説明

アルミニウム用ろう合金およびアルミニウム製熱交換器用ブレージングシート

【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明はアルミニウムまたはアルミニウム合金のろう付に用いられるろう合金に関するものである。
また、本発明は特に真空ブレージング法により造られるAl製熱交換器の耐食性に優れたブレージングシートに関するものである。
[従来の技術]
アルミニウム用ろう合金は通常Al−Mn系の芯材表面に片面もしくは両面にクラッドしたブレージングシートとして用いられるか、そのままで置きろうとして使用されている。
従来のアルミニウムろう合金はろう付法によって変えており、例えば真空ろう付法ではAA4004,4104に代表されるAl−Si−Mg系ろう材が用いられている。またふっ化物系の非腐食性フラックスを用いてN2ガスでろう付するNB法においては、AA4343,4045等のAl−Si系ろう材が用いられている。
Al製熱交換器の製造法としては、塩化物系フラックスを用いて大気中でろう付するフラックスろう付法、真空中でろう付する真空ろう付法およびふっ化物系の非腐食性フラックスを用いてN2ガス中でろう付するNB法が知られている。特に真空ろう付法はドロンカップタイプのAl製熱交換器の製造に適しており、コンパクト化および高性能化を要求される熱交換器の製造に用いられてきている。
従来の真空ろう付法では部材の防食、耐食性の向上を図る手段として、(1)化成処理や塗装を行なう。
(2)フィンによる犠性陽極効果を用いる。
等が行なわれてきた。
[発明が解決しようとする課題]
ドロンカップタイプのエバポレータやオイルクーラー等を製造する際、ドロンカップ部のように犠性陽極フィンの影響を受けにくい部材では通常使用されているAA3003を芯材とする材料ではAl−Si−Mg系のろう材より電位が卑なため、芯材が優先的に腐食されていた。この対策として、ドロンカップエバポレータやオイルクーラーのような熱交換器用部材の耐食性良好な芯材組成として例えば特開昭62−207838、特開昭62−211360、特開昭62−230494、特開昭62−280343に示されているAl−Mn−Cu系またはAl−Mn−Cu−Ti系を用いることがあるが、ろう材としてAA4004,4104等を用いると、ろう材の電位が芯材より卑なためろう材が優先して腐食され、継手部のもれを生ずるようになる。
したがって、本発明は各種アルミニウム合金特に耐食性がすぐれたアルミニウム合金のろう付けに用いた場合に犠性陽極効果を持続して発揮できるアルミニウム用ろう合金を提供することを目的とする。
さらに、本発明は芯材の耐食性がすぐれかつろう材の犠性陽極効果が持続して発揮される、真空ろう材用ブレージングシートを提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段]
すなわち、本発明に係わるアルミニウム用ろう合金は、Si:5〜13wt%、Fe:0.05〜1.0wt%、Mg:0.5〜2.5wt%、およびTi:0.06〜0.3wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金である。
また、本発明に係わるAl製熱交換器用ブレージングシートは、(1)Si:5〜13wt%、Fe:0.05〜1.0wt%、Mg:0.5〜2.5wt%、およびTi:0.06〜0.3wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなるろう合金を、該合金より電気化学的に貴なアルミニウム合金からなる芯材の片面または両面にクラッドしたブレージングシートを第1の発明とし、(2)Mn:0.5〜1.5wt%、Cu:0.3〜1.0wt%、Fe:0.1〜0.7wt%、およびSi:0.03〜0.4wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金を芯材とし、その片面または両面にろう材としてSi:5〜13wt%、Fe:0.05〜1.0wt%、Mg:0.5〜2.5wt%、およびTi:0.06〜0.3wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金をクラッドしたことを特徴とするAl製熱交換器用ブレージングシートを第2の発明とし、(3)Mn:0.5〜1.5wt%、Cu:0.3〜1.0wt%、Fe:0.1〜0.7wt%、およびSi:0.03〜0.4wt%を含み、さらにCr:0.05〜0.3wt%、Zr:0.05〜0.3wt%のいずれか1種または2種を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金を芯材とし、その片面または両面にろう材としてSi:5〜13wt%、Fe:0.05〜1.0wt%、Mg:0.5〜2.5wt%、およびTi:0.06〜0.3wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金をクラッドしたことを特徴とするAl製熱交換器用ブレージングシートを第3の発明とし、(4)Mn:0.5〜1.5wt%、Cu:0.3〜1.0wt%、Fe:0.1〜0.7wt%、Si:0.03〜0.4wt%およびMg:0.05〜0.5wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金を芯材とし、その片面または両面にろう材としてSi:5〜13wt%、Fe:0.05〜1.0wt%、Mg:0.5〜2.5wt%、およびTi:0.06〜0.3wt%とを含み、残部Alおよび不可避的不純物からなる合金をクラッドし、かつ芯材のCuとMgが[Mg]≦0.6[Cu]+0.2(wt%)
で表わされる関係にあることを特徴とするAl製熱交換器用ブレージングシートを第4の発明とし、(5)Mn:0.5〜1.5wt%、Cu:0.3〜1.0wt%、Fe 0.1〜0.7wt%、Si:0.03〜0.4wt%およびMg:0.05〜0.5wt%を含み、さらにCr:0.05〜0.3wt%、Zr:0.05〜0.3wt%のいずれか1種または2種以上を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金を芯材とし、その片面または両面にろう材としてSi:5〜13wt%、Fe:0.05〜1.0wt%、Mg:0.5〜2.5wt%、およびTi:0.06〜0.3wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金をクラッドし、かつ芯材のCuとMgが[Mg]≦0.6[Cu]+0.2(wt%)
で表わされる関係にあることを特徴とするAl製熱交換器用ブレージングシートを第5の発明とし、(6)Mn:0.5〜1.5wt%、Cu:0.3〜1.0wt%、Fe:0.1〜0.7wt%、Si:0.03〜0.4wt%、Ti:0.05〜0.3wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金を芯材とし、その片面または両面にろう材としてSi:5〜13wt%、Fe:0.05〜1.0wt%、Mg:0.5〜2.5wt%、およびTi:0.06〜0.3wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金をクラッドしたことを特徴とするAl製熱交換器用ブレージングシートを第6の発明とし、(7)Mn:0.5〜1.5wt%、Cu:0.3〜1.0wt%、Fe:0.1〜0.7wt%、Si:0.03〜0.4wt%およびTi:0.05〜0.3wt%を含み、さらにCr:0.05〜0.3wt%、Zr:0.05〜0.3wt%の1種または2種を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金を芯材とし、その片面または両面にろう材としてSi:5〜13wt%、Fe:0.05〜1.0wt%、Mg:0.5〜2.5wt%、およびTi:0.06〜0.3wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金をクラッドしたことを特徴とするAl製熱交換器用ブレージングシートを第7の発明とし、(8)Mn:0.5〜1.5wt%、Cu:0.3〜1.0wt%、Fe:0.1〜0.7wt%、Si:0.03〜0.4wt%およびMg:0.05〜0.5wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金を芯材とし、その片面または両面にろう材としてSi:5〜13wt%、Fe:0.05〜1.0wt%、Mg:0.5〜2.5wt%、およびTi:0.06〜0.3wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金をクラッドし、かつ芯材のCuとMgが[Mg]≦0.6[Cu]+0.2(wt%)
で表わされる関係にあることを特徴とするAl製熱交換器用ブレージングシートを第8の発明とし、(9)Mn:0.5〜1.5wt%、Cu:0.3〜1.0wt%、Fe:0.1〜0.7wt%、Si:0.03〜0.4wt%およびMg:0.05〜0.5wt%を含み、さらにCr:0.05〜0.3wt%、Zr:0.05〜0.3wt%のいずれか1種または2種を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金を芯材とし、その片面または両面にろう材としてSi:5〜13wt%、Fe:0.05〜1.0wt%、Mg:0.5〜2.5wt%、およびTi:0.06〜0.3wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金をクラッドし、かつ芯材のCuとMgが[Mg]≦0.6[Cu]+0.2(wt%)
で表わされる関係にあることを特徴とするAl製熱交換器用ブレージングシートを第9の発明とする9つ発明よりなるものである。
なお片側にろう材をクラッドしたブレージングシートにおいてろう材の反対側に芯材より電位が卑な皮材を使用することは本発明の効果を失うものではなく、特にきびしい腐食環境にさらされる場合には有効な手段となりうる。
[作用]
<ろう材>本発明のアルミニウム用合金ろうを上記化学成分範囲に定めた理由を下記に説明する。
Si:Siはろう材の融点を低下させるのに必須の元素であり、そのためには、5〜13wt%の範囲内の含有量とするのが適切である。
Fe:Feはろう材が溶融したときの粘性を向上させる効果があるが、0.05wt%未満ではその効果は少なく、一方1.0wt%を越えて添加すると粘性が高すぎるためにろうの流動性を阻害する。したがってFeの含有量の範囲を0.05〜1.0wt%とした。
Mg:Mgはろう材が溶融するときに蒸発し、そのときにろう材の表面の酸化膜を破壊する、すなわちゲッター効果を有しているが、Mgの添加量が0.5未満ではその効果が少なく、一方2.5%を越えて添加するとろう材が硬くなるため、圧延性が急激に低下するとともに、ろう付時のMgの蒸発量が多くなるため真空度が低下し、ろう付性も劣るようになる。したがって、Mgの含有量の範囲を0.05〜1.0wt%とした。
Ti:Tiはろう材中に固溶することによってろう材の自己耐食性を向上する効果がある。すなわちTiの添加量が包晶反応範囲であるとき、ろう付加熱によって一度溶融したろう材が冷却時に凝固するときTiはα相中に固溶し、α相の自己耐食性が向上する。一般にろう材凝固時に結晶粒界面には不純物が晶出するため卑な電位になり、最初に腐食する。これによって芯材の一部が表面に出ると芯材とろう材のα相との電位差による腐食反応が開始するが、芯材の電位を貴にすることによりろう材が優先的に腐食する。本願発明においては、このときのろう材の自己耐食性を向上させるためにTiが有効に作用するのである。以上はろう材を電位の貴な芯材とクラッドしたブレージングシートの場合についての説明であるが、ユニオン等のろう付け時にこのろう材を置きろうとして用いる場合のユニオンや通路材や、このろう材を通常の芯材とクラッドして、薄肉ブレージングフィンとして用いる場合の相手材(押出チューブ等)との電位の関係が同様の場合には同様のメカニズムでろう材の自己耐食性が向上する。Tiが0.06wt%未満ではその効果が少なく、一方0.3wt%を越えて添加すると巨大な金属間化合物(Al−Ti系)が生成されて加工性が低下するばかりでなく、この金属間化合物はろう材のマトリックスより電位が貴になるためろう材の自己耐食性を低下させる。したがってTiの含有量の範囲を0.06〜0.3wt%とした。
なお、ろうの流動性を向上させるためにBiやBeを0.2wt%以下の範囲で添加することは本発明の効果をなんら阻害しない。
また、本ろう材に0.2%以下のSr(ストロンチウム)を添加するとSi粒子及びその他の晶出物を微細化するため、熱間圧延性を大幅に向上し、耳割れを防止し、また鋳塊面削時のバイトの摩耗が減ずるので添加しても良い。
<芯材>芯材としては上記のろう材より電気化学的に貴なアルミニウム合金を使用することができる。
本発明のAl製熱交換器用ブレージングシートの好ましい化学成分範囲を上記のように定めた理由を下記に説明する。
Cu:Cuは芯材の強度を向上させ、電位を貴にしてろう材による犠性陽極効果を発揮させるとともに、ろう付後の強度を高めるために添加される。その含有量が0.3%未満ではろう材より貴な電位に保つことができないため、犠性陽極効果が期待できない。一方、1.0wt%を越えて含有するとろう材との電位差が大きくなりすぎ、芯材の犠性陽極となるろう材が異常に早く腐食してしまうため、ろう材の犠性陽極効果が短時間で失われてしまう。さらに、Cuは1.0wt%を越えて含有すると芯材自体の自己耐食性が極端に低下する。したがって、Cuの含有量の範囲を0.3〜1.0wt%とした。
Mn:Mnは前述のようなCuの添加による自己耐食性劣化を抑制するとともに、ろう材の腐食速度を低下させる作用を有する。すなわち、Mnの添加によりMnを添加しないAl−Cu合金よりも水素過電圧が大きくなりろう材の腐食速度を小さくする作用を果たす。さらにろう付時の高温強度を確保させる作用ももたらす。Mnが0.5wt%未満ではこれらの効果、特に自己耐食性劣化防止が充分に得られず、一方、1.5wt%を越えて添加すると巨大なAl−Mn系化合物を形成して加工性を損なうためばかりでなく、ろう付時の加熱によって粒界腐食感受性を高めてしまうことがある。したがってMnは0.5〜1.5wt%の範囲内に限定した。
Fe:Feは通常のアルミニウム合金において不可避的に含有される不純物元素であって、強度向上に有効であるが、その含有量が0.1wt%未満では上記効果は小さくなるばかりでなく、高純度の地金を使用しなければならなくなるためコストの上昇となる。一方、0.7wt%を越えて添加すると芯材のマトリックスより電位が貴なAl−Fe系化合物が多く存在するようになるため、芯材の自己耐食性を劣化させる。したがって、Feは0.1〜0.7wt%の範囲内に限定した。
Si:SiはFeと同様に通常のアルミニウム合金において不可避的に含有される不純物元素であって、強度向上に有効であるが、0.03wt%未満では高純度の地金を使用しなければならなくなるためコストの上昇となる。一方、0.4wt%を越えて添加すると成形加工性および芯材の自己耐食性を劣化させる。したがって、Siは0.03〜0.4wt%の範囲内に限定した。
Cr,Zr:CrおよびZrはろう付性を損なわずにろう付時の高温強度を高めるために有効な元素であるが、いずれも0.05wt%未満ではその効果が少なく、一方、0.3wt%を越えて添加すれば巨大な金属間化合物(Al−Cr系,Al−Zr系)が生成されて加工性を低下させるため、いずれも0.05〜0.3wt%の範囲内とした。
Mg:Mgはろう付加熱後の強度を高めるのに最も有効な元素であるが、Mgが0.05%未満ではその効果が少なく、一方0.5%を越えて添加すると芯材の電位を卑にし、ろう材による犠性陽極効果が得られなくなる。さらに芯材の粒界腐食感受性が高くなるため、芯材の自己耐食性が著しく低下する。したがって、Mgの含有量の範囲を0.05〜0.5wt%とした。
またMgがCuと共存するときは[Mg]≦0.6[Cu]+0.2(wt%)
の関係式を満足しないと芯材がろう材より電位が卑になるため、ろう材による犠性陽極効果が失われる。したがって、芯材のCuとMgが[Mg]≦0.6[Cu]+0.2(wt%)
で表わされる関係にあることとした。
Ti:TiはMnと同様に水素過電圧を大きくし、ろう材の腐食速度を小さくする効果がある。さらに芯材の自己耐食性を向上させる効果もあり、ろう材が腐食してなくなった後でも芯材が腐食しずらくなる。Tiが0.05wt%未満ではその効果が少なく、一方0.3wt%を越えて添加すると巨大な金属間化合物(Al−Ti系)が生成されて加工性が低下するばかりでなく、この金属間化合物は芯材マトリックスより電位が貴になるため芯材の自己耐食性を低下させる。したがってTiの含有量の範囲を0.05〜0.3wt%とした。
[実施例]
実施例1第1表に示す合金組成のろう材を用い、第2表に示す合金組成の芯材の両面にろう材を15%クラッドして板厚さ0.6mm、質別Oのブレージングシートを作製した。これらのブレージングシートを用いて耐食性を調べた。ろう材と芯材の組合わせおよび耐食性の結果を第3表に示した。
耐食性は上記ブレージングシートを幅3mm、長さ120mmに切り出しMEK脱脂後、第1図に示すように逆T継手の形状にセットし、真空中で600℃に5分間加熱した後にCASS試験を行ない、フィレット部とその他の部位での貫通孔食が発生するまでの時間を測定した。






第3表から明らかなように、本発明のろう合金を用いたブレージングシートNo.1,2はいずれもすぐれた耐食性を有している。
これに対し、通常使用されているAA4004を皮材とし、AA3003を芯材とした従来材ブレージングシートNo.5は短時間で貫通孔となっている。一方、芯材に耐食性合金を用い、ろう材に従来合金を用いたブレージングシートNo.3〜4は従来材(No.5)より優れた耐食性を示しているが、芯材の電位がろう材より貴なため腐食はいずれもフィレット部となり、安定した耐食性が得られていない。
実施例2第4表に示す合金組成の芯材およびろう材を用い、各芯材の両面にろう材を15%クラッドして板厚0.6mm、質別Oのブレージングシートを作成した。これらのブレージングシートを用いて電位および耐食性を調べた。その結果を第5表に示す。
電位測定は上記ブレージングシートから幅50mm、長さ100mmのサンプルを切り出し、メチルエチルケトン(MEK)脱脂後真空加熱したものについて測定した。また電位は25℃の5%NaCl水溶液中に10分間浸漬後飽和カロメル電極(S.C.E.)を基準として測定した。
耐食性は上記ブレージングシートを幅30mm、長さ120mmに切り出しMEK脱脂後第1図に示すように逆T継手の形状にセットし、真空加熱したものについてCASS試験を行ない、フィレット部とその他の部位での貫通孔食が発生するまでの時間を測定した。




第5表から明らかなように、本発明合金No.1〜17の芯材の電位は、いずれもろう材の電位より貴になっており、優れた耐食性を有することがわかる。しかし、比較材であるNo.18の芯材の電位はろう材の電位より貴であり、ろう材の犠性陽極効果が発揮するが、ろう材の腐食速度が大きいため、本発明合金よりCASS試験での貫通にいたるまでの時間が短くなることがわかる。比較材No.19〜21の芯材はろう材の電位より卑になるため芯材が優先的に腐食し、短時間で貫通孔を生じたことから耐食性が劣ることがわかる。
[発明の効果]
以上の説明で明らかなように、この発明のアルミニウム用ろう合金は真空ろう付法により作られるAl製熱交換器の耐食性に優れており、特に耐食性芯材や耐食性押出チューブ材としてCuを添加した材料のろう材に用いると、長期間にわたり安定した性能を発揮することができる。
また、この発明のAl製熱交換器用ブレージングシートは真空ろう付法により造られるAl製熱交換器の耐食性に優れており、したがって特に自動車用熱交換器のドロンカップタイプのエバポレータやオイルクーラなどの流体通路用ブレージングシートとして、長期間にわたり安定した性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は腐食試験のための試験片の組立てを示す断面図である。
1:芯材、2:ろう材

【特許請求の範囲】
【請求項1】Si:5〜13wt%、Fe:0.05〜1.0wt%、Mg:0.5〜2.5wt%、およびTi:0.06〜0.3wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなることを特徴とするアルミニウム用ろう合金。
【請求項2】Si:5〜13wt%、Fe:0.05〜1.0wt%、Mg:0.5〜2.5wt%、およびTi:0.06〜0.3wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなるろう合金を、該合金より電気化学的に貴なアルミニウム合金からなる芯材の片面または両面にクラッドしたことを特徴とするAl製熱交換器用ブレージングシート。
【請求項3】Mn:0.5〜1.5wt%、Cu:0.3〜1.0wt%、Fe:0.1〜0.7wt%、およびSi:0.03〜0.4wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金を芯材とし、その片面または両面にろう材として、Si:5〜13wt%、Fe:0.05〜1.0wt%、Mg:0.5〜2.5wt%、およびTi:0.06〜0.3wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金をクラッドしたことを特徴とするAl製熱交換器用ブレージングシート。
【請求項4】Mn:0.5〜1.5wt%、Cu:0.3〜1.0wt%、Fe:0.1〜0.7wt%、およびSi:0.03〜0.4wt%を含み、さらにCr:0.05〜0.3wt%、Zr:0.05〜0.3wt%のいずれか1種または2種を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金を芯材とし、その片面または両面にろう材としてSi:5〜13wt%、Fe:0.05〜1.0wt%、Mg:0.5〜2.5wt%、およびTi:0.06〜0.3wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金をクラッドしたことを特徴とするAl製熱交換器用ブレージングシート。
【請求項5】Mn:0.5〜1.5wt%、Cu:0.3〜1.0wt%、Fe:0.1〜0.7wt%、Si:0.03〜0.4wt%およびMg:0.05〜0.5wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金を芯材とし、その片面または両面にろう材としてSi:5〜13wt%、Fe:0.05〜1.0wt%、Mg:0.5〜2.5wt%、およびTi:0.06〜0.3wt%とを含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金をクラッドし、かつ芯材のCuとMgが[Mg]≦0.6[Cu]+0.2(wt%)
で表わされる関係にあることを特徴とするAl製熱交換器用ブレージングシート。
【請求項6】Mn:0.5〜1.5wt%、Cu:0.3〜1.0wt%、Fe:0.1〜0.7wt%、Si:0.03〜0.4wt%、およびMg:0.05〜0.5wt%を含み、さらにCr:0.05〜0.3wt%、Zr:0.05〜0.3wt%のいずれか1種または2種を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金を芯材とし、その片面または両面にろう材としてSi:5〜13wt%、Fe:0.05〜1.0wt%、Mg:0.5〜2.5wt%、およびTi:0.06〜0.3wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金をクラッドし、かつ芯材のCuとMgが[Mg]≦0.6[Cu]+0.2(wt%)
で表わされる関係にあることを特徴とするAl製熱交換器用ブレージングシート。
【請求項7】Mn:0.5〜1.5wt%、Cu:0.3〜1.0wt%、Fe:0.1〜0.7wt%、Si:0.03〜0.4wt%およびTi:0.05〜0.3wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金を芯材とし、その片面または両面にろう材としてSi:5〜13wt%、Fe:0.05〜1.0wt%、Mg:0.5〜2.5wt%、およびTi:0.06〜0.3wt%とを含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金をクラッドしたことを特徴とするAl製熱交換器用ブレージングシート。
【請求項8】Mn:0.5〜1.5wt%、Cu:0.3〜1.0wt%、Fe:0.1〜0.7wt%、Si:0.03〜0.4wt%、およびTi:0.05〜0.3wt%を含み、さらにCr:0.05〜0.3wt%、Zr:0.05〜0.3wt%のいずれか1種または2種を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金を芯材とし、その片面または両面にろう材としてSi:5〜13wt%、Fe:0.05〜1.0wt%、Mg:0.5〜2.5wt%、およびTi:0.06〜0.3wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金をクラッドしたことを特徴とするAl製熱交換器用ブレージングシート。
【請求項9】Mn:0.5〜1.5wt%、Cu:0.3〜1.0wt%、Fe:0.1〜0.7wt%、Si:0.03〜0.4wt%、Mg:0.05〜0.5wt%、およびTi:0.05〜0.3%を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金を芯材とし、その片面または両面にろう材としてSi:5〜13wt%、Fe:0.05〜1.0wt%、Mg:0.5〜2.5wt%、およびTi:0.06〜0.3wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金をクラッドし、かつ芯材のCuとMgが[Mg]≦0.6[Cu]+0.2(wt%)で表わされる関係にあることを特徴とするAl製熱交換器用ブレージングシート。
【請求項10】Mn:0.5〜1.5wt%、Cu:0.3〜1.0wt%、Fe:0.1〜0.7wt%、Si:0.03〜0.4wt%、Mg:0.05〜0.5wt%、およびTi:0.06〜0.3%を含み、さらにCr:0.05〜0.3wt%、Zr:0.05〜0.3wt%のいずれか1種または2種を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金を芯材とし、その片面または両面にろう材としてSi:5〜13wt%、Fe:0.05〜1.0wt%、Mg:0.5〜2.5wt%、およびTi:0.06〜0.3wt%を含み、残部Alと不可避的不純物からなる合金をクラッドし、かつ芯材のCuとMgが[Mg]≦0.6[Cu]+0.2(wt%)で表わされる関係にあることを特徴とするAl製熱交換器用ブレージングシート。

【第1図】
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【公告番号】特公平7−4678
【公告日】平成7年(1995)1月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−181668
【出願日】昭和63年(1988)7月22日
【公開番号】特開平2−34297
【公開日】平成2年(1990)2月5日
【出願人】(999999999)スカイアルミニウム株式会社
【参考文献】
【文献】特開昭61−82992(JP,A)
【文献】特開昭62−80246(JP,A)
【文献】特公昭58−27335(JP,B2)
【文献】特公昭62−42987(JP,B2)