説明

アンカー工法

【課題】法面にアンカーを固定したのち受圧部が格子状のパネルよりなる受圧構造物を取付け固定するアンカー工法において、軽量で緑化が可能であり、軟弱な地盤でもパネルが沈み込むことがないようにする。
【解決手段】法面にアンカー7を固定したのち、法面から突出するアンカー7に不織布からなる下敷シート15を突き刺して法面上に装着し、ついで一対の格子状をなすFRP製パネル2をアンカー7を挟み込むように組合せて法面上に置き、アンカーの突出部分にナットを締着する。下敷シート15はパネル2の面としての機能を果たしてパネル2の強度を高め、法面の地盤が軟弱であってもパネル2の沈み込みを抑制してアンカー力を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面の安定化のため法面の地盤に固定したアンカーに受圧構造物を取付け、固定するアンカー工法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、法面の安定化のためプレキャスト製のコンクリートブロックを法面の土砂荷重を受ける受圧構造物として用い、法面の地盤に固定したアンカーボルトに受圧構造物を取付けたのち、アンカーボルト突出端にナットを捩込んで締付けて固定するアンカー工法が採用され、緑化を図るために鋼製や鋳物製のプレートよりなり、該プレートに給水や根の育成補助のため一定間隔で穴をあけた受圧構造物を用いた工法も知られる。しかしながらこの工法に用いられる受圧構造物のプレートは、給水や根の育成が不十分で、軟弱地盤では受圧構造物が沈み込まないようにプレートの面積を大きくせざるを得ない。またアンカーを施工するのに先立ち、法面を整形する目的で山肌を切削したとき、表面に新しい粘土質が露出するようなことがあって、スレーキング現象と言う、膨潤が発生すると、表面が締め固まるまでは受圧構造物の沈下を助長することがあり、そのため重量が嵩んで受圧構造物の構築が容易でないうえ、緑化が十分に行えない難点があった。
【0003】
また下記特許文献1には、受圧構造物を構成するパネルをFRP製の格子状としたものが提案されている。
【特許文献1】特開2000−336656号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
格子状のパネルは開口率が高いことから給水性、発芽、根の育成に効果が高く、緑化が十分に行える利点があるうえ、FRP製とすることにより、より軽量となり、持ち運びや構築が容易となるが、投影面の受圧面積が小さく、地盤からの単位受圧面積当たりの反力も大きくなることからパネルを構成するリブの肉厚を厚くして剛性を上げる必要があり、また法面が強固な地盤である場合には、問題がないとしても、前記スレーキング地盤等の軟弱な地盤で地耐力が弱い場合には、パネルが地盤に沈み込むことが考えられる。
【0005】
本発明は、格子状のパネルよりなる受圧構造物を用いたアンカー工法において、格子状のパネルが有する利点、すなわち軽量であり、緑化が可能である利点を損なうことなく軟弱な地盤でもパネルが沈み込むことがないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、法面等の地盤にアンカーを固定したのち、法面から突出するアンカーに格子状のパネルよりなる受圧構造物を取付け、ついで受圧構造物から突出するアンカーに対して受圧構造物を固定手段により固定するアンカー工法において、法面から突出するアンカーに受圧構造物を取付けるのに先立って上記地盤対し、透水性を有し、かつ植物の根が通りうる下敷シートを被せ、その上に上記受圧構造物を取付けることを特徴とし、
請求項2に係る発明は、法面等の地盤にアンカーを固定したのち、法面から突出するアンカーに格子状のパネルよりなる受圧構造物を取付け、ついで受圧構造物から突出するアンカーに対して受圧構造物を固定手段により固定するアンカー工法において、法面から突出するアンカーに受圧構造物を取付けるのに先立って上記地盤対し、透水性を有し、かつ植物の根が通りうる下敷シートを被せ、その上に上記受圧構造物を取付けることを特徴とする。
【0007】
上記各発明において用いられる受圧構造物の固定手段としては、例えば受圧構造物から突出するアンカーに捩込まれるナット、アンカーの突出端面に打込まれる楔等を挙げることができる。
また受圧構造物のパネルは、鋼や鋳物或いはアルミ等の金属製であってもよいが、好ましくはFPR等の硬質樹脂製とされ、また下敷シートとしては、例えばゴザ、むしろ、パッカー布、不織布等を挙げることができ、受圧構造物の裏面に下敷シートを張設するには、例えばパネル裏面に下敷シートを貼着したり、下敷シートの数か所をパネル裏面にピンによって止着するとよい。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によると、パネルは格子状をなすため軽量で、持ち運びが容易となり、法面への構築も容易であること、植物の種子がシート上で発芽して、その種がシートを通って法面に根付くようになると共に、シートを通して給水が行われることにより植物が育成され、緑化による表土の露出を解消できること、受圧構造物下の下敷シートがパネルの面としての機能を果たしてパネルの強度を高め、パネルと共に法面の締め固め効果を発揮すると共に、法面の地盤がスレーキング地盤のように軟弱であってもパネルの沈み込みを抑制してアンカー力を向上させること、更には、緑化により植物の根が育成した時にはスレーキングが収まるとともにシート自体が表土の露出を防ぎ、スレーキングの解消に寄与する効果がある。このため、のちにシートが腐食して消滅するようなことがあっても植生と格子状パネルによって法面の安定化が行われること等の効果を奏する。
【0009】
請求項2に係る発明においては、上述する効果に加えて下敷シートが受圧構造物に予め取付けられているため法面への施工が一層容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明方法で用いる受圧構造物1の一例を示すものであり、図2は、図1に示す受圧構造物1を法面に施工した例を示すもので、受圧構造物1は、横桟と縦桟を組合せて開口部が矩形の格子状をなすFPR製のパネル2と、一対のパネル2を組合せて法面に取付ける鋼製の押え部材3からなり、押え部材3は、組み合わせた一対のパネル2にまたがって重ねられる押え板4と、該押え板4と一体をなして上向きに突設され、上端にフランジ5を備えた角パイプよりなる筒状部6と、該筒状部内に固着され、法面に固着されて法面より突出する穴8を備えた内向きフランジ9よりなる取付部11と、矩形状に組合せたパネル2が嵌着され、角パイプよりなる剛性の大なる枠12と、側面視で山形状をなして上記取付部11から放射状に延び、各先端が枠12に固着されるリブ13と、上記押え板4及び枠12と相似形の矩形状をなし、リブ13同士を中間部において連結する角パイプよりなる中間枠14よりなっている。
【0011】
本実施形態の受圧構造物1を法面へ施工する際には、常法のように法面にアンカー7を固定したのち、法面から突出するアンカー7に例えば不織布からなる下敷シート15を突き刺して法面上に装着し、ついで一対のパネル1をアンカー7を挟み込むように組合せて法面上に置き、ついでアンカー7の突出部分に取付部11の穴8を差込んで取付け、アンカー7の突出端部にナット(図示しない)を取付けて締着するようになっている(図2)。
【0012】
本実施形態の受圧構造物によると、格子状のパネル2はFPR製で軽量であるため、運搬や施工が比較的容易であること、法面に多少の凹凸があっても安定して取付けることができ、法面の整地がラフですむこと、格子状のパネルを通して植生が可能であり、緑化させることにより受圧構造物を取付けた法面の景観を向上させることができること、パネル2は取付部11の押え板4で中心部を、リブ13で放射状に、またフランジ状の押え部15で全周縁を押えられ、これにより押え板2は局部的に、また全体が撓むことなく法面に均一に圧着されうるようになること、植物の種子が下敷シート15上で発芽して、その種子が下敷シートを通して法面に根付くようになると共に、シートを通して給水が行われることにより植物が育成され、緑化による表土の露出を解消できること、受圧構造物下の下敷シートがパネルの面としての機能を果たしてパネルの強度を高め、パネルと共に法面の締め固め効果を発揮すると共に、法面の地盤がスレーキング地盤等のように軟弱であってもパネルの沈み込みを抑制してアンカー力を向上させること、シートが腐食して消滅するようなことがあっても植生と格子状パネルによって法面の安定化が行われること等の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明の受圧構造物は、地滑りや崩落のおそれがある法面を補強する工法において用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明で用いる受圧構造物の平面図。
【図2】受圧構造物の施工例を示す断面図。
【符号の説明】
【0015】
1・・受圧構造物
2・・パネル
3・・押え部材
4・・押え板
5・・フランジ
6・・筒状部
7・・アンカー
8・・穴
9・・内向きフランジ
11・・取付部
12・・枠
13・・リブ
14・・中間枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面等の地盤にアンカーを固定したのち、法面から突出するアンカーに格子状のパネルよりなる受圧構造物を取付け、ついで受圧構造物から突出するアンカーに対して受圧構造物を固定手段により固定するアンカー工法において、法面から突出するアンカーに受圧構造物を取付けるのに先立って上記地盤対し、透水性を有し、かつ植物の根が通りうる下敷シートを被せ、その上に上記受圧構造物を取付けることを特徴とするアンカー工法。
【請求項2】
法面等の地盤にアンカーを固定したのち、法面から突出するアンカーに格子状のパネルよりなる受圧構造物を取付け、ついで受圧構造物から突出するアンカーに対して受圧構造物を固定手段により固定するアンカー工法において、上記受圧構造物には裏面に予め透水性を有し、かつ植物の根が通りうる下敷シートが取付けられることを特徴とするアンカー工法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−28800(P2006−28800A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206277(P2004−206277)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000133294)株式会社ダイクレ (65)
【出願人】(391009291)弘和産業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】