説明

アルデヒド吸着剤

【課題】 本発明の目的は、空気中の悪臭の最も大きな原因の一つである、タバコの煙等に含まれているアセトアルデヒド等アルデヒド類の吸着・除去性に優れた吸着剤を提供する事である。
【解決手段】 平均細孔径1nmより大きい細孔径を有するシリカ多孔体とアミノ基及び/又はイミノ基を有する化合物を含有し、アミノ基及び/又はイミノ基含量が1.0〜20mmol/g(アルデヒド吸着剤)であるd間隔が2nmより大きい位置に少なくとも1つのピークを有するX線回折パターンを有するアルデヒド吸着剤である事により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルデヒド吸着剤に関するもので、特に低濃度の悪臭ガス吸着性が優れた吸着剤である。更に詳しく述べると空気中の悪臭の最も大きな原因の一つである、タバコの煙等に含まれているアセトアルデヒド等アルデヒド類の吸着・除去性に優れたアルデヒド吸着剤である。
【背景技術】
【0002】
従来、悪臭ガスを消臭する方法としては、活性炭、アルミナ、及びゼオライト等の多孔質吸着剤による吸着法が知られている。ゼオライトは、アンモニア及びトリメチルアミン等の塩基性ガスや、イソ吉草酸及び酢酸等の酸性悪臭ガスに対しては、比較的高い吸着性能を有するものの、硫化水素及びメチルメルカプタン等の含硫黄悪臭ガスや、アセトアルデヒド及びホルムアルデヒド等のアルデヒドガスに対しては、ほとんど吸着性能を示さない。ホルムアルデヒドガスに対する吸着性能を向上させるため、アルデヒド類吸着能を有する窒素含有化合物と天然ゼオライト又は合成ゼオライトを併用する室内汚染対策用水性塗料(例えば、特許文献1参照)や銅化合物を、常温で固体の天然ゼオライトに担持させた、硫化水素、メチルメルカプタンに対する脱臭剤が提案されている(例えば、特許文献2参照)がその効果は充分ではない。
【0003】
【特許文献1】特開2000−095980号公報(P1〜P7)
【特許文献2】特開平5−237375号公報(P1〜P10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的はシリカ多孔体の細孔内にアミノ基及び/又はイミノ基を有する化合物を担持させる事により、従来にないアルデヒド類の吸着・除去性に優れたアルデヒド吸着剤を得る事にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、
(1) 1nmより大きい平均細孔径を有するシリカ多孔体と1.0〜20mmol/g(アルデヒド吸着剤)のアミノ基及び/又はイミノ基を有する化合物を含有し、d間隔が2nmより大きい位置に少なくとも1つのピークを有するX線回折パターンを有するアルデヒド吸着剤
(2) シリカ多孔体とアミノ基及び/又はイミノ基を有する化合物が非水系溶媒中で混合して製造されたものである事を特徴とするアルデヒド吸着剤
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来品に比してアセトアルデヒド等アルデヒド類の吸着・除去性能が著しく向上したアルデヒド吸着剤を提供する事が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明におけるアルデヒド吸着剤とは、平均細孔径が1nmより大きい細孔径を有するシリカ多孔体とアミノ基及び、又はイミノ基を有する化合物を含有しアミノ基及びイミノ基含量が1.0〜20mmol/g(アルデヒド吸着剤)であるアルデヒド吸着剤である。
【0008】
本発明におけるシリカ多孔体とは、多孔質構造を持つケイ素酸化物を主成分とする物質である。
【0009】
本発明におけるアルデヒド吸着剤の平均細孔径、比表面積、細孔容量は公知の窒素吸着等温線から算出する事ができる。より具体的には平均細孔径は、公知のBJH法、BET法、t法、DFT法等により算出する事ができ、比表面積は、公知のBET法、t法、α法等により算出する事ができ、細孔容量は、公知のBJH法、BET法、t法等により算出する事ができる。
【0010】
本発明におけるアルデヒド吸着剤の細孔の平均細孔径は1nm未満であると、アルデヒド吸着が十分でない場合があり、20nmを超えるものは製造するのが実質的に困難である。従って、上記観点から、本発明におけるアルデヒド吸着剤の細孔の平均細孔径は、1〜20nmであり、より好ましくは1〜10nmであり、さらに好ましくは1〜7nmであり、最も好ましくは1〜4nmである。
【0011】
本発明におけるアルデヒド吸着剤の比表面積は100m/g未満であると、アルデヒドの吸着が十分でない場合があり比表面積が2000m/gより大きいものは、製造するのが実質的に困難である。従って、上記観点から、本発明におけるアルデヒド吸着剤の比表面積は好ましくは100〜2000m/g、より好ましくは300〜2000m/g、最も好ましくは500〜2000m/gである。
【0012】
本発明におけるアルデヒド吸着剤の細孔容量は特に限定されるものではないが、好ましくは、0.1cm/g〜3.0cm/gであるようにコントロールされたものが良く、更に好ましくは、0.2cm/g〜2.0cm/gであるようにコントロールされたものが良い。細孔容量が上記範囲より小さいものものでは、アルデヒドの吸着が十分でない場合があり、細孔容量が上記範囲より大きいものは、製造するのが実質的に困難である。
【0013】
本発明における細孔の規則性はX線回折等により確認する事ができる。
【0014】
なお、X線回折パターンはX線回折装置(RINT ULTIMAII 理学電機株式会社製)等により測定する事ができる。
【0015】
本発明におけるアルデヒド吸着剤は、d間隔が2nmより大きい位置に少なくとも1つのピークを有するX線回折パターンを有する事が好ましく、d間隔が2nmより大きい位置にある最大ピークの50%より大きい相対強度のピークを有さない事がさらに好ましい。
【0016】
また、本発明におけるアルデヒド吸着剤は、最強のピークの50%より大きい相対強度でd間隔が1nmから2nmの範囲でピークが存在しないX線回折パターンを有している事が好ましく、最強のピークの30%より大きい相対強度でd間隔が1nmから2nmの範囲でピークが存在しないX線回折パターンを有している事がより好ましく、最強のピークの20%より大きい相対強度でd間隔が1nmから2nmの範囲でピークが存在しないX線回折パターンを有している事が最も好ましい。
【0017】
本発明におけるアルデヒド吸着剤のアミノ基及び/又はイミノ基含有量はアルデヒド吸着の観点からアミノ基及び/又はイミノ基含量が1.0〜20mmol/gが好ましく、1.0〜15mmol/gがより好ましく、1.0〜12mmol/gが最も好ましい。
【0018】
本発明におけるアルデヒド吸着剤のアミノ基及び/又はイミノ基含有量は、例えば熱重量測定装置により測定する事ができる。すなわち、100℃〜600℃の熱重量測定から<W(100℃)mg−W(600℃)mg>×(用いた物質1分子当たりのアミノ基数+イミノ基数)/M.W.により、アミノ基及び/又はイミノ基含有量(mmol)を算出する事ができる。また、赤外分光法(IR)での定性分析をすることができる。
[W(100℃)mg:100℃ 0.5時間静置後のアルデヒド吸着剤の重量/
W(600℃)mg:600℃ 0.5時間静置後のアルデヒド吸着剤の重量/
M.W.:アルデヒド吸着剤の分子量]
【0019】
本発明におけるアミノ基を有する化合物としては特に限定されるものではないが、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、フェニルアミン、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、尿素、(アデニン、チミン、グアニン、シトシン等の核酸)、(アラニン、アルギニン、グルタミン等のアミノ酸)等が挙げられ、アルデヒド吸着の点から3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、エチレンジアミンがより好ましい。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
本発明におけるイミノ基を有する化合物としては特に限定されるものではないが、例えばトリエチレンテトラミン、プロリン、ヒドロキシプロリン、核酸等が挙げられ、アルデヒド吸着の点からトリエチレンテトラミンがより好ましい。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
本発明におけるアルデヒドとはアルデヒド基を持つ化合物であれば特に限定するものではないが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド等が挙げられる。
【0022】
本発明におけるアルデヒド吸着剤が吸着するアルデヒドはホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド等が挙げられるが、吸着量の観点からホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒドがより好ましく、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドがさらに好ましく、アセトアルデヒドが最も好ましい。
【0023】
本発明におけるアルデヒド吸着量は下記アルデヒド吸着試験により算出する事ができる。
【0024】
(アルデヒド吸着試験)
50ppmのアルデヒドを含む空気2.5Lを入れた「におい袋」(袋容量:3L、袋サイズ:250×250mm、材質:ポリエステルフィルム/アズワン株式会社製)にアルデヒド吸着剤100mgを投入し、25℃で30分静置後、におい袋内のヘッドスペースのアルデヒド濃度をガス検知管(株式会社ガステック製)にて測定した。濃度測定後、におい袋内の空気を新しく50ppmアルデヒドを含む空気に交換し、25℃で30分間静置後、検知管にてアルデヒド吸着濃度を測定した。この操作を繰り返し、合計3回の吸着量を算出した。
【0025】
本発明におけるシリカ多孔体の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、無機原料を有機原料と混合し、反応させる事により、有機物を鋳型としてそのまわりに無機物の骨格が形成された有機物と無機物の複合体を形成させた後、得られた複合体から、有機物を除去する方法が挙げられる。
【0026】
無機原料は、珪素含有無機物であれば特に限定されるものではないが、例えば、層状珪酸塩、非層状珪酸塩等の珪酸塩を含む物質及び珪酸塩以外の珪素を含有する物質が挙げられる。層状珪酸塩としては、カネマイト(NaHSi・3HO)、ジ珪酸ナトリウム結晶(NaSi)、マカタイト(NaHSi・5HO)、アイラアイト(NaHSi17・XHO)、マガディアイト(NaHSi1429・XHO)、ケニヤアイト(NaHSi2041・XHO)等が挙げられ、非層状珪酸塩としては、水ガラス(珪酸ソーダ)、ガラス、無定形珪酸ナトリウム、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラメチルアンモニウム(TMA)シリケート、テトラエチルオルトシリケート等のシリコンアルコキシド等が挙げられる。また、珪酸塩以外の珪素を含有する物質としては、シリカ、シリカ酸化物、シリカ−金属複合酸化物等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いて良い。
【0027】
鋳型となる有機原料としては、陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性の界面活性剤等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
陽イオン性界面活性剤としては、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、第4級アンモニウム塩等が挙げられ、これらの中では第4級アンモニウム塩が好ましい。アミン塩は、アルカリ性域では分散性が不良のため、合成条件が酸性域でのみ使用されるが、第4級アンモニウム塩は、合成条件が酸性、アルカリ性のいずれの場合にも使用する事ができる。
【0029】
第4級アンモニウム塩としては、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、オクチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、オクタデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムブロミド、ベヘニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル(炭素数8〜22)トリメチルアンモニウム塩等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
陰イオン性界面活性剤としては、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等が挙げられ、なかでも、セッケン、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化オレフィン、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩及び高級アルコールリン酸エステル塩等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
両性界面活性剤としては、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン酸誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のエーテル型のものや、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の含窒素型のもの等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
無機原料として、シリカ(SiO)等の酸化珪素を使用する場合は、カネマイト等の層状シリケートをまず形成し、この層間に有機原料である鋳型を挿入し、鋳型が存在しない層間をシリケート分子で繋ぎ、その後、鋳型を除去して細孔を形成する事ができる。また、水ガラス等を使用する場合は、有機原料である鋳型の周囲にシリケートモノマーを集合させ、重合してシリカを形成し、次に鋳型を除去して細孔を形成する事ができる。
【0034】
有機原料として界面活性剤を使用し、界面活性剤を鋳型として細孔を形成する場合は、鋳型としてミセルを利用する事ができる。また、界面活性剤のアルキル鎖長をコントロールする事により、鋳型の径を変化させ、形成する細孔の径を制御する事ができる。さらに、界面活性剤と共にトリメチルベンゼン、トリプロピルベンゼン等の比較的疎水性の分子を添加する事により、ミセルが膨張し、さらに大きな細孔の形成が可能となる。これらの方法を利用する事により、最適な大きさの細孔が形成できる。
【0035】
無機原料と有機原料を混合する場合、適当な溶媒を用いても良い。溶媒としては、特に限定されないが、水、アルコール等が挙げられる。
【0036】
無機原料と有機原料との混合方法は、特に限定されないが、無機原料に重量比で2倍以上のイオン交換水を添加後、40〜80℃で1時間以上撹拌した後に、有機原料を添加して混合する方法が好ましい。
【0037】
無機原料と有機原料との混合比は、特に限定されないが、無機原料:有機原料の比(重量比)は、好ましくは0.1:1〜5:1、より好ましくは0.1:1〜3:1である。
【0038】
無機原料と有機原料との反応は、特に限定されるものではないが、好ましくはpH11以上で1時間以上撹拌し、pHを8.0〜9.0とした後、1時間以上反応させる事が好ましい。
【0039】
有機物と無機物の複合体から有機物を除去する方法としては、複合体を濾取し、水等により洗浄、乾燥した後、400〜700℃で焼成する方法、有機溶媒等により抽出する方法が挙げられる。
【0040】
本発明のアルデヒド吸着剤の製造方法は特に限定されるものではないが、例えばシリカ多孔体にアミノ基及び/又はイミノ基を有する化合物を非水系溶媒中にて混合し、調製する事が好ましい。この際の混合比率については特に限定されるものではないが、シリカとアミノ基及び/又はイミノ基を有する化合物の重量比は1:0.1〜1:5が好ましい。
【0041】
非水系溶媒としては特に限定されるものではないが、例えばトルエン、イソプロピルアルコール、エタノール、アセトン等が挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
製造例1
日本化学工業(株)製の水ガラス1号(SiO/NaO=2.00)50gを界面活性剤であるn−デシルトリメチルアンモニウムクロリド〔C1021N(CHCl〕の0.1M水溶液1000mlに分散させ、70℃で3時間撹拌しながら加熱した。その後、70℃で加熱・撹拌しながら、2Nの塩酸を添加して、分散液のpHを8.5に下げ、さらに70℃で3時間加熱・撹拌した。固形生成物を一旦濾過し、再度イオン交換水1000mlに分散させ撹拌した。この濾過・分散撹拌を5回繰り返した後40℃で24時間乾燥させた。乾燥させた固形生成物を空気中550℃で6時間焼成する事により、シリカ多孔体Aを得た。イソプロピルアルコール100ml中にシリカ多孔体A1gと3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.25gを添加して24時間室温にて混合した後濾過を行い、濾物を40℃で24時間乾燥する事により、本発明のアルデヒド吸着剤A1.11gを得た。
【0044】
製造例2
日本化学工業(株)製の1号珪酸ソーダ(SiO/NaO=2.00)50gを界面活性剤であるベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド〔C2245N(CHCl〕のの0.1M水溶液1000mlに分散させ、70℃で3時間撹拌しながら加熱した。その後、70℃で加熱・撹拌しながら、2Nの塩酸を添加して、分散液のpHを8.5に下げ、さらに70℃で3時間加熱・撹拌した。固形生成物を一旦濾過し、再度イオン交換水1000mlに分散させ撹拌した。この濾過・分散撹拌を5回繰り返した後40℃で24時間乾燥させた。乾燥させた固形生成物を空気中550℃で6時間焼成する事により、シリカ多孔体Bを得た。イソプロピルアルコール100ml中にシリカ多孔体B1gと3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.25gを添加して24時間室温にて混合した後濾過を行った。得られた固形物を40℃で24h乾燥する事により、本発明のアルデヒド吸着剤B1.14gを得た。
【0045】
製造例3
イソプロピルアルコール100ml中に、上記製造例で得られたシリカ多孔体B1gとトリエチレンテトラミン2.00gを添加して24時間室温にて混合した後濾過を行った。得られた固形物を40℃で24h乾燥する事により、本発明のアルデヒド吸着剤C1.67gを得た。
【0046】
得られたアルデヒド吸着剤A、B及びCを公知の窒素吸着等温線から平均細孔径を算出したところ(BJH法)アルデヒド吸着剤Aの平均細孔径は1.65nm、アルデヒド吸着剤Bの平均細孔径Bは3.42nm、アルデヒド吸着剤Cの平均細孔径は2.35nmであった。
【0047】
公知の窒素吸着法によりアルデヒド吸着剤A、Bの比表面積(BET法)、細孔容量(BJH法)を算出したところアルデヒド吸着剤Aの比表面積は659.6m/g、細孔容量は0.288cm/gであった。アルデヒド吸着剤Bの比表面積は783.2m/g、細孔容積は0.680cm/gであった。またアルデヒド吸着剤Cの比表面積683.1m/g、細孔容積は0.350cm/gであった。
【0048】
得られたアルデヒド吸着剤A、B及びCのX線回折パターンを測定した。結果をそれぞれ図1、図2及び図3に示す。
【0049】
図1、図2、図3のようにアルデヒド吸着剤A、B及びCは、d間隔が2nmより大きい位置に少なくとも1つのピークを有するX線回折パターンを有し、d間隔が2nmより大きい位置にある最大ピークの50%より大きい相対強度のピークを有さなかった。
【0050】
100℃〜600℃の熱重量測定よりアルデヒド吸着剤A、B及びCのアミノ基及びイミノ基含有量を、前述の計算式を用いて算出した。なお、式に代入する数値は、アルデヒド吸着剤A、BについてはM.W.=58.10、アミノ基数=1を、アルデヒド吸着剤CについてはM.W.=146.2、アミノ基=2、イミノ基数=2を用いた。前述の計算式を用いて算出した結果、アルデヒド吸着剤Aのアミノ基含有量は1.32mmol/g、アルデヒド吸着剤Bのアミノ基含有量は1.67mmol/g、アルデヒド吸着剤Cのイミノ基含有量は10.9mmol/gであった。
【0051】
比較例1
イソプロピルアルコールの代わりに水を使用した以外は製造例1と同様な方法にて、比較品の吸着剤X1.11gを得た。
【0052】
比較例2
イソプロピルアルコールの代わりに水を使用した以外は製造例2と同様な方法にて、比較品の吸着剤Y1.13gを得た。
【0053】
吸着剤X、YのX線回折パターンを測定した。結果をそれぞれ図4、図5に示す。
【0054】
図4、図5に示すように吸着剤X、Yはd間隔が2nmより大きい位置にピークを有さないX線回折パターンを有していた。
【0055】
吸着剤X、Yを公知の窒素吸着法(BJH法)により細孔分布を測定し、平均細孔径を算出したところ吸着剤Xの平均細孔径は1.62nm、吸着剤Yの平均細孔径は3.51nmであった。
【0056】
公知の窒素吸着法により吸着剤X、Yの比表面積(BET法)、細孔容量(BJH法)を算出した。
【0057】
吸着剤Xの比表面積は670.2m/g、細孔容積は0.291cm/gであった。吸着剤Yの比表面積は800.1m/g、細孔容積は0.682cm/gであった。
【0058】
100℃〜600℃の熱重量測定よりアルデヒド吸着剤X、Yのアミノ基及びイミノ基含有量を、前述の計算式を用いて算出した。なお、式に代入する数値は、アルデヒド吸着剤X、YについてはM.W.=58.10、アミノ基数=1を用いた。前述の計算式を用いて算出した結果、吸着剤Xのアミノ基及び/又はイミノ基含有量は1.29mmol/g、吸着剤Yのアミノ基及び/又はイミノ基含有量は1.52mmol/gであった。
【0059】
アルデヒド吸着試験
試験例1 ホルムアルデヒド吸着試験
製造例1、製造例2、製造例3、比較例1、比較例2で得られたアルデヒド吸着剤A、アルデヒド吸着剤B、アルデヒド吸着剤C、吸着剤X、吸着剤Y、活性炭(平均細孔径:0.8nm、比表面積:800m/g、細孔容量:0.4cm/g、アミノ基及び/又はイミノ基含量:0mmol/g)を用いて下記のアルデヒド吸着試験を行った。
(アルデヒド吸着試験)
50ppmのアルデヒド(ホルムアルデヒド)を含む空気2.5Lを入れた「におい袋」(袋容量:3L、袋サイズ:250×250mm、材質:ポリエステルフィルム/アズワン株式会社製)にアルデヒド吸着剤100mgを投入し、25℃で30分静置後、におい袋内のヘッドスペースのアルデヒド(ホルムアルデヒド)濃度をガス検知管(株式会社ガステック製)にて測定した。濃度測定後、におい袋内の空気を新しく50ppmアルデヒド(ホルムアルデヒド)を含む空気に交換し、25℃で30分間静置後、検知管にてアルデヒド(ホルムアルデヒド)吸着濃度を測定した。この操作を繰り返し、合計3回の吸着量を算出した。(数式1参照。)
【0060】
【数1】

【0061】
【表1】

【0062】
表1に示すように本発明のアルデヒド吸着剤A、アルデヒド吸着剤B、アルデヒド吸着剤Cのホルムアルデヒド吸着量はそれぞれ0.20mmol/g、0.31mmol/g、0.26mmol/gであった。一方、吸着剤X、吸着剤Y、活性炭のホルムアルデヒド吸着量はそれぞれ0.11mmol/g、0.09mmol/g、0.06mmol/gであった。
【0063】
試験例2 アセトアルデヒド吸着試験
製造例1、製造例2、製造例3、比較例1、比較例2で得られたアルデヒド吸着剤A、アルデヒド吸着剤B、アルデヒド吸着剤C、吸着剤X、吸着剤Y、活性炭(平均細孔径:0.8nm、比表面積:800m/g、細孔容量:0.4cm/g、アミノ基及び/又はイミノ基含量:0mmol/g) を用いて下記のアルデヒド吸着試験を行った。
(アルデヒド吸着試験)
50ppmのアルデヒド(アセトアルデヒド)を含む空気2.5Lを入れた「におい袋」(袋容量:3L、袋サイズ:250×250mm、材質:ポリエステルフィルム/アズワン株式会社製)にアルデヒド吸着剤100mgを投入し、25℃で30分静置後、におい袋内のヘッドスペースのアルデヒド(アセトアルデヒド)濃度をガス検知管(株式会社ガステック製)にて測定した。濃度測定後、におい袋内の空気を新しく50ppmアルデヒド(アセトアルデヒド)を含む空気に交換し、25℃で30分間静置後、検知管にてアルデヒド(アセトアルデヒド)吸着濃度を測定した。この操作を繰り返し、合計3回の吸着量を算出した。(数式1参照。)
【0064】
【表2】

【0065】
表2に示すように本発明のアルデヒド吸着剤A、アルデヒド吸着剤B、アルデヒド吸着剤Cのアセトアルデヒド吸着量はそれぞれ0.12mmol/g、0.17mmol/g、0.15mmol/gであった。一方、吸着剤X、吸着剤Y、活性炭のアセトアルデヒド吸着量はそれぞれ0.06mmol/g、0.04mmol/g、0.03mmol/gであった。
試験例3 プロピオンアルデヒド吸着試験
製造例1、製造例2、製造例3、比較例1、比較例2で得られたアルデヒド吸着剤A、アルデヒド吸着剤B、アルデヒド吸着剤C、吸着剤X、吸着剤Y、活性炭(平均細孔径:0.8nm、比表面積:800m/g、細孔容量:0.4cm/g、アミノ基及び/又はイミノ基含量:0mmol/g)を用いて下記のアルデヒド吸着試験を行った。
(アルデヒド吸着試験)
50ppmのアルデヒド(プロピオンアルデヒド)を含む空気2.5Lを入れた「におい袋」(袋容量:3L、袋サイズ:250×250mm、材質:ポリエステルフィルム/アズワン株式会社製)にアルデヒド吸着剤100mgを投入し、25℃で30分静置後、におい袋内のヘッドスペースのアルデヒド(プロピオンアルデヒド)濃度をガス検知管(株式会社ガステック製)にて測定した。濃度測定後、におい袋内の空気を新しく50ppmアルデヒド(プロピオンアルデヒド)を含む空気に交換し、25℃で30分間静置後、検知管にてアルデヒド(プロピオンアルデヒド)吸着濃度を測定した。この操作を繰り返し、合計3回の吸着量を算出した。(数1参照。)
【0066】
【表3】

【0067】
表3に示すように本発明のアルデヒド吸着剤A、アルデヒド吸着剤B、アルデヒド吸着剤Cのプロピオンアルデヒド吸着量はそれぞれ0.08mmol/g、0.13mmol/g、0.12mmol/gであった。一方、吸着剤X、吸着剤Y、活性炭のプロピオンアルデヒド吸着量はそれぞれ0.04mmol/g、0.03mmol/g、0.02mmol/gであった。
試験例 ブチルアルデヒド吸着試験
製造例1、製造例2、製造例3、比較例1、比較例2で得られたアルデヒド吸着剤A、アルデヒド吸着剤B、アルデヒド吸着剤C、吸着剤X、吸着剤Y、活性炭(平均細孔径:0.8nm、比表面積:800m/g、細孔容量:0.4cm/g、アミノ基及び/又はイミノ基含量:0mmol/g)を用いて下記のアルデヒド吸着試験を行った。
(アルデヒド吸着試験)
50ppmのアルデヒド(ブチルアルデヒド)を含む空気2.5Lを入れた「におい袋」(袋容量:3L、袋サイズ:250×250mm、材質:ポリエステルフィルム/アズワン株式会社製)にアルデヒド吸着剤100mgを投入し、25℃で30分静置後、におい袋内のヘッドスペースのアルデヒド(ブチルアルデヒド)濃度をガス検知管(株式会社ガステック製)にて測定した。濃度測定後、におい袋内の空気を新しく50ppmアルデヒド(ブチルアルデヒド)を含む空気に交換し、25℃で30分間静置後、検知管にてアルデヒド(ブチルアルデヒド)吸着濃度を測定した。この操作を繰り返し、合計3回の吸着量を算出した。(数式1参照。)
【0068】
【表4】

【0069】
表4に示すように本発明のアルデヒド吸着剤A、アルデヒド吸着剤B、アルデヒド吸着剤Cのブチルアルデヒド吸着量はそれぞれ0.07mmol/g、0.09mmol/g、0.08M/gであった。一方、吸着剤X、吸着剤Y、活性炭のブチルアルデヒド吸着量はそれぞれ0.03mmol/g、0.02mmol/g、0.01mmol/gであった。
試験例5 クロトンアルデヒド吸着試験
製造例1、製造例2、製造例3、比較例1、比較例2で得られたアルデヒド吸着剤A、アルデヒド吸着剤B、アルデヒド吸着剤C、吸着剤X、吸着剤、活性炭(平均細孔径:0.8nm、比表面積:800m/g、細孔容量:0.4cm/g、アミノ基及び/又はイミノ基含量:0mmol/g)Yを用いて下記のアルデヒド吸着試験を行った。
(アルデヒド吸着試験)
50ppmのアルデヒド(クロトンアルデヒド)を含む空気2.5Lを入れた「におい袋」(袋容量:3L、袋サイズ:250×250mm、材質:ポリエステルフィルム/アズワン株式会社製)にアルデヒド吸着剤100mgを投入し、25℃で30分静置後、におい袋内のヘッドスペースのアルデヒド(クロトンアルデヒド)濃度をガス検知管(株式会社ガステック製)にて測定した。濃度測定後、におい袋内の空気を新しく50ppmアルデヒド(クロトンアルデヒド)を含む空気に交換し、25℃で30分間静置後、検知管にてアルデヒド(クロトンアルデヒド)吸着濃度を測定した。この操作を繰り返し、合計3回の吸着量を算出した。(数1参照。)
【0070】
【表5】

【0071】
表5に示すように本発明のアルデヒド吸着剤A、アルデヒド吸着剤B、アセトアルデヒド吸着剤Cのクロトンアルデヒド吸着量はそれぞれ0.04mmol/g、0.06mmol/g、0.05mmol/gであった。一方、吸着剤X、吸着剤Y、活性炭のアセトアルデヒド吸着量はそれぞれ0.02mmol/g、0.01mmol/g、0.006mmol/gであった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のアルデヒド吸着剤により、従来にない優れたアルデヒド類の吸着・除去が可能となりその産業上の利用価値は大である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1はアルデヒド吸着剤AのX線回折パターンを示す図である。
【図2】図2はアルデヒド吸着剤BのX線回折パターンを示す図である。
【図3】図3はアルデヒド吸着剤CのX線回折パターンを示す図である。
【図4】図4は吸着剤XのX線回折パターンを示す図である。
【図5】図5は吸着剤YのX線回折パターンを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1nmより大きい平均細孔径を有するシリカ多孔体と1.0〜20mmol/g(アルデヒド吸着剤)のアミノ基及び/又はイミノ基を有する化合物を含有し、d間隔が2nmより大きい位置に少なくとも1つのピークを有するX線回折パターンを有するアルデヒド吸着剤
【請求項2】
シリカ多孔体とアミノ基及び/又はイミノ基を有する化合物が非水系溶媒中で混合して製造されたものである事を特徴とするアルデヒド吸着剤

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−82786(P2009−82786A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253319(P2007−253319)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】