説明

イオナイザおよび除電システム

【課題】課題は、放電電極の清掃が容易なイオナイザを提供することである。
【解決手段】イオナイザ(1)は、ノズル(3)と、放電電極(4)と、空気ポンプ(5)と、放電電極を清掃する少なくとも一のブラシ毛(7)とを備える。空気ポンプは、ノズルの噴出口(32)から流入口(31)へ空気を吸引する。ブラシ毛の固定端部(72)は、空気ポンプが作動したとき、ブラシ毛の自由端部(71)が空気ポンプの吸引によってノズルの内部に引き込まれ、且つ放電電極に接触するように、ノズルの噴出口側に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオナイザおよび除電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは、静電気に弱い。半導体デバイスの製造工場では、半導体デバイスの静電破壊を防ぐ対策の一つとして、イオナイザが広く用いられている。イオナイザは、放電方式により、コロナ放電型と軟X線照射型とに大別される。以下、コロナ放電型について述べる。
【0003】
イオナイザは、針のように、先端が尖った放電電極を少なくとも1個備えている。イオナイザは、放電電極の先端付近の空間にコロナ放電を発生させるために、放電電極に高電圧を印加する。その際に、放電電極の先端付近の空間に強い電場が発生する。その電場に伴い、放電電極は、空気中の帯電した塵埃を吸い寄せる。時間の経過とともに、放電電極の表面は、その吸い寄せられた塵埃によって徐々に汚れていく。特に、放電電極の先端付近が汚れた場合、コロナ放電が発生しにくくなる。放電電極の表面の汚れは、イオナイザの除電能力の低下を招く。なお、「除電」とは、静電気を除去するという意味である。
【0004】
そのため、放電電極を定期的に清掃する必要がある。その清掃方法の一つに、ブラシなどで放電電極の表面を擦る方法がある。この他、放電電極の表面に付着した塵埃を吸引する方法もある(特許文献1−3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−178384号公報
【特許文献2】特開2009−158412号公報
【特許文献3】特開平8−8039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ノズル型(ブロー型ともいう)と呼ばれるイオナイザがある。このイオナイザは、ノズルを備える。ノズルは、2つの役割を果たす。1つ目は、送出される空気の整流である。2つ目は、放電電極の保護である。
【0007】
ノズル型では、放電電極がノズルの内部にある。そのため、放電電極の清掃にブラシを用いる場合、清掃の度に、人手によりノズルを取り外す必要があった。そのため、非常に手間が掛かる。また、塵埃を吸引するだけでは、塵埃を吸引しきれないことが多かった。
【0008】
そこで、放電電極の清掃が容易なイオナイザが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、[発明を実施するための形態]で使用される符号を括弧内に付記し、[課題を解決するための手段]を説明する。この符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための形態]の記載との対応関係を明らかにするために付加されたものである。この符号は、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に使用してはならない。
【0010】
本発明のイオナイザは、流入口(31)と噴出口(32)とを備えるノズル(3)と、前記ノズルの内部に位置する放電電極(4)と、前記ノズルの前記噴出口から前記流入口へ空気を吸引する空気ポンプ(5)と、前記放電電極を清掃する少なくとも一のブラシ毛(7)とを備える。前記ブラシ毛は、自由端部(71)と、固定端部(72)とを備える。前記ブラシ毛の前記固定端部は、前記空気ポンプが作動したとき、前記ブラシ毛の前記自由端部が前記空気ポンプの吸引によって前記ノズルの内部に引き込まれ、且つ前記放電電極に接触するように、前記ノズルの噴出口側に固定されている。
【0011】
本発明の除電システムは、製造・検査装置(110)と、前記製造・検査装置の製造・検査対象を除電するイオナイザ(1)とを備える。前記イオナイザは、流入口と噴出口とを備えるノズルと、前記ノズルの内部に位置する放電電極と、前記ノズルの前記噴出口から前記流入口へ空気を吸引する空気ポンプと、前記放電電極を清掃する少なくとも一のブラシ毛とを備える。前記ブラシ毛は、自由端部と、固定端部とを備える。前記ブラシ毛の前記固定端部は、前記空気ポンプが作動したとき、前記ブラシ毛の前記自由端部が前記空気ポンプの吸引によって前記ノズルの内部に引き込まれ、且つ前記放電電極に接触するように、前記ノズルの噴出口側に固定されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、放電電極の清掃が容易なイオナイザを提供することができる。更に、そのイオナイザを備えた除電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、イオナイザ1の概要を示す概略図である。図1は、除電モード時のイオナイザ1を示している。
【図2】図2は、イオナイザ1の概要を示す概略図である。図2は、清掃モード時のイオナイザ1を示している。
【図3】図3は、図2に示すノズル3の長手方向の断面図である。
【図4】図4は、図3に示すX−X線における断面図である。
【図5】図5は、ブラシ毛7の一例を示す概略図である。
【図6】図6は、図5に示すブラシ毛7の他の例を示す概略図である。
【図7】図7は、イオナイザ1の構成例を示すブロック図である。
【図8】図8は、イオナイザ1の動作例を示すフローチャートである。
【図9】図9は、除電システム100の構成例を模式的に示すブロック図である。
【図10】図10は、除電システム100でのイオナイザ1の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に関連づけて説明する。全ての実施の形態において、同一の構成要素には原則として同一の符号が付されている。
【0015】
[第1の実施の形態]
1.イオナイザの概要
第1の実施の形態に係るイオナイザの概要について説明する。図1は、イオナイザ1の概要を示す概略図である。イオナイザ1は、本体2と、ノズル3と、放電電極4と、空気ポンプ5と、チューブ6と、複数のブラシ毛7とを備える。イオナイザ1の主な仕様を以下に示す。
【0016】
放電:コロナ放電型
放電電極の印加電圧:AC型
イオナイザの形状:ノズル型
【0017】
放電型は、コロナ放電型である。コロナ放電型は、電圧の印加方式により、AC(交流)型とDC(直流)型とに大別される。本実施の形態では、AC型を例に挙げる。AC型では、放電電極4の個数は、1個である。この他、イオナイザは、その形状により、ノズル型、バー型、卓上型などに区別される。本実施の形態では、ノズル型を例に挙げる。
【0018】
イオナイザ1の各構成要素を概略的に説明する。本体2は、放電電極4の軸部分を収納している。本体2は、放電電極4(軸部分)に高電圧を印加する電圧源(不図示)なども備えている。ここで言う高電圧とは、典型的には、2kV以上の電圧を指す。本体2は、放電電極4の一部(軸部分)などが配置されているものの、その内部に空気が流れるように、空洞になっている。
【0019】
ノズル3は、流入口31と、噴出口32とを備える。ノズル3は、本体2に脱着可能に取り付けられている。
【0020】
放電電極4は、ノズル3の内部に位置している。放電電極4の素材は、典型的には、タングステンである。
【0021】
空気ポンプ5は、電動である。空気ポンプ5は、空気を送出する送出モードと、空気を吸引する吸引モードとを備える。空気ポンプ5は、チューブ6を介して本体2に接続されている。チューブ6の長さ、口径、材質などの仕様は、空気ポンプ5を本体2に接続して、空気を送出および吸引することができれば、特に限定されない。
【0022】
複数のブラシ毛7は、放電電極4を清掃する役割を持つ。複数のブラシ毛7の各々は、自由端である自由端部71と、固定端である固定端部72とを備える。複数のブラシ毛7の各々の固定端部72は、ノズル3の噴出口32の側に固定されている。
【0023】
この他、イオナイザ1は、(A)除電モードと、(B)清掃モードとを備える。以下、2つのモードについて説明する。
【0024】
(A)除電モード
図1は、除電モード時のイオナイザ1を示している。除電モードでは、本体2の電圧源が、正の高電圧と負の高電圧とを交互に放電電極4に印加する。放電電極4に正の高電圧が印加された場合、放電電極4の先端付近の空間に正イオンが発生する。正イオンは、コロナ放電の発生領域にある空気中の酸素分子や窒素分子などが正に帯電したイオンである。一方、放電電極に負の高電圧が印加された場合、負イオンが発生する。負イオンは、正イオンとは逆に、酸素分子や窒素分子が負に帯電したイオンである。以下、特に断りがない限り、正イオンおよび負イオンを区別することなく単に「イオン」という。
【0025】
除電モードでは、空気ポンプ5は、送出モードで作動する。そのとき、空気ポンプ5は、ノズル3の流入口31から噴出口32へ空気を送出する。そのため、コロナ放電によって発生したイオンは、流入口31から流入してきた空気と共にノズル3の噴出口32から噴出される。図1の矢印は、空気の流れを示している。ここで、イオナイザ1が除電すべき対象物(不図示)の表面が、例えば、正に帯電していると仮定する。イオナイザ1がその対象物の表面にイオンを含む空気を吹き付けると、対象物の表面は、吹き付けられた負イオンによって電気的に中和される。
【0026】
除電すべき対象物は、特に限定されない。その対象物は、例えば、半導体デバイスであってもよいし、帯電しやすいプラスチックであってもよい。半導体デバイスは、ウェハであってもよいし、パッケージ化されたチップであってもよい。
【0027】
(B)清掃モード
図2は、清掃モード時のイオナイザ1を示している。清掃モードでは、放電電極4への高電圧の印加は、停止している。当然ながら、イオンの発生も停止している。清掃モードでは、空気ポンプ5は、吸引モードで作動する。そのとき、空気ポンプ5は、ノズル3の噴出口32から流入口31へ空気を吸引する。複数のブラシ毛7の各々の固定端部72は、ノズル3の噴出口32側に固定されている。そのため、空気ポンプ5が吸引モードで作動したとき、複数のブラシ毛7の各々の自由端部71が空気ポンプ5の吸引によってノズル3の内部に引き込まれる。このとき、図2の矢印に示すように、ノズル3の内部では、噴出口32から流入口31の向きに空気の流れが発生している。各々の自由端部71は、空気の流れに沿って、放電電極4の表面に接触する。この接触により、放電電極4の表面に付着していた塵埃が除去される。
【0028】
2.ノズルの構造
ノズル3の構造について説明する。図3は、図2に示すノズル3の長手方向の断面図である。また、図3は、清掃モード時におけるノズル3の内部の様子を示している。ノズル3は、例えば、先細ノズルである。そのため、噴出口32の断面積が流入口31の断面積よりも小さい。ノズル3は、その内部に流路33を備える。流路33は、流入口31から噴出口32まで通じている。
【0029】
放電電極4は、流路33の流入口31側に位置している。放電電極4は、2つの部位に分けられる。一つは、先が尖った先端部41である。先端部41は、流入口31側に位置し、噴出口32に面している。先端部41の断面積は、軸部42の断面積から次第に小さくなる。先端部41の長手方向の長さ(高さ)は、典型的には、3mmから6mm程度である。塵埃は、先端部41に最も付着しやすい。もう一つは、円柱または略円柱の形状を持つ軸部42である。本実施の形態では、先端部41と軸部42との双方が流路33に位置している。軸部42が本体2に配置され、先端部41のみが流路33に位置していても、差し支えはない。
【0030】
図3の矢印は、空気ポンプ5の吸引で発生する空気の流れを示している。この空気の流れにより、各々の自由端部71が放電電極4の先端部41に接触する。そのためには、複数のブラシ毛7の各々の固定端部72は、できるだけ流路33の噴出口32側の内壁34に固定されていることが望ましい。即ち、噴出口32から各々の固定端部72までの距離Lは、できるだけ小さい方がよい。その理由は、除電モード時に、各々の自由端部71がノズル3の外部に容易に送出されるためである。
【0031】
複数のブラシ毛7の各々の固定端部72は、空気ポンプ5が吸引モードで作動したとき、各々の自由端部71がノズル3の内部に引き込まれ、且つ放電電極4に接触するように、ノズル3の噴出口32側に固定されている。これに加え、複数のブラシ毛7の各々は、自由端部71が先端部41に十分に接触できる長さを持つ。無論、塵埃は、先端部41だけではなく、軸部42にも付着することがある。軸部42に付着した塵埃を取り除くため、複数のブラシ毛7のうちのいくつかは、自由端部71が軸部42に接触できる長さを持っていてもよい。
【0032】
図4は、図3に示すX−X線における断面図である。ブラシ毛7の本数は、放電電極4を十分に清掃することができる範囲内で任意である。ただし、ブラシ毛7の本数が不用意に多い場合、除電モードの際に放電電極4によって発生したイオンの放出が妨げられる恐れがある。したがって、ブラシ毛7の本数は、イオンの放出の妨げとならない範囲内であることも必要である。図4では、16本のブラシ毛7の各々の固定端部41が例示されている。X−X線におけるノズル3の断面は、円形または略円形である。図4には、放電電極4の先端部41も示されている。先端部41は、ノズル3の中央または略中央に位置している。各々の固定端部72は、先端部41を取り巻くように、内壁34に等間隔または略等間隔に固定されている。
【0033】
ここで、再び図3を参照する。清掃モードにおいて、空気ポンプ5の吸引の開始から一定時間(例えば、4、5秒)が経過するまでは、流路33の空気の流れは、非定常である。このとき、各々の自由端部71は、断続的に先端部41に接触しやすい。一方、その後の空気の流れは、定常である。このとき、各々の自由端部71は、先端部41に擦れるように接触しやすい。いずれの場合も、各々の自由端部71の挙動は、流路33の空気の流れに従う。そのため、全ての自由端部71が先端部41に一斉に接触することはまれである。しかしながら、放電電極4を清掃するためには、できるだけ多くの自由端部71が先端部41に接触することが望ましい。
【0034】
そこで、ノズル3は、ベンチュリ構造を持つ。その詳細は、以下の通りである。ノズル3は、ノズル本体35と、噴出口部36とで構成されている。ノズル本体35にベンチュリ構造が設けられている。
【0035】
ここで、ノズル本体35に着目する。流路33の断面積は、流入口31から先端部41の中央付近に近づくにつれて次第に減少する。そして、流路33の断面積は、噴出口部36に近づくにつれて、先端部41の中央付近から次第に増加する。空気ポンプ5が吸引モードで作動したとき、流路33の断面積が減少から増加に転じる位置で、清掃モードにおける空気の流速が最大となる。換言すれば、流路33を流れる空気の流速は、先端部41で最大となる。このとき、流路33の形状によって、空気の流れが先端部41付近に集中する。この現象は、ベンチュリ効果として知られている。ベンチュリ効果により、各々の自由端部71が先端部41に接触しやすくなる。空気の流れを先端部41付近に集めることができれば、流路33は、他の形状であってもよい。
【0036】
3.ブラシ毛
ブラシ毛7について説明する。図5は、ブラシ毛7の一例を示す概略図である。本実施の形態では、複数のブラシ毛7は、それぞれ同一の形状であり、それぞれ同一の素材で形成されている。ここでは、複数のブラシ毛7のうち任意のブラシ毛7について説明する。
【0037】
ブラシ毛7は、自由端部71と、固定端部72と、胴部73とで構成されている。固定端部72および胴部73の断面は、それぞれ円形または略円形である。その直径は、0.1mmから0.3mm程度である。この直径は、一例であって、この値に限定されない。一方、自由端部71の先端は、尖っている。その理由は、放電電極4の先端部41に付着した塵埃を容易に除去するためである。
【0038】
ブラシ毛7は、柔軟性の繊維である。その繊維は、ナイロン(ポリアミド系合成繊維)であることが望ましい。その理由は、ナイロンには柔軟性があり、ブラシ毛7が放電電極4に接触しても、放電電極4が傷つかないためである。この観点から言えば、ナイロンの他、例えば、ポリエステル樹脂を用いることもできる。
【0039】
本実施の形態では、ブラシ毛7は、柔軟性に加え、制電性を持つナイロンであることが望ましい。「制電性」とは、静電気の発生を極力抑制することができるという意味である。制電性のナイロンが望ましい理由は、以下の通りである。除電モードでは、ブラシ毛7の胴部73および自由端部71がノズル3の外部に出る。そのときに、ブラシ毛7が帯電していると、その電荷によってイオンバランスが崩れる恐れがある。平衡のとれたイオンバランスを極力維持するため、制電性のナイロンが用いられる。
【0040】
図6は、図5に示すブラシ毛7の他の例を示す概略図である。塵埃が放電電極4の先端部41に固く付着している場合がある。この塵埃を除去するため、図6に示すブラシ毛7aの自由端部71aは、平坦である。自由端部71aが平坦であることにより、先端部41に固く付着した塵埃を僅かな力でそぎ取ることができる。
【0041】
なお、ブラシ毛7は、以下のように好適に改変可能である。1)イオナイザ1が、図5に示すブラシ毛7と図6に示すブラシ毛7aとの双方を備えていても差し支えはない。2)固定端部72および胴部73の断面の形状は、特に限定されない。例えば、固定端部72の断面は、流路33の内壁34に固定しやすいように、四角形であってもよい。
【0042】
4.イオナイザの構成例
図7は、イオナイザ1の構成例を示すブロック図である。図7は、除電モード時のイオナイザ1を示している。イオナイザ1は、制御装置8と、制御パネル9とを更に備える。制御装置8は、タイマ81を備える。制御パネル9は、例えば、開始ボタン(不図示)と、停止ボタン(不図示)とを備える。制御パネル9は、2つのボタンのうち、押下されたボタンに対応した指示を制御装置8に送る。
【0043】
制御装置8は、除電モードと清掃モードとの切り替えを自動的に行う。この切り替えにより、制御装置8は、定期的に、空気ポンプ5を吸引モードで作動させる。その詳細は、以下の通りである。
【0044】
通常、イオナイザ1は、除電モードで動作する。そのため、制御装置8は、初期状態では、2つのモードのうち除電モードを選択している。除電開始の際には、使用者が制御パネル9の開始ボタンを押下する。このとき、制御装置8は、制御パネル9から動作開始の指示を受けて、空気ポンプ5を送出モードで作動させる。したがって、空気ポンプ5は、空気をチューブ6および本体2を介してノズル3に送出する。なお、現在時間が予め設定された開始時間に達したとき、制御装置8が自動的に空気ポンプ5を送出モードで作動させてもよい。
【0045】
除電モードでの空気ポンプ5の作動期間は、任意である。手動または自動で、空気ポンプ5を停止することができる。手動の場合、除電の終了後に、使用者が制御パネル9の停止ボタンを押下する。このとき、制御装置8は、制御パネル9から動作停止の指示を受けて、空気ポンプ5を停止させる。自動の場合、一定時間の経過後に、制御装置8が空気ポンプ5を停止させる。
【0046】
制御装置8は、除電モードで空気ポンプ5が停止した後、以下のように動作する。タイマ81は、現在時間を設定時間と逐次比較している。そして、タイマ81は、現在時間が設定時間に達したことを検知する。そのとき、制御装置8は、除電モードを清掃モードに切り替える。そして、制御装置8は、空気ポンプ5を吸引モードで作動させる。したがって、空気ポンプ5は、空気をノズル3から吸引する。なお、設定時間は、使用者が好適に設定すればよい。例えば、イオナイザ1が工場で使用される場合、設定時間は、生産ラインが停止している時間に設定される。
【0047】
制御装置8は、清掃モードの開始後、以下のように動作する。タイマ81は、上述の検知に加え、空気ポンプ5の作動開始からの経過時間が終了時間に達したことを検知する。そのとき、制御装置8は、空気ポンプ5を停止させる。終了時間は、放電電極4の表面に付着した塵埃が十分に除去できる程度の時間に設定される。無論、経過時間が終了時間に達する前であっても、制御パネル9の停止ボタンの押下により、空気ポンプ5を手動で停止させることができる。
【0048】
なお、制御装置8は、以下のように好適に改変することができる。本実施の形態では、制御装置8は、ハードウェアで構成されている。制御装置8が持つ機能をソフトウェアで実現することもできる。
【0049】
5.イオナイザの動作例
イオナイザ1の動作例を説明する。図8は、イオナイザ1の動作例を示すフローチャートである。
【0050】
ステップS1:
イオナイザ1は、除電モードで動作する。このとき、制御装置8は、空気ポンプ5を送出モードで作動させる。したがって、空気ポンプ5が、空気をノズル3に送出する。
【0051】
ステップS2:
ステップS1で空気ポンプ5が停止した後、タイマ81は、現在時間を設定時間と逐次比較している。現在時間が設定時間に達した場合(YES)、タイマ81は、そのことを検知する。そして、ステップ3が実行される。一方、現在時間が設定時間に達していない場合(NO)、現在時間が設定時間に達するまで、ステップS2が繰り返し実行される。
【0052】
ステップS3:
制御装置8は、除電モードを清掃モードに切り替える。そして、制御装置8は、空気ポンプ5を吸引モードで作動させる。したがって、空気ポンプ5が、空気をノズル3から吸引する。清掃モードの終了後、再びステップS1が実行される。
【0053】
上述のように、ステップS1からS3が繰り返し実行されることにより、イオナイザ1の放電電極4が定期的に清掃される。
【0054】
本実施の形態によれば、清掃の度にノズル3を取り外す必要がない上、放電電極4が複数のブラシ毛7により自動的に清掃されるので、手間が掛からない。つまり、イオナイザのメンテナンスが容易である。しかも、清掃に要する時間が、人手で清掃する場合に比べ、極めて短時間である。
【0055】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態は、イオナイザ1を備えた除電システムに関する。イオナイザ1は、静電気に弱い製品を取り扱う工場で使用されていることが多い。そのような工場の製造・検査装置は、イオナイザ1の清掃の度に、一旦停止される。一般的なイオナイザが使用される場合、人手によりその清掃が行われていた。人手によるイオナイザの清掃は、長い時間を要する。製造・検査装置の停止時間が長くなるにつれて、工場の生産能率も低下する。この課題を解決するためには、第1の実施の形態に係るイオナイザ1が好適である。
【0056】
図9は、除電システム100の構成例を模式的に示すブロック図である。除電システム100は、イオナイザ1と、製造・検査装置110とを備える。イオナイザ1は、製造・検査装置110の製造・検査対象120を除電する。本実施の形態では、製造・検査対象120は、例えば、半導体デバイスである。この他、製造・検査対象120は、精密機器や帯電しやすいプラスチックなど、除電が必要な対象物であればよい。製造・検査対象120が半導体デバイスである場合、例えば、半導体デバイスの組み立て機器やテスタが製造・検査装置110に該当する。
【0057】
本実施の形態では、制御装置8が製造・検査装置110に搭載されている。制御装置8は、製造・検査装置110の動作が停止しているときに、除電モードを清掃モードに切り替える。そして、制御装置8は、空気ポンプ5を吸引モードで作動させる。以下、除電システム100でのイオナイザ1の動作例について説明する。
【0058】
図10は、除電システム100でのイオナイザ1の動作例を示すフローチャートである。ここでは、第1の実施の形態と異なる点について説明する。ステップS2aにて、制御装置8は、製造・検査装置110の動作を監視している。製造・検査装置110が停止している場合(YES)、制御装置8は、除電モードを清掃モードに切り替える。そして、制御装置8は、空気ポンプ5を吸引モードで作動させる。一方、製造・検査装置110が動作している場合(NO)、ステップS1が実行される。
【0059】
以上の例では、製造・検査装置110のオン/オフに連動して、イオナイザ1の放電電極4が定期的に清掃される。無論、第1の実施と同様に、イオナイザ1が独立して放電電極4を定期的に清掃することもできる。
【0060】
以上述べたように、イオナイザ1自身が放電電極4を定期的に清掃する。人手による清掃に比べて、製造・検査装置110の停止時間は、極めて短い。人手が不要である分、イオナイザ1のメンテナンスも容易である。したがって、工場での生産能率の向上も図ることができる。
【0061】
本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で、好適に変形可能である。その例を以下に挙げる。イオナイザ1は、2つの放電電極を備えるDC型であってもよい。この場合、複数のブラシ毛7の各々の固定端部72は、清掃モード時に、各々の自由端部71が2つの放電電極に接触するように、ノズル3の噴出口32側に固定されればよい。
【符号の説明】
【0062】
1:イオナイザ
2:本体
3:ノズル
31:流入口
32:噴出口
4:放電電極
5:空気ポンプ
6:チューブ
7:複数のブラシ毛
71:自由端部
72:固定端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口と噴出口とを備えるノズルと、
前記ノズルの内部に位置する放電電極と、
前記ノズルの前記噴出口から前記流入口へ空気を吸引する空気ポンプと、
前記放電電極を清掃する少なくとも一のブラシ毛と
を備え、
前記ブラシ毛は、
自由端部と、
固定端部と
を備え、
前記ブラシ毛の前記固定端部は、
前記空気ポンプが作動したとき、前記ブラシ毛の前記自由端部が前記空気ポンプの吸引によって前記ノズルの内部に引き込まれ、且つ前記放電電極に接触するように、前記ノズルの噴出口側に固定されている
イオナイザ。
【請求項2】
前記放電電極は、
先が尖った先端部を有し、
前記先端部は、
前記ノズルの前記流入口から前記噴出口へ通じる流路に位置し、
前記ノズルは、
前記空気ポンプが作動したとき、前記流路を流れる空気の流速が前記先端部の位置で最大となるベンチュリ構造を持つ
請求項1に記載のイオナイザ。
【請求項3】
前記先端部は、流入口側で前記噴出口に面しており、
前記ブラシ毛の前記固定端部は、
前記流路の前記噴出口側の内壁に固定され、
前記ブラシ毛は、
前記自由端部が前記放電電極の前記先端部に接触することができる長さを持つ
請求項2に記載のイオナイザ。
【請求項4】
前記ブラシ毛の前記自由端部は、尖っている
請求項1から3のいずれか一に記載のイオナイザ。
【請求項5】
前記ブラシ毛の前記自由端部は、平坦である
請求項1から3のいずれか一に記載のイオナイザ。
【請求項6】
前記ブラシ毛は、柔軟性に加え、制電性を持つ繊維である
請求項1から5のいずれか一に記載のイオナイザ。
【請求項7】
前記空気ポンプに空気を定期的に吸引させる制御装置を更に備える
請求項1から6のいずれか一に記載のイオナイザ。
【請求項8】
製造・検査装置と、
前記製造・検査装置の製造・検査対象を除電するイオナイザと
を備え、
前記イオナイザは、
流入口と噴出口とを備えるノズルと、
前記ノズルの内部に位置する放電電極と、
前記ノズルの前記噴出口から前記流入口へ空気を吸引する空気ポンプと、
前記放電電極を清掃する少なくとも一のブラシ毛と
を備え、
前記ブラシ毛は、
自由端部と、
固定端部と
を備え、
前記ブラシ毛の前記固定端部は、
前記空気ポンプが作動したとき、前記ブラシ毛の前記自由端部が前記空気ポンプの吸引によって前記ノズルの内部に引き込まれ、且つ前記放電電極に接触するように、前記ノズルの噴出口側に固定されている
除電システム。
【請求項9】
前記製造・検査装置は、
前記空気ポンプに空気を定期的に吸引させる制御装置を更に備える
請求項8に記載の除電システム。
【請求項10】
前記製造・検査対象は、半導体デバイスを含む
請求項8または9に記載の除電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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