説明

アルミナ質焼結体及びその製造方法

【課題】電気特性の向上、加工容易性の向上及び呈色の一様性を図ることができるアルミナ質焼結体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】主原料であるAlの100重量部に対して副原料としてのTi化合物をTiO換算で0.1〜2.0重量部添加されることにより原料が調製される。当該原料から作成された成形体の雰囲気1[m3]当たりに対する空気供給量を8〜25[L/min]に制御されながら前記成形体を1400〜1600[℃]で3時間以上にわたり焼成される。成形体の雰囲気温度の降温速度が5〜30[℃/hr]に制御されながら成形体が冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミナ質焼結体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的なファインセラミックスであるAlは、機械的強度に優れており、耐熱性、耐薬品性、また誘電正接が小さいことから、半導体、液晶用高周波プラズマ装置用部材に多く用いられている。
【0003】
しかし、汎用的なAl原料中(目安の純度90.0〜99.9%)には、Na、Kイオンなどの不純物が存在するため、所望の電気特性(誘電損失)が実現されず、焼結体における電気特性が局所的に異なってしまい、電気特性が不安定になる。さらに、Alは、難加工性材料であり、焼結体の加工コストが掛かってしまう。また、アルミナセラミックスの呈色が一様ではない(色むらがある)場合、製品として取り扱ってもらえない。
【0004】
電気特性の課題に関して、先行技術1によれば、Alに対してCaTiO及びSiOが添加されることにより、焼結体中にガラス質からなる粒界相が形成され、原料由来の不純物が粒界相にトラップされることで、電気特性を安定化(低誘電損失化)させることが提案されている(特許文献1参照)。同様に、先行技術2によれば、Alに対して、Si及びM(Mg、Ca、Sr及びBaの少なくとも1種)を他元素として含有させ、電気特性の安定化が図られている(特許文献2参照)。
【0005】
加工性の問題に関して、先行技術3によれば、AlにTiOを添加し、粒成長を促進させることにより、Alセラミックスに快削性(加工容易性)をもたせることが提案されている(特許文献3参照)。
【0006】
呈色の問題に関して、先行技術3によれば、アルミナを主成分としTi及びTi酸化物を分散したアルミナセラミックスが還元雰囲気で熱処理されることにより青色の呈色となるなど、セラミックスの最終的な熱処理雰囲気が調節されることにより、その呈色が調節されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−124217号公報
【特許文献2】特開2011−116615号公報
【特許文献3】特開2004−352572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、先行技術1又は2によれば、Si成分が微量であるため、粒界相の割合が少なく、粒界全体に液相を均一に形成させることが難しく、焼結体内全体として安定した電気特性を得ることができない。また、先行技術2によれば、Si成分が粒界に凝集粒として存在しているため、安定した電気特性を得難い。さらに、プラズマ照射環境下においては、微細な結晶から成る凝集粒が選択的に粒子脱落し易いため使用が難しい。
【0009】
一方、先行技術3によれば、組織が制御されたのみであり、砥石負荷が掛かった際に、粒子脱落しながら加工が進行する。Al粒子自体が改質されたわけではないため、粒内破壊は起こり難く、飛躍的な加工コスト削減にはならない。また、雰囲気調節によってアルミナのセラミックスの表層部分の呈色が調節されるのみであり、その切断面を見た場合に色むらが確認される場合がある。
【0010】
そこで、本発明は、電気特性の向上、加工容易性の向上及び呈色の一様性を図ることができるアルミナ質焼結体及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための本発明のアルミナ質焼結体は、主原料であるAlの100重量部に対して副原料としてのTi化合物がTiO換算で0.1〜2.0重量部含まれ、周波数1MHz〜5GHzにおける誘電損失tanδが10-4台であり、研削抵抗が20[kgf]以下であり、かつ、任意の切断面において色むらがないことを特徴とする。
【0012】
前記課題を解決するための本発明のアルミナ質焼結体を製造する方法は、主原料であるAlの100重量部に対して副原料としてのTi化合物をTiO換算で0.1〜2.0重量部添加することにより原料を調製し、前記原料を成形することにより成形体を作製し、前記成形体の雰囲気1[m3]当たりに対する空気供給量を8〜25[L/min]に制御しながら前記成形体を1400〜1600[℃]で3時間以上にわたり焼成した後、前記成形体の雰囲気温度の降温速度を5〜30[℃/hr]に制御しながら前記成形体を冷却することにより前記アルミナ質焼結体を製造することを特徴とする。この製造方法において、前記主原料100重量部に対する前記副原料のTiO換算添加量に対する、前記成形体の雰囲気1[m3]当たりに対する空気供給量の比率を8〜93.75に制御することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のアルミナ質セラミックスの製造条件に関する第1の説明図。
【図2】本発明のアルミナ質セラミックスの製造条件に関する第2の説明図。
【図3】セラミックス焼結過程に関する説明図。
【図4】焼結体の呈色に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のアルミナ質焼結体は、次のような手順で製造される。まず、主原料である純度95%以上のAl及び副原料としてのTi化合物が混合されることにより原料が調製される。
【0015】
主原料100重量部に対して副原料がTiO換算で0.1〜2.0重量部添加される。記載の簡単のため、主原料100重量部に対する副原料の添加量(重量部)を「p」と記載する。副原料は、TiOのほか、焼成後に酸化物を生成する塩化物、有機Ti化合物等であってもよい。好ましくは、副原料の粒度が0.05〜2.5[μm]に調整された上で、原料が調整される。
【0016】
原料スラリーが調製される場合、分散剤としては、ポリカルボン酸系など公知のものが用いられる。溶媒は、水、特に不純物が少ないイオン交換水であることが好ましいが、アルコールなど公知の溶媒が用いられてもよい。バインダは、ポリビニルアルコールやアクリルエマルジョンなどの公知のものが用いられる。また、必要に応じて、pH調整剤や消泡剤等の添加剤が添加されてもよい。混合法としては、ボールミル混合等の公知の方法が採用されうる。
【0017】
さらに、原料が成形されることにより成形体が作成される。原料粉末の成形方法としては、一軸プレス成形、CIP成形、湿式成形、加圧鋳込み成形又は排泥鋳込み成形等、種々の成形方法が採用されうる。
【0018】
また、成形体の雰囲気1[m3]当たりに対する空気供給量が8〜25[L/min]に制御されながら、この成形体が1400〜1600[℃]で3時間以上にわたり焼成される。その後、成形体の雰囲気温度700[℃]までの降温速度が5〜30[℃/hr]に制御されながら成形体が冷却されることにより、アルミナ質焼結体が製造される。記載の簡単のため、当該空気供給量を「f」と記載し、当該降温速度を「v」と記載する。
【0019】
(実施例)
(実施例1)
主原料としての純度95%のAlに対する副原料としての「TiO」の添加量pが「0.1」に調節された。直径90[mm]、厚さ50[mm]の円柱状の成形体が作製された。焼結雰囲気に対する空気供給量fが「8」に制御され、かつ、その後の降温速度vが「5」に制御されながら成形体が焼結されることにより、実施例1のアルミナ質焼結体が製造された。
【0020】
(実施例2)
副原料としての「TiO」の添加量pが「2.0」に調節された。焼結雰囲気に対する空気供給量fが「25」に制御され、かつ、その後の降温速度vが「10」に制御されながら成形体が焼結された。その他は実施例1と同様の条件下で実施例2のアルミナ質焼結体が製造された。
【0021】
(実施例3)
副原料としての「TiO」の添加量pが「0.2」に調節された。焼結雰囲気に対する空気供給量fが「15」に制御され、かつ、その後の降温速度vが「30」に制御されながら成形体が焼結された。その他は実施例1と同様の条件下で実施例3のアルミナ質焼結体が製造された。
【0022】
(実施例4)
副原料としての「TiO」の添加量pが「0.3」に調節された。焼結雰囲気に対する空気供給量fが「10」に制御され、かつ、その後の降温速度vが「5」に制御されながら成形体が焼結された。その他は実施例1と同様の条件下で実施例4のアルミナ質焼結体が製造された。
【0023】
(実施例5)
副原料としての「TiO」の添加量pが「1.0」に調節された。焼結雰囲気に対する空気供給量fが「8」に制御され、かつ、その後の降温速度vが「30」に制御されながら成形体が焼結された。その他は実施例1と同様の条件下で実施例5のアルミナ質焼結体が製造された。
【0024】
(実施例6)
副原料としての「TiO」の添加量pが「1.8」に調節された。焼結雰囲気に対する空気供給量fが「25」に制御され、かつ、その後の降温速度vが「5」に制御されながら成形体が焼結された。その他は実施例1と同様の条件下で実施例6のアルミナ質焼結体が製造された。
【0025】
(実施例7)
副原料としての「TiO」の添加量pが「1.2」に調節された。焼結雰囲気に対する空気供給量fが「18」に制御され、かつ、その後の降温速度vが「18」に制御されながら成形体が焼結された。その他は実施例1と同様の条件下で実施例7のアルミナ質焼結体が製造された。
【0026】
(実施例8)
副原料としての「TiO」の添加量pが「0.8」に調節された。焼結雰囲気に対する空気供給量fが「25」に制御され、かつ、その後の降温速度vが「30」に制御されながら成形体が焼結された。その他は実施例1と同様の条件下で実施例8のアルミナ質焼結体が製造された。
【0027】
(実施例9)
副原料としての「TiO」の添加量pが「0.2」に調節された。焼結雰囲気に対する空気供給量fが「15.0」に制御され、かつ、その後の降温速度vが「12.5」に制御されながら成形体が焼結された。その他は実施例1と同様の条件下で実施例9のアルミナ質焼結体が製造された。
【0028】
(実施例10)
副原料としての「TiO」の添加量pが「0.2」に調節された。焼結雰囲気に対する空気供給量fが「18.75」に制御され、かつ、その後の降温速度vが「12.5」に制御されながら成形体が焼結された。その他は実施例1と同様の条件下で実施例10のアルミナ質焼結体が製造された。
【0029】
(焼結体の物性評価)
焼結体の誘電損失は、目黒電波測器社製QメータMQ−1601およびAGILEMTネットワークアナライザー8719ESにより測定された。
【0030】
焼結体の加工性は、平面研削盤のプランジ加工2passアップカットでの測定値を採取した(加工機:ナガセ超精密平面研削盤 砥石:アライド製レジンボンドφ350 回転数:1300rpm 送り速度:2.5m/min 切り込み量:0.06mm/pass)。
【0031】
焼結体の平均焼結粒子径は、1つの焼結体から任意に20部位が選択され、研磨面を熱腐食させて粒界を析出させた後、SEMにより各部位が観察され、インターセプト法にしたがって算出された。平均粒子径が10〜50[μm]の範囲にあれば、粒成長の結果が良好である(○)と評価され、平均粒子径が当該範囲から外れている場合、粒成長の結果が良好ではない(×)と評価された。
【0032】
焼結体の密度むらは、円柱状の焼結体を異なる3つの高さ箇所で切断し、当該切断面における密度むらが無いかを判断した。同じ焼結体で、密度の差が0.03[g/cm3]以上であるか否かに応じて密度むらの有無が評価された。
【0033】
焼結体の呈色は、焼結体が切断された上で、当該切断面における焼結体の外側及びその内側のそれぞれが目視されることにより評価した。図4(a)に明度の一様性により表現されているように、焼結体断面における外側の呈色及び内側の呈色(例えば、青色、黄色)が同一である場合は色が一様である(○)と評価された。その一方、図4(b)に明度のむらにより表現されているように、焼結体断面における外側の呈色(例えば青色)及び内側の呈色(例えば黄色)が異なる場合は色むらがある(×)と評価された。
【0034】
実施例1〜10の焼結体のそれぞれの物性測定結果が、製造条件とともに表1にまとめて示されている。
【0035】
【表1】

【0036】
図1には、実施例1〜10のそれぞれの焼結体における副原料の添加量p、成形体の焼結雰囲気に対する空気供給量f及び降温速度vの組み合わせが、数字が付された白球の位置により示されている。実施例1〜10の焼結体は、p=0.10〜2.0、f=8〜25及びv=5〜30により定義される、立方体状の範囲に含まれるように調節されている。
【0037】
図2には、実施例1〜10のそれぞれの焼結体におけるv及びf/pの組み合わせが、数字が付された白丸の位置により示されている。実施例1〜10の焼結体は、(f/p)=8〜93.75及びv=5〜30により定義される、矩形状の範囲に含まれるように調節されている。
【0038】
表1からわかるように、実施例1〜10の焼結体の1[MHz]〜5[GHz]における誘電損失tanδは10-4台の値である。また、実施例1〜10の焼結体の研削抵抗は20[kgf]以下である。実施例1〜10の焼結体を構成する主原料の粒子が柱状であり、当該柱の長軸方向の平均焼結粒子径が10〜50[μm]であった。さらに、実施例1〜10の焼結体には色むらがみられなかった。
【0039】
(比較例)
(比較例1)
副原料としての「TiO」の添加量pが「0.2」に調節された。焼結雰囲気に対する空気供給量fが「18.75」に制御され、かつ、その後の降温速度vが「60」に制御されながら成形体が焼結された。その他は実施例1と同様の条件下で比較例1のアルミナ質焼結体が製造された。
【0040】
(比較例2)
副原料としての「TiO」の添加量pが「1.0」に調節された。焼結雰囲気に対する空気供給量fが「5」に制御され、かつ、その後の降温速度vが「20」に制御されながら成形体が焼結された。その他は実施例1と同様の条件下で比較例2のアルミナ質焼結体が製造された。
【0041】
(比較例3)
副原料としての「TiO」の添加量pが「1.0」に調節された。焼結雰囲気に対する空気供給量fが「0」に制御され、かつ、その後の降温速度vが「40」に制御されながら成形体が焼結された。その他は実施例1と同様の条件下で比較例3のアルミナ質焼結体が製造された。
【0042】
(比較例4)
副原料としての「TiO」の添加量pが「0.2」に調節された。焼結雰囲気に対する空気供給量fが「15.0」に制御され、かつ、その後の降温速度vが「80」に制御されながら成形体が焼結された。その他は実施例1と同様の条件下で比較例4のアルミナ質焼結体が製造された。
【0043】
(比較例5)
副原料としての「TiO」の添加量pが「0.3」に調節された。焼結雰囲気に対する空気供給量fが「18.75」に制御され、かつ、その後の降温速度vが「60」に制御されながら成形体が焼結された。その他は実施例1と同様の条件下で比較例5のアルミナ質焼結体が製造された。
【0044】
(比較例6)
副原料としての「TiO」の添加量pが「10.0」に調節された。焼結雰囲気に対する空気供給量fが「25.0」に制御され、かつ、その後の降温速度vが「15」に制御されながら成形体が焼結された。その他は実施例1と同様の条件下で比較例6のアルミナ質焼結体が製造された。
【0045】
(比較例7)
副原料としての「TiO」の添加量pが「10.0」に調節された。焼結雰囲気に対する空気供給量fが「20.0」に制御され、かつ、その後の降温速度vが「70」に制御されながら成形体が焼結された。その他は実施例1と同様の条件下で比較例7のアルミナ質焼結体が製造された。
【0046】
(比較例8)
副原料としての「TiO」の添加量pが「0.05」に調節された。焼結雰囲気に対する空気供給量fが「18.5」に制御され、かつ、その後の降温速度vが「20」に制御されながら成形体が焼結された。その他は実施例1と同様の条件下で比較例8のアルミナ質焼結体が製造された。
【0047】
(比較例9)
副原料としての「TiO」の添加量pが「0.01」に調節された。焼結雰囲気に対する空気供給量fが「5.0」に制御され、かつ、その後の降温速度vが「50」に制御されながら成形体が焼結された。その他は実施例1と同様の条件下で比較例9のアルミナ質焼結体が製造された。
【0048】
比較例1〜9の焼結体のそれぞれの物性測定結果が、製造条件とともに表2にまとめて示されている。
【0049】
【表2】

【0050】
図1には、比較例1〜9のそれぞれの焼結体における副原料の添加量p、成形体の焼結雰囲気に対する空気供給量f及び降温速度vの組み合わせが、数字が付された黒球の位置により示されている。比較例1〜9の焼結体は、前記立方体状の範囲から外れるように調節されている。
【0051】
図2には、比較例1〜10のそれぞれの焼結体におけるv及びf/pの組み合わせが、数字が付された黒丸の位置により示されている。比較例1〜9の焼結体は、前記矩形状の範囲から外れるように調節されている。
【0052】
表2からわかるように、比較例1〜9の焼結体の1[MHz]〜5[GHz]において、誘電損失tanδは10-3台の値を示す。比較例1〜9の焼結体の研削抵抗は25〜35[kgf]であって、実施例1〜10の焼結体よりも研削抵抗が大きい。比較例1〜9の焼結体を構成する主原料の粒子が柱状であるものの、当該柱の長軸方向の平均焼結粒子径が10[μm]未満であり、実施例1〜10の焼結体と比較して小さい。また、比較例1〜7の焼結体には色むらがみられた。
【0053】
本発明のアルミナ質焼結体の製造方法によれば、焼成雰囲気に対して空気が供給されることにより、図3(a)に模式的に示されているように、成形体の焼結過程において、TiO(副原料)のTiがTi4+の形でAl23に入り込んで固溶反応が促進される。固溶反応により粗大化した粒子は、焼結体の加工に際して粒内破壊によって当該加工の促進に寄与しうるため、本発明のアルミナ質焼結体の加工容易性の向上、さらにはその加工コストの削減が図られる。
【0054】
Alの粒成長に伴って粒界相の体積が小さくなるため、原料に不可避的に含まれる不純物由来のNa,K等のイオンが、イオンジャンプ又は粒界移動が困難な状態が実現される。これにより、本発明のアルミナ質焼結体の誘電損失tanδが安定化する(表1及び表2参照)。
【0055】
ただし、Ti4+がAl中に固溶できる量には限界がある(固溶限界)。このため、主原料に対して副原料が過剰に添加されると、固溶仕切れなかったTiOがAlと反応し、粒界でAlTiO(チタン酸アルミニウム)を形成する。一度形成されたAlTiOは、図3(b)に模式的に示されているように焼成冷却時にAl及びTiOに分解反応する。
【0056】
この分解の影響により、焼結体は青色又は濃紺色に変色する。更には、焼結体の内外において呈色は一定にならず、色相の差又は明度の高低差などの色むらが生じ易い(表2比較例1〜9、図4(b)参照)。
【0057】
そこで、成形体を1400〜1600[℃]で3時間以上にわたり焼成した後、前記成形体の雰囲気温度700[℃]までの降温速度を5〜30[℃/hr]に制御される。これにより、AlTiOの分解反応が均一にされ、焼結体の呈色が安定化するものと推察される(表1実施例1〜10、図4(a)参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主原料であるAlの100重量部に対して副原料としてのTi化合物がTiO換算で0.1〜2.0重量部含まれ、周波数1MHz〜5GHzにおける誘電損失tanδが10-4台であり、研削抵抗が20[kgf]以下であり、かつ、任意の切断面において色むらがないことを特徴とするアルミナ質焼結体。
【請求項2】
請求項1記載のアルミナ質焼結体を製造する方法であって、
主原料であるAlの100重量部に対して副原料としてのTi化合物をTiO換算で0.1〜2.0重量部添加することにより原料を調製し、
前記原料を成形することにより成形体を作成し、
前記成形体の雰囲気1[m3]当たりに対する空気供給量を8〜25[L/min]に制御しながら前記成形体を1400〜1600[℃]で3時間以上にわたり焼成した後、前記成形体の雰囲気温度の降温速度を5〜30[℃/hr]に制御しながら前記成形体を冷却することにより前記アルミナ質焼結体を製造することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、
前記主原料100重量部に対する前記副原料のTiO換算添加量に対する、前記成形体の雰囲気1[m3]当たりに対する空気供給量の比率を8〜93.75に制御することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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