説明

アルミナセメント組成物及びそれを用いた不定形耐火物

【課題】
高温及び低温において良好な作業性、並びに、強度発現性を有するアルミナセメント組成物及びそれを用いた不定形耐火物を提供する。
【解決手段】
添加剤としてカルボン酸又はその塩、及び炭酸塩を含み、リチウムをLi2O換算で0.005〜0.05質量%含有し、鉱物組成がCaO・Al2O3、CaO・2Al2O3、Al2O3及び非晶質を含むことを特徴とするアルミナセメント組成物。該アルミナセメント組成物と耐火骨材を含有してなる不定形耐火物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、高炉出銑樋、混銑車、取鍋、及びタンディッシュなどの内張材に使用される不定形耐火物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミナセメントを配合した不定形耐火物は、気温の変動により、可使時間や硬化時間が変動しやすく、結果として養生した後の強度発現、作業性が安定しないという課題があった。
【0003】
具体的には、アルミナセメントを配合した不定形耐火物は、冬場等、気温が低い場合、硬化時間が遅くなり強度発現が遅れる為、所定の強度を得るために長期間の養生を要するという課題があった。
【0004】
一方、夏場等、気温が高い場合、可使時間や硬化時間が早くなり、作業性が得られずに流し込み施工の際などに充填不良を起こすといった課題があった。
【0005】
そこでこれらの課題を解決するため、冬場は不定形耐火物に硬化促進剤を添加し、夏場は硬化遅延剤を添加し、作業性、可使時間、硬化時間、及び強度のバランスを取ることが行われていた。
【0006】
しかしながら、冬場に使用するために硬化促進剤を添加して硬化時間を調整した不定形耐火物を、例えば、春頃のように、想定より高い気温の時に施工すると、可使時間が短く作業性が確保できず、場合によっては混練中、ミキサー内で硬化するという課題があった。
【0007】
また、夏場に使用するために硬化遅延剤を添加して、硬化時間を調整した不定形耐火物を、例えば、秋頃のように、想定より低い気温の時に施工すると、硬化時間が長くなり、脱枠や乾燥等、養生後のスケジュールが遅れるなどの課題があった。
【0008】
これらの課題を解決するため、リチウムアルミネートを含有してなるアルミナセメント、リチウムアルミネートを含有したアルミナセメントと特定の添加剤とを含有してなるアルミナセメント組成物、特定の鉱物組成と添加剤からなるアルミナセメント組成物、及びアルカリ金属アルミン酸塩を含有してなるアルミナセメント組成物などが提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。また、アルミナセメントの鉱物組成と添加剤の種類に関する基本特性を述べた文献として、非特許文献1が挙げられる。
【特許文献1】特開2002−284549
【特許文献2】特開2003−119067
【特許文献3】特開2005−162566
【特許文献4】特開2005−112709
【非特許文献1】‘HIGH ALUMINA CEMENT ANDCONCRETES.’,T.D.ROBSON,CONTRACTOR S RECORD LIMITED,1962
【0009】
本発明の目的は、気温の変動の影響が少なく、品質の安定化が図れるアルミナセメント組成物を提供することである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、アルミナセメント組成物において、カルボン酸又はその塩、及び炭酸塩を含み、リチウム成分をLi2O換算で0.005〜0.05質量%に調整すると、不定形耐火物に使用した場合、気温の変動の影響が少なく、品質の安定化が図れるアルミナセメント組成物が得られるという知見を得て本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明は、添加剤としてカルボン酸又はその塩、及び炭酸塩を含み、リチウムをLi2O換算で0.005〜0.05質量%含有することを特徴とするアルミナセメント組成物であり、該アルミナセメントの鉱物組成がCaO・Al2O3、CaO・2Al2O3、Al2O3及び非晶質を含むことを特徴とするアルミナセメント組成物であり、該アルミナセメント組成物中のアルミナセメントクリンカーの化学成分が、CaO25〜33質量%、Al2O3 66〜75質量%であり、アルミナセメントクリンカー50〜70質量部に対してアルミナを30〜50質量部含むことを特徴とするアルミナセメント組成物であり、該アルミナセメント組成物に含まれるカルボン酸及び/又はその塩がクエン酸及び/又はクエン酸塩、炭酸塩が炭酸ナトリウムであることを特徴とするアルミナセメント組成物であり、該アルミナセメント組成物と耐火骨材を含有してなる不定形耐火物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアルミナセメント組成物及びそれを使用した不定形耐火物を使用すれば、気温の変動による可使時間や強度発現性の変動が少ないという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るアルミナセメント組成物は、赤ボーキサイト等の天然原料をバイヤープロセス等の精製法により精製して得られた高純度アルミナなどのアルミナ源、石灰石や生石灰などのカルシア源及び/又は炭酸リチウムなどのリチウム源を所定の成分割合になるように配合し、電気炉、反射炉、縦型炉、平炉、シャフトキルン、及びロータリーキルンなどの設備で溶融又は焼成して得られたクリンカーを粒度調整したものとアルミナ源、カルボン酸又はその塩、及び炭酸塩を含む添加剤及び/又はリチウム源とを混合、及び/又は混合粉砕して得られるものである。また、本発明に使用するアルミナ源及びカルシア源には、リチウム成分が含まれる場合がある。その際には、アルミナ源及び/又はカルシア源中の各成分の含有量を予め測定し、所定の成分割合になるように配合を適宜決定する。
【0014】
本発明に係るアルミナセメント組成物は、鉱物組成としてCaO・Al2O3、CaO・2Al2O3、Al2O3及び非晶質を含有するものであり、その他の成分として、アルミナセメントクリンカー製造時に生成される可能性のある12CaO・7Al2O3、及び不純物に由来する、2CaO・Al2O3・SiO2、4CaO・Al2O3・Fe2O3、CaO・TiO2等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。
【0015】
本発明に係るアルミナセメント組成物に含有するアルミナセメントクリンカーの化学成分は、CaO 25〜33質量%、Al2O3 66〜75質量%であることが好ましい。CaOが25質量%より小さい場合、強度発現性が低下する恐れがある。また、CaOが33質量%より大きい場合、アルミナセメント組成物の水和反応が活発になり適度な可使時間を得られない場合がある。
【0016】
本発明に係るアルミナセメント組成物中のリチウム成分はLi2O換算で0.005〜0.05質量%であることが好ましく、0.01〜0.03質量%であることがより好ましい。本発明に係るアルミナセメント組成物を使用した不定形耐火物を水と混練した場合、含有するリチウムによりカルシウムアルミネート鉱物の水和反応が促進されて、低温条件下での強度発現の遅延を解消することが可能である。しかし、リチウム含有量がLi2O換算で0.005質量%より少ない場合、本発明の効果は得られず、一方、含有量が0.05質量%より多い場合、高温度条件下において、水和反応が早くなり過ぎ硬化異常を起こす場合がある。
【0017】
本発明に係わるアルミナセメント組成物に含まれる添加剤は、カルボン酸又はその塩、及び炭酸塩を含有するものである。カルボン酸又はその塩、及び炭酸塩の添加によりカルシウムアルミネート鉱物の水和反応を抑制及び/又は遅延させることで、該アルミナセメント組成物を使用した不定形耐火物の高温度条件下での適度な可使時間を確保し作業性を得ることができる。カルボン酸又はその塩、及び炭酸塩の種類はカルシウムアルミネート鉱物の水和反応の抑制、遅延効果及び入手のし易さから、カルボン酸及び/又はその塩がクエン酸及び/又はクエン酸塩、炭酸塩が炭酸ナトリウムであることが好ましい。
【0018】
本発明に係るアルミナセメント組成物は、アルミナを含有するものである。アルミナとしては、バイヤープロセス等によって高純度化処理された水酸化アルミニウムをロータリーキルンにて焼成して得られる精製アルミナであって、Al2O3を90質量%以上含有する高純度アルミナ、一般に、高純度アルミナ、バイヤーアルミナ、易焼結アルミナ、又は軽焼アルミナと呼ばれるものを用いることが好ましい。アルミナを添加する目的は、不定形耐火物に、高耐火性、高温強度性及び体積安定性を付与する為である。アルミナとアルミナセメントクリンカーと一緒に混合粉砕しても良く、アルミナセメントクリンカーを粉砕したものと後で混入しても良い。アルミナセメントクリンカーとアルミナの配合割合は、アルミナセメントクリンカー50〜70質量部に対してアルミナを30〜50質量部配合するのが好ましい。アルミナセメントクリンカーの配合割合が50質量部より小さい場合、強度発現性が低下してしまう恐れがある。また、アルミナセメントクリンカーの配合割合が70質量部より大きい場合、耐火性、高温強度性及び体積安定性が低下する恐れがある。
【0019】
アルミナセメント組成物及びクリンカーの粉砕は特に限定されるものではなく、例えばチューブミル、振動ミル、ジェットミル、及びローラーミル等の粉砕機が使用可能である。
【0020】
粉砕したアルミナセメントのブレーン比表面積は、3000〜10000cm2/gであることが好ましく、4000〜7000cm2/gがより好ましい。3000cm2/g未満では強度発現性が低下する場合があり、一方10000cm2/gを超えると不定形耐火物の流動性が低下し、作業性の確保が難しくなる場合がある。
【0021】
本発明では、アルミナセメント組成物の流動性を向上させたり、可使時間を調整するためにその他の添加剤を併用することが可能である。その他の添加剤としては糖類、リグニンスルホン酸類、ホウ酸類、リン酸類、硫酸塩、及びケイフッ化物からなる群から選ばれた1種又は2種以上が挙げられ、これらのうち、ホウ酸類の添加が好ましい。添加剤の種類の組合わせは、適宜選択可能であって特に限定されるものではなく、材料配合に合わせて組合わせを変えることが可能である。
【0022】
本発明に係る糖類は、特に限定されるものではなく、単糖や多糖が使用可能であるが、グルコース、フルクトース、デキストリン、及びショ糖等が一般的である。
【0023】
リグニンスルホン酸類としては、リグニンスルホン酸又はそのナトリウム塩、カリウム塩、及びカルシウム塩等が挙げられ、入手しやすさからナトリウム塩の使用が好ましい。
【0024】
ホウ酸類としては、ホウ酸又はそのナトリウム塩、カリウム塩、及びカルシウム塩等が挙げられ、入手しやすさからホウ酸の使用が好ましい。
【0025】
リン酸類としては、ヘキサメタリン酸、トリポリリン酸、ウルトラリン酸、ピロリン酸、及びオルトリン酸又はそれらのナトリウム塩、カリウム塩、及びカルシウム塩等が挙げられ、入手しやすさからナトリウム塩の使用が好ましい。
【0026】
硫酸塩としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、及び硫酸カルシウムなどが挙げられ、入手しやすさから硫酸ナトリウムの使用が好ましい。
【0027】
ケイフッ化物としては、ケイフッ化ナトリウム、ケイフッ化カリウム、及びケイフッ化マグネシウムなどが挙げられ、入手しやすさからケイフッ化ナトリウムの使用が好ましい。
【0028】
本発明で使用する添加剤の純度は、特に限定されるものではないが、現在、工業的に精製されているものの使用が可能であり、純度が80質量%以上のものの使用が好ましい。添加剤の粒度は、水に溶解しやすいように細かい程好ましく、100メッシュ以下が好ましく、200メッシュ以下がより好ましい。また、添加剤の配合量は、可使時間や硬化時間の温度依存性が少ないという本発明の効果を低下させないために、アルミナセメント100質量部に対して、0.1〜2質量部が好ましい。0.1質量部未満では、アルミナセメント組成物の流動性が向上しなかったり、可使時間が短かったりする場合があり、一方、2質量部を超えると可使時間や硬化時間が長くなり過ぎる場合がある。
【0029】
本発明で使用する添加剤は、あらかじめアルミナセメント組成物にプレミックスすることが可能であり、施工時に別途に投入したり、混合したりする手間を省くことが可能である。本発明において、添加剤の混合方法は、特に限定されるものではなく、添加剤を所定の割合になるように、あらかじめ粉砕したアルミナセメント組成物に配合し、V型ブレンダー、コーンブレンダー、ナウタミキサ、パン型ミキサ、及びオムニミキサなどの混合機を用いて均一混合するか、あるいは、所定の割合になるようアルミナセメントクリンカーに配合し、振動ミル、チューブミル、ボールミル、及びローラーミルなどの粉砕機で混合粉砕することも可能である。
【0030】
本発明では、アルミナセメント組成物と耐火骨材、必要に応じてそれに水を混合して不定形耐火物とする。
【0031】
耐火骨材は、溶融マグネシア、焼結マグネシア、天然マグネシア、及び軽焼マグネシア等のマグネシア、溶融マグネシアスピネルや焼結マグネシアスピネルなどのマグネシアスピネル、溶融アルミナ、焼結アルミナ、軽焼アルミナ、及び易焼結アルミナ等のアルミナ、シリカヒューム、コロイダルシリカ、軽焼アルミナ、及び易焼結アルミナ等の超微粉、その他、溶融シリカ、焼成ムライト、酸化クロム、ボーキサイト、アンダルサイト、シリマナイト、シャモット、ケイ石、ロー石、粘土、ジルコン、ジルコニア、ドロマイト、パーライト、バーミキュライト、煉瓦屑、陶器屑、窒化珪素、窒化ホウ素、炭化珪素、及び窒化珪素鉄等が使用可能である。さらに、アルミナとジルコニアを溶融して得られる、耐熱スポーリング性を向上させたアルミナ・ジルコニアクリンカー等の使用も可能である。
【0032】
骨材の粒度は、通常、5 〜3mm、3 〜1mm、1mm下、200メッシュ下、及び325メッシュ下のサイズのものや超微粉を、要求物性に応じて適宜配合して用いるのが一般的である。
【0033】
不定形耐火物の製造方法は特に限定されるものではなく、通常の製造方法に準じ、各材料を所定の割合になるように配合し、V型ブレンダー、コーンブレンダー、ナウタミキサ、パン型ミキサ、及びオムニミキサなどの混合機を用いて均一混合するか、あるいは、所定の割合で混練り施工する際、混練り機に直接秤込むことも可能である。
【0034】
不定形耐火物に流動性の向上、高温での強度を付与する目的で、超微粉を併用することは好ましい。超微粉とは、粒径10μm以下の粒子が80質量%以上占める耐火性微粉末である。平均粒子径が1μm以下で、BET法による比表面積が10m2/g以上のものが、不定形耐火物に配合した際、流動性が確保でき、高強度を発現するため好ましい。具体的には、シリカヒューム、コロイダルシリカ、易焼結アルミナ、非晶質シリカ、ジルコン、炭化珪素、窒化珪素、酸化クロム、及び酸化チタン等の無機微粉末が使用可能であり、このうち、シリカヒューム、コロイダルシリカ、及び易焼結アルミナの使用が好ましい。
【0035】
不定形耐火物に、アルカリ水と反応し水素ガスを発生する金属アルミニウムや金属マグネシウムなどの発泡剤や、ビニロンファイバー、ポリプロピレンファィバー、及び塩化ビニールファイバーなどの有機繊維、窒素ガス発生分解繊維、乳酸アルミニウムなどの塩基性コロイド、並びに、フミン酸類等の爆裂防止材を必要に応じて、硬化体乾燥時の爆裂防止の目的で、配合することも可能である。
【0036】
従来からセメントの流動性、可使時間、硬化時間、及び強度発現性等の性状を改善する目的で使用されている、メラミン類、ナフタレンスルホン酸類、ポリカルボン酸類、及びホルムアルデヒドの縮合物等の界面活性剤、並びに、減水剤等を必要に応じて配合することも可能である。
【0037】
不定形耐火物が水分と耐火骨材に分離する材料分離を避けるため、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ポリアクリルアミド変性物又はその共重合体、及びポリビニルアルコールなどの増粘剤を配合することも可能である。
【0038】
不定形耐火物を製造する際に使用する水の量は、通常の流し込みが可能な程度に設定されるもので、粒度構成や耐火骨材の気孔率等によって大きく影響を受けるが、概ね、アルミナセメント又はアルミナセメント組成物と耐火骨材等の合計100質量部に対して、10質量%以下が好ましい。
【実施例】
【0039】
(実験例1)
アルミナ源、カルシア源及びリチウム源の添加量を調整して配合を行い、電気炉にて1800℃で溶融し、高圧冷却エアーにより溶融物を冷却してアルミナセメントクリンカーを作製した。表1に示す混合割合のアルミナセメントクリンカーと焼結アルミナの他、クエン酸ナトリウム0.4質量部及び炭酸ナトリウム0.3質量部を混合後、ボールミルで粉砕して、ブレーン値が5500cm2/gになるよう調整し、アルミナセメント組成物を作製した。作製したアルミナセメントクリンカー及びアルミナセメント組成物の鉱物組成の測定結果を表1に示す。
【0040】
<使用材料>
アルミナ源:焼結アルミナ、市販品
カルシア源:生石灰、市販品
リチウム源:炭酸リチウム、試薬特級、石津製薬社製
焼結アルミナ:昭和電工社製商品名「AL-170」
クエン酸ナトリウム:試薬鹿級、関東化学社製
炭酸ナトリウム:試薬鹿級、関東化学社製
【0041】
<測定方法>
(1)アルミナセメントクリンカー中のCaO及びAl2O3含有量:蛍光X線分析装置(理学社製、RIX-3000)を用い、ビード法及びブリケット法にて各種化学成分の定量を行った。
(2)リチウム含有量:アルミナセメント組成物1.0gを硝酸、ふっ酸、過塩素酸で蒸発乾固させ、残渣を塩酸で溶解させる。この溶液の一部を採取し、高周波誘導プラズマ発光分光分析装置(セイコーインスツルメンツ社製、SPS・1700R)を用いてリチウム量を検出し、次式にてLi2O量に換算し、アルミナセメント組成物中のLi2O含有量を求めた。
Li2O含有量(質量%)=(リチウム検出量(μg)×2.15253×100)/試料量(μg)
(3) 鉱物組成:日本電子社製「JDX−3500」を用い、粉末X線回折法により測定した回折図形をリートベルト法によって解析・定量した。
非晶質:既知量のα−Quartzと試料の混合粉末を、日本電子社製「JDX−3500」を用いてX線回折法により測定し、回折図形をリートベルト法によって解析・定量した。
【0042】
【表1】

【0043】
(実験例2)
実験例1で作製した各種アルミナセメント組成物を7質量部、耐火骨材として電融アルミナ45質量部、焼結アルミナ41.5質量部、添加材として、マグネシア6.0質量部、シリカフラワー0.5質量部及びビニロン繊維0.3質量部、並びに、添加剤として、トリポリ燐酸ナトリウム0.005質量部及びホウ酸0.03質量部を配合して、不定形耐火物を製造した。次に、水を不定形耐火物に対して、6.0質量%加えて、モルタルミキサーにて5分間混練りした後の特性を評価した。試験は温度による影響を調査する為、5℃、20℃及び35℃に調整した恒温室内にて実施した。5℃条件での試験結果を表2に、20℃条件での試験結果を表3に、35℃条件での試験結果を表4に示す。
【0044】
<使用材料>
(1)焼結アルミナ:アルマティス社製商品名「T−60」、日本軽金属社製商品名「MM−22B」、昭和電工社製商品名「A−172」
(2)電融アルミナ:日本軽金属社製商品名「ニッケイランダムWAG1」及び「ニッケイランダムNR200F−T」
(3)シリカフラワー:エルケム社製商品名「971−U」
(4)マグネシア:宇部化学社製商品名「U99S」
(5)ビニロン繊維:クラレ社製商品名「ビニロン」
(6)トリポリ燐酸ナトリウム:関東化学社製試薬1級
(7)ほう酸:石津製薬社製試薬1級
(8)水:本試験には混練水として,JISK0557のA4種に相当する水を使用

【0045】
<評価方法>
(1)フロー値:JIS R 2521に準じて測定。混練直後、及び混練開始から恒温室内に混練物を60分間放置した後、15回タッピングした場合のフロー値を測定した。
(2)可使時間:恒温室内で、混練物をポリエチレン製の袋に移し取り、触指にて硬化するまでに要した時間を測定し、可使時間とした。
(3) 硬化時間:恒温室内にて混練物を入れたポリビーカーを断熱容器に入れ、測温抵抗体を差し込み、温度記録計を用いて発熱曲線を測定し、注水から発熱曲線がピークに達するまでの時間を測定して硬化時間とした。
(4)養生圧縮強度:JIS R 2521に準じて測定。40×40×160mmの型枠に混練物を詰め、恒温室内で24時間養生した後、試験片の圧縮強度を測定した。
(5) 乾燥圧縮強度:養生強度測定用供試体を、110℃にて24時間乾燥後、室温まで放冷し、圧縮強度を測定した。
【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
表2〜4に示すように、本発明のアルミナセメント組成物を使用した不定形耐火物は、低温及び高温の条件下であっても流動性に優れ、適度な可使時間及び良好な強度を得ることができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
添加剤としてカルボン酸又はその塩、及び炭酸塩を含み、リチウムをLi2O換算で0.005〜0.05質量%含有することを特徴とするアルミナセメント組成物。
【請求項2】
アルミナセメント組成物の鉱物組成がCaO・Al2O3、CaO・2Al2O3、Al2O3及び非晶質を含むことを特徴とする請求項1記載のアルミナセメント組成物
【請求項3】
アルミナセメントクリンカーの化学成分が、CaO 25〜33質量%、Al2O366〜75質量%であり、アルミナセメントクリンカー50〜70質量部に対してアルミナを30〜50質量部含むことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のアルミナセメント組成物。
【請求項4】
カルボン酸及び/又はその塩がクエン酸及び/又はクエン酸塩、炭酸塩が炭酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項記載のアルミナセメント組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項記載のアルミナセメント組成物と耐火骨材を含有してなる不定形耐火物。



【公開番号】特開2009−96658(P2009−96658A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268704(P2007−268704)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】