説明

アンテナ装置

【課題】外部振動や熱膨張などの要因でスロットアンテナと回路基板の相対位置にずれが生じても給電部材が半田接続不良を引き起こす虞が少ない高信頼性のアンテナ装置を提供すること。
【解決手段】アンテナ装置10は、高周波回路が配設された回路基板11と、回路基板11を覆う上部シールドケース13および下部シールドケース15と、上部シールドケース13の上板部13aから延出する給電部材14とによって主に構成されており、上板部13aに放射スロット16,17が開設されている。給電部材14は、上板部13aに連続する基端から水平方向に突出している水平部14aと、水平部14aの先端部を直角に折曲してなる折り曲げ部と、折り曲げ部から下方へ延びている垂下部14cとによって構成され、垂下部14cの先端部が回路基板11のランド上に搭載されて半田付けされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板に開設した放射スロットを励振させるスロットアンテナと、給電部材を介して該スロットアンテナに接続される高周波回路を備えた回路基板とがユニット化されているアンテナ装置に係り、特に、その給電部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のアンテナ装置は、回路基板を覆う板金製のケースに放射スロットを開設して給電を行うことにより、該ケースをスロットアンテナとして動作させることができるため、小型化や低コスト化が図りやすく、車載用のアンテナ装置などとして好適である。
【0003】
図5は従来より知られているスロットアンテナの斜視図であり(例えば、特許文献1参照)、このスロットアンテナは、導電性の金属板からなるケース部材1の上板部1aに放射スロット2を開設して励振させるようにしている。放射スロット2は直線状に延びる細長い開口として形成されており、上板部1aには放射スロット2の延伸方向中央付近に給電点3,4が設定されている。これらの給電点3,4は、一方が給電回路に接続され他方がグラウンドに接続されている。そして、給電時には放射スロット2の周縁に沿って高周波電流が流れ、所定の周波数で放射スロット2を励振させることができる。
【特許文献1】特開2003−218629号公報(第2頁、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来例におけるケース部材1は、低雑音増幅回路等の高周波回路を備えた図示せぬ回路基板の上方に上板部1aを配置させて該回路基板を覆うシールドケースとして利用できるので、回路基板上のランドと給電点3,4とを給電ピン等の給電部材を介して電気的に接続することにより、スロットアンテナと回路基板とがユニット化されたコンパクトなアンテナ装置を実現できる。
【0005】
しかしながら、このように構成されるアンテナ装置においては、上板部1aの給電点3,4と回路基板上のランドとを電気的に接続するために、これら各所に給電部材を半田付けしなければならないので、半田接続作業が煩雑であるのみならず、上板部1aと回路基板の相対位置にずれが生じたときに、給電部材の半田付け部に過大なストレスが作用して接続不良を引き起こす危険性があった。特に、この種のアンテナ装置を車両に搭載した場合、外部振動や温度変化に伴う熱膨張などによって上板部1aと回路基板の相対位置にずれが生じることは避け難いため、例えば上板部1aと回路基板との対向間隔が増減するたびに給電部材の半田付け部に過大なストレスが作用し、半田クラックが発生しやすくなる。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、給電部材の接続不良を防止して信頼性を高めたアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明のアンテナ装置では、高周波回路が配設された回路基板と、この回路基板に対向配置されると共に放射スロットが開設された導電性の金属板と、この金属板から延出する帯状金属片からなり先端部が前記高周波回路に半田付けされた給電部材とを備え、前記給電部材の基端部と先端部との間にヒンジ状の折り曲げ部が形成されている構成とした。
【0008】
このように放射スロットが開設された金属板から延出する帯状金属片を給電部材となし、この給電部材に予めヒンジ状の折り曲げ部を形成しておけば、外部振動や熱膨張などによって金属板(給電部材の基端側)と回路基板(給電部材の先端側)の相対位置がずれても、その位置ずれを折り曲げ部等のバネ性によって吸収することができるため、給電部材の先端側の半田付け部に作用するストレスが軽減されて半田クラック等の発生を防止することができる。また、給電部材の基端側は前記金属板に連続しているため半田付けは不要である。したがって、外部振動や熱膨張などに起因する給電部材の半田接続不良を防止する効果が高まって信頼性が向上すると共に、給電部材に対する半田接続作業が簡素化できて組立性が向上する。
【0009】
かかる構成のアンテナ装置は、例えば、前記給電部材の基端部から前記折り曲げ部までの間を前記回路基板に対して略平行な屈曲線または湾曲線に沿って延びる水平部となし、かつ、該給電部材の前記折り曲げ部から先端部までの間を前記回路基板に対して略垂直な直線に沿って延びる垂下部となすことが好ましい。この場合、垂下部の板厚方向をX方向、回路基板に対して平行でX方向と直交する方向をY方向、回路基板に対して垂直な方向をZ方向とすると、給電部材はヒンジ状の折り曲げ部を開閉させる外力に対してバネ性に富むため、該給電部材の基端部と先端部の相対位置がX方向やZ方向にずれても容易に追従できる。また、Y方向の位置ずれについては、屈曲線または湾曲線に沿って延びる水平部の捩じれを利用して追従させることができる。したがって、外部振動や熱膨張などによって給電部材の基端部と先端部の相対位置がXYZいずれの方向にずれたとしても、該給電部材の半田付け部に作用するストレスを軽減することができる。
【0010】
また、かかる構成のアンテナ装置において、前記金属板が前記回路基板を覆うシールドケースの上板部であれば、スロットアンテナがシールドケースを兼ねる構成となって部品点数や組立工数を削減できるため、小型で安価なアンテナ装置が得られる。この場合、高周波回路を構成する各種チップ部品を回路基板上に実装するリフロー半田付け工程の前に、回路基板にシールドケースを取り付けて給電部材の先端部をランドのクリーム半田上に搭載しておけば、各種チップ部品と一括で給電部材もリフロー半田付けできるので、給電部材に対する煩雑な半田接続作業を行う必要がなくなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアンテナ装置は、放射スロットが開設された金属板からヒンジ状の折り曲げ部を有する帯状金属片を延出して給電部材となし、この給電部材の先端部を回路基板のランドに半田付けする構成にしてあるため、外部振動や熱膨張などによってスロットアンテナと回路基板の相対位置がずれても、その位置ずれを折り曲げ部等のバネ性により吸収して給電部材の半田付け部に作用するストレスを軽減することができる。それゆえ、給電部材が半田接続不良を起こしにくくなって信頼性が向上すると共に、給電部材に対する半田接続作業が簡素化できて組立性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の実施の形態を図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係るアンテナ装置の斜視図、図2は該アンテナ装置の断面図、図3は該アンテナ装置の給電部材を示す要部斜視図である。
【0013】
図1と図2に示すアンテナ装置10は、高周波回路が配設された回路基板11と、この回路基板11に実装された電子部品12と、回路基板11の上面側を覆う板金製の上部シールドケース13と、この上部シールドケース13から延出する帯状金属片であって先端部が前記高周波回路に半田付けされた給電部材14と、回路基板11の下面側を覆う板金製の下部シールドケース15とによって主に構成されており、上部シールドケース13の上板部13aに平面視Z字形状の放射スロット16,17が点対称に開設されている。
【0014】
給電部材14はプレス抜きされた上部シールドケース13の一部を曲げ加工して形成したものであり、図3に示すような外観を呈している。つまり、この給電部材14は、上板部13aに連続する基端から水平方向へ突出して略L字形に延びている水平部14aと、この水平部14aの先端部を直角に折曲してなるヒンジ状の折り曲げ部14bと、この折り曲げ部14bから下方へ延びている垂下部14cとによって構成され、垂下部14cの先端部が回路基板11のランド18上に搭載されて半田付けされる。これにより、給電部材14を介して回路基板11の高周波回路と上板部13aとが電気的に接続されるため、放射スロット16,17が励振されてスロットアンテナとして動作させることができる。なお、本実施形態例においては、各放射スロット16,17に対して給電部材14の基端部を適宜位置に設定することにより、放射スロット16,17が約90度の位相差で励振されて円偏波アンテナとして動作するようになっている。
【0015】
このようにアンテナ装置10は、放射スロット16,17が開設された上板部13aから延出する帯状金属片を給電部材14となしており、この給電部材14は、回路基板11に対して略平行な水平部14aと略垂直な垂下部14cとが折り曲げ部14bでヒンジ状に連結された形状になっているため、外部振動や熱膨張などによって上板部13a(給電部材14の基端側)と回路基板11(給電部材14の先端側)の相対位置がずれても、その位置ずれを折り曲げ部14b等のバネ性によって吸収することができる。すなわち、垂下部14cの板厚方向をX方向、回路基板11に対して平行でX方向と直交する方向をY方向、回路基板11に対して垂直な方向をZ方向とすると、給電部材14は折り曲げ部14bを開閉させる外力に対してバネ性に富むため、給電部材14の基端部と先端部の相対位置がX方向やZ方向にずれても容易に追従できる。また、Y方向の位置ずれについては、水平部14aの捩じれを利用して追従させることができる。したがって、外部振動や熱膨張などによって給電部材14の基端部と先端部の相対位置がXYZいずれの方向にずれたとしても、給電部材14の先端側の半田付け部に作用するストレスを軽減することができて、半田クラック等の発生を防止することができる。また、給電部材14の基端側は上板部13aに連続しているため、当該部分での半田付けは不要である。それゆえ、このアンテナ装置10は、外部振動や熱膨張などに起因する給電部材14の半田接続不良を効果的に防止でき、信頼性が高まっている。
【0016】
また、このアンテナ装置10は、上部シールドケース13がスロットアンテナとして動作するというものなので、部品点数や組立工数を削減でき、小型化および低コストが促進しやすくなっている。しかも、高周波回路を構成する各種チップ部品を回路基板11上に実装するリフロー半田付け工程の前に、回路基板11に上部シールドケース13を取り付けて給電部材14の先端部をランド18のクリーム半田上に搭載しておけば、各種チップ部品と一括で給電部材14もリフロー半田付けできるので、給電部材14に対する煩雑な半田接続作業を行う必要がなくなって、組立性の一層の向上が図れる。
【0017】
なお、上述した実施形態例では、給電部材14の水平部14aが回路基板11に対して略平行なL字状の屈曲線に沿って延びているが、この水平部14aが回路基板11に対して略平行な湾曲線に沿って延びていてもよい。また、上述した実施形態例では一対の放射スロット16,17を開設した円偏波用のスロットアンテナについて説明しているが、本発明は給電部の構造に関するものであり、直線偏波用のスロットアンテナであっても適用可能である。
【0018】
図4は本発明の他の実施形態例に係るアンテナ装置の給電部材を示す要部斜視図であり、図3に対応する部分には同一符号を付してある。
【0019】
図4に示す給電部材14は、前述した実施形態例に比べて基端部の形状が異なっており、上板部13aに連続する基端から下方へ突出する第2の垂下部14dと、この第2の垂下部14dの先端部を直角に折曲してなる第2の折り曲げ部14eと、この第2の折り曲げ部14eから水平方向へ突出して略L字形に延びている水平部14aと、この水平部14aの先端部を直角に折曲してなる折り曲げ部14bと、この折り曲げ部14bから下方へ延びている垂下部14cとによって構成されている。このように給電部材14に第2の垂下部14dおよび第2の折り曲げ部14eが付設してあると、給電部材14の基端側と先端側の相対位置が回路基板11に対して平行な平面内でずれても、その位置ずれは折り曲げ部14bのバネ性と第2の折り曲げ部14eのバネ性とによって確実に吸収されるため、外部振動や熱膨張などに起因する給電部材14の半田接続不良をより効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態例に係るアンテナ装置の斜視図である。
【図2】該アンテナ装置の断面図である。
【図3】該アンテナ装置の給電部材を示す要部斜視図である。
【図4】本発明の他の実施形態例に係るアンテナ装置の給電部材を示す要部斜視図である。
【図5】従来例に係るスロットアンテナの斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
10 アンテナ装置
11 回路基板
13 上部シールドケース
14 給電部材
14a 水平部
14b 折り曲げ部
14c 垂下部
14d 第2の垂下部
14e 第2の折り曲げ部
15 下部シールドケース
16,17 放射スロット
18 ランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波回路が配設された回路基板と、この回路基板に対向配置されると共に放射スロットが開設された導電性の金属板と、この金属板から延出する帯状金属片からなり先端部が前記高周波回路に半田付けされた給電部材とを備え、前記給電部材の基端部と先端部との間にヒンジ状の折り曲げ部が形成されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記給電部材の基端部から前記折り曲げ部までの間を前記回路基板に対して略平行な屈曲線または湾曲線に沿って延びる水平部となし、かつ、該給電部材の前記折り曲げ部から先端部までの間を前記回路基板に対して略垂直な直線に沿って延びる垂下部となしたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記金属板が前記回路基板を覆うシールドケースの上板部であることを特徴とするアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−114981(P2006−114981A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297736(P2004−297736)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】