説明

アルミニウム電解コンデンサ

【目的】ゴム封口体の透孔とこれを貫通している端子の丸棒部との間から電解液が外部に漏洩しないような、4級塩電解液を使用したアルミニウム電解コンデンサを提供すること。
【構成】アルミニウムの陽極箔と陰極箔とをセパレータ紙を介して巻回し4級塩電解液を含浸させてなるコンデンサ素子3が、ゴム封口体5にて封口された有底の外装ケース2内に収納され、コンデンサ素子の陽極箔及び陰極箔に固着された端子4がゴム封口体5の透孔6を通して外装ケース2外に引き出されてなるアルミニウム電解コンデンサ1において、コンデンサ素子3とゴム封口体5との間の少なくとも陰極側の端子4の周辺に端子に接してフッ素樹脂シート7が配置されている。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、アルミニウム電解コンデンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
図2のようにアルミニウム電解コンデンサ10は、アルミニウムの陽極箔11とアルミニウムの陰極箔12とをセパレータ紙13を介して巻回してなるコンデンサ素子14に駆動用の電解液を含浸し、このコンデンサ素子を一方に開口部を有するアルミニウム製の有底の外装ケース15内に収納した後、外装ケースの開口部内にゴム封口体16を配置して塞ぎ、外装ケースの開口部周辺17を封止加工することにより密閉した構造を有する。なお、図2ではアルミニウム電解コンデンサ10は使用状態で示され、製造時は上下が逆さまになっている。
【0003】 陽極箔と陰極箔にはそれぞれ端子18(図2では陰極側の端子のみ図示されている)のハゴ板部18aがカシメやコールドウエルド法などにより固着され、端子18の他端はゴム封口体16の透孔19を通してそれぞれ外部に引き出されている。
【0004】
駆動用の電解液としては、近年、γ−ブチロラクトンやエチレングリコールなどの溶媒中に、o−フタル酸の第4級アンモニウム塩やマレイン酸の第4級アンモニウム塩を溶質として溶解した4級塩電解液が使用されている。
【0005】
【考案が解決しようとする課題】
電解液は真空下にコンデンサ素子に含浸せしめられて、巻回された状態のアルミニウムの陽極箔及び陰極箔やセパレータ紙に保持されるが、保持される量には多少ばらつきがある。保持量が多いと、使用状態においてコンデンサ素子14の、ゴム封口体16に面する方の面に電解液がにじみ出てきて、ゴム封口体の面を濡らす場合がある。
【0006】
ことに、上述したような4級塩を溶質とした電解液を使用した場合には、電場が印加されると、陰極側の端子18がゴム封口体16の透孔19に入る近辺21において、電解液のpHが強アルカリになることが知られている。このため陰極側の端子18がゴム封口体16の透孔19に入る付近の丸棒部20やゴム封口体16が侵食され、長い期間のうちには、ゴム封口体16の透孔19とこれに密着して貫通している陰極側の端子18の丸棒部20との間に隙間ができ、ここから電解液が外部に漏洩する場合があった。
【0007】
本考案は、ゴム封口体の透孔とこれを貫通している端子の丸棒部との間から電解液が外部に漏洩しないような、4級塩電解液を使用したアルミニウム電解コンデンサを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
アルミニウムの陽極箔と陰極箔とをセパレータ紙を介して巻回し4級塩電解液を含浸させてなるコンデンサ素子が、ゴム封口体にて封口された有底の外装ケース内に収納され、コンデンサ素子の陽極箔及び陰極箔に固着された端子がゴム封口体の透孔を通して外装ケース外に引き出されてなるアルミニウム電解コンデンサにおいて、コンデンサ素子とゴム封口体との間の少なくとも陰極側の端子の周辺に端子に接してフッ素樹脂シートが配置されているように構成されている。
【0009】
また、アルミニウムの陽極箔と陰極箔とをセパレータ紙を介して巻回し4級塩電解液を含浸させてなるコンデンサ素子が、ゴム封口体にて封口された有底の外装ケース内に収納され、コンデンサ素子の陽極箔及び陰極箔に固着された端子がゴム封口体の透孔を通して外装ケース外に引き出されてなるアルミニウム電解コンデンサにおいて、コンデンサ素子とゴム封口体との間の少なくとも陰極側の端子の周辺に端子に接して四フッ化エチレン樹脂製、又は四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂製のシートが配置されているように構成されている。
【0010】
【作用】
電解液が含浸せしめられたコンデンサ素子とゴム封口体との間の少なくとも陰極側の端子の周辺に、撥水性であるフッ素樹脂シート、例えば四フッ化エチレン樹脂、又は四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂製のシートが配置されているので、コンデンサ素子の、ゴム封口体に面する方の面に電解液がにじみ出てきても、陰極側の端子の周辺で電解液がゴム封口体の面に接することはなく、ゴム封口体の透孔に入る付近の陰極側の端子やゴム封口体が侵食されない。
【0011】
【実施例】
図1において、アルミニウム電解コンデンサ1は、有底筒状の外装ケース2内に配置され電解液が含浸せしめられたコンデンサ素子3を有し、コンデンサ素子3はアルミニウムの陽極箔とアルミニウムの陰極箔とをセパレータ紙を介して巻回して構成してなる。陽極箔と陰極箔にはそれぞれ端子4が固着され(図1では陰極側の端子のみ図示されている)、端子4はコンデンサ素子3より引き出されて、端子4の丸棒部4aがゴム封口体5の透孔6を貫通し、丸棒部4aに溶接された端子4のCP線4bが外装ケース2外に引き出されている。ゴム封口体5付近の外装ケース2の部分2aはかしめられゴム封口体5を固定している。
【0012】
コンデンサ素子3とゴム封口体5との間にはフッ素樹脂シート7が配置されている。フッ素樹脂シートはゴム封口体5の面と同じかそれよりやや大きくてゴム封口体5の面の全体に配置されていても、あるいは両端子4の周辺、ことに陰極側の端子の周辺だけに配置されていてもよい。フッ素樹脂シートは、例えば四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、又は四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)であることができる。フッ素樹脂シートの厚さは例えば250μmである。
【0013】
端子4はフッ素樹脂シート7に穴を設けずに端子を突き刺して通すようにしてもよいが、予めフッ素樹脂シートに端子4の丸棒部4aの直径より小さい穴を設けここに端子を通した方が、端子の丸棒部とフッ素樹脂シートの穴との間の密着性がよく、電解液が端子の丸棒部とゴム封口体5の透孔6との隙間に入るのを阻止できるので好ましい。
【0014】
本考案によるアルミニウム電解コンデンサ(定格10V1800μF、直径12.5mm、高さ20mm)と、これと同じ定格及び大きさの従来品を作り、60℃湿度95%で、定格電圧を時間を変えて最大2000時間まで印加後、陰極側の端子の丸棒部とこれを貫通しているゴム封口体の透孔との間の電解液の液漏れを、20倍実体顕微鏡で確認したところ、表1のような結果を得た。なお、電解液は予めコンデンサ素子に含浸させた後、厚さ250μmの樹脂シートを装着した。樹脂シートはゴム封口体5の面と同じ大きさのものを用いた。
【0015】
【表1】


【0016】
なお、表中、PTFEはフッ素樹脂シートとして四フッ化エチレン樹脂シートを使用し、PFAはフッ素樹脂シートとして四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂シートを使用したことを意味する。また2/200は200個中、2個のアルミニウム電解コンデンサに電解液の液漏れが発見されたことを意味する。
【0017】
この結果から、本考案によるアルミニウム電解コンデンサは、電解液の液漏れに関して優れた効果があることがわかる。
【0018】
【考案の効果】
本考案では、電解液として4級塩を使用したアルミニウム電解コンデンサにおいて、電解液が含浸せしめられたコンデンサ素子とゴム封口体との間の少なくとも陰極側の端子の周辺に端子に接してPTFEやPFAのような撥水性のフッ素樹脂シートが配置されているように構成されているので、コンデンサ素子の、ゴム封口体に面する方の面に電解液がにじみ出てきても、電解液がゴム封口体の面に付着することなく、陰極側の端子付近で強アルカリになった電解液に陰極側の端子の丸棒部やゴム封口体の透孔が侵食されず、電解液の液漏れが防止できる。
【0019】
このため、アルミニウム電解コンデンサの電解液として最も電導度の高いγ−ブチロラクトン4級アンモニウム塩系電解液を使用することができ、2次平滑用コンデンサの小型化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案のアルミニウム電解コンデンサの一部を示す断面図。
【図2】従来のアルミニウム電解コンデンサの一部を示す断面図。
【符号の説明】
1 アルミニウム電解コンデンサ
2 外装ケース
3 コンデンサ素子
4 端子
4a 丸棒部
4b CP線
5 ゴム封口体
6 透孔
7 フッ素樹脂シート

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】アルミニウムの陽極箔と陰極箔とをセパレータ紙を介して巻回し4級塩電解液を含浸させてなるコンデンサ素子が、ゴム封口体にて封口された有底の外装ケース内に収納され、コンデンサ素子の陽極箔及び陰極箔に固着された端子がゴム封口体の透孔を通して外装ケース外に引き出されてなるアルミニウム電解コンデンサにおいて、コンデンサ素子とゴム封口体との間の少なくとも陰極側の端子の周辺に端子に接してフッ素樹脂シートが配置されていることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ。
【請求項2】アルミニウムの陽極箔と陰極箔とをセパレータ紙を介して巻回し4級塩電解液を含浸させてなるコンデンサ素子が、ゴム封口体にて封口された有底の外装ケース内に収納され、コンデンサ素子の陽極箔及び陰極箔に固着された端子がゴム封口体の透孔を通して外装ケース外に引き出されてなるアルミニウム電解コンデンサにおいて、コンデンサ素子とゴム封口体との間の少なくとも陰極側の端子の周辺に端子に接して四フッ化エチレン樹脂製のシートが配置されていることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ。
【請求項3】アルミニウムの陽極箔と陰極箔とをセパレータ紙を介して巻回し4級塩電解液を含浸させてなるコンデンサ素子が、ゴム封口体にて封口された有底の外装ケース内に収納され、コンデンサ素子の陽極箔及び陰極箔に固着された端子がゴム封口体の透孔を通して外装ケース外に引き出されてなるアルミニウム電解コンデンサにおいて、コンデンサ素子とゴム封口体との間の少なくとも陰極側の端子の周辺に端子に接して四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂製のシートが配置されていることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【登録番号】第3002430号
【登録日】平成6年(1994)7月13日
【発行日】平成6年(1994)9月27日
【考案の名称】アルミニウム電解コンデンサ
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平6−4071
【出願日】平成6年(1994)3月28日
【出願人】(000103220)エルナー株式会社 (48)