説明

イオン・オゾン風発生装置

【課題】 ファンを用いなくとも殺菌・消臭対象物が配された空間へとイオン及びオゾンを導入できるような、大風量のイオン風を発生するイオン風発生装置及び方法、並びに、外付け型殺菌・消臭装置及び方法の提供。
【解決手段】 針状電極と対向電極とを有する電極対を有し、前記針状電極と前記対向電極との間に電位差を発生させてコロナ放電によりイオン、オゾン及びイオン風を発生させるイオン・オゾン風発生装置において、
前記対向電極が平面状の主環状対向電極と、前記主環状対向電極を取り囲む平面状の副環状対向電極とを有し、
前記針状電極の先端と前記主環状対向電極の最長距離が、前記針状電極の先端と前記副環状対向電極の最短距離よりも短いことを特徴とする、イオン・オゾン風発生装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナ放電によりイオン風を発生させる装置であり、より詳細には、より大きな風量のイオン風を発生させるイオン風発生装置である。また、ある側面では本発明は、ゴミ等の対象物を殺菌・消臭するための装置及び方法に関し、特に、対象物の配される空間とは別空間でコロナ放電を行い、イオン及びオゾンを発生させて対象物の配されている空間にイオン・オゾン風を送給し、殺菌・消臭する装置及び方法に関する。より具体的に、本発明は、気密性の高いボックス、例えば、生ゴミやオムツ等汚物入れ、生ごみ処理機の処理臭・靴・ブーツ等や収納する為のボックス・トイレ及びトイレタンク、気密性の高い冷凍・冷蔵装置付のコンテナ及び冷凍・冷蔵装置付車両、冷蔵庫、室内・車両内の空調装置等に装着し殺菌・消臭を目的とした環境装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会に伴い、要介護人口と比例してオムツ等の汚物入れの需要も高くなっているが、開放の都度、悪臭を放つ為、介護人及び周囲への負担や不快感がある上に不衛生である。また、各家庭や飲食店等には生ゴミの保管ボックスも存在しているが、開放の都度、雑菌増殖に伴い悪臭を放つ為、主婦等・従事者の負担が大きい。生ゴミ処理機もバイオ技術の成長に伴い増加しているが稼働中は処理機周辺に放つ悪臭が非常に問題となっている。加えて、海外・国内の冷凍・冷蔵・常温品等の物流には輸送用コンテナ及びトラック等での輸送が主流であり空調装置付海上コンテナ・陸上コンテナ・コンテナ型トラック等が多数あるが、積載貨物品の残臭・空調装置内のカビ臭が問題となっている。更に、倉庫・冷蔵庫・室内・車両等の空調装置も、保管物質等使用状況によって臭気が問題となっている。
【0003】
ここで、上記問題の一解決手法として、従来からスプレー式等、簡易型の殺菌消臭剤が提案されている。しかしながら、汚物入れや生ゴミの保管ボックスに使用した場合、当該容器を開放した時に悪臭を放つのが現状である。また、空調装置に使用(例えば散布や循環殺菌方式)した場合、空調装置内部に洗浄出来ない部位、又は洗浄しても異臭・カビ臭が残った場合、次期積載貨物に臭気が移る等、問題となっている。更に、別の解決手法として、殺菌消臭の対象となる空間から空気を吸引してフィルタにより汚染物質を吸着若しくは除去する方法や高価な悪臭除去触媒が提案されている。しかしながら、長期の使用によりフィルタの交換等のメンテナンスが不可欠であり、しかもフィルタの性能が十分でないため、満足のいく性能が得られていない場合や例え性能が良くても大型で高価な触媒本体、更には維持・管理費が高額な場合が多い。
【0004】
ところで近年、室内の空気清浄やリフレッシュのためにマイナスイオンやオゾンを発生する空気清浄機やエアコンなどが普及している。そして、消臭効果のあるマイナスイオンとオゾンとを同時発生させるマイナスイオン・オゾン発生装置を用いて対象空間を消臭等する技術が多数提案されている。
【0005】
まず、特許文献1に係るマイナスイオン・オゾン発生装置は、部屋の天井に取り付けることを想定した装置であり、正電極が負電極より下方に位置するように配されていることを特徴とする。これによれば、ファンやモータを用いなくてもマイナスイオンとオゾンを含んだ下向きの気流を発生させることができる。
【0006】
次に、特許文献2に係るマイナスイオン・オゾン発生装置は、先端が針状のマイナス電極と、それに平行して同心円状に設置された円筒型のグランド電極を備え、マイナス電極とグランド電極を相対的に移動可能とし、マイナス電極に高電圧を印加して、マイナス電極の先端部とグランド電極の端面との距離を調整することによりマイナスイオン又はオゾンを発生することを特徴とする。
【0007】
次に、特許文献3に係るマイナスイオン・オゾン発生装置は、針電極とアース電極間に直流高電圧を印加して針電極尖端部でコロナ放電を生起させ、オゾン及びマイナスイオンを発生させる装置である。
【0008】
次に、特許文献4に係るマイナスイオン・オゾン発生装置は、周囲に立上部を有した穴を1カ所又は複数箇所備えた金属板からなる正電極を有し、負電極の先端が前記正電極の穴近傍に位置していることを特徴とする。このように構成することで、放電により十分な気流が生じるため、ファン,ポンプ等の送風装置を別途使用しなくても発生したマイナスイオンとオゾンを空間内に拡散させる気流を発生させることができる。
【0009】
特許文献1〜4に係る発明は、イオン及びオゾンを発生させて対象物に適用することが記載されているが、これらの技術は例えばごみ箱の内部などの殺菌又は脱臭の対象となる空間内に配して放電することを前提とする。例えば、ごみ箱の中であれば、悪臭を放つ有機物が微生物により分解されてメタンガス等、引火性ガスを生成する場合があり、このような状況下で放電を行なうと、火花の発生によって火災や爆発が起こる危険性がある。
【0010】
そこで、このような危険性を取り除くために、対象物の配された空間外で放電を行ないイオン・オゾンを発生させて、対象物の配された空間内にこれらの生成物を導入する外付け型殺菌・消臭装置の開発が検討されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実用新案登録第3100754号
【特許文献2】特開2003−342005号公報
【特許文献3】特開2004−18348号公報
【特許文献4】特開2005−13831号公報
【特許文献5】実用新案登録第3155540号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献5に示された技術のように、コロナ放電によりイオン・オゾンを発生させる装置においてエアーポンプ等のモータを有する機材を設けると、オゾンの発生により当該モータが錆びるなどして装置の耐久性に問題が生じる。そこで本発明は、エアーポンプやファン等を用いなくとも殺菌・消臭対象物が配された空間へとイオン及びオゾンを導入できるような、大風量のイオン風を発生するイオン・オゾン風発生装置及び方法、並びに、外付け型殺菌・消臭装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明(1)は、針状電極と対向電極とを有する電極対を有し、前記針状電極と前記対向電極との間に電位差を発生させてコロナ放電によりイオン、オゾン及びイオン風を発生させるイオン・オゾン風発生装置において、
前記対向電極が平面状の主環状対向電極と、前記主環状対向電極を取り囲む平面状の副環状対向電極とを有し、
前記針状電極の先端と前記主環状対向電極の最長距離が、前記針状電極の先端と前記副環状対向電極の最短距離よりも短いことを特徴とする、イオン・オゾン風発生装置である。
【0014】
本発明(2)は、前記対向電極の主環状対向電極から発せられるイオン風に対して、前記副環状対向電極から発生するイオン風を集約して、イオン風を外部へと噴出する噴出口へと送るためのイオン風ガイド部材であって、前記噴出口へと近づくにつれて、開口断面積が小さくなるイオン風ガイド部材を有することを特徴とする、前記発明(1)のイオン・オゾン風発生装置である。
【0015】
本発明(3)は、前記電極対が複数組設けられている事を特徴とする、前記発明(1)又は(2)のイオン・オゾン風発生装置である。
【0016】
ここで本明細書において用いられる各用語について説明する。「殺菌・消臭対象物」とは、菌の繁殖するもの又は悪臭を放つものであれば、特に限定されないが、例えば、生鮮食品等の生ゴミ、糞尿、オムツ等の汚物、貯水された水等の具体例が挙げられる。「殺菌・消臭対象物の配された空間」とは、前記殺菌・消臭対象物が配さていれば特に限定されないが、例えば、気密性の高いボックス、より具体的には、生ゴミやオムツ等の汚物入れ、気密性の高い冷凍・冷蔵装置付のコンテナ及び冷凍・冷蔵装置付車両・等が挙げられる。「環状」とは、例えば、三角形以上(好適には6角形以上)の多角形又は円形・もしくは概ね円形状であって、中心部が開口した形状を意味する。「平面状」とは、一般的に平面とみなせる程度に、環状電極において環内の総面積に対して、厚みが小さい電極を意味する。より具体的には、特に限定されないが、[厚み(mm)]/[環内総面積(cm)]が、1.5以下であることが好適であり、1以下であることが好適であり、0.8以下であることがより好適である。下限値は、特に限定されないが、例えば、0.0001である。尚、歪(平面に対するゆがみ)は、厚み程度まであってもよい。更に具体的には、主環状対向電極の総面積は7cm、厚み7mm以下、歪みにおいても7mm以下であることがより好適である。「前記針状電極の先端と主環状対向電極との最長距離」とは、針状電極の先端と、主環状対向電極の環の内端であって厚み方向で最も近い部分との距離において、最も長い距離を意味する。「前記針状電極の先端と副環状対向電極との最短距離」とは、針状電極の先端と、副環状対向電極の環の内端であって厚み方向で最も近い部分との距離において、最も短い距離を意味する。「主イオン風」とは、主環状対向電極の中心の開口部から発せられるイオン風を意味する。「副イオン風」とは、副環状対向電極から発せられるイオン風を意味する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るイオン・オゾン風発生装置によれば、大風量のイオン風を発生させることが可能であり、エアーポンプ・ファン等の送風機材の代替として使用することも可能である。
【0018】
本発明によれば、主環状対向電極から比較的風圧の強いイオン風を発生させて、主環状対向電極を取り囲む副環状対向電極から比較的風圧の弱いイオン風を発生させる事により、発生するイオン風を滞留させることなく内側から発生するイオン風が、外側から発生するイオン風を巻き込むようにして前面に押し出すことが可能となり、大風量で風圧の強いイオン風を得ることが可能となる。
【0019】
主環状対向電極から発生する比較的強い風圧のイオン風に対して、副環状対向電極から発生する比較的弱い風圧のイオン風を発生させることによって、副環状電極から発せられるイオン風が主環状対向電極から発せられるイオン風をサポートする。すなわち、主環状対向電極から発せられるイオン風は、追い風の中に発生するイオン風となるので、強くて大きな風量を得ることができる。
【0020】
また、本発明に係るイオン風発生装置は、コロナ放電により、殺菌・消臭作用を有するイオン及びオゾンを発生させることができるため、これを利用して殺菌・消臭装置として用いることが好適である。本装置によれば、大風量のイオン風を発生させることが可能であり、外付けの殺菌・消臭装置であっても、エアーポンプなどの機材を使用することなく対象空間内にイオン及びオゾンを導入することが可能となる。すなわち、ポンプやファンを使用する必要が無いので低騒音の殺菌・消臭装置を提供することが可能となる。
更に、副環状対向電極から発生するイオン風を巻き込むことができるので、これらの電極から発生したイオン及びオゾンを巻き込むことが可能となるため、高濃度のイオン及びオゾンを含むイオン風を送り出す事ができるのでより高い効率で脱臭することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1(a)は、当該装置の対向電極の概念正面図であり、図1(b)はイオン・オゾン風発生装置100の概念側面図である。
【図2】図2(a)は、最内部に位置する輪状電極131の断面を用いて、輪状電極131と針状電極120の先端部Pとの位置関係を示した図であり、図2(b)は、輪状電極132と先端Pとの位置関係を示した図である。
【図3】図3(a)は、当該装置の対向電極130の概念正面図であり、図3(b)はイオン・オゾン風発生装置100の概念側面図である。
【図4】図4(a)は、当該装置の対向電極の概念正面図であり、図4(b)は、イオン・オゾン風発生装置100の概念側面図である。
【図5】図5(a)は、当該装置の対向電極の概念正面図であり、図5(b)は、イオン・オゾン風発生装置100の概念側面図である。
【図6】図6は、本発明に係る対向電極として使用可能な板状対向電極の概略図である。
【図7】図7は、イオン・オゾン風発生装置100の概念平面図である。
【図8】図8(a)は、当該装置の対向電極130の概念正面図であり、図8(b)は、イオン・オゾン風発生装置100の概念側面図である。
【図9】図9は、イオン・オゾン風発生装置100の概念平面図である。
【図10】図10(a)は、イオン・オゾン風発生装置の概念平面図であり、図10(b)は、イオン・オゾン風発生装置の概念側面図であり、図10(c)は、イオン・オゾン風発生装置の噴出口側から見た概念正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係るイオン・オゾン風発生装置は、針状電極と対向電極とを有する電極対を有し、前記針状電極と前記対向電極との間に電位差を発生させてコロナ放電によりイオン、オゾン及びイオン風を発生させる。また、本発明に係るイオン・オゾン風発生装置は、前記対向電極が平面状の主環状対向電極と、前記主環状対向電極を取り囲む平面状の副環状対向電極とを有し、前記針状電極の先端と前記主環状対向電極の最長距離が、前記針状電極の先端と前記副環状対向電極の最短距離よりも短いことを特徴とする。
【0023】
当該構成により大風量のイオン風が得られる。単なる筒状あるいは一つの平面円形の対向電極の場合、放電は最短距離にある対極の筒状電極内側や平面円形電極の内側に沿ってドーナツ状に放電しドーナツ型イオン風が発生するので、イオン風中心のドーナツ中心部は無風状態である。したがって発したイオン風が無風中心部を誘風するエネルギーを使うロスがある結果、イオン風は弱くなる。本発明のように主環状対向電極と、副環状対向電極を設けることにより当該問題は解決される。
【0024】
本発明に係るイオン・オゾン風発生装置は、針状電極と対向電極とを有する電極対を有し、前記針状電極と前記対向電極の間に電位差を発生させてコロナ放電によりイオン・オゾン、及びイオン風を発生させる。尚、イオン風は、一般的に、コロナ放電時に針状電極から放出されるイオンが対向電極へ向かって泳動する間に空気分子との衝突を繰り返すことで、針状電極から対向電極に向かって生じる空気流であるとされている。すなわち、放電時に発生するイオンの流れ方向に従って発生する気流である。以下、本発明に係るイオン・オゾン風発生装置の詳細な構造について説明する。
【0025】
本発明に係るイオン・オゾン風発生装置の概略構造を、図1に示した。ここで、図1(a)は当該装置の対向電極の概念正面図であり、図1(b)はイオン・オゾン風発生装置100の概念側面図である。本形態に係るイオン・オゾン風発生装置100は、針状電極120と対向電極130とを有する電極対110を有する。ここで、対向電極130は、針状電極120の延長線軸上に配された最内部に位置する円形環状電極131と、当該電極と同軸上に配された半径の異なる外側円形環状電極132を有する。すなわち、これらの環状電極は、環状平面に対して垂直であり、且つ、当該環の重心(円中心)を通る軸上に位置するように配されている。環状の対向電極の中でもこのように円形形状を有する対向電極を使用することにより、針状対向電極の先端から、対向電極の各所との距離が概ね等しくなるため、放電ムラがすくなくなる。また、このように針状電極が環の軸上に配されていることにより、特に主環状対向電極から発生するイオン風が強くなる。
【0026】
これらの環状電極131及び132は、ブリッジ139等の連結部材により通電可能に架橋されていることが好適であり、このように構成することにより、各環状電極を等電位にすることができると共に、これらの電極の位置関係を調整しやすくなる。例えば、波状部材で連結した場合、主環状対向電極と、副環状対向電極の間に略三角形の形状を有する部分が形成されてしまうため、コロナ放電にムラが発生してイオン風が大量に前方に押し出されなくなる。そのため、イオン風発生の邪魔にならないように、連結部材と副環状対向電極との接続部と、連結部材と主環状対向電極との接続部を結ぶ概念直線が前記主環状対向電極の重心を通過するように連結部材を配することが好適である。このように連結することにより、放電ムラに起因する、イオン風の発生ムラが生じにくくなる。
【0027】
対向電極を構成する主環状対向電極及び副環状対抗電極は、同一平面内に配されていることが好適である。主環状対向電極より副環状対向電極の放電効率を徐々に弱くしているのは距離であるため、同一平面に配することにより当該距離の変化をつけやすくなるため好適である。また、3次元では距離比が正しくても例えばドーム状等の形状だとイオン風の発する向きが主イオン風の発する直進風に対して平行風に発しない為、効率が悪くなる。
【0028】
なお、針状電極120と対向電極130は、それぞれ電圧印加手段又はグランドに接続されており、使用時には当該電極間に電位差を発生させて放電が行なわれる。ここで、針状電極120の先端部Pと最内部の主環状対向電極131との位置関係が、最もイオン風を発するのに適した位置関係にあることが好適であり、このような距離に配することにより、対向電極のより中心に位置する半径の小さい環状対向電極となるにつれて比較的強いイオン風が発せられることとなり、結果的に大風量のイオン風を得ることができる。このような位置関係にあれば、環状対向電極は同一平面上に配されていてもよく、別平面に配されていてもよい。尚、図中先端部Pから環状対向電極に示した破線矢印はコロナ放電によるイオンの泳動方向を示す。
【0029】
イオン風を発するのに適した位置関係について図2の模式図を用いて説明する。図2(a)においては、最内部に位置する環状対向電極131の断面を用いて、環状対向電極131と針状電極120の先端部Pとの位置関係を示し、図2(b)においては環状対向電極132と先端部Pとの位置関係を示した。
【0030】
はじめに、先端部Pと環状対向電極131との位置関係にある場合、イオンは電極に向かって矢印の方向に従って泳動する。すなわちイオン風は、理論上、先端部Pからθの角度を持って発生することとなる。したがって、全体的にみれば、先端部Pを頂点とする円錐の頂点から底面の端部を結ぶ母線方向にイオン風が発生することとなる。すなわち、環状対向電極の外方向に向かってもイオン風が発生するが、全体としては主に環状対向電極の中心からイオン風が前面方向に押出されることとなる。一方、図2(b)に示す環状対向電極132のように比較的大きな半径を有する輪状電極である場合、イオン風は、理論上、先端部Pからθの角度を持って発生することとなる。すなわち、当該角度がより大きくなるため、この電極に由来するイオン風は環状対向電極の外側方向に発せられる成分が多くなり、前面方向に押出されるイオン風の風量が小さくなる。
【0031】
また、コロナ放電は針状電極から近い位置にある対向電極に対して起こり易くなる。環状対向電極は中心に位置するものにつれて、針状電極の先端部Pからの距離が近くなる。すなわち、コロナ放電が起きる確率も中心に位置する環状対向電極のほうが高くなるので、発生するイオン風の絶対的風圧も中心に位置する環状対向電極のほうが大きくなる。
【0032】
以上、説明したように、最内部に位置する環状対向電極131は、イオン風が発生する方向としても有利であり、更には、イオン風の発生する絶対的な風圧も大きい。したがって、図1に示すような対向電極は、環状電極の半径が小さくなるにつれて環状対向電極から発せられるイオン風が強くなるように配されている状態にある。このように配されることによって、外部の電極から発せられるイオン風によって滞留が起きず、中心から発せられるイオン風に巻き込まれるようになるので風量が大きくなるともに、放電により発生したイオン及びオゾンをイオン風によって前面へと押出す作用が得られるため、殺菌・消臭の効果も高くなる。また、最内部に位置する環状対向電極131と先端部Pとの距離が、コロナ放電において最も良好に放電し易い距離に保たれていることがより好適である。但し、対向電極の環状部の径を単に大きな径にすると大きく放電反応するがドーナツ状に放電する為、対向電極の環状中心に対向電極部を有しない事を起因とした、無風中心部も大きくなり放電ムラが出来ドーナツ状イオン風が発生し、結果発生イオン風外周と中心部が無風状態となりドーナツ状イオン風が無風域を誘風する為に強風を発しない。環状部の径が小径だと風圧の強いイオン風を発するが発生量は少ない為、主環状対向電極外周に二次発生極である副環状対向電極を配する事で、中心は主流風を小径にて風圧を強く発しながら外周は径が大きく風圧は弱いが風量のある副流風を発する。すなわち、本発明に係る対向電極は、大径だと風圧は弱いが風量は多い、小径だと風圧は強いが風量は少ない現況の問題を解した、イオン風の発生を同電位にて大風圧と大発生量の両立した形状となる。
【0033】
対向電極を平面状とすることにより、対向電極から発生したイオン風が、壁面等の障害物とイオン風の反作用の影響によって減速されること無く、主環状対向電極から発生した主イオン風と、副環状対向電極から発生した副イオン風とが、即座に合成されるため、主イオン風は発生直後に周囲の副イオン風によって追い風による相乗効果を早く得られるため、より大風量のイオン風を得ることができる。また、平面状とすることにより、対向電極の洗浄が容易になる。
【0034】
本発明に係るイオン・オゾン風発生装置は、前記針状電極の先端と前記主環状対向電極の最長距離が、前記針状電極の先端と前記副環状対向電極の最短距離よりも短い。このような距離関係に針状電極と対向電極が配されることによって、主環状対向電極の中心に形成された開口部から、最も風圧の強いイオン風が発生し、周辺の副環状対向電極から風圧の弱いイオン風が発生するため、大量のイオン風を得ることができる。このような針状電極と対向環状電極の位置関係から外れると、イオン風は主環状対向電極と副環状対向電極の間の空間から主にイオン風が発生してしまい、均等風となってしまうため、空中放出イオン風は弱くなり、更にはガイド部材を設けた場合にも反作用が起きる。
【0035】
対向電極130を構成する環状対向電極は、図1に示すように2つに限定されるわけではなく、図3に示すように環状対向電極131〜133のように、環状対向電極が多数設けられていてもよい。尚、図3(a)は当該装置の対向電極130の概念正面図であり、図3(b)はイオン・オゾン風発生装置100の概念側面図である。ここでは、3つの環状対向電極を用いた場合について説明したが、このように対向電極を構成する環状対向電極は針状電極との距離関係を満足すればいくつ設けられていてもよい。このように多数の電極を設けることにより、一の電極が汚れて放電しなくなったとしても他の電極により放電できるので、装置の動作安定性の向上に繋がる。
【0036】
図4に示すように、針状電極121〜123のように、針状電極が複数設けられていてもよい。この場合、全ての針状電極と対向電極とが、前記針状電極の先端と前記主環状対向電極の最長距離が、前記針状電極の先端と前記副環状対向電極の最短距離よりも短い位置にされている。尚、図4(a)は当該装置の対向電極の概念正面図であり、図4(b)はイオン・オゾン風発生装置100の概念側面図である。このように針状電極を複数設けることにより、単極の場合より、絶縁破壊が多く発生し分子の衝突が起こり易くなり押出す能力が高まるので、大量のオゾンを発生させることができる。
【0037】
図5に示すように、本発明に係る対向電極は、多角形であってもよい。この場合も、各針状電極と対向電極とが、前記針状電極の先端と前記主環状対向電極の最長距離が、前記針状電極の先端と前記副環状対向電極の最短距離よりも短い位置に配されている。尚、図5(a)は当該装置の対向電極の概念正面図であり、図5(b)はイオン・オゾン風発生装置100の概念側面図である。このように三角形の形状であっても、主環状対向電極から発生するイオン風が副環状対向電極から発生するイオン風よりも小さくなり、大風量のイオン風を得ることができる。また、ここでは主環状対向電極は円形状に表したが、三角形以上の多角形であってもよい。また環状対向電極は、多角形である場合、辺数が多いほうが、針状電極との最短距離となるポイントが多くなるため、放電ムラが発生しにくくなるため有利である。
【0038】
図6は、本発明に係る対向電極の一例を示した概略図である。ここでは、板に孔を設けることにより、対向電極を形成している。図6(c)は、円形状の対向電極を有する板状対向電極130cの概念図である。当該対向電極は、第一対向電極130c(1)と、第二対向電極130c(2)とを有する。第一対向電極130c(1)は、円形状の主環状対向電極131c(1)が中心に形成されており、その周囲に、円形状の副環状対向電極132c(1)が形成されており、副環状対向電極132c(1)の外周には、更に、副環状対向電極133c(1)、134c(1)、135c(1)が形成されている。またこれらの対向電極の間には、連結部材139c(1)が形成されている。また第二対向電極も同様に、円形状の主環状対向電極131c(2)が中心に形成されており、その周囲に、円形状の副環状対向電極132c(2)が形成されており、副環状対向電極132c(2)の外周には、更に、副環状対向電極133c(2)、134c(2)が形成されている。またこれらの対向電極の間には、連結部材139c(2)が形成されている。これらの板状対向電極に対して適切な位置に針状電極を配して使用する。
【0039】
図6(b)は、板状対向電極130bの概略構成を示す図である。板状対向電極130bは、主環状対向電極の形状が円形状であり、周囲の副環状対向電極の形状が六角形である。板状対向電極130bは、第一対向電極130b(1)と、第二対向電極130b(2)を有する。第一対向電極130b(1)の中心部には、円形状の主環状対向電極131b(1)が形成されており、その周囲には六角形状の副環状対向電極132b(1)が形成されており、更にその外周には、副環状対向電極133b(1)、134b(1)、135b(1)が形成されている。またこれらの対向電極の間は、連結部材139b(1)により連結されている。
第二対向電極130b(2)も同様に、中心に円形状の主環状対向電極131b(2)が形成されており、その周囲に、六角形状の副環状対向電極132b(2)〜134b(2)が形成されており、これらの電極は連結部材139b(2)によって連結されている。
【0040】
図6(a)は、板状対向電極130aの概略構成を示す図である。板状対向電極130aにおいては、円形状の主環状対向電極と、その周辺に環状の副環状対向電極が形成されている。板状対向電極130aは、第一対向電極130a(1)と、第二対向電極130a(2)を有する。第一対向電極130a(1)の中心部には、円形状の主環状対向電極131a(1)が形成されており、その周辺に複数の副環状対向電極132a(1)が形成されている。図6(a)においては、副環状対向電極132a(1)の代表的な一例を示したが、主環状対向電極131a(1)の周辺に形成されている132a(1)も同様に副環状対向電極である。このように形成することにより、副環状対向電極の間に形成される部材が、主環状対向電極から放射線状に広がっている状態となるため、主環状対向電極から発生するイオン風に加えて、当該主環状対向電極から遠ざかるにつれて連続的にイオン風の風量が小さくなる。第二対向電極132a(2)も第一対向電極と同様に中心に主環状対向電極131a(2)及び副環状対向電極132a(2)を有する。
【0041】
尚、図6(d)は、上記の板状対向電極130a〜cの共通の側面図である。
【0042】
図7に示すように、本形態に係る電極対110を複数有するイオン・オゾン風発生装置が好適である。尚、図7はイオン・オゾン風発生装置100の概念平面図である。中心に配された電極対の左右に2つの電極対が配されており、中心に配された電極対のイオン風発生方向に対して前記左右に配された2つの電極対のイオン風発生方向がそれぞれ交わるように配されていることが好適である。また各電極対から発生するイオン風が、一点集中するように配置することがより好適である。このような、装置を用いることによって、各電極対から発せられるイオン風を合流させることができ、より大風量のイオン風を得ることができる。
【0043】
図8に示すように、切頭円錐状のイオン風ガイド部材140が設けられていることが好適である。尚、図8(a)は当該装置の対向電極130の概念正面図であり、図8(b)はイオン・オゾン風発生装置100の概念側面図である。対向電極130の最内部に位置する環状対向電極131から発生するイオン風に対して、外側に位置する環状対向電極から発生するイオン風を集約して(合流させて)イオン風噴出口141へと送ることにより、前面に押出されるイオン風の風量が大きくなる。また、このようにガイド部材を設けたとしても、外側で発生したイオン風は、最内部で発生するイオン風よりも小さいので滞留せずに中心のイオン風に引き込まれるように前方に押出される。ガイド部材は、徐々に開口断面積が小さくなる形状を有している。このような形状を有するガイド部材を設けた場合、対向電極から発生するイオン風が均等風や中心は風圧を発しないドーナツ風では送風作用に対して断面積が小さくなる形状の為、直進したイオン風がガイド部材の内壁に衝突し乱気流が発生してガイド部材内部に反作用が起き微風になるが、主イオン風が強く副イオン風は弱いとガイド部材が小径に絞られた時でも副イオン風が弱い為ガイド部材内壁への衝突も当然弱くなり主イオン風は、副イオン風を巻き込みイオン風を集約し噴出する。
【0044】
また、ガイド部材140の噴出口141には、送風経路150が設けられていることが好適である。ここで、送付経路は、噴出されるイオン風の風向きを調整できれば特に限定されないが、噴出口141と同じ径を有する管状部材であることが好適である。ここで、送風経路は、その材質は特に限定されず、ホース、塩化ビニル管などが挙げられる。当該送風経路は、後述するように複数の電極対を設ける場合、これらの電極対から発生するイオン風が集約され易いように用いることができる。また、当該電極対単独で用いる場合、当該送付経路によって、殺菌・消臭対象空間等にイオン及びオゾンを送り込んでもよい。
【0045】
図9に示すように、これらのガイド部材140が設けられた電極対110を複数設けることが好適である。電極対110を3個設けた場合、中心に配された電極対の左右に2つの電極対が配されており、中心に配された電極対のイオン風発生方向に対して左右に配された2つの電極対のイオン風発生方向がそれぞれ交わるように配されている。また、各電極対から発生するイオン風が、一点集中するように配置することが好適である。このように構成することによって、各電極対から発生するイオン風を合流させることにより大風量のイオン風を得ることができる。
【0046】
図10に示すように、ガイド部材140が設けられた電極対110(ここでは図面の容易のため針状電極を省略する)を6個設けることが好適である。図10(a)は、イオン・オゾン風発生装置の概念平面図であり、図10(b)はイオン・オゾン風発生装置の概念側面図であり、図10(c)はイオン・オゾン風発生装置の噴出口側から見た概念正面図である。この場合、電極対を3組ごとに上下の二段構成として、これらの上下段それぞれについて先に示した3個の電極対における配置法に従って配置し{図10(a)}、これらの3個の電極対の群を当該電極対の群から発生されるイオン風を合流させるように配する{図10(b)}。ここで各電極対から発生するイオン風が、一点集中するように配置することが好適である。すなわち、上下段の中心に位置する電極対から発生されるイオン風が集約されるような角度に配することによって、各電極対からのイオン風を合流させることができ大風量のイオン風を得ることができる。
【0047】
本発明に係るイオン・オゾン風発生装置は、殺菌・消臭装置として使用することができるほか、イオン水/殺菌水生成装置としても使用することができる。
【0048】
本発明に係る装置はコロナ放電によりイオン及び/又はオゾンが発生し、更に、大風量のイオン風が発生するため、これらをイオン風により運び、殺菌・消臭対象物に接触させてイオン・オゾン風発生装置として使用することが可能である。また大風量のイオン風が発生するため、ポンプを使用せずにイオン及びオゾンを発生させて殺菌・消臭対象物の配された空間に送り込むことが可能となるので外付け型殺菌・消臭装置として使用することも可能である。
【0049】
本発明に係るイオン・オゾン風発生装置は、エアーストーン・ナノバブル給気源による海水及び淡水の殺菌・消臭用としても使用可能である。すなわち、ナノバブル発生器にはエアーの取込は必須である為、イオン風ガイド部材と送給経路を結合してナノバブルのエアー給気源として使用することにより、イオン/オゾン風を水中にて反応させイオン水/殺菌水を簡易に作ることができる。これにより、オゾン水とナノバブルの相乗効果による肌の殺菌洗浄により毛穴の奥深くの油脂除去やオゾンの特性である漂白作用を利用した美白効果等、美容への利用、魚介類飼育水槽内の殺菌、消臭の他、水耕栽培の培養液の殺菌等や、厨房等でも水道の吐出圧を動力源として殺菌水を生成し、有効な殺菌・消臭やオゾン水によって油脂の分解等を簡易にて安価で安全に行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
100:イオン・オゾン風発生装置
110:電極対
120:針状電極
130:対向電極
131〜133:環状対向電極
139:ブリッジ
140:イオン風ガイド部材
141:噴出口
150:送風経路
200:イオン風発生装置
210:電極対
220:針状電極
230:対向電極
P:先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針状電極と対向電極とを有する電極対を有し、前記針状電極と前記対向電極との間に電位差を発生させてコロナ放電によりイオン、オゾン及びイオン風を発生させるイオン・オゾン風発生装置において、
前記対向電極が平面状の主環状対向電極と、前記主環状対向電極を取り囲む平面状の副環状対向電極とを有し、
前記針状電極の先端と前記主環状対向電極の最長距離が、前記針状電極の先端と前記副環状対向電極の最短距離よりも短いことを特徴とする、イオン・オゾン風発生装置。
【請求項2】
前記対向電極の主環状対向電極から発せられるイオン風に対して、前記副環状対向電極から発生するイオン風を集約して、イオン風を外部へと噴出する噴出口へと送るためのイオン風ガイド部材であって、前記噴出口へと近づくにつれて、開口断面積が小さくなるイオン風ガイド部材を有することを特徴とする、請求項1記載のイオン・オゾン風発生装置。
【請求項3】
前記電極対が複数組設けられている事を特徴とする、請求項1又は2記載のイオン・オゾン風発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−175949(P2011−175949A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104224(P2010−104224)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【特許番号】特許第4551977号(P4551977)
【特許公報発行日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(509125109)
【Fターム(参考)】