説明

アルミニウム電解コンデンサ

【課題】ウィスカのコンデンサ外への落下を防止し、短絡事故などをより確実に防くことが可能なアルミニウム電解コンデンサを提供する。
【解決手段】リード線挿通孔5bに第1テーパ面51と、第1テーパ面51よりも急勾配の第2テーパ面52とを設け、第2テーパ面52の出口を引出リード線5bの直径よりも小径として、第2テーパ面52の出口を引出リード線5bの外周面に沿って環状に密着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム電解コンデンサに関し、さらに詳しく言えば、リード端子の溶接部に生成されるウィスカの落下を防止するアルミニウム電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム電解コンデンサでは、コンデンサ素子を構成するアルミニウム材からなる陽極箔と陰極箔とにリード端子が取り付けられ、そのリード端子が外装ケースの開口部を封止している封口体を貫通して外部に引き出されるようになっている。
【0003】
通常、リード端子は、アルミニウムの棒材の一端に羽子板状に押し潰された扁平部を有し、他端側が丸棒部とされたタブ端子が用いられるが、回路基板にハンダ付けを可能とするため、タブ端子の丸棒部には、引出リード線としてSnメッキされた銅被覆鋼線(CP線)が溶接される。
【0004】
環境問題から引出リード線のメッキ層は鉛フリー化され、Snメッキが用いられるようになってきている。鉛を含まないSnの表面にはウィスカが生成されることが知られており、とりわけ、アルミニウムや鉄など異種金属が混在する溶接部は、ウィスカが急激に生成されることが知られている。
【0005】
Snウィスカは脆く、衝撃などによって容易に剥がれ落ちるため、場合によっては封口体の端子挿通孔の隙間を通ってコンデンサの外に出て、回路基板上に落ちるおそれがある。したがって、アルミニウム電解コンデンサでは、引出リード線の鉛フリー化に伴い発生するSnウィスカ由来の回路での短絡が発生しないように予防することが課題となっている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された端子挿通孔には、次のような問題があった。すなわち、アルミニウム電解コンデンサのリード線を回路基板のスルーホールに挿入する際、例えば位置ズレなどにより、CP線が強制的に折り曲げられることがある。
【0007】
そうすると、端子挿通孔と引出リード線との間に隙間が生じ、その隙間からウィスカが回路基板上に落下するおそれが考えられた。そこで、このような問題を解決する方法の1つとして、特許文献2には、端子挿通孔の引出口側にウィスカ落下防止用のブーツを一体的に形成している。
【0008】
これによれば、CP線の動きに追従してブーツの先端が動くため、CP線が折り曲げられても、ブーツとCP線の間に隙間が生じにくくなっている。しかしながら、特許文献2に記載のブーツは、端子挿通孔の引出口からファンネル状(漏斗状)に突出されており、その内周面に沿って溶接部が配置されるため、ウィスカがブーツの内周面に擦れて剥がれ落ちやすいばかりでなく、擦れて微細化して落下するおそれがあった。
【0009】
【特許文献1】特開2006−295055号公報
【特許文献2】特開2008−251982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ウィスカのコンデンサ外への落下を防止し、短絡事故などをより確実に防くことが可能なアルミニウム電解コンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するため、本発明は以下に示すいくつかの特徴を備えている。請求項1に記載の発明は、一対のリード端子が取り付けられたコンデンサ素子と、上記コンデンサ素子が所定の電解物質とともに収納される有底筒状の外装ケースと、上記外装ケースの開口部に装着され、上記リード端子用の端子挿通孔を有する封口ゴムとを含み、リード端子は、上記コンデンサ素子に電気的に接続され、アルミニウム材からなるタブ端子と、上記タブ端子の丸棒部の端部に溶接される引出リード線とを有し、上記引出リード線が上記端子挿通孔を介して上記外装ケース外に引き出されるアルミニウム電解コンデンサにおいて、上記端子挿通孔には、上記リード端子の丸棒部が挿通される丸棒挿通孔と、上記丸棒挿通孔に同軸的に連通し、上記引出リード線が挿通され、上記丸棒挿通孔よりも小径なリード線挿通孔とを含み、上記リード線挿通孔は、上記丸棒挿通孔側から上記引出リード線の挿通方向に沿って内径が漸次減少するすり鉢状の第1テーパ面と、上記封口ゴムの外周面の開口径が少なくとも上記引出リード線の直径よりも小径となるように、上記第1テーパ面の終端から上記引出リード線の挿通方向に沿って内径が漸次減少するすり鉢状の第2テーパ面とを有することを特徴としている。
【0012】
請求項1に記載の発明は、上記請求項1において、上記第2テーパ面は、その勾配が上記第1テーパ面の傾斜角よりも急勾配となるように形成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の発明は、上記請求項1または2において、上記第1テーパ面の終端側の開口径が、上記引出リード線の開口径よりも大径であることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明は、上記請求項1,2または3において、上記引出リード線の先端が半球状または角を取るように面取りされていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、リード線挿通孔の一部に第1テーパ面と、第1テーパ面よりも急勾配の第2テーパ面とを設け、第2テーパ面の出口を引出リード線の直径よりも小径としたことにより、第2テーパ面の出口が引出リード線の外周面に沿って環状に密着するため、もし引出リード線が折り曲げられても、密着部が追従して動きやすく、リード線挿通孔の開口端を塞ぐことでウィスカの落下を確実に防止することができる。また、引出リード線の先端を半球状に面取りすることで、封口ゴムの内部を傷つけることなく、リード線挿通孔へ確実に案内される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこの限りではない。図1は本発明の一実施形態に係るアルミニウム電解コンデンサの断面図であり、図2はリード端子と封口体の部分拡大図であり、図3はリード線挿通孔の要部拡大断面図である。図4は、引出リード線の先端の拡大図である。
【0017】
図1および図2に示すように、このアルミニウム電解コンデンサは、一対のリード端子2,2を有するコンデンサ素子1を備える。コンデンサ素子1は、アルミニウム材からなる陽極箔と陰極箔とをセパレータ紙(ともに図示しない)を介して渦巻き状に巻回することにより形成される。
【0018】
コンデンサ素子1は、有底円筒状の外装ケース3内に所定の電解物質を伴って収納され、外装ケース3の開口部は、封口ゴム(封口体)4によって封口される。封口ゴム4には、端子挿通孔5,5が設けられており、この端子挿通孔5,5を通してリード端子2,2の先端部が外部に引き出される。
【0019】
封口ゴム4は、リード端子2,2に取り付けられた状態でコンデンサ素子1とともに外装ケース3内に収納され、その後に形成される外装ケース3の横絞り溝3aと、外装ケース3の端縁3bのカシメによって外装ケース3の開口部内に気密的に固定される。
【0020】
この例において、端子挿通孔5,5の孔径は、リード端子2,2の丸棒部5bの直径の20〜99.9%とされているが、好ましくは孔径が75%以下、より好ましくは孔径が40%以下としてウィスカ23aが漏れないようにきつく嵌合することが好ましい。
【0021】
外装ケース3は、通常よく用いられるアルミニウムケースであってよい。封口ゴム4には、ブチルゴムなどが用いられてよい。外装ケース3および封口ゴム4の材質は、仕様に応じて任意に設定されてよい。また、電解物質には、通常、水系もしくは有機系の液状電解質以外に固体電解質が用いられてもよく、この限りではない。
【0022】
リード端子2,2はともに同一形状であり、コンデンサ素子1に対して電気的に接続されるタブ端子21と、タブ端子21の先端に一体的に溶接される引出リード線22とを含んでいる。
【0023】
タブ端子21はアルミニウム材からなり、丸棒材の一部を羽子板状にプレスして成形される扁平部21aと、未加工のままの丸棒部21bとを備えている。タブ端子21は、扁平部21aがカシメなどによってコンデンサ素子1の陽極箔と陰極箔とに取り付けられている。
【0024】
引出リード線22には、表面がSnメッキされた銅被覆鋼線(CP線)が用いられる。引出リード線22は、回路基板に対するハンダ付け性をよくするため、表面にSn(スズ)のメッキ層が設けられている。メッキ層は一般にSn100%からなるが、基本的に鉛フリーであれば、その他の合金元素や添加剤などが添加されていてもよい。
【0025】
引出リード線22は、タブ端子21の丸棒部よりも小径で、丸棒部の端部に溶接(溶接部23)によって一体的に固着されている。リード端子2は、タブ端子21と引出リード線22ではメッキ層は安定しているが、溶接部23では、アルミニウムや鉄などの異種金属が混在しているため、外気に晒されると、アルミニウムの水和や酸化反応によってSn層に応力が働き、ウィスカ23aがヒゲ状に多数形成される。
【0026】
図4に示すように、引出リード線22の先端22aは、引出リード線22を少なくとも封口ゴム4に挿通するときには、半球状に面取りされている。引出リード線22の先端22aを面取りする方法は、切削加工やプレス加工など仕様に応じて任意に選択されてよい。また、引出リード線22の先端の角部を落とすように面取りしてもよい。
【0027】
引出リード線22の先端22aを面取りすることにより、端子挿通孔5に引出リード線22を挿入した際に、端子挿通孔5の内面を傷つけることなく、引出リード線22を確実に出口まで案内することができる。さらには、回路基板のスルーホールへの案内もスムーズにできる。先端22aは、少なくとも角部が面取りされていればよいが、より案内をスムーズにするために先端部22aの全体を半球状に形成することが好ましい。引出リード線22を封口ゴム4に挿通したのちに、先端部22aを切断することは任意である。
【0028】
参考までに、先端部22aを半球状に面取りした引出リード線22を用いたコンデンサ10000個の歩留まりは、99.98%(10000個中17個が挿入不良)であったのに対し、面取りしていないコンデンサ10000個の歩留まりは、72.4%(10000個中2757個の挿入不良)であった。
【0029】
ウィスカ23aが図示しない基板上に落ちると短絡のおそれがあるため、本発明では、図3に示すように、封口ゴム4に形成される端子挿通孔5,5を以下のような構成としている。なお、端子挿通孔5,5は同一形状であるため、以下においては、いずれか一方についてのみ説明する。
【0030】
すなわち、端子挿通孔5は、タブ端子21の丸棒部21bが挿入される丸棒挿通孔5aと、引出リード線22が挿通されるリード線挿通孔5bとを含んでおり、リード線挿通孔5bは、丸棒挿通孔5aの一端側に同軸的に連通するように配置されている。
【0031】
丸棒挿通孔5aは、丸棒部21bと同径もしくは若干小径な孔であってよい。これに対して、リード線挿通孔5bは、丸棒挿通孔5a側から引出リード線22の挿通方向(図3では上下方向)に沿って内径が漸次減少するすり鉢状の第1テーパ面51と、第1テーパ面51に同軸的に連通し、内径が軸線方向に沿って漸次さらに減少するすり鉢状の第2テーパ面52とを備えている。
【0032】
第1テーパ面51は、引出リード線22の引出方向に沿って丸棒挿通孔5a側の内径φ1から終端側の開口径φ2となるように漸次内径が小さくなるすり鉢状に形成されている。第2テーパ面52は、第1テーパ面51の傾斜角よりもさらに急傾斜となるように、その開口径が漸次小さくなるように形成されている。
【0033】
第2テーパ面52は、封口ゴム4の端面の開口径φ3が引出リード線の直径φaよりも小さく(φ3<φa)なるように形成されている。これによれば、図2に示すように、溶接部23から落下してきたウィスカ23aを第1テーパ面51の空間で確実に貯留しておくことができる。
【0034】
第2テーパ面52における封口ゴム4の平均厚さは0.1mm以上、または、封口ゴム4の軸方向の全体厚さの1%以上であることが好ましい。これによれば、第2テーパ面52と引出リード線22との間に隙間が生じることがない。
【0035】
さらには、第2テーパ面52の先端側が引出リード線22の外周面に沿って密着することにより、もし引出リード線22が折り曲げられても、第2テーパ面52の先端側が引出リード線22に追従して密着することによって、隙間からウィスカ23aが落下するのを確実に防止できる。
【0036】
この実施形態において、第1テーパ面51および第2テーパ面52はともに、すり鉢状(円錐状)に形成されているが、これ以外の錘形状であってもよく、異なる錘形状を組み合わせてもよい。また、端子挿通孔5はアルミニウム電解コンデンサを例にとって説明したが、本発明はこれに限られず、同様の構造品にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係るアルミニウム電解コンデンサの断面図。
【図2】リード端子と封口体の部分拡大図。
【図3】リード線挿通孔の要部拡大断面図。
【図4】引出リード線の先端の拡大図。
【符号の説明】
【0038】
1 コンデンサ素子
2 リード端子
21 タブ端子
22 引出リード線
23 溶接部
23a ウィスカ
3 外装ケース
4 封口ゴム(封口体)
5 端子挿通孔
5a 丸棒挿通孔
5b リード線挿通孔
51 第1テーパ面
52 第2テーパ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のリード端子が取り付けられたコンデンサ素子と、上記コンデンサ素子が所定の電解物質とともに収納される有底筒状の外装ケースと、上記外装ケースの開口部に装着され、上記リード端子用の端子挿通孔を有する封口ゴムとを含み、リード端子は、上記コンデンサ素子に電気的に接続され、アルミニウム材からなるタブ端子と、上記タブ端子の丸棒部の端部に溶接される引出リード線とを有し、上記引出リード線が上記端子挿通孔を介して上記外装ケース外に引き出されるアルミニウム電解コンデンサにおいて、
上記端子挿通孔には、上記リード端子の丸棒部が挿通される丸棒挿通孔と、上記丸棒挿通孔に同軸的に連通し、上記引出リード線が挿通され、上記丸棒挿通孔よりも小径なリード線挿通孔とを含み、
上記リード線挿通孔は、上記丸棒挿通孔側から上記引出リード線の挿通方向に沿って内径が漸次減少するすり鉢状の第1テーパ面と、上記封口ゴムの外周面の開口径が少なくとも上記引出リード線の直径よりも小径となるように、上記第1テーパ面の終端から上記引出リード線の挿通方向に沿って内径が漸次減少するすり鉢状の第2テーパ面とを有することを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ。
【請求項2】
上記第2テーパ面は、その勾配が上記第1テーパ面の傾斜角よりも急勾配となるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム電解コンデンサ。
【請求項3】
上記第1テーパ面の終端側の開口径が、上記引出リード線の開口径よりも大径であることを特徴とする請求項1または2に記載のアルミニウム電解コンデンサ。
【請求項4】
上記引出リード線の先端が半球状または角を取るように面取りされていることを特徴とする請求項1,2または3に記載のアルミニウム電解コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−153714(P2010−153714A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332503(P2008−332503)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000103220)エルナー株式会社 (48)