説明

アルコール含量が減少したアルコール飲料の製造のための方法

グルコースオキシダーゼ及びグルコースイソメラーゼを用いて、未発酵の飲料出発溶液を処理することを含む、減少したアルコール含量有するアルコール飲料の製造のための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、酵素であるグルコースオキシダーゼとグルコースイソメラーゼを組み合わせて飲料出発溶液を処理することを含む、アルコール飲料、例えばリンゴ酒(cider)、ビール、低アルコールワイン又はノンアルコールワイン、及び他の低アルコール飲料又はノンアルコール飲料において、アルコールを減少させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
消費者の健康問題及びエタノール不耐性問題のために、従来の「高アルコール」製品としての特徴的な官能特性を同時に有する、アルコール含量が減少したアルコール飲料に対する需要が増大している。また、地球温暖化は、世界中で、果物及び液果類において、より高い糖含量を導き、それは、アルコール発酵のための出発溶液として用いられる場合に、得られる製品においてより高いアルコール含量をもたらす。そのような高アルコール含量は、製品の官能特性に悪影響を及ぼす可能性を有する。
【0003】
従って、アルコール飲料のアルコール含量の制御を可能にし、且つ同時に特定の製品の官能特性を維持する方法が必要とされている。
【0004】
逆浸透、スピニングコーン(spinning cone)、又は希釈のような、エタノール減少のための現行方法は、満足できるものではない。これらの方法は、飲料の官能的品質に対して悪影響を及ぼす可能性を有する。さらに、アルコール飲料の逆浸透についての、最大で1 USD/ガロンまでの価格は、この手法の幅広い適用についての大きな制約である。
【0005】
US4675191(Novo Industri, Denmark‐1987年公開)は、酵素のグルコースオキシダーゼの使用に関する、ワインにおけるアルコール含量を減少させるための方法を記述している。記述される方法について、2段落、25〜29行:「この発明の方法は、未発酵グレープジュースを酸素の存在下でグルコースオキシダーゼを用いて処理し、その結果、グレープジュース中のグルコースをグルコン酸に変換し、その後、そのように処理されたグレープジュースを発酵することを含む」と記載している。
この従来技術の方法の本明細書に主に関連する技術要素は、図1で概略的に説明される。
【0006】
出願番号PCT/EP2008/068161を有する国際PCT出願は、2008年12月22日に提出された。出願人は、Chr. Hansen A/Sであり、前記出願は、この本出願の出願日において、公開されていない。
【0007】
PCT/EP2008/068161は、本明細書で記述されるように、酵素の使用を含む、グレープジュースから製造されるワインにおいて、アルコールを減少させるための方法を記述する。他のアルコール飲料におけるアルコールを減少させるためのこの原理の使用は、PCT/EP2008/068161に記述されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明により解決される課題は、アルコール飲料(以後「アルコール飲料」又は単に「飲料」と呼ばれる)においてアルコール含量を減少させるための新しい方法を提供することであって、本方法は、最終飲料において著しく減少したアルコール含量をもたらす。さらに、本方法は、望ましくないアルコール発酵停止のリスクを著しく減少させる。
【0009】
本方法は、本発明者らの発見に基づく。彼らは、グルコースオキシダーゼに基づく当該技術分野の方法が、グルコースイソメラーゼの使用をまた含むことにより、著しく改良し得ることを、驚くべきことに発見した。
US4675191の方法と本発明の概要の比較は、図1に示される。実施例では、本明細書で、グルコースオキシダーゼのみを用いる方法が、約12%の全糖の減少をもたらしたことを見ることができる。グルコースイソメラーゼの添加は、これを約19%の糖の減少まで、著しく上昇させた。飲料出発溶液(酵素の基質)における少ない糖は、得られる飲料における少ないアルコール含量を暗示する。
【0010】
さらに、発明者らは、グルコースイソメラーゼのさらなる添加は、望ましくないアルコール発酵停止のリスクを著しく減少させる、約1:1での飲料出発溶液におけるグルコース/フルクトース比を維持することに役立つことを発見した。さらなる詳細については、本明細書の実施例を参照のこと。
【0011】
アルコール発酵において、任意のグルコース、フルクトースを含む溶液中のグルコース/フルクトース比が、1:1から著しく異なるべきではないことは、当業者に知られている。これが起こった場合、アルコール発酵停止の、すなわち、酵母が全ての糖を発酵せず、得られる飲料が甘くなりすぎる、リスクが存在する。
【0012】
グルコースイソメラーゼの重要な商業的応用は、例えば、高フルクトースシロップ(フルクトースはグルコースより甘い)を作るために、グルコースをフルクトースに変換することである。
この点から見て、本発明者らは、グルコースイソメラーゼの添加が、そのような肯定的な結果(著しく少ない糖=>少ないアルコール)を提供したことに、実際のところ、驚かされた。これについての一つの理由は、グルコースイソメラーゼが、さらなるグルコースを「取り除く/変換する」ことができる酵素として一見して見ることができ、且つグルコースオキシダーゼはそれ故、より少ない利用可能な基質を有するであろうことである(グルコースオキシダーゼはフルクトースに対して作用しない)。
しかしながら、本明細書の実施例に示すように、グルコースイソメラーゼの添加は、非常に肯定的な結果を提供した。
【0013】
理論により限定されることなく、下記は、なぜグルコースイソメラーゼの添加が、そのような肯定的な結果を提供するのかを理論的に説明することができると考えられる:
【0014】
グルコースオキシダーゼ(EC 1.1.3.4)は、飲料出発溶液(また本明細書で溶液と呼ぶ)において、主に下記の反応を触媒する:
ベータ‐D‐グルコース + O2 <=> D‐グルコノ‐1,5‐ラクトン + H2O2
溶液内では、発生した「D‐グルコノ‐1,5‐ラクトン」は、自発的にグルコン酸に変換される。従って、D‐グルコノ‐1,5‐ラクトンは取り除かれ、平衡はそれ故、右に移動し=>グルコースは溶液から取り除かれる。
酵素調製物はまたカタラーゼ活性を有する場合、発生したH2O2はまた取り除かれ=>平衡は従ってさらにより右に移動し=>より多くのグルコースが除かれる。カタラーゼ活性の関与は、本明細書の好ましい実施形態である−下記の議論を参照。
カタラーゼ (EC 1.11.1.6)は、反応を触媒する:
2H2O2<=>O2 + 2H2O
【0015】
本発明の方法における特に関連する酵素は、グルコースイソメラーゼEC 5.3.1.5である。このEC 5.3.1.5分類の正式名称は、キシロースイソメラーゼである。しかしながら、当業者に知られているように、それはまた、グルコースイソメラーゼとも呼ばれる。グルコースイソメラーゼは、例えば、この酵素分類の関連する商業的製品、例えば、本明細書の実施例に用いられる商業製品に用いられる名称である。
本明細書で、飲料出発溶液において、グルコースイソメラーゼにより触媒される、適切な、よく知られている反応は以下である:
D‐グルコース <=> D‐フルクトース
当業者によく知られているように、この酵素分類はまた、反応を触媒する:
D‐キシロース <=>D‐キシルロース
このキシロースに関連する反応は、本明細書では関連性が低い。
【0016】
一つの理論は、グルコースオキシダーゼにより取り除かれたグルコースが、その後、溶液中に、グルコース/フルクトース比が1:1よりも低くなる状況をつくる(「多過ぎる」フルクトース−「少なすぎる」グルコース)ことである。グルコースイソメラーゼが反応を示すグルコース/フルクトース平衡は、結果として、「強制的に」左に移動し=>フルクトースは、グルコースに変換され、1:1のグルコース/フルクトース比を「回復」し=>グルコースオキシダーゼは、「新たに」作られたグルコースを受け取って作用し、従って、いっそう多くの全糖が溶液から取り除かれる(グルコース及びフルクトースの双方)。上記で論じたように、1:1のグルコース/フルクトース比の維持はまた、アルコール発酵停止のリスクを著しく減少させる利点を有する。
【0017】
酵母アルコール発酵の前に、O2は、未発酵溶液(飲料出発溶液)中に存在する。当業者に知られているように、通常の酵母発酵は一般的に二つの部分から成る:
【0018】
部分1
好気培養(酸素が存在する)
これは、酵母がその細胞数を約4時間ごとに倍増する初期の高速増殖プロセスである(通常24〜72時間)。
【0019】
部分2
嫌気発酵(酸素は存在しない)
緩徐活性及び酵母は糖(グルコース及びフルクトースの双方)を発酵し、酵母細胞の数を増加させるよりも、むしろ、それをアルコール(糖=>2エチルアルコール + 2 CO2)に変換する。(このプロセスは、酵母及び処方に依存して、数日から数週間を要する)。
【0020】
従って、酵母発酵において、O2は、早く又は遅れて消滅し得る。グルコースオキシダーゼは、活性のためにO2を必要とする。しかしながら、グルコースイソメラーゼは、O2の有無にかかわらず活性である。従って、グルコースイソメラーゼはまた、実際の酵母アルコール発酵において、1:1のグルコース/フルクトース比を維持することに役立つことができる。
【0021】
従って、本発明の第一の態様は、アルコール含量が減少したアルコール飲料を製造するための方法であって、以下のステップ:
(1):有効量の以下の二つの酵素:
(a) 酸素の存在下で、溶液中のグルコースの少なくとも一部をグルコン酸に変換するのに十分な期間用いられるグルコースオキシダーゼ;及び
(b) 溶液中のフルクトースの少なくとも一部をグルコースに変換するのに十分な期間用いられるグルコースイソメラーゼ、
で未発酵の飲料出発溶液を処理すること;及びその後
(2):アルコール含量が減少したアルコール飲料を得るために、グルコース及びフルクトースの量が減少した前記の処理された溶液を発酵させること、
を含む、方法に関する。
【0022】
定義
関連する用語の全ての定義は、関連する技術分野における当業者の一般的な理解に従う。
【0023】
本発明の第一の態様の方法に従って製造された飲料において、用語「アルコール含量の減少」とは、第一の態様のステップ(1)の二つの酵素の双方での処理を用いることなく、同一の条件下で製造された飲料と比較して、飲料中のより低いアルコールの含量に関連する。実際、この用語は、有効量の二つの酵素を用いることに直接関係するとして見られてもよい。
【0024】
有効量のグルコースオキシダーゼが用いられる場合、グルコースの少なくとも一部は、溶液から取り除かれ、それ故、飲料中の少ないアルコールが得られる。同様に、有効量のグルコースイソメラーゼについて、それは、溶液中のフルクトースの少なくとも一部をグルコースに変換し=>この産生されたグルコースは、その後グルコースオキシダーゼにより取り除かれ=>それ故、飲料中のアルコールはより少なくなる。
【0025】
本発明の実施形態は、実施例のみを通じて、下記で記述される
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、US4675191の方法及び本発明の方法の概略図/比較である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
アルコール含量の低下/減少:
本質において、本方法は、本明細書に記載されるように、実質的に任意の所望の減少した又は低下したアルコール含量を有する、アルコール飲料を作るために用いられることができる。
【0028】
例えば、それは、約10%のアルコール含量、例えば体積比で5〜10%のアルコール含有量(ABV)、6〜7%ABV、又は2〜4%ABVを含む1〜5%ABVなどの低いアルコール含量を有する、いわゆるライト飲料(light beverage)である。
【0029】
上記で論じたように、地球温暖化のために、世界的に、果物及び液果類は、より多くの糖を含み、増加したアルコールレベルを有する飲料をもたらす。これは、例えば、乏しい風味などの様々な理由で望ましくない可能性がある。加えて、消費者の健康志向のために、低アルコール飲料についての需要が増大している。そして、エタノール不耐性に罹患する人の集団を対象とする、低‐アルコール飲料についての需要が存在する。
【0030】
従って、本発明は、例えば、風味、芳香、色彩などの特定の飲料の特徴を維持しながら、飲料中のアルコール含量を低下させる課題に取り組む。
【0031】
グルコン酸:
グルコースオキシダーゼを用いた未発酵の飲料出発溶液の処理は、グルコン酸を生じ、それは酵母によって発酵することができず、従ってグルコン酸は飲料中に出現する。当業者に知られるように、グルコン酸は、飲料に思わしくない官能特性を与える場合がある。
【0032】
従って、第一の態様の方法の発明の実施形態は、満足できる官能特性を有する飲料を得るために、グルコン酸の少なくとも一部を取り除く追加のステップ(3)を含む。
【0033】
一つの実施形態では、グルコン酸は、グルコン酸の難溶性塩を形成する物質、好ましくは炭酸カルシウムの添加による中和により、取り除かれる。炭酸カルシウムは安価であり、飲料のための化学的脱酸剤として既に用いられており、沈殿したグルコン酸塩、主にグルコン酸カルシウムは、濾過により容易に取り除くことができる。
【0034】
グルコースオキシダーゼ及びグルコースイソメラーゼ
本明細書で記述されるように、本方法に用いられるグルコースオキシダーゼ及びグルコースイソメラーゼは、例えば、関連する商業的に入手可能な酵素製品などの多数の様々な適切な供給源から入手されてもよい。
【0035】
当業者に知られている通り、関連するpH値、温度などの中で機能する酵素を含む、市販されている、多数の様々な商業的に入手可能なグルコースオキシダーゼ/イソメラーゼ酵素製品が存在する。別の有用な酵素は、他のヘキソース糖を変換することができるヘキソースオキシダーゼである。
【0036】
下記の実施例では、以下の商業的に入手可能な酵素製品が用いられる:
グルコースオキシダーゼ:Hyderase(登録商標) (Amano製)
グルコースイソメラーゼ:Sigma製の製品(# G4166-50g)。カタログ番号は本明細書の実施例を参照のこと。
【0037】
Hyderase(登録商標)製品の利点は、それがカタラーゼ活性を含むことでもある。
【0038】
「飲料出発溶液」とは、上記で言及された酵素のための、及び最終的にはアルコール発酵のための基質である。酵素のために好適な基質は、以下:グルコース、フルクトース、キシロース、マンノース、ガラクトース、その他任意のヘキソース及びそれらの任意の組み合わせ、を含むがこれに限定されない。言及された酵素のための基質として作用することができる任意の糖化合物は、本発明により包含される。言うまでもなく、本発明に従って最適な結果を得るために、好ましい基質は、主な糖成分として、グルコース及びフルクトースを含む。
【0039】
上記で言及された糖の有用な供給源は、様々な果物、液果類、及び穀物に亘る。そのような生産物の液体形態は、アルコール飲料の製造において、幅広く「飲料出発溶液」として用いられ、しばしば「マスト(must)」、「ジュース」、又は「ワース(worth)」として呼ばれる。従来の例は、ワインの製造においてグレープ、リンゴ酒(cider)の製造においてリンゴ及びナシ、及びビールの製造において大麦である。しかしながら、新しい飲料は、ザクロ、パイナップル、ストロベリー、及びマンゴーを含むがこれに限定されない出発物質例として、より風変わりな生産物を用いて、絶えず考案されている。
【0040】
一つの実施形態では、飲料出発溶液は、PCT/EP2008/068161で記述されるように、グレープジュースである。
【0041】
カタラーゼ活性
上記で論じたように、本明細書で記述されるように本方法では、カタラーゼ活性を有する酵素調合物の使用はまた、グルコースオキシダーゼにより産生されたH2O2の除去をもたらし得る。
【0042】
過酸化水素(H2O2)は、望ましくない色彩をもたらすことがあり、それ故飲料において望ましい成分ではない。
さらに、上記で論じたとおり、H2O2の除去により、グルコースオキシダーゼ平衡をさらに左に移動し得=>多くのグルコースが取り除かれる。
【0043】
従って、本発明の第一の態様のステップ(1)の好ましい実施形態では、溶液はまた、ジュース中のH2O2の少なくとも一部をO2 + H2Oに変換するために十分な期間、有効量のカタラーゼ活性を含む調製物で処理される。
【0044】
好適な製造パラメータ−第一の態様のステップ1
当業者に知られているように、飲料製造手順における変更は、飲料生成物の官能特性を変える。それ故、通常の飲料製造手順と本明細書に記述されるような方法の実施との間で一致することが好ましい。その結果として、本発明の実施を通して、悪影響は、飲料の風味、芳香について観察されない。
【0045】
酵素が触媒するプロセスは、通常、酵素の最適pH内で行われる。この発明の好ましい実施は、pHを調整することなく、未発酵溶液(飲料出発溶液)を処理することである。幸いなことに、本明細書で用いられる酵素の好適で適切な商業的に入手可能な製品は、未発酵の飲料出発溶液について、通常のpH範囲において、十分な活性及び安定性を示す。
【0046】
特定の基質(飲料出発溶液)に応じて、異なる糖成分間の糖含量及び比は、変更し得る。例えば、リンゴでは、グルコース:フルクトース比は、30:70であり、マンゴーでは、その比は24:76であり、パイナップルでは、その比は43:57であり、ストロベリーではその比は20:80である。当該技術分野における当業者に知られているように、これらの比は、気候及び成長条件及び収穫の時期に応じて変動し得る。この比は、酵素の最適な投与量を選択することに関連し得る。容易に入手可能なこの情報に基づいて、特定の応用のために酵素の最適な投与量を選択することは、当業者に困難なことではない。
【0047】
特定の飲料の製造のための方法において、一般的なpH及び温度において、合理的で適切な活性及び安定性を示すことを提供する、任意の酵素は、本明細書で記述されるように、本発明による方法に用いることができることが理解される。従って、可溶性の酵素調製物が通常好ましいとしても、可溶性の及び固定化された酵素の双方の調製物は用いられてもよい。
【0048】
所定の応用、及び所望の糖変換のために、どのくらいの量の任意の種類の酵素が必要であるかを確立することは、当該技術分野の当業者にとって容易である。例えば、処理時間及び温度の詳細に応じて:
(i):溶液1 hlにつき、およそ、約1,000〜50,000,000国際単位のグルコースオキシダーゼ活性が適切であり;且つ
(ii):溶液1 hlにつき、およそ、約100〜5,000,000国際単位のグルコースオキシダーゼ活性が適切である。
【0049】
従って、特定のプロセスパラメータ下で試験をすることが比較的容易であるので、酵素の適切な投与量を明記する、本発明への付加価値を提供しない。以下で説明されるように、実施例に適用される適切な量は上記のレベル内であり、上記の範囲は任意の適切な応用を網羅すると想定される。
【0050】
本明細書で、国際単位は、上述のように、当該技術分野に従って定義され、すなわち、30℃の温度、及び最大基質変換速度を生じる、pH値及び基質濃度で決定される。
当業者に知られているとおり、最適なpH値及び最適な基質濃度は、対象の特定の酵素(例えば、特定のグルコースオキシダーゼ)のために、変更し得る。しかしながら、例えば、この最適なpH及び基質濃度は一般的に、適切な商業的酵素製品についての製品文書上で提供されるので、これを特定することは容易である。さらに、対象の特定の酵素について、最適なpH及び基質濃度などのパラメータの特定をすることは、一般的な日常的な作業である。それ故、所望のアルコール飲料の製造において、本発明の原理を適用する場合、利用できる酵素製品及びプロセスパラメータの間の最適な一致を考慮されるべきである。
【0051】
好ましい実施形態では、以下:
(i):溶液1 hlにつき、おおよそ、約15,000〜5,000,000国際単位のグルコースオキシダーゼ活性;及び
(ii):溶液1 hlにつき、おおよそ、約5,000〜500,000国際単位のグルコースイソメラーゼ活性、
が用いられる。
【0052】
好ましい実施形態では、第一の態様のステップ(1)の間、温度は、1〜35℃、好ましくは3〜30℃である。一般的に、酵素反応においては、全般的な反応速度は、温度が例えば約25から40℃に上昇する場合、温度と共に上昇し得る。この場合、しかしながら、温度が25から40℃に上昇する場合、より多くの酸素が液体から放出され得るので、従って、全体的な反応速度は、そのような条件下で減少し得る。40℃での延長された処理はまた、溶液及び得られる飲料の質に有害となり得る。
【0053】
全般的に言えば、好ましくは、(通気された)溶液がグルコースオキシダーゼ、イソメラーゼ、及び随意的に他の本明細書に記載された酵素で処理される一方で、飲料製造の機構においてなされた唯一の変更は、未発酵溶液の短期間の保存をもたらす。これに関連して、それは、酵素活性よりはむしろ処理時間が、制御するパラメータであり得ることを意味する。例えば、十分なグルコースオキシダーゼは、一般的に時間が72時間を越えない、多くの場合は48時間を越えない、合理的な処理時間内で、グルコースの所望の割合を変換するために用いられるべきである。たとえ、いくつかの酵母が未発酵溶液中に存在する場合でさえ、発酵は、最初の48時間、任意の相当の程度まで開始しないことが分かっており、従って、適切な量の糖を除くことが可能である。
【0054】
第一の態様のステップ1に関して、変換の程度は、グルコースのグルコン酸への反応が、酸素供給を遮断することによりほぼ即時に停止するので、大変容易に制御されることを意味する。
【0055】
本発明の実施はまた、得られる飲料の官能特性を向上させるために、ステップ1から得られる糖が減少した溶液が、酸の供給(酸保存)として維持され、且つ酸を含まない溶液と混合される場合を意図する。
【0056】
任意の時点で、例えば発酵ステップ後に、グルコン酸の除去が行われ得ることは理解される。
代わりに、それは、本明細書に記述されるように、グルコースオキシダーゼの添加の前に、例えば炭酸カルシウムの添加により行われてもよい。この利点は、飲料出発溶液においてpHが上昇することであり、それは一般的におよそ中性pHの最適pHを有するので、これは一般的に、グルコースオキシダーゼの活性を向上させることができる。
【0057】
好ましい実施形態では、適切な酵素調製物(単数又は複数)は、固体水溶性調製物、好ましくは、非粉末調製物である。固体調製物の保存安定性は、液体調製物の保存安定性よりよく、また、任意の保存剤を添加する必要がない。使用者が使用の直前に、少量の水に固体形態剤を溶解することが望ましい。
【0058】
本明細書に記載したように、本方法の好ましい実施形態では、第一の態様のステップ1において、酸素は連続的に溶液に供給される。酸素の供給は、特にグルコースオキシダーゼ酵素反応の反応速度に著しく影響を与える。それ故、酸素の連続的な導入は、高い反応速度を確保する。望ましくは、酸素は、空気ポンプの手法、酸素を溶液に導入するための最も効果的な手法、により供給される。
【0059】
本発明の方法の好ましい実施形態では、ステップ1で添加されるグルコースオキシダーゼ/イソメラーゼ調製物の量は、約72時間以下の期間において、糖濃度の望ましい減少の発生のために十分である。すでに指摘されているように、たとえいくらかの酵母が溶液に存在しているとしても、最初の48時間、発酵は、検知できる程度まで進行せず、従って、グルコースのグルコン酸への酵素的変換の間、相当の量のグルコース/フルクトースは、同時にアルコールに発酵されない。
【0060】
好ましい実施形態では、ステップ(1)の間、二つのグルコースオキシダーゼ/イソメラーゼ酵素の有効量及び期間は、
(A):溶液中の糖含量が少なくとも10%、より好ましくは少なくとも14%、さらに好ましくは少なくとも17%減少すること、
である。
【0061】
上記で述べたように、本明細書の実施例において、糖含量(グルコース及びフルクトースの双方)は、19%減少した。
【0062】
本発明による方法の好ましい実施形態では、ステップ1におけるpH値は、制御されない。この実施形態は、長い処理時間、例えば約72時間までが適しており、用いられる場合に、特に好ましい。
【0063】
アルコール飲料の芳香(aroma)、風味、及び芳香(bouquet)は極めて繊細な性質であるという事実のために、本発明により製造される低アルコール飲料が所望の特性を保有し得るかどうかは、予測することができない。加えて、可溶性グルコースオキシダーゼ/イソメラーゼ調製物を含む、本発明により製造されるアルコール飲料が、不活性のグルコースオキシダーゼ/イソメラーゼの痕跡を含み得るかどうかが熟慮され、それ故、従来の方法で製造された飲料と異なる。しかしながら、本発明に従って製造された低アルコール飲料は、当然、アルコール濃度及びグルコン酸の生産に直接関係のある性質を除き、従来の方法で製造された製品の、風味及び芳香を含む、全ての通常の特性を有することが発見された。
【0064】
好ましい製造パラメータ−第一の態様のステップ2
第一の態様のステップ2の実施、すなわち、処理された溶液の発酵は、本発明の方法の必須のステップである。しかしながら、従来の飲料製造慣習の実施は明確に意図され、それらの慣習は、その当業者によく知られているので、発酵のステップの詳細な検討は、本明細書で提供されることを必要としない。飲料製造プロセスの機構における変更は、本発明の好ましい実施に従って回避されることは、本明細書ですでに強調されている。
【0065】
上記で述べられたとおり、酵母発酵において、O2は、すぐに又は遅れて消失し得る。グルコースオキシダーゼは、機能するためにO2を必要とする。しかしながら、グルコースイソメラーゼは、O2の存在の有無に関わらず機能することができる。従って、グルコースイソメラーゼはまた、実際の酵母アルコール発酵の間、1:1のグルコース/フルクトース比を維持することに役立つことができる。
実際、本明細書に記述のような方法において、これは一般的に起こる。ステップ(1) において、未発酵溶液に添加されたグルコースイソメラーゼは、ステップ(2)の酵母アルコール発酵の間、通常は、まだ活性を有する。しかしながら、随意的に、ステップ(2)の酵母アルコール発酵において、さらなるグルコースイソメラーゼを添加することができる。
【0066】
従って、第一の態様の本発明の一つの実施形態では、酵母アルコール発酵ステップ(2) において、さらなるグルコースイソメラーゼが添加される。
【実施例】
【0067】
実施例1:グレープジュース中の酵素的糖減少−第一の態様のステップ(1)の実施例
【0068】
飲料における最終アルコール含量を減少させるための一つの可能な方法は、アルコール発酵前に、溶液中の糖濃度を減少させることである。それ故、このグレープジュースの場合、溶液酵素処理は、全糖の含量を減少させるために行われた。
三つの独立した実験例は、それぞれの場合において、二つの再現を用いて行われた。それぞれのサンプルにおいて、200 mlグレープジュース(Pinot Blanc 2007、Germany、滅菌済み)は、ガラスフラスコに加えられ、磁気的撹拌機で連続的に混合された。サンプルは、実験を通して通気された。
100 mgグルコースオキシダーゼ(Hyderase、Amano、>15,000 u/g、溶液1 hlにつき、150,000 uに相当する)、又は100 mgグルコースオキシダーゼ及び1 gグルコースイソメラーゼ(Sigma、G4166-50 g、>350 u/g、溶液1 hlにつき、35,000 uに相当する)の双方は、フラスコに添加された。インキュベーションは、室温で3日間、行なわれた。
サンプルは、酵素の添加の直前、及び3日後に取られた。サンプルは、Boehringer Mannheim/R-biopharm(カタログ番号 10 139 106 035)により供給されている商業的なUVに基づくアッセイを用いて、製造者により提供される手順に従って、グルコース及びフルクトースの存在について分析された。この実験の結果は、下記の表Iに要約される。
【0069】
表1:グレープジュース中の酵素的糖(グルコース及びフルクトース)の減少。GOX=グルコースオキシダーゼ。
【0070】
【表1】

【0071】
結論
この実施例1のこれらの結果は、グルコースオキシダーゼのみを用いるプロセスは、約12%の全糖の減少をもたらし、グルコースイソメラーゼのさらなる添加は、著しくそれを約19%の糖減少まで上昇させた。ジュース中の少ない糖は、最終発酵飲料製品中の少ないアルコール含量を意味する。
【0072】
実施例2:処理されたグレープジュースの酵母発酵−第一の態様のステップ(1)及びステップ(2)の双方の実施例
【0073】
ワイン製造の場合では、一般的な飲料製造プロセスの全シミュレーションは、実験室規模で行われた。この実験では、酵素処理は、アルコール発酵、又はマロラクティック発酵のような主要なワイン製造パラメータに悪影響を与えることなく、最終アルコールレベルに影響を与えたことが示された。
全ての実験は、室温約22℃で行われた。6つの実験は、発酵フラスコ中でそれぞれ4リットルのグレープジュース(Pinot Blanc 2007、Germany、滅菌済み)で行われた。グレープジュースのpHは、調整されず、この実施例に記載された酵素以外には添加されなかった。
グレープジュースは、下記に記述されるように、酵素で3日間プレインキュベートされ、その後11日間のアルコール発酵、及び10日間のマロラクティック発酵が行われた。
【0074】
酵素処理
6つのフラスコは、二つフラスコの3つの群に分けられた。
群1のグレープジュースは、0.5 g/lのグルコースオキシダーゼ(Hyderase、Amano、>15,000 u/g、溶液1 hlにつき750,000 uに相当)と共に、二番目の群のグレープジュースは、0.5 g/lのグルコースオキシダーゼ及び2 g/lのグルコースイソメラーゼ(Sigma、G4166-50 g、>350 u/g、溶液1 hlにつき70,000 uに相当)と共に3日間プレインキュベートされ、対照の群のグレープジュースは、酵素で処理されなかった。酵素添加に続いて、アルコール発酵が開始される前に、フラスコは、酵素存在下で3日間激しく通気された。通気は、酵素的変換を媒介するグルコースオキシダーゼに要求されるので、重要である。
【0075】
アルコール発酵
アルコール発酵は、凍結乾燥ワイン酵母(サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae) Merit. Ferm, Chr. Hansen, 0.1 g/l)の再水和で、9E+05 CFU/mlの最終濃度までの植菌により開始される。再水和は、室温で10分間、ペプトン水(15 g/lトリプトン、Oxoid L 42、9 g/l NaCI、1.14 g/l 2%消泡剤1510、BHD 63215)で行われた。
この時点で、通気は停止され、プロセスは、酵母代謝の結果として、その後数日間に酸素について枯渇した。アルコール発酵は、室温で11日間行われ、それは全糖のアルコールへのほぼ完全な変換をもたらした。
【0076】
マロラクティック発酵
アルコール発酵に続いて、マロラクティック発酵が開始された。プロセスのこの部分の目的は、リンゴ酸を、よりすばらしい感覚的感動(sensoric sensation)をもたらす乳酸に変換することであり、従って、高級なリンゴ酒又はワインを製造するプロセスの重要な一部である。マロラクティック発酵は、細菌オエノコッカス・オエニ(Oenococcus oeni)により、主に行われる。オエノコッカス・オエニの増殖がジュースの酵素処理により損なわれる場合、それは非常に望ましくない。
アルコール発酵の開始後11日、マロラクティック発酵は、発酵されたグレープジュースへのオエノコッカス・オエニ(Viniflora, Chr. Hansen. バッチ番号:2711097)の添加により開始された。凍結乾燥されたオエノコッカス・オエニ(8.2 E+11 CFU/gの0.7 g)は、100 mlのペプトン水(15 g/lトリプトン、Oxoid L 42、9 g/l NaCI、1.14 g/l 2% 消泡剤1510、BHD 63215)中で10分間再水和された。3 mlが、4000 mlの発酵されたグレープジュースに添加され、4.3*106 CFU/mlの最終濃度をもたらした。これは、室温でさらに10日置かれた。
【0077】
結果
アルコールレベルについての酵素処理の効果
グルコース及びフルクトースレベルは、Boehringer Mannheim/R-biopharmにより供給されている、商業的なUVに基づくアッセイ(カタログ番号10 139 106 035)を用いて、供給者により供給される手順を用いて、測定された。
【0078】
表II:アルコール発酵の開始・終了時における糖レベル
【0079】
【表2】

【0080】
アルコール発酵において、異なる日に、文献(Bestimmung des alkoholgehalts nach Dr. Rebelein. Issued by: C Schliesmann Kellerie-Chemie GmbH & Co. KG, Auwiesenstrasse 5, 74523 Schwabische Hall (2001))に記載されているとおりのDr. Rebelein滴定方法を用いて、アルコールは測定された。未処理のグレープジュースでは、発酵は、ほぼ完了し、プロセスの終了時に、12.7%の最終アルコールレベルに達した。グルコースオキシダーゼ及びグルコースイソメラーゼの双方で、ジュースが前処理された場合、糖発酵は完了し、しかしアルコールの最終レベルはなお著しく低かった(11.8%)。
【0081】
ジュースがグルコースオキシダーゼのみで前処理された場合、発見されるアルコールの低いレベルは、不完全な発酵の結果である。この実験においてグルコースオキシダーゼ処理されたジュースは、発酵の終了時点での残余の糖、特にフルクトースの高いレベルにより、通常の発酵においては使用できない(表II)。
【0082】
従って、グルコースイソメラーゼのさらなる添加は、ジュースにおけるグルコース/フルクトース比を約1:1で維持することに役立ち、それは、GOXのみを使用したときに示されたような、望ましくないアルコール発酵停止のリスクを著しく減少させる。
【0083】
さらに、イソメラーゼを伴う実験は、全ての糖を取り除いた一方で、いくつかのフルクトース糖(8 g/l)は、対照(未処理グレープジュース)中になおも存在していた。これは、イソメラーゼ自体が発酵停止を防いだことを表す。
【0084】
表III:発酵におけるアルコールレベル。11日に、マロラクティック発酵が開始された。グルコースオキシダーゼ(GOX)で前処理されたサンプル中のアルコールレベルは、これらの値が、大幅に遅延されたアルコール発酵の結果であることを、イタリック体で示した。Nd:未決定。
【0085】
【表3】

【0086】
結論
この実施例2の結果は、対照の12.7と比較して、GOX+イソメラーゼが著しくアルコール百分率を11.8%まで減少させたことを示す。
【0087】
さらに、グルコースイソメラーゼのさらなる添加は、ジュースにおけるグルコース/フルクトース比を約1:1で維持することに役立ち、それは、GOX単独を用いることと比較して、望ましくないアルコール発酵停止のリスクを著しく減少させる。
【0088】
ジュースがグルコースオキシダーゼのみで前処理されたときに発見されるアルコールの低いレベル(9.3%)は、不完全な発酵、言い換えれば、望ましくないアルコール発酵停止の結果である。この実験においてグルコースオキシダーゼ処理されたジュースは、発酵の終了時点において、残余の糖、特にフルクトースの高いレベルにより、通常の発酵において使用することができない(表II)。
【0089】
さらに、イソメラーゼを伴う実験は、全ての糖が取り除かれた一方、いくつかのフルクトース糖(8 g/l)は、対照(未処理ジュース)中にまだ存在した。これは、イソメラーゼ自体が発酵停止を防いだことを表す。
【0090】
実施例3:アルコール発酵におけるの酵母の増殖−イソメラーゼの添加はアルコール発酵停止を著しく減少させる。
【0091】
フルクトース濃度が、グルコース濃度よりも大幅に高くなるとき、発酵停止は典型的に生じることは、当業者によく知られている。アルコール発酵において、グルコース/フルクトース比は、変化して遅延した発酵をもたらす可能性がある。
この実施例3では、遅延した(停止した)発酵は、グルコースオキシダーゼ単独でのマストの処理により誘発された。
【0092】
アルコール発酵における酵母の増殖及び生存能力に対するグルコースイソメラーゼの影響を調査するために、模擬飲料製造、この場合ワインは、本明細書で実施例2に記載されたように行われた。ジュースは下記に記載するように、酵素と3日間プレインキュベートされ、その後11日間のアルコール発酵、10日間のマロラクティック発酵が行われた。
【0093】
3つの独立した実験は、それぞれの場合において、二つの再現を用いて行われた。それぞれのサンプルでは、200 mlグレープジュース(Pinot Blanc 2007、Germany、殺菌済み)は、ガラスフラスコに添加され、磁気的撹拌機で連続的に混合された。サンプルは、実験を通して通気された。100 mgグルコースオキシダーゼ(Hyderase、Amano、>15,000 u/g、溶液1 hlにつき、150,000 uに相当する)、又は100 mgグルコースオキシダーゼ及び1 gグルコースイソメラーゼ(Sigma、G4166-50 g、>350 u/g、溶液1 hlにつき、35,000 uに相当する)の双方は、フラスコに添加された。インキュベーションは、室温で3日間、行われた。この後、アルコール発酵は、再水和された凍結乾燥ワイン酵母(サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae) Merit. Ferm, Chr. Hansen, 0.1 g/l)で9E+05 CFU/mlの最終濃度までの植菌により開始された。再水和は、室温で10分間、ペプトン水(15 g/lトリプトン、Oxoid L 42、9 g/l NaCI、1.14 g/l 2% 消泡剤1510, BHD 63215)で行われた。アルコール発酵開始の11日後、マロラクティック発酵が、発酵されたグレープジュースへのオエノコッカス・オエニ(Viniflora, Chr. Hansen. Batch no. : 2711097)の添加により開始された。凍結乾燥されたオエノコッカス・オエニ(8.2 E+l l CFU/gの0.7 g)は、100 mlのペプトン水(15g/l トリプトン、Oxoid L 42、9 g/l NaCI、1.14 g/l 2% 消泡剤1510、BHD 63215)中で10分間再水和された。3 mlは、4000 mlの発酵されたジュースに添加され、4.3*106 CFU/mlの最終濃度をもたらした。これは、室温でさらに10日間置かれた。
【0094】
サッカロマイセス・セレビシエのコロニー形成単位(CFU)の数は、異なる時点で、発酵されたジュースからサンプルを取り出し、段階希釈をYGC固形培地アガープレート上にプレーティングし、続いて30℃での一晩のインキュベートにより測定された。
糖レベルは、Boehringer Mannheim/R-biopharm (カタログ番号 10 139 106 035)により供給されている商業的な、UVに基づくアッセイを用いて、供給者により提供される手順に従って、分析された。
【0095】
結果
アルコール発酵停止に関するイソメラーゼの効果
アルコール発酵において、ジュース中の糖は、酵母サッカロマイセス・セレビシエによりエタノールに変換される。
【0096】
グルコースオキシダーゼ単独での処理は、遅延したサッカロマイセス・セレビシエの増殖のために(表IVに示されるように)、遅延したアルコール発酵(発酵停止)をもたらすことが示された。グルコースオキシダーゼで前処理されたマストでは、アルコール発酵の最初の数日において、酵母の増殖は大変乏しい。CFUの数は、1日目では検出限界未満であり、アルコール発酵の2日目では、約3 log単位より低かった。これは、発酵停止の明らかな表れである。
この結果は糖分析により支持された。未処理のマストでは、糖の約60%が、酵母発酵の3日後発酵される一方で、GOX前処理されたマストでは、10%未満が発酵された。
【0097】
しかしながら、グルコースイソメラーゼが存在する場合、前処理及びアルコール発酵において、発酵プロセスは、未処理マストの発酵とほぼ同様に振舞う。残っている糖レベル及びサッカロマイセス・セレビシエCFU数(表IV)の双方は、未処理マストに匹敵した。言い換えると;グルコースイソメラーゼは、GOX処理により引き起こされた発酵停止を克服することができた。
【0098】
表IV:アルコール発酵中に生存しているサッカロマイセス・セレビシエ(S. cerevisiae) 細胞カウント。ジュースは、記述されたように3日間前処理された。酵母はt=0日に添加された。Nd=検出限界以下。
【0099】
【表4】

【0100】
結論
実施例3で示されたように、GOX単独の使用は、著しい望ましくない発酵停止を誘導し得る。
この実施例3の結果は、イソメラーゼの添加が、飲料の発酵のために一般的に用いられるサッカロマイセス・セレビシエの増殖に対するGOXの添加の悪影響を克服することに役立ち得ることを示す。
【0101】
参考文献
1. US4675191 (Novo Industri, Denmark -1987年公開)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール含量が減少したアルコール飲料を製造するための方法であって、以下のステップ:
(1):有効量の以下の二つの酵素
(a):酸素の存在下で、溶液中のグルコースの少なくとも一部をグルコン酸に変換するために十分な期間用いられるグルコースオキシダーゼ;及び
(b):溶液中でフルクトースの少なくとも一部をグルコースに変換するために十分な期間用いられるグルコースイソメラーゼ、
で未発酵の飲料出発溶液を処理すること:
(2):アルコール含量が減少したアルコール飲料を得るために、グルコース及びフルクトースの量が減少した前記の処理された溶液を発酵させること、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1のステップ(2)のアルコール含量が減少した製造された飲料が、赤/白ワイン(約12〜14%)について通常であると考えられるアルコール含量を有し、ここで前記ワインが、請求項1のステップ(1)の酵素処理なしで製造される場合、高すぎるアルコール百分率を有する(例えば、15〜17%)、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1の方法が、満足できる官能特性を有する飲料を得るために、グルコン酸の少なくとも一部を取り除く、追加のステップ(3)を含み;ここでグルコン酸が、グルコン酸の難溶性塩を形成する物質、好ましくは炭酸カルシウムの添加による中和の手法により取り除かれる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(1)において、二つのグルコースオキシダーゼ/イソメラーゼ酵素についての有効量及び期間が:
(A):ジュース中の糖含量が少なくとも5%減少する、
ようなものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ジュース中の糖含量が少なくとも17%減少する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
−期間が72時間以下であり;且つ
−二つのグルコースオキシダーゼ/イソメラーゼ酵素の有効量が以下:
(i):溶液1 hlにつき、1,000〜50,000,000国際単位のグルコースオキシダーゼ活性;及び
(ii):溶液1 hlにつき、100〜5,000,000国際単位のグルコースイソメラーゼ活性、
であり;且つ
−請求項1のステップ(1)において、温度が1〜35℃、好ましくは3〜30℃である、
請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1のステップ1において、前記溶液に酸素が連続的に供給される、好ましくは酸素が空気ポンプにより供給される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1のステップ(1)において、ジュース中のH2O2の少なくとも一部をO2 + H2Oに変換するのに十分な期間、前記溶液がまた、カタラーゼ活性を有する有効量の調合物で処理される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
さらなるグルコースイソメラーゼが、請求項1の酵母アルコール発酵ステップ(2)の前、又はその最中に添加される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記飲料が、低アルコールワイン、ノンアルコールワイン、リンゴ酒(cider)、又はビールである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記飲料が、リンゴ酒(cider)又はビールである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−532589(P2012−532589A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518957(P2012−518957)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059600
【国際公開番号】WO2011/003887
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(503260310)セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブ (23)
【Fターム(参考)】