説明

アルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールの製造方法

【課題】アルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールの安全で安価な効率のよい製造方法の提供。
【解決手段】2−ハロヒドロキシアニリンとアルデヒドからイミンを得る工程と、前記イミンと、アルキルハライド等とを塩基の存在下で反応させて、式(6):


(式中、Rは、置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表される2−ハロアルコキシアニリンを得る工程と、前記2−ハロアルコキシアニリンとキサントゲン酸金属塩とを反応させる工程と、を含む、式(7):


で表されるアルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールの製造方法に関する。さらに詳しくは、加硫促進剤や医薬品中間体として有用なアルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールの製造方法としては、種々の方法が知られている。例えば、二塩化二硫黄とp−フェネチジンとの反応生成物に水硫化ソーダと二硫化炭素を加え反応させる方法(特許文献1参照)、フェニルイソシアネートと硫黄とを、約13kg/cm、220℃の高温高圧下で反応させる方法(特許文献2参照)、トリフェニルグアニジン類と二硫化炭素および硫黄を、60kg/cm以上、180℃以上の高温高圧下で反応させる方法(特許文献3参照)、等が知られている。また、下式に示すように、m−クロロフェノールをニトロ化して3−クロロ−4−ニトロフェノールを得て、これをアルキル化して3−クロロ−4−ニトロアルコキシベンゼンを得た後、還元して2-クロロ−4−アルコキシアニリンとなし、これをキサントゲン酸カリと反応させる方法(非特許文献1参照)
【0003】
【化1】

等が知られている。
【0004】
しかしながら、これらの製造方法には種々の不具合な点がある。例えば、特許文献1および3に記載の製造方法で用いられる二硫化炭素は、発火および引火しやすく、取り扱いに特別な注意が必要となる。また、特許文献2および3に記載の製造方法によると、高温高圧反応に適した設備が必要となる。さらに非特許文献1に記載の製造方法は、反応収率が不充分で工業的に有利であるとは言い難い。
【0005】
【特許文献1】米国特許第1847514号明細書
【特許文献2】米国特許第1753898号明細書
【特許文献3】特開平1−172379号公報
【非特許文献1】SYNTHETIC COMMUNICATIONS,26(20),3783−3790(1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールを安全で安価に効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に示すとおりの、アルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールの製造方法に関する。
【0008】
項1.式(1):
【0009】
【化2】

(式中、Xはハロゲン原子を示す。)で表される2−ハロヒドロキシアニリンと、式(2):
【0010】
【化3】

(式中、Rは水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)で表されるアルデヒドとを反応させて、式(3):
【0011】
【化4】

(式中、Rは前記式(2)におけるRと同じ基を示す。Xは前記式(1)におけるXと同じハロゲン原子を示す。)で表されるイミンを得る工程(以下、「第1の工程」ということがある)と、
前記イミンと、式(4):
【0012】
【化5】

(式中、Rは、置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表されるアルキルハライド、または式(5):
【0013】
【化6】

(式中、Rは、置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表される硫酸ジアルキルとを塩基の存在下で反応させて、式(6):
【0014】
【化7】

(式中、Rは、前記式(4)または式(5)におけるRと同じ基を示す。Xは前記式(1)におけるXと同じハロゲン原子を示す。)で表される2−ハロアルコキシアニリンを得る工程(以下、「第2の工程」ということがある)と、
前記2−ハロアルコキシアニリンとキサントゲン酸金属塩とを反応させる工程(以下、「第3の工程」ということがある)と、
を含む、式(7):
【0015】
【化8】

(式中、Rは、前記式(6)におけるRと同じ基を示す。)で表されるアルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールの製造方法。
【0016】
項2.式(2)で表されるアルデヒドがベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、またはホルムアルデヒドである、項1に記載のアルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールの製造方法。
【0017】
項3.式(4)で表されるアルキルハライドが臭化エチルまたはヨウ化メチルである、項1または2に記載のアルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールの製造方法。
【0018】
項4.式(5)で表される硫酸ジアルキルが硫酸ジメチルまたは硫酸ジエチルである、項1または2に記載のアルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールの製造方法。
【0019】
項5.キサントゲン酸金属塩がキサントゲン酸カリウムである、項1〜4のいずれかに記載のアルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールの製造方法。
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のアルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールの製造方法は、2−ハロヒドロキシアニリンとアルデヒドとを反応させてイミンを得る第1の工程を含む。
【0021】
第1の工程に用いられる2−ハロヒドロキシアニリンは、下記式(1)で表される。
【0022】
【化9】

【0023】
式(1)において、Xはハロゲン原子を示す。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0024】
2−ハロヒドロキシアニリンは、市販のものを使用することができる。また、市販の2−ハロヒドロキシアニリンの酸塩を、ピリジンやトリエチルアミン等の有機アルカリ、炭酸カリウムや炭酸ナトリウム等の炭酸塩、および、苛性ソーダや苛性カリ等の水酸化金属塩基等を用いて中和したものを使用することができる。
【0025】
第1の工程に用いられるアルデヒドは、下記式(2)で表される。
【0026】
【化10】

【0027】
式(2)において、Rは水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。
【0028】
置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、クロロメチル基およびメトキシメチル基等を挙げることができる。
【0029】
置換されていてもよいフェニル基としては、例えば、フェニル基、p−トリル基、o−ヒドロキシフェニル基等を挙げることができる。
【0030】
式(2)で表されるアルデヒドの具体例としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ネオペンチルアルデヒド、クロロアセトアルデヒド、メトキシアセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−トリルアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。これらの中でも、安価で取り扱いが容易である観点から、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドおよびベンズアルデヒドが好適に用いられ、中でもベンズアルデヒドがさらに好適に用いられる。
【0031】
アルデヒドの使用量は、特に制限されるものではないが、例えば、2−ハロヒドロキシアニリン1モルに対して0.9〜2モルであることが好ましく、1〜1.5モルであることがより好ましい。アルデヒドの使用量が0.9モル未満の場合、収率が低下するおそれがある。また、アルデヒドの使用量が2モルを超える場合、使用量に見合う効果がない。
【0032】
第1の工程に用いられる反応溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、クロロホルム、二塩化エチレン、ジエチルエーテル等の非水溶性有機溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルアルコール、エチルアルコール等の水溶性有機溶媒等が挙げられる。中でも、反応速度や反応後の溶媒回収を容易に行うことができる観点から、トルエンおよびN,N−ジメチルホルムアミドが好適に用いられる。
【0033】
前記反応溶媒の使用量は、2−ハロヒドロキシアニリン100重量部に対して、200〜4000重量部であることが望ましい。反応溶媒の使用量が200重量部未満の場合、反応が円滑に進行しにくくなるおそれがある。また、反応溶媒の使用量が4000重量部を超える場合、容積効率が悪化するばかりか、収率が低下するおそれがある。
【0034】
反応温度は0〜150℃が好ましく、100〜120℃がより好ましい。反応温度が0℃未満の場合、反応速度が遅くなるおそれがある。また、反応温度が150℃を超える場合、副反応が問題となり好ましくない。反応時間は、反応温度、溶媒の使用量等により異なるが、0.5〜10時間が好ましい。
【0035】
かくして得られたイミンは、下記式(3)で表される。
【0036】
【化11】

【0037】
式(3)において、Rは前記式(2)におけるRと同じ基を示し、Xは前記式(1)におけるXと同じハロゲン原子を示す。
【0038】
本発明のアルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールの製造方法は、前記第1の工程により得られたイミンを用いて、塩基の存在下で式(4):
【0039】
【化12】

(式中、Rは、置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表されるアルキルハライドと反応させる方法(製造方法1)、または塩基の存在下で式(5):
【0040】
【化13】

(式中、Rは、置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表される硫酸ジアルキルと反応させる方法(製造方法2)により、式(6):
【0041】
【化14】

(式中、Rは、前記式(4)または式(5)におけるRと同じ基を示す。Xは前記式(1)におけるXと同じハロゲン原子を示す。)で表される2−ハロアルコキシアニリンを得る第2の工程を含む。
【0042】
以下、第2の工程における製造方法1について説明する。
【0043】
製造方法1
この製造方法では、塩基の存在下、前記イミンとアルキルハライドとを反応させることにより、式(6)で表わされる2−ハロアルコキシアニリンを製造することができる。
【0044】
反応に用いられる塩基としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩、t−ブトキシカリウム、ナトリウムメチラートおよびナトリウムエチラート等の金属アルコキシド、並びに苛性ソーダおよび苛性カリ等の水酸化金属塩基等が挙げられる。中でも、反応速度や取り扱いの容易さの観点から、炭酸カリウムおよびナトリウムメチラートが好適に用いられる。なお、これら塩基は、1種単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を併用してもよい。
【0045】
塩基の使用量は、イミン1モルに対して0.5〜5モルであることが好ましく、1〜4モルであることがより好ましい。塩基の使用量が0.5モル未満の場合、収率が低下するおそれがある。また、塩基の使用量が5モルを超える場合、使用量に見合う効果がない。
【0046】
式(4)で表されるアルキルハライドにおいて、Rで示される置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基およびメトキシメチル基等が挙げられ、Xで示されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子等が挙げられる。
【0047】
アルキルハライドの具体例としては、例えば臭化エチル、ヨウ化メチル、塩化メチル、臭化イソプロピル、臭化t−ブチル、ヨウ化メトキシメチル等があげられる。中でも、反応速度、取り扱いの容易さおよび入手の容易さの観点から臭化エチルおよびヨウ化メチルが好適に用いられる。
【0048】
アルキルハライドの使用量は、イミン1モルに対して1〜5モルであることが好ましく、1〜3モルであることがより好ましい。アルキルハライドの使用量が1モル未満の場合、収率が低下するおそれがある。また、アルキルハライドの使用量が5モルを超える場合、使用量に見合う効果がない。
【0049】
反応溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、クロロホルム、二塩化エチレン、ジエチルエーテル等の非水溶性有機溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルアルコール、エチルアルコール等の水溶性有機溶媒等が挙げられる。中でも、反応速度の観点から、トルエンおよびN,N−ジメチルホルムアミドが好適に用いられる。
【0050】
前記反応溶媒の使用量は、イミン100重量部に対して、200〜4000重量部であることが望ましい。反応溶媒の使用量が200重量部未満の場合、反応が円滑に進行しにくくなるおそれがある。また、反応溶媒の使用量が4000重量部を超える場合、容積効率が悪化するばかりか、収率が低下するおそれがある。
【0051】
反応温度は20〜150℃が好ましく、90〜120℃がより好ましい。反応温度が20℃未満の場合、反応速度が遅くなるおそれがある。また、反応温度が150℃を超える場合、副反応が問題となり好ましくない。反応時間は、反応温度、溶媒の使用量等により異なるが、2〜24時間が好ましい。
【0052】
次に、第2の工程における製造方法2について説明する。
【0053】
製造方法2
この製造方法では、塩基の存在下、前記イミンと硫酸ジアルキルとを反応させることにより、式(6)で表わされる2−ハロアルコキシアニリンを製造することができる。
【0054】
式(5)で表される硫酸ジアルキルにおいて、Rで示される置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基としては、前記式(4)におけるRと同様に、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基およびメトキシメチル基等が挙げられる。
【0055】
硫酸ジアルキルとしては、硫酸ジメチルおよび硫酸ジエチルが好適に用いられる。
【0056】
硫酸ジアルキルの使用量は、イミン1モルに対して0.5〜5モルであることが好ましく、0.5〜2モルであることがより好ましい。硫酸ジアルキルの使用量が0.5モル未満の場合、収率が低下するおそれがある。また、硫酸ジアルキルの使用量が5モルを超える場合、使用量に見合う効果がない。
【0057】
なお、当該方法における塩基の種類や使用量、反応溶媒の種類や使用量、および反応温度や反応時間は、それぞれ製造方法1に記載のものと同様である。
【0058】
かくして得られた2−ハロアルコキシアニリンは、必要に応じて以下のようにして単離、精製することができる。すなわち2−ハロアルコキシアニリンは、当該反応液に塩酸、硫酸、臭素酸およびリン酸等の酸を加えることにより酸性塩として析出させ、これを濾取することにより単離することができる。また、前記反応液に適当量の水を加えて溶解させた後、分液により有機溶媒を除去し、苛性ソーダ、苛性カリおよび炭酸ソーダ等の塩基を用いて中和し、さらにベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、クロロホルム、二塩化エチレンおよびジエチルエーテル等の非水溶性有機溶媒を用いて抽出することにより精製することができる。
【0059】
前記2−ハロアルコキシアニリンの具体例としては、2−クロロ−4−エトキシアニリン、2−ブロモ−4−メトキシアニリン、2−ヨード−5−エトキシアニリン、2−ブロモ−6−エトキシアニリン、2−クロロ−4−イソプロポキシアニリン、2−クロロ−4−t−ブトキシアニリンおよび2−クロロ−4−メトキシメトキシアニリン等が挙げられる。
【0060】
本発明のアルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールの製造方法は、さらには、前記第2の工程により得られた2−ハロアルコキシアニリンとキサントゲン酸金属塩とを反応させる第3の工程を含む。
【0061】
キサントゲン酸金属塩としては特に限定されるものではなく、例えば、キサントゲン酸カリウムおよびキサントゲン酸ナトリウム等が挙げられ、キサントゲン酸カリウムが好適に用いられる。
【0062】
キサントゲン酸金属塩の使用量は、2−ハロアルコキシアニリン1モルに対して1〜5モルであることが好ましく、2〜3モルであることがより好ましい。キサントゲン酸金属塩の使用量が1モル未満の場合、反応が完結しにくくなるおそれがある。また、キサントゲン酸金属塩の使用量が5モルを超える場合、未反応のキサントゲン酸金属塩が多く残存して好ましくない。
【0063】
第3の工程に用いられる反応溶媒としては、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の水溶性有機溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、クロロホルム、二塩化エチレン、ジエチルエーテル等の非水溶性有機溶媒を挙げることができる。中でも、反応速度や反応後の目的物の単離、精製を容易に行うことができる観点から、N,N−ジメチルホルムアミドおよびトルエンが好適に用いられる。
【0064】
前記反応溶媒の使用量は、2−ハロアルコキシアニリン100重量部に対して、200〜4000重量部であることが望ましい。反応溶媒の使用量が200重量部未満の場合、反応が円滑に進行しにくくなるおそれがある。また、反応溶媒の使用量が4000重量部を超える場合、容積効率が悪化するばかりか、収率が低下するおそれがある。
【0065】
反応温度は、50〜200℃が好ましく、110〜170℃がより好ましい。反応温度が50℃未満の場合、反応速度が遅くなるおそれがある。また、反応温度が200℃を超える場合、副反応が問題となり好ましくない。反応時間は、溶媒の使用量、キサントゲン酸金属塩の使用量等により異なるので一概にはいえないが、2〜20時間が好ましい。
【0066】
かくして得られたアルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールは、反応終了後、反応液を冷却し適当量の水を添加した後、塩酸、硫酸、臭素酸およびリン酸等の酸を滴下することにより析出させて単離することができる。
【0067】
上記のようにして得られるアルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールは、下記式(7)で表される。
【0068】
【化15】

【0069】
式(7)において、Rは前記式(4)または式(5)におけるRと同じ基を示す。
【0070】
前記アルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールの具体例としては、6−エトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール、6−メトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール、5−エトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール、4−エトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール、6−イソプロポキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール、6−t−ブトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールおよび6−メトキシメトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0071】
本発明の製造方法において、第1の工程により得られたイミンは、単離および精製することなく、引き続き第2の工程に用いることができる。さらに、第2の工程により得られた2−ハロアルコキシアニリンは、単離および精製することなく当該反応液のままで第3の工程に用いることができる。したがって、この方法によると、極めて効率的にアルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールを製造方法することができる。
【発明の効果】
【0072】
本発明によると、加硫促進剤や医薬品中間体として有用なアルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールを、安全で安価に効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0073】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0074】
実施例1
撹拌機および温度計を備えた5L容の反応容器に、2−クロロ−4−ヒドロキシアニリン塩酸塩180g(1モル)、トリエチルアミン104g(1モル)、ベンズアルデヒド120g(1.1モル)およびトルエン2000gを仕込み、110℃で1時間反応させた(第1の工程)。反応終了後さらに、N,N−ジメチルホルムアミド2000g、炭酸カリウム280g(2モル)および臭化エチル180g(1.7モル)を添加し、100℃で2時間反応させた(第2の工程)。反応終了後、水1000gとトルエン1000gを加え、分液して水層を除去し、次いで35%塩酸700gおよび水3000gを加え、分液して有機層を除去した。次にトルエン1000gと苛性ソーダ285gを加え、分液して水層を除去した後、トルエンを留去することにより、2−クロロ−4−エトキシアニリン163g(0.95モル)を得た。得られた2−クロロ−4−エトキシアニリンは、下記の物性から同定することができた。
H−NMR(CDCl):1.35(3H,t)、3.3−3.9(2H、br)、3.92(2H、q)、6.6−6.9(3H、m)
【0075】
得られた2−クロロ−4−エトキシアニリン163g(0.95モル)を、キサントゲン酸カリウム374g(2.3モル)およびN,N−ジメチルホルムアミド1500gと共に、撹拌機および温度計を備えた5L容の反応容器に仕込み、150℃で7時間反応させた(第3の工程)。反応終了後、30℃まで冷却し、水3000gを加え、次いで35%塩酸240gで中和した。析出した結晶を濾過し、得られた結晶を水1000gで洗浄後、乾燥することにより、6−エトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール193g(0.91モル)を得た。2−クロロ−4−ヒドロキシアニリン塩酸塩に対する収率は、91%であった。得られた6−エトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールは、下記の物性から同定することができた。
H−NMR(CDCOCD):1.37(3H,t)、2.86(1H、br)、4.07(2H、q)、6.98(1H、d)、7.24(1H、s)、7.31(1H、d)
【0076】
実施例2
撹拌機および温度計を備えた5L容の反応容器に、2−ブロモ−4−ヒドロキシアニリン188g(1モル)、アセトアルデヒド53g(1.2モル)およびトルエン2000gを仕込み、110℃で1時間反応させた(第1の工程)。反応終了後さらに、N,N−ジメチルホルムアミド2000g、炭酸カリウム280g(2モル)および硫酸ジメチル189g(1.5モル)を添加し、100℃で2時間反応させた(第2の工程)。反応終了後、水1000gとトルエン1000gを加え、分液して水層を除去し、次いで35%塩酸700gおよび水3000gを加え、分液して有機層を除去した。次にトルエン1000gと苛性ソーダ285gを加え、分液して水層を除去した後、トルエンを留去することにより、2−ブロモ−4−メトキシアニリン190g(0.94モル)を得た。得られた2−ブロモ−4−メトキシアニリン190g(0.94モル)を、キサントゲン酸カリウム374g(2.3モル)およびN,N−ジメチルホルムアミド1500gと共に、撹拌機および温度計を備えた5L容の反応容器に仕込み、150℃で7時間反応させた(第3の工程)。反応終了後、30℃まで冷却し、水3000gを加え、次いで35%塩酸240gで中和した。析出した結晶を濾過し、得られた結晶を水1000gで洗浄後、乾燥することにより、6−メトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール174g(0.88モル)を得た。2−ブロモ−4−ヒドロキシアニリンに対する収率は、88%であった。得られた6−メトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールは、下記の物性から同定することができた。
H−NMR(CDCOCD):3.73(3H,s)、2.85(1H、br)、7.06(1H、d)、7.31(1H、s)、7.38(1H、d)
【0077】
実施例3
撹拌機および温度計を備えた5L容の反応容器に、2−クロロ−4−ヒドロキシアニリン144g(1モル)、ホルムアルデヒド30g(1モル)およびトルエン2000gを仕込み、110℃で2時間反応させた(第1の工程)。反応終了後さらに、トルエン1000g、ナトリウムメチラート54g(1モル)およびヨウ化メチル142g(1モル)を添加し、100℃で2時間反応させた(第2の工程)。反応終了後、35%塩酸700gおよび水3000gを加え、次に苛性ソーダ285gを加え、分液して水層を除去した。次にキサントゲン酸カリウム374g(2.3モル)およびN,N−ジメチルホルムアミド1500gを加えて、150℃で7時間反応させた(第3の工程)。反応終了後、30℃まで冷却し、水3000gを加え、次いで35%塩酸240gで中和した。析出した結晶を濾過し、得られた結晶を水1000gで洗浄後、乾燥することにより、6−メトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール140g(0.71モル)を得た。2−クロロ−4−ヒドロキシアニリンに対する収率は、71%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

(式中、Xはハロゲン原子を示す。)で表される2−ハロヒドロキシアニリンと、式(2):
【化2】

(式中、Rは水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)で表されるアルデヒドとを反応させて、式(3):
【化3】

(式中、Rは前記式(2)におけるRと同じ基を示す。Xは前記式(1)におけるXと同じハロゲン原子を示す。)で表されるイミンを得る工程と、
前記イミンと、式(4):
【化4】

(式中、Rは、置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表されるアルキルハライド、または式(5):
【化5】

(式中、Rは、置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表される硫酸ジアルキルとを塩基の存在下で反応させて、式(6):
【化6】

(式中、Rは、前記式(4)または式(5)におけるRと同じ基を示す。Xは前記式(1)におけるXと同じハロゲン原子を示す。)で表される2−ハロアルコキシアニリンを得る工程と、
前記2−ハロアルコキシアニリンとキサントゲン酸金属塩とを反応させる工程と、
を含む、式(7):
【化7】

(式中、Rは、前記式(6)におけるRと同じ基を示す。)で表されるアルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールの製造方法。
【請求項2】
式(2)で表されるアルデヒドが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、またはベンズアルデヒドである請求項1に記載のアルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールの製造方法。
【請求項3】
式(4)で表されるアルキルハライドが、臭化エチルまたはヨウ化メチルである請求項1または2に記載のアルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールの製造方法。
【請求項4】
式(5)で表される硫酸ジアルキルが、硫酸ジメチルまたは硫酸ジエチルである請求項1または2に記載のアルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールの製造方法。
【請求項5】
キサントゲン酸金属塩が、キサントゲン酸カリウムである請求項1〜4のいずれかに記載のアルコキシ−2−メルカプトベンゾチアゾールの製造方法。

【公開番号】特開2008−231004(P2008−231004A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71295(P2007−71295)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】