説明

アレルゲン不活性化剤組成物及びアレルゲン不活性化方法

【課題】アレルゲン不活性化の効果に優れたアレルゲン不活性化剤組成物と、簡便なアレルゲン不活性化方法の提供。
【解決手段】本発明のアレルゲン不活性化剤組成物は、酸化還元酵素(A)を含有することを特徴とする。当該アレルゲン不活性化剤組成物においては、前記酸化還元酵素(A)が、ラッカーゼ又はペルオキシダーゼであることが好ましい。また、当該アレルゲン不活性化剤組成物においては、芳香族炭化水素核の少なくとも一つの水素原子をヒドロキシ基で置換した芳香族ヒドロキシ化合物(B)をさらに含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダニや花粉等に由来するアレルゲンを不活性化する、アレルゲン不活性化剤組成物及びアレルゲン不活性化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、室内環境に存在するダニ、カビ、花粉、ペット、昆虫アレルギー等に由来するアレルゲン(室内環境アレルゲン)に感作されている人が増えている。そのため、くしゃみや鼻水の症状が現れたり、アトピー性皮膚炎や喘息などが増悪したりしている。
室内環境アレルゲンのなかでも特にダニアレルゲンは、喘息の増悪因子として問題となっている。このダニアレルゲンは、カーペット、畳、寝具類、ぬいぐるみ等に存在し、洗濯が日常行われている衣料にも、喘息の発症に充分な量が存在している。
【0003】
これまで、アレルゲンへの対策としては、たとえば、洗浄や掃除によりアレルゲンを物理的に除去する方法、アレルゲンを化学的に不活性化する方法が行われている。
【0004】
たとえば衣料を洗濯することは、アレルゲンを、物理的に除去する観点からも化学的に不活性化する観点から好ましい行動である。しかしながら、布団のような大きい被処理物に存在するアレルゲンを対象とした場合、布団等を家庭用洗濯機で洗濯することは困難であり、仮に洗濯を行うことができたとしても、アレルゲンを完全に除去又は不活性化することが難しい。
【0005】
アレルゲンを化学的に不活性化する方法においては、従来、アレルゲンを不活性化する成分(アレルゲン不活性化成分)としてコロイダルシリカを用いる技術が知られている(たとえば、非特許文献1参照)。
また、アレルゲン不活性化成分としてタンニン酸を用いる技術も知られている(たとえば、特許文献1参照)。
また、サリチル酸、没食子酸などのフェノール化合物(芳香族ヒドロキシ化合物)を用いることにより、アレルゲンを不活性化する技術が提案されている(たとえば、特許文献2〜3参照)。
これまで、これらアレルゲン不活性化成分を含有する組成物を、洗剤として洗濯の際に用いたり、当該組成物をスプレー容器から噴霧等して直接に被処理物に塗布したりする方法が、アレルゲン不活性化の方法として用いられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Oleo Sci.57,(6)353−358(2008)
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−044821号公報
【特許文献2】特表2004−510717号公報
【特許文献3】特開平06−279273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、アレルゲン不活性化成分としてコロイダルシリカを用いる場合、コロイダルシリカは、それ自体が不安定な液体状の原料であるため、その利用方法が限定される等の問題がある。
アレルゲン不活性化成分としてタンニン酸を用いる場合、タンニン酸が空気中の酸素によって重合し、その重合体の付着により被処理物が着色しやすい問題がある。
また、サリチル酸、没食子酸などの芳香族ヒドロキシ化合物を含有する組成物においては、アレルゲン不活性化の効果が未だ充分ではない。
これに対して、より一層高いアレルゲン不活性化の効果を発揮する技術の開発が望まれている。
特に、家庭用洗濯機で洗濯できる衣料等に限らず、布団のような大きい被処理物にも存在する室内環境アレルゲンを、充分に高い効果で、かつ、簡便な方法で不活性化できる、新たなアレルゲン不活性化成分又はアレルゲン不活性化方法に対する要求がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、アレルゲン不活性化の効果に優れたアレルゲン不活性化剤組成物と、簡便なアレルゲン不活性化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討した結果、上記課題を解決するために、以下の手段を提供する。
【0011】
すなわち、本発明のアレルゲン不活性化剤組成物は、酸化還元酵素(A)を含有することを特徴とする。
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物において、前記酸化還元酵素(A)は、ラッカーゼ又はペルオキシダーゼであることが好ましい。
また、本発明のアレルゲン不活性化剤組成物においては、芳香族炭化水素核の少なくとも一つの水素原子をヒドロキシ基で置換した芳香族ヒドロキシ化合物(B)をさらに含有することが好ましい。
【0012】
また、本発明のアレルゲン不活性化方法は、前記本発明のアレルゲン不活性化剤組成物を用いることを特徴とする。
本発明のアレルゲン不活性化方法においては、前記酸化還元酵素(A)としてペルオキシダーゼを含有する前記アレルゲン不活性化剤組成物と、過酸化物(C)とを併用することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アレルゲン不活性化の効果に優れたアレルゲン不活性化剤組成物と、簡便なアレルゲン不活性化方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
≪アレルゲン不活性化剤組成物≫
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物は、酸化還元酵素(A)を含有する。
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物においては、芳香族炭化水素核の少なくとも一つの水素原子をヒドロキシ基で置換した芳香族ヒドロキシ化合物(B)をさらに含有することが好ましい。
以下、本明細書において、当該酸化還元酵素(A)を(A)成分、当該芳香族ヒドロキシ化合物(B)を(B)成分ということがある。
【0015】
<酸化還元酵素(A)>
本明細書及び本特許請求の範囲において、「酸化還元酵素」とは、生体において物質の酸化還元を伴う反応を触媒する酵素をいう。
当該酸化還元酵素を用いることにより、アレルゲンを不活性化でき、かつ、従来よりもアレルゲン不活性化の高い効果が得られる。
【0016】
酸化還元酵素(A)としては、基質を酸化する際、酸素を電子受容体として用いる酵素 が好ましく、具体的には、ペルオキシダーゼ、ラッカーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、モノフェノールオキシダーゼ等が挙げられる。そのなかでも、アレルゲン不活性化の効果が特に良好であることから、ペルオキシダーゼ、ラッカーゼがより好ましく、ラッカーゼが最も好ましい。
【0017】
(ペルオキシダーゼ)
本発明において、ペルオキシダーゼは、下記の生物(植物、微生物)に由来するものを用いることができる(特表平10−506282号公報参照)。
【0018】
植物に由来するもの:
たとえば、セイヨウワサビ又はダイズペルオキシダーゼが挙げられる。
【0019】
微生物に由来するもの:
たとえば、真菌又は細菌に由来するものが挙げられる。
真菌又は細菌に由来するものとしては、デューテロミコティナ(Deuteromycotina)亜門、ヒホミセテス(Hyphomycetes)類に属する菌、たとえば、フザリウム属、フミコーラ属(Humicola)、トリコデルマ属(Tricoderma)、ミロセシウム属(Myrothecium)、バーティシリウム属、アースロミセス属(Arthromyces)、カルダリオミセス属(Caldariomyses)、ウロクラディウム属(Ulocladium)、エンベリシア属(Embellisia)、クラドスポリウム属又はドレシュレーラ属(Dreschlera)が挙げられる。
具体的には、フザリウム オキシスポルム(Fusarium orysporum,DSM 2672)、フミコーラ インソレンス(Humicola insolens)、トリコデルマ レシー(Tricoderma resii)、ミロセシウム バールカリア(Myrothecium verrucaria,IFO 6113)、バーティシリウム アルボートルム(Verticillum alboatrum)、バーティシリウム ダーリー(Verticillum dahlie)、アースロミセス ラモース(Arthromyces ramosus,FERM P−7754)、カルダリオミセス フマゴ(Caldariomyces fumago)、ウロクラディウム チャータルム(Ulocladium chartarum)、エンベリシア アリ(Embellisia alli )又はドレシュレーラ ハロデス(Dreschlera halodes)が挙げられる。
【0020】
他の好ましい真菌としては、バシディオミコティナ亜門(Basidiomycotina)、担子菌類に属する菌、たとえば、コプリヌス属(Coprinus)、ファネロカエテ属(Phanerochaete)、コリオルス属(Coriolus)又はトラメテス属(Trametes)も挙げられる。
具体的には、コプリヌス シネレウス エフ ミクロスポルス(Coprinus cinereus f.microsporus,IFO 8371)、コプリヌス マクロリツス(Coprinus macrorhizus)、ファネロカエテ クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium、トラメテス属(以前はポリポーラス(Polyporus)と呼ばれた)、たとえばT.バーシカラー(T.Versicolor)、PR4 28−A等)が挙げられる。
【0021】
また、他の好ましい真菌としては、チゴミコティナ亜門、ミコラセアエ類、たとえば、クモノスカビ属(Rhizopus)又はケカビ属(Mucor)も挙げられる。具体的には、ムコル ヒエマリス(Mucor hiemalis)が挙げられる。
【0022】
他の好ましい細菌としては、放線菌目の株、たとえば、ストレプトミセス スフェロイデス(Streptomyces spheroides,ATTC 23965)、ストレプトミセス サーモビオラセウス(Streptomyces thermoviolaceus,IFO 12382)も挙げられる。また、ストレプトバーティシルム バーティシリウム ssp.バーティシリウム(Streptoverticillum Verticillium ssp.Verticillium)も挙げられる(特表平10−506282号公報参照)。
【0023】
また、他の好ましい細菌としては、バシルス プミラス(Bacillus pumilus,ATCC 12905)、バシルス ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、ロードバクター スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、ロードモナス パルストリ(Rhodomonas palustri)、乳連鎖球菌(Streptococcus lactis)、シュードモナス プロシニア(Pseudomonas purrocinia,ATCC 15958)又はシュードモナス フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens,NRRL B−11)も挙げられる。
【0024】
また、他の好ましい細菌としては、ミクソコッカス属(Myxococcus)に属する菌も挙げられ、具体的には、M.ビレセンス(M.virescens)が挙げられる。
【0025】
酸化還元酵素(A)としてペルオキシダーゼを用いる場合、本発明のアレルゲン不活性化剤組成物は、過酸化水素を供給する成分(過酸化水素源、たとえば後述の過酸化物など)と組み合わせて用いることが好ましい。これにより、アレルゲン不活性化の高い効果が得られる。
【0026】
(ラッカーゼ)
本発明において、ラッカーゼは、植物、細菌又は真菌(糸状菌及び酵母を含む。)に由来するものを用いることができる。
【0027】
たとえば、アスペルギルス属;ニューロスポラ属、具体的には、N.クラッサ(N.crassa);ポドスポラ属(Podospora)、ボトリチス属(Botrytis)、ホーメス属(Fomes)、レンチヌス属(Lentinus)、プリュロツス属(Pleurotus);トラメテス属、具体的には、T.ビローサ(T.villosa)若しくはT.バーシカラー(T.versicolor);リゾクトニア属(Rhizoctonia)、具体的には、R.ソラニ(R.solani);コプリヌス属、具体的には、C.シネレウス、C.コマツス(C.comatus)、C.フリーシー(C.friesii)若しくはC.プリカチリス(C.plicatilis);プサチレラ属(Psathyrella)、具体的には、P.コンデリーナ(P.condelleana);パナエオルス属(Panaeolus)、具体的には、P.パピリオナセウス(P.papilionaceus);ミセリオフトラ属(Myceliophthora)、具体的には、M.サーモフィラ(M.thermophila);シタリジウム属(Schytalidium);ポリポーラス属、具体的には、P.ピンシツス(P.pinsitus);フレビア属(Phlebia)、具体的には、P.ラジタ(P.radiata,国際公開第92/01046号パンフレット参照)又はコリオルス属(Coriolus)、具体的には、C.ヒルスツス(C.hirsutus、JP 2−238885号公報参照)が挙げられる。
【0028】
ラッカーゼは、空気中の酸素又は溶存酸素(たとえば水道水、イオン交換水などに溶解している酸素)を利用して反応を触媒することが可能であることから、過酸化水素源を併用することなく、アレルゲンを不活性化できる点で好ましい。
【0029】
酸化還元酵素(A)は、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
なかでも、本発明においては、(A)成分が、ラッカーゼ又はペルオキシダーゼであることが好ましい。
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物における(A)成分の含有割合は、アレルゲンに直接に接触するアレルゲン不活性化剤組成物を含む溶液あたり、0.1〜1000U/Lの範囲内であることが好ましく、1〜100U/Lの範囲内であることがより好ましく、10〜100U/Lの範囲内であることがさらに好ましい。
(A)成分の含有割合の下限値以上であると、アレルゲン不活性化の効果がより向上する。上限値以下であれば、アレルゲン不活性化の効果が充分に得られ、経済的にも有利である。
なお、「アレルゲン不活性化剤組成物を含む溶液」とは、アレルゲン不活性化剤組成物が液体状である場合はその原液又はその原液を希釈した希釈溶液であることを示し、アレルゲン不活性化剤組成物がたとえば粉体状(粉体組成物)である場合は当該粉体組成物を溶解した溶液であることを示す。
含有割合の単位「U/L」は、アレルゲン不活性化剤組成物の原液又は溶液1Lあたりの(A)成分の含有割合(ユニット:U)を意味する。
【0030】
たとえばアレルゲン不活性化剤組成物が粉体組成物であり、水30Lに当該粉体組成物20gを溶解して当該粉体組成物を用いる際、酸化還元酵素(A)として、シグマ社製のTrametes versicolor由来(約20U/mg)のラッカーゼを用いた場合、当該粉体組成物におけるラッカーゼの含有量は、当該粉体組成物中、0.00075〜7.5質量%に相当する。酸化還元酵素(A)として、シグマ社製の西洋ワサビ由来(約300U/mg)のペルオキシダーゼを用いた場合、当該粉体組成物におけるペルオキシダーゼの含有量は、当該粉体組成物中、0.00005〜0.5質量%に相当する。
【0031】
前記シグマ社製のラッカーゼとペルオキシダーゼにおけるユニット(U)の定義は、次のとおりである。
ラッカーゼ:1ユニット(U)は、pH4.5、25℃の条件で、1分間あたりカテコール1μmolを変換する。
ペルオキシダーゼ:1ユニット(U)は、pH6.0、20℃の条件で、20秒間あたり、ピロガロールより1.0mgのプルプロガリンを生成する。
【0032】
<芳香族ヒドロキシ化合物(B)>
本明細書及び本特許請求の範囲において、「芳香族ヒドロキシ化合物」は、芳香族炭化水素核の少なくとも一つの水素原子をヒドロキシ基で置換したフェノール類を意味し、1価フェノール及び多価フェノールを包含する。
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物においては、酸化還元酵素(A)に加えて、当該芳香族ヒドロキシ化合物をさらに含有することにより、アレルゲン不活性化の効果がより一層向上する。
【0033】
芳香族ヒドロキシ化合物(B)としては、特に限定されず、酸化還元酵素(A)の作用によって酸化され得るものが好ましく、たとえば、p−ヒドロキシ安息香酸、p−メトキシフェノール、カテコール、没食子酸、サリチル酸、アスコルビン酸、アセチルサリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、タンニン酸、チロシン又はこれらの塩などが挙げられる。
【0034】
芳香族ヒドロキシ化合物(B)は、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物における(B)成分の含有割合は、アレルゲンに直接に接触するアレルゲン不活性化剤組成物を含む溶液あたり、10〜1000ppmの範囲内であることが好ましく、10〜100ppmの範囲内であることがより好ましく、10〜20ppmの範囲内であることがさらに好ましい。
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物における(B)成分の含有量としては、当該アレルゲン不活性化剤組成物中、1〜10質量%であることが好ましく、1〜2質量%であることがより好ましい。
(B)成分の含有割合の下限値以上であると、アレルゲン不活性化の効果がさらに向上する。上限値以下であれば、アレルゲン不活性化向上の効果が充分に得られる。また、(B)成分による被処理物の着色が抑制される。
なお、含有割合の単位「ppm」は、アレルゲン不活性化剤組成物の原液又は溶液1Lあたりの(B)成分の含有割合(質量基準:mg)を意味する。
【0035】
<その他の成分>
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物においては、上記の(A)成分に加え、又は(A)成分と(B)成分に加え、必要に応じて、その他の成分を併用してもよい。
その他の成分としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤;水、エタノール、メタノール等の溶剤;塩酸、硫酸、リン酸、水酸化ナトリウム等のpH調整剤;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム等の還元剤;ポリエチレングリコール等の安定化剤;洗浄性ビルダー、蛍光増白剤、ポリマー類、酵素、酵素安定剤、ケーキング防止剤、金属イオン捕捉剤、アルカリ剤、漂白剤、漂白活性化剤、漂白活性化触媒、色素、香料などが挙げられる。
【0036】
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物の形態は、特に限定されず、粉末状(粒状)、成型物などの固体状であってもよく、液体状であってもよい。
かかるアレルゲン不活性化剤組成物の調製方法は、特に限定されず、その形態に応じて、常法により調製できる。
【0037】
かかるアレルゲン不活性化剤組成物が液体状の組成物である場合、当該アレルゲン不活性化剤組成物のpHは、(A)成分の種類に応じて適宜、設定すればよく、通常、当該アレルゲン不活性化剤組成物(原液)のpHは6〜11であることが好ましく、pH7〜11であることがより好ましい。当該アレルゲン不活性化剤組成物(原液)のpHが前記範囲であると、アレルゲン不活性化の効果がより向上する。また、当該アレルゲン不活性化剤組成物の液安定性がより良好となる。
アレルゲン不活性化剤組成物(原液)のpHは、当該原液を25℃に調整し、ガラス電極式pHメータ(製品名:F−52、(株)堀場製作所製)を用い、JIS K3362−1998に準拠し、ガラス電極を当該希釈処理液に浸漬して1分間経過後に示すpHの値をいう。
【0038】
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物は、洗剤、漂白剤、すすぎ剤、柔軟剤;スプレー剤、塗付剤などの製剤に利用できる。
当該製剤におけるアレルゲン不活性化剤組成物は、液体状であるものよりも固体状であるものの方が経時保存に対して安定である。液体状であるものにおいては、安定化剤を配合したものでもよく、2液タイプの製剤であってもよく、(A)成分と(B)成分と過酸化水素源とをそれぞれ分離した製剤であってもよい。
【0039】
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物において、不活性化処理の対象であるアレルゲンは、特に限定されず、ペットの毛に付着するアレルゲン、花粉、ダニの糞、カビの胞子などの生物から遊離するアレルゲン;ダニ、ゴキブリなどの生物の死骸に由来するアレルゲン;生物自体がヒトに進入して遊離するアレルゲン等が挙げられる。
なかでも、本発明のアレルゲン不活性化剤組成物は、生物から遊離するアレルゲン又は生物の死骸に由来するアレルゲンを不活性化するのに好適であり、そのなかでも、花粉、ダニの死骸に由来するアレルゲンを不活性化するのに特に好適である。
【0040】
≪アレルゲン不活性化方法≫
本発明のアレルゲン不活性化方法は、上記本発明のアレルゲン不活性化剤組成物を用いる方法である。
本発明のアレルゲン不活性化方法においては、前記酸化還元酵素(A)としてペルオキシダーゼを含有する前記アレルゲン不活性化剤組成物と、過酸化物(C)とを併用することが好ましい。
以下、本明細書において、当該過酸化物(C)を(C)成分ということがある。
【0041】
<過酸化物(C)>
本明細書及び本特許請求の範囲において、「過酸化物」には、過酸化水素を包含するものとする。
過酸化物(C)としては、過酸化水素、又は水溶液中で過酸化水素を発生するものが好ましく、たとえば、過酸化水素;過炭酸、過ホウ酸、過リン酸又はこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)若しくはアンモニウム塩などが挙げられる。
なかでも、アレルゲン不活性化の効果が特に良好であることから、過酸化水素、過炭酸ナトリウムが好ましい。
【0042】
過炭酸ナトリウムの市販品としては、たとえば、SPC−D、SPC−HGD(いずれも商品名、三菱瓦斯化学(株)製);PC−NK(商品名、日本パーオキサイド(株)製);SPCC(商品名、浙江金科化工股▲分▼有限公司(Zhejiang Jinke Chemicals Co.Ltd.));Sodium Percarbonate(浙江迪希化工有限公司(Zhejiang DC Chemical CO.Ltd.))が好適なものとして挙げられる。
【0043】
過酸化物(C)は、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
(C)成分の使用量は、ペルオキシダーゼを含有するアレルゲン不活性化剤組成物の100質量部に対して1〜90質量部であることが好ましく、5〜15質量部であることがより好ましい。(C)成分の使用量の下限値以上であると、アレルゲン不活性化の効果がより向上する。上限値以下であれば、水溶液中で発生する過酸化水素量が抑制され、過酸化水素の分解による発泡を適度に制御できる。また、(C)成分の使用量を適度に抑えることができ、配合時の使用性等が向上する。
【0044】
本発明のアレルゲン不活性化方法として具体的には、たとえば、本発明のアレルゲン不活性化剤組成物を、粒状洗剤等として用いて家庭用洗濯機で洗濯する方法;不活性化処理の対象であるアレルゲンが存在するものに直接、本発明のアレルゲン不活性化剤組成物若しくはその希釈溶液を、スプレー容器などから噴霧する又は容器の塗布部を接触させることにより塗布する方法などが挙げられる。
また、居住空間もしくは車等の乗り物空間等の生活空間に向けて、本発明のアレルゲン不活性化剤組成物若しくはその希釈溶液を、スプレー容器などから噴霧等することにより、前記生活空間内に浮遊するアレルゲンを不活性化する方法も挙げられる。
このように、本発明のアレルゲン不活性化方法は、日常、簡便に行うことができる方法である。
【0045】
酸化還元酵素(A)としてペルオキシダーゼを含有するアレルゲン不活性化剤組成物と、過酸化物(C)とを併用する場合、本発明のアレルゲン不活性化方法としては、かかるアレルゲン不活性化剤組成物と過酸化物(C)とをアレルゲンに塗布する直前に混合して用いる方法、ペルオキシダーゼと過酸化物(C)とを含有する粉体組成物として用いる方法が好ましく挙げられる。
【0046】
不活性化処理の対象であるアレルゲンが存在するものとしては、たとえば、生活まわり製品、たとえば、ソファ、カーペット、カーテン、クッション、寝具等の繊維製品;畳、床、壁、窓、家具、玩具、ぬいぐるみ等の居住空間内の製品;カーシート等の乗り物空間内の製品などが挙げられる。
本発明のアレルゲン不活性化方法により、これら室内環境に存在するアレルゲン(室内環境アレルゲン)を不活性化することができる。
【0047】
以上説明した、本発明のアレルゲン不活性化剤組成物、及び当該アレルゲン不活性化剤組成物を用いるアレルゲン不活性化方法は、アレルゲン不活性化成分として酸化還元酵素(A)を使用した新規な物及び方法である。
本発明者らは鋭意検討した結果、酸化還元酵素の作用によって、室内環境に存在するダニ、花粉等に由来するアレルゲンが不活性化することを初めて発見し、アレルゲン不活性化剤に適することを見出したことに基づき、本発明を完成するに至った。
なお、酸化還元酵素は、これまで主として繊維の脱色剤や臨床検査試薬に利用されていた。したがって、本発明は、酸化還元酵素の用途として新たな用途を提供するものである。
【0048】
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物、及び当該アレルゲン不活性化剤組成物を用いるアレルゲン不活性化方法によれば、アレルゲン不活性化の効果に優れる、という効果が得られる。かかる効果が得られる理由としては、酸化還元酵素(A)が、空気中の酸素若しくは溶存酸素、又は過酸化水素源から供給される過酸化水素に作用してヒドロキシラジカルを発生させ、このヒドロキシラジカルによりアレルゲンが酸化されることによってアレルゲンが不活性化する、と推測される。
【0049】
また、本発明においては、酸化還元酵素(A)に加えて、芳香族ヒドロキシ化合物(B)をさらに用いることにより、アレルゲン不活性化の効果が格段に向上する。
芳香族ヒドロキシ化合物(B)において、アレルゲンを不活性化する効果があることはすでに公知である。これに対して、本発明で用いる(A)成分は、(B)成分よりも、アレルゲンを不活性化する効果が非常に高いものである。
また、両成分を併用することによって、より一層高いアレルゲン不活性化の効果が得られる。これは、(A)成分が(B)成分を効率良く酸化することにより、(A)成分に加えて、酸化された(B)成分も、アレルゲンを酸化して不活性化するため、と考えられる。
【0050】
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物は、衣料用洗剤(粒状、液体状)としても好適なものである。
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物、及び当該アレルゲン不活性化剤組成物を用いるアレルゲン不活性化方法によれば、家庭用洗濯機で洗濯できる衣料等に限らず、布団のような大きい被処理物にも存在する室内環境アレルゲンを、充分に高い効果で、かつ、簡便な方法で不活性化できる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、特に断りがない限り、「ppm」は「mg/L」に対応する記載である。表中、空欄は、該当する成分が未配合であることを示す。
【0052】
<アレルゲン不活性化剤組成物の調製(1)>
(実施例1〜12、比較例1〜6)
表1、2に示す組成に従って、各成分を常法に準じて混合し、液体状の組成物(試料溶液)をそれぞれ調製した。
また、試料溶液あたりのダニアレルゲン(生化学工業製、商品名:Der f2)の含有割合が1ppmとなるように、当該ダニアレルゲンを各例の試料溶液に加えた。
各例の試料溶液は、いずれもリン酸緩衝液によりpH7.0に調整した。
試料溶液のpHの測定は、試料溶液を25℃に調整し、ガラス電極式pHメータ(製品名:F−52、(株)堀場製作所製)を用い、JIS K3362−1998に準拠し、ガラス電極を希釈処理液に浸漬して1分間経過後に示すpHの値を読み取ることにより行った。その結果を表に併記した。
【0053】
なお、表1、2に示す各成分の配合量は、過酸化水素を除き、以下に示す原料自体の配合量(有り姿の量)をそれぞれ表す。
過酸化水素については、純分換算量(有り姿の量の35質量%分)を示す。
【0054】
[表中に示した成分の説明]。
・酸化還元酵素:(A)成分
ラッカーゼ:シグマ社製、Trametes versicolor由来で約20U/mg、1ユニット(U)は、pH4.5、25℃の条件で、1分間あたりカテコール1μmolを変換する。
ペルオキシダーゼ:シグマ社製、西洋ワサビ由来で約300U/mg、1ユニット(U)は、pH6.0、20℃の条件で、20秒間あたり、ピロガロールより1.0mgのプルプロガリンを生成する。
【0055】
・芳香族ヒドロキシ化合物:(B)成分
化合物(B−1):東京化成製、p−ヒドロキシ安息香酸ナトリウム。
化合物(B−2):関東化学製、p−メトキシフェノール。
化合物(B−3):和光純薬製、カテコール、試薬。
化合物(B−4):関東化学製、没食子酸一水和物。
化合物(B−5):関東化学製、サリチル酸ナトリウム。
【0056】
・過酸化物:(C)成分
過酸化水素:三菱ガス化学製、35質量%水溶液。
過炭酸ナトリウム:三菱ガス化学(株)製、SPC−G(商品名)。
【0057】
・その他の成分
リン酸緩衝液:0.5Mのリン酸一水素ナトリウム溶液と0.5Mのリン酸二水素ナトリウム溶液とを混合してpHを7.0又は7.4に調整したもの;pH調整剤。
【0058】
<アレルゲン不活性化の効果の評価(1)>
各例の試料溶液を調製した後、25℃下で1時間放置した。
その後、試料溶液100質量部に対して、10質量%チオ硫酸ナトリウム五水和物溶液10質量部を添加して反応を終了した。
次いで、各試料溶液を体積基準で200倍希釈し(以下この200倍希釈した溶液を「ELISA用試料」という。)、後述の抗原抗体反応(ELISA)の測定に供した。
【0059】
[抗原抗体反応(ELISA)の測定]
ELISAの測定は、一般的なサンドイッチ法(特表2004−510717号公報参照)を用いて行った。その概要は、以下に示す(1)〜(11)の通りである。
(1)96穴ウェル(ヌンク社、マキシソープ441404)に、0.05M炭酸緩衝液(炭酸ナトリウム1.59gと炭酸水素ナトリウム2.93gを蒸留水1Lに溶解したもの)にて400倍希釈したDer f2抗体(生化学工業製、15E11)溶液100μLを加え、4℃にて16時間放置した。その後、各ウェル内の溶液を廃棄した。
(2)次いで、各ウェルに、Tween20(商品名、メルク製)500ppmを含む0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)350μLずつを添加して洗浄した。その後、各ウェル内の溶液を廃棄した。同様の操作を2回繰り返した。
(3)次いで、各ウェルに、1質量%BSAを含むリン酸緩衝液(pH7.4)150μLを加え、室温にて1時間放置した。その後、各ウェル内の溶液を廃棄した。
(4)次いで、各ウェルに、Tween20(商品名、メルク製)500ppmを含む0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)350μLずつを添加して洗浄した。その後、各ウェル内の溶液を廃棄した。同様の操作を2回繰り返した。
(5)次いで、各ウェルに、上述のELISA用試料100μLを加え、室温にて1時間放置した。その後、各ウェル内の溶液を廃棄した。
(6)次いで、各ウェルに、Tween20(商品名、メルク製)500ppmを含む0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)350μLずつを添加して洗浄した。その後、各ウェル内の溶液を廃棄した。同様の操作を2回繰り返した。
(7)次いで、各ウェルに、1質量%BSAを含むリン酸緩衝液(pH7.4)にて200倍希釈したDer f2標識抗体(生化学工業製、13A4PO)溶液を加え、室温にて2時間放置した。その後、各ウェル内の溶液を廃棄した。
(8)次いで、各ウェルに、Tween20(商品名、メルク製)500ppmを含む0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)350μLずつを添加して洗浄した。その後、各ウェル内の溶液を廃棄した。同様の操作を2回繰り返した。
(9)次いで、基質緩衝液(クエン酸・一水和物10.3gとリン酸一水素二ナトリウム・十二水和物35.8gを蒸留水1Lに溶解したもの)12mLに、o−フェニレンジアミン(コスモバイオ製、発色成分)1錠を溶解し、さらに、30質量%過酸化水素水12μLを添加した溶液を調製した。
(10)各ウェルに、(9)で調製した溶液100μLずつを添加し、遮光して室温下で15分間放置した。
(11)その後、各ウェルに、1M硫酸150μLずつを加えて、吸光度測定器(大日本製薬製、製品名:パワースキャンHT)を用いて、492nmにおける吸光度を測定した。
【0060】
各例における「Der f2の不活性化率(%)」を下式より求めた。その結果を表に併記した。
【0061】
Der f2の不活性化率(%)
=[(コントロールのOD値−ELISA用試料のOD値)−ブランクのOD値]
/(コントロールのOD値−ブランクのOD値)×100
【0062】
ここでいう「ELISA用試料のOD値」とは、上記ELISAの測定(11)で測定される吸光度をいう。
【0063】
「コントロールのOD値」とは、上記ELISAの測定(5)において、ELISA用試料の代わりに、下記コントロール溶液を使用した以外は、上記ELISAの測定(1)〜(11)と同様にして測定される吸光度をいう。
コントロール溶液:
5mMリン酸緩衝液(pH7.0)に、ダニアレルゲン(Der f2)を1ppmとなるように溶解した後、25℃で1時間放置し、当該溶解した後の5mMリン酸緩衝液100質量部に対して、10質量%チオ硫酸ナトリウム五水和物溶液10質量部を添加した溶液。
【0064】
「ブランクのOD値」とは、上記ELISAの測定(5)において、ELISA用試料の代わりに、下記ブランク溶液を使用した以外は、上記ELISAの測定(1)〜(11)と同様にして測定される吸光度をいう。
ブランク溶液:
5mMリン酸緩衝液(pH7.0)に、当該5mMリン酸緩衝液100質量部に対して、10質量%チオ硫酸ナトリウム五水和物溶液10質量部を添加した溶液。
【0065】
上式より求まる「Der f2の不活性化率(%)」が20%以上であれば、アレルゲン不活性化の効果が良好であると判定した。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
表1〜2の結果から明らかなように、酸化還元酵素(A)を含有する実施例1〜12の組成物は、いずれも、Der f2の不活性化率が20%以上であることから、アレルゲン不活性化の効果に優れていることが確認できた。
また、実施例3と実施例8〜11との対比、および、実施例6と実施例12との対比から、酸化還元酵素(A)に加えて、芳香族ヒドロキシ化合物(B)をさらに含有することにより、アレルゲン不活性化の効果がより一層高くなることが確認できた。
【0069】
<アレルゲン不活性化剤組成物の調製(2)>
(実施例13〜18、比較例7〜9)
表3、4に示す組成に従って、後述の調製方法により、粉体組成物(実施例13〜14、比較例7;表3)と、液体組成物(実施例15〜16、比較例8;表4)とをそれぞれ調製した。
また、表4に示す液体組成物を、トリガー式スプレー容器に収容してスプレー剤(実施例17〜18、比較例9;表5)を製造した。
なお、粉体組成物は、いずれの例も、表に記載の成分の合計が100質量%となるように、炭酸ナトリウムでバランスすることにより調製した。また、液体組成物は、いずれの例も、表に記載の成分の合計が100質量%となるように、精製水でバランスすることにより調製した。
なお、表3、4中の配合量の単位は質量%である。
表3、4に示す各成分の配合量は、以下に示す原料自体の配合量(有り姿の量)をそれぞれ表す。
【0070】
[表中に示した成分の説明]。
・酸化還元酵素(A)
ラッカーゼ、ペルオキシダーゼは、それぞれ上記と同じものを使用した。
【0071】
・芳香族ヒドロキシ化合物(B)
化合物(B−4):関東化学製、没食子酸一水和物(上記と同じもの)。
【0072】
・過酸化物(C)
過炭酸ナトリウム:三菱ガス化学(株)製、SPC−G(商品名)(上記と同じもの)。
【0073】
・その他の成分(粉体組成物)。
・・界面活性剤
MES−Na:ライオン社製、α−スルホ脂肪酸エステル塩。
LAS−Na:ライオン社製、直鎖アルキル(炭素数10〜14)ベンゼンスルホン酸ナトリウム。
ノニオン界面活性剤:ダイヤドール13(商品名、三菱化学製)の酸化エチレン平均5モル付加体(純分90質量%)。
高級脂肪酸ナトリウム:ライオン社製。
【0074】
・・ビルダー
MA剤:アクリル酸/無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩(商品名:アクアリックTL−400、日本触媒(株)製)、純分40質量%水溶液。
ポリアクリル酸ナトリウム:ソカランPA30(商品名、BASF製)、重量平均分子量
8,000、固形分50質量%。
ゼオライト:A型ゼオライト(商品名:シルトンB、水澤化学(株)製)、純分80質量%。
【0075】
・・無機塩
炭酸カリウム:旭硝子(株)製、炭酸カリウム(粉末)、体積平均粒子径490μm、嵩密度1.30g/cm
硫酸ナトリウム:日本化学工業(株)製、中性無水芒硝。
炭酸ナトリウム:旭硝子(株)製、粒灰、体積平均粒子径320μm、嵩密度1.07g/cm)。
層状珪酸ナトリウム:クラリアント製、SKS−6(商品名)。
塩化ナトリウム:日本製塩(株)製、日精のやき塩C(商品名)。
ナトリウム型ベントナイト造粒物:SUD社製、ランドロジルDGA(商品名)、Na/Caの質量比2.7)。
【0076】
・・その他
香料:特開2002−146399号公報の [表11]〜[表18]に示す香料組成物A。
色素:群青(大日精化工業製、商品名:Ultramarine Blue)。
蛍光増白剤:チノパールCBS−X(商品名、チバスペシャルティケミカルズ)/チノパールAMS−GX(商品名、チバスペシャルティケミカルズ)=3/1(質量比)の混合物。
カルボキシメチルセルロース:ダイセル化学工業(株)製、CMCダイセル1170(商品名)、体積平均粒子径60μm。
ポリエチレングリコール:純正化学製、平均分子量1000。
酵素混合物:サビナーゼ12T(ノボザイムズ製)/LIPEX100T(ノボザイムズ製)/ステインザイム12GTS(ノボザイムズ製)/セルザイム0.7T(ノボザイムス製)=4/1/4/1(質量比)の混合物、いずれも商品名。
水分。
【0077】
・その他の成分(液体組成物)。
・・液体組成物(P)及び液体組成物(Q)における洗剤基剤
ノニオン界面活性剤:ダイヤドール13(商品名、三菱化学製)の酸化エチレン平均5モル付加体(純分90質量%)。
クエン酸三ナトリウム:マイルス製、クエン酸ソーダ。
95%エタノール:日本アルコール販売製、特定アルコール95度合成。
ポリエチレングリコール:純正化学製、平均分子量1000。
香料:特開2002−146399号公報の [表11]〜[表18]に示す香料組成物A。
pH調整剤:0.1N及び1Nの塩酸(分析用、純正化学製)、0.1N及び1Nの水酸化ナトリウム(分析用、純正化学製)。
精製水。
【0078】
[粉体組成物の調製方法]
実施例13、14及び比較例7の粉体組成物について、以下の手順によって調製した。
すなわち、ノニオン界面活性剤、ゼオライトの一部、層状珪酸ナトリウム、酵素混合物、香料、色素、過炭酸ナトリウムを除いた各成分を用いて固形分40質量%の噴霧乾燥用スラリーを調製した。得られた噴霧乾燥用スラリーの温度は60℃であった。
このスラリーを、圧力噴霧ノズルを具備した向流式噴霧乾燥装置で噴霧乾燥を行い、揮発分(105℃、2時間の減量)が3質量%、嵩密度が0.35g/mL、体積平均粒子径が300μmの噴霧乾燥粒子を得た。なお、噴霧乾燥用スラリーのゼオライトには、微粉A型ゼオライト(商品名:シルトンB、水沢化学製)を使用した。
この噴霧乾燥粒子を、40℃に保温した二軸式連続ニーダー(栗本鐵工所製、KRCニーダ#2型)に、ノニオン界面活性剤の一部及び水分調整用の水と共に入れて捏和物を得た。その後、この捏和物を押出して1〜2cm角のサイコロ状に細断し、顆粒A型ゼオライト3質量%(体積平均粒子径200μm、コスモ社製)と共に破砕造粒した。破砕機(岡田精工製、スピードミルND−10型)を用い、回転数1500rpmで、開口径2mmスクリーンを用いた。
得られた破砕造粒物に、転動ドラムで微粉A型ゼオライト(商品名:シルトンB、水沢化学)2質量%をコートし、ノニオン界面活性剤の一部(1質量%)を噴霧した後、平均体積平均粒子径が500μmになるように調整した。
これに、さらに、過炭酸ナトリウム、酵素混合物、層状珪酸ナトリウムを転動ドラムで混合し、さらに、色素20質量%水分散液と香料をスプレー添加して高嵩密度の粉体組成物を得た。
得られた高嵩密度の粉体組成物は、嵩密度が0.85g/mL、体積平均粒子径が560μmであった。
【0079】
[液体組成物の調製方法]
実施例15、16及び比較例8に示した、液体組成物(P)と液体組成物(Q)について、以下の手順によってそれぞれ調製した。
2Lビーカーに、95%エタノールと、ポリエチレングリコールと、ノニオン界面活性剤とを入れ、マグネットスターラー(MITAMURA KOGYO INC.)で充分に撹拌した。40℃の精製水を入れた後、pH調整剤を除く残りの成分を加えて充分に撹拌した。その後、液体組成物のpHが7.0となるように、適量のpH調整剤を添加した。
液体組成物のpHは、25℃にてガラス電極式pHメーター(製品名:F−52、(株)堀場製作所製)を用い、JIS K3362−1998に準拠して測定した。
なお、実施例15、16は、液体組成物(P)と液体組成物(Q)とを混合したものであることを意味し、混合したものは、液体洗浄剤と同様の組成を有するものである。
【0080】
<アレルゲン不活性化の効果の評価(2)>
[ELISA用試料の調製]
上述したELISAの測定(1)〜(11)に供する「ELISA用試料」を、以下の手順によってそれぞれ調製した。
【0081】
・粉体組成物について
実施例13、14及び比較例7の粉体組成物について、各粉体組成物1000gを4回縮分し、その縮分された粉体組成物の50gを、25℃の水道水に溶解し、まず100倍に希釈した水溶液(a)5000g、すなわち10000ppmの水溶液(a)を調製し、当該水溶液(a)10gを、さらに25℃の水道水140gで希釈して試料溶液を得た。
【0082】
・液体組成物について
実施例15と実施例16の液体組成物について、各例における液体組成物(P)2gと液体組成物(Q)2gとを、25℃の水道水3000gに溶解することにより混合して試料溶液を得た。
比較例8の液体組成物について、液体組成物(Q)の2gと精製水の2gとを、pH7.0に調整した25℃の水道水3000gに溶解することにより混合して試料溶液を得た。
【0083】
粉体組成物及び液体組成物におけるそれぞれの試料溶液に、試料溶液あたりのダニアレルゲン(生化学工業製、商品名:Der f2)の含有割合が1ppmとなるように、当該ダニアレルゲンを加え、25℃で1時間放置した。
かかる放置後、ダニアレルゲン1ppmを加えた試料溶液100質量部に対して、10質量%チオ硫酸ナトリウム五水和物溶液10質量部を添加して反応を終了した。
次いで、各試料溶液を体積基準で200倍希釈してELISA用試料を調製した。
【0084】
・スプレー剤について
本実施例において、使用したトリガー式スプレー容器と、綿布とを以下に示す。
トリガー式スプレー容器:吉野工業所(株)製のAKSRMトリガー、噴口径0.45mm、容量300mL。
綿布:かなきん3号(商品名)、日本規格協会、大きさ20cm×20cm、約4.2g/枚、中央部に直径40mmの円を油性ペンにて記載したもの。
【0085】
実施例15、16及び比較例8の液体組成物において調製した試料溶液300gを、トリガー式スプレー容器に収容してスプレー剤を製造した。
実施例15の試料溶液を用いたものを実施例17、実施例16の試料溶液を用いたものを実施例18、比較例8の試料溶液を用いたものを比較例9とした。
【0086】
綿布の中央部に記載した円内に、Der f2の1ppm水溶液の0.1mLを滴下し、室温で1時間乾燥した。
各例のスプレー剤の約0.42gを、綿布に均等となるように噴霧し、その後、室温で1時間放置した。次いで、綿布に記載した円の部分をはさみで切り取り、さらに5mm×5mm程度に裁断した。そして、その裁断した綿布を、1質量%牛血清アルブミン(BSA)を含む0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)5mLに入れ、時々撹拌して室温にて3時間放置した。かかる放置後、得られた溶液をELISA用試料とした。
【0087】
[アレルゲン不活性化の効果の評価]
粉体組成物、液体組成物及びスプレー剤について調製された「ELISA用試料」を用いて、上記と同様にしてELISAの測定を行い、各例における「Der f2の不活性化率(%)」を求めた。その結果を表に併記した。
【0088】
【表3】

【0089】
【表4】

【0090】
【表5】

【0091】
表3〜5の結果から明らかなように、実施例13〜16の組成物及び実施例17〜18のスプレー剤は、いずれも、酸化還元酵素を欠く比較例7〜8の組成物及び比較例9のスプレー剤に比べて、Der f2の不活性化率が非常に高いことから、アレルゲン不活性化の効果に優れていることが確認できた。
また、表5の結果から、本発明に係る実施例17〜18は、スプレー剤としてもアレルゲン不活性化の効果が非常に高いことから、本発明のアレルゲン不活性化方法によれば、簡便な方法で、かつ、アレルゲン不活性化の高い効果が得られることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化還元酵素(A)を含有することを特徴とするアレルゲン不活性化剤組成物。
【請求項2】
前記酸化還元酵素(A)は、ラッカーゼ又はペルオキシダーゼである請求項1記載のアレルゲン不活性化剤組成物。
【請求項3】
芳香族炭化水素核の少なくとも一つの水素原子をヒドロキシ基で置換した芳香族ヒドロキシ化合物(B)をさらに含有する請求項1又は請求項2記載のアレルゲン不活性化剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のアレルゲン不活性化剤組成物を用いるアレルゲン不活性化方法。
【請求項5】
前記酸化還元酵素(A)としてペルオキシダーゼを含有する前記アレルゲン不活性化剤組成物と、過酸化物(C)とを併用する請求項4記載のアレルゲン不活性化方法。

【公開番号】特開2010−209213(P2010−209213A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56776(P2009−56776)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】