説明

アンチモンもしくはその合金の電気めっき浴

【課題】特に酸性に優れた耐食性を持つアンチモンもしくはその合金の電気めっきを安定して、効率的に行うための電気めっき方法を提供する。
【解決手段】本発明のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴は、アンチモン化合物、該アンチモン化合物を溶解する溶解剤、および溶解したアンチモン化合物をアンチモンに還元する還元剤を含有するが、アンチモン以外の金属イオンを含有していてもよい。溶解剤としては有機酸もしくはその塩が用いられ、特に好適には有機酸としてカルボン酸が用いられる。電気めっきは上記電気めっき浴を用いて、好適には陽極として非粒状アンチモン電極を用いて行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴ならびにそれを用いるアンチモンもしくはその合金の電気めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンチモンはその産出の80%以上が中国に占められ、融解から凝固の過程で体積が増大するために活字合金として、耐摩耗性の点から軸受材として、さらには塩酸や硝酸等への耐食性の点から耐酸槽の内張り、等に広く用いられていたが、脆いという難点等のために代替材料の出現等により、また近年では主として添加元素としての用途に絞られている。一方で、耐食性ある表面処理法について、安全性等の点から、亜鉛めっき鋼板、錫めっき鋼板等のクロメート処理等の代替法の検討が行われている。しかしながら、低コストで、かつ耐食性を充たす表面処理法に対する期待はなお大きい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、アンチモンの塩酸や硝酸等への耐食性が鉛、亜鉛よりも優れていることに着目し、特に酸性に優れた耐食性を持つアンチモンもしくはその合金の電気めっきを安定して、効率的に行うための電気めっき浴、ならびにそれを用いるアンチモンもしくはその合金の電気めっき方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するために以下の発明を提供する。
(1)アンチモン化合物、該アンチモン化合物を溶解する溶解剤、および溶解したアンチモン化合物をアンチモンに還元する還元剤を含有し、アンチモン以外の金属イオンを含有していてもよい、アンチモンもしくはその合金の電気めっき浴;
(2)溶解剤が有機酸もしくはその塩である上記(1)に記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴;
(3)有機酸が有機カルボン酸である上記(2)に記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴;
(4)有機酸がクエン酸、シュウ酸、酒石酸、ギ酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸もしくはそれらの塩の一種以上から選ばれる上記(2)もしくは(3)に記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴;
(5)アンチモン化合物が水溶性アンチモン化合物であり、溶解剤が水である上記(1)に記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴;
(6)還元剤が次亜リン酸塩、ホルマリン、ギ酸もしくはその塩、チオ尿素、チオ硫酸塩、チタン化合物、ヨウ化水素、ヒドラジン、アスコルビン酸類およびブドウ糖の一種以上から選ばれる上記(1)〜(5)のいずれかに記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴;
(7)アンチモン化合物が塩化物、酸化物、硫酸塩、ヨウ化物、水酸化物、硫化物、無機酸類および有機酸類の一種以上から選ばれる上記(1)〜(6)のいずれかに記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴;
(8)アンチモン以外の金属イオンを含有していないとき、浴が酸性浴である上記(1)〜(7)のいずれかに記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴;
(9)アンチモン以外の金属イオンを含有しているとき、浴が酸性浴もしくはアルカリ性浴である上記(1)〜(7)のいずれかに記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴;
(10)アンチモン以外の金属イオンとしてニッケル、コバルト、モリブデン、鉄、ビスマス、スズ、亜鉛、クロム、銀、銅の一種以上から選ばれる金属イオンを含有する上記(1)〜(7)のいずれかに記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴;
(11)アンチモン以外の金属イオンとしてビスマス、スズ、亜鉛、銀および銅の一種以上から選ばれる金属イオンを含有するとき、浴がアルカリ性浴である上記(10)に記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴;
(12)上記(1)〜(11)のいずれかに記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴を用いて、電気めっきを行なうことを特徴とするアンチモンもしくはその合金の電気めっき方法;
(13)陽極として非粒状アンチモン電極を用いて電気めっきを行なう上記(12)に記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき方法;
(14)被めっき物である陰極は、その表面が鉄系もしくは非鉄系金属である上記(12)もしくは(13)に記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき方法;ならびに
(15)浴温40〜90℃および電流密度0.1〜20A/ dmで、酸性浴もしくはアルカリ性浴中で電気めっきを行なう上記(12)〜(14)のいずれかに記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき方法、
である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、特に酸性に優れた耐食性を持つアンチモンもしくはその合金の電気めっきを安定して、安価に効率的に行うための電気めっき方法を提供しうる。さらに、本発明によればひげ状結晶であるウィスカーを発生させずにアンチモンもしくはその合金の電気めっき皮膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴は、アンチモン化合物、該アンチモン化合物を溶解する溶解剤、および溶解したアンチモン化合物をアンチモンに還元する還元剤を含有するが、アンチモン以外の金属イオンを含有していてもよい。
【0007】
アンチモン化合物としては有機、無機のいずれもよいが、好適には塩化物、酸化物、硫酸塩、ヨウ化物、水酸化物、硫化物、無機酸類および有機酸類から選ばれる、たとえば五塩化アンチモン、五酸化アンチモン、硫酸アンチモン、三臭化アンチモン、三塩化アンチモン、三酸化アンチモン、三硫化アンチモン、安息香酸アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸カリウムアンチモン(吐酒石)、酒石酸ナトリウムアンチモン(ソーダ吐酒石)、ヨウ化アンチモン等が挙げられる。特に好ましくは、五塩化アンチモン、硫酸アンチモン、三塩化アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸カリウムアンチモン(吐酒石)、酒石酸ナトリウムアンチモン(ソーダ吐酒石)が挙げられる。これらのアンチモン化合物はアンチモン化合物として20〜150g/L程度含有するように用いるのが好ましい。
【0008】
溶解剤としては、これらのアンチモン化合物を溶解するものであれば特に制限されず各種の有機化合物、無機化合物が使用されうるが、たとえば有機もしくは無機酸または塩類、アルコール等の有機溶媒等が挙げられるが、好適には電気めっきにより得られる皮膜の平滑性、光沢性等の点から有機酸もしくはその塩が用いられ、特に好適には有機酸としてカルボン酸が用いられる。有機酸もしくは有機酸塩としては、たとえばクエン酸、シュウ酸、酒石酸、ギ酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸もしくはそれらの塩、たとえばアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の一種以上から選ばれるのが好適である。最も好ましくは、酒石酸、クエン酸およびシュウ酸またはそれらの塩類から選ばれる。有機酸もしくは有機酸塩を通常10〜400g/L程度含有するように用いるのが好ましい。アンチモンとして酒石酸アンチモン、酒石酸カリウムアンチモン(吐酒石)、酒石酸ナトリウムアンチモン等のアンチモン有機酸類を用いる場合にも、上記有機酸もしくは有機酸塩を併用することができる。
【0009】
アンチモン化合物が水溶性アンチモン化合物である場合、電気めっき浴の水は溶解剤として働くが、電気めっきにより得られる皮膜の平滑性、光沢性を向上させるためにさらに上記の有機酸もしくは有機酸塩を用いるのが好適である。
【0010】
還元剤としては溶解したアンチモン化合物をアンチモンに還元するものであり、たとえば次亜リン酸ソーダ等の次亜リン酸塩、ホルマリン、ギ酸もしくはその塩、チオ尿素、チオ硫酸ソーダ等のチオ硫酸塩、チタン化合物、亜硫酸ガス、硫化水素、ヨウ化水素、ヒドラジン、アスコルビン酸類、亜鉛塩類、ブドウ糖等が挙げられる。そして、好適には次亜リン酸塩、ホルマリン、ギ酸もしくはその塩、チオ尿素、チオ硫酸塩、チタン化合物、ヨウ化水素、ヒドラジン、アスコルビン酸類およびブドウ糖、特に好適にはギ酸もしくはその塩から選ばれ、還元剤と溶解剤を兼ねることができる。配合量は、アンチモン化合物の種類、還元剤の種類等によっても異なるが、通常5〜150g/L程度、好ましくは10〜50g/L程度である。
【0011】
本発明のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴においては、アンチモン合金用の電気めっき浴とするために、上記アンチモンに加えて、さらにアンチモン以外の一種以上の金属イオンを含有する。このような金属イオンとしては、目的に応じて、たとえばニッケル、コバルト、モリブデン、鉄、ビスマス、スズ、亜鉛、クロム、銀、銅等が挙げられるが、好適にはニッケル、コバルト、スズ、亜鉛、銀、銅等が用いられうる。これらの金属化合物は通常150g/L以下含有するように用いるのが好ましく、通常アンチモン量より少量で用いられる。アンチモンの量が多いほど耐食性は向上するが、これらの金属との合金により、アンチモンの増加に伴なう脆さ等を適宜向上し得る。目的によっては、上記金属の量をアンチモンより多くし得、たとえばアンチモン量を20%程度まで低下しうる。
【0012】
上記金属イオンを得るためには、これらの金属を含む金属化合物が本発明の電気めっき浴に配合される。これらの金属化合物は水溶性であればよいが、不溶である場合にはアンチモンの場合と同様に有機酸等の溶解剤を添加して溶解しうる。さらにアンチモンの場合と同様に還元剤を用いて金属イオンとしうる。
【0013】
アンチモン以外の金属イオンを含有していない、アンチモン電気めっき浴の場合には酸性浴(pH2〜7未満)が好適であり、一方、アンチモン以外の金属イオンを含有している、アンチモン合金電気めっき浴の場合には酸性浴もしくはアルカリ性浴が好適である。特に、アンチモン以外の金属イオンとしてビスマス、スズ、亜鉛、銀および銅の一種以上から選ばれる金属イオンを含有するとき、アルカリ性浴(pH7超〜13)であるのが好適である。
【0014】
さらに、本発明のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴は、各種の配合剤、たとえば光沢剤、平滑剤、pH緩衝剤、等を適宜含有することができる。これらの配合剤の量は目的により異なるが、常法によることができる。たとえば、各種の界面活性剤がめっきの均一性向上等のために添加されうる。
【0015】
本発明のアンチモンもしくはその合金の電気めっき方法においては、上記のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴を用いて、電気めっきを行なう。電気めっきは、浴温40〜90℃および電流密度0.1〜20A/ dmで行なうのが好ましく、さらに好ましくは浴温45〜70℃および電流密度3〜10A/ dmで攪拌下に行なう。時間は、上記の条件および目的とする皮膜厚さによるが、通常10〜60分間程度である。アンチモン電気めっき浴の場合には酸性浴が好適であり、さらに好適にはpH4〜6であり、一方、アンチモン以外の金属イオンを含有している、アンチモン合金電気めっき浴の場合には酸性浴もしくはアルカリ性浴が好適である。アンチモン以外の金属イオンとしてビスマス、スズ、亜鉛、銀および銅の一種以上から選ばれる金属イオンを含有するとき、アルカリ性浴が好適である。
【0016】
本発明のアンチモンもしくはその合金の電気めっき方法において、陽極は可溶性電極もしくは炭素電極等の非溶性電極を用い得るが、最も好適な態様においては、可溶性陽極として非粒状アンチモン電極を用いて電気めっきを行なうことにより、浴中のアンチモンとともに安定したアンチモンの供給源としてアンチモンの電気めっきを継続して、安定的に行うことができる。この態様はアンチモン合金の電気めっきにおいても、他の合金成分金属よりもアンチモンの析出が遅いので有効である。このようなアンチモン電極としては溶融、冷却して得られる金属板の形態が好適である。アンチモン電極として粉末等の粒状体を用いる場合には、表面積が大きいため電流を通すと酸化物が生成されやすく、そのため不良導体を形成し易く、さらには大きな電流を用いることが困難であり、アンチモンの電気めっきを継続して、安定的に行い難いので、工業的にはあまり望ましくない。
【0017】
一方、陰極としては被めっき物が用いられ、その表面が電気めっき可能な導電性であればよく、鉄系もしくは非鉄系金属のいずれでもよく、形状も限定されず、鉄板、ニッケル板、銅板、亜鉛板等が挙げられる。それらはめっき等により表面処理されたものであってもよく、たとえば、鉄鋼材料に亜鉛めっきしたものでもよい。
【0018】
さらに、電気めっきに際しては、被めっき物表面に付着している汚れを除去するために、脱脂、酸洗、等の前処理を常法により施すことができる。
【0019】
次に、本発明に係るアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴の好適な浴組成例を示す。
【0020】
(1)吐酒石 100〜250g/L
KCl 40〜50g/L
ギ酸 20〜25g/L
光沢剤 30〜40mL/L
PH 2〜4
(2)塩化アンチモン 100〜150g/L
明礬 30〜50g/L
酢酸 150〜200g/L
光沢剤 30〜40mL/L
PH 4〜5
(3)吐酒石 10g/L
塩化アンチモン 10g/L
硫酸ニッケル 250g/L
塩化ニッケル 45g/L
ホウ酸 40〜50g/L
PH 2〜6
(4)シアン化銀 10〜40g/L
塩化アンチモン 40〜60g/L
炭酸カリ 10〜20g/L
苛性カリ 5〜10g/L
PH 10〜12
(5)酸化亜鉛 40〜60g/L
シアン化ソーダ 90〜100g/L
塩化アンチモン 40〜80g/L
塩化カリ 100〜150g/L
苛性ソーダ 40〜90g/L
pH 4〜5
(6)スズ酸カリ 90〜100g/L
苛性ソーダ 9〜10g/L
塩化アンチモン 40〜90g/L
酢酸 5〜15g/L
PH 2〜12
温度 60〜70℃
(7)吐酒石 40g/L
硫酸ニッケル 250g/L
塩化ニッケル 40g/L
硫酸コバルト 3〜4g/L
ギ酸ニッケル 45g/L
ギ酸 2g/L
PH 2〜4
温度 40〜70℃
(8)硫酸ニッケル 80g/L
硫酸ニッケルアンモン 40g/L
硫酸アンチモン 30g/L
ギ酸 20g/L
PH 5〜6
温度 50〜60℃
(9)吐酒石 20g/L
スルファミン酸ニッケル 300g/L
塩化ニッケル 5g/L
ホウ酸 40g/L
ギ酸ニッケル 45g/L
ギ酸 10g/L
PH 3〜4
温度 20〜60℃
【実施例】
【0021】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1 アンチモン電気めっき
アンチモン電気めっき浴として、酒石酸カリウムアンチモン(吐酒石)250g/L、ギ酸150g/Lのめっき浴600mLを用いて、陽極板にアンチモン板、そして陰極板に鉄板を使用し、浴温50℃、pH約4、電流密度5A/dmのめっき条件で10分間、撹拌下に電気めっきを行った。得られたSb電気めっき皮膜は灰色、厚さ約20μmであり、耐食性に優れ、ウィスカーの発生は見られなかった。
実施例2 アンチモン−ニッケル合金電気めっき
アンチモン−ニッケル合金電気めっき浴として、酒石酸カリウムアンチモン(吐酒石)10g/L、塩化アンチモン10g/L、硫酸ニッケル250g/L、塩化ニッケル45g/L、ホウ酸5g/Lのめっき浴600mLを用いて、陽極板にアンチモン板、そして陰極板に鉄板を使用し、浴温50℃、pH約4、電流密度5A/dmのめっき条件で10分間、撹拌下に電気めっきを行った。得られたSb−Ni系電気めっき皮膜は灰色、厚さ約10μmであり、Sb含有量約40wt%、Ni含有量約60wt%であり、耐食性に優れ、ウィスカーの発生は見られなかった。
実施例3 アンチモン−亜鉛合金電気めっき
アンチモン−亜鉛合金電気めっき浴として、酸化亜鉛50g/L、シアン化ソーダ90g/L、塩化アンチモン60g/L、塩化カリ125g/L、苛性ソーダ60g/Lのめっき浴600mLを用いて、陽極板にアンチモン板、そして陰極板に鉄板を使用し、浴温30℃、pH約4.5、電流密度3A/dmのめっき条件で約15分間、撹拌下に電気めっきを行った。得られたSb−Zn系電気めっき皮膜は銀白色、厚さ約10μmであり、Sb含有量約20wt%、Zn含有量約80wt%であり、耐食性に優れ、ウィスカーの発生は見られなかった。
実施例4 アンチモン−銀合金電気めっき
アンチモン−銀合金電気めっき浴として、シアン化銀30g/L、塩化アンチモン50g/L、炭酸カリ15g/L、苛性カリ5g/Lのめっき浴600mLを用いて、陽極板にアンチモン板、そして陰極板に鉄板を使用し、浴温50℃、pH約12、電流密度6A/dmのめっき条件で約10分間、撹拌下に電気めっきを行った。得られたSb−Ag系電気めっき皮膜は銀白色、厚さ約10μmであり、Sb含有量約5wt%、Ag含有量約95wt%であり、耐食性に優れ、ウィスカーの発生は見られなかった。
実施例5 アンチモン−スズ合金電気めっき
アンチモン−スズ合金電気めっき浴として、スズ酸カリ90g/L、苛性ソーダ10g/L、塩化アンチモン90g/L、酢酸10g/Lのめっき浴600mLを用いて、陽極板にアンチモン板、そして陰極板に鉄板を使用し、浴温60℃、pH約10、電流密度2A/dmのめっき条件で約10分間、撹拌下に電気めっきを行った。得られたSb−Sn系電気めっき皮膜は銀白色、厚さ約10μmであり、Sb含有量約20wt%、Sn含有量約80wt%であり、耐食性に優れ、ウィスカーの発生は見られなかった。
実施例6 アンチモン−銅合金電気めっき
アンチモン−銅合金電気めっき浴として、吐酒石15g/L、シアン化銅64.5g/L、ロダンカリ7g/L、炭酸ソーダ75g/L、のめっき浴600mLを用いて、陽極板にアンチモン板、そして陰極板に鉄板を使用し、浴温50℃、pH約12、電流密度5A/dmのめっき条件で約10 分間、撹拌下に電気めっきを行った。得られたSb−Cu系電気めっき皮膜は灰色、厚さ約10μmであり、Sb含有量約5wt%、Cu含有量約95wt%であり、耐食性に優れ、ウィスカーの発生は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によれば、特に酸性に優れた耐食性を持つアンチモンもしくはその合金の電気めっきを安定して、効率的に行うための電気めっき方法を提供しうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンチモン化合物、該アンチモン化合物を溶解する溶解剤、および溶解したアンチモン化合物をアンチモンに還元する還元剤を含有し、アンチモン以外の金属イオンを含有していてもよい、アンチモンもしくはその合金の電気めっき浴。
【請求項2】
溶解剤が有機酸もしくはその塩である請求項1に記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴。
【請求項3】
有機酸が有機カルボン酸である請求項2に記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴。
【請求項4】
有機酸がクエン酸、シュウ酸、酒石酸、ギ酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸もしくはそれらの塩の一種以上から選ばれる請求項2もしくは3に記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴。
【請求項5】
アンチモン化合物が水溶性アンチモン化合物であり、溶解剤が水である請求項1に記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴。
【請求項6】
還元剤が次亜リン酸塩、ホルマリン、ギ酸もしくはその塩、チオ尿素、チオ硫酸塩、チタン化合物、ヨウ化水素、ヒドラジン、アスコルビン酸類およびブドウ糖の一種以上から選ばれる請求項1〜5のいずれかに記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴。
【請求項7】
アンチモン化合物が塩化物、酸化物、硫酸塩、ヨウ化物、水酸化物、硫化物、無機酸類および有機酸類の一種以上から選ばれる請求項1〜6のいずれかに記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴。
【請求項8】
アンチモン以外の金属イオンを含有していないとき、浴が酸性浴である請求項1〜7のいずれかに記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴。
【請求項9】
アンチモン以外の金属イオンを含有しているとき、浴が酸性浴もしくはアルカリ性浴である請求項1〜7のいずれかに記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴。
【請求項10】
アンチモン以外の金属イオンとしてニッケル、コバルト、モリブデン、鉄、ビスマス、スズ、亜鉛、クロム、銀、銅の一種以上から選ばれる金属イオンを含有する請求項1〜7のいずれかに記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴。
【請求項11】
アンチモン以外の金属イオンとしてビスマス、スズ、亜鉛、銀および銅の一種以上から選ばれる金属イオンを含有するとき、浴がアルカリ性浴である請求項10に記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき浴を用いて、電気めっきを行なうことを特徴とするアンチモンもしくはその合金の電気めっき方法。
【請求項13】
陽極として非粒状アンチモン電極を用いて電気めっきを行なう請求項12に記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき方法。
【請求項14】
被めっき物である陰極は、その表面が鉄系もしくは非鉄系金属である請求項12もしくは13に記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき方法。
【請求項15】
浴温40〜90℃および電流密度0.1〜20A/ dmで、酸性浴もしくはアルカリ性浴中で電気めっきを行なう請求項12〜14のいずれかに記載のアンチモンもしくはその合金の電気めっき方法。