説明

アルミナ分散液の製造方法

【課題】 アルミナ水和物粉体を良好に分散したアルミナ分散液を製造する方法を提供する。
【解決手段】 アルミナ水和物粉体と水系分散媒体とを含有するアルミナ分散液の製造方法であって、前記アルミナ水和物粉体を、分散装置内の水系分散媒体に投入する投入工程と、前記水系分散媒体を前記分散装置が備える攪拌手段で攪拌することにより、前記アルミナ水和物粉体を前記水系分散媒体に分散する分散工程とを有し、前記アルミナ水和物が投入された水系分散媒体のpHは、3.0以上、6.0以下であり、前記攪拌手段の攪拌の実効消費動力は、0.01kw/m以上、0.2kw/m以下であることを特徴とするアルミナ分散液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミナ分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、インクなどの記録用の液体を種々の作動原理により飛翔させて紙などの記録媒体に付着させて画像、文字などの記録を行うものである。近年、銀塩写真や製版方式の多色印刷と比較して遜色のない画像を、手軽にインクジェット記録方式で出力することが求められるようになっている。
【0003】
インクジェット記録などに用いられるインクジェット記録媒体として、支持体上に、無機顔料およびバインダーなどからなる多孔質性インク受容層を有するものがある。多孔質性インク受容層を有するインクジェット記録媒体は、無機微粒子を支持体に塗布することによって得ることができる。無機微粒子としては、アルミナ水和物が好ましく用いられている。多孔質性インク受容層は、通常、アルミナ水和物粉体を水系分散媒体中に分散したアルミナ分散液と、ポリビニルアルコール系のバインダーからなる塗工液とを支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。この際に使用するアルミナ分散液は、分散タンク内の水系分散媒体にアルミナ水和物粉体を投入し、一定時間攪拌を行うことで分散していた(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000―071609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、近年の更なる高画質化に伴い、特許文献1に記載されているような従来の分散方法は、アルミナ水和物粉体の水系分散媒体中での分散安定性の点で、更なる改善が求められている。分散液のアルミナ水和物の分散が良好でない場合、得られる記録媒体に均一に塗布しにくく、近年要求されているような高画質化に適した記録媒体を得ることが困難なためである。
【0005】
従って、本発明の目的は、アルミナ水和物粉体を良好に分散したアルミナ分散液を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。
【0007】
即ち、本発明は、アルミナ水和物粉体と水系分散媒体とを含有するアルミナ分散液の製造方法であって、前記アルミナ水和物粉体を、分散装置内の水系分散媒体に投入する投入工程と、前記水系分散媒体を前記分散装置が備える攪拌手段で攪拌することにより、前記アルミナ水和物粉体を前記水系分散媒体に分散する分散工程とを有し、前記アルミナ水和物が投入された水系分散媒体のpHは、3.0以上、6.0以下であり、前記攪拌手段の攪拌の実効消費動力は、0.01kw/m以上、0.2kw/m以下であることを特徴とするアルミナ分散液の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アルミナ水和物粉体を良好に分散したアルミナ分散液を製造する製造方法を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のアルミナ分散液の製造方法を詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明のアルミナ分散方法に用いる分散装置の概略図の一例である。本分散装置は、攪拌モーター3により駆動する回転翼式攪拌機2を備えた分散タンク1と、アルミナ水和物粉体投入ホッパー4と、粉体輸送装置6と、粉体投入ライン5と、タンク排出バルブ7を具備している。
【0011】
まず、投入工程において、粉体投入ホッパー4に入れられたアルミナ水和物粉体は、粉体輸送装置6の作用で粉体投入ライン5を介して、分散タンク1内に投入される。分散装置内の分散タンク1内には、所定のpHに調整された水系分散媒体が存在している。投入されるアルミナ水和物粉体は、一定の攪拌状態の水系分散媒体中に、一定の割合で供給することが好ましい。アルミナ水和物粉体の水系分散媒体への1分間当たりの投入量は、アルミナ水和物粉体の水系分散媒体への総投入量の30質量%以下に制御することが好ましい。ここで、総投入量とは、最終的にアルミナ分散液を得るまでに水系分散媒体に投入する、アルミナ水和物粉体の総質量のことである。1分間当たりの投入量が総投入量の30質量%を超えると、分散が良好でなくなる傾向となる。投入量を適正に制御する投入装置として、吸引輸送方式の粉体投入装置を使用することが好ましい。定量式の投入装置としては、例えばテーブルフィーダー、スクリューフィーダー、振動フィーダーが例示される。しかし、アルミナ水和物粉体は微粒で非常に凝集性が強く、フラッシングを発生しやすいため、かかる投入装置では、安定性に課題がある。それに対して、吸引輸送方式の粉体投入装置は、1回当たり、あるいは一定時間当たりの投入量を正確に規定することができ、かつ、供給力が強いため、凝集性の高い粉体でもスムーズに供給することができる。図1は吸引源として真空ポンプを用いた場合を示しており、粉体輸送装置6に備え付けられた真空ポンプにより発生した負圧により、投入ホッパー4内のアルミナ水和物粉体が粉体投入ライン5を介して分散タンクに投入される。この時、系内の真空、加圧のサイクルを繰り返すことにより、一定量の粉体を断続的に投入することが可能となる。本例では、吸引輸送方式の粉体投入装置とは、粉体投入ライン5と粉体輸送装置6にあたる。投入は、連続的に行われることが好ましいが、少量ずつ、一定間隔置きに行ってもよい。吸引源としては、上記真空ポンプ以外にも圧縮エアーによるジェット式や、ブロワー式を用いることができる。真空ポンプを用いた吸引輸送装置としては、赤武エンジニアリング社製のバキュームコンベアなどを用いることができる。
【0012】
また、分散装置が備える攪拌手段は、粗大粒子を減少させるように攪拌を行うが、本発明者らは、強く攪拌しすぎると、粘度が上昇したり粒度分布が崩れる傾向となることを見出した。また、アルミナ水和物粉体を酸などの解膠剤の存在下で解膠処理を行う場合、アルミナ水和物粉体は、凝集状態で存在し、酸性雰囲気下で解膠され分散される。その際の攪拌状態は、分散液全体の攪拌が滞留なく行われ、かつ、過度な攪拌シェアがかからないことが重要である。よって、その際の攪拌は、凝集をほぐす程度の攪拌シェアが必要であり、攪拌が強すぎても、弱すぎても安定した分散状態を得ることが困難である。
【0013】
攪拌手段の攪拌の実効消費動力とは、攪拌手段の攪拌の全消費動力から無負荷状態の空転時の消費動力を差し引いた消費動力を意味し、本発明ではかかる実効消費動力として、アルミナ分散液の単位体積当たりの消費動力を指す。また、攪拌を行っている間の平均の消費動力を指す。本発明では、攪拌機の実効消費動力を0.01kw/m以上、0.2kw/m以下としている。実効消費動力は、0.02kw/m以上であることがより好ましい。また、0.19kw/m以下であることがより好ましい。0.2kw/mを超える実効消費動力では、攪拌シェアが過度となり、得られる分散液の粒度分布が微粒化され、また攪拌時の粘度が上昇し、ハンドリングが困難となる。また、0.01kw/m未満の実効消費動力では、分散液の流動状態が不足し、タンク内で滞留部分が生じ、分散不良を引き起こす。
【0014】
本発明で使用される攪拌手段としては、攪拌機や、ラインミキサーが挙げられる。攪拌機は、特に限定されないが、アンカー翼、パドル翼、フルゾーン翼、三枚後退翼、プロペラ翼などが好ましく用いることができる。また、邪魔板などを設置すると、より攪拌が均一となり好ましい。
【0015】
本発明のアルミナ水和物粉体を投入した水系分散媒体は、pHを3.0以上、6.0以下とする。pHが3.0未満となると、アルミナ分散液が増粘する傾向になり、また、腐食性が強くなるため、分散液のハンドリングが困難となる。また、pHが6.0を超えると、分散が十分に進行しない、あるいは分散に長時間を要することになるため、好ましくない。pHの調整には、酸を添加することが好ましい。かかる酸としては、特に限定されず、例えば塩酸、硝酸、アミド硫酸などの無機酸、または酢酸などの有機酸などのいずれも使用できる。中でも、酢酸を使用するのが好ましい。酸の添加量としては、アルミナ分散液中のアルミニウム原子1モルに対して0.005当量以上、0.2当量以下であることが好ましい。また、0.01当量以上であることがより好ましい。また、0.1当量以下であることがより好ましい。0.005当量未満の場合には、分散に長時間を要するだけでなく、アルミナゾルの濃度が高い場合にゲル化しやすいので好ましくない。0.2当量を超えると、アルミナ水和物が溶解する可能性があるので好ましくない。
【0016】
本発明で使用されるタンク及び攪拌手段の接液部は、酸性雰囲気での腐食性に優れた材質が好ましく、グラスライニング製であることが特に好ましい。接液部がグラスライニング製であるとは、タンク壁面や攪拌手段表面などの接液部にグラスを吹き付け、焼成し、タンク壁面や攪拌手段表面とグラスとを結合する処理を行なっていることをいう。グラスライニング製であると、タンク壁面へのスラリーの付着が少なく、付着しても容易に除去することができるため、歩留まりの向上が図れる。
【0017】
分散処理に要する時間は、1時間以上が好ましい。また、24時間以下が好ましく、12時間以下がより好ましい。上記の分散処理により、アルミナ粒子の二次粒子径は容易に調節できる。平均二次粒子径を50〜1000nmとすると、分散液を乾燥して得られるアルミナ水和物粉末の細孔径と細孔容積が大きく、かつ透明性の高いアルミナ分散液を製造できるので好ましい。また、アルミナ分散液を乾燥して得られるアルミナ水和物粉末は、解膠剤である酸を含有しているため、バインダと混合すると容易に再解膠されるので、このアルミナ水和物粉末を用いても透明性の高いインク受容層を形成できる塗工液を提供できる。
【0018】
本発明の方法によれば、透明性の高いアルミナ分散液が容易に製造でき、また、分散液を乾燥して得られるアルミナ水和物粉末の細孔径と細孔容積が大きい。そして、本発明の方法により得られたアルミナ分散液をバインダと適宜混合して基材上に塗布、乾燥してインク受容層を形成すると、インク吸収性の良好な記録媒体が得られる。また、透明な基材を用いれば透明な記録媒体を得ることもできる。
【0019】
本発明に使用するアルミナ水和物粉末は、組成式;AlOOH・xHO(0≦x<2)で表されるベーマイト構造を有するアルミナ水和物であることが好ましい。本発明のアルミナ水和物粉末中のベーマイト構造を有する結晶は、(010)面に垂直な方向の結晶の厚さ(以下、結晶サイズという)が6nm以上であることが好ましい。結晶サイズが6nm未満であると、吸収性に優れるインク受容層を形成しにくい。結晶サイズは、アルミナ分散液を140℃で恒量になるまで乾燥して得られたアルミナ水和物粉末のX線回折分析から、(020)面のピークの回折角度2θ(°)と半値幅B(rad)からシェラーの式(t=0.9λ/Bcosθ)で求めた値をいう。この式において、tは結晶サイズ(nm)、λはX線の波長(nm)である。
【0020】
図2は、本発明の別の実施形態を示す分散装置の概略図の一例である。本分散装置は、図1の装置に対して循環ラインを設けたものであり、より効率良く分散を行う場合には好ましく用いられる。図2において、8は循環ポンプ、9はラインミキサー、10は循環ラインを示している。
【0021】
アルミナ水和物粉体の所定量を分散タンクに投入し、回転式攪拌機2の作用により分散が開始された後、適宜、循環ポンプ、ラインミキサーを起動し、循環ラインを介して分散液の循環を行う。循環を行うことによって、より効果的にアルミナ水和物粉体の分散を行うことが出来、分散時間の短縮を図ることが可能となる。その際、図2の如く、必要に応じてラインミキサーを使用することがより好ましい。ラインミキサーは、回転式攪拌機での分散を補助するために使用する。本例の場合、攪拌手段は回転式攪拌機とラインミキサーなので、これらの実効消費動力の和を、0.01kw/m以上、0.2kw/m以下とする必要がある。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【0023】
<実施例1>
図1に記載の装置を使用した。容量10mの分散タンクを用い、回転式攪拌機としてアンカー翼を設置した。分散タンク及び攪拌機の接液部はグラスライニング製とした。
【0024】
分散タンクにイオン交換水5700L(リットル)と90%酢酸40Lを仕込み、アンカー翼を60回転/分で攪拌した。攪拌しながら、アルミナ水和物粉体として、BET比表面積160m/gのDisperal HP15(SASOL製)1800kgをタンク内に供給した。
【0025】
粉体の供給には、吸引輸送方式の粉体投入装置である真空式吸引搬送装置を使用した。真空ポンプにより得られた減圧雰囲気下にバルブの開閉により、アルミナ水和物粉体を吸引し、空気の流れによって、タンク内に粉体を投入した。投入は、10秒間隔置きに10kgとし、連続的に行い、30分で1800kg全量を投入した。アンカー翼の攪拌回転数は、60回転/分とし、良好な分散が得られるまでに分散時間を12時間要した。アルミナ水和物を投入した水系分散媒体のpHは4.1であり、攪拌手段(攪拌機)の実効消費動力は0.07kw/mであった。このようにして、アルミナ分散液を得た。
【0026】
さらに、分散液100gを直径9cmの目開き4μmのろ紙で吸引ろ過し、ろ紙上に残った残留物を目視してアルミナ分散液の分散状態を評価した。この結果、ろ紙には残留物は見当たらず、分散状態は非常に良好であった(評価;A)。
【0027】
また、タンクから分散液を排出後、タンク内のアルミナ水和物粉体の付着状況を目視にて評価した。この結果、付着物はほとんど見られず、僅かな付着物も洗浄水をかけることで容易に除去できた(評価;A)。
【0028】
<実施例2>
アンカー翼の回転数を40回転/分とした以外は、実施例1と同様に分散を行った。この時の実効消費動力は、0.02kw/mであり、良好な分散が得られるまでに分散時間を20時間要した。
【0029】
分散状態、タンク内付着状況は、ともに実施例1と同程度で非常に良好であった(評価;A)。
【0030】
<実施例3>
分散タンク及び攪拌機の接液部をSUS304(ステンレス鋼)とした以外は、実施例1と同様に分散を行った。良好な分散が得られるまでに分散時間を12時間要した。
【0031】
分散状態は、実施例1と同程度で非常に良好であった(評価;A)。タンク内付着状況は、実施例1と同様の基準で評価したところ、タンク壁面、攪拌機に付着物が見られ、付着物は洗浄水をかけても除去することが困難であった(評価;B)。
【0032】
<実施例4>
アルミナ水和物粉体の投入を真空式吸引搬送装置を用いずに、600kg入りのフレキシブルコンテナをタンク上部に吊り下げ、コンテナ下部からダンパーの開閉によって行った。3袋のコンテナを3分で投入し、実施例1と同様に分散を行った。良好な分散が得られるまでに分散時間を12時間要した。
【0033】
分散状態は、実施例1と同様の基準で評価したところ、ろ紙上に凝集した粒子が見られた(評価;B)。タンク内付着状況は、実施例1と同様の基準で評価したところ、タンク壁面、攪拌機に付着物が見られ、付着物は洗浄水をかけても除去することが困難であった(評価;B)。
【0034】
<実施例5>
図2に記載の装置を使用した。実施例1と同様に、容量10mの分散タンクを用い、回転式攪拌機としてアンカー翼を設置し、分散液の循環ラインを接続し、循環ライン中に循環ポンプとラインミキサーを設置した。ラインミキサーはプライミクス社製のパイプラインホモミクサーを使用し、分散タンク、攪拌機及びラインミキサーの接液部材質はグラスライニング製とした。実施例1と同様に分散タンク中にアルミナ水和物粉体を真空式吸引搬送装置により投入し、粉体をすべて投入し終わった後、循環ポンプ、ラインミキサーを起動し、循環ラインで液循環を行った。
【0035】
アンカー翼の攪拌回転数は60回転/分、ラインミキサーの回転数は1000回転/分とし、良好な分散が得られるまでに分散時間を6時間要した。アルミナ水和物を投入した水系分散媒体のpHは4.1であり、攪拌手段(攪拌機及びラインミキサー)の実効消費動力は0.18kw/mであった。
【0036】
分散状態、タンク内付着状況は、ともに実施例1と同程度で非常に良好であった(評価;A)。
【0037】
<実施例6>
攪拌手段の実効消費動力を0.12kw/mとなるように変更した以外は、実施例5と同様に分散を行った。良好な分散が得られるまでに分散時間を9時間要した。
【0038】
分散状態、タンク内付着状況は、ともに実施例1と同程度で非常に良好であった(評価;A)。
【0039】
<実施例7>
分散タンク及びアンカー翼の接液部をSUS304(ステンレス鋼)とした以外は、実施例5と同様に分散を行った。良好な分散が得られるまでに分散時間を6時間要した。
【0040】
分散状態は、実施例1と同程度で非常に良好であった(評価;A)。タンク内付着状況は、実施例1と同様の基準で評価したところ、タンク壁面、攪拌機に付着物が見られ、付着物は洗浄水をかけても除去することが困難であった(評価;B)。
【0041】
<実施例8>
アルミナ水和物粉体の投入に実施例4と同様にフレキシブルコンテナを使用した以外は、実施例5と同様に分散を行った。良好な分散が得られるまでに分散時間を6時間要した。
【0042】
分散状態は、実施例1と同様の基準で評価したところ、ろ紙上に凝集した粒子が見られた(評価;B)。タンク内付着状況は、実施例1と同様の基準で評価したところ、タンク壁面、攪拌機に付着物が見られ、付着物は洗浄水をかけても除去することが困難であった(評価;B)。
【0043】
<比較例1>
アンカー翼の回転数を20回転/分とした以外は、実施例1と同様に分散を行った。この時の実効消費動力は、0.007kw/mであり、分散時間は24時間とした。
【0044】
分散状態は、実施例1と同様の基準で評価したところ、ろ紙上に粗い粒子が堆積し、分散液のろ過が非常に困難であった(評価;C)。タンク内付着状況は、実施例1と同様の基準で評価したところ、実施例1と同程度で非常に良好であった(評価;A)。
【0045】
<比較例2>
アルミナ水和物粉体の投入に実施例4と同様にフレキシブルコンテナを使用した以外は、比較例1と同様に分散を行なった。
【0046】
分散状態は、実施例1と同様の基準で評価したところ、ろ紙上に粗い粒子が堆積し、分散液のろ過が非常に困難であった(評価;C)。タンク内付着状況は、実施例1と同様の基準で評価したところ、タンク壁面、攪拌機に付着物が見られ、付着物は洗浄水をかけても除去することが困難であった(評価;B)。
【0047】
<比較例3>
アンカー翼の回転数を100回転/分とした以外は、実施例1と同様に分散を行った。この時の実効消費動力は、0.3kw/mであった。6時間分散すると、分散中に液の粘度上昇が見られ、攪拌が不十分で液が滞留しているのが確認された。また、この粘度では、次工程の処理に支障がきたすことが分かり、分散を停止した。
【0048】
分散状態は、攪拌が十分な個所は良好であるが、液の滞留部では粗粒が確認された(評価;C)。タンク内付着状況は、実施例1と同様の基準で評価したところ、実施例1と同程度で非常に良好であった(評価;A)。
【0049】
<比較例4>
分散タンク及び攪拌機の接液部をSUS304(ステンレス鋼)とし、酢酸を添加しない以外は、実施例1と同様に分散を行った。この時のアルミナ水和物を投入した水系分散媒体のpHは7.4、実効消費動力は0.07kw/mであり、分散時間は24時間とした。
【0050】
分散状態は、実施例1と同様の基準で評価したところ、ろ紙上に粗い粒子が堆積し、分散液のろ過が非常に困難であった(評価;C)。タンク内付着状況は、実施例1と同様の基準で評価したところ、タンク壁面、攪拌機に付着物が見られ、付着物は洗浄水をかけても除去することが困難であった(評価;B)。
【0051】
<比較例5>
使用する酸を塩酸とする以外は、実施例1と同様に分散を行った。この時のアルミナ水和物を投入した水系分散媒体のpHは2.5であった。12時間分散すると、分散中に液の粘度上昇が見られ、攪拌が不十分で液が滞留しているのが確認された。また、この粘度では、次工程の処理に支障がきたすことが分かり、分散を停止した。
【0052】
分散状態は、攪拌が十分な個所は良好であるが、液の滞留部では粗粒が確認された(評価;C)。タンク内付着状況は、実施例1と同様の基準で評価したところ、実施例1と同程度で非常に良好であった(評価;A)。
【0053】
以上の実施例1〜8、比較例1〜5の結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例1〜8と比較例1〜3の結果を比較すると、攪拌手段の実効消費動力を0.01kw/m以上、0.2kw/m以下とすることで、アルミナ分散液の分散状態が良好になることが分かる。また、実施例1〜8と比較例4、5の結果を比較すると、アルミナ水和物を投入した水系分散媒体のpHを、3.0以上、6.0以下とすることで、アルミナ分散液の分散状態が良好になることが分かる。実施例1と実施例3の結果を比較すると、分散タンク及び攪拌手段の接液部をグラスライニング製とすることが、分散タンク及び攪拌手段へのアルミナ水和物分散体の付着を抑制する点で好ましいことが分かる。実施例1と実施例3の結果を比較すると、アルミナ水和物粉体の水系分散媒体への1分間当たりの投入量を、アルミナ水和物粉体の水系分散媒体への総投入量の30質量%以下に制御することが、アルミナ分散液の良好な分散、タンク内への付着抑制の点で好ましいことが分かる。また、アルミナ水和物粉体の投入を、吸引輸送方式の粉体投入装置を介して行うことが、アルミナ分散液の良好な分散、タンク内への付着抑制の点で好ましいことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のアルミナ分散方法を行う分散装置の概略図の一例である。
【図2】本発明のアルミナ分散方法を行う分散装置の概略図の一例である。
【符号の説明】
【0057】
1 分散タンク
2 回転式攪拌機
3 攪拌モーター
4 粉体投入ホッパー
5 粉体投入ライン
6 粉体輸送装置
7 タンク排出バルブ
8 循環ポンプ
9 ラインミキサー
10 循環ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ水和物粉体と水系分散媒体とを含有するアルミナ分散液の製造方法であって、
前記アルミナ水和物粉体を、分散装置内の水系分散媒体に投入する投入工程と、
前記水系分散媒体を前記分散装置が備える攪拌手段で攪拌することにより、前記アルミナ水和物粉体を前記水系分散媒体に分散する分散工程とを有し、
前記アルミナ水和物が投入された水系分散媒体のpHは、3.0以上、6.0以下であり、
前記攪拌手段の攪拌の実効消費動力は、0.01kw/m以上、0.2kw/m以下であることを特徴とするアルミナ分散液の製造方法。
【請求項2】
前記アルミナ水和物粉体の水系分散媒体への1分間当たりの投入量を、アルミナ水和物粉体の水系分散媒体への総投入量の30質量%以下に制御する請求項1に記載のアルミナ分散液の製造方法。
【請求項3】
前記アルミナ水和物粉体の水系分散媒体への投入を、吸引輸送方式の粉体投入装置を介して行う請求項1または2に記載のアルミナ分散液の製造方法。
【請求項4】
分散タンク及び攪拌手段の接液部が、グラスライニング製である請求項1〜3のいずれかに記載のアルミナ分散液の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−30797(P2010−30797A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192138(P2008−192138)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】