説明

アルミニウム電解コンデンサ

【課題】ウィスカのコンデンサ外への落下を防止し、短絡事故などをより確実に防くことが可能なアルミニウム電解コンデンサを提供する。
【解決手段】封口ゴム4の一部に形成された端子挿通孔5の内周面から引出リード線22の外周に沿って環状に密着する少なくとも2つのシールリング51,52を設けるとともに、ウィスカ23aを貯留するポケット53,54を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム電解コンデンサに関し、さらに詳しく言えば、リード端子の溶接部に生成されるウィスカの落下を防止するアルミニウム電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム電解コンデンサでは、コンデンサ素子を構成するアルミニウム材からなる陽極箔と陰極箔とにリード端子が取り付けられ、そのリード端子が外装ケースの開口部を封止している封口体を貫通して外部に引き出されるようになっている。
【0003】
通常、リード端子は、アルミニウムの棒材の一端に羽子板状に押し潰された扁平部を有し、他端側が丸棒部とされたタブ端子が用いられるが、回路基板にハンダ付けを可能とするため、タブ端子の丸棒部には、引出リード線としてSnメッキされた銅被覆鋼線(CP線)が溶接される。
【0004】
環境問題から引出リード線のメッキ層は鉛フリー化され、Snメッキが用いられるようになってきている。鉛を含まないSnの表面にはウィスカが生成されることが知られており、とりわけ、アルミニウムや鉄など異種金属が混在する溶接部は、ウィスカが急激に生成されることが知られている。
【0005】
Snウィスカは脆く、衝撃などによって容易に剥がれ落ちるため、場合によっては封口体の端子挿通孔の隙間を通ってコンデンサの外に出て、回路基板上に落ちるおそれがある。したがって、アルミニウム電解コンデンサでは、引出リード線の鉛フリー化に伴い発生するSnウィスカ由来の回路での短絡が発生しないように予防することが課題となっている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された端子挿通孔には、次のような問題があった。すなわち、アルミニウム電解コンデンサのリード線を回路基板のスルーホールに挿入する際、例えば位置ズレなどにより、CP線が強制的に折り曲げられることがある。
【0007】
そうすると、端子挿通孔と引出リード線との間に隙間が生じ、その隙間からウィスカが回路基板上に落下するおそれが考えられた。そこで、このような問題を解決する方法の1つとして、特許文献2には、端子挿通孔の引出口側にウィスカ落下防止用のブーツを一体的に形成している。
【0008】
これによれば、CP線の動きに追従してブーツの先端が動くため、CP線が折り曲げられても、ブーツとCP線の間に隙間が生じにくくなっている。しかしながら、特許文献2に記載のブーツは、端子挿通孔の引出口からファンネル状(漏斗状)に突出されており、その内周面に沿って溶接部が配置されるため、ウィスカがブーツの内周面に擦れて剥がれ落ちやすいばかりでなく、擦れて微細化して落下するおそれがあった。
【0009】
【特許文献1】特開2006−295055号公報
【特許文献2】特開2008−251982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ウィスカのコンデンサ外への落下を防止し、短絡事故などをより確実に防くことが可能なアルミニウム電解コンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するため、本発明は以下に示すいくつかの特徴を備えている。請求項1に記載の発明は、一対のリード端子が取り付けられたコンデンサ素子と、上記コンデンサ素子が所定の電解物質とともに収納される有底筒状の外装ケースと、上記外装ケースの開口部に装着され、上記リード端子用の端子挿通孔を有する封口ゴムとを含み、リード端子は、上記コンデンサ素子に電気的に接続され、アルミニウム材からなるタブ端子と、上記タブ端子の先端に溶接される引出リード線とを有し、上記引出リード線が上記端子挿通孔を介して、上記外装ケース外に引き出されるアルミニウム電解コンデンサにおいて、
上記端子挿通孔には、上記リード端子の丸棒部が挿通される丸棒挿通孔と、上記丸棒挿通孔に同軸的に連通し、上記引出リード線が挿通されるリード線挿通孔とを含み、上記封止ゴムには、上記引出リード線の外周面に沿って環状に密着する少なくとも2つのシールリングが上記引出リード線の軸線方向に沿って所定の間隔をもって設けられていることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1において、上記シールリングの間には、上記溶接部で生成されるウィスカを受け止めるポケットが形成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の発明は、上記請求項1または2において、上記丸棒挿通孔にも上記ウィスカを受け止めるポケットが形成されていることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明は、上記請求項1,2または3において、上記ポケットは、上記リード端子の挿通方向に沿って漸次径が減少するすり鉢状に形成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載の発明は、上記請求項1ないし4のいずれか1項において、上記引出リード線の先端が半球状、または、角を取るように面取りされていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、封口ゴムに引出リード線の外周面に沿って環状に密着する少なくとも2つのシールリングを設け、隣接するシールリングの間にポケットを設けたことにより、引出リード線の外周面に密着するシールリングによってウィスカの落下を確実に防止するとともに、もしシールリングの間をすり抜けてウィスカが落下してもポケットにウィスカが溜まることで、ウィスカを安全に溜めておくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこの限りではない。図1は本発明の一実施形態に係るアルミニウム電解コンデンサの断面図であり、図2はリード端子と封口体の部分拡大図であり、図3はリード端子が折り曲げられた状態を示す模式図である。図4は引出リード線の先端部の部分拡大図である。
【0018】
図1および図2に示すように、このアルミニウム電解コンデンサは、一対のリード端子2,2を有するコンデンサ素子1を備える。コンデンサ素子1は、アルミニウム材からなる陽極箔と陰極箔とをセパレータ紙(ともに図示しない)を介して渦巻き状に巻回することにより形成される。
【0019】
コンデンサ素子1は、有底円筒状の外装ケース3内に所定の電解物質を伴って収納され、電装ケース3の開口部は、封口ゴム4(封口体)によって封口される。封口ゴム4には、端子挿通孔5,5が設けられており、この端子挿通孔5,5を通してリード端子2,2の先端部が外部に引き出される。
【0020】
この例において、端子挿通孔5,5の孔径は、リード端子2,2の丸棒部5bの直径の20〜99.9%とされているが、好ましくは孔径が75%以下、より好ましくは孔径が40%以下としてウィスカ23aが漏れないようにきつく嵌合することが好ましい。
【0021】
封口ゴム4は、先にリード端子2,2に取り付けられた状態でコンデンサ素子1とともに外装ケース3内に収納され、その形成される外装ケース3の横絞り溝3aと、外装ケース3の端縁3bのカシメによって外装ケース3の開口部内に気密的に固定される。
【0022】
外装ケース3は、通常よく用いられるアルミニウムケースであってよい。封口ゴム4には、ブチルゴムなどが用いられてよい。外装ケース3および封口ゴム4の材質は、仕様に応じて任意に設定されてよい。また、電解物質には、通常、水系もしくは有機系の液状電解質以外に固体電解質が用いられてもよく、この限りではない。
【0023】
リード端子2,2はともに同一形状であり、コンデンサ素子1に対して電気的に接続されるタブ端子21と、タブ端子21の先端に一体的に溶接される引出リード線22とを含んでいる。
【0024】
タブ端子21はアルミニウム材からなり、丸棒材の一部を羽子板状にプレスして成型される扁平部21aと、未加工のままの丸棒部21bとを備えている。タブ端子21は、扁平部21aがカシメなどによってコンデンサ素子1の陽極箔と陰極箔とに取り付けられている。
【0025】
引出リード線22には、表面がSnメッキされた銅被覆鋼線(CP線)が用いられる。引出リード線22は、回路基板に対するハンダ付け性をよくするため、表面にSn(スズ)のメッキ層が設けられている。メッキ層は一般にSn100%からなるが、基本的に鉛フリーであれば、その他の合金元素や添加剤などが添加されていてもよい。
【0026】
引出リード線22は、タブ端子21の丸棒部よりも小径で、丸棒部の端部に溶接(溶接部23)によって一体的に固着されている。リード端子2は、タブ端子21と引出リード線22ではメッキ層は安定しているが、溶接部23では、アルミニウムや鉄などの異種金属が混在しているため、外気に晒されると、アルミニウムの水和や酸化反応によってSn層に応力が働き、ウィスカ23aがヒゲ状に多数形成される。
【0027】
図4に示すように、引出リード線22の先端22aは、引出リード線22を少なくとも封口ゴム4に挿通するときには、半球状に面取りされている。引出リード線22の先端22aを面取りする方法は、切削加工やプレス加工など仕様に応じて任意に選択されてよい。また、引出リード線22の先端の角部を落とすように面取りしてもよい。
【0028】
引出リード線22の先端22aを面取りすることにより、端子挿通孔5に引出リード線22を挿入した際に、端子挿通孔5の内面を傷つけることなく、引出リード線22を確実に出口まで案内することができる。さらには、回路基板のスルーホールへの案内もスムーズにできる。先端22aは、少なくとも角部が面取りされていればよいが、より案内をスムーズにするために先端部22aの全体を半球状に形成することが好ましい。引出リード線22を封口ゴムに4に挿通したのちに先端部22aを切断することは任意である。
【0029】
参考までに、先端部22aを半球状に面取りした引出リード線22を用いたコンデンサ10000個の歩留まりは、99.98%(10000個中17個が挿入不良)であったのに対し、面取りしていないコンデンサ10000個の歩留まりは、72.4%(10000個中2757個の挿入不良)であった。
【0030】
ウィスカ23aが図示しない基板上に落ちると短絡のおそれがあるため、本発明では、図2に示すように、封口ゴム4に形成される端子挿通孔5,5を以下のような構成としている。なお、端子挿通孔5,5は同一形状であるため、以下においては、いずれか一方についてのみ説明する。
【0031】
すなわち、端子挿通孔5は、タブ端子21の丸棒部21bが挿入される丸棒挿通孔5aと、引出リード線22が挿通されるリード線挿通孔5bとを含んでおり、リード線挿通孔5bは、丸棒挿通孔5aの一端側に同軸的に連通するように配置されている。
【0032】
丸棒挿通孔5aは、丸棒部21aと同径もしくは若干小径な孔であってよい。これに対して、リード線挿通孔5bは、丸棒挿通孔5aよりも小径で、かつ、引出リード線22の外径よりも小径となるように形成されている。
【0033】
丸棒挿通孔5aとリード線挿通孔5bとの間には、丸棒挿通孔5aからリード線挿通孔5bに向かうにつれて内径が漸次小さくなる、いわゆるすり鉢テーパ状の第1ポケット53が形成されている。この第1ポケット53にウィスカ23aが貯留される。
【0034】
封口ゴム4の一部には、引出リード線22の外周に沿って環状に密着する少なくとも2つのシールリング51,52が設けられている。各シールリング51,52は、丸棒挿通孔5aの下端側に一体的に形成されており、その各々の中央にリード線挿通孔5aが同軸的に形成されている。
【0035】
一方のシールリング51(以下、第1シールリング51)は、溶接部23から所定間隔をもって端子挿通孔5の中程に配置されており、端子挿通孔5の内周面から引出リード線22の外周面に向かってすり鉢状に形成されている。
【0036】
この第1シールリング51と溶接部23との間に溶接部23で生成されるウィスカ23aが貯留される第1ポケット53が形成される。
【0037】
他方のシールリング52(以下、第2シールリング52)は、端子挿通孔5の開口端に配置されており、第1シールリング51と同様に、端子挿通孔5の内周面から引出リード線22の外周面に向かってすり鉢状に形成されている。
【0038】
第1シールリング51と第2シールリング52との間には、第1ポケット53をすり抜けて落下してきたウィスカ23aを受け止める第2ポケット54が設けられている。
【0039】
これによれば、図3に示すように、引出リード線22が折り曲げられたとしても、第1シールリング51と第2シールリング52とがそれぞれ独立して引出リード線22の表面に追従して変形するため、隙間の形成を極力小さくすることができる。
【0040】
さらには、仮にウィスカ23aが落下しても、ウィスカ23aは、まず第1ポケット53で受け止められるし、第1シールリング51をすり抜けて落下してきても第2ポケット54によって受け止められるため短絡を2重に防止することができる。
【0041】
この例において、シールリング51,52は、端子挿通孔5の内部に2箇所設けられているが、より安全性を高めるためには、さらに多くのシールリングを設けてもよい。また、設置位置は、端子挿通孔5の内部だけでなく、端子挿通孔5の出口に独立して設けてもよい。さらには、シールリング51,52はともに、すり鉢状(円錐状)に形成されているが、これ以外の錘体形状であってもよく、異なる錘体形状を組み合わせてもよい。
【0042】
この実施形態において、端子挿通孔5はアルミニウム電解コンデンサを例にとって説明したが、本発明はこれに限られず、同様の構造品にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係るアルミニウム電解コンデンサの断面図。
【図2】リード端子と封口体の部分拡大図。
【図3】リード端子が折り曲げられた状態を示す模式図。
【図4】引出リード線の先端部の部分拡大図。
【符号の説明】
【0044】
1 コンデンサ素子
2 リード端子
21 タブ端子
22 引出リード線
23 溶接部
23a ウィスカ
3 外装ケース
4 封口ゴム(封口体)
5 端子挿通孔
51 第1シールリング
52 第2シールリング
53 第1ポケット
54 第2ポケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のリード端子が取り付けられたコンデンサ素子と、上記コンデンサ素子が所定の電解物質とともに収納される有底筒状の外装ケースと、上記外装ケースの開口部に装着され、上記リード端子用の端子挿通孔を有する封口ゴムとを含み、リード端子は、上記コンデンサ素子に電気的に接続され、アルミニウム材からなるタブ端子と、上記タブ端子の先端に溶接される引出リード線とを有し、上記引出リード線が上記端子挿通孔を介して、上記外装ケース外に引き出されるアルミニウム電解コンデンサにおいて、
上記端子挿通孔には、上記リード端子の丸棒部が挿通される丸棒挿通孔と、上記丸棒挿通孔に同軸的に連通し、上記引出リード線が挿通されるリード線挿通孔とを含み、上記封止ゴムには、上記引出リード線の外周面に沿って環状に密着する少なくとも2つのシールリングが上記引出リード線の軸線方向に沿って所定の間隔をもって設けられていることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ。
【請求項2】
上記シールリングの間には、上記溶接部で生成されるウィスカを受け止めるポケットが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム電解コンデンサ。
【請求項3】
上記丸棒挿通孔にも上記ウィスカを受け止めるポケットが形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のアルミニウム電解コンデンサ。
【請求項4】
上記ポケットは、上記リード端子の挿通方向に沿って漸次径が減少するすり鉢状に形成されていることを特徴とする請求項1,2または3に記載のアルミニウム電解コンデンサ。
【請求項5】
上記引出リード線の先端が半球状、または、角を取るように面取りされていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のアルミニウム電解コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−153712(P2010−153712A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332481(P2008−332481)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000103220)エルナー株式会社 (48)