説明

アームレスト

【課題】 使用位置と収納位置との間に亘って回動する簡易型のアームレストにおいて、使用位置の角度(高さ)を簡単な構造で変更できるようにした。
【解決手段】 アームの一端の回動部を中心にシートフレームに対して上方に回動させた収納位置と下方に回動させた使用位置とに亘って回動可能に取り付けたアームレストであり、アームにストッパ当面を形成するとともに、シートフレームに所定の角度で固定される取付金具に、取付金具を180°入れ換えるとストッパ当面を違う位置で受けるストッパ受面が二つできるように形成してアームの使用位置が変更できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アームを下方に回動させた使用位置の位置(高さ)が変更可能な簡易型のアームレストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の簡易型の(高さが無段階に調整ができたり、その他の有用な機能を持たない)アームレストとして本発明者等が提案した下記特許文献1のものがある。これは、アームの回動部に形成されたストッパの応力が集中する当部と受部が補強されて効果的であるが、ただ、アームを下方に回動させた使用位置(高さ)が変更できないものになっている。一方で、シートに着席する者には体格差があるから、使用位置が変更できるのに越したことはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−088832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、簡易型のアームレストでありながら、使用位置を変更できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題の下、本発明は、請求項1に記載した、アームの一端の回動部を中心にシートフレームに対して上方に回動させた収納位置と下方に回動させた使用位置とに亘って回動可能に取り付けたアームレストであり、アームにストッパ当面を形成するとともに、シートフレームに所定の角度で固定される取付金具に、取付金具を180°入れ換えるとストッパ当面を違う位置で受けるストッパ受面が二つできるように形成してアームの使用位置が変更できるようにしたことを特徴とするアームレストを提供したものである。
【0006】
そして、以上のアームレストにおいて、本発明は、請求項2に記載した、アームを横割りした(突合面が水平)リブを有する樹脂板からなるケースに収容し、各々のリブを互いに相手方に入り込ませるとともに、リブでアームを固定的に受けた手段、請求項3に記載した、ケースを構成する上ケースと下ケースの取付部材側に水平に孔を形成し、アームと取付部材との間に介在するスペーサと取付部材との間に挿入されるリング部材に縮径可能な反りが先端に形成されたクリップを形成し、クリップをそれぞれの孔に挿入して上ケースと下ケースを結合するとともに、ケースをリング部材に固定した手段、請求項4に記載した、アームの使用位置の変更を、一つのストッパ受面を肉盛り又は切除するか、二つのストッパ受面の位置が異なる別の取付金具に交換するかで行う手段を提供する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によると、取付金具の180°入れ換えといったきわめて簡易な構造で、しかも、車両購入後であっても容易に使用位置を変更できることになり、搭乗者の体格に応じたものにできる。請求項2の手段によれば、アームが補強されるとともに、アームがケース内でずれたりすることを防止できる。請求項3の手段によれば、半割のケースの結合が強固になるとともに、ケースとケースを包む表皮も同時に固定さるため、表皮とケースがずれたり、外れたりするのを防止できる。請求項4の手段によっても簡易な構造、簡単な操作でアームの使用位置を変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】アームレストの主たる部材の斜視図である。
【図2】アームレストの組立状態を示す断面図である。
【図3】取付金具とアームとの関係を示す正面図である。
【図4】取付金具の平面図である。
【図5】取付金具とアームとの関係を示す正面図である。
【図6】アームとカバーの関係を示す斜視図である。
【図7】アームとカバーの関係を示す断面図である。
【図8】図7のA−A断面図である。
【図9】図7のB−B断面図である。
【図10】上ケースと下ケースの結合を示すアームの断面図である。
【図11】上ケースと下ケースの結合を示すアームの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は主たる部材の斜視図、図2は組み立てた状態の断面図であるが、本発明のアームレストは、シートフレーム1側からブラケット2、取付金具3及びアーム4を主たる部材とする。シートフレーム1はシートバックの骨格を形成する部材であり、ブラケット2はシートフレーム1に溶接等で固着されるカップ形をしたものである。なお、ブラケット2の肉部5は反シートフレーム1側(これを外側という)に向けられ、この肉部5の中心にはナット6が固着された孔7が形成されている。また、孔7を中心に、本例では四個の角窓8が同芯、等角に形成されている。
【0010】
取付金具3は金属板であって、中心に孔9が形成されており、対向位置に二つの突出部10、10´が形成されている。そして、突出部10、10´と90°の位置の円形内に二つの切起片11が内側に向けて切り起こされており、この切起片11は上記した角窓8に挿入されるものであり、これでブラケット2に対して位置決めがなされる。
【0011】
アーム4は金属板を断面が略C形になるように成形したものであり、肉部12が内側、すなわち、取付金具3側に向けられる。肉部12の一端(基端)側は回動部13を構成するものであり、回動部13において、肉を内側に向けて盛り上げて中心に孔14を形成している。孔14より先端側の位置には、同じく肉を略三角形に盛り上げてストッパ部15としている。ストッバ部15は肉部12のどこに形成してもよいが、本例ではアーム4の中心に形成している。
【0012】
以上のアーム4を間に取付金具3を挟んでそれぞれの孔7、9、14にボルト16を通してブラケット2のナット6にねじ込んで固定する(29はアーム4の孔14に蓋をされるキャップ)。このとき、切起片11を角窓8に挿入してブラケット2との角度が一定になるように規制しているが、二つの切起片11の中間の角窓8には、これと同じ形状をした凸部33を取付金具3に膨設して突入させており、切起片11の強度を補完している。さらに、アーム4と取付金具3との間に補強体を兼ねるスペーサ17を介在させ、スペーサ17の内周側にはブッシュ18が取付金具3と一体に嵌合されている。
【0013】
組み付けた状態の取付金具3とアーム4との関係を外側方向に見たのが図3であるが、アーム4は垂直上方から後方へ超えた約110°の収納位置と略水平になる使用位置とに亘ってブッシュ18の回りに回動する。図3の状態は使用位置の場合であり、以下、これを規準位置として方向を指称するが、このとき、ストッパ部15の下面が一方の突出部10の上面に当たってそれ以上の回動が規制されている。この点で、ストッパ部15の下面を使用位置のストッパ当面(以下、使用当面と称する)19とし、これを受ける突出部10の上面を使用位置のストッパ受面(以下、使用受面と称する)20とする。
【0014】
同時にアーム4は収納位置まで回動できるが、このとき、ストッパ部15の上面は他方の突出部10´の上面に当り、それ以上の回動が規制される。この点で、ストッパ部15の上面を収納位置のストッパ当面(以下、収納当面と称する)21とし、これを受ける突出部10´の上面を収納位置のストッパ受面(以下、収納受面と称する)22とする。
【0015】
図3において、使用当面19は使用受面20に当接しているが、このときのアーム4の位置(角度)は略水平であることは上記した。本発明は、アーム4の使用位置の変更が可能な点を特徴としている。そのためには、使用受面20の位置が変更できなくてはならない。これには色々な方法があるが、まず第一には、取付金具3を180°回転させてブラケット2に固定することである。この場合、使用当面19に当接することになる突出部10´における下面の位置を上記した使用受面20と位置関係を違えてある。
【0016】
図4は切起片11が垂直に並ぶように置いた取付金具3の平面図であるが、突出部10の上面である使用受面20と突出部10´の下面である使用受面20(後述する第二使用受面23)がそれぞれ垂線と交差する角度をそれぞれα1 、α2 とすると、今、(α1 −α2 )を10°に設定すると、仮に、使用受面20で決定されるアーム4の使用位置が水平であるとすると、使用当面19が突出部10´の下面と当接する位置は約10°上昇したものとなる。
【0017】
これを示したのが図5の正面図であるが、このときの使用当面19と当接する突出部10´の元々の下面は新たな受面となり、これを第二使用受面23とする。なお、収納姿勢は敢えて変える必要がないから、収納受面19と突出部10の元々の下面(これを第二収納受面24とする)とは同じでよい。
【0018】
ところで、アーム4の使用姿勢の位置を変更する手段としては、この他に使用受面20を肉盛り溶接又はヤスリやグラインダで切除する方法等が考えられる。また、予め、使用位置の異なる取付金具3を幾種類か製作しておき、要請に応じて適宜取り換える方法等もある。
【0019】
次に、以上のアーム4と取付金具3はケース25で被覆される。図6はその状態を示す斜視図であるが、ケース25は薄い樹脂の成形品であり、横割りされて(突合面が水平)上ケース25aと下ケース25bとで構成される。上ケース25a、下ケース25bともに内部に比較的上下に丈の長いリブ26を有し、各々のリブ26は互いに相手方に入り込むように形成されている。このように、アーム4をケース25に対して比較的小さくしたのは、アーム4のサイズを必要なだけ確保して重量を軽くできるからである。
【0020】
元来、アーム4の断面は縦長をしており、上下には強いのであるが、このリブ26の相互の嵌入及びケース25の横割りは、内外方向に強い剛性と耐捩じり性を有するものになる。特に、アーム4は腕を支えるだけでなく、身体が外側にずれのも規制する作用が求められ、外側方向には強い剛性が要求されるからである。この他、図示は省略するが、互いの突合面にはピン・ホールが形成されて相互に嵌合できるようになっており、位置ずれ等は規制されている。
【0021】
図7はアーム4とケース25との関係を示す断面図、図8は図7のA−A断面図、図9はB−B断面図であるが、上ケース25aと下ケース25bのリブ26は同時にアーム4に密着して包み込んでおり、アーム4がケース25内で上下、内外、先後いずれの方向にも動かないようになっている。つまり、アーム4はケース25できっちりと位置が固定されている。以上のアーム4を包んだケース25は合成皮革等の表皮27の中に要所に発泡樹脂等のクッション材28を介在させて包装される。
【0022】
図10は上ケース25aと下ケース25bを結合する場合の他の例を示すアーム4の先端部分の断面図であるが、このように一方を凸にして他方にこの凸が嵌まり込む孔等を形成して相互に嵌合すれば、結合を強固にできる。図11も同様であるが、取付金具3とスペーサ17との間にはワッシャ状のリング部材30を入れているが、このリング部材30の外周部分に反りが縮径可能に設けられたクリップ31を形成しておき(別体でもよい)、クッション材28を巻装したケース25の該当個所に孔32を形成して、この孔32に嵌め込めば、ケース25a、25b同士の結合が強固になり、表皮27も同時に固定されるため、表皮27とケース25がずれたり、外れたりするのを防止できる。同様に、キャップ29の外周にもクリップ31を形成しておくのが適する。
【符号の説明】
【0023】
1 シートフレーム
2 ブラケット
3 取付金具
4 アーム
5 ブラケットの肉部
6 ナット
7 ブラケットの孔
8 角窓
9 取付金具の孔
10 取付金具の突出部
10´ 〃
11 切起片
12 アームの肉部
13 回動部
14 アームの孔
15 ストッパ部
16 ボルト
17 スペーサ
18 ブッシュ
19 使用位置のストッパ当面
20 使用位置のストッパ受面
21 収納位置のストッパ当面
22 収納位置のストッパ受面
23 使用位置の第二ストッパ受面
24 収納位置の第二ストッパ受面
25 ケース
25a 上ケース
25b 下ケース
26 ケースのリブ
27 表皮
28 クッション材
29 キャップ
30 リング部材
31 クリップ
32 孔
33 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームの一端の回動部を中心にシートフレームに対して上方に回動させた収納位置と下方に回動させた使用位置とに亘って回動可能に取り付けたアームレストであり、アームにストッパ当面を形成するとともに、シートフレームに所定の角度で固定される取付金具に、取付金具を180°入れ換えるとストッパ当面を違う位置で受けるストッパ受面が二つできるように形成してアームの使用位置が変更できるようにしたことを特徴とするアームレスト。
【請求項2】
アームを横割りした(突合面が水平)リブを有する樹脂板からなるケースに収容し、各々のリブを互いに相手方に入り込ませるとともに、リブでアームを固定的に受けた請求項1のアームレスト。
【請求項3】
ケースを構成する上ケースと下ケースの取付部材側に水平に孔を形成し、アームと取付部材との間に介在するスペーサと取付部材との間に挿入されるリング部材に縮径可能な反りが先端に形成されたクリップを形成し、クリップをそれぞれの孔に挿入して上ケースと下ケースを結合するとともに、ケースをリング部材に固定した請求項2のアームレスト。
【請求項4】
アームの使用位置の変更を、一つのストッパ受面を肉盛り又は切除するか、二つのストッパ受面の位置が異なる別の取付金具に交換するかで行う請求項1〜3いずれかのアームレスト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−148023(P2012−148023A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10672(P2011−10672)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(591283501)備前発条株式会社 (33)