説明

アルコキシ置換トリアジン化合物の製造方法

【課題】一般式(1)で表される化合物を高収率、高純度で得ることのできる製造方法を提供する。


【解決手段】一般式(2)で表される化合物と、一般式(3)で表される化合物とを、塩基の存在下で反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシ置換トリアジン化合物の製造方法、及び、アルコキシ置換トリアジン化合物を有する5−アミノピラゾール化合物の製造方法に係り、より詳細には、特定の構造のヒドロキシ置換トリアジン化合物を直接アルキル化する方法によるこれらの化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリアジン環に結合する水酸基がアルコキシ基に置き換わった5−アミノピラゾール化合物(すなわち、アルコキシ基で置換されたトリアジン環を有する5−アミノピラゾール化合物)は、工業・農業・医療・学術などの各分野において有用な化合物であり、またその前駆体であるアルコキシ置換トリアジン化合物も同様に有用な化合物である。
【0003】
非特許文献1では、下記反応スキームに示すように、イソシアヌル酸をアルキル化して、トリアジン化合物(N−アルキル体)を得る方法が開示されている。
【0004】
【化1】

【0005】
Rはアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。
【0006】
また特許文献1には、染料の原料として有用な化合物として窒素原子を2個以上含むヘテロ環基により置換された5−アミノピラゾール化合物と、該化合物を用いた感熱記録材料が開示されており、そのなかにはアルコキシ置換されたトリアジンを有する例もいくつか示されている。
【0007】
しかしながら、非特許文献1に開示された反応では、アルカリ金属を用いてもN−アルキル化が優先し、O−アルキル化が起こりにくいため、アルコキシ置換トリアジン化合物を効率的に得ることができない。
これは、シアヌル酸やイソシアヌル酸ではカルボニルで挟まれたNアニオンが安定であるため、下記反応スキームに示すようにN−アルキル化が優先することに起因すると考えられる。
【0008】
【化2】

【0009】
Rはアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。
【0010】
また特許文献1においても、アルコキシ置換トリアジンを有する5−アミノピラゾール化合物を高い収率で得る方法は示されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Synthetic Communications 1993,23,2659−2672.
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−298406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記従来の問題点を解決し、アルコキシ置換トリアジン化合物を高収率、高純度で得ることのできる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、鋭意検討の結果、OH基を1つだけ有するトリアジン誘導体では、トリアジン環のNアニオンの安定化効果が小さいために、下記反応スキームに示すように、O−アルキル化が進行することに着目し、本発明を完成するに至った。
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、Rは置換されていても良いアルキル基を表わす。R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基を表わし、これらの基は更に置換されていても良く、RとR、RとRは、それぞれ互いに結合して窒素原子を有する置換されていても良いヘテロ環を形成してもよい。Xは、ハロゲン原子又は−O−SO−Rを表わす。Rは置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いフェニル基又は−ORを表わす。)
【0017】
すなわち本発明者らは、特定の構造のヒドロキシ置換トリアジン化合物を出発原料として、塩基の存在下で直接アルキル化することによって、O−アルキル化を進行させる方法を見出した。また該出発物質のトリアジン環に共役するように芳香族複素環を結合させることでトリアジン環の芳香族性が維持され、O−アニオンが相対的に安定化するので、さらにO−アルキル化が優先されることを見出した。
また、該出発物質において、トリアジン環と共役するような芳香族ヘテロ環の存在によりさらにO−アニオンが安定化されること、および該芳香族ヘテロ環がトリアジン環の窒素原子に水素結合する置換基を有することによってトリアジン環とそれに結合した芳香族複素環が平面となりやすくなりさらにO−アニオンが安定化されることを見出した。 すなわち、上記課題は以下の手段により達成することができる。
【0018】
〔1〕
一般式(2)で表される化合物と、一般式(3)で表される化合物とを、塩基の存在下で反応させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製造方法。
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、Rは置換されていても良いアルキル基を表わす。R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基を表わし、これらの基は更に置換されていても良く、RとR、RとRは、それぞれ互いに結合して窒素原子を有する置換されていても良いヘテロ環を形成してもよい。Xは、ハロゲン原子又は−O−SO−Rを表わす。Rは置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いフェニル基又は−ORを表わす。)
〔2〕
とR、RとRが、それぞれ互いに結合して窒素原子を有する置換されていても良い5員の芳香族ヘテロ環を形成していることを特徴とする〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕
一般式(1)で表される化合物が一般式(4)で表され、かつ前記一般式(2)で表される化合物が一般式(5)で表されることを特徴とする〔2〕に記載の製造方法。
【0021】
【化5】

【0022】
(式中、Rは置換されていても良いアルキル基を表わす。Q及びQは、それぞれ結合している炭素原子及び窒素原子とともに置換されていても良い5員の芳香族ヘテロ環を表わす。Y及びYはそれぞれ独立に、−O−、−S−又は−NH−を表わす。)
〔4〕
前記塩基が、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、アルコキシド又は水素化物であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の製造方法。
〔5〕
〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の製造方法であって、反応液に含まれる一般式(3)で表される化合物の量が、反応液に含まれる一般式(2)で表される化合物に対して1〜20当量であることを特徴とする製造方法。
〔6〕
〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の製造方法であって、反応液に含まれる塩基の量が、反応液に含まれる一般式(2)で表される化合物に対して1〜100当量であることを特徴とする製造方法。
〔7〕
反応温度が0〜200℃の範囲内であることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の製造方法。
〔8〕
反応時間が10分〜24時間の範囲内であることを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、アルコキシ置換トリアジン化合物、及びアルコキシ置換トリアジン化合物を有する5−アミノピラゾール化合物を高収率、高純度で得ることのできる製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0025】
本発明に係る一般式(1)で表される化合物の製造方法は、一般式(2)で表される化合物と、一般式(3)で表される化合物とを、塩基の存在下で反応させる製造方法である。
一般式(2)で表されるトリアジン誘導体は、OH基を1つだけ有するため、トリアジン環のNアニオンの安定化効果が小さい。したがって、このようなトリアジン誘導体を出発物質としてアルキル化を行うと、O−アルキル化が進行するため、工業的に有用な一般式(1)で表される化合物を効率的に得ることができる。また、塩基の存在下で反応を行うことで、O−アニオンを安定化させることができるため、よりO−アルキル化を進行させることができる。
【0026】
【化6】

【0027】
(式中、Rは置換されていても良いアルキル基を表わす。R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基を表わし、これらの基は更に置換されていても良く、RとR、RとRは、それぞれ互いに結合して窒素原子を有する置換されていても良いヘテロ環を形成してもよい。Xは、ハロゲン原子又は−O−SO−Rを表わす。Rは置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いフェニル基又は−ORを表わす。)
【0028】
一般式(1)および(3)において、Rはアルキル基を表わし、該アルキル基はさらに置換基を有していても良い。なかでもRは、式(3)で表される化合物の入手の容易さから総炭素原子数1〜10のアルキル基が好ましく、アルキル化反応の進行のしやすさから1級アルキル基、(例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、ノルマルブチル基又は2−エチルヘキシル基)であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。置換基を有する場合の置換基としては、アルキル化反応の条件に対して安定な置換基であることが好ましく、具体的には、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ジアルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、シアノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、又は、ヘテロ環基が好ましく、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ基、又は、カルボン酸基がより好ましい。
すなわち、R1で表されるアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、デシル基、2−エチルヘキシル基、メトキシエチル基、又は、フェノキシエチル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、アリル基、メトキシエチル基がより好ましく、アリル基又はメチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0029】
〜Rが表すアルキル基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは総炭素原子数1〜10のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。置換基を有する場合の置換基としては、アルキル化反応の条件に対して安定な置換基であることが好ましく、具体的には、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ジアルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、シアノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、又は、ヘテロ環基が好ましく、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ基、又は、カルボン酸基がより好ましい。
すなわち、R〜Rが表すアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、2−メトキシエチル基、2−フェノキシエチル基、2−シアノエチル基などが挙げられ、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基がより好ましい。
【0030】
〜Rが表すアルケニル基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは総炭素原子数2〜10のアルケニル基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜6のアルケニル基であり、例えばビニル基、イソプロペニル基又はアリル基等が挙げられる。置換基を有する場合の置換基としては、アルキル化反応の条件に対して安定な置換基であることが好ましく、具体的には、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ジアルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、シアノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、又は、ヘテロ環基が好ましい。
【0031】
〜Rが表すアルキニル基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは総炭素原子数2〜10のアルキニル基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜6のアルキニル基であり、例えば2−プロピニル基(プロパルギル基)等が挙げられる。置換基を有する場合の置換基としては、アルキル化反応の条件に対して安定な置換基であることが好ましく、具体的には、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ジアルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、シアノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、又は、ヘテロ環基が好ましい。
【0032】
〜Rが表すアリール基としては、縮環していてもよく、置換基を有していてもよい。置換基を有する場合の置換基としては、アルキル化反応の条件に対して安定な置換基であることが好ましく、具体的には、アルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ジアルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、シアノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、又はヘテロ環基が好ましい。すなわち、R〜Rで表されるアリール基の具体例として、例えばフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−ニトロフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−クロロフェニル基、2−メチルフェニル基、4−メタンスルホニルフェニル基等が挙げられ、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、又は2−クロロフェニル基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0033】
またRとR、RとRは、R、R、R及びRがそれぞれ結合している窒素原子とともに、RとR及びRとRが互いに結合して、窒素原子を含むヘテロ環を形成してもよい。
形成されるヘテロ環は、脂肪族でも芳香族でもよく、置換基を有していてもよい。
形成されるヘテロ環が脂肪族ヘテロ環である場合、熱力学的安定性から5〜7員環であることが好ましい。形成される脂肪族ヘテロ環の具体例としては、ピロリジン環、イミダゾリジン環、イミダゾリン環、ピペリジン環、ピペラジン環、インドリン環、モルホリン環等が挙げられる。
形成されるヘテロ環が芳香族ヘテロ環である場合、窒素原子が置換されてかつヒュッケル則を満たすためには、5員環であることが特に好ましい。形成される芳香族ヘテロ環の具体例としては、例えば、イミダゾール環、インドール環、ピラゾール環、トリアゾール環、ピロール環が挙げられ、これらのヘテロ環はベンゾ縮環していてもよい。
形成されたヘテロ環の有する置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、アリールジアゼニル基、ヘテロ環ジアゼニル基(この場合のヘテロ環基としては、チエニル基、フリル基、ピロリル基、インドリル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ピラゾリル基、インダゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、イソオキサゾリル基、1,2,4−チアジアゾリル基、1,3,4−チアジアゾリル基、1,2,4−オキサジアゾリル基、1,3,4−オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、1,3,5−トリアジル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基などが挙げられる。これらはシアノ基、又はアリール基により置換されていてもよい。)が挙げられる。
このように、RとR及びRとRが互いに結合して形成されたヘテロ環基が5員の芳香族ヘテロ環であるとき、出発物質である一般式(2)の化合物において、トリアジン環と該芳香族ヘテロ環とが共役することになる。その結果、本発明に係る一般式(1)で表される化合物の製造方法において、トリアジン環の芳香族性が維持されるO−アニオンが、トリアジン環の芳香族性が維持されないN−アニオンに対して相対的に安定化され、さらにO−アルキル化が優先される。従って、RとR及びRとRが互いに結合して形成されたヘテロ環基が5員の芳香族ヘテロ環であることがより好ましい。
【0034】
さらに、RとR及びRとRが互いに結合して形成されたヘテロ環基が5員の芳香族ヘテロ環であるとき、一般式(1)で表される化合物が一般式(4)で表される化合物もしくはその互変異性体であり、かつ前記一般式(2)で表される化合物が一般式(5)で表される化合物もしくはその互変異性体であることが特に好ましい。
【0035】
【化7】

【0036】
(式中、Rは置換されていても良いアルキル基を表わす。Q及びQは、それぞれ結合している炭素原子及び窒素原子とともに置換されていても良い5員の芳香族ヘテロ環を表わす。Y及びYはそれぞれ独立に、−O−、−S−又は−NH−を表わす。)
【0037】
は一般式(1)におけるRと同義であり好ましいものも同様である。
及びQが表す置換されていても良い5員の芳香族ヘテロ環は、一般式(1)におけるRとR及びRとRが互いに結合して形成する5員の芳香族ヘテロ環と同義であり好ましいものも同様である。
及びYは−O−を表わすことが好ましい。
【0038】
このように、トリアジン環と分子内で水素結合するような置換基−Y−H及び−Y−Hを有することによって、トリアジン環と、Qを含む5員の芳香族ヘテロ環と、Qを含む5員の芳香族ヘテロ環とが、それぞれ同一平面状に存在する立体配座がさらに安定となる。すると、本発明に係る一般式(1)で表される化合物の製造方法において、前記3つの環がすべて共役するため、N−アニオンに対してO−アニオンがさらに安定となり、よりO−アルキル化が優先するようになると考えられる。
なお、一般式(5)における置換基−Y−H及び−Y−Hは、トリアジン環に置換しているヒドロキシ基と同様にアルキル化されうる置換基であるが、本発明に係る製造方法の条件においては、トリアジン環に置換しているヒドロキシ基のアルキル化が優先する。これは、−Y−H及び−Y−Hがトリアジン環に水素結合しているために、塩基による水素原子の解離が起こりにくくなっており、従って塩基により解離したヒドロキシ基由来のO−アニオンに比べて求核性が低くなっているためと考えられる。
【0039】
一般式(3)中、Xはハロゲン原子又は−O−SO−Rを表わす。Rは置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いフェニル基又は−ORを表わす。Rの具体例及び好ましい例は、一般式(1)で表される化合物で説明したものと同様である。
Xが表すハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。Xが塩素原子を表す場合はアルキル化反応における反応性が劣るが、一般式(3)で表される化合物がより安定となる。またXがヨウ素原子を表す場合には一般式(3)で表される化合物が不安定となることがあるが、アルキル化反応における反応性には優れる。このような点を考慮して、一般式(3)で表される化合物の性質によってXは適宜選択することができる。
Xが塩素原子を表す場合など一般式(3)で表される化合物の反応性が低い場合には、触媒を用いることによって反応性を向上させることが出来る。このような触媒としては、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化テトラブチルアンモニウムなどが挙げられる。
が置換されていてもよいアルキル基もしくは置換されていてもよいフェニル基を表す場合、一般式(3)で表される化合物の入手の容易さの観点から、メチル基、フェニル基、p−メチルフェニル基、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0040】
本発明の製造方法において、用いられる塩基としては、無機塩基、及び、有機塩基を挙げることができる。
無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、水素化ナトリウムなどが挙げられる。有機塩基としては、アンモニア、ヒドラジン、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、ピリジン、2,6−ジメチルピリジン、ジメチルアミノピリジン、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシドなどが挙げられる。
該塩基は、式(3)で表される化合物と塩基とが直接反応するといった副反応を抑制するために塩基そのものの求核性が低いことが好ましい。
また、一般式(2)で表される化合物と塩基が反応したときに、N−アニオンに比べてより硬い塩基であるO−アニオンを安定化させるために、塩基として、共役酸が硬い酸となる塩基であることが好ましい。
なお、「硬い酸(hard acid)」「軟らかい酸(soft acid)」とは、1963年に,R. G. Pearsonが提出した酸の概念であり、ルイス酸およびルイス塩基をそれぞれ軟らかい酸と硬い酸,軟らかい塩基と硬い塩基に分類し,軟らかい酸と軟らかい塩基,硬い酸と硬い塩基は反応しやすく,軟らかい酸と硬い塩基,硬い酸と軟らかい塩基は反応しにくいとされている。この概念については、Journal of the American Chemical Society 85巻3533ページ(1963年)などの文献に記載されている。
これらの条件を鑑みると、塩基としては、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属のアルコキシド又はアルカリ金属の水素化物を好適に用いることができる。
【0041】
次に、本発明に係る製造方法における反応液について説明する。
該反応液には、溶媒、一般式(2)で表される化合物、一般式(3)で表される化合物及び塩基が含まれる。
溶媒としては、水、あるいは、ヘキサン,ヘプタン,トルエン等の炭化水素系有機溶媒、メタノール,エタノール,プロパノール,2-プロパノール,ブタノール,t−ブチルアルコール,アミルアルコール等のアルコール性有機溶媒、アセトン,メチルエチルケトン等のケトン系有機溶媒、ジエチルエーテル,t−ブチルメチルエーテル,テトラヒドロフラン,ジオキサン等のエーテル系有機溶媒、アセトニトリル,ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、ジクロロメタン,クロロホルム,1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、酢酸エチル,酢酸ブチル,乳酸エチルなどのエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド,ホルムアミド,ジメチルホルムアミド,ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒などが挙げられ、これらの溶媒は2種類以上の混合液であってもよい。
その中で、アルキル化反応の条件に対して安定であるという観点から、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンもしくはこれらのうち2種類以上の混合液が好ましい。
【0042】
反応液中に含まれる一般式(2)で表される化合物の含有量は、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜30質量%、さらに好ましくは1〜10質量%である。一般的に反応液中に含まれる一般式(2)で表される化合物の濃度が高ければ反応速度が大きくなるためより好ましいが、溶媒が少なすぎると一般式(2)で表される化合物が完全に溶解しないために反応速度が逆に低下したり、溶解していない固形分が反応液中に大量に存在するために撹拌しづらくなったりする場合があるため、適切な範囲に調節することが好ましい。
反応液中に含まれる一般式(3)で表される化合物の含有量は、一般式(2)で表される化合物の使用量に対して好ましくは1〜20当量、より好ましくは1.05〜10当量、さらに好ましくは1.1〜5当量である。一般式(2)で表される化合物に対して1当量以上であることにより一般式(2)で表される化合物を完全に反応させることができる。また、一般式(3)で表される化合物をより多く用いるほど反応速度が大きくなり、使用量が20当量以下であれば未反応の一般式(3)で表される化合物の残存量が少ないため経済的である。また残存した一般式(3)で表される化合物と目的の一般式(1)で表される化合物との分離が容易であるため好ましい。
反応液中に含まれる塩基は、式(2)で表される化合物の使用量に対して1〜100当量であり、好ましくは1〜20当量であり、さらに好ましくは1.05〜10当量である。1当量以上であれば一般式(2)で表される化合物を完全に反応させることができ、20当量以下であれば、過剰な塩基によって一般式(1)で表される化合物や一般式(2)で表される化合物や一般式(3)で表される化合物が分解するような副反応を抑制することができるため好ましい。
【0043】
反応液の反応温度としては、0〜200℃が好ましく、20〜150℃がより好ましく、40℃〜80℃であることが特に好ましい。反応温度が0℃以上であれば十分な反応速度が得られ、反応温度が200℃以下であれば一般式(1)で表される化合物や一般式(2)で表される化合物や一般式(3)で表される化合物が分解するような副反応が発生しにくいためである。
反応液の反応時間としては、10分〜24時間が好ましく、30分〜12時間がより好ましく、1時間〜8時間が特に好ましい。反応時間が10分以上であれば一般式(2)で表される化合物を十分に反応させることができ、12時間以内であれば一般式(1)で表される化合物や一般式(2)で表される化合物や一般式(3)で表される化合物が分解するような副反応が発生しにくいためである。
【0044】
以上の方法によれば、一般式(1)で表されるアルコキシ置換トリアジン化合物が高い収率で得られる。
【0045】
本発明における一般式(1)で表される化合物は、塩の形態であっても良い。具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸の塩、酢酸、シュウ酸などの有機酸の塩、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などに結合した水素原子のひとつがナトリウムまたはカリウムに置き換えられた塩が挙げられる。このような塩は、一般式(1)で表される化合物の製造におけるpH、溶媒の種類、もしくは温度の条件により安定な結晶として得られることがあるほか、一般式(1)で表される化合物に別途酸や塩基を作用させることによって得ることもできる。
【0046】
また、本発明における一般式(1)で表される化合物もしくはその塩は、溶媒和物であっても良い。具体的には、一般式(1)で表される化合物もしくはその塩1モルに対して、0.5〜10モルの水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、t−ブチルアルコール)、非プロトン性有機溶剤(たとえば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン)を含むものが挙げられる。このような溶媒和物は、一般式(1)で表される化合物の製造におけるpH、溶媒の種類、もしくは温度の条件により安定な結晶として得られることがあるほか、一般式(1)で表される化合物を別途特定の溶媒から再結晶させることによって得ることもできる。
【0047】
以下、一般式(1)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明はこれに限るものではない。
【0048】
【化8】

【実施例】
【0049】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0050】
実施例及び比較例においてHPLCの分析は、以下の測定条件に基づき行った。
(HPLC測定条件)
溶離液:メタノール/水=30/70(体積比)
検出波長:210nm
カラムの種類:TSKgel 80Ts(東ソー(株)製)
【0051】
(実施例1〜6:アルコキシ置換トリアジン化合物(例示化合物(1−4))の合成)
【0052】
【化9】

【0053】
〔実施例1〕
Synthetic Communications 23巻2665頁(1993年)に記載の「Method B」に即して行った。すなわち、2−ヒドロキシ−4,6−ビス(ジメチルアミノ)−1,3,5−トリアジン 1.83gをホルムアミド15mLに溶解し、ここへ水酸化リチウム一水和物 0.42gを加え、65℃にて1時間撹拌した。
ここに臭化アリル 1.45gを加え、65℃にて5時間撹拌した。反応混合物を一部取り、水を加えてから酢酸により中和したサンプルをHPLCにて分析した結果、O−アルキル体(例示化合物(1−4))とN−アルキル体(2種類の合計)の面積比は51:49であった。
反応終了後、溶媒を減圧下にて除去し、カラムクロマトグラフィーにより例示化合物(1−4)0.91g(収率41%)を得た。1H−NMR(重クロロホルム)δ3.1ppm(s,12H)、4.2ppm(d,2H)、5.0−5.3ppm(m,2H)、6.0ppm(m,1H)
【0054】
〔実施例2〕
2−ヒドロキシ−4,6−ビス(ジメチルアミノ)−1,3,5−トリアジン 1.83gを水10mLに懸濁させ60℃に加熱し、8規定水酸化ナトリウム溶液1.3mL加えた。60℃にて1時間加熱した後、臭化アリル 1.45gを加え、60℃にて10時間撹拌した。反応混合物を一部取り、メタノールを加えたサンプルをHPLCにて分析した結果、O−アルキル体(例示化合物(1−4))とN−アルキル体(2種類の合計)の面積比は44:56であった。
【0055】
〔実施例3〕
2−ヒドロキシ−4,6−ビス(ジメチルアミノ)−1,3,5−トリアジン 1.83gと炭酸カリウム 4.14gをアセトン30mLに懸濁させ、臭化アリル 2.42gを加えた。60℃にて4時間撹拌した。反応混合物から上澄みを一部取り、メタノールを加えたサンプルをHPLCにて分析した結果、O−アルキル体(例示化合物(1−4))とN−アルキル体(2種類の合計)の面積比は34:66であった。
【0056】
〔実施例4〕
窒素気流下において、水素化ナトリウム0.24gをジメチルアセトアミド(DMAc)10mLに懸濁させ、2−ヒドロキシ−4,6−ビス(ジメチルアミノ)−1,3,5−トリアジン 1.83gを加えた。室温にて1時間撹拌した後、80℃にて1時間加熱した。60℃まで放冷させて、臭化アリル 1.45gを加えて、60℃にて4時間撹拌した。反応混合物を一部取り、メタノールを加えたサンプルをHPLCにて分析した結果、O−アルキル体(例示化合物(1−4))とN−アルキル体(2種類の合計)の面積比は52:48であった。
【0057】
〔実施例5〕
2−ヒドロキシ−4,6−ビス(ジメチルアミノ)−1,3,5−トリアジン 1.83gをN−メチルピロリドン20mLに溶解させ、ジアザビシクロウンデセン(DBU)4.5mLと臭化アリル 2.42gを加えた。90℃にて1時間撹拌した。反応混合物を一部取り、メタノールを加えたサンプルをHPLCにて分析した結果、O−アルキル体(例示化合物(1−4))とN−アルキル体(2種類の合計)の面積比は26:74であった。
【0058】
〔実施例6〕
2−ヒドロキシ−4,6−ビス(ジメチルアミノ)−1,3,5−トリアジン 1.83gをアセトン30mLに懸濁させ、ピリジン2.4mLと臭化アリル 2.42gを加えた。60℃にて5時間撹拌した。反応混合物を一部取り、メタノールを加えたサンプルをHPLCにて分析した結果、O−アルキル体(例示化合物(1−4))とN−アルキル体(2種類の合計)の面積比は25:75であった。
【0059】
(実施例7〜10:アルコキシ置換トリアジン化合物(例示化合物(1−12))の合成)
【0060】
【化10】

【0061】
〔実施例7〕
Synthetic Communications 23巻2665頁(1993年)に記載の「Method B」に即して行った。すなわち、2,4−ビス(イミダゾール−1−イル)−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジン 2.29gをホルムアミド15mLに溶解し、ここへ水酸化リチウム一水和物 0.42gを加え、65℃にて1時間撹拌した。
ここにp−トルエンスルホン酸メチル 2.23gを加え、65℃にて5時間撹拌した。反応混合物を一部取り、メタノールを加えたサンプルをHPLCにて分析した結果、O−アルキル体(例示化合物(1−12))とN−アルキル体(2種類の合計)の面積比は71:29であった。
反応終了後、溶媒を減圧下にて除去し、カラムクロマトグラフィーにより例示化合物(1−12)1.38g(収率57%)を得た。1H−NMR(重クロロホルム)δ4.1ppm(s,3H)、7.1ppm(d,2H)7.2ppm(d,2H)、7.8ppm(s,2H)
【0062】
〔実施例8〕
2,4−ビス(イミダゾール−1−イル)−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジン 2.29gと炭酸ナトリウム 3.18gをアセトン30mLに懸濁させ、p−トルエンスルホン酸メチル 3.72gを加えた。60℃にて5時間撹拌した。反応混合物から上澄みを一部取り、メタノールを加えたサンプルをHPLCにて分析した結果、O−アルキル体(例示化合物(1−12))とN−アルキル体(2種類の合計)の面積比は63:37であった。
【0063】
〔実施例9〕
窒素気流下において、水素化ナトリウム0.24gをジメチルアセトアミド10mLに懸濁させ、2,4−ビス(イミダゾール−1−イル)−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジン 2.29gを加えた。室温にて1時間撹拌した後、80℃にて1時間加熱した。60℃まで放冷させて、p−トルエンスルホン酸メチル 2.23gを加えて、60℃にて3時間撹拌した。反応混合物を一部取り、メタノールを加えたサンプルをHPLCにて分析した結果、O−アルキル体(例示化合物(1−12))とN−アルキル体(2種類の合計)の面積比は60:40であった。
【0064】
〔実施例10〕
2,4−ビス(イミダゾール−1−イル)−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジン 2.29gをN−メチルピロリドン15mLに溶解させ、ピリジン2.4mLとp−トルエンスルホン酸メチル 3.72gを加えた。100℃にて1時間撹拌した。反応混合物を一部取り、メタノールを加えたサンプルをHPLCにて分析した結果、O−アルキル体(例示化合物(1−12))とN−アルキル体(2種類の合計)の面積比は48:52であった。
【0065】
(実施例11〜14:アルコキシ置換トリアジン化合物(例示化合物(1−17))の合成)
【0066】
【化11】

【0067】
〔実施例11〕
Synthetic Communications 23巻2665頁(1993年)に記載の「Method B」に即して行った。すなわち、2−ヒドロキシ−4,6−ビス(5−ヒドロキシ−3−フェニルピラゾール−1−イル)−1,3,5−トリアジン 4.13gをホルムアミド15mLに溶解し、ここへ水酸化リチウム一水和物 0.42gを加え、65℃にて1時間撹拌した。
ここにトリフルオロメタンスルホン酸メチル 1.97gを加え、65℃にて5時間撹拌した。反応混合物を一部取り、メタノールを加えたサンプルをHPLCにて分析した結果、O−アルキル体(例示化合物(1−17))とN−アルキル体(2種類の合計)の面積比は79:21であった。
反応終了後、溶媒を減圧下にて除去し、カラムクロマトグラフィーにより例示化合物(1−17)2.70g(収率63%)を得た。1H−NMR(重クロロホルム)δ4.1ppm(s,3H)、5.7ppm(s,2H)、7.1ppm(t,2H)7.2−7.4ppm(m,8H)
【0068】
〔実施例12〕
2−ヒドロキシ−4,6−ビス(5−ヒドロキシ−3−フェニルピラゾール−1−イル)−1,3,5−トリアジン 4.13gと炭酸ナトリウム 3.18gをアセトニトリル30mLに懸濁させ、トリフルオロメタンスルホン酸メチル 3.28gを加えた。60℃にて5時間撹拌した。反応混合物から上澄みを一部取り、メタノールを加えたサンプルをHPLCにて分析した結果、O−アルキル体(例示化合物(1−17))とN−アルキル体(2種類の合計)の面積比は81:19であった。
【0069】
〔実施例13〕
2−ヒドロキシ−4,6−ビス(5−ヒドロキシ−3−フェニルピラゾール−1−イル)−1,3,5−トリアジン 4.13gと酢酸カリウム 9.82gをアセトン50mLに懸濁させ、トリフルオロメタンスルホン酸メチル 6.56gを加えた。60℃にて5時間撹拌した。反応混合物から上澄みを一部取り、メタノールを加えたサンプルをHPLCにて分析した結果、O−アルキル体(例示化合物(1−17))とN−アルキル体(2種類の合計)の面積比は71:29であった。
【0070】
〔実施例14〕
2−ヒドロキシ−4,6−ビス(5−ヒドロキシ−3−フェニルピラゾール−1−イル)−1,3,5−トリアジン 4.13gをテトラヒドロフラン30mLに溶解させ、ジイソプロピルエチルアミン8.7mLを加えた。ここにトリフルオロメタンスルホン酸メチル 1.97gを加えた。60℃にて5時間撹拌した。反応混合物を一部取り、メタノールを加えたサンプルをHPLCにて分析した結果、O−アルキル体(例示化合物(1−17))とN−アルキル体(2種類の合計)の面積比は54:46であった。
【0071】
(比較例1)
【0072】
【化12】

【0073】
Synthetic Communications 23巻2665頁(1993年)に記載の「Method B」に即して行った。すなわち、シアヌル酸 1.29gをホルムアミド15mLに溶解し、ここへ水酸化リチウム一水和物 0.42gを加え、65℃にて1時間撹拌した。
臭化アリル 1.45gを加え、65℃にて5時間撹拌した。反応混合物を一部取り、水を加えてから酢酸により中和したサンプルをHPLCにて分析した結果、O−アルキル体はまったく検出されず、N−アルキル体(1置換体が大部分で、一部3置換体がある)のみが検出された。
【0074】
実施例1〜14及び比較例1において得られた生成物について、O−アルキル体とN−アルキル体の割合を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表1の結果より、シアヌル酸を出発物質とした比較例1では、O−アルキル体の割合が0%であったのに対し、OH基を1つだけ有するトリアジン誘導体を出発物質とした実施例1〜実施例14では、O−アルキル体の割合が25%〜81%となり、本発明の効果が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(2)で表される化合物と、一般式(3)で表される化合物とを、塩基の存在下で反応させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製造方法。
【化1】

(式中、Rは置換されていても良いアルキル基を表わす。R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基を表わし、これらの基は更に置換されていても良く、RとR、RとRは、それぞれ互いに結合して窒素原子を有する置換されていても良いヘテロ環を形成してもよい。Xは、ハロゲン原子又は−O−SO−Rを表わす。Rは置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いフェニル基又は−ORを表わす。)
【請求項2】
とR、RとRが、それぞれ互いに結合して窒素原子を有する置換されていても良い5員の芳香族ヘテロ環を形成していることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
一般式(1)で表される化合物が一般式(4)で表され、かつ前記一般式(2)で表される化合物が一般式(5)で表されることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【化2】

(式中、Rは置換されていても良いアルキル基を表わす。Q及びQは、それぞれ結合している炭素原子及び窒素原子とともに置換されていても良い5員の芳香族ヘテロ環を表わす。Y及びYはそれぞれ独立に、−O−、−S−又は−NH−を表わす。)
【請求項4】
前記塩基が、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、アルコキシド又は水素化物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法であって、反応液に含まれる一般式(3)で表される化合物の量が、反応液に含まれる一般式(2)で表される化合物に対して1〜20当量であることを特徴とする製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法であって、反応液に含まれる塩基の量が、反応液に含まれる一般式(2)で表される化合物に対して1〜100当量であることを特徴とする製造方法。
【請求項7】
反応温度が0〜200℃の範囲内であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
反応時間が10分〜24時間の範囲内であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−178706(P2011−178706A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43564(P2010−43564)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】