説明

アンテナ

【課題】被装着パネルにアンテナを装着する際の挿入力は弱いままで、抜け力を強くして、取付作業性の改善を図る。
【解決手段】底面に給電用筒状部11を有するベース体10と、ベース体10の上側を覆うカバー20と、ベース体10に設けられる仮固定用ホルダ60とを備え、仮固定用ホルダ60は、給電用筒状部11の外壁面に沿って下方に延びる一対のメインアーム部62と、メインアーム部62に対して下端部にて繋がったサブアーム部63とを有している。前記下端部がサブアーム部63の撓みの支点となり、サブアーム部63の上端部はメインアーム部62の外側面よりも外方向に突出した係止爪65をなしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AM/FM電波受信等に使用されるアンテナに係り、とくに車載用等に適した構造のアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
AM/FM電波受信用の車載用アンテナとしては、多段ロッドアンテナや、アンテナ突出長が短くなるようにヘリカルコイルを用いたものが知られている。
【0003】
図5(A),(B)はこのような車載用のアンテナの従来例であり、底面に給電用筒状部11及び回り止め凸部13を有するベース体10と、ベース体10上に支持された図示しない回路基板と、ベース体10の上側及び回路基板を覆うカバー20と、ベース体10に固定される仮固定用ホルダ30と、ベース体10の底面に装着される水密シール用弾性パッドとしてのゴムパッド40とを備えている。
【0004】
カバー20の上部には、ネジ部21が設けられており、仮想線で示すロッドアンテナ又はヘリカルコイル等のアンテナ素子部25が連結されるようになっている。給電用筒状部11は前記回路基板及びアンテナ素子部に接続する図示しない給電線(同軸ケーブル等)を通すために中空である。
【0005】
仮固定用ホルダ30は車体パネル50(例えば車体ルーフ)の取付孔51に給電用筒状部11を差し込んだときに、給電用筒状部11の外周に形成された雄ネジ部11aにナットを螺合してベース体10を車体パネル50に固定するまでの間に、ベース体10が取付孔51から抜けてしまわないように仮止めするための部材である。この仮固定用ホルダ30は、図6(A),(B)に示すように、取付基部31と、一対のアーム部32と、アーム部下端部に肉厚を変化させることで一体に形成された係止爪33とを有している。
【0006】
図5(B)のように、仮固定用ホルダ30の取付基部31はネジ35でベース体10に固定されており、アーム部32は給電用筒状部11の外壁面に沿って下方に延びる配置である。給電用筒状部11の外壁面にはアーム部32の内側への撓み動作の妨げとならないように、凹部12が形成されている。つまり、凹部12によってアーム部32と給電用筒状部11の外壁面との接触を回避している。
【0007】
カバー20はベース体10の底面側よりネジ26でベース体10に固定され、その際にゴムパッド40もベース体10の底面側に取り付けられる。
【0008】
図7(A),(B)を用いて従来例のアンテナを車体パネル50に取り付ける際の仮固定用ホルダ30の作用を説明する。
【0009】
図7(A)のように、アンテナ挿入時にはアーム部32のみが撓む(ベンディングする)。とくにアーム部32のJ部が撓む。これにより、車体パネル50の外側面から取付孔51に挿入されたアーム部32の係止爪33は外側のテーパーがガイドとなりアーム部32を内側に撓ませて取付孔51を通過し、図7(B)のように車体パネル50の内側面に引っ掛かってアンテナを仮保持する。図7(B)のように挿入後、アンテナ上方向(抜け方向)に荷重が加わったとき、係止爪33の部分Kには撓み機能(外側に拡がる機能)はないため、抜け力(抜くのに必要な力)を十分大きく確保することは困難である。
【0010】
図5(B)は給電用筒状部11及びアーム部32を車体パネル50の取付孔51に挿入した仮保持状態を示し、この仮保持状態では水密シール用弾性パッドとしてのゴムパッド40はベース体10と車体パネル50間に介在する。この仮保持状態において、図示しないナットを給電用筒状部11の外周面の雄ネジ部11aに螺合し締め付けることで、アンテナの車体パネル50への最終的な固定を行う。
【0011】
このように、アンテナに仮固定用ホルダ30を設けておくことで、従来、1人の作業員が車体パネル50の外側からその取付孔51にアンテナの給電用筒状部11を挿入保持し、別の作業員が車体パネル50の内側からアンテナのネジ止め作業を行っていたのを、1人の作業員のみで済ませることが可能になった。
【0012】
上記従来例と同様の仮固定手段を有する公知文献としては、下記特許文献1があげられる。
【特許文献1】特開2000−252724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、上記アンテナの仮固定用ホルダに要求されることは、アンテナを車体パネル等の被装着パネルに取り付ける際はスムーズに取付孔に挿入可能で被装着パネルに搭載でき、その後のネジ止め工程(例えばナット締め付け工程)において作業中にアンテナが完全に外れないことである。つまり、
挿入力(挿入時に必要な力) → 極力弱く
抜け力(抜くのに必要な力) → 極力強い
ことが要求される。
【0014】
上記従来例の仮固定用ホルダでは、アーム部の下端部の肉厚を変化させることで係止爪を一体に形成している構造であり、この係止爪形状であると、抜け力が約30Nと弱く、作業の仕方によっては外れてしまうことがあった。抜け力を強くするには、係止爪の引っ掛かり量を多くする方法があるが、そうすると、挿入力が強くなり作業性が悪化する問題がある。
【0015】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、挿入力は弱いままで、抜け力を強くすることが可能で、取付作業性の改善を図ることが可能なアンテナを提供することにある。
【0016】
本発明のその他の目的や新規な特徴は後述の実施の形態において明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明のある態様のアンテナは、底面に給電用筒状部を有するベース体と、ベース体の上側を覆うカバーと、前記ベース体に設けられる仮固定用ホルダとを備え、
前記仮固定用ホルダは、前記給電用筒状部の外壁面に沿って下方に延びる複数のメインアーム部と、前記メインアーム部に対して下端部にて繋がったサブアーム部とを有し、前記下端部が前記サブアーム部の撓みの支点となり、前記サブアーム部の上端部は前記メインアーム部の外側面よりも外方向に突出した係止爪をなしていることを特徴としている。
【0018】
前記態様において、前記メインアーム部は前記給電用筒状部の外壁面の互いに対向する位置あるとよい。
【0019】
前記態様において、前記メインアーム部に設けられた開口の内側に前記サブアーム部が形成されているとよい。
【0020】
前記態様において、前記係止爪は上端に向かって肉厚が増加しているとよい。
【0021】
前記態様において、前記給電用筒状部の外壁面には凹部が形成され、前記凹部の内側に前記メインアーム部が配設されているとよい。
【0022】
前記態様において、前記ベース体の底面に水密シール用パッドが装着されているとよい。
【0023】
前記態様において、被装着パネルの孔に前記給電用筒状部を前記被装着パネルの外側面から差し込んだ状態で前記係止爪は前記被装着パネルの内側面に引っ掛かり、かつ前記給電用筒状部の抜け方向の荷重に対して、前記係止爪は外側に開く構造であるとよい。
【0024】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るアンテナによれば、車体パネル等の被装着パネルに対する挿入力は弱いままで、抜け力を強くすることが可能で、アンテナの被装着パネルへの取付作業性の改善を図ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0027】
図1(A),(B)及び図2は本発明の実施の形態に係るアンテナの全体構成であり、底面に給電用筒状部11及び回り止め凸部13を一体に有する金属製ベース体10と、ベース体10上に支持された図示しない回路基板と、ベース体10の上側及び回路基板を覆う樹脂製カバー20と、ベース体10に固定される樹脂製仮固定用ホルダ60と、ベース体10の底面に装着される水密シール用弾性パッドとしてのゴムパッド40とを備えており、仮固定用ホルダ60以外の構成は図5(A),(B)の従来例と同様である。
【0028】
仮固定用ホルダ60は被装着パネルとしての車体パネル50(例えば車体ルーフ)の取付孔51に給電用筒状部11を差し込んだときに、給電用筒状部11の外周に形成された雄ネジ部11aにナットを螺合してベース体10を車体パネル50に固定するまでの間に、ベース体10が取付孔51から抜けてしまわないように仮止めするための部材である。
【0029】
図3(A),(B)に示すように、仮固定用ホルダ60は、取付基部61と、一対(複数)のメインアーム部62と、メインアーム部62に対して下端部Sにて繋がったサブアーム部63とを有しており、各アーム部62,63が十分な可撓性を発揮できるように、可撓性樹脂で成形されている。サブアーム部63はメインアーム部62に設けられた開口64の内側に形成されており、前記下端部Sがサブアーム部63の撓みの支点となり、サブアーム部63の上端部はメインアーム部の外側面よりも外方向に突出した係止爪65をなしている。係止爪65は上端に向かって肉厚が増加し、かつ突出量も増加している。この係止爪65は下端部Sを撓みの支点として、図4(A)の点線のように突出量が減じる方向に撓むことが可能であり、かつ図3(B)の点線のように突出量が増す方向に撓むことも可能である。
【0030】
図1(B)のように、仮固定用ホルダ60の取付基部61はネジ68でベース体10に固定されており、給電用筒状部11の外壁面には対称位置に凹部12が形成されていて、凹部12の内側にメインアーム部62が位置している。この結果、メインアーム部62は給電用筒状部11の外壁面の互いに対向する位置にあって、その外壁面に沿って下方に延びる配置である。給電用筒状部11の外壁面に凹部12が形成されているため、外壁面がメインアーム部62の内側への撓み動作の妨げとはならない。つまり、凹部12によってメインアーム部62と給電用筒状部11の外壁面との接触を回避している。
【0031】
図4(A),(B)を用いてアンテナを車体パネル50に取り付ける際の仮固定用ホルダ60の作用を説明する。
【0032】
図4(A)のように、アンテナ挿入時にはメインアーム部62が撓む(とくにメインアーム部62のP部が撓む)ことに加えて、サブアーム部63のQ部が撓んで動く。これにより、車体パネル50の外側面から取付孔51に挿入されたサブアーム部63の係止爪65は、外側のテーパーがガイドとなり、メインアーム部62及びサブアーム部63の内側への撓み動作によって取付孔51を通過し、図4(B)のように車体パネル50の内側面に引っ掛かってアンテナを仮保持する。その際、メインアーム部62及びサブアーム部63の両者が撓むことが可能であるため、より少ない挿入力で取付孔51への挿入が可能となり、挿入性の向上を図ることができる。
【0033】
また、図4(B)の仮保持状態において、アンテナ上方向(抜け方向)に荷重が加わり、車体パネル50の内側面にサブアーム部63のQ部、つまり係止爪65の上端が当たったときに、係止爪65が図4(B)の点線のように外側に撓んで拡がる構造となっているため、抜け力(抜くのに必要な力)を増大させることが可能で、仮保持状態におけるアンテナ保持力の向上を図ることができる。
【0034】
そして、図1(B)のように、給電用筒状部11、メインアーム部62及びサブアーム部63を車体パネル50の取付孔51に挿入した仮保持状態(この状態ではゴムパッド40はベース体10と車体パネル50間に介在している)にて、図示しないナットを給電用筒状部11の外周面の雄ネジ部11aに螺合し締め付けることで、アンテナの車体パネル50への最終的な固定を行う。
【0035】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0036】
(1) アンテナのベース体10に仮固定用ホルダ60を設けておくことで、アンテナの車体パネル50への固定作業を1人の作業員で済ませることが可能であり、しかも、車体パネル50の外側面から取付孔51に仮固定用ホルダ60を装着する(メインアーム部62及びサブアーム部63を挿入する)際に、メインアーム部62及びサブアーム部63の両方が撓むことで挿入力をいっそう小さくでき、挿入作業性を改善することができる。
【0037】
(2) 挿入後の仮保持状態において、サブアーム部63の係止爪65が外側に拡がることで、抜け力を増大させて、アンテナ保持力の向上を図ることができる。これにより、アンテナのナットによる固定作業の作業性の改善が図れる。また、係止爪65のメインアーム部の外側面からの突出量を多めに設定可能なことも抜け力増大に寄与できる。
【0038】
(3) これらにより、図5の従来例では挿入力約30N、抜け力約30Nであったものが、本実施の形態では、例えば挿入力を約5Nに減じることが可能で、抜け力は約150N程度に増大させることが可能になる。
【0039】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0040】
上記実施の形態では、ベース体の給電用筒状部に雄ネジ部を設け、これにナットを螺合させてアンテナを被装着パネルに取り付ける構造で説明したが、ベース体の給電用筒状部とは別の位置に雄ネジ又は雌ネジを設けてアンテナを取り付ける構造であってもよい。また、被装着パネルは車体パネルに限定されるものではない。
【0041】
上記実施の形態では、メインアームは一対(2つ)であって、給電用筒状部の相互に対向する位置に設けられたが、メインアームは3個以上であって、例えば給電用筒状部の周囲に等角度間隔で配置されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係るアンテナの実施の形態であって、(A)は側面図、(B)はそのI−I矢視拡大断面図である。
【図2】実施の形態の外観及び車体パネルの取付孔を示す斜視図である。
【図3】実施の形態において用いる仮固定用ホルダであって、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【図4】前記仮固定用ホルダの車体パネルへの挿入動作を示し、(A)は挿入時の正面図、(B)は挿入後の正面図である。
【図5】アンテナの従来例であって、(A)は側面図、(B)はそのV−V矢視拡大断面図である。
【図6】従来例において用いる仮固定用ホルダであって、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【図7】従来例の仮固定用ホルダの車体パネルへの挿入動作を示し、(A)は挿入時の正面図、(B)は挿入後の正面図である。
【符号の説明】
【0043】
10 ベース体
11 給電用筒状部
12 凹部
13 回り止め凸部
20 カバー
21 ネジ部
25 アンテナ素子部
30,60 仮固定用ホルダ
40 ゴムパッド
50 車体パネル
51 取付孔
61 取付基部
62 メインアーム部
63 サブアーム部
64 開口
65 係止爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に給電用筒状部を有するベース体と、ベース体の上側を覆うカバーと、前記ベース体に設けられる仮固定用ホルダとを備え、
前記仮固定用ホルダは、前記給電用筒状部の外壁面に沿って下方に延びる複数のメインアーム部と、前記メインアーム部に対して下端部にて繋がったサブアーム部とを有し、前記下端部が前記サブアーム部の撓みの支点となり、前記サブアーム部の上端部は前記メインアーム部の外側面よりも外方向に突出した係止爪をなしている、アンテナ。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナにおいて、前記メインアーム部は前記給電用筒状部の外壁面の互いに対向する位置にある、アンテナ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアンテナにおいて、前記メインアーム部に設けられた開口の内側に前記サブアーム部が形成されている、アンテナ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のアンテナにおいて、前記係止爪は上端に向かって肉厚が増加している、アンテナ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のアンテナにおいて、前記給電用筒状部の外壁面には凹部が形成され、前記凹部の内側に前記メインアーム部が配置されている、アンテナ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のアンテナにおいて、前記ベース体の底面に水密シール用パッドが装着されている、アンテナ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のアンテナにおいて、被装着パネルの孔に前記給電用筒状部を前記被装着パネルの外側面から差し込んだ状態で前記係止爪は前記被装着パネルの内側面に引っ掛かり、かつ前記給電用筒状部の抜け方向の荷重に対して、前記係止爪は外側に開く構造である、アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−147777(P2010−147777A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322373(P2008−322373)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】