説明

アルゴンガス昇圧用ブースターコンプレッサ

【課題】断熱指数の高いアルゴンガスを昇圧するについて、昇圧後の温度を下げることで、通常仕様のコンプレッサが使用できるようにする。
【解決手段】アルゴンガス昇圧用のブースターコンプレッサにおいて、このブースターコンプレッサが冷却したアルゴンガスを吸い込んで昇圧するものであることを特徴とするアルゴンガス昇圧用ブースターコンプレッサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルゴンガスを昇圧するアルゴンガス(専用の)昇圧用ブースターコンプレッサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルゴンガスは、所謂、不活性ガスであり、レーザー加工機で金属を切断加工するとき等に用いられる。すなわち、切断個所を覆って切断面が酸化したりするのを防いだり、溶融金属等を吹き飛ばしたりするのに用いられる。このため、加工機にアルゴンガス供給ラインを設けてアルゴンガスを昇圧して供給するようにしている。ところで、アルゴンガスは断熱指数が高く、断熱的に圧縮して昇圧させた場合、空気や窒素ガスを圧縮する場合と同じ圧縮比でもガス温度が高くなるという特性を有している。具体的に言えば、吸入するアルゴンガスが8.2気圧以下で15℃以上のときに30気圧まで圧縮すると200℃を超える。これは、空気や窒素ガスを同条件で圧縮した場合に比べると60℃以上高い。
【0003】
昇圧したアルゴンガスのガス温度が高くなりすぎると、シール部材の熱劣化、シリンダ内の油膜切れ、潤滑油のミスト化といった現象を来す。このため、コンプレッサを高温に耐える特別仕様にする必要があるが、そうすると、価格が高くなるという問題がある。一方、圧縮比を下げる対応もあるが、これによると、アルゴンガスの供給ラインの供給能力を低下させることになるし、何よりも、コンプレッサが本来有している圧縮性能を制限することになって効率的ではない。
【特許文献1】特開平09−296736号公報
【特許文献2】特開2004−108653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、昇圧後の温度が高いアルゴンガスの昇圧用であっても、吸入するアルゴンガスを冷却することで通常仕様のブースターコンプレッサが使用できるようにしたものである。なお、吸気を冷却するコンプレッサとしては、上記特許文献1にガスタービン発電機におけるコンプレッサの吸気を冷却する案件が、また、特許文献2には、空気分離装置に使用される多段型のコンプレッサの吸気を冷却する案件がそれぞれ示されているが、これらは、単にコンプレッサの効率を上げるために媒体ガスである空気を冷却するものにすぎない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題の下、本発明は、請求項1に記載の、アルゴンガス昇圧用のブースターコンプレッサにおいて、このブースターコンプレッサが冷却したアルゴンガスを吸い込んで昇圧するものであることを特徴とするアルゴンガス昇圧用ブースターコンプレッサを提供したものである。
【0006】
また、本発明は、以上のブースターコンプレッサにおいて、請求項2に記載の、ブースターコンプレッサの吸込口の前に冷却器を設け、ブースターコンプレッサが冷却器で冷却したアルゴンガスを吸い込んで昇圧するものである手段、請求項3に記載の、冷却器として、冷凍式ドライヤから一次熱交換器を除いたものを使用する手段を提供する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の手段によると、冷却したアルゴンガスを昇圧させるため、空気や窒素ガスの場合と同じ圧縮比で圧縮したとしても、圧縮後のアルゴンガスの温度はそれほど上がらない。したがって、標準仕様のブースターコンプレッサがそのまま使用できることになり、非常に効率的である。なお、冷却の具体的構成としては請求項2の手段があり、請求項3の手段によれば、冷却効率が良くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明に係るアルゴンガス昇圧用コンプレッサを含むシステムの系統図であるが、アルゴンガスの流路Lには、供給側から手動バルブ1、フィルタ2、電磁弁3、低圧異常検知型制御用タンク4、冷却器5、電磁弁6、ブースターコンプレッサ本機7、逆止弁8、貯留タンク9が配置されており、さらに、高圧フィルタ10、高圧マイクロフィルタ11、高圧レギュレータ12を通して供給ラインに送られる。
【0009】
この場合の、ブースターコンプレッサ本機(以下、本機)7は、貯留タンク9に設けられてその圧力を厳密に制御する圧力スイッチ13によって省エネ的に運転されるようになっており、こういったコップレッサシステムをブースタコンプレッサBと称し、本発明で用いる。なお、ブースタコンプレッサBでは、電磁弁3の上流側から逆止弁15を経由して貯留タンク9に至るバイパス流路L´も設けられている。さらに、貯留タンク9には圧力の異常上昇を避ける安全弁14も設けられている。
【0010】
以上により、流路Lに供給されたアルゴンガスは、本機7で昇圧される前に冷却器5によって冷却されるから、大気温度の空気や窒素ガスと同一の圧縮比であっても、昇圧後の温度はこれらの温度とさほど変わらない温度になっている。したがって、本機7の部材や潤滑油は標準仕様のものが使用でき、専用部品の製作等、余分なコスト増を招かない。
【0011】
ところで、一般的なエアー機器は、湿気(水分)を含んだ空気を使用するのは好ましくない。このため、除湿機(ドライヤ)16で除湿した圧縮空気をエアーラインに送るようにしている。図2はエアーラインで多く使用されている冷凍式ドライヤ16と称されるものの説明図であるが、コンプレッサの貯留タンクに続く流入口17から圧縮空気を流入させ、一次熱交換器18で予冷した後、二次熱交換器19で冷却して除湿し、このとき発生した水分をドレン排出口20から排出させる。そして、再度一次熱交換器18を通して大気温度とそれほど変わらない温度に再加熱して吐出口21から吐出し、この圧縮空気をエアーラインに送っていた。
【0012】
そこで、本発明は、この冷凍式ドライヤ16を一部改造して使用するのである。具体的には、流入口17と吐出口21を逆にし、一次熱交換器18を取り去るのである。図3は改造したドライヤ16の説明図であるが、吐出口21からアルゴンガスを吸い込み、二次熱交換器19で冷却したものを流入口17から排出してこれを本機7に吸入させるのである。これにより、一層冷却されたアルゴンガスの供給が可能になるし、材料費に限れば、部材の省略によるコストダウンも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】アルゴンガス昇圧用コンプレッサを含むシステムの系統図である。
【図2】冷凍式ドライヤの説明図である。
【図3】冷凍式ドライヤを一部改造したものの説明図である。
【符号の説明】
【0014】
1 手動バルブ
2 フィルタ
3 電磁弁
4 低圧異常検知型制御用タンク
5 冷却器
6 電磁弁
7 ブースターコンプレッサの本機
8 逆止弁
9 貯留タンク
10 高圧フィルタ
11 高圧マイクロフィルタ
12 高圧レギュレータ
13 圧力スイッチ
14 安全弁
15 逆止弁
16 冷凍式ドライヤ
17 流入口
18 一次熱交換器
19 二次熱交換器
20 ドレン排出口
21 吐出口
B ブースターコンプレッサ
L 流路
L´ バイパス流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルゴンガス昇圧用のブースターコンプレッサにおいて、このブースターコンプレッサが冷却したアルゴンガスを吸い込んで昇圧するものであることを特徴とするアルゴンガス昇圧用ブースターコンプレッサ。
【請求項2】
ブースターコンプレッサの吸込口の前に冷却器を設け、ブースターコンプレッサが冷却器で冷却したアルゴンガスを吸い込んで昇圧するものである請求項1のアルゴンガス昇圧用ブースターコンプレッサ。
【請求項3】
冷却器として、冷凍式ドライヤから一次熱交換器を除いたものを使用する請求項2のアルゴンガス昇圧用ブースターコンプレッサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−77808(P2010−77808A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243514(P2008−243514)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000155230)株式会社明治機械製作所 (23)
【Fターム(参考)】