説明

アルキルベンゼン化合物の製造方法

【課題】潤滑油、医薬品、界面活性化剤分野等で有用な式(3)




(式中、Rは水素原子、またはメチル基を表わし、Rは水素原子、直鎖状アルキル基、またはアリール基を表わす。)で示されるアルキルベンゼン化合物の製造方法を提供すること。
【解決手段】
式(1)



で示されるベンジルマグネシウムクロリドをテトラヒドロフラン溶媒中で式(2)



(式中、Xは臭素原子、またはヨウ素原子を表わし、Rは水素原子、またはメチル基を表わし、Rは水素原子、直鎖状アルキル基、またはアリール基を表わす。)
で示されるハロゲン化アルキルと反応させることを特徴とする式(3)



(式中、RおよびRは前記のとおり。)
で示されるアルキルベンゼン化合物の製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
潤滑油、医薬品原料、アニオン系界面活性剤原料として有用なアルキルベンゼン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキルベンゼン化合物は、潤滑油、医薬品原料、アニオン系界面活性剤原料として広範に用いられており、化学産業の中で重要な化合物群として位置付けられている。例えば、アルキルベンゼン化合物そのもの自体、または接触還元を経たナフテン系化合物が潤滑油として使用されている。また、アルキルベンゼン化合物をスルホン化した後、アルキルベンゼンスルホン酸塩としてアニオン系界面活性剤に用いられることもある。更に、アルキルベンゼン化合物の代表的な化合物として挙げられるイソブチルベンゼンは、医薬品であるイブプロフェンの出発原料として用いられている。
【0003】
アルキルベンゼン化合物の合成方法としてベンゼンとハロゲン化アルキルとのフリーデル・クラフツ反応が知られている。しかし、式(I)で示すようにハロゲン化アルキルとAlCl3で生じる活性種のカルボカチオン安定性より、ベンジル位が枝分かれしたアルキルベンゼン化合物が副生されてしまうという問題点がある(非特許文献1)。

【0004】
そのためかかる副生物を抑えるべく様々な固体触媒等が開発されているが、まだまだ選択性の面で満足の行くものではなかった。従って、ベンジル位に置換基を有さない直鎖型のアルキルベンゼン化合物を選択的に合成するためには、現在のところ、式(II)に示すようにフリーデル・クラフツ型アシル化反応でアシル化した後に、還元を行うといった2段階の工程を経る製造法が知られている(非特許文献1)。
【0005】



【0006】
一方、p−メトキシベンジルマグネシウムクロリドと1−ブロモ−2−ヘプチンの反応(非特許文献2)や、ベンジルマグネシウムクロリド化合物と1−ブロモ−3−クロロプロパンの反応(特許文献1)のようなアルキルベンゼン以外の特殊な化合物の反応例は知られているものの、アルキルベンゼン化合物を選択的に合成する方法としては、ベンジルマグネシウムクロリドとp−トルエンスルホン酸n−ブチルエステルを反応させてn−プロピルベンゼンを得る方法(非特許文献4)や、エーテル溶媒中ベンジルマグネシウムクロリドと2−ブロモプロパンを反応させてイソブチルベンゼンを得る方法(非特許文献3)しか知られていない。しかし、どちらの場合も収率は10%から50%程度であり、工業的には必ずしも満足の行くものとは言えないものであった。
【0007】
【非特許文献1】マクマリー 有機化学 中 第3版 606ページ
【非特許文献2】バイオサイエンス・バイオテクノロジー・バイオケミストリー(Biosciense, Biotechnology, Biochemistry), 65(3)巻, 732-735頁(2001)
【非特許文献3】ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(Journal of American Chemical Society) 65巻, 2470頁 (1943)
【非特許文献4】ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(Journal of American Chemical Society) 47巻, 523頁 (1925)
【特許文献1】特開2002−265399公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような状況の下、本発明者らは、ベンジル位に置換基を有さない直鎖型のアルキルベンゼン化合物を選択的に、かつ簡便に合成する新たな方法の開発を試み鋭意検討したところ、テトラヒドロフラン溶媒中、ベンジルマグネシウムクロリドを特定のハロゲン化アルキルと反応させることで、目的物であるアルキルベンゼン化合物をベンジル位に置換基を有する不純物の副生を抑えて良好な選択性で収率よく取得できることを見出し、本発明に到った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、式(1)

【0010】
で示されるベンジルマグネシウムクロリドを、テトラヒドロフラン溶媒中、式(2)

【0011】
(式中、Xは臭素原子、またはヨウ素原子を表わす。Rは水素原子、またはメチル基を表わし、Rは水素原子、直鎖状アルキル基、またはアリール基を表わす。)
で示されるハロゲン化アルキルと反応させることを特徴とする式(3)


【0012】
(式中、R、Rは上記と同一の意味を表わす。)で示されるアルキルベンゼン化合物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法によれば、ベンジル位に置換基を有さない直鎖型のアルキルベンゼン化合物を選択的に良好な収率で、簡便に製造することが可能であり、潤滑油、医薬品原料、界面活性剤原料の分野において有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。式(1)はベンジルマグネシウムクロリドを表す。反応に用いるベンジルマグネシウムクロリドは、ベンジルクロリドとマグネシウムを作用させることで調製したものを用いることができ、また、試薬メーカーより購入したものを用いることもできる。
【0015】
式(2)においてRで表される直鎖状アルキル基とは、枝分かれ構造を有しないアルキル基をいい、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の炭素数1〜10の直鎖状アルキル基が挙げられる。また、Rにおけるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。式(2)のハロゲン化アルキルとしては、例えば、1−ブロモエタン、1−ブロモプロパン、1−ブロモブタン、1−ブロモペンタン、1−ブロモヘキサン、1−ブロモヘプタン、1−ブロモオクタン、1−ブロモノナン、1−ブロモデカン、1−ブロモウンデカン、1−ブロモドデカン、2−ブロモプロパン、2−ブロモブタン、2−ブロモペンタン、2−ブロモヘキサン、2−ブロモヘプタン、2−ブロモオクタン、2−ブロモノナン、2−ブロモデカン、2−ブロモウンデカン、2−ブロモドデカン、2−ブロモトリデカン、1−ブロモ−2−フェニルエタン、1−ヨードエタン、1−ヨードプロパン、1−ヨードブタン、1−ヨードペンタン、1−ヨードヘキサン、1−ヨードヘプタン、1−ヨードオクタン、1−ヨードノナン、1−ヨードデカン、1−ヨードウンデカン、1−ヨードドデカン、2−ヨードプロパン、2−ヨードブタン、2−ヨードペンタン、2−ヨードヘキサン、2−ヨードヘプタン、2−ヨードオクタン、2−ヨードノナン、2−ヨードデカン、2−ヨードウンデカン、2−ヨードドデカン、2−ヨードトリデカン、1−ヨード−2−フェニルエタン等が例示される。
【0016】
テトラヒドロフランは、通常、モレキュラーシーブス等の脱水剤で脱水処理されたものか、蒸留により脱水処理されたものが用いられる。テトラヒドロフランの使用量は、ベンジルマグネシウムクロリド1重量部に対して、通常、2重量部以上である。その上限は特にないが、容積効率の観点から、好ましくは20重量部以下である。
【0017】
本発明の反応は、鉄、銅、ニッケル、パラジウムなどといった遷移金属の非存在下で行っても良好な反応成績で所望の化合物が得られるが、これらの存在下に行うこともできる。
【0018】
ベンジルマグネシウムクロリドとハロゲン化アルキル(2)の反応温度は、通常−70℃から100℃であり、好ましくは、−5℃から40℃である。ベンジルマグネシウムクロリドをハロゲン化アルキル(2)1モルに対して1モル以上用いてもよいし、ハロゲン化アルキル(2)をベンジルマグネシウムクロリド1モルに対して、1モル以上用いてもよく、反応性、経済性を考慮して、その使用量は適宜選択すればよい。ベンジルマグネシウムクロリドにハロゲン化アルキル(2)を加えても良いし、ハロゲン化アルキル(2)にベンジルマグネシウムクロリドを加えても良い。また、どちらの化合物もあらかじめテトラヒドロフランで希釈しておいても良い。
【0019】
反応終了後、反応液と、例えば、塩酸、硫酸等の酸水溶液や水等と混合し、未反応の活性種を分解させ、その後、分液処理を行い分離してもよい。酸水溶液等を混合する前、または混合後、水に不溶の有機溶媒を加えて、抽出・分液してもよい。水に不溶の有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられ、その使用量については特に制限はない。酸水溶液等で分液処理後、得られた油層を更に水、食塩水等で洗浄、分液処理をしてもよい。かくして、式(3)のアルキルベンゼン化合物を良好な収率で取得することができ、かつ、アルキルベンゼン化合物(3)のベンジル位に枝分かれ構造を有する不純物は副生せず、選択的に目的物のアルキルベンゼン化合物(3)を得ることが可能である。アルキルベンゼン化合物(3)は、必要により、例えば、蒸留やカラムクロマトグラフィー等で更に精製することもできる。
【0020】
本発明の製造方法は、式(3)において、Rがメチル基であり、かつRが水素原子である、イソブチルベンゼンの製造もしくは、R1が水素原子であり、かつR2がフェニル基である1,3−ジフェニルプロパンの製造に好適に用いられる。
【0021】
本発明の製造方法により製造することができるアルキルベンゼン化合物(3)としては、例えば、n−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、n−ペンチルベンゼン、n−ヘキシルベンゼン、n−ヘプチルベンゼン、n−オクチルベンゼン、n−ノニルベンゼン、n−デシルベンゼン、n−ウンデシルベンゼン、n−ドデシルベンゼン、n−トリデシルベンゼン、イソブチルベンゼン、2−メチル−1−フェニルブタン、2−メチル−1−フェニルペンタン、2−メチル−1−フェニルヘキサン、2−メチル−1−フェニルヘプタン、2−メチル−1−フェニルオクタン、2−メチル−1−フェニルノナン、2−メチル−1−フェニルデカン、2−メチル−1−フェニルウンデカン、2−メチル−1−フェニルドデカン、2−メチル−1−フェニルトリデカン、1,3−ジフェニルプロパン等が挙げられる。

実施例
【0022】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0023】
実施例中の生成物の含量は、ガスクロマトグラフィーを用い、内部標準法により求めた。分析条件を以下に示す。
装置:島津製 GC−14A
カラム:J&W Scientific製 DB−5(0.53mmφ×30m、膜圧1.5μm)、移動層:ヘリウム 20ml/分、検出器:FID、気化器温度:250℃、検出器温度:250℃、注入量:1μl
カラム温度:40℃で4分保持、その後、5℃/分で昇温し、250℃で20分保持
内部標準:フタル酸ジ−n−オクチル
【0024】
実施例1
攪拌子、冷却管を付した反応容器に、マグネシウム(アクロス社製、切削状)0.98gとテトラヒドロフラン3g仕込み、この混合物中に、窒素雰囲気下、ベンジルクロリド0.1gを攪拌しながら滴下し、その後、約40から60℃に加熱し、マグネシウムを活性化した。その後、この混合物を氷冷し、テトラヒドロフラン17gで希釈した。その混合物中へ、ベンジルクロリド5.0gとテトラヒドロフラン5.1gの混合液を約2時間で滴下した。氷冷下で約2時間、保温、攪拌し、少量の未反応残存マグネシウムを含むベンジルマグネシウムクロリドのテトラヒドロフラン溶液を調製した。ベンジルマグネシウムクロリドのテトラヒドロン溶液を攪拌子、冷却管を付した別の反応容器に、残存したマグネシウムを移しこまないようにしつつ全量移送し、その溶液の中に1−ブロモブタン4.6gとテトラヒドロフラン15gの混合液を氷冷下、約1時間で滴下した。その後、約20℃から30℃で約12時間、保温、攪拌した。保温後、反応液に5重量%の塩酸水33gを加え、混合攪拌後、静置し、有機層を分液した。該有機層を更に20重量%の食塩水15gで洗浄、分液し、n−ペンチルベンゼンを含む油状物を34.6g取得した。ガスクロマトグラフィー(内部標準法)により分析したところ、n−ペンチルベンゼンの含量は11.4%であった。1−ブロモブタンに対する収率は79%であった。
【0025】
実施例2
マグネシウム(アクロス社製、切削状)1.93g、テトラヒドロフラン計53g、ベンジルクロリド10gを用い、実施例1と同様の方法にてベンジルマグネシウムクロリドのテトラヒドロン溶液を65g調製した。かかる溶液の半分量を、残存したマグネシウムを移しこまないように別の反応容器に移送し、その中に1−ブロモ−2−フェニルエタン5.8gとテトラヒドロフラン10gの混合液を氷冷下、約1時間で滴下した。その後、約20℃から30℃で約12時間、保温、攪拌した。保温後、反応液に5重量%の塩酸水34gを加え、混合攪拌後、静置し、有機層を分液した。該有機層を更に20重量%の食塩水19gで洗浄、分液し、1,3−ジフェニルプロパンを含む油状物を33.4g取得した。ガスクロマトグラフィー(内部標準法)により分析したところ、1,3−ジフェニルプロパンの含量は17.5%であった。1−ブロモ−2−フェニルエタンに対する収率は94%であった。
【0026】
実施例3
マグネシウム(アクロス社製、切削状)1.92g、テトラヒドロフラン計53g、ベンジルクロリド10gを用い、実施例1と同様の方法にてベンジルマグネシウムクロリドのテトラヒドロン溶液を調製した。かかる溶液の半分量を、残存したマグネシウムを移しこまないように別の反応容器に移送し、その中に2−ブロモプロパン4.0gとテトラヒドロフラン10gの混合液を氷冷下、約1時間で滴下した。その後、約20℃から30℃で約2日間、保温、攪拌した。保温後、反応液に5重量%の塩酸水31gを加え、混合攪拌後、静置し、有機層を分液した。該有機層を更に20重量%の食塩水16gで洗浄、分液し、イソブチルベンゼンを含む油状物を27.0g取得した。ガスクロマトグラフィー(内部標準法)により分析したところ、イソブチルベンゼンの含量は11.5%であった。2−ブロモプロパンに対する収率は71%であった。
【0027】
実施例4
マグネシウム(アクロス社製、切削状)3.84g、テトラヒドロフラン計106g、ベンジルクロリド20gを用い、実施例1と同様の方法にてベンジルマグネシウムクロリドのテトラヒドロン溶液を130g調製した。かかる溶液のうち60.5gを、残存したマグネシウムを移しこまないように別の反応容器に移送し、その中へ1−ヨードブタン6.8gとテトラヒドロフラン10gの混合液を氷冷下、約2時間で滴下した。その後、約20℃から30℃で約12時間、保温、攪拌した。保温後、反応液に5重量%の塩酸水46gを加え、混合攪拌後、静置し、有機層を分液した。該有機層を更に20重量%の食塩水30gで洗浄、分液し、n−ペンチルベンゼンを含む油状物を30.8g取得した。ガスクロマトグラフィー(内部標準法)により分析したところ、n−ペンチルベンゼンの含量は17.0%であった。1−ヨードブタンに対する収率は95%であった。
【0028】
実施例5
ベンジルマグネシウムクロリドのテトラヒドロン溶液(16重量%、東京化成社製試薬)31gを反応容器に仕込み、その中に1−ブロモ−2−フェニルエタン5.0gとテトラヒドロフラン5.0gの混合液を氷冷下、約1時間で滴下した。その後、約20℃から30℃で約12時間、保温、攪拌した。保温後、反応液に5重量%の塩酸水15gを加え、混合攪拌後、静置し、有機層を分液した。該有機層を更に20重量%の食塩水15gで洗浄、分液し、1,3−ジフェニルプロパンを含む油状物を25.3g取得した。ガスクロマトグラフィー(内部標準法)により分析したところ、1,3−ジフェニルプロパンの含量は19.9%であった。1−ブロモ−2−フェニルエタンに対する収率は95%であった。
【0029】
上記のガスクロマトグラフィーによる分析条件では、実施例1から5で得られたアルキルベンゼン化合物(3)を含む油状物中に、目的物、原料、既知不純物以外の他のピークは特に観測されず、アルキルベンゼン化合物(3)のベンジル位が枝分かれした構造を有する不純物は混在しないと判断された。
【0030】
以下、比較例を示す。比較例中の生成物の含量についてもガスクロマトグラフィーを用い、上記内部標準法により求めた。また、比較例中のベンジルマグネシウムクロリド、ベンジルマグネシウムブロミドの収率は、1,10−フェナントロリンと2−ブタノールを用いた滴定分析か、ベンジルマグネシウムクロリドまたはベンジルマグネシウムブロミドを5重量%塩酸水と反応させ生じるトルエンを、ガスクロマトグラフィーを用いた内部標準法により分析し、算出した。
【0031】
比較例1
マグネシウム(アクロス社製、切削状)4.27g、テトラヒドロフラン計160g、ベンジルブロミド30.0gを用いて実施例1と同様の方法にてベンジルマグネシウムブロミドのテトラヒドロン溶液を194g調製した。ベンジルマグネシウムブロミドの収率はベンジルブロミドに対して70%であった。かかる溶液のうち62gを、残存したマグネシウムを移しこまないように別の反応容器に移送し、その中に1−ブロモ−2−フェニルエタン4.4gとテトラヒドロフラン10gの混合液を氷冷下、約1時間で滴下した。その後、約40℃で約12時間、保温、攪拌した。保温後、反応液に5重量%の塩酸水34gを加え、混合攪拌後、静置し、有機層を分液した。該有機層を更に20重量%の食塩水30gで洗浄、分液し、1,3−ジフェニルプロパンを含む油状物を51.4g取得した。ガスクロマトグラフィー(内部標準法)により分析したところ、1,3−ジフェニルプロパンの含量は3.1%であった。1−ブロモ−2−フェニルエタンに対する収率は34%であった。尚、原料である1−ブロモ−2−フェニルエタンの回収率は55%であった。
【0032】
比較例2
マグネシウム(アクロス社製、切削状)2.88g、ジエチルエーテル計80g、ベンジルクロリド15gを用い、実施例1と同様の方法にてベンジルマグネシウムクロリドのジエチルエーテル溶液を97g調製した。このときのベンジルマグネシウムクロリドの収率は、ベンジルクロリドに対して定量的であった。かかる反応液を、残存したマグネシウムを移しこまないように別の反応容器に全量移送し、その中に1−ブロモ−2−フェニルエタン9.4gとジエチルエーテル15gの混合液を氷冷下、約2時間で滴下した。その後、約20℃から30℃で約12時間、保温、攪拌した。保温後、反応液に5重量%の塩酸水69gを加え、混合攪拌後、静置し、有機層を分液した。該有機層を更に20重量%の食塩水46gで洗浄、分液し、有機層を94.5g取得した。ガスクロマトグラフィー(内部標準法)により分析したところ、1,3−ジフェニルプロパンの含量は1.0%であった。1−ブロモ−2−フェニルエタンに対する収率は9%であった。尚、原料である1−ブロモ−2−フェニルエタンの回収率は48%であった。結果を以下の表にまとめる。
【0033】

*1ハロゲン化アルキル(2)に対する収率
*2ベンジルクロリドとマグネシウムより調製
*3東京化成社製試薬
*4ベンジルブロミドとマグネシウムより調製

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)


で示されるベンジルマグネシウムクロリドをテトラヒドロフラン溶媒中で式(2)


(式中、Xは臭素原子、またはヨウ素原子を表わし、Rは水素原子、またはメチル基を表わし、Rは水素原子、直鎖状アルキル基、またはアリール基を表わす。)
で示されるハロゲン化アルキルと反応させることを特徴とする式(3)


(式中、RおよびRは前記のとおり。)
で示されるアルキルベンゼン化合物の製造方法。
【請求項2】
がメチル基であり、Rが水素原子である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
1が水素原子であり、R2がフェニル基である請求項1に記載の製造方法。