説明

アンカー部材、障害物の確認方法、及びアンカー部材の取付方法

【課題】パネルの裏面側における障害物の有無を容易に確認でき、しかも、貫通孔から自在に引き抜くことができるアンカー部材、障害物の確認方法、及びアンカー部材の取付方法を提供する。
【解決手段】アンカー部材1では、係止部3が軸部2に沿う位置にあるときの係止部3の手前側の端部には操作紐7の一端が結合されているので、係止部3が軸部2に直交するように一旦回動しても、パネルPの表面13側において操作紐7の他端を引くことで、係止部3を再び軸部2に沿わせることができ、よって、アンカー部材1を貫通孔12から自在に引き抜くことができる。しかも、このように自在に引き抜き可能なアンカー部材1を用い、係止部3を利用して、パネルPの裏面11側の貫通孔12周辺における障害物18の有無を貫通孔12ごとに確認することもでき、よって、パネルPの裏面11側における障害物18の有無を容易に確認できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋根や壁などを構成するパネルに架台や柱脚といった被固定物を固定するためのアンカー部材、障害物の確認方法、及びアンカー部材の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1,2に記載されるように、軸部と軸部の先端部に取り付けられた係止部とを備え、この係止部が軸部に対して回動可能になっているアンカー部材が知られている。この係止部は、パネルに設けられた孔に軸部を通す際には軸部に沿うように横になっており、孔を抜けるとバネ等の付勢を受けて立ち上がる。その結果、係止部はパネルの裏面に係合可能となる。一方、パネルの表面側では軸部にナット等が締め付けられ、その結果、被固定物が固定される。
【0003】
このようなアンカー部材によれば、パネルの表面側における作業のみでパネルに被固定物を固定することができ、例えば既存建物の屋根においても、室内の天井などを撤去することなく被固定物の取り付け施工が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平3−14573号公報
【特許文献2】特開2005−61490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献に記載されたアンカー部材では、パネルの表面側における作業のみで施工を行うため、パネルの裏面側にケーブルやパイプなどの障害物が敷設されていても、貫通孔を通しての目視確認しか行えず、それらの存在を確認することは難しい。そのため、係止部がケーブルやパイプに干渉した状態でアンカー部材を取り付けてしまうことがある。この場合、被固定物の固定状態が不安定になったり、ケーブルやパイプを破断してしまったりするおそれがある。また、仮に作業中に障害物の存在を確認できたとしても、係止部がパネルの裏面側で一旦立ち上がってしまうと、アンカー部材を貫通孔から引き抜くことが困難となり、アンカー部材を他の場所にある貫通孔で再使用するといったことができなくなる。
【0006】
そこで本発明は、パネルの裏面側における障害物の有無を容易に確認でき、しかも、貫通孔から自在に引き抜くことができるアンカー部材、障害物の確認方法、及びアンカー部材の取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るアンカー部材は、パネルに穿設された貫通孔を利用してパネルに被固定物を固定するためのアンカー部材であって、貫通孔に挿入される軸部と、軸部の先端部に取り付けられて、軸部に交差する位置と軸部に沿う位置との間で回動可能な係止部と、係止部が軸部に沿う位置にあるときの係止部の手前側に一端が結合された操作紐と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るアンカー部材によれば、係止部が軸部に沿った状態で、軸部および係止部が貫通孔に挿入される。そして、パネルの裏面側に進出した係止部が軸部に交差するように回動すると、係止部がパネルの裏面側に係合可能となる。ここで、係止部が軸部に沿う位置にあるときの係止部の手前側には、操作紐の一端が結合されているので、係止部が軸部に交差するように一旦回動しても、パネルの表面側において操作紐の他端が引かれると、係止部を再び軸部に沿わせることができる。よって、アンカー部材を貫通孔から自在に引き抜くことができる。しかも、このように自在に引き抜き可能なアンカー部材を用いれば、係止部を利用して、パネルの裏面側の貫通孔周辺における障害物の有無を確認することもできる。よって、パネルの裏面側における障害物の有無を容易に確認できる。
【0009】
また、本発明は、パネルに穿設された貫通孔を利用してパネルの裏面側における障害物の有無を確認する障害物の確認方法であって、貫通孔に挿入される軸部と、軸部の先端部に取り付けられて、軸部に交差する位置と軸部に沿う位置との間で回動可能な係止部と、係止部が軸部に沿う位置にあるときの係止部の手前側に一端が結合された操作紐と、を備えた確認用部材を用い、係止部を軸部に沿わせると共に操作紐の他端をパネルの表面側に留まらせた状態で、貫通孔に軸部および係止部を挿入する挿入ステップと、パネルの裏面側に進出した係止部を軸部に交差させた状態で、軸部を貫通孔内で回転させる回転ステップと、操作紐の他端を引くことにより係止部を軸部に沿わせ、軸部および係止部を貫通孔から引き抜く引き抜きステップと、を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る障害物の確認方法によれば、挿入ステップにおいて、確認用部材の係止部が軸部に沿った状態で、軸部および係止部が貫通孔に挿入され、回転ステップにおいて、パネルの裏面側に進出した係止部が軸部に交差した状態で、軸部が貫通孔内で回転させられる。ここで、軸部の回転に伴って係止部が一緒に回転するので、係止部を利用してパネルの裏面側の貫通孔周辺における障害物の有無を確認することができる。障害物の有無を確認した後、引き抜きステップにおいて、パネルの表面側で操作紐の他端が引かれて係止部が軸部に沿わされ、軸部および係止部が貫通孔から引き抜かれる。よって、パネルの裏面側における障害物の有無を容易に確認でき、しかも、確認用部材を貫通孔から自在に引き抜くことができる。
【0011】
また、本発明は、パネルに穿設された貫通孔を利用してパネルに被固定物を固定するためのアンカー部材の取付方法であって、貫通孔に挿入される軸部と、軸部の先端部に取り付けられて、軸部に交差する位置と軸部に沿う位置との間で回動可能な係止部と、係止部が軸部に沿う位置にあるときの係止部の手前側に一端が結合された操作紐と、を備えたアンカー部材を用い、係止部を軸部に沿わせると共に操作紐の他端をパネルの表面側に留まらせた状態で、貫通孔に軸部および係止部を挿入する挿入ステップと、パネルの裏面側に進出した係止部を軸部に交差させた状態で、軸部を貫通孔内で回転させ、パネルの裏面側における障害物不干渉領域の有無を判断する判断ステップと、を含み、判断ステップで障害物不干渉領域が有ると判断される場合、パネルの表面側に突出した軸部に対して締結部材を取り付けることにより被固定物を固定し、判断ステップで障害物不干渉領域が無いと判断される場合、操作紐の他端を引くことにより係止部を軸部に沿わせ、軸部および係止部を貫通孔から引き抜く、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係るアンカー部材の取付方法によれば、挿入ステップにおいて、確認用部材の係止部が軸部に沿った状態で、軸部および係止部が貫通孔に挿入され、判断ステップにおいて、パネルの裏面側に進出した係止部が軸部に交差した状態で、軸部が貫通孔内で回転させられ、パネルの裏面側における障害物不干渉領域の有無が判断される。ここで、障害物不干渉領域とは、係止部が障害物に干渉することなく係合可能なパネルの裏面側の領域である。判断ステップで障害物不干渉領域が有ると判断される場合、パネルの表面側に突出した軸部に対して締結部材が取り付けられて被固定物が固定される。また、判断ステップで障害物不干渉領域が無いと判断される場合、パネルの表面側で操作紐の他端が引かれて係止部が軸部に沿わされ、軸部および係止部が貫通孔から引き抜かれる。このようにして、パネルの裏面側における障害物の有無を容易に確認でき、しかも、障害物不干渉領域の有無に応じて、アンカー部材を適宜取り付け、又は引き抜くことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パネルの裏面側における障害物の有無を容易に確認でき、しかも、アンカー部材または確認用部材を貫通孔から自在に引き抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係るアンカー部材の正面図である。
【図2】図1のアンカー部材による被固定物の固定構造を示す断面図である。
【図3】図1のアンカー部材の取付方法を示すフローチャートである。
【図4】図3のフローチャートにおける貫通孔の穿設ステップを示す断面図である。
【図5】図3のフローチャートにおけるアンカー部材の挿入ステップを示す断面図である。
【図6】図3のフローチャートにおけるアンカー部材の回転ステップを示す断面図である。
【図7】図3のフローチャートにおけるアンカー部材の引き抜きステップを示す断面図である。
【図8】(a)及び(b)は、本発明の他の実施形態に係るアンカー部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
[アンカー部材およびこれを用いた被固定物の固定構造]
図1は、第1実施形態に係るアンカー部材の正面図であり、図2は、図1のアンカー部材による被固定物の固定構造を示す断面図である。図1及び図2に示すように、アンカー部材1は、建物の屋根や壁などを構成するパネルPに架台や柱脚といった被固定物10を固定するための部材である。ここでは、パネルPが屋根あるいは屋上を構成する軽量気泡コンクリート版(ALC版;Autoclaived Light-weight Concrete panel)である場合について示している。アンカー部材1は、パネルPに穿設された貫通孔12を利用してパネルPの表面側(図2では上面側)に被固定物10を固定する。
【0017】
アンカー部材1は、貫通孔12に挿入される軸部2と、軸部2の先端部2aに取り付けられて、軸部2に対して回動可能な係止部3とを備えている。軸部2および係止部3は、例えば鉄製またはステンレス製である。先端部2aとは反対側の軸部2の基端側は円柱状をなしており、その外周には雄ネジ部2bが形成されている。先端部2aは平板状をなしており、この先端部2aを挟むようにして、回動中心軸となる連結ピン4を介して係止部3の回動中心部3bが回動可能に取り付けられている。回動中心部3bの両側には、略等しい長さに延びた本体部3aが形成されている。本体部3aは、延在方向に垂直な断面が軸部2に対面する側に開放されたコ字状をなしている。本体部3aの延在方向に延びる端辺には、パネルPにアンカー部材1が取り付けられた際にパネルPの裏面11に当接する板状のパネル当接部3cが連設されている。
【0018】
係止部3は、軸部2に対して略直交する位置(図1の実線で示す位置)と、軸部2と略一直線状となるように軸部2に沿う位置(図1の仮想線で示す位置)との間で回動可能になっている。すなわち、係止部3は、軸部2に対して約90度の範囲で回動する。軸部2と係止部3との間には、連結ピン4を巻くようにして図示しないねじりバネが設けられている。このねじりバネによって、係止部3は、軸部2に対して略直交する位置に回動するよう、矢印A方向に付勢されている。係止部3がこのように回動することで、軸部2を貫通孔12に挿入する際には係止部3を軸部2に沿わせて貫通孔12内への係止部3の進入を可能にすると共に、先端部2aがパネルPの裏面11側に突出した際には係止部3が回動してパネル当接部3cが裏面11に係合可能となる。
【0019】
図2に示すように、被固定物10の固定構造Cにおいては、軸部2がパネルPの貫通孔12および被固定物10の孔10aを貫通すると共に、係止部3が軸部2に対して略直交する位置でパネルPの裏面11に当接した状態で、雄ネジ部2bにナット5が締め付けられる。これにより、パネルPとパネルPの表面13に載置された被固定物10とが係止部3及びナット5によって挟み込まれ、その結果、被固定物10がパネルPに固定される。なお、ナット5と被固定物10との間には、ワッシャ6等が設けられる。
【0020】
ここで、本実施形態のアンカー部材1にあっては、係止部3が軸部2に沿う位置にあるときの係止部3の手前側(貫通孔12への挿入方向を基準として基端側)の端部には、ワイヤからなる操作紐7が結合されている。より具体的には、本体部3aのうち軸部2の基端側(雄ネジ部2b側)の領域を回動する端部には、突片3dが設けられており、この突片3dに操作紐7の一端が結合されている。操作紐7は、アンカー部材1全体よりも長くなっており、被固定物10が固定された図2の状態で被固定物10の表面側(図2では上面側)に他端が延出可能な長さになっている。操作紐7の他端には、作業者の指によって摘まれる摘み部8が設けられている。なお、被固定物10の固定構造Cでは、操作紐7は貫通孔12、孔10aを通りパネルPの表面13側に露出している。
【0021】
アンカー部材1では、作業者により操作紐7が引っ張られることで、連結ピン4の部分に設けられたねじりバネの付勢力に抗して、係止部3が軸部2に沿う位置に向けて矢印B方向に回動させられる。係止部3は、軸部2と略一直線状になった状態では、本体部3aの手前側が軸部2を覆う。
【0022】
[障害物の確認方法およびアンカー部材の取付方法]
上記の構成を有するアンカー部材1は、パネルPの貫通孔12を利用してパネルPの裏面11における障害物の有無を確認するための確認用部材としても機能する。すなわち、アンカー部材1は、確認用部材としてのみ用いることもでき、また、確認用部材および被固定物10の固定用部材として兼用することもできる。以下、既存建物の屋根における障害物の確認方法を兼ねたアンカー部材1の取付方法について説明する。
【0023】
図3は、アンカー部材1の取付方法を示すフローチャートである。まず、防止シートや断熱材等の屋根パネルPを覆っている層をカッターナイフ等でカットし、屋根パネルPの表面13をあらわにする。次に、パネルPに貫通孔12を穿設する(S1)。ここでは、図4に示すように、ドリル16の刃16aにストッパ17を取り付け、これによって、刃16aがパネルPの裏面11から突き出ることを防止し、パネルPの裏面11側に存在する可能性のあるケーブル類やパイプ類などの障害物18が刃16aにより直接損傷されるのを防止する。
【0024】
次に、貫通孔12にアンカー部材1を挿入する(S2)。ここでは、図5に示すように、摘み部8を引っ張って操作紐7に張力を与える操作を行い、係止部3を軸部2に沿わせ、この状態の保ちつつ軸部2および係止部3を貫通孔12に挿入する。このとき、摘み部8はパネルPの表面13側に留まっている。このステップS2は、挿入ステップに相当する。
【0025】
次に、係止部3がパネルPの裏面11側に完全に抜け出て裏面11側の空間に進出すると、摘み部8を引っ張る力を緩めて操作紐7に与えていた張力を弱める。これによって、係止部3はねじりバネの付勢力を受けて回動し、軸部2に対して略直交する位置で静止する。
【0026】
そして、図6に示すように、軸部2を貫通孔12内で回転させると同時に、係止部3をパネルPの裏面11側で貫通孔12を中心として回転させる(S3)。この回転の際、パネルPの裏面11側に存在する可能性のある障害物18を検知するために、係止部3のパネル当接部3cがパネルPの裏面11に接触した状態を保つことが好ましい。
【0027】
次に、パネルPの裏面11側における障害物18の有無を判断する(S4)。ここでは、例えば、ステップS3で係止部3をスムーズに回転させることができれば、障害物18は無いと判断し、一方、係止部3が何かに干渉して回転が止まったりギクシャクした動きになったりすれば、障害物18は有ると判断する。これらのステップS3,S4は、回転ステップに相当すると共に、判断ステップに相当する。
【0028】
ステップS4で障害物18は無いと判断した場合、貫通孔12と被固定物10の孔10aとの位置を合わせ、係止部3の方向(回転位置)を特に考慮することなく、ナット5により被固定物10を固定する(S5)。このようにして、アンカー部材1の取付けが完了し、図2に示した固定構造Cが完成する。
【0029】
一方、図6に示すように、係止部3が障害物18に干渉していることにより、障害物18は有ると判断した場合、係止部3が障害物18に干渉することなく係合可能なパネルPの裏面11側の領域、すなわち障害物不干渉領域の有無を判断する(S6)。ここでは、ステップS3と同様にして、軸部2を貫通孔12内で回転させると同時に係止部3をパネルPの裏面11側で再び回転させる。この回転の際、係止部3のパネル当接部3cが障害物18に干渉する度にパネル当接部3cを裏面11から多少浮かせ(軸部2を押し込み)、障害物18への引っ掛かりを回避しながら係止部3を回転させることが好ましい。
【0030】
ステップS6で障害物不干渉領域が有ると判断した場合、貫通孔12と被固定物10の孔10aとの位置を合わせ、係止部3を障害物不干渉領域内の方向(回転位置)で静止させたまま、ナット5により被固定物10を固定する(S7)。このようにして、アンカー部材1の取付けが完了し、図2に示した固定構造Cが完成する。
【0031】
一方、あらゆる方向への係止部3の回転によっても障害物18との干渉を避けられず、障害物不干渉領域は無いと判断した場合、図7に示すように、軸部2を所定長さ押し込んだ上で、表面13側に留まらせた摘み部8を引っ張って操作紐7に張力を与える操作を行い、係止部3を軸部2に沿わせ、この状態の保ちつつ軸部2および係止部3を貫通孔12から引き抜く(S8)。このステップS8は、引き抜きステップに相当する。こうしてアンカー部材1を引き抜いた場合、パネルPの他の場所において貫通孔12を穿設し、新たな貫通孔12で上記手順を繰り返す。
【0032】
以上説明した本実施形態のアンカー部材1によれば、係止部3が軸部2に沿う位置にあるときの係止部3の手前側の端部には、操作紐7の一端が結合されているので、係止部3が軸部2に直交するように一旦回動しても、パネルPの表面13側において操作紐7の他端を引くことで、係止部3を再び軸部2に沿わせることができる。よって、アンカー部材1を貫通孔12から自在に引き抜くことができる。しかも、このように自在に引き抜き可能なアンカー部材1を用い、係止部3を利用して、パネルPの裏面11側の貫通孔12周辺における障害物18の有無を貫通孔12ごとに確認することもできる。よって、パネルPの裏面11側における障害物18の有無を容易に確認できる。
【0033】
また、本実施形態の障害物18の確認方法によれば、軸部2の回転に伴って係止部3を一緒に回転させるので、係止部3を利用してパネルPの裏面11側の貫通孔12周辺における障害物18の有無を確認することができる。障害物18の有無を確認した後、ステップS8において、パネルPの表面13側で操作紐7の他端を引いて係止部3を軸部2に沿わせ、軸部2および係止部3を貫通孔12から引き抜くので、パネルPの裏面11側における障害物18の有無を容易に確認でき、しかも、アンカー部材1を貫通孔12から自在に引き抜くことができる。
【0034】
また、本実施形態のアンカー部材の取付方法によれば、ステップS3,S4において、パネルPの裏面11側に進出した係止部3が軸部2に交差した状態で、軸部2を貫通孔12内で回転させ、パネルPの裏面11側における障害物不干渉領域の有無を判断する。ステップS4で障害物不干渉領域が有ると判断した場合、パネルPの表面13側に突出した雄ネジ部2bに対してナット5を締め付けて被固定物10を固定する。また、ステップS4で障害物不干渉領域は無いと判断した場合、パネルPの表面13側で操作紐7の他端を引いて係止部3を軸部2に沿わせ、軸部2および係止部3を貫通孔12から引き抜く。このようにして、パネルPの裏面11側における障害物18の有無を容易に確認でき、しかも、障害物不干渉領域の有無に応じて、アンカー部材1を適宜取り付け、又は引き抜くことができる。
【0035】
図8(a)及び図8(b)は、他の実施形態に係るアンカー部材の正面図である。図8(a)に示す第2実施形態のアンカー部材1Aが図1に示した第1実施形態のアンカー部材1と違う点は、軸部2と係止部3との間にねじりバネが設けられず、係止部3を矢印A方法に付勢するおもり3eを有する係止部3Aを備えた点である。このアンカー部材1Aは、軸部2が水平方向に向けられる場合、すなわち貫通孔12が水平方向に穿設される場合に使用される。このような構成を有するアンカー部材1Aによっても、アンカー部材1と同様の作用効果が奏される。
【0036】
図8(b)に示す第3実施形態のアンカー部材1Bが図1に示した第1実施形態のアンカー部材1と違う点は、係止部3が軸部2に沿う位置にあるときの係止部3の奥側(貫通孔12への挿入方向を基準として先端側)の端部にも突片3fが設けられた係止部3Bを備えた点と、係止部3Bの突片3fにワイヤからなる操作紐7Bの一端が結合され、操作紐7Bの他端に摘み部8Bが設けられた点である。このような構成を有するアンカー部材1Bによれば、摘み部8を引くことにより係止部3が矢印B方向に回動し、摘み部8Bを引くことにより、係止部3が矢印A方向に回動するので、アンカー部材1と同様の作用効果が奏される。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、係止部3の端部に操作紐7が結合される場合について説明したが、回動中心部3bから手前側に多少ずれた位置に操作紐7が結合されていてもよい。また、係止部3には付勢手段が設けられていなくてもよい。さらには、係止部3は90度の範囲を回動する場合に限られず、360度またはそれ以上回動可能であってもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、まず障害物18の有無を判断した上で障害物不干渉領域の有無を判断したが、障害物18の有無の判断のみをもって障害物不干渉領域を判断としてもよい。また、上記実施形態では、軸部2に雄ネジ部2bが形成され、締結部材としてナット5が用いられる場合について説明したが、軸部2の基端側が円筒状をなしてその内周に雌ネジが形成され、これに締結部材としてボルトを締め付けてもよい。さらにまた、上記実施形態では屋根パネルPの場合について説明したが、本発明は、鉛直方向に延在する壁パネルであっても適用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0039】
1,1A,1B…アンカー部材(確認用部材)、2…軸部、3…係止部、5…ナット(締結部材)、7,7B…操作紐、10…被固定物、11…裏面、12…貫通孔、13…表面、18…障害物、P…パネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルに穿設された貫通孔を利用して前記パネルに被固定物を固定するためのアンカー部材であって、
前記貫通孔に挿入される軸部と、
前記軸部の先端部に取り付けられて、前記軸部に交差する位置と前記軸部に沿う位置との間で回動可能な係止部と、
前記係止部が前記軸部に沿う位置にあるときの前記係止部の手前側に一端が結合された操作紐と、
を備えることを特徴とするアンカー部材。
【請求項2】
パネルに穿設された貫通孔を利用して前記パネルの裏面側における障害物の有無を確認する障害物の確認方法であって、
前記貫通孔に挿入される軸部と、前記軸部の先端部に取り付けられて、前記軸部に交差する位置と前記軸部に沿う位置との間で回動可能な係止部と、前記係止部が前記軸部に沿う位置にあるときの前記係止部の手前側に一端が結合された操作紐と、を備えた確認用部材を用い、
前記係止部を前記軸部に沿わせると共に前記操作紐の他端を前記パネルの表面側に留まらせた状態で、前記貫通孔に前記軸部および前記係止部を挿入する挿入ステップと、
前記パネルの裏面側に進出した前記係止部を前記軸部に交差させた状態で、前記軸部を前記貫通孔内で回転させる回転ステップと、
前記操作紐の他端を引くことにより前記係止部を前記軸部に沿わせ、前記軸部および前記係止部を前記貫通孔から引き抜く引き抜きステップと、
を含むことを特徴とする障害物の確認方法。
【請求項3】
パネルに穿設された貫通孔を利用して前記パネルに被固定物を固定するためのアンカー部材の取付方法であって、
前記貫通孔に挿入される軸部と、前記軸部の先端部に取り付けられて、前記軸部に交差する位置と前記軸部に沿う位置との間で回動可能な係止部と、前記係止部が前記軸部に沿う位置にあるときの前記係止部の手前側に一端が結合された操作紐と、を備えた前記アンカー部材を用い、
前記係止部を前記軸部に沿わせると共に前記操作紐の他端を前記パネルの表面側に留まらせた状態で、前記貫通孔に前記軸部および前記係止部を挿入する挿入ステップと、
前記パネルの裏面側に進出した前記係止部を前記軸部に交差させた状態で、前記軸部を前記貫通孔内で回転させ、前記パネルの裏面側における障害物不干渉領域の有無を判断する判断ステップと、を含み、
前記判断ステップで前記障害物不干渉領域が有ると判断される場合、前記パネルの表面側に突出した前記軸部に対して締結部材を取り付けることにより前記被固定物を固定し、
前記判断ステップで前記障害物不干渉領域が無いと判断される場合、前記操作紐の他端を引くことにより前記係止部を前記軸部に沿わせ、前記軸部および前記係止部を前記貫通孔から引き抜く、
ことを特徴とするアンカー部材の取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−122559(P2012−122559A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274703(P2010−274703)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)