説明

アルコール測定器

【課題】 呼気を吹き込んでいる最中の測定者に呼気の強さを認識させることができるアルコール測定器を提供する。
【解決手段】 アルコール測定器10のCPUは、有効範囲内に呼気の圧力が維持されているとき、マウスピース22に吹き込まれた呼気量の累計値である呼気量累計値を更新し、呼気の圧力が有効範囲外になったとき、呼気量累計値をリセットし、呼気量累計値が、有効呼気量に達したとき、アルコールセンサによってアルコール濃度を測定し、呼気圧表示部25は、マウスピース22に呼気を吹き込んでいる最中の測定者90から視認可能な位置に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定者の呼気中のアルコール濃度を測定することができるアルコール測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアルコール測定器としては、測定時に測定者によって手で持たれる筐体と、筐体に設けられて測定者の呼気が吹き込まれるマウスピースと、マウスピースに吹き込まれた呼気中のアルコール濃度を測定するアルコールセンサと、マウスピースに吹き込まれた呼気の強さである風力を測定する風力センサと、筐体に設けられて測定者の呼気中のアルコール濃度の測定が正常に完了したことを示すOKランプとを備えており、風力センサによって測定された風力の有意な上昇が認められた場合に、風力センサによって測定された風力の有意な上昇が認められたタイミングでアルコールセンサによってアルコール濃度を測定してOKランプを点灯させ、風力センサによって測定された風力の有意な上昇が認められないなどの異常事態を検出した場合に、OKランプを点滅させることによって測定者に対して再測定を指示するアルコール検査器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−232710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているアルコール検査器は、マウスピースに呼気を吹き込んでいる最中の測定者から視認することができない位置にOKランプが配置されているので、アルコールセンサによるアルコール濃度の測定を有効にする呼気の強さの範囲内であるか否かを、マウスピースに呼気を吹き込んでいる最中の測定者に認識させることができない。
【0005】
そのため、測定者は、アルコールセンサによるアルコール濃度の測定を有効にする範囲内に呼気の強さを維持することが困難である。その結果、測定者は、測定を一度で成功することができずに何度もやり直さなければならないこともある。例えば、警察の飲酒運転取り締まり用のアルコール測定器のように測定者が使い慣れていないアルコール測定器の場合には、測定者は、アルコールセンサによるアルコール濃度の測定を有効にする範囲内に呼気の強さを維持することがなおさら困難である。
【0006】
そこで、本発明は、呼気を吹き込んでいる最中の測定者に呼気の強さを認識させることができるアルコール測定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアルコール測定器は、測定時に測定者によって手で持たれる筐体と、前記筐体に設けられて前記測定者の呼気が吹き込まれる呼気吹込部と、前記呼気吹込部に吹き込まれた前記呼気中のアルコール濃度を測定するアルコールセンサと、前記呼気吹込部に吹き込まれた前記呼気の強さを測定する呼気強さセンサと、前記筐体に設けられて前記呼気強さセンサによって測定された前記強さを表示する呼気強さ表示部とを備えており、前記呼気強さ表示部は、前記呼気吹込部に前記呼気を吹き込んでいる最中の前記測定者から視認可能な位置に配置されていることを特徴とする。
【0008】
この構成により、本発明のアルコール測定器は、呼気吹込部に呼気を吹き込んでいる最中の測定者から視認可能な位置に呼気強さ表示部が配置されているので、呼気を吹き込んでいる最中の測定者に呼気の強さを認識させることができる。
【0009】
また、本発明のアルコール測定器の前記呼気強さ表示部は、前記アルコールセンサによる前記アルコール濃度の測定を有効にする前記強さの範囲である有効範囲内を複数の段階で表示しても良い。
【0010】
この構成により、本発明のアルコール測定器は、有効範囲内の何れの段階に現在の呼気の強さが位置しているかを測定者に認識させることができるので、呼気の強さが有効範囲内であるか否かのみを表示する構成、すなわち、有効範囲内を1段階のみで表示する構成と比較して、測定者に呼気の強さを有効範囲内に容易に維持させることができる。
【0011】
また、本発明のアルコール測定器の前記呼気強さ表示部は、前記強さを複数の段階で表示する複数個の発光体を備えていても良い。
【0012】
この構成により、本発明のアルコール測定器は、呼気強さ表示部が呼気の強さを数値で表示する構成と比較して、呼気の強さが適正であるかを測定者に容易に認識させることができる。
【0013】
また、本発明のアルコール測定器の前記複数個の発光体は、対応する前記強さの段階の順番に並べて配列されていても良い。
【0014】
この構成により、本発明のアルコール測定器は、複数個の発光体が呼気の強さの段階の順番と関係なく配置されている構成と比較して、呼気の強さが適正であるかを測定者に容易に認識させることができる。
【0015】
また、本発明のアルコール測定器の前記有効範囲内の中央の段階に対応する前記発光体は、他の前記発光体と異なる発光を行っても良い。
【0016】
この構成により、本発明のアルコール測定器は、有効範囲内の中央の段階を測定者に容易に認識させることができるので、有効範囲内の中央の段階の表示になるように測定者に呼気の強さを調整させることによって、測定者に呼気の強さを有効範囲内に容易に維持させることができる。
【0017】
また、本発明のアルコール測定器の前記呼気強さ表示部は、前記有効範囲内の複数の段階のうち前記有効範囲外に隣接する少なくとも1つの段階と、この段階に隣接する前記有効範囲外とを同一の表示にしても良い。
【0018】
この構成により、本発明のアルコール測定器は、呼気の強さが有効範囲内であるときに呼気の強さが変化して有効範囲外と同一の表示になっても、この表示になった直後は呼気の強さが未だ有効範囲内であるので、この表示にならないように測定者に呼気の強さを調整させることによって、測定者に呼気の強さを有効範囲内に容易に維持させることができる。また、本発明のアルコール測定器は、有効範囲内の少なくとも1つの段階を、有効範囲外と同一の表示にするので、この段階を、有効範囲外と別の表示にする構成と比較して、発光体の個数を少なくすることができる。
【0019】
また、本発明のアルコール測定器の前記呼気強さ表示部は、発光方法を変えることによって前記強さを複数の段階で表示する1個の発光体を備えていても良い。
【0020】
この構成により、本発明のアルコール測定器は、複数個の発光体で呼気の強さを表示する構成と比較して、発光体の設置空間を小さくすることができる。
【0021】
また、本発明のアルコール測定器の前記呼気強さ表示部は、前記筐体のうち突出している部分上の位置であって、前記呼気吹込部に前記呼気を吹き込んでいる最中の前記測定者の目と対向する位置に配置されていても良い。
【0022】
この構成により、本発明のアルコール測定器は、呼気を吹き込んでいる最中の測定者に呼気強さ表示部を容易に視認させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のアルコール測定器は、呼気を吹き込んでいる最中の測定者に呼気の強さを認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るアルコール測定器の外観斜視図である。
【図2】図1に示すアルコール測定器のブロック図である。
【図3】図1に示すアルコール測定器の動作のフローチャートである。
【図4】図1に示すアルコール測定器の呼気圧表示部の表示例を示す図である。
【図5】測定者によって図1に示すマウスピースに吹き込まれた呼気の圧力の例を示す図である。
【図6】図1に示すアルコール測定器の呼気圧表示部の図4に示す表示例とは異なる表示例を示す図である。
【図7】(a)図1に示すアルコール測定器の図1に示す例とは異なる例を示す図である。(b)図1に示すアルコール測定器の図1および図7(a)に示す例とは異なる例を示す図である。
【図8】(a)図1に示すアルコール測定器の図1および図7に示す例とは異なる例を示す図である。(b)図1に示すアルコール測定器の図1、図7および図8(a)に示す例とは異なる例を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係るアルコール測定器の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0026】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態に係るアルコール測定器の構成について説明する。
【0027】
図1は、本実施の形態に係るアルコール測定器10の外観斜視図である。
【0028】
図1に示すように、アルコール測定器10は、測定時に測定者90によって手91で持たれる筐体21と、筐体21に設けられて測定者90に咥えられて呼気が吹き込まれる本発明の呼気吹込部としてのマウスピース22と、マウスピース22に吹き込まれた呼気中のアルコール濃度の測定を開始するためのスイッチ23と、マウスピース22に吹き込まれた呼気中のアルコール濃度を表示するアルコール濃度表示部24と、マウスピース22に吹き込まれた呼気の強さとして呼気の圧力である呼気圧を表示する本発明の呼気強さ表示部としての呼気圧表示部25とを備えている。
【0029】
筐体21は、マウスピース22が差し込まれる図示していない呼気注入口が形成されている面21aと、面21aに隣接してスイッチ23、アルコール濃度表示部24および呼気圧表示部25が設けられる面21bとを備えている略直方体である。
【0030】
マウスピース22は、筐体21の呼気注入口に対して抜き差し可能に設けられており、測定者90毎に交換されることができるようになっている。
【0031】
スイッチ23は、筐体21の面21bにおいて略中央に設けられている。
【0032】
アルコール濃度表示部24は、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスである。アルコール濃度表示部24は、筐体21の面21bにおいてスイッチ23に対してマウスピース22側に設けられている。
【0033】
呼気圧表示部25は、5個の発光体25a〜25eで構成されている。発光体25a〜25eは、LED(Light Emitting Diode)などの発光デバイスである。呼気圧表示部25は、筐体21の面21bにおいてスイッチ23に対してマウスピース22側とは反対側であって、マウスピース22に呼気を吹き込んでいる最中の測定者90から視認可能な位置に設けられている。発光体25a〜25eは、マウスピース22に呼気を吹き込んでいる最中の測定者90から見て横方向に左から右の順番に並んでいる。発光体25aおよび発光体25eは、同一の色で発光するようになっている。発光体25bおよび発光体25dは、発光体25aおよび発光体25eの発光色とは異なる同一の色で発光するようになっている。発光体25cは、発光体25a、発光体25b、発光体25dおよび発光体25eの発光色とは異なる色で発光するようになっている。
【0034】
図2は、アルコール測定器10のブロック図である。
【0035】
図2に示すように、アルコール測定器10は、アルコール測定器10全体を制御するためのCPU(Central Processing Unit)31と、CPU31を動作させるためのプログラムや各種のデータを予め記憶しているROM(Read Only Memory)32と、CPU31の作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)33と、測定結果を記憶するための例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの不揮発メモリ34と、マウスピース22に吹き込まれた呼気中のアルコール濃度を測定するアルコールセンサ35と、アルコールセンサ35から出力された信号を増幅するアンプ36と、アルコールセンサ35にアルコール濃度を測定させるためにマウスピース22に吹き込まれた呼気を吸引する吸引ポンプ37と、マウスピース22に吹き込まれた呼気の強さとして呼気圧を測定する本発明の呼気強さセンサとしての呼気圧センサ38と、時間を計測する時計39と、上述したスイッチ23、アルコール濃度表示部24および呼気圧表示部25とを備えている。
【0036】
CPU31、ROM32、RAM33、不揮発メモリ34、アルコールセンサ35、アンプ36、吸引ポンプ37、呼気圧センサ38および時計39は、筐体21の内部に設けられている。
【0037】
図3は、アルコール測定器10の動作のフローチャートである。
【0038】
測定者90は、呼気中のアルコール濃度の測定を行うことを希望するとき、アルコール測定器10のスイッチ23を押して、マウスピース22に呼気を吹き込む。アルコール測定器10のCPU31は、測定者90によってスイッチ23が押されると、図3に示す処理を実行する。
【0039】
図3に示すように、CPU31は、RAM33に記憶されている呼気量累計値をゼロにリセットする(S51)。ここで、呼気量累計値とは、測定者90によって吹き込まれた呼気量が、アルコールセンサ35によるアルコール濃度の測定を有効にする呼気量(以下「有効呼気量」という。)に達したか否かをCPU31が判断するための値である。呼気量累計値は、測定者90によって吹き込まれた呼気の流速を時間で積分することによって求めることができる。呼気の流速は、アルコール測定器10において呼気圧に比例するので、呼気圧から求めることができる。
【0040】
次いで、CPU31は、測定者90によって吹き込まれた呼気の圧力を呼気圧センサ38によって測定する(S52)。ここで、CPU31は、時計39によって計測される時間に基づいて、一定の時間毎にS52を実行するように図3に示す処理を制御している。この一定の時間を以下において呼気圧測定単位時間という。
【0041】
次いで、CPU31は、S52において測定した呼気圧が範囲1内であるか否かを判断する(S53)。
【0042】
ここで、CPU31は、呼気圧を範囲1〜7の7段階に分類するようになっている。範囲1は、アルコールセンサ35によるアルコール濃度の測定を有効にする呼気圧の最小値である最小呼気圧より小さい呼気圧の範囲である。範囲7は、アルコールセンサ35によるアルコール濃度の測定を有効にする呼気圧の最大値である最大呼気圧より大きい呼気圧の範囲である。最小呼気圧および最大呼気圧が設定される理由は、ある程度の圧力の呼気でなければアルコールセンサ35によるアルコール濃度の正確な測定ができないからである。最小呼気圧および最大呼気圧は、例えば米国運輸省がアルコール測定器に対して規定している最小呼気圧および最大呼気圧であっても良い。範囲2は、最小呼気圧と、最大呼気圧との間を5等分した範囲のうち最も呼気圧が小さい範囲である。範囲3は、最小呼気圧と、最大呼気圧との間を5等分した範囲のうち2番目に呼気圧が小さい範囲である。範囲4は、最小呼気圧と、最大呼気圧との間を5等分した範囲のうち3番目に呼気圧が小さい範囲である。範囲5は、最小呼気圧と、最大呼気圧との間を5等分した範囲のうち4番目に呼気圧が小さい範囲である。範囲6は、最小呼気圧と、最大呼気圧との間を5等分した範囲のうち最も呼気圧が大きい範囲である。範囲2〜範囲6は、アルコールセンサ35によるアルコール濃度の測定を有効にする呼気圧の範囲である有効範囲である。
【0043】
CPU31は、呼気圧が範囲1内であるとS53において判断すると、呼気圧表示部25に図4に示す範囲1の表示を実行させ(S54)、再びS51の処理に戻る。ここで、範囲1の表示は、図4に示すように、発光体25a〜25eが全て消灯している表示である。
【0044】
CPU31は、呼気圧が範囲1内ではないとS53において判断すると、S52において測定した呼気圧が範囲2内であるか否かを判断する(S55)。
【0045】
CPU31は、呼気圧が範囲2内であるとS55において判断すると、呼気圧表示部25に図4に示す範囲2の表示を実行させる(S56)。ここで、範囲2の表示は、図4に示すように、発光体25a〜25eのうち発光体25aのみが点灯している表示である。
【0046】
CPU31は、呼気圧が範囲2内ではないとS55において判断すると、S52において測定した呼気圧が範囲3内であるか否かを判断する(S57)。
【0047】
CPU31は、呼気圧が範囲3内であるとS57において判断すると、呼気圧表示部25に図4に示す範囲3の表示を実行させる(S58)。ここで、範囲3の表示は、図4に示すように、発光体25a〜25eのうち発光体25aおよび発光体25bのみが点灯している表示である。
【0048】
CPU31は、呼気圧が範囲3内ではないとS57において判断すると、S52において測定した呼気圧が範囲4内であるか否かを判断する(S59)。
【0049】
CPU31は、呼気圧が範囲4内であるとS59において判断すると、呼気圧表示部25に図4に示す範囲4の表示を実行させる(S60)。ここで、範囲4の表示は、図4に示すように、発光体25a〜25eのうち発光体25a〜25cのみが点灯している表示である。
【0050】
CPU31は、呼気圧が範囲4内ではないとS59において判断すると、S52において測定した呼気圧が範囲5内であるか否かを判断する(S61)。
【0051】
CPU31は、呼気圧が範囲5内であるとS61において判断すると、呼気圧表示部25に図4に示す範囲5の表示を実行させる(S62)。ここで、範囲5の表示は、図4に示すように、発光体25a〜25eのうち発光体25a〜25dのみが点灯している表示である。
【0052】
CPU31は、呼気圧が範囲5内ではないとS61において判断すると、S52において測定した呼気圧が範囲6内であるか否かを判断する(S63)。
【0053】
CPU31は、呼気圧が範囲6内であるとS63において判断すると、呼気圧表示部25に図4に示す範囲6の表示を実行させる(S64)。ここで、範囲6の表示は、図4に示すように、発光体25a〜25eが全て点灯している表示である。
【0054】
CPU31は、呼気圧が範囲6内ではないとS63において判断すると、呼気圧表示部25に図4に示す範囲7の表示を実行させ(S65)、再びS51の処理に戻る。ここで、範囲7の表示は、図4に示すように、発光体25a〜25eが全て点灯している表示である。
【0055】
CPU31は、S56、S58、S60、S62またはS64の処理を終了すると、S52において測定した呼気圧に対応する呼気の流速と、呼気圧測定単位時間との積を、RAM33に記憶されている呼気量累計値に加えることによって、RAM33に記憶されている呼気量累計値を更新する(S66)。
【0056】
次いで、CPU31は、RAM33に記憶されている呼気量累計値が有効呼気量に達したか否かを判断する(S67)。ここで、S67において有効呼気量が設定されている理由は、測定者90によってマウスピース22に吹き込まれた空気の体積が少ないときにアルコール濃度を測定してしまうと測定者90の口に入ったばかりの新鮮な空気のアルコール濃度を測定してしまうおそれがあり、呼気、すなわち肺に入っていた空気のアルコール濃度を測定するためにある程度の体積の空気が吹き込まれる必要があるからである。有効呼気量は、例えば1Lなどの量が設定されている。
【0057】
CPU31は、呼気量累計値が有効呼気量に達していないとS67において判断すると、再びS52の処理を実行する。
【0058】
一方、CPU31は、呼気量累計値が有効呼気量に達したとS67において判断すると、呼気圧表示部25に呼気圧の表示を終了させ(S68)、吸引ポンプ37を駆動してアルコールセンサ35にアルコール濃度の測定を実行させる(S69)。
【0059】
次いで、CPU31は、S69において測定されたアルコール濃度をアルコール濃度表示部24に表示させて(S70)、図3に示す処理を終了する。なお、CPU31は、S70において表示させたアルコール濃度を所定の時間の経過によって消すようになっている。
【0060】
図5は、測定者90によってマウスピース22に吹き込まれた呼気の圧力の例を示す図である。
【0061】
測定者90がスイッチ23を押すとCPU31が上述したように図3に示す処理を実行するので、測定者90がマウスピース22に図5に示すように呼気を吹き込むと、呼気圧表示部25は、時間0から時間t1まで図4に示す範囲1の表示を実行し、時間t1から時間t2まで図4に示す範囲2の表示を実行し、時間t2から時間t3まで図4に示す範囲3の表示を実行し、時間t3から時間t4まで図4に示す範囲4の表示を実行し、時間t4から時間t5まで図4に示す範囲5の表示を実行し、時間t5から時間t6まで図4に示す範囲6の表示を実行し、時間t6から時間t7まで図4に示す範囲7の表示を実行し、時間t7から時間t8まで図4に示す範囲6の表示を実行し、時間t8から時間t9まで図4に示す範囲5の表示を実行する。
【0062】
以上に説明したように、アルコール測定器10は、マウスピース22に呼気を吹き込んでいる最中の測定者90から視認可能な位置に呼気圧表示部25が配置されているので、呼気を吹き込んでいる最中の測定者90に呼気圧を認識させることができる。
【0063】
また、アルコール測定器10は、有効範囲内を範囲2〜6という複数の段階で呼気圧表示部25が表示するようになっているので、有効範囲内の何れの段階に現在の呼気圧が位置しているかを測定者90に認識させることができる。したがって、アルコール測定器10は、呼気圧が有効範囲内であるか否かのみを表示する構成、すなわち、有効範囲内を1段階のみで表示する構成と比較して、測定者90に呼気圧を有効範囲内に容易に維持させることができる。
【0064】
また、アルコール測定器10は、呼気圧を複数の段階で表示する複数個の発光体25a〜25eを呼気圧表示部25が備えているので、呼気圧表示部25が呼気圧を数値で表示する構成と比較して、呼気圧が適正であるかを測定者90に容易に認識させることができる。
【0065】
また、アルコール測定器10は、図4に示すように複数個の発光体25a〜25eが対応する呼気圧の段階の順番に並べて配列されているので、複数個の発光体25a〜25eが呼気圧の段階の順番と関係なく配置されている構成と比較して、呼気圧が適正であるかを測定者90に容易に認識させることができる。
【0066】
また、アルコール測定器10は、有効範囲内の中央の段階である範囲4に対応する発光体25cが他の発光体25a、25b、25d、25eと異なる発光を行うので、有効範囲内の中央の段階である範囲4を測定者90に容易に認識させることができる。したがって、アルコール測定器10は、範囲4の表示になるように測定者90に呼気圧を調整させることによって、測定者90に呼気の強さを有効範囲内に容易に維持させることができる。
【0067】
なお、アルコール測定器10は、発光体25cが他の発光体25a、25b、25d、25eと発光色によって異なる発光を行うようになっているが、発光色以外の方法によって異なる発光を行うようになっていても良い。例えば、発光体25cが他の発光体25a、25b、25d、25eと発光の大きさ、発光の明るさ、点滅速度などによって異なる発光を行うようになっていても良い。
【0068】
また、アルコール測定器10は、有効範囲内の中央の段階である範囲4に対応する発光体25cが他の発光体25a、25b、25d、25eと同じ発光を行う構成であっても良い。
【0069】
また、アルコール測定器10は、有効範囲内の複数の段階のうち有効範囲外に隣接する段階である範囲6と、この段階に隣接する有効範囲外である範囲7とを呼気圧表示部25が同一の表示、すなわち、発光体25a〜25eの全てを点灯する表示にしているので、呼気圧が有効範囲内であるときに呼気圧が変化して範囲6になって、有効範囲外である範囲7と同一の表示になっても、この表示になった直後は呼気圧が未だ有効範囲内である範囲6である。したがって、アルコール測定器10は、この表示にならないように測定者90に呼気圧を調整させることによって、測定者90に呼気圧を有効範囲内に容易に維持させることができる。また、アルコール測定器10は、有効範囲内の段階である範囲6を、有効範囲外である範囲7と同一の表示にするので、範囲6を、範囲7と別の表示にする構成と比較して、発光体の個数を少なくすることができる。
【0070】
測定者90は、呼気圧表示部25が範囲4の表示に留まるように呼気圧表示部25の表示を確認しながら呼気圧を調整し、もしも呼気圧が範囲4外になったときには呼気圧が更に範囲3の下限より小さくなったり、範囲5の上限より大きくなったりしないように注意して再び範囲4の表示に戻すように呼気圧表示部25の表示を確認しながら呼気圧を調整することによって、呼気圧を容易に有効範囲内に維持することができる。
【0071】
なお、アルコール測定器10は、図4に示すように、点灯する発光体25a〜25eの数によって範囲1〜7を表示しているが、図6に示すように、範囲1〜7のそれぞれに対応する1つの発光体25a〜25eのみを点灯するようになっていても良い。
【0072】
また、アルコール測定器10は、範囲1から範囲7に向かって呼気圧が大きくなるに従って、マウスピース22に呼気を吹き込んでいる最中の測定者90から見て最も左の発光体である発光体25aから最も右の発光体である発光体25eに向かって点灯するようになっているが、最も右の発光体である発光体25eから最も左の発光体である発光体25aに向かって点灯するようになっていても良い。
【0073】
なお、アルコール測定器10は、マウスピース22に呼気を吹き込んでいる最中の測定者90から見て発光体25a〜25eが横方向に配列されているが、発光体25a〜25eの配置が横方向以外の配置であっても良い。例えば、アルコール測定器10は、図7(a)に示すように、マウスピース22に呼気を吹き込んでいる最中の測定者90から見て発光体25a〜25eが縦方向に配列されていても良いし、図7(b)に示すように、マウスピース22に呼気を吹き込んでいる最中の測定者90から見て発光体25a〜25eがY字状に配列されていても良い。
【0074】
アルコール測定器10は、発光体25a〜25eが図7(a)に示すように配列されている場合にも、発光体25a〜25eが図1に示すように配置されている場合と同様の作用効果を得ることができる。例えば、アルコール測定器10は、図4や図6に示すように、範囲1から範囲7に向かって呼気圧が大きくなるに従って、マウスピース22に呼気を吹き込んでいる最中の測定者90から見て最も遠くの発光体である発光体25aから最も近くの発光体である発光体25eに向かって点灯するようになっていても良いし、最も近くの発光体である発光体25eから最も遠くの発光体である発光体25aに向かって点灯するようになっていても良い。
【0075】
同様に、アルコール測定器10は、発光体25a〜25eが図7(b)に示すように配列されている場合にも、発光体25a〜25eが図1に示すように配置されている場合と同様の作用効果を得ることができる。なお、図7(b)において、発光体25aは、2つ配置されているが、共に同一の動作を行う。同様に、図7(b)において、発光体25bは、2つ配置されているが、共に同一の動作を行う。
【0076】
なお、アルコール測定器10は、範囲7に対応する発光体を呼気圧表示部25が新たに設けることによって、範囲6を、範囲7と別の表示にする構成であっても良い。
【0077】
また、アルコール測定器10は、複数個の発光体25a〜25eが呼気圧の段階の順番と関係なく配置されている構成であっても良い。
【0078】
なお、アルコール測定器10は、呼気強さ表示部が複数個の発光体25a〜25eであるが、呼気強さ表示部が複数個の発光体25a〜25e以外の構成であっても良い。例えば、アルコール測定器10は、図8(a)に示すように、呼気強さ表示部が発光色を変えることによって呼気圧を複数の段階で表示する1個の発光体26であっても良いし、図8(b)に示すように、呼気強さ表示部が呼気圧を数値などの任意の表現で表示するLCDなどの表示デバイス27であっても良い。
【0079】
アルコール測定器10は、図8(a)に示すように、呼気強さ表示部が発光色を変えることによって呼気圧を複数の段階で表示する1個の発光体26である場合、複数個の発光体25a〜25eで呼気圧を表示する構成と比較して、発光体の設置空間を小さくすることができる。なお、発光体26は、発光色以外の発光方法を変えることによって呼気圧を複数の段階で表示するようになっていても良い。例えば、発光体26は、発光の明るさ、点滅速度などを変えることによって呼気圧を複数の段階で表示するようになっていても良い。
【0080】
なお、アルコール測定器10は、有効範囲内を5段階で表示するようになっているが、5段階以外の複数の段階で表示する構成であっても良い。また、アルコール測定器10は、有効範囲内を1段階のみで表示する構成であっても良い。
【0081】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係るアルコール測定器の構成について説明する。なお、本実施の形態に係るアルコール測定器の構成のうち、第1の実施の形態に係るアルコール測定器10(図1参照。)の構成と同様の構成については、アルコール測定器10の構成と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0082】
図9は、本実施の形態に係るアルコール測定器110の外観斜視図である。
【0083】
図9に示すように、アルコール測定器110の構成は、アルコール測定器10が筐体21(図1参照。)に代えて筐体121を備えるとともに、アルコール測定器10がアルコール濃度表示部24および呼気圧表示部25(図1参照。)に代えて本発明の呼気強さ表示部としての表示部122を備えた構成と同様である。
【0084】
筐体121は、測定時に測定者90によって手91で持たれるものであり、マウスピース22およびスイッチ23が設けられている。また、筐体121の内部には、アルコール測定器10と同様に、CPU31、ROM32、RAM33、不揮発メモリ34、アルコールセンサ35、アンプ36、吸引ポンプ37、呼気圧センサ38および時計39(図2参照。)が設けられている。
【0085】
筐体121は、マウスピース22が差し込まれる図示していない呼気注入口が形成されている面121aと、面121aに隣接してスイッチ23が設けられる面121bと、面121bに隣接して表示部122が設けられる面121cとを備えている。
【0086】
表示部122は、マウスピース22に吹き込まれた呼気中のアルコール濃度と、マウスピース22に吹き込まれた呼気の圧力である呼気圧とを表示するLCDなどの表示デバイスである。表示部122は、筐体121のうち面121bより突出している部分121d上の位置であって、マウスピース22に呼気を吹き込んでいる最中の測定者90の目92と対向する位置に配置されている。
【0087】
以上に説明したように、アルコール測定器110は、筐体121のうち面121bより突出している部分121d上の位置であって、マウスピース22に呼気を吹き込んでいる最中の測定者90の目92と対向する位置に配置されているので、呼気を吹き込んでいる最中の測定者90に表示部122を容易に視認させることができる。
【0088】
なお、アルコール測定器110は、本発明の呼気圧表示部がLCD以外の構成であっても良い。例えば、アルコール測定器110は、第1の実施の形態に示した複数個の発光体25a〜25e(図1参照。)や1個の発光体26(図8(a)参照。)と同様な構成が本発明の呼気圧表示部として面121cに設けられても良い。
【0089】
また、部分121dを面121bより突出させる方法としては、図9に示すように筐体121の一部を屈曲させる方法以外にも、筐体121の一部に凸部を設ける方法がある。
【0090】
なお、上述した各実施の形態においては、呼気の強さとして呼気圧を使用しているが、呼気の強さとして呼気の流速を使用しても良い。また、本発明の呼気強さセンサとしては、流速センサが使用されても良い。
【0091】
また、上述した各実施の形態においては、筐体21に対して抜き差し可能に設けられたマウスピース22を本発明の呼気吹込部として備えているが、筐体21に対して抜き差し不可能に設けられて測定者90に咥えられて呼気が吹き込まれる呼気吹込部を備えていても良いし、測定者90に咥えられることなく呼気が吹きかけられることによって吹き込まれる呼気吹込部を備えていても良い。
【符号の説明】
【0092】
2〜6 範囲(有効範囲)
10 アルコール測定器
21 筐体
22 マウスピース(呼気吹込部)
25 呼気圧表示部(呼気強さ表示部)
25a〜25e 発光体(複数個の発光体)
26 発光体(呼気強さ表示部、1個の発光体)
27 表示デバイス(呼気強さ表示部)
35 アルコールセンサ
38 呼気圧センサ(呼気強さセンサ)
90 測定者
91 手
92 目
110 アルコール測定器
121 筐体
121d 部分(突出している部分)
122 表示部(呼気強さ表示部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定時に測定者によって手で持たれる筐体と、前記筐体に設けられて前記測定者の呼気が吹き込まれる呼気吹込部と、前記呼気吹込部に吹き込まれた前記呼気中のアルコール濃度を測定するアルコールセンサと、前記呼気吹込部に吹き込まれた前記呼気の強さを測定する呼気強さセンサと、前記筐体に設けられて前記呼気強さセンサによって測定された前記強さを表示する呼気強さ表示部とを備えており、
前記呼気強さ表示部は、前記呼気吹込部に前記呼気を吹き込んでいる最中の前記測定者から視認可能な位置に配置されていることを特徴とするアルコール測定器。
【請求項2】
前記呼気強さ表示部は、前記アルコールセンサによる前記アルコール濃度の測定を有効にする前記強さの範囲である有効範囲内を複数の段階で表示することを特徴とする請求項1に記載のアルコール測定器。
【請求項3】
前記呼気強さ表示部は、前記強さを複数の段階で表示する複数個の発光体を備えていることを特徴とする請求項2に記載のアルコール測定器。
【請求項4】
前記複数個の発光体は、対応する前記強さの段階の順番に並べて配列されていることを特徴とする請求項3に記載のアルコール測定器。
【請求項5】
前記有効範囲内の中央の段階に対応する前記発光体は、他の前記発光体と異なる発光を行うことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のアルコール測定器。
【請求項6】
前記呼気強さ表示部は、前記有効範囲内の複数の段階のうち前記有効範囲外に隣接する少なくとも1つの段階と、この段階に隣接する前記有効範囲外とを同一の表示にすることを特徴とする請求項3から請求項5までの何れかに記載のアルコール測定器。
【請求項7】
前記呼気強さ表示部は、発光方法を変えることによって前記強さを複数の段階で表示する1個の発光体を備えていることを特徴とする請求項2に記載のアルコール測定器。
【請求項8】
前記呼気強さ表示部は、前記筐体のうち突出している部分上の位置であって、前記呼気吹込部に前記呼気を吹き込んでいる最中の前記測定者の目と対向する位置に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項7までの何れかに記載のアルコール測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−2671(P2012−2671A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138018(P2010−138018)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【特許番号】特許第4709935号(P4709935)
【特許公報発行日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(302031454)東海電子株式会社 (34)
【Fターム(参考)】