説明

アンテナ・イヤホン付無線装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は伸縮型のアンテナを有し、かつイヤホンを有する無線装置に関し、特にイヤホンコードを収納可能に構成したアンテナ・イヤホン付無線装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、携帯電話に代表される無線電話機やトランシーバ等の無線装置はますます小型化が図られている。しかし、この種の無線装置では送受信を行うための送話器と受話器が必要とされ、かつこれら送話器と受話器を人間の口と耳に適切に対応位置させるためには、これらを所定の間隔を離して無線装置に配置する必要があり、その間隔を確保するために装置の小型化にも限度がある。このようなことから、従来では図6に示すような折畳み型のものが考えられている。これは、無線装置本体をヒンジで結合した本体部21とカバー部22とで構成し、本体部21にはアンテナ23、表示器24と共に受話器25を配設し、カバー部22には操作ボタン26と共に送話器27を配置したものである。この装置では、非使用時には本体部21とカバー部22とを折り畳んで小型に収納できるようにし、使用時には両者を開くことにより、送話器27と受話器25とを所定の間隔に位置させることができる。
【0003】しかしながら、この構成では、非使用時に本体部とカバー部とを折り畳んだときに、両部が重なり状態とされるため、厚さ寸法が大きくなり、小型化に不利になる。そこで、新たに考えられているものが、受話器をイヤホンで構成するものであり、イヤホンコードを任意の長さに設定すれば、無線装置の本体には送話器のみを配設すればよく、本体を極めて小さく設計しても耳と口の距離が十分かせぐことができ、将来はこれが主流になるものと思われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、受話器としてイヤホンを用いると、イヤホンコードが無線装置の本体から引き出されることになり、特に非使用時にイヤホンコードが本体に絡みつく等して煩わしいという問題がある。このため、近年の携帯ラジオ等で採用されているようにイヤホンコードを本体内に収納可能な構成とすることも検討されている。ところが、この種の無線装置において伸縮型のアンテナを採用する場合には、通信時にはアンテナを伸縮させる操作が必要とされており、この操作に加えてイヤホンコードの引出しや収納操作を行うことは、無線装置を使用する際の操作工数を増やすことになり、携帯者に煩わしさを与えてしまうことになる。本発明の目的は、イヤホンコードの引出しや収納をアンテナの伸縮操作と連動させることにより、アンテナの伸縮操作或いはイヤホンコードの引出し・収納操作の一方を行えば、これと同時に他方の操作が自動的に行われ、操作の煩わしさを改善した無線装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の無線装置は、無線装置本体に対して伸縮可能なアンテナと、本体からコードを引出しかつ収納させるイヤホンを備え、アンテナとイヤホンコードとを係合手段によって相互に結合し、この係合手段は無線装置本体からイヤホンコードを引き出す際の張力を利用してアンテナを伸長させ、アンテナを収縮させるときの力を利用してイヤホンコードを無線装置本体内に収納させるように構成する。例えば、無線装置本体に設けたアンテナ収納溝に沿って移動されるアンテナと、イヤホンと、一端にイヤホンを接続し他端部が本体内に延長されて他端が本体内の一部に固定されるイヤホンコードとを備えており、アンテナの一部にイヤホンコードが係合され、アンテナがアンテナ収納溝に沿って移動されるのに伴って本体内におけるイヤホンコードの長さを変化させるように構成する。また、無線装置本体に設けたアンテナ収納溝に沿って移動されるアンテナと、イヤホンと、一端にイヤホンを接続し他端部が本体内に延長されるイヤホンコードと、アンテナの一部に設けられたラックと、このラックに噛合されるピニオンと、このピニオンと一体的に回転されるリールとを備えており、イヤホンコードの他端をリールに巻き付け、アンテナの移動によりピニオンを回転させ、かつリールを回線してイヤホンコードの巻き取り量を変化させるように構成する。
【0006】
【実施例】次に本発明の実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明を携帯無線電話機に適用した実施例の外観図、図2はその要部の内部構造を示す背面側の概略斜視図である。これらの図において、電話機は小型の容器状に形成された本体1を有し、この本体1には表示器2、操作ボタン3、送話器4が設けられる。また、本体1の内部に収納され、本体外に伸縮可能なロッド状のアンテナ5を有している。このアンテナ5は本体1の一側の内部に設けたアンテナ収納溝6に内挿され、このアンテナ収納溝6に沿って移動させることで、アンテナ5を本体1内に収納し、或いは先端側の部分を本体1外に突出させることができるように支持されている。
【0007】一方、前記本体1の他側の一部には凹部7が形成されるとともに、この凹部7の底面には本体1の内外を連通させる小孔8が開設されている。この小孔8には一端にイヤホン9を接続したコード10が本体の内外にわたって挿通される。また、前記凹部7はイヤホン9を収納可能な形状寸法とされている。前記イヤホンコード10は引っ張り強度の高いコードが用いられており、その他端は本体1内部に配設した複数個の固定プーリ11,12,13に順次巻掛けられて本体内壁に沿って延長され、前記アンテナ5の基端部に設けた可動プーリ14に巻掛られた上で、本体内の一部15に機械的に固定され、かつ図外の回路に電気的に接続されている。
【0008】ここで、前記固定プーリ11,12,13のうち、アンテナ5に設けた可動プーリ14に隣接される固定プーリ13は前記アンテナ収納溝6の開口部位置に設けられ、この固定プーリ13から可動プーリ14に延設されるコード10がアンテナ収納溝6に沿って延長されるように構成される。また、コード10の他端の固定部15も前記アンテナ収納溝6の開口部に位置され、可動プーリ14から固定部15に延設されるコード10がアンテナ収納溝6に沿って延長されるように構成される。
【0009】この構成によれば、電話機の非使用時、即ちアンテナ5を本体1のアンテナ収納溝6内に収納した状態では、図3(a)に模式的に示すように、可動プーリ14がアンテナ収納溝6の底部に位置されているため、イヤホンコード10は本体1内の固定部15−アンテナ収納溝6の底部位置−アンテナ収納溝6の開口位置の固定プーリ13−他の固定プーリ12,11−小孔8に沿って延長されることになる。したがって、コード10の長さをこの延長される長さに略等しくしておけば、コード10は略その全長にわたって本体1内に収納され、かつイヤホン9は凹部7に収納されることになる。
【0010】一方、電話機の使用時には、図3(b)のように、イヤホン9を凹部7から引張ると、コード10が小孔8から本体1外に引き出される。これにより、コード10は特に固定プーリ13と固定部15との間が直線状態となるように張力が発生する。この張力によって可動プーリ14が固定プーリ13と固定部15との間にまで移動され、即ち可動プーリ14がこの位置まで移動され、結果としてこれと共にアンテナ5がアンテナ収納溝6内で伸縮方向に移動され、アンテナ5がアンテナ収納溝6から本体1外に突出されることになる。したがって、イヤホンコード10を引き出せば、これに伴ってアンテナ5が伸長されることになり、使用時に必要とされるイヤホンコード10の引出しとアンテナ5の伸長を1つの操作で行うことが可能となり、操作を簡略化することができる。なお、使用後には、アンテナ5をアンテナ収納溝6に押し込めば、これに伴って可動プーリ14が図3(a)ように、アンテナ収納溝6の底部にまで移動され、このときイヤホンコード10を引っ張って本体1内に収納させる。この場合にも、1つの操作でアンテナ5の収納とイヤホンコード10の収納を同時に行うことができ、操作を簡略化することができる。
【0011】図4は本発明の第2実施例の要部の概略斜視図であり、第1実施例と同様に携帯無線電話機に適用した例である。この実施例では、アンテナ収納溝6に収納されたアンテナ5はその基端側の全長の略半分の長さにわたってラック16が一体に設けられている。また、本体1内の前記アンテナ収納溝6に臨む位置には、前記ラック16に噛合されるピニオン17が軸支され、アンテナ5がアンテナ収納溝6内で移動され、これと一体にラック16が移動されるのに伴って回転されるように構成される。また、前記ピニオン17にはリール18が同軸に設けられ、ピニオン17と一体的に回転される。このリール18にはイヤホンコード10の他端部が巻き付けられている。このイヤホンコード10は固定プーリ19に巻掛けられた上で、第1実施例と同様な小孔8を透して本体1外に引き出されている。
【0012】この構成によれば、電話機の非使用時には、図5(a)に示すように、アンテナ5はアンテナ収納溝6内に収納されており、このときラック16に噛合されるピニオン17は図示の反時計方向に回転されてこれと一体のリール18にイヤホンコード10を巻き取った状態にある。これにより、イヤホンコード10は本体内に収納され、イヤホン9は凹部7に収納されている。一方、使用時にアンテナ5をアンテナ収納溝6から引き出すと、図5(b)のように、これと一体にラック16がアンテナ収納溝6の開口方向に移動され、ピニオン17は時計方向に回転され、これと一体のリール18も同方向に回転される。これにより、イヤホンコード10はリール18から所定長さだけ巻き出され、この長さだけ小孔8を透して本体1外に押し出される。なお、使用後にアンテナ5をアンテナ収納溝6に押し込めば、前述と逆の動作によってイヤホンコード10の他端がリール18に巻き取られ、イヤホンコード10が本体1内に収納される。したがって、この第2実施例においても、アンテナの伸縮操作とイヤホンの引出し・収納操作を1つの操作で行うことができ、操作の簡略化が実現できる。
【0013】なお、前記各実施例は本発明を携帯無線電話機に適用した例を示しているが、トランシーバ等のような送受信を行う各種の無線装置に幅広く適用することができる。また、アンテナの伸縮動作とイヤホンコードの引出し・収納動作を連動させる機構としては、前記各実施例の他に種々の機構が採用できることは言うまでもない。
【0014】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、無線装置本体に対して伸縮可能なアンテナの伸縮動作と、イヤホンを接続して本体から引出したイヤホンコードの引出し・収納動作を連動させるように構成しているので、いずれか一方を操作してその動作を行わせれば、これに連動して他方を動作させることができ、アンテナの伸縮操作とイヤホンコードの引出し・収納操作を1つの操作で行うことができ、操作の簡略化を図ることができる。すなわち、イヤホンコードを本体から引き出すことで、このイヤホンコードに係合されたアンテナを伸長動作させ、逆にアンテナを本体に押し込むことにより、係合されたイヤホンコードを本体内に収納させることができる。また、アンテナを本体から引き出すことで、これに連動してリールを回転させ、イヤホンコードを巻き出して本体外に押し出させ、逆にアンテナを本体内に押し込むことでリールを逆回転させてイヤホンコードをリールに巻き取って本体内に収納することができ、特にこの構成ではアンテナの操作のみでイヤホンコードの操作を行う必要がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する携帯無線電話機の外観図である。
【図2】本発明の第1実施例の要部の内部構成を示す背面側の概略斜視図である。
【図3】第1実施例の動作を説明するための内部構成図である。
【図4】本発明の第2実施例の要部の内部構成を示す概略斜視図である。
【図5】第2実施例の動作を説明するための内部構成図である。
【図6】従来の折畳み構造の通信装置の一例の外観図である。
【符号の説明】
1 本体
4 送話器
5 アンテナ
6 アンテナ収納溝
9 イヤホン
10 イヤホンコード
11〜13 固定プーリ
14 可動プーリ
16 ラック
17 ピニオン
18 リール
19 固定プーリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 無線装置本体に対して伸縮可能なアンテナと、前記本体からコードを引出しかつ収納させるイヤホンを備える無線装置において、前記アンテナと前記イヤホンコードとを係合手段によって相互に結合し、前記係合手段は無線装置本体からイヤホンコードを引き出す際の張力を利用してアンテナを伸長させ、アンテナを収縮させるときの力を利用してイヤホンコードを無線装置本体内に収納させるように構成したことを特徴とするアンテナ・イヤホン付無線装置。
【請求項2】 無線装置本体に設けたアンテナ収納溝に沿って移動されるアンテナと、イヤホンと、一端に前記イヤホンを接続し他端部が本体内に延長されて他端が本体内の一部に固定されるイヤホンコードとを備え、前記アンテナの一部にイヤホンコードが係合され、アンテナがアンテナ収納溝に沿って移動されるのに伴って本体内におけるイヤホンコードの長さを変化させるように構成してなる請求項1のアンテナ・イヤホン付無線装置。
【請求項3】 無線装置本体に設けたアンテナ収納溝に沿って移動されるアンテナと、イヤホンと、一端に前記イヤホンを接続し他端部が本体内に延長されるイヤホンコードと、前記アンテナの一部に設けられたラックと、このラックに噛合させるピニオンと、このピニオンと一体的に回転されるリールとを備え、前記イヤホンコードの他端を前記リールに巻き付け、アンテナの移動によりピニオンを回転させ、かつリールを回線してイヤホンコードの巻き取り量を変化させるように構成してなる請求項1のアンテナ・イヤホン付無線装置。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【特許番号】第2503866号
【登録日】平成8年(1996)4月2日
【発行日】平成8年(1996)6月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−113926
【出願日】平成5年(1993)4月16日
【公開番号】特開平6−303295
【公開日】平成6年(1994)10月28日
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【参考文献】
【文献】特開平2−274046(JP,A)
【文献】特開平3−263957(JP,A)
【文献】特開平3−258061(JP,A)
【文献】実開平4−105742(JP,U)