説明

アンチロック機構を備えたロック可能な細胞培養チャンバ

蓋と皿の基部とが、少なくとも2対のロック及びアンチロック部材を具備し、当該ロック及びアンチロック機能は、回転トルクの適用によって有効となる、ロック可能な細胞培養チャンバが開示される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
細菌又は真菌等の微生物のコロニー培養のためのペトリ皿の使用は周知である。ペトリ皿は、典型的には、微生物成長培地を入れるオープンな皿と、成長培地と微生物とを外的環境から隔絶する、重ね合わせる蓋とを備える。いわゆるモノプレート(mono-plate)は、ペトリ皿よりもわずかに小さい型であり、食品及び薬品製造、バイオ技術研究室並びに水質検査等の非臨床的環境で数多く使用される。
【0002】
ペトリ皿の蓋は、皿の円筒状側壁に支えられる蓋の重さによって、たやすく皿の密閉が生じるように緩嵌合していてもよい。ペトリ皿の蓋は、皿に堅く固定することができ、且つ、皿から取り外すことができてもよく、これは、ペトリ皿が偶発的にぶつかり又はひっくり返った場合に開くことを防ぐ。かかるペトリ皿の構造の1つは、米国特許第3,769,936号及び第5,854,065号に開示されており、これらの文献では、蓋は、圧縮嵌合を形成するために、皿の側壁と弾性的に接する、蓋側壁のリブやラグによって皿に固定されていてもよい。しかしながら、多くの場合、この構造には、ペトリ皿の取扱い時に、圧縮嵌合がきつすぎて蓋と皿とを素早く取り外すことができない、或いは、緩すぎて不測の漏出又はコンタミネーションを生じ得るという内在的な欠点がある。
【0003】
モノプレートは、典型的には、一回使用した後に使い捨てできるほど充分に低い費用で、高分子材料から大量に製造される。モノプレートの皿部分には、無菌状態で予め成長培地が装填され、エンドユーザーへの出荷のために包装される。
【0004】
当該分野において、特定の意図的な力が加えられなければロックされず、且つ、一度ロックされると、蓋と皿との間に固定係合を生じさせ、さらに、固定係合をすばやくはずすことができる、ロック可能な細胞培養チャンバへの継続的な要求がある。この要求は、以下に概要を示し、さらに詳細に記載する本発明によって充足される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,769,936号明細書
【特許文献2】米国特許第3,769,936号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ペトリ皿又はモノプレートの形態であってもよいロック可能な細胞培養チャンバを含み、ここにおいて、成長培地の迅速な事前装填を可能にするために、蓋部品と皿部品とは、尚早に又は偶発的に固定係合することを妨げられているが、互いを素早くロックでき、且つ、ロック解除できる。
【0007】
本発明の上記並びに他の目的、特徴及び利点は、以下の発明の詳細な説明を添付図面と併せて検討することにより、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のロック可能な細胞培養チャンバの典型的な態様の分解斜視図である。
【図2】2つのロック部材のうちの一方を示す、図1の細胞培養チャンバの蓋の裏面の斜視図である。
【図3】図2に示すロック部材の斜視図である。
【図4】2つのロック部材のうちの他方を示す、図1の細胞培養チャンバの皿又は基部の斜視図である。
【図5】図4に示すロック部材の部分斜視図である。
【図6】図4に示すロック部材のボスが固定係合をどのように妨げるかを説明する、固定係合の直前の2つのロック部材の断面図である。
【図7】固定係合後の2つのロック部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
好ましい態様の詳細な説明
図面を参照すると、図1乃至7には、下部平板22と下部円筒状側壁24とからなる円形皿20を含んだ細胞培養チャンバ1が示され、図面において、同じ符号は同様の構成要素を示す。細胞培養チャンバは、上部蓋プレート32と上部円筒状側壁34とからなる円形蓋30を更に含んでいる。蓋30は、微生物の成長を観察できるように、好ましくは透明である。
【0010】
皿20及び蓋30は、固定係合において基部と蓋とを固定するロック手段を備えている。ロック手段は、好ましくは等間隔で、より好ましくは120°の角度で、放射状に互いに離隔した少なくとも2対のロック部材を含み、ロック部材の各々の対は、摺動自在且つ圧縮自在に、互いに位置を合わせるように適合させた結合及びタブ部材を含む。より詳細には、結合部材36は、図4及び5において最も良く示されるように、好ましくは、皿20の下部円筒状側壁24と一体となっており、隆起したタブボス39を有する径方向タブ38からなる。上部円筒状側壁34の内側は、皿20と蓋30とがロック位置にある場合に、結合部材36の径方向タブ38及びタブボス39と位置を合わせるために方向付けられた、L字型の受け部材40を備える。
【0011】
ブロッキングボス(blocking boss)42は、L字型受け部材40の開放端に近接し、以下の2つの機能を有するように寸法調整及び成形されている:(1)皿20及び/又は蓋30に回転トルクが加えられる場合を除き、結合部材36のL字型受け部材40への進入を妨げ、並びに、(2)一旦結合部材36が、L字型受け部材40に完全に係合し、位置が合わさると、反対方向に回転トルクが加えられる場合を除き、はずれないようにする。この2つの機能は、好ましくは、ブロッキングボス42を、径方向外側方向のタブボス39よりも、径方向内側方向においてわずかに小さく寸法調整し、ブロッキングボス42及びタブボス39の両方を、ポリマー等の弾性材料から作製することにより達成され、そのため、2つの構成要素39及び42が係合する場合において、回転トルクの力が皿20及び/又は蓋30に加わるとき、各々はいくぶんかの可縮性又は「弾力性」を有し、それにより2つの構成要素は互いを越えて通過することが可能になる。逆に、かかる回転トルク力がない場合、ブロッキングボス42は、タブボス39を通過させず、それにより皿及び蓋の固定係合を妨げるか、又は、一旦皿と蓋とがロックされると外れないようにする。結合部材36及び、ブロッキングボス42を備えた受け部材40は、好ましくは、それぞれ、皿20及び蓋30と一体となっているが、この配置は、逆であってもよく、それでもなお本発明の望ましいロック手段を生ずると解されるべきである。
【0012】
上部蓋プレート32は、任意に、径方向の内側に突出する、好ましくは互いに約120°離隔したスペーサ50を備えていてもよく、これは、空気の循環を許容するために皿20と蓋30との間に小さな隙間を形成する。チャンバが嫌気性の適用において使用され得る場合、かかるスペーサは省略されても良い。
【0013】
好ましくは、細胞培養チャンバの全部分が、軽度の弾力性を有する高分子材料から製造される。好ましい高分子材料は、ポリスチレンである。
【0014】
固定配置を係合するため、図6において最も良く示されるように、蓋30は、径方向タブ38のタブボス39がブロッキングボス42に近接するように、皿20の上に設置され、次に、皿20は、タブボス39がブロッキングボス42に係合するまで、蓋30に対して回転するか(図6にて矢印で示される)、又はその逆も同様である。回転は継続し、細胞培養チャンバの全ての部分が弾力性を有するポリマーから作製されているため、ロック工程の間、上部円筒状側壁34、下部円筒状側壁24、タブボス39及びブロッキングボス42の全てが、わずかに変形し、図7に示すように径方向タブ38がL字型受け部材40に位置合わせされると、元の形状に戻る。受け部材40の閉鎖端は、過剰なトルク力が加えられる場合に、径方向タブ38の更なる径方向の移動を防ぐ。一旦、皿20と蓋30とが固定係合すると、蓋が基部から偶発的に外れるのを妨げる。
【0015】
皿20に、微生物特異的な栄養素若しくはインジケータを含む寒天又はゲル等の成長培地を事前装填し、次いで、基部及び蓋部品を組み合わせ、それらを無菌包装に密封し、実験室又は他のエンドユーザーに出荷することが、多くの場合、有利である。かかる事前装填と事前包装は、典型的には、オートメーション化された組立ライン方式で行われ、蓋は、寒天又はゲルを注ぐ直前又は注いだ直後に、機械的アームにより迅速に着脱される。オートメーション化された事前装填のプロセスを阻害して、減速させる傾向があるため、スピードと効率のためには、当該装填の直前及び直後には蓋が皿と固定係合しないことが最も望ましい。先に詳述した通り、本発明のアンチロックの特徴は、事前装填する上述の組立ラインで、皿20と蓋30との尚早な固定係合を妨げるのに特に効果的である。
【0016】
成長培地を含んだ本発明の細胞培養チャンバは、好ましくは、ロックされていない状態で製造され、エンドユーザーへの出荷のために気体不透過性の無菌包装に包装される。
【0017】
本明細書における先の記載で使用した用語及び表現は、そこにおいて、限定ではなく説明の用語として使用され、かかる用語及び表現の使用には、説明し且つ記載した特徴と同等のもの又はその一部を排除する意図はなく、以下の特許請求の範囲によってのみ、本発明の範囲を定義し且つ限定すると解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)円形の基部に支持され、下部プレートと下部円筒状側壁とを有する円形皿と、
(b)上部プレートと上部円筒状側壁とを有し、前記皿の前記下部円筒状側壁に嵌合するよう寸法調整された円形蓋と
を含んだロック可能な細胞培養チャンバであって、
前記基部及び前記蓋は、前記基部と前記蓋との固定係合を妨げ、且つ、前記基部と前記蓋とを固定係合において固定するアンチロック手段及びロック手段を具備し、前記アンチロック手段及びロック手段は、少なくとも2対の結合可能な部材を含み、前記結合可能な部材の対の各々は、(i)ブロッキングボスに近接したL字型受け部材と、(ii)前記ブロッキングボスにより停止可能であり、前記L字型結合部材と摺動自在且つ圧縮自在に係合できるように寸法調整及び成形された径方向タブとを含む細胞培養チャンバ。
【請求項2】
前記L字型受け部材が、前記上部プレート及び前記上部円筒状側壁の内側と一体となっており、
前記径方向タブが、前記蓋の前記下部円筒状側壁の外側と一体となっている請求項1に記載の細胞培養チャンバ。
【請求項3】
前記L字型受け部材が、前記径方向タブを受け入れる開放端と、前記径方向タブ用の止めを形成する閉鎖端とを有する請求項2に記載の細胞培養チャンバ。
【請求項4】
前記ブロッキングボスが、前記L字型受け部材の前記開放端に近接した請求項3に記載の細胞培養チャンバ。
【請求項5】
前記ブロッキングボスが、回転トルクが前記皿及び/又は前記蓋に適用される場合を除いて、前記径方向タブが前記L字型受け部材と係合するのを阻止する請求項4に記載の細胞培養チャンバ。
【請求項6】
前記L字型受け部材及び前記径方向タブが、前記基部に対して前記蓋を回転させる力を適用することにより、摺動自在に互いに係合することができる請求項5に記載の細胞培養チャンバ。
【請求項7】
前記L字型受け部材及び前記径方向タブが、前記基部に対して前記蓋を回転させる力を加えることにより、摺動自在に相互に外れることができる請求項6に記載の細胞培養チャンバ。
【請求項8】
前記径方向タブが、前記径方向タブと一体となったタブボスを具備する請求項7に記載の細胞培養チャンバ。
【請求項9】
前記ブロッキングボスの径方向の寸法が、前記タブボスの径方向の寸法よりもわずかに小さい請求項8に記載の細胞培養チャンバ。
【請求項10】
前記蓋の内部が、スペーサを具備する請求項9に記載の細胞培養チャンバ。
【請求項11】
互いに約120℃離隔した3つの前記スペーサが存在する請求項10に記載の細胞培養チャンバ。
【請求項12】
前記蓋が、透明である請求項1に記載の細胞培養チャンバ。
【請求項13】
前記皿が、微生物成長培地を含む請求項1に記載の細胞培養チャンバ。
【請求項14】
無菌包装内に包装された請求項13に記載の細胞培養チャンバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−507972(P2013−507972A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535448(P2012−535448)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/053994
【国際公開番号】WO2011/056522
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(502073946)ビオメリュー・インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】