の成分が1質量%)29g及びエタノール116gを入れて加熱溶解させた。50℃まで加熱し、ヒドラジン一水和物の60質量%水溶液16.7gを30分かけて滴下したのち、さらに過酸化水素の30質量%水溶液13.6gを1時間かけて滴下し、滴下終了後、50℃で6時間反応させた。その後、使用したエタノールの溶媒濃度が50質量%となるよう水を添加し、エタノールを共沸にて65g留去し、常温まで冷却したところ白色結晶が析出した。この結晶をろ別し、水洗、乾燥したところ反応生成物28gが得られた。反応生成物の組成を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析し、ピーク面積比から、4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンが4質量%、4−n−プロポキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンが95質量%、その他の成分が1質量%であった。
実施例7
実施例6で使用した過酸化水素の30質量%水溶液13.6gの代わりに、過酸化t−ブチルクミルの50質量%エタノール溶液62.5gを使用した以外は、寒施例6と同じ操作を行って反応生成物26gを得た。反応生成物の組成を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析し、ピーク面積比から、4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンが8質量%、4−n−プロポキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンが91質量%、その他の成分が1質量%であった。
実施例8
実施例6で使用した過酸化水素の30質量%水溶液13.6gの代わりに、オルト過ヨウ素酸の50質量%水溶液68.4gを使用した以外は、実施例6と同じ操作を行って反応生成物25gを得た。反応生成物の組成を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析し、ピーク面積比から、4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンが7質量%、4−n−プロポキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンが92質量%、その他の成分が1質量%であった。
比較例1
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた4ツ口フラスコに、水酸化ナトリウム8gと水25gを入れ、溶解したのち、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン25gを加え、加熱溶解した。液温が70℃になるまで加熱したのち、n−プロピルブロマイド12.3gを1時間かけて滴下し、さらに65〜72℃で12時間反応させた。反応生成物の組成を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析し、ピーク面積比から、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホンが25質量%、4−n−プロポキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンが65質量%、4,4'−ジ−n−プロポキシジフェニルスルホンが10質量%であった。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明の製造方法によれば、アルキルオキシヒドロキシジフェニルスルホンを穏和な条件で効率よく高純度でしかも高収率で製造することが可能となる。ジヒドロキシジフェニルスルホンとアルキルハライドから製造する従来方法と比較して、ジアルキルエーテル化合物が副生せず、また地肌カブリなどの感熱記録材料としての欠点の原因となるジヒドロキシジフェニルスルホンが残存しないことから、これらの化合物を除去するための複数の精製工程を必要とせず、容易に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[1]で表される化合物の不飽和炭化水素基に、ヒドラジン化合物と酸化剤を用いて水素添加することにより、一般式[2]で表される化合物とすることを特徴とするアルキルオキシヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
【化1】

(ただし、式中、R1は、炭素数2〜8の不飽和炭化水素基であり、R2は、炭素数2〜8のアルキル基である。)
【請求項2】
一般式[1]で表される化合物が4−アリルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンであり、一般式[2]で表される化合物が4−n−プロポキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンである請求項1記載のアルキルオキシヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
【請求項3】
酸化剤が、過ヨウ素酸、その塩、過酸化物、過酸化水素又は酸素である請求項1記載のアルキルオキシヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。

【公開番号】特開2008−133193(P2008−133193A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318125(P2006−318125)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】