説明

イオントフォレーシス装置

【課題】皮膚の感電および接続部の破損を防ぐことができるイオントフォレーシス装置の提供。
【解決手段】イオン化した薬物をイオントフォレーシスにより経皮投与する装置本体50と、装置本体50に対して電力を供給する電源部60と、装置本体50から延伸し、装置本体50および電源部60に電気的に接続する、可とう性を有する接続部70とを備え、接続部70が湾曲した状態で、電源部60が装置本体50における皮膚に接する面と反対の面の上に配され、装置本体50は、皮膚に接する面と接続部70との間において、接続部70が湾曲した状態における湾曲端よりも、装置本体50における皮膚に接する面方向に突出するイオントフォレーシス装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオントフォレーシス装置に関する。特に本発明は、薬物イオンをイオントフォレーシスにより経皮的に投与するイオントフォレーシス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間または動物の身体の所望部位における皮膚または粘膜などの生体表面(以下、これらをまとめて「皮膚」と称す)に対して、薬物イオンをイオントフォレーシスにより経皮的に投与するイオントフォレーシス装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。なお、イオントフォレーシス(iontophoresis)は、イオントフォレーゼ、イオン導入法、イオン浸透療法などと呼ばれることもある。
【特許文献1】特開2000−229128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されているイオントフォレーシス装置は、使用者に対してイオントフォレーシスを適用している使用状態において、電源と電極部とを繋ぐ配線部が皮膚に接触する場合があり、このような接触による皮膚の感電、および、配線部の破損の可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態においては、イオン化した薬物をイオントフォレーシスにより経皮投与する装置本体と、前記装置本体に対して電力を供給する電源部と、前記装置本体から延伸し、前記装置本体および前記電源部に電気的に接続する、可とう性を有する接続部とを備え、前記接続部が湾曲した状態で、前記電源部が前記装置本体における皮膚に接する面と反対の面の上に配され、前記装置本体は、皮膚に接する面と前記接続部との間において、前記接続部が湾曲した状態における湾曲端よりも、前記装置本体における皮膚に接する面方向に突出するイオントフォレーシス装置が提供される。これにより、使用状態において接続部の湾曲した部分が皮膚に接触することを防ぐことができるので、皮膚の感電、および、接続部の破損を防ぐことができる。
【0005】
上記イオントフォレーシス装置において、前記装置本体は、使用状態における皮膚側から順に平板状の本体下部および平板状の本体上部を有し、前記接続部の前記装置本体側の端部は、前記本体下部と前記本体上部との間に挟まれており、前記本体下部は前記本体上部よりも大きくてもよい。これにより、使用時における接続部の湾曲した部分が皮膚に接触することをより確実に防ぐことができる。
【0006】
上記イオントフォレーシス装置において、前記装置本体は、作用側電極構造体を有し、作用側電極構造体は、電源における、イオン化した薬物と同じ第1導電型の端子に電気的に接続される第1電極部材、および、薬物を含む薬液を保持しており、第1電極部材により作られる電場内に配される薬液保持部を有してもよい。さらに、作用側電極構造体は、第1電極部材と薬液保持部との間に第2の導電型のイオンを選択的に透過する第2導電型のイオン選択性膜を有してもよい。さらに、作用側電極構造体は、第1電極部材と第2導電型のイオン選択性膜との間に第1セパレータを有してもよい。さらに、作用側電極構造体は、第2導電型のイオン選択性膜との間で薬液保持部を挟み、第1の導電型のイオンを選択的に透過する第1導電型のイオン選択性膜を有してもよい。
【0007】
上記イオントフォレーシス装置において、前記装置本体は、非作用側電極構造体を有し、前記非作用側電極構造体は、前記電源における、前記第1導電型と反対の導電型である第2導電型の端子に電気的に接続される第2電極部材、および、電解液を保持している電解液保持部を有してもよい。さらに、非作用側電極構造体は、第2電極部材と電解液保持部との間に第2セパレータを有してもよい。さらに、非作用側電極構造体は、第2セパレータとの間で電解液保持部を挟み、第2電極部材と同じ電気的な極性を有するイオンを選択的に透過する第2導電型のイオン選択性膜を有してもよい。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、本実施形態に係るイオントフォレーシス装置10の未使用状態における斜視図を示す。図1に示すように、イオントフォレーシス装置10は、装置本体50、電源部60、および接続部70を備える。
【0011】
装置本体50は、本体上部51および本体上部51よりも大きい本体下部55を有する。本体上部51は、板状であり、例えば発泡ポリウレタンなどの柔軟な素材を用いる。本体下部55は、本体上部51よりも面積の大きい板状であり、本体上部51と同様に、発泡ポリウレタンなどの柔軟な素材を用いる。
【0012】
接続部70は、略帯状で可とう性であり、対を成す給電線205、305を有する。接続部70の一方の端部は、本体上部51および本体下部55の間に挟まれている。接続部70の給電線205、305は、装置本体50の内部に配される作用側電極構造体200および非作用側電極構造体300とそれぞれ電気的に接続している。
【0013】
電源部60は、イオントフォレーシス装置10がイオントフォレーシスを適用していない状態である未使用状態において、装置本体50と接続している接続部70から外されて装置本体50とは別個に保管される。したがって、接続部70の他方の端部である電源側端部77は、未使用状態において開放されている。
【0014】
図2は、イオントフォレーシス装置10の使用状態における斜視図を示す。イオントフォレーシス装置10が使用状態であるとき、電源部60は、図1に示す電源側端部77において接続部70と電気的に接続しており、装置本体50に対して電力を供給する。また、電源部60における図2の状態での本体上部51に対向する面には、粘着性を有する粘着面62が配される。よって、電源部60は、粘着面62によって本体上部51の上面に粘着して装置本体50に固定されている。図2に示すように、イオントフォレーシス装置10が使用状態であるとき、接続部70は湾曲している。なお、電源部60に粘着面62を設けることに代えて、本体上部51において本体下部55が配される側と反対側の面には、粘着面を設けてもよい。
【0015】
図3は、使用状態であるイオントフォレーシス装置10を当接面56の側から見た平面図を示す。図3に示すように、当接面56から、第1導電型のイオン選択性膜250および第2導電型のイオン選択性膜350が露出する。ここで、第1導電型とは、プラスまたはマイナスの電気的な極性を意味し、第2導電型とは、第1導電型とは反対の電気的な極性をいう。イオントフォレーシス装置10は、使用状態において、当接面56、第1導電型のイオン選択性膜250、および第2導電型のイオン選択性膜350が使用者の皮膚に当接保持された状態で使用者に対してイオントフォレーシスを適用する。
【0016】
図4は、図3のa−a断面を図3における右側から見た断面図を示す。図4に示すように、装置本体50の本体下部55は本体上部51よりも、接続部70の湾曲した状態における湾曲端よりも外側(皮膚と当接する面方向)に突出している。したがって、イオントフォレーシス装置10が使用状態であるときに、接続部70の湾曲した部分が使用者の皮膚に直接触れにくいので、より安全にイオントフォレーシスを適用することができる。
【0017】
図5は、接続部70の斜視図を示す。図5に示すように、イオントフォレーシス装置10の接続部70は、基材72、絶縁膜74、給電線205、305を有する。給電線205、305は、導電性を有し、基材72の片側の面に形成される。絶縁膜74は、基材72の給電線205、305が形成された面上における電源側端部77および他方の端部を除く部分に対して給電線205、305を覆うように形成されている。すなわち、接続部70の上記他方の端部において、給電線205、305の片面が露出している。図2に示すイオントフォレーシス装置10の使用状態において、絶縁膜74は、湾曲した状態における接続部70の外側の面に配される。したがって、イオントフォレーシス装置10の使用状態において、接続部70の湾曲した部分の外側に誤って手が触れた場合でも感電することがなく、より安全にイオントフォレーシスを適用することができる。
【0018】
接続部70において、基材72は、例えばポリイミドフィルムなどの電気絶縁性および可とう性を有する材料であることが好ましく、給電線205、305を基材72の表面に形成する方法は、例えばカーボン粉などの導電粉を含有する導電塗料を塗布する方法などが用いられる。絶縁膜74は、基材72と同じ材質でもよいが、外力などによる傷または変形などが生じにくい材料であることが好ましい。
【0019】
図6(A)および図6(B)は、図1に示すイオントフォレーシス装置10の内部構造をより詳細に示す上面図および断面図である。図6(B)は、図6(A)のb−b断面を図6(A)における手前の側から見た断面図を示す。
【0020】
図6(A)および図6(B)に示すように、装置本体50は、作用側電極構造体200、非作用側電極構造体300、第一支持体81、第二支持体82、第三支持体83を有する。第二支持体82および第三支持体83には、所定形状(本実施形態では円形)の2つの開口が形成され、これら2つの開口の一方には作用側電極構造体200の構成部品が、他方には非作用側電極構造体300の構成部品がそれぞれ配される。第一支持体81、第二支持体82および第三支持体83は、例えば発泡ポリウレタンなどの柔軟な素材を使用することで、装置本体50を凹凸のある皮膚へも容易に当接保持することができ、また、使用者が動いた場合でも当接面56が皮膚から離れにくくすることができる。ここで、第二支持体82および第三支持体83は第一支持体81よりも面積が大きく、図1の本体上部51は、図6(A)における第一支持体81からなり、本体下部55は、第二支持体82および第三支持体83からなる。なお、これに代えて、第二支持体82の面積を第一支持体81の面積と同じにして、本体上部51が第一支持体81および第二支持体82からなり、本体下部55が面積の大きい第三支持体83からなっていてもよい。
【0021】
作用側電極構造体200は、本体上部51の側から当接面56の側に向かって、第1電極部材210、第1セパレータ220、第2導電型のイオン選択性膜230、薬液保持部240、および、第1導電型のイオン選択性膜250をこの順に有する。非作用側電極構造体300は、本体上部51の側から当接面56の側に向かって、第2電極部材310、第2セパレータ320、電解液保持部340、および、第2導電型のイオン選択性膜350をこの順に有する。
【0022】
接続部70の基体84は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)のフィルムまたは薄板などが用いられ、第一支持体81と第二支持体82との間に挟持される。また、基体84は、一の面において第1電極部材210および第2電極部材310と当接する。基体84のこの面における第1電極部材210および第2電極部材310と当接する部分には、それぞれ集電体207、307が形成されている。集電体207、307は、例えば炭素繊維または炭素繊維紙などが用いられるが、カーボン粉などの導電粉を含有する導電塗料の塗膜により形成することもできる。
【0023】
基体84に形成された給電線205、305の一端は、集電体207、307とそれぞれ電気的に接続し、他端は、接続部70の給電線205、305とそれぞれ電気的に接続している。集電体207、307、および給電線205、305を基体84の表面に形成する方法は、例えば導電塗料の塗布、または、銅などの導電性材料を基体84の表面に蒸着あるいはフォトエッチングする方法などが用いられる。
【0024】
作用側電極構造体200において、第1電極部材210は、例えば活性炭などの導電体を含有する分極性電極(電気2重層容量キャパシタ(EDLC)とも呼ばれる)が用いられる。分極性電極における通電は、活性炭の表面に電気2重層が形成されることにより生じる。第1セパレータ220は、略膜状であり、例えば天然繊維、人工繊維の織布または不織布、多孔質膜、あるいは吸収性ゲルなどにより構成されて電解液を保持する。この電解液には、水の電気分解反応(水の酸化および還元反応)と比較して水の酸化還元電位より低い酸化還元電位を有する酸化および還元しやすい化合物が溶解した溶液を用いる。
【0025】
第2導電型のイオン選択性膜230は、第1電極部材210との間で第1セパレータ220を挟み、第2導電型のイオンを選択的に透過する。薬液保持部240は、薬物イオンを含む粘性液体を、例えば天然繊維、人工繊維の織布や不織布、多孔質膜、あるいはゲルなどの適当な吸収性をもつ担体に含浸させて保持する。ここで、薬物イオンとは、薬物がイオン解離したアニオンおよびカチオンの一方であって、薬効を担う第1導電型のイオンをいう。第1導電型のイオン選択性膜250は、第2導電型のイオン選択性膜230との間で薬液保持部240を挟み、第1導電型のイオンを選択的に透過する。
【0026】
非作用側電極構造体300において、第2電極部材310は、第1電極部材210と同様に、例えば活性炭などの導電体を含有する分極性電極が用いられる。第2セパレータ320は、略膜状であり、例えば天然繊維、人工繊維の織布または不織布、多孔質膜、あるいは吸収性ゲルなどにより構成されて電解液を保持する。
【0027】
電解液保持部340は、第2セパレータ320において第2電極部材310と反対側に配され、電解液含む粘性液体を、例えば天然繊維、人工繊維の織布や不織布、多孔質膜、あるいはゲルなどの適当な吸収性をもつ担体に含浸させて保持する。第2導電型のイオン選択性膜350は、第2セパレータ320との間で電解液保持部340を挟み、第2導電型のイオンを選択的に透過する。なお、第2セパレータ320、および電解液保持部340が保持する電解液には、作用側電極構造体200の第1セパレータ220が保持する電解液と同様に、水の電気分解反応(水の酸化および還元反応)と比較して水の酸化還元電位より低い酸化還元電位を有する酸化および還元しやすい化合物が溶解した溶液を用いる。
【0028】
第1導電型のイオン選択性膜250および第2導電型のイオン選択性膜350における皮膚側に、皮膚との密着性を高めるための粘着剤層を形成することもできる。また、粘着剤層のさらに前面側に、当接面56、第1導電型のイオン選択性膜250、および第2導電型のイオン選択性膜350を覆う剥離可能なライナーを貼付することもできる。これにより、イオントフォレーシス装置10の保管中における異物の混入や乾燥を防止することができる。
【0029】
イオントフォレーシス装置10は、第1導電型のイオン選択性膜250および第2導電型のイオン選択性膜350が皮膚に当接した状態で、電源部60から作用側電極構造体200および非作用側電極構造体300に対して、イオントフォレーシスを適用するための電力が供給される(電圧がかけられる)と、作用側電極構造体200および非作用側電極構造体300の間に皮膚を介して電流が流れて使用状態となる。
【0030】
ここで、薬物イオンがアニオンである場合を例に、イオントフォレーシス装置10の具体的構成についてさらに説明する。この場合、第1導電型は陰であり、第2導電型は陽である。したがって、作用側電極構造体200の第1電極部材210はカソードとなり、非作用側電極構造体300の第2電極部材310はアノードとなる。また、作用側電極構造体200において、第2導電型のイオン選択性膜230にはカチオン交換膜を用い、第1導電型のイオン選択性膜250にはアニオン交換膜を用いる。また、非作用側電極構造体300において、第2導電型のイオン選択性膜350にはカチオン交換膜を用いる。
【0031】
イオントフォレーシス装置10は、使用状態において、以下の作用効果を奏する。すなわち、作用側電極構造体200では、第1電極部材210が分極性電極であるので、第1電極部材210において電極反応を生じることがなく、または電極反応を低減させた状態で、通電して使用状態とすることができる。したがって、例えば塩素ガスなどのガスの発生、または例えば次亜塩素酸イオンなどの好ましくないイオンの発生を抑止し、または少なくとも低減することができる。また、薬液保持部240が保持する薬液に含まれる薬物イオンは、電気泳動によりカソードである第1電極部材210と反対側(皮膚側)へ移動し、薬液保持部240の皮膚側に配されて皮膚と当接する第1導電型のイオン選択性膜250を透過して速やかに皮膚へ浸透する。これに対し、生体内のカチオンは第1導電型のイオン選択性膜250を透過して薬液保持部240側へ移動することがない。したがって、薬物イオンの輸送効率の低下を抑えることができるので、安定した使用状態のもとでイオントフォレーシスにより薬物イオンを生体へ導入することができる。また、薬液保持部240に含まれる、アニオンである薬物イオンと対を成すカチオンは、第1電極部材210側へ移動し、カチオン交換膜である第2導電型のイオン選択性膜230を透過して第1セパレータ220側へ移動する。したがって、使用状態において、薬液保持部240のイオンバランスが崩れないので、pHの変化が生じにくく、通電抵抗が大きくなりにくい。
【0032】
非作用側電極構造体300では、第2電極部材310が分極性電極であるので、第2電極部材310において電極反応を生じることがなく、または電極反応を低減させた状態で、通電して使用状態とすることができる。したがって、例えば塩素ガスなどのガスの発生、または例えば次亜塩素酸イオンなどの好ましくないイオンの発生を抑止し、または少なくとも低減することができる。
【0033】
なお、薬物イオンがカチオンである場合は、第1導電型は陽であり、第2導電型は陰である。したがって、図6に示すイオントフォレーシス装置10における、第1電極部材210および第2電極部材310の電気的な極性は逆になり、また、第2導電型のイオン選択性膜230、第1導電型のイオン選択性膜250、および第2導電型のイオン選択性膜350の種類(イオン選択特性)はそれぞれ反対のものになる。
【0034】
図7は、他のイオントフォレーシス装置11を詳細に示す上面図および断面図を示す。図7(B)は、図7(A)のc−c断面を図7(A)における手前の側から見た断面図を示す。図7(A)および図7(B)のイオントフォレーシス装置11において、図6(A)および図6(B)のイオントフォレーシス装置10と同じ構成については同じ参照番号を付して説明を省略する。なお、図7の装置本体58の作用側電極構造体200は、不織布からなる皮膚接触層255を有する。図7に示すイオントフォレーシス装置11は、図6に示すイオントフォレーシス装置10と比べてより簡易な構造であるので、部品点数を少なくすることができる。
【0035】
図6および図7に示す形態において、図1から図5に示す形態と同様に、電源部60における第一支持体81に対向する面には、粘着性を有する粘着面62が配される。よって、電源部60は、粘着面62によって本体上部51の上面に粘着して装置本体50に固定されている。図2と同様に、イオントフォレーシス装置10が使用状態であるとき、接続部70は湾曲している。なお、電源部60に粘着面62を設けることに代えて、第一支持体81において第二支持体82が配される側と反対側の面には、粘着面を設けてもよい。
【0036】
また、図6および図7に示す形態において、装置本体50、58の第三支持体83は第一支持体81よりも、接続部70の湾曲した状態における湾曲端よりも外側(皮膚と当接する面方向)に突出している。したがって、イオントフォレーシス装置10が使用状態であるときに、接続部70の湾曲した部分が使用者の皮膚に直接触れにくいので、より安全にイオントフォレーシスを適用することができる。
【0037】
さらに、図6および図7に示す形態において、図4に示す形態と同様に、イオントフォレーシス装置10の使用状態において、絶縁膜74は、湾曲した状態における接続部70の外側の面に配される。したがって、イオントフォレーシス装置10の使用状態において、接続部70の湾曲した部分の外側に誤って手が触れた場合でも感電することがなく、より安全にイオントフォレーシスを適用することができる。
【0038】
本実施形態において、イオントフォレーシスの適用に供される薬物イオンとしては、例えば次のようなものがある。正に帯電する薬物イオンとして、麻酔剤(塩酸プロカイン、塩酸リドカインなど)、胃腸疾患治療剤(塩化カルニチンなど)、骨格筋弛緩剤(臭化バンクロニウムなど)、抗生物質(テトラサイクリン系製剤、カナマイシン系製剤、ゲンタマイシン系製剤)等が挙げられる。負に帯電する薬物イオンとして、ビタミン(以下、Vと略記する)剤(VB、VB12、VC、VE、葉酸など)、副腎皮質ホルモン(ヒドロコルチゾン系水溶性製剤、デキサメサゾン系水溶性製剤、プレドニソロン系水溶性製剤など)、抗生物質(ペニシリン系水溶性製剤、クロウムフェニコール系水溶性製剤)等が挙げられる。
【0039】
また、イオントフォレーシスを適用するための電圧は、例えば、低周波治療器のようにパルス電圧でもよい。また、徐々に電圧を上げたり、あるいは、下げてもよい。体内を流れる電流は、0.01〜5mAの範囲が好ましいが、第1電極部材210および第2電極部材310の面積や投与部位、さらには被投与者の個体差などによって増減させて、痛みや熱感を与えない程度に設定する。
【0040】
また、電源部60は、本実施形態のように接続部70に対して着脱できてもよいが、接続部70と一体的に成形されたものでもよい。この場合、例えば装置本体50だけを密閉包装するなど、薬液保持部240からの揮発により気化した薬液による電源部60の腐食を防ぐ構成を備えていることが好ましい。電源部60には、電池、定電圧装置、定電流装置、定電圧・定電流装置(ガルバノ装置)などが適当であり、接続部70に対して着脱できる場合、携行性に優れていることが好ましい。
【0041】
また、第1電極部材210および第2電極部材310に用いる分極性電極に含有させる活性炭は、単位重量あたりの静電容量が1F/g以上であること、または比表面積が10m/g以上であることが好ましい。また、この活性炭には、ヤシ殻、木粉、石炭、ピッチ、コークスなどの炭素を含有する原料を炭化、賦活することで得られる活性炭を使用することができる。
【0042】
また、作用側電極構造体200の第1セパレータ220、非作用側電極構造体300の第2セパレータ320および電解液保持部340は、上記のように、電解液として、水の電気分解反応(水の酸化および還元反応)と比較して水の酸化還元電位より低い酸化還元電位を有する酸化および還元しやすい化合物が溶解した溶液を用いることが好ましく、例えば、生理食塩水などが挙げられる。
【0043】
また、アニオン交換膜は、例えば、高分子の側鎖に四級化されたアンモニウム基を有するもの、カチオン交換膜としては、例えば、高分子の側鎖にスルホン酸基を有するものなど所望のものでよく、これらは薬物イオンの種類などによって適宜組み合わせてもよい。
【0044】
以上、本実施形態によれば、使用状態において、電源部60が装置本体50、58の第一支持体81上に重ねて配された場合に、接続部70の湾曲した部分の下に少なくとも第三支持体83が配されているので、当該接続部70が皮膚に接触することを防ぎ、接続部70による皮膚の感電、および、接続部70の破損を防ぐことができる。
【0045】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることができることは当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】イオントフォレーシス装置10の未使用状態における斜視図を示す。
【図2】イオントフォレーシス装置10の使用状態における斜視図を示す。
【図3】使用状態であるイオントフォレーシス装置10を当接面56の側から見た平面図を示す。
【図4】図3のa−a断面を図3における右側から見た断面図を示す。
【図5】接続部70の斜視図を示す。
【図6】(A)はイオントフォレーシス装置10の上面図を示し、(B)は断面図を示す。
【図7】(A)は他のイオントフォレーシス装置11の上面図を示し、(B)は断面図を示す。
【符号の説明】
【0047】
10 イオントフォレーシス装置、11 イオントフォレーシス装置、50 装置本体、51 本体上部、55 本体下部、56 当接面、58 装置本体、60 電源部、62 粘着面、70 接続部、72 基材、74 絶縁膜、77 電源側端部、81 第一支持体、82 第二支持体、83 第三支持体、84 基体、200 作用側電極構造体、205 給電線、207 集電体、210 第1電極部材、220 第1セパレータ、230 第2導電型のイオン選択性膜、240 薬液保持部、250 第1導電型のイオン選択性膜、255 皮膚接触層、300 非作用側電極構造体、305 給電線、307 集電体、310 第2電極部材、320 第2セパレータ、340 電解液保持部、350 第2導電型のイオン選択性膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン化した薬物をイオントフォレーシスにより経皮投与する装置本体と、
前記装置本体に対して電力を供給する電源部と、
前記装置本体から延伸し、前記装置本体および前記電源部に電気的に接続する、可とう性を有する接続部と
を備え、
前記接続部が湾曲した状態で、前記電源部が前記装置本体における皮膚に接する面と反対の面の上に配され、
前記装置本体は、皮膚に接する面と前記接続部との間において、前記接続部が湾曲した状態における湾曲端よりも、前記装置本体における皮膚に接する面方向に突出するイオントフォレーシス装置。
【請求項2】
前記装置本体は、使用状態における皮膚側から順に平板状の本体下部および平板状の本体上部を有し、
前記接続部の前記装置本体側の端部は、前記本体下部と前記本体上部との間に挟まれており、
前記本体下部は前記本体上部よりも大きい請求項1に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項3】
前記装置本体は、作用側電極構造体を有し、
前記作用側電極構造体は、
電源における、イオン化した前記薬物と同じ第1導電型の端子に電気的に接続される第1電極部材、および、
前記薬物を含む薬液を保持しており、前記第1電極部材により作られる電場内に配される薬液保持部
を有する請求項1または2に記載のイオントフォレーシス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−268185(P2007−268185A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100754(P2006−100754)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(504153989)トランスキュー・テクノロジーズ 株式会社 (83)
【Fターム(参考)】