説明

アルコール感が付与された非アルコール飲料およびその製造方法

【課題】アルコール感が付与された非アルコール飲料とその製造方法を提供する。
【解決手段】カプサイシン類と炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールとを含んでなるアルコール感が付与された非アルコール飲料であって、飲料中のカプサイシン類濃度が0.002〜0.056ppmであり、かつ、飲料中の炭素数3〜5の脂肪族1価アルコール濃度が12.5〜400ppmである飲料とその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール感が付与された非アルコール飲料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向の高まりの中でアルコール摂取量を自己管理する消費者が増加している。また、飲酒運転に対する罰則の強化など道路交通法の改正により、自動車等の運転に従事する者のアルコール摂取に対する関心が高まっている。このような中で、清涼飲料でありながらアルコール感のある飲料への需要が一段と高まっている。
【0003】
特許文献1には、辛味成分を炭酸感増感剤として使用することが記載されている。しかし、特許文献1は、辛味成分を脂肪族1価アルコールと組み合わせることにより非アルコール飲料にアルコール感を付与できることについては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−68749号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、非アルコール飲料にカプサイシンと炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールとを特定の範囲で組み合わせて添加することにより、非アルコール飲料にアルコール感を付与できることを見出した(実施例1〜2)。すなわち、非アルコール飲料にカプサイシンと炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールとを特定の範囲で組み合わせることにより、カプサイシン(辛味付与成分)による刺激や脂肪族1価アルコールの香味からは全く想定できない「アルコール感」を付与することができた。このように辛味付与成分による辛味と脂肪族1価アルコールによるえぐみ風味とのバランスにより非アルコール飲料にアルコール感を付与できたことは本発明者らにとって驚くべき知見であった。これまでに、アルコールが全く含まれていない飲料にアルコール感を付与するという課題は全く想定されていなかった。本発明は、これらの知見に基づくものである。
【0006】
本発明は、アルコール感が付与された非アルコール飲料とその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明によれば、辛味付与成分と炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールとを含んでなるアルコール感が付与された非アルコール飲料およびその製造方法が提供される。
【0008】
具体的には、以下の発明が提供される。
(1)カプサイシン類と炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールとを含んでなるアルコール感が付与された非アルコール飲料であって、飲料中のカプサイシン類濃度が0.002〜0.056ppmであり、かつ、飲料中の炭素数3〜5の脂肪族1価アルコール濃度が12.5〜400ppmである、飲料。
(2)カプサイシン類と炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールとの濃度比が、1:1700〜1:29000である、(1)に記載の飲料。
(3)カプサイシン類が、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシンおよびN−バニリル−n−ノナミドからなる群から選択される1種または2種以上の物質である、(1)に記載の飲料。
(4)炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールが、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、および2−ペンタノールからなる群から選択される1種または2種以上の物質である、(1)に記載の飲料。
(5)飲料中のカプサイシン類濃度を0.002〜0.056ppmに調整し、かつ、飲料中の炭素数3〜5の脂肪族1価アルコール濃度を12.5〜400ppmに調整することを特徴とする、アルコール感が付与された非アルコール飲料の製造方法。
(6)飲料中のカプサイシン類濃度を0.002〜0.056ppmに調整し、かつ、飲料中の炭素数3〜5の脂肪族1価アルコール濃度を12.5〜400ppmに調整することを特徴とする、非アルコール飲料にアルコール感を付与する方法。
【0009】
本発明によれば、アルコール感が付与された非アルコール飲料とその製造方法が提供される。本発明による飲料は、非アルコール飲料であるにもかかわらず、アルコール感が感じられることから、非アルコール飲料でありながらアルコール感のある飲料への需要に応えることができる点で有利である。
【発明の具体的説明】
【0010】
定義
本発明において「非アルコール飲料」とは、酒税法上アルコール飲料とみなされない、アルコール度数1度未満の飲料を意味する。「非アルコール飲料」のうち、アルコールが全く含まれない、すなわち、アルコール含量が0v/v%である飲料については特に「完全無アルコール飲料」と表現することができる。なお、ここでの「アルコール含量」はエタノールの含量を意味し、脂肪族1価アルコールは含まれない。
【0011】
本発明において「辛味」とは、唐辛子のカプサイシン等を代表とする物質によって口内で引き起こされる痛覚(刺激)をいう。
【0012】
本発明において「えぐみ風味」とは、口腔から鼻腔に抜けた部分で感じるえぐみをいう。えぐみは、苦味、渋味を中心とする刺激性のある味を意味する。
【0013】
本発明において「アルコール感」とは、アルコール飲料を飲んだ時に感じるアルコール特有の刺激感をいう。ここで「アルコール特有の刺激感」は、突き抜けるような刺激でカラッとしている感覚である辛味付与成分単独での刺激感とは異なり、低く漂うような刺激で重たい感覚をいう。
【0014】
本発明において「アルコール感が付与された飲料」とは、非アルコール飲料であっても「アルコール感」がある飲料を意味する。「アルコール感が付与された飲料」は、非アルコール飲料であるにもかかわらずアルコール飲料を飲用したような擬似的感覚(アルコール特有の刺激感)を飲用者に与えることができる。「アルコール感が付与された飲料」は、例えば、チューハイ様飲料、カクテル様飲料、ワイン風飲料や、その他アルコール飲料との代替性がある飲料をいう。
【0015】
本願明細書において「1ppm」は、0.0001重量/容量(weight/volume)%に相当する。
【0016】
本発明による飲料
本発明による飲料は、典型的には、原飲料に、辛味付与成分と、炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールとを添加することにより製造することができる。本発明による飲料によれば、アルコールを含まない原飲料を使用することにより、アルコール成分を含まないが、アルコール感が付与された飲料を提供することができる。以下、原飲料、辛味付与成分、炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールについて説明する。
【0017】
[原飲料]
本発明による飲料を構成する原飲料は、非アルコール飲料でありながらアルコール感が付与された飲料を提供するという観点から、非アルコール飲料である。原飲料は、辛味付与成分濃度と炭素数3〜5の脂肪族1価アルコール濃度を調整することによりアルコール感が付与されるような飲料であればよく、例えば、炭酸飲料、果汁入り飲料、野菜汁入り飲料、果汁および野菜汁入り飲料、果汁含有飲料、茶飲料、牛乳、豆乳、乳飲料、ドリンクタイプのヨーグルト、コーヒー、ココア、栄養ドリンク、スポーツ飲料、飲用水(ミネラルウォーター等)等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。原飲料は、麦芽を使用しない非麦芽飲料であってもよい。麦芽とホップを使用しない非ビール様飲料であってもよい。
【0018】
本発明において使用される原飲料は、好ましくは、果汁含有飲料、炭酸飲料である。
【0019】
炭酸飲料とは、飲用に適した水に二酸化炭素を圧入したもの、すなわち、炭酸ガスを含む飲料を意味する。炭酸飲料には、甘味料(例えば、砂糖、ブドウ糖、果糖、オリゴ糖、異性化液糖、糖アルコール、高甘味度甘味料等)、酸味料(例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、リン酸、フィチン酸、イタコン酸、フマル酸、グルコン酸、アジピン酸、酢酸、これらの塩類等)、フレーバリング(例えば、香料(例えば、シトラス類(例えば、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ、マンダリン、ユズ等)の香料、その他のフルーツ(例えば、アップル、ブドウ、モモ、バナナ、パイナップル、ストロベリー、メロン、ウメ、ライチ、マンゴ、パッションフルーツ、ナシ等)の香料))、果汁(例えば、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ、マンダリン、ユズ、アップル、ブドウ、モモ、バナナ、パイナップル、ストロベリー、メロン、ウメ、ライチ、マンゴ、パッションフルーツ、ナシ等の果汁))等を加えることもできる。
【0020】
炭酸飲料における炭酸ガス圧は、20℃において測定した場合、例えば、0.1〜0.4MPa、好ましくは、0.13〜0.35MPaとすることができる。炭酸ガス圧は、例えば、国税庁所定の分析法に基づく、ビールのガス圧分析法によって測定できる(例えば、国税庁webページ: http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/sonota/070622/01.htm を参照)。具体的には、穿孔圧力計が使用できる容器に入った検体について、検体を時々振りながら20℃の水槽に30分間保った後、穿孔圧力計を取り付け、針を突き刺し軽く振って圧力を読むことにより測定することができる。また、市販の機械式炭酸ガス圧測定器を用いて測定することもできる。例えば、ガスボリューム測定装置(GVA-500、京都電子工業株式会社製)を用いてもよい。
【0021】
果汁入り飲料や果汁および野菜汁入り飲料に用いられる果物としては、例えば、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ、マンダリン、ユズ、アップル、ブドウ、モモ、バナナ、パイナップル、ストロベリー、メロン、ウメ、ライチ、マンゴ、パッションフルーツ、ナシ等が挙げられる。また、野菜汁入り飲料や果汁および野菜汁入り飲料に用いられる野菜としては、例えば、トマト、ニンジン、セロリ、キュウリ、スイカ、ピーマン、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、クレソン、ケール、ほうれん草、大根、かぼちゃ、白菜、レタス等が挙げられる。
【0022】
茶飲料とは、ツバキ科の常緑樹である茶樹の葉(茶葉)、または茶樹以外の植物の葉もしくは穀類等を煎じて飲むための飲料をいい、発酵茶、半発酵茶および不発酵茶のいずれも包含される。茶飲料の具体例としては、日本茶(例えば、緑茶、麦茶)、紅茶、ハーブ茶(例えば、ジャスミン茶)、中国茶(例えば、中国緑茶、烏龍茶)、ほうじ茶等が挙げられる。
【0023】
乳飲料とは、生乳、牛乳等またはこれらを原料として製造した食品を主原料とした飲料をいい、牛乳等そのもの材料とするものの他に、例えば、栄養素強化乳、フレーバー添加乳、加糖分解乳等の加工乳を原料とするものも包含される。
【0024】
本発明において使用される原飲料の製造に当たっては、後述の辛味付与成分、炭素数3〜5の脂肪族1価アルコール以外に、通常の飲料の処方設計に用いられている糖類、香料、果汁、食品添加剤などを適宜添加することができる。本発明において使用される原飲料は、当業界に公知の製造技術を用いて製造することができ、例えば、「改訂新版ソフトドリンクス」(株式会社光琳)を参考とすることができる。
【0025】
[辛味付与成分]
本発明による飲料を構成する辛味付与成分は、対象の原飲料に辛味を付与することができる物質を意味する。
【0026】
本発明において使用される辛味付与成分は、炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールと組み合わせて、非アルコール飲料にアルコール感を付与することができ、また、本発明による飲料に、後述するような所定の辛味付与成分濃度を与えることができる。
【0027】
辛味付与成分としては、例えば、トウガラシの辛味成分、コショウの辛味成分、サンショウの辛味成分、ワサビの辛味成分、ショウガの辛味成分、カラシの辛味成分、ニンニクの辛味成分、タマネギの辛味成分、ダイコンの辛味成分等が挙げられる。
【0028】
トウガラシの辛味成分としては、カプサイシン類が挙げられる。カプサイシン類は、バニリルアミンに有機酸がアミド結合している構造を有し、例えば、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、N−バニリル−n−ノナミド等が挙げられる。
【0029】
コショウの辛味成分としては、例えば、ピペリン等が挙げられる。
【0030】
サンショウの辛味成分としては、例えば、サンショオール、サンショアミド等が挙げられる。
【0031】
ワサビの辛味成分としては、例えば、アリルイソチオシアネート等が挙げられる。
【0032】
ショウガの辛味成分としては、例えば、ジンゲロール類縁物質(例えば、6−ジンゲロール、ショウガオール等)等が挙げられる。
【0033】
カラシの辛味成分としては、例えば、アリルイソチオシアネート等が挙げられる。
【0034】
ニンニクの辛味成分としては、例えば、アリイン、アリシン等が挙げられる。
【0035】
タマネギの辛味成分としては、例えば、アリルイソチオシアネート等が挙げられる。
【0036】
ダイコンの辛味成分としては、例えば、4−メチルチオ−3−ブテニルイソチオシアネート等が挙げられる。
【0037】
辛味付与成分は、好ましくは、トウガラシの辛味成分であり、より好ましくは、カプサイシン類である。
【0038】
カプサイシン類としては、例えば、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、N−バニリル−n−ノナミドが挙げられるが、好ましくは、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシンまたはこれらの2種以上の組み合わせであり、より好ましくは、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシンまたはこれらの2種以上の組み合わせであり、さらにより好ましくは、カプサイシン、ジヒドロカプサイシンまたはこれらの組み合わせである。
【0039】
辛味付与成分は、単一成分として使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。辛味付与成分を2種以上組み合わせて使用する場合の辛味付与成分の量は、2種以上の各辛味付与成分の量を合計した量で表すことができる。
【0040】
本発明において使用される辛味付与成分は、市販されているものを入手することができる。
【0041】
本発明において使用される辛味付与成分は、公知の方法に従って製造(合成)することもできる。
【0042】
本発明において使用される辛味付与成分は、目的の辛味付与成分を含む植物等の抽出物(例えば、カプサイシン類であればトウガラシの水またはエタノール抽出物)を使用することもできるし、目的の辛味付与成分を含む植物等から精製することもできる。
【0043】
飲料中のカプサイシン類濃度は、アルコール感を付与する観点から、0.002〜0.056ppm、好ましくは、0.003〜0.042ppm、より好ましくは、0.004〜0.028ppm、さらに好ましくは、0.004〜0.014ppmとなるように調整することができる。
【0044】
カプサイシン類以外の辛味付与成分の濃度は、カプサイシン類を上記濃度で調整した飲料の辛味程度と同等の辛味程度となるように調整することができる。辛味付与成分の辛味程度は当業者によく知られており、当業者であれば、使用する辛味付与成分の辛味程度に基づいて、濃度を適宜調整することができる。辛味の程度の指標として、例えば、スコヴィル値を使用することができる。スコヴィル値は、被験者による官能試験で求めることができ、一般的には、辛味付与成分を含む溶液を、砂糖水溶液で希釈していき、被験者が辛味を感じなくなった時点の希釈倍率をスコヴィル値とすることができる。
【0045】
飲料中のカプサイシン類濃度は、アルコール感を付与する観点から、カプサイシン類と炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールとの濃度比が、1:1700〜1:29000、好ましくは、1:3000〜1:25000、より好ましくは、1:3000〜1:20000、さらにより好ましくは、1:3500〜1:15000、特に好ましくは、1:5000〜1:10000となるように調整することができる。
【0046】
[炭素数3〜5の脂肪族1価アルコール]
本発明による飲料を構成する炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールは、対象の原飲料にえぐみ風味を付与することができる物質を意味する。
【0047】
本発明において使用される炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールは、辛味付与成分(好ましくは、カプサイシン類)と組み合わせて、非アルコール飲料にアルコール感を付与することができ、また、本発明による飲料に、後述するような所定の炭素数3〜5の脂肪族1価アルコール濃度を与えることができる。
【0048】
本発明において使用される「炭素数3〜5の脂肪族1価アルコール」は、炭素数が3〜5の直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素の水素原子が1個の水酸基で置換された化合物を意味する。脂肪族1価アルコールは、えぐみ風味を付与できる限り、チオール等で置換されてもよいが、好ましくは、非置換の脂肪族1価アルコールである。
【0049】
炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールとしては、例えば、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール等が挙げられるが、好ましくは、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、またはこれらの2種以上の組み合わせである。
【0050】
炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールは、単一成分として使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールを2種以上組み合わせて使用する場合の炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールの量は、2種以上の各脂肪族1価アルコールの量を合計した量で表すことができる。
【0051】
本発明において使用される炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールは、市販されているものを入手することができる。
【0052】
本発明において使用される炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールは、公知の方法に従って製造することもできる。
【0053】
飲料中の炭素数3〜5の脂肪族1価アルコール濃度は、アルコール感を付与する観点から、12.5〜400ppm、好ましくは、20〜300ppm、より好ましくは、25〜200ppm、さらに好ましくは、25〜100ppmとなるように調整することができる。
【0054】
飲料中の炭素数3〜5の脂肪族1価アルコール濃度は、アルコール感を付与する観点から、カプサイシン類と炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールとの濃度比が、1:1700〜1:29000、好ましくは、1:3000〜1:25000、より好ましくは、1:3000〜1:20000、さらにより好ましくは、1:3500〜1:15000、特に好ましくは、1:5000〜1:10000となるように調整することができる。
【0055】
本発明による飲料の製造方法
本発明によれば、飲料中の辛味付与成分濃度を調整し、かつ、飲料中の炭素数3〜5の脂肪族1価アルコール濃度を調整することを特徴とする、アルコール感が付与された非アルコール飲料の製造方法が提供される。具体的には、飲料中のカプサイシン類濃度を0.002〜0.056pppmに調整し、かつ、飲料中の炭素数3〜5の脂肪族1価アルコール濃度が12.5〜400ppmに調整することを特徴とする、アルコール感が付与された非アルコール飲料の製造方法が提供される。
【0056】
飲料中の辛味付与成分濃度または炭素数3〜5の脂肪族1価アルコール濃度の「調整」については、原飲料に元々含まれる辛味付与成分および炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールの濃度を考慮して、原飲料に、辛味付与成分および炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールを添加して調整することもできるし、辛味付与成分または炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールのいずれか一方を添加して調整することもできるし、辛味付与成分、炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールのいずれの物質も添加せずに調整することもできる。また、原飲料から辛味付与成分および/または炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールを除去して調整することもできる。典型的には、原飲料に、辛味付与成分および炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールを添加して調整することができる。
【0057】
本発明において提供される飲料の製造に当たっては、当業界に公知の製造技術を用いて製造することができ、例えば、「改訂新版ソフトドリンクス」(株式会社光琳)を参考とすることができる。
【0058】
辛味付与成分および/または炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールの添加について、辛味付与成分および/または炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールは、原飲料の製造中、または原飲料の製造後に添加してもよい。辛味付与成分と、炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールとは、一緒に添加しても、別々に添加してもよく、別々に添加される場合にはいずれを先に添加してもよい。複数の辛味付与成分を添加する場合や、複数の炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールを添加する場合も、各成分を一緒に添加しても、別々に添加してもよく、別々に添加される場合にはいずれを先に添加してもよい。なお、辛味付与成分および炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールの添加に当たっては原飲料に元々含まれる辛味付与成分および炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールの濃度を考慮して添加の要否や添加量を決定できることはいうまでもない。
【0059】
また、辛味付与成分、炭素数3〜5の脂肪族1価アルコール以外に、通常の飲料の処方設計に用いられている甘味料、酸味料、香料、色素、果汁、食品添加剤(例えば、起泡・泡持ち向上剤、苦味料、保存料、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤等)等の添加剤を添加してもよい。これらの添加剤は、原飲料の製造中、または原飲料の製造後に添加してもよい。複数の添加剤を添加する場合も、各成分を一緒に添加しても、別々に添加してもよく、別々に添加される場合にはいずれを先に添加してもよい。
【0060】
カプサイシン類は、炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールと組み合わせて、アルコール感を付与する観点から、原飲料に、例えば、飲料中の辛味付与成分が0.002〜0.056ppm、好ましくは、0.003〜0.042ppm、より好ましくは、0.004〜0.028ppm、さらに好ましくは、0.004〜0.014ppmとなるように添加することができる。
【0061】
カプサイシン類以外の辛味付与成分の濃度は、カプサイシン類を上記濃度で調整した飲料の辛味程度と同等の辛味程度となるように調整することができる。
【0062】
炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールは、辛味付与成分と組み合わせて、アルコール感を付与する観点から、原飲料に、例えば、飲料中の辛味付与成分が12.5〜400ppm、好ましくは、20〜300ppm、より好ましくは、25〜200ppm、さらに好ましくは、25〜100ppmとなるように添加することができる。
【0063】
カプサイシン類と炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールとは、アルコール感を付与する観点から、辛味付与成分と炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールとの濃度比が、1:1700〜1:29000、好ましくは、1:3000〜1:25000、より好ましくは、1:3000〜1:20000、さらにより好ましくは、1:3500〜1:15000、特に好ましくは、1:5000〜1:10000となるように添加することができる。
【0064】
本発明による飲料は、pHを、例えば、2.0〜4.0、好ましくは、2.5〜3.9に調整することができる。本発明による飲料に、果実やその由来成分、果汁などを使用する場合には、それらも利用してpHを調整することができる。なお飲料のpHは市販のpHメーター(例えば、東亜電波工業株式会社製pHメーター)を使用して容易に測定することができる。
【0065】
本発明による飲料は、好ましくは、果汁または果汁フレーバー含有非アルコール飲料として提供される。
【0066】
果汁または果汁フレーバー含有非アルコール飲料は、例えば、チューハイ様飲料として提供される。「チューハイ様飲料」とは、チューハイ飲料を飲用したような感覚を飲用者に与える飲料である。「チューハイ飲料」は、一般的には、果汁または果汁フレーバーを含んでなる炭酸ガス含有アルコール飲料をいう。本発明による飲料は、チューハイ様飲料として、例えば、辛味付与成分と、炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールと、果汁または果汁フレーバーと、必要に応じて、甘味料、酸味料等とを含んでなる炭酸飲料とすることができる。
【0067】
果汁または果汁フレーバー含有非アルコール飲料は、また、例えば、カクテル様飲料として提供される。「カクテル様飲料」とは、カクテル飲料を飲用したような感覚を飲用者に与える飲料である。「カクテル飲料」は、一般的には、アルコール飲料に、果汁または果汁フレーバー、果実、香辛料、甘味料(シロップ)、炭酸水等を混ぜ合わせてつくる飲料をいう。本発明による飲料は、カクテル様飲料として、例えば、辛味付与成分と、炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールと、果汁または果汁フレーバーと、必要に応じて、甘味料(シロップ)、果実、香辛料、炭酸水等とを含んでなる飲料とすることができる。
【0068】
なお、本発明によって製造された非アルコール飲料に適宜アルコール類を添加して酒税法上のアルコール類として提供するような態様とすることも可能である。
【0069】
本発明による飲料は、好ましくは、容器詰飲料として提供される。本発明による飲料に使用される容器は、飲料の充填に通常使用される容器であればよく、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器等が挙げられるが、好ましくは、金属缶・樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル)、瓶である。
【0070】
本発明の好ましい態様によれば、カプサイシン類と炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールとを含んでなるアルコール感が付与された飲料であって、飲料中のカプサイシン類濃度が0.002〜0.056ppmであり、飲料中の炭素数3〜5の脂肪族1価アルコール濃度が12.5〜400ppmであり、カプサイシン類と炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールとの濃度比が、1:1700〜1:29000である、非アルコール飲料およびその製造方法が提供され、より好ましくは、カプサイシン類がカプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシンまたはこれらの2種以上の組み合わせである非アルコール飲料およびその製造方法が提供される。
【0071】
本発明の好ましい態様によれば、また、カプサイシン類と炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールとを含んでなるアルコール感が付与された飲料であって、飲料中のカプサイシン類濃度が0.004〜0.028ppmであり、飲料中の炭素数3〜5の脂肪族1価アルコール濃度が25〜200ppmであり、カプサイシン類と炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールとの濃度比が、1:3500〜1:15000である、非アルコール飲料およびその製造方法が提供され、より好ましくは、カプサイシン類がカプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシンまたはこれらの2種以上の組み合わせである非アルコール飲料およびその製造方法が提供される。
【0072】
本発明によれば、飲料中のカプサイシン類濃度を0.002〜0.056ppmに調整し、かつ、飲料中の炭素数3〜5の脂肪族1価アルコール濃度を12.5〜400ppmに調整することを特徴とする、非アルコール飲料にアルコール感を付与する方法が提供される。
【0073】
飲料中のカプサイシン類濃度は、アルコール感を付与する観点から、0.002〜0.056ppm、好ましくは、0.003〜0.042ppm、より好ましくは、0.004〜0.028ppm、さらに好ましくは、0.004〜0.014ppmとなるように調整することができる。
【0074】
飲料中の炭素数3〜5の脂肪族1価アルコール濃度は、アルコール感を付与する観点から、12.5〜400ppm、好ましくは、20〜300ppm、より好ましくは、25〜200ppm、さらに好ましくは、25〜100ppmとなるように調整することができる。
【0075】
飲料中のカプサイシン類と炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールとの濃度比は、アルコール感を付与する観点から、1:1700〜1:29000、好ましくは、1:3000〜1:25000、より好ましくは、1:3000〜1:20000、さらにより好ましくは、1:3500〜1:15000、特に好ましくは、1:5000〜1:10000となるように調整することができる。
【0076】
本発明によれば、カプサイシン類と炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールとを含んでなる、非アルコール飲料に対するアルコール感付与剤が提供される。
【実施例】
【0077】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0078】
実施例1:アルコール感が付与された飲料の製造およびその評価
(1)飲料の調製
飲料には炭酸飲料を使用した。炭酸飲料として、pH3.0、Brix6°、炭酸ガス圧0.15MPa(測定温度20℃)で、アルコールを含まないように(0.00v/v%)調製し、レモン果汁(3v/v%)を添加した飲料(レモンフレーバー使用)を使用した。
【0079】
炭酸飲料に、カプサイシンと2−プロパノールとを、表1または表2で示すような濃度で存在するように添加し、各サンプル飲料を調整した。
【0080】
(2)飲料の評価
(1)で調製された各サンプル飲料を、官能評価試験に供した。具体的には、良く訓練され、チューハイおよびカクテル系飲料の評価に熟練したパネル5名により、以下の基準で辛味、えぐみ風味およびアルコール感について官能評価を行った。
[辛味の評価]
○:辛味が適度にあり、甘み、苦味等の他の香味も十分に感じられる。
△:辛味がやや強く、甘み、苦味等の他の香味はやや阻害されているが許容範囲である。
×:辛味が非常に強く、甘み、苦味等の他の香味は阻害され、感じにくい。
(各パネルがディスカッションを行いながら決定した。)
[えぐみ風味の評価]
○:えぐみ風味が適度にあり、甘み、苦味等の他の香味も十分に感じられる。
△:えぐみ風味がやや強く、甘み、苦味等の他の香味はやや阻害されているが許容範囲である。
×:えぐみ風味が非常に強く、甘み、苦味等の他の香味は阻害され、感じにくい。
(各パネルがディスカッションを行いながら決定した。)
[アルコール感の評価]
○:辛味とえぐみ風味とが調和しており、アルコール感がある。甘み、苦味等の他の香味を十分に感じられる。
△:辛味とえぐみ風味とがマッチするが、違和感がある。甘み、苦味等の他の香味がやや阻害されているが許容範囲である。
×:辛味とえぐみ風味とが調和せず、香味がバラバラである。甘み、苦味等の他の香味は阻害され、感じにくい。
(各パネルがディスカッションを行いながら決定した。)
【0081】
官能評価試験の結果は以下の通りであった。
辛味とえぐみ風味のバランスの評価
【表1】

辛味とえぐみ風味の濃度の評価
【表2】

【0082】
非アルコール飲料である炭酸飲料に、カプサイシンと2−プロパノールとを、濃度比が1:1700〜1:29000となるように添加することにより、飲料としての味の調和感を崩すことなく非アルコール飲料にアルコール感を付与できることが認められた(表1)。また、非アルコール飲料である炭酸飲料に、カプサイシンを0.002〜0.056ppmで、2−プロパノールを12.5〜400ppmで、それぞれ添加することにより、飲料としての味の調和感を崩すことなく非アルコール飲料にアルコール感を付与できることが認められた(表2)。
【0083】
以上のことから、非アルコール飲料に特定の範囲で辛味付与成分と脂肪族アルコールとを添加することにより、飲料としての味の調和感を崩すことなくアルコール感を付与することができることが示された。
【0084】
実施例2:各種脂肪族アルコールについての評価
本願発明に使用することができる辛味付与成分を検討するために、実施例1で使用した炭酸飲料に、カプサイシン(0.007ppm)と各種脂肪族アルコール(50ppm)とをそれぞれ組み合わせて添加しサンプル飲料を調整した。
【0085】
各サンプル飲料は、官能評価試験に供した。具体的には、良く訓練され、チューハイおよびカクテル系飲料の評価に熟練したパネル5名により、以下の基準で官能評価を行った。
[香味の評価]
○:辛味とえぐみ風味とが調和している。
△:辛味とえぐみ風味とがほどよく調和している。
×:辛味とえぐみ風味とが調和せず、香味がバラバラである。
(各パネルがディスカッションを行いながら決定した。)
[アルコール感の評価]
○:アルコール様の香味を感じる。
△:アルコール様の香味をわずかに感じる。
×:アルコール様の香味ではない。
(各パネルがディスカッションを行いながら決定した。)
[総合評価]
○:辛味とえぐみ風味とが調和しており、アルコール感がある。
△:辛味とえぐみ風味とが許容できる範囲で調和している、またはアルコール感がある。
×:辛味とえぐみ風味とが調和しない、または香味がバラバラでアルコール感がない。
(各パネルがディスカッションを行いながら決定した。)
【0086】
官能評価試験の結果は以下の通りであった。
【表3】

【0087】
脂肪族アルコールのうち、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノールは、カプサイシンと組み合わせて、飲料としての味の調和感を崩すことなく非アルコール飲料にアルコール感を付与できることが確認された(表3)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプサイシン類と炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールとを含んでなるアルコール感が付与された非アルコール飲料であって、飲料中のカプサイシン類濃度が0.002〜0.056ppmであり、かつ、飲料中の炭素数3〜5の脂肪族1価アルコール濃度が12.5〜400ppmである、飲料。
【請求項2】
カプサイシン類と炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールとの濃度比が、1:1700〜1:29000である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
カプサイシン類が、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシンおよびN−バニリル−n−ノナミドからなる群から選択される1種または2種以上の物質である、請求項1に記載の飲料。
【請求項4】
炭素数3〜5の脂肪族1価アルコールが、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、および2−ペンタノールからなる群から選択される1種または2種以上の物質である、請求項1に記載の飲料。
【請求項5】
飲料中のカプサイシン類濃度を0.002〜0.056ppmに調整し、かつ、飲料中の炭素数3〜5の脂肪族1価アルコール濃度を12.5〜400ppmに調整することを特徴とする、アルコール感が付与された非アルコール飲料の製造方法。
【請求項6】
飲料中のカプサイシン類濃度を0.002〜0.056ppmに調整し、かつ、飲料中の炭素数3〜5の脂肪族1価アルコール濃度を12.5〜400ppmに調整することを特徴とする、非アルコール飲料にアルコール感を付与する方法。

【公開番号】特開2012−16308(P2012−16308A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155270(P2010−155270)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】