説明

イオン吐出装置

【課題】 マイクロプラズマ放電を用いて長時間安定してイオンを発生させることのできるイオン吐出装置を提供する。
【解決手段】 本体ケース1と、本体ケース1に貫通形成される風路4と、風路4中に配される送風部5及びイオン発生部6を具備するイオン吐出装置とする。更に、上記イオン発生部6は、電極部8と、電極部8に密着して又は近傍に配置される絶縁スペーサ7とを備え、電極部8に高電圧を印加することで、絶縁スペーサ7に沿って形成される微小な放電空間S内において放電を生じさせるものとする。上記風路4は、上記イオン発生部6に送り込む送風が、放電空間Sと電極部8の外周面とを共に通過するように形成したものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロプラズマ放電により生じさせたイオンを吐出するイオン吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、送風部及びイオン発生部を具備するイオン吐出装置として、例えば特許文献1に開示されるようなイオン発生機能を有するヘアードライヤが知られている。このヘアードライヤは、送風部を配置した風路の途中からイオン流路を分岐させ、このイオン流路内にイオン発生部を配置した構造であって、イオン発生部で生じたマイナスイオンを風に乗せて外部に吐出させるようになっている。上記イオン発生部としては、針電極とグランド電極との間に高電圧を印加し、コロナ放電によりイオンを発生させるものが一般的である。
【0003】
ところで、イオンを発生させるための手段として、マイクロプラズマ放電を用いてイオンを発生させる構造のものが知られている。このマイクロプラズマ放電を用いたイオン発生部によれば、コロナ放電と比べて高い電力密度によって、非常に高いイオン発生能力が得られる。しかし、この構造を用いた場合には、放電部分周辺のガス温度が高くなるため電極部に与える負荷が大きくなる。そのため、長時間安定してイオンを発生させようとするには電極部の熱除去が大きな課題となる。
【特許文献1】特開2002−191426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題点に鑑みて発明したものであって、マイクロプラズマ放電を用いて長時間安定してイオンを発生させることのできるイオン吐出装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明を、本体ケース1と、本体ケース1に貫通形成される風路4と、風路4中に配される送風部5及びイオン発生部6を具備するイオン吐出装置とする。更に、上記イオン発生部6は、電極部8と、電極部8に密着して又は近傍に配置される絶縁スペーサ7とを備え、電極部8に高電圧を印加することで、絶縁スペーサ7に沿って形成される微小な放電空間S内において放電を生じさせるものとする。上記風路4は、上記イオン発生部6に送り込む送風が、放電空間Sと電極部8の外周面とを共に通過するように形成したものとする。
【0006】
このようにすることで、放電空間Sに送り込んだ送風によって、該放電空間S内でマイクロプラズマにより大量に生成されたイオンを下流側に搬送するとともに、電極部8の外周面に沿って送り込んだ送風によって、電極部8を効率的に放熱させることができる。したがって、長時間安定してイオンを発生及び吐出させることが可能となる。
【0007】
なお、上記構成のイオン吐出装置において、上記放電空間Sは、絶縁スペーサ7に設けた貫通孔10と、絶縁スペーサ7と電極部8の間に形成される隙間60の、両方又は一方であることが好適である。この構成によれば、放電を生じさせるための放電空間Sを、貫通孔10や隙間60の適宜組み合わせによって高い自由度で設定することができる。
【0008】
また、上記イオン発生部6は、絶縁スペーサ7を挟む両側に電極部8を配置し、両側の電極部8間に高電圧を印加するものであることが好適である。このようにすることで、放電を安定的に生じさせることができる。
【0009】
更にこのとき、上記イオン発生部6は、絶縁スペーサ7を挟む両側の電極部8の両方又は一方を該絶縁スペーサ7に密着させたものであることが好適である。このようにすることで、電極部8に密着した絶縁スペーサ7が放熱フィンのように働き、該絶縁スペーサ7を介して、電極部8を長期間に亘って安定的に放熱させることができる。
【0010】
また、上記イオン発生部6を複数備えて高圧印加部9に並列接続し、該高圧印加部9からは各イオン発生部6の電極部8に対してパルス状の高電圧を印加することも好適である。このようにすることで、固体差に関わらず複数のイオン発生部6の全てにおいて偏りなく放電を生じさせ、全体として大量のイオンを発生させることができる。
【0011】
また、上記風路4には、送風部5が発生させる送風の一部を放電空間S内に送り込む第1流路R1と、送風部5が発生させる送風の他の一部を電極部8の外周面に沿って通過するように送り込む第2流路R2とを、分岐して形成してあることも好適である。このようにすることで、第1流路R1を通じて貫通孔10内に送り込んだ送風によって、該貫通孔10内でマイクロプラズマにより大量に生成されたイオンを下流側に搬送するとともに、第2流路R2を通じて電極部8の外周面に沿うように送り込んだ送風によって、電極部8を効率的に放熱させることができる。したがって、長時間安定してイオンを発生及び吐出させることが可能となる。
【0012】
更にこのとき、上記風路4中の第1流路R1と第2流路R2に流入する送風の割合を可変する調整弁13を具備することが好適である。このようにすることで、調整弁13を制御するだけで、貫通孔10内からイオンを搬送するための風量と、電極部8を空冷するための風量とを、状況に応じて適宜調整することができる。
【0013】
上記調整弁13は、第1流路R1中の風量を略一定に保つように送風の割合を可変するものであることが好適である。このようにすることで、貫通孔10内のマイクロプラズマ放電が安定的に行われることとなる。
【0014】
また、上記イオン発生部6の電極部8に、放熱フィン16を設けていることも好適である。このようにすることで電極部8の表面積が増大し、電極部8を更に効率的に放熱させることが可能となる。
【0015】
また、上記風路4中の上記イオン発生部6より上流側の箇所に、冷却部30を配置していることも好適である。このようにすることで、冷却部30を通じて冷却させた空気を送り込み、電極部8を更に高効率で放熱させることが可能となる。
【0016】
上記冷却部30が、ペルチェユニット50を用いたものであることも好適である。このようにすることで、装置全体がコンパクト化及び軽量化される。
【0017】
また、上記風路4中にミスト付加部40を配置していることも好適である。このようにすることで、ミスト付加部40を通じてミストを付加された空気によってイオンミストを生成及び吐出することができる。
【0018】
上記ミスト付加部40が、ペルチェユニット50を用いて結露水を生成するものであることも好適である。このようにすることで、装置全体のコンパクト化及び軽量化を図りながらも、送風中に継続的に水分を供給してイオンミストを生成及び吐出することが可能となる。
【0019】
このとき、上記ミスト付加部40を、上記風路4中の上記イオン発生部6より上流側の箇所に配置していることも更に好適である。このようにすることで、ペルチェユニット50を用いた上記ミスト付加部40が、冷却風を生成して電極部8を更に高効率で放熱させる冷却部30を兼ねたものとなる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明は、送風部によって風路内に生じさせた送風によって、放電空間内でマイクロプラズマにより大量に生成されたイオンを下流側に搬送することと、電極部を効率的に放熱させることが同時に行われ、これにより、長時間安定してイオンを発生及び吐出させることができるという効果を奏する。
【0021】
また請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加えて、貫通孔や隙間の適宜組み合わせによって放電空間を多様に形成することができるという効果を奏する。
【0022】
また請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明の効果に加えて、周囲の状況に影響されることなく放電を安定的に生じさせることができるという効果を奏する。
【0023】
また請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明の効果に加えて、電極部に密着させた絶縁スペーサを放熱フィンのように機能させることで、電極部を長期間に亘って安定的に放熱させることができるという効果を奏する。
【0024】
また請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか一項に係る発明の効果に加えて、不可避的に存在する固体差に関わらず複数のイオン発生部で偏りなく放電を生じさせることができ、したがって、全体として大量のイオンを発生させることができるという効果を奏する。
【0025】
また請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか一項に係る発明の効果に加えて、第1流路を通じて送り込んだ送風によって貫通孔内で大量に生成されたイオンを下流側に搬送するとともに、第2流路を通じて送り込んだ送風によって電極部を効率的に放熱させることができ、したがって、マイクロプラズマ放電を用いて長時間安定してイオンを発生させることができるという効果を奏する。
【0026】
また請求項7に係る発明は、請求項6に係る発明の効果に加えて、貫通孔内からイオンを搬送するための風量と、電極部を空冷するための風量とを、適宜調整することができるという効果を奏する。
【0027】
また請求項8に係る発明は、請求項7に係る発明の効果に加えて、貫通孔内のマイクロプラズマ放電が安定的に行われるようになるという効果を奏する。
【0028】
また請求項9に係る発明は、請求項1〜8のいずれか一項に係る発明の効果に加えて、電極部の表面積を増大させることで電極部を更に効率的に放熱させることが可能になるという効果を奏する。
【0029】
また請求項10に係る発明は、請求項1〜9のいずれか一項に係る発明の効果に加えて、冷却風を送り込むことで電極部を更に効率的に放熱させることが可能になるという効果を奏する。
【0030】
また請求項11に係る発明は、請求項10に係る発明の効果に加えて、装置全体がコンパクト化及び軽量化されるという効果を奏する。
【0031】
また請求項12に係る発明は、請求項1〜11のいずれか一項に係る発明の効果に加えて、ミスト付加部を通じて加湿された空気によってイオンミストを生成及び吐出することができるという効果を奏する。
【0032】
また請求項13に係る発明は、請求項12に係る発明の効果に加えて、装置全体のコンパクト化及び軽量化を図りながらも、送風中に継続的に水分を供給してイオンミストを生成及び吐出することが可能になるという効果を奏する。
【0033】
また請求項14に係る発明は、請求項13に係る発明の効果に加えて、ペルチェユニットを用いたミスト付加部が、冷却風を生成して電極部を更に高効率で放熱させる冷却部を兼ねたものになるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。図1には、本発明の実施形態における第1例のイオン吐出装置を示している。
【0035】
本例のイオン吐出装置は、装置全体の外殻を成す本体ケース1の外面に吸入口2と吐出口3を開口させ、本体ケース1内に、吸入口2と吐出口3を連通する風路4を貫通形成したものである。風路4内には送風部5を上流側に配置し、イオン発生部6を下流側に配置している。送風部5は送風ファンから成り、該送風ファンを回転駆動させることで本体ケース1外の空気を吸入口2から風路4内に導入して吐出口3から外部に吐出する。
【0036】
イオン発生部6は、図示のようなホローカソード型のものであって、板状の絶縁スペーサ7の厚み方向の両側に、同じく板状である金属製の電極部8を密着配置することで、絶縁スペーサ7を一対の電極部8で挟持した構造となっている。一対の電極部8は高圧印加部9を介して電気接続させており、両電極部8間に高電圧が印加されるようになっている。絶縁スペーサ7及び電極部8にはそれぞれ厚み方向に貫通する貫通孔10,19を同一開口形状で設けており、絶縁スペーサ7と電極部8の上記密着配置により、絶縁スペーサ7の貫通孔10と両側の電極部8の貫通孔19とが厚み方向に一直線状に連通している。上記貫通孔10,19の孔径Dは数100μm程度と微小径に設けている。
【0037】
風路4の一部であってイオン発生部6が配置される部分には、第1流路R1と第2流路R2とを分岐させて形成している。第1流路R1は、送風部5により送り込まれる送風の一部を上記イオン発生部6の貫通孔10,19内に導入し、該貫通孔10,19内を通過させた後に下流側に吐出させるものである。また第2流路R2は、送風部5により送り込まれる送風の他部(即ち、イオン発生部6に送り込まれる送風全体のうち第1流路R1に流入した分を除く部分)を上記イオン発生部6の両側の電極部8の露出面に沿って流したうえで、下流側に吐出させるものである。
【0038】
第1流路R1と第2流路R2とは、互いの上流端にて両者R1,R2が分岐した後に下流端にて合流するように設けている。風路4の第1流路R1と第2流路R2との分岐部分の上流には、該分岐部分に近づくほどに流路断面が漸次小さくなる上流側テーパ部11を形成している。また、風路4の第1流路R1と第2流路R2との合流部分の下流には、該合流部分から離れるほどに流路断面が漸次大きくなる下流側テーパ部12を形成している。
【0039】
第1流路R1と第2流路R2との分岐部分には、風路4内をイオン発生部6に向けて流れる送風のうち第1流路R1と第2流路R2に流入する送風の割合を可変するための調整弁13を備えている。本例では、上記調整弁13として第1流路R1の開口を調整するための玉型弁を備えているが、他の弁構造であっても構わない。上記調整弁13はイオン吐出装置の制御回路部20と接続されており、第1流路R1に流入する送風の流量を略一定量に保持するように該制御回路部20により制御される。上記制御回路部20は、所望量のイオン及び送風量を得るために送風部5、高圧印加部9、調整弁13等を駆動制御するものである。
【0040】
第1流路R1と第2流路R2とを仕切る隔壁部14は、第1流路R1の上流側部分(つまり、分岐部分から貫通孔10,19内にまで送風を導く部分)とこれに並設される第2流路R2の上流側部分とを仕切るパイプ状の隔壁14aと、第1流路R1の下流側部分(つまり、貫通孔10,19から吐出された送風を合流部分にまで導く部分)とこれに並設される第2流路R2の下流側部分とを仕切る同じくパイプ状の隔壁14bと、から成る。両隔壁14a,14bはその端部を電極部8の平板面に密着させて設置している。
【0041】
また、第2流路R2の電極部8に沿って流れる放熱部分15は、上流側の電極部8の平板面に沿って通過する部分15aと、中央の絶縁スペーサ7を跨いで両側の電極部8の外周面に沿って通過する部分15bと、下流側の電極部8の平板面に沿って通過する部分15cとを、側面視コ字状に連通させた形状になっている。
【0042】
上記構成から成る本例のイオン吐出装置において、図示しない操作ボタンを押下する等して制御回路部20にイオン生成の開始指令を出力すると、制御回路部20は送風部5によって風路4内に外気を導入してイオン発生部6に向けて送風するとともに、高圧印加部9によってイオン発生部6の電極部8間に高電圧を印加させる。この高電圧印加により、イオン発生部6に設けた絶縁スペーサ7の貫通孔10内で放電が開始され、該貫通孔10内にマイクロメータサイズの微小なプラズマ(以下「マイクロプラズマ」という)が高密度で生成される。上記貫通孔10内のマイクロプラズマ放電により、コロナ放電と比較して高密度でイオンが生成される。つまり、本例においては、数100μm程度の孔径Dを有する上記貫通孔10により、絶縁スペーサ7に沿った微小な放電空間Sを形成している。
【0043】
送風部5によってイオン発生部6に向けて送られた送風は、上流側テーパ部11を通じて加圧された後に第1流路R1と第2流路R2とに分流される。第1流路R1の上流側部分を通ってイオン発生部6の貫通孔10,19内にまで一直線状に導入された送風は、貫通孔10内に高密度で生成されるイオンを効率よく下流側に搬出させ、第1流路R1の下流側部分を通って風路4内の下流側テーパ部12に放出される。また、第2流路R2の上流側部分を通って中央の放熱部分15にまで導入された送風は、側面視コ字状に連結される各部分15a,15b,15cを通じて上流側の電極部8の平板面及び外周面、下流側の電極部8の外周面及び平板面に沿って回り込むように流下し、両電極部8の熱を効率よく奪った後に、第2流路R2の下流側部分を通って風路4内の下流側テーパ部12に放出される。
【0044】
第1流路R1から下流側に放出された大量のイオンを含む送風と、第2流路R2から下流側に放出された受熱後の送風とは、下流側テーパ部12内にて合流し、合流後の十分な流量を伴ったうえで吐出口3を通じて本体ケース1外に吐出される。この吐出風に乗って、イオン発生部6のマイクロプラズマ放電によって大量生成されたイオンは外部空間に向けて勢い良く吐出される。
【0045】
既述のように、このとき制御回路部20は、第1流路R1に流入する送風の流量が略一定量に保持されるように(換言すると、所定の適正範囲内に収まるように)調整弁13の開口を制御するので、貫通孔10内のマイクロプラズマ放電は風路4全体の風量に影響されることなく安定的に行われる。具体的には、送風部5の出力が大きくなるほどに第1流路R1に流入する風量の割合が小さくなるように、制御回路部20によって調整弁13を制御する。また、第1流路R1内を通る風量(即ち、貫通孔10内を通る風量)を検知するセンサを備え、該センサの出力に応じて制御回路部20が調整弁13を制御する構造であってもよい。
【0046】
このように、本例のイオン吐出装置によれば、イオン発生部6の両電極部8を送風により効率的に放熱させながら貫通孔10内のマイクロプラズマ放電により大量のイオンを生成し、且つ、ここで生じた大量のイオンを送風により効率的に貫通孔10内から下流側に搬送し、放熱用の送風とイオン搬送用の送風とを合流させたうえで十分な風量を伴って外部に吐出させることができる。
【0047】
ここで外部に放出されるイオンには硝酸イオンが含まれている。この硝酸イオンを含んだ水は髪や肌を弱酸性に保つとともに、該硝酸イオンが有する高い水和力によって髪や肌に水分を保持させる。また、放電の条件を適宜制御することにより、スーパーオキサイドラジカルやヒドロキシラジカルを生成及び放出することもでき、この場合には脱臭効果や、除菌効果、アレルゲン不活性化効果、農薬分解効果、有機物分解(汚れ除去)効果が得られることが分かっている。
【0048】
上記した構成のイオン吐出装置は、例えばヘアードライヤとして使用することができる。このヘアードライヤとして使用する場合には、本体ケース1内に貫通形成される風路4の送風部5よりも下流側部分を二手に分岐させ、分岐した一方に上記イオン発生部6を配置してイオン吐出口を開口させ、他方にヒータを配置して温風吐出口を開口させた構造とする。
【0049】
図2には、イオン発生部6の電極部8の変形例を示している。この変形例においては、上流側及び下流側の電極部8の露出する平板面に多数の放熱フィン16を突設している。上記放熱フィン16により、第2流路R2内を流れる送風が接する電極部8の表面積が増大し、空冷による電極部8の熱除去が更に効率的に行われる。
【0050】
図3には、風路4中に形成される第2流路R2の変形例を示している。この変形例においては、第2流路R2の途中に幅狭部17を設けている。幅狭部17の幅dは、イオン発生部6の貫通孔10,19の孔径Dよりも小さく設定したものであり、該幅狭部17を設けることで、第1流路R1を通じて貫通孔10,19内に導入される風量を確保している。幅狭部17を形成する箇所は、図3Aに示すような放熱部分15の下流側の部分15cであってもよいし、図3Bに示すような上流側の部分15aであってもよいし、或いは、下流側と上流側の両方に幅狭部17を設けてもよい。なお、図示例では調整弁13を省略している。
【0051】
図4には、第1流路R1と第2流路R2の分岐部分に、更に加圧部18を設けた変形例を示している。この変形例においては、加圧部18により所定の風圧に設定したうえで第1流路R1及び第2流路R2内に送風を導入するようになっているので、貫通孔10内のマイクロプラズマ放電を安定化させるという効果や、空冷による電極部8の熱除去が安定的に行われるという効果がある。
【0052】
次に、本発明の実施形態における第2例のイオン吐出装置について図5に基づいて説明する。なお、上記した第1例の構成と同様の構成については詳細な説明を省略し、第1例とは相違する特徴的な構成について以下に詳述する。
【0053】
本例のイオン吐出装置においては、本体ケース1内の風路4中に冷却部30を配置している。上記冷却部30は、イオン発生部6と、このイオン発生部6よりも上流側に位置する送風部5との間に位置している。図示例の冷却部30は、風路4内に配置してある熱交換部31と、風路4外に配置してある冷媒タンク32と、熱交換部31と冷媒タンク32とを連通接続させる循環流路33と、循環流路33中に介在するとともに熱交換部31と冷媒タンク32との間で冷媒を循環させるポンプ34とから成る構造である。冷媒としては水を用いている。なお、冷却部30の構造は図示例のような水冷式に限定されず、例えばペルチェユニットを用いた電子式等の他の構造であってもよい。冷却部30の電子式の構造は、手持ち式で使用するヘアードライヤ等の比較的小型の装置として本例のイオン吐出装置を用いる場合に、特に有効である。
【0054】
上記構成の本例のイオン吐出装置にあっては、冷却部30を通じて冷却させた空気を第1流路R1及び第2流路R2に送り込むことができる。したがって、第1例と比較しても更に高効率で電極部8を放熱させることができ、更に長期間に亘って安定的にイオンを生成することが可能となる。
【0055】
次に、本発明の実施形態における第3例のイオン吐出装置について図6に基づいて説明する。なお、上記した第1例の構成と同様の構成については詳細な説明を省略し、第1例とは相違する特徴的な構成について以下に詳述する。
【0056】
本例のイオン吐出装置においては、本体ケース1内の風路4中にミスト付加部40を配置している。上記ミスト付加部40は、イオン発生部6と、このイオン発生部6よりも上流側に位置する送風部5との間に位置している。図示例のミスト付加部40は、スポンジ等の保水体41に水分を含ませたものを風路4中に配置した構造であるが、他の構造であってもよい。上記構成の本例のイオン吐出装置にあっては、ミスト付加部40を通じてミストを付加された空気を下流側のイオン発生部6に送り込むことで、空気中のミストにイオン(マイナスイオン)を含んで成るイオンミストが大量に生成され、吐出口3を通じて外部に吐出される。上記イオンミストの吐出風は、その空気中のミスト自体が外部空気を加湿するという効果に加えて、多くの水分を保持するイオンミストが付着することで髪や肌に多くの水分を与えるという効果を及ぼす。なお、図示はしていないが、保水体41に含む水分がミスト付加部40外に漏出することを防止する防水構造を備えている。
【0057】
次に、本発明の実施形態における第4例のイオン吐出装置について図7に基づいて説明する。なお、上記した第3例の構成と同様の構成については詳細な説明を省略し、第3例とは相違する特徴的な構成について以下に詳述する。
【0058】
本例のイオン吐出装置のミスト付加部40は、ペルチェユニット50を用いて結露水を生成するものである。上記ペルチェユニット50は、本体ケース1に内蔵してあるDC電源部51により電力を供給されて図中上方の冷却側から図中下方の放熱側へと熱を移動させるものである。上記ペルチェユニット50の冷却側に、風路4内に配置される枠状の冷却部材52を接続させて配置し、更にこの冷却部材52内にメッシュ状の冷却部材53を接続させて配置することで、上記ミスト付加部40を構成している。
【0059】
ペルチェユニット50の放熱側は、本体ケース1内に形成してあるペルチェ放熱用流路54内に露出させており、該ペルチェ放熱用流路54内を流れる送風によって放熱される構造である。上記ペルチェ放熱用流路54は、風路4の主流から分岐及び合流して形成されている。したがって、送風部5により導入された送風の一部が主流から分流されてペルチェ放熱用流路54内に導入され、ペルチェユニット50の放熱側を通過した後に、下流側テーパ部12にて主流と合流したうえで吐出口3から外部に吐出されるようになっている。
【0060】
風路4の主流においては、送風部5によって空気を送り込みながらペルチェユニット50に電力供給して両冷却部材52,53を冷却することで、風路4中の送風温度を結露点以下にして両冷却部材52,53上に結露水を生じさせる。したがって、この結露水を有する両冷却部材52,53を通過した送風はミストを大量に含んだ状態で下流側のイオン発生部6に送り込まれ、イオンミストを生成したうえで吐出口3を通じて外部に吐出される。
【0061】
また、冷却部材52,53を通過する際に冷却された送風は、第2流路R2を通過する際にイオン発生部6の両電極部8の外周面に沿って流下しながら効率よく熱を奪う。つまり、本例のペルチェユニット50を用いたミスト付加部40は、冷却風により高効率で電極部8を放熱させる冷却部30を兼ねたものであって、上記ミスト付加部40を具備することにより、高効率で電極部8を放熱させながら長期間に亘って安定的にイオンミストを生成することが可能となる。なお、図示はしていないが、ミスト付加部40で生じた結露水が該ミスト付加部40外に漏出することを防止する防水構造を備えている。
【0062】
次に、本発明の実施形態における第5例のイオン吐出装置について図8に基づいて説明する。なお、上記した第4例の構成と同様の構成については詳細な説明を省略し、第4例とは相違する特徴的な構成について以下に詳述する。
【0063】
本例のイオン吐出装置においては、ペルチェユニット50を用いて結露水を生成する第3例と同様のミスト付加部40を、風路4内のイオン発生部6よりも上流側の箇所と下流側の箇所の両方に設けている。上流側と下流側のミスト付加部40は共に、結露水を生成することで送風にミストを付加し、これによりイオンミストを生成したうえで送風に乗せて外部に吐出させるものである。加えて、上流側のミスト付加部40においては、冷却風により高効率で電極部8を放熱させることのできる冷却部30を兼用したものになっている。
【0064】
上記した第1〜第5例のイオン吐出装置においては、絶縁スペーサ7を挟む上流側と下流側の両側に電極部8を密着配置し、高圧印加部9によって両側の電極部8間に高電圧を印加するように、イオン発生部6を構成している。しかし、イオン発生部6はこの構成に限定されるものではなく、絶縁スペーサ7を電極部8の上流側又は下流側の一方にだけ配置した構成や、絶縁スペーサ7を電極部8と密着させるのではなく該電極部8の近傍に配置する構成としてもよい。具体的には、後述の第6例、第7例のイオン吐出装置に例示するような構成が採用可能である。
【0065】
図9には、本発明の実施形態における第6例のイオン吐出装置を示している。なお、第1例の構成と同様の構成については詳細な説明を省略し、第1例とは相違する特徴的な構成について以下に詳述する。
【0066】
本例のイオン吐出装置においては、絶縁スペーサ7の上流側の近傍箇所に、絶縁スペーサ7よりも小径の円板状に設けた電極部8を配置することで、イオン発生部6を構成している。絶縁スペーサ7と電極部8との間には、数100μm程度の略均等な幅で隙間60を介在させている。絶縁スペーサ7の中央には、第1例と同様の貫通孔10を数100μmの口径で設けており、電極部8側には貫通孔19を設けていない。
【0067】
絶縁スペーサ7と電極部8の間に形成される微小幅の隙間60は、その外周縁部分にて周囲の風路4と連通し、且つ、その中央部分にて絶縁スペーサ7の貫通孔10と連通している。貫通孔10は、その上流端にて上記隙間60と連通し、且つ、その下流端にて下流側の風路4と連通している。
【0068】
本例にあっては、第1例のような隔壁部14や調整弁13を設けて第1流路R1や第2流路R2を形成していない。送風部5が発生させる送風は、図中の矢印に示すように、まず上流側の電極部8の平板面に当たり、該電極部8の外周面に沿って迂回した後に、上記隙間60を通って絶縁スペーサ7の貫通孔10に至る流れと、絶縁スペーサ7の外周面に沿う流れとに分流し、貫通孔10の下流端にて合流した後に吐出口3から外部に吐出される。
【0069】
電極部8には高圧印加部9の負極側を接続させており、高圧印加部9によってイオン発生部6の電極部8に高電圧を印加させると、絶縁スペーサ7に設けた貫通孔10と、絶縁スペーサ7と電極部8の間に形成した隙間60の両方において、マイクロプラズマ放電が開始される。つまり、本例においては、上記隙間60及びこれと下流側にて連通する上記貫通孔10で、絶縁スペーサ7に沿った微小な放電空間Sが形成されており、この放電空間S内において、マイクロプラズマ放電が生じるようになっている。
【0070】
本例のイオン吐出装置において、イオンを生成して外部に送り出すには、送風部5によって風路4内に外気を導入してイオン発生部6に向けて送風し、且つ、高圧印加部9によってイオン発生部6の電極部8に高電圧を印加させ、放電空間Sにてマイクロプラズマ放電を生じさせる。このマイクロプラズマ放電により、放電空間S(即ち、隙間60及び貫通孔10)内にて高密度でイオンが生成される。
【0071】
送風部5によってイオン発生部6に向けて送られた送風は、電極部8の上流側を向く平板面と外周面に沿って流れ、絶縁スペーサ7の外周縁部と当たる位置にまで送り込まれる。絶縁スペーサ7の外周縁部に当たった送風は、その一部が隙間60内に送り込まれ、残りの一部が絶縁スペーサ7を迂回する流路に送り込まれる。
【0072】
隙間60内に送り込まれた送風は、該隙間60と貫通孔10から成る放電空間S内で生じた大量のイオンを下流側に搬送させ、電極部8と絶縁スペーサ7の熱を奪ったうえで、貫通孔10を通じて下流側へと送り出される。また、絶縁スペーサ7を迂回する側に分流した送風は、絶縁スペーサ7の熱を奪ったうえで、貫通孔10から送り出される送風と合流し、合流後の十分な風量を伴ったうえで吐出口3から外部へと送り出される。この十分な風量の吐出風に乗って、イオン発生部6のマイクロプラズマ放電によって大量生成されたイオンは外部空間に向けて勢い良く吐出される。
【0073】
このように、本例のイオン吐出装置によれば、イオン発生部6の電極部8と絶縁スペーサ7を送風により効率的に放熱させながら、放電空間S内のマイクロプラズマ放電により大量のイオンを生成することができる。しかも、ここで生じた大量のイオンを送風により効率的に貫通孔10内から下流側に搬送させ、絶縁スペーサ7の外周面から熱を奪うために分流させた送風と合流させたうえで、十分な風量を伴って外部に吐出させることができる。
【0074】
図10〜図13には、第6例のイオン吐出装置において電極部8や絶縁スペーサ7の構成を変更した各種変形例を示している。図10に示す変形例では、電極部8においてもその中央に貫通孔19を形成している。電極部8側の貫通孔19は、電極部8と絶縁スペーサ7の隙間60を介して、絶縁スペーサ7側の貫通孔10と一直線上に並ぶように形成している。また、電極部8と絶縁スペーサ7とは、略同径の円板状に形成している。
【0075】
図10の変形例によれば、図9に示す例に比べて、電極部8の貫通孔19を通じて放電空間Sを成す貫通孔10にまで直接的に風を送り込むことができ、したがって、放電空間Sで生成したイオンを外部に向けて大量に且つ勢いよく放出することができるという利点がある。また、貫通孔19を通過する送風によって電極部8の熱を奪うことができるという利点もある。
【0076】
なお、電極部8と絶縁スペーサ7の間に隙間60を設けず、両者8,7を密着させた構成にしてもよい。この場合には、電極部8と密着した絶縁スペーサ7が放熱フィンのように働くことになる。
【0077】
図11に示す変形例は、電極部8においてその中央を囲む四箇所に貫通孔19を形成している点で、図10に示す変形例とは相違している。電極部8側のそれぞれの貫通孔19は、絶縁スペーサ7側の貫通孔10と一直線上に並ばないように、風路4の軸方向からみて位置をずらして形成している。図11の変形例によれば、上流からの送風が電極部8の複数の貫通孔19を通過し、更に隙間60を通って迂回したうえで絶縁スペーサ7の貫通孔10を通過するので、送風によって電極部8や絶縁スペーサ7の熱を更に効率的に奪うことができるという利点がある。なお、電極部8の熱を更に効率的に奪うために、該電極部8を、貫通孔19を多数有する網状のものに形成することも好ましい。
【0078】
図12に示す変形例は、電極部8と絶縁スペーサ7において、共に複数の貫通孔10,19を設けている点で、図10に示す変形例とは相違している。電極部8側の貫通孔19と絶縁スペーサ7側の貫通孔10とは、1対1で、隙間60を介して一直線上に並ぶように形成している。図12の変形例によれば、放電空間Sとして複数の貫通孔10を利用できるので全体のイオン生成量を増大させることができ、しかも、各貫通孔10には電極部8の各貫通孔19を通じて直接的に風を送り込むことができる。したがって、外部に向けてイオンを大量に且つ勢いよく放出することができるという利点がある。
【0079】
なお、図12の変形例においても、電極部8と絶縁スペーサ7を密着させた構成にした場合には、絶縁スペーサ7を放熱フィンのように機能させることができる。
【0080】
図13に示す変形例は、絶縁スペーサ7に複数の貫通孔10を設けている点と、各貫通孔10の位置を、電極部8側の貫通孔19と一直線上に並ばないように風路4の軸方向からみてずらして形成している点で、図10に示す変形例とは相違している。図13の変形例によれば、放電空間Sとして複数の貫通孔10を利用できるので全体のイオン生成量を増大させることができる。また、電極部8の貫通孔19を通過した送風は、隙間60を通って迂回したうえで絶縁スペーサ7の各貫通孔10を通過するので、送風によって電極部8や絶縁スペーサ7の熱を更に効率的に奪うことができる。
【0081】
図14には、本発明の実施形態における第7例のイオン吐出装置を示している。なお、第1例の構成と同様の構成については詳細な説明を省略し、第1例とは相違する特徴的な構成について以下に詳述する。
【0082】
本例のイオン吐出装置のイオン発生部6においては、絶縁スペーサ7と、該絶縁スペーサ7の上流側及び下流側に配置される電極部8との間に、数100μm程度の略均等な幅で隙間60を介在させている。絶縁スペーサ7と上流側の電極部8の中央には、第1例と同様の数100μm程度の口径で貫通孔10,19を設けている。下流側の電極部8の中央には、絶縁スペーサ7や上流側の電極部8の貫通孔10,19よりも十分に大きな口径で貫通孔19を設けている。絶縁スペーサ7の貫通孔10と、これを挟む位置にある両側の電極部8の貫通孔19とは、一直線上に並ぶように形成している。
【0083】
絶縁スペーサ7と両側の電極部8の間に形成される微小幅の隙間60は、その外周縁部分にて周囲の風路4と連通し、且つ、その中央部分にて絶縁スペーサ7及び電極部8の貫通孔10,19と連通している。
【0084】
本例にあっても、第1例のような隔壁部14や調整弁13を設けていない。送風部5から送り込まれた送風は、まず上流側の電極部8の平板面と当たる部分において、上流側の電極部8の貫通孔19を通って絶縁スペーサ7の貫通孔10に至る流れと、上流側の電極部8の外周面に沿って迂回する流れとに分流する。貫通孔10を通過した流れは、下流側の電極部8に設けた大径の貫通孔19を通じて更に下流側へと送り出される。上流側の電極部8の外周面に沿って迂回した流れは、絶縁スペーサ7の外周面と下流側の電極部8の外周面に沿って更に下流側へと送り出された後に、下流側の電極部8の貫通孔19を通過した流れと合流する。
【0085】
また、上流側の電極部8の外周面に沿って送り出された流れの一部は、上流側の電極部8と絶縁スペーサ7の隙間60を通じて、絶縁スペーサ7の貫通孔10に送り込まれる。また、上流側の電極部8の外周面からそのまま絶縁スペーサ7の外周面に沿って送り出された流れの一部は、絶縁スペーサ7と下流側の電極部8の隙間60を通じて、下流側の電極部8の貫通孔19に送り込まれる。
【0086】
本例のイオン吐出装置において、高圧印加部9によって両側の電極部8間に高電圧を印加させると、絶縁スペーサ7に設けた貫通孔10と、該絶縁スペーサ7と上流側の電極部8の間に形成した隙間60と、該絶縁スペーサ7と下流側の電極部8の間に形成した隙間60において、マイクロプラズマ放電が開始される。つまり、本例においては、絶縁スペーサ7の貫通孔10と上流側及び下流側の隙間60とで、絶縁スペーサ7に沿った微小な放電空間Sが形成されており、この放電空間S内において、マイクロプラズマ放電が生じるようになっている。
【0087】
したがって、マイクロプラズマ放電により放電空間S内にて高密度でイオンを生成するとともに、送風部5によってイオン発生部6に向けて送風を生じさせると、送風の一部は放電空間Sを通過しながら下流側へと大量のイオンを搬送させ、送風の他の一部は電極部8や絶縁スペーサ7の外周面に沿って通過しながら熱を奪う。イオン発生部6を通過する際に分流した送風はその後合流し、合流後の十分な風量を伴ったうえで吐出口3から外部へと送り出される。この十分な風量の吐出風に乗って、イオン発生部6のマイクロプラズマ放電によって大量生成されたイオンは外部空間に向けて勢い良く吐出される。
【0088】
このように、本例のイオン吐出装置によれば、イオン発生部6の絶縁スペーサ7と両側の電極部8とを送風により効率的に放熱させながら、放電空間S内のマイクロプラズマ放電により大量のイオンを生成することができる。しかも、ここで生じた大量のイオンを送風により効率的に放電空間Sから下流側に搬送させ、絶縁スペーサ7や電極部8の外周面から熱を奪うために分流させた送風と合流させたうえで、十分な風量を伴って外部に吐出させることができる。なお、本例では下流側の電極部8の貫通孔19を大径に設け、放電空間Sで生成したイオンが下流側の電極部8に付着することを防止している。
【0089】
図15には、第7例のイオン吐出装置において絶縁スペーサ7と上流側の電極部8を密着させた場合の変形例を示している。この変形例では、絶縁スペーサ7の貫通孔10と、絶縁スペーサ7と下流側の電極部8の隙間60とで、絶縁スペーサ7に沿った微小な放電空間Sが形成されている。この放電空間S内にて高密度でイオンを生成するとともに、送風部5によってイオン発生部6に向けて送風を生じさせることで、送風の一部は放電空間Sに通過させて大量のイオンを下流側に搬送させ、送風の他の一部は電極部8や絶縁スペーサ7の外周面に沿って通過させて熱を奪うことができる。
【0090】
なお、放電空間Sを成す隙間60を、絶縁スペーサ7と上流側の電極部8との間に設け、下流側の電極部8は絶縁スペーサ7と密着するように設けてもよい。この場合であっても、放電空間Sで生じる大量のイオンを下流側に搬送し、且つ、イオン発生部6の熱を効率的に奪うことができる。
【0091】
ところで、第6例や第7例のイオン吐出装置が具備するイオン発生部6の構成は、上記した第1〜第5例のイオン吐出装置においても適宜に採用可能である。
【0092】
また、第1例〜第7例のイオン吐出装置においては、いずれもイオン発生部6を一つだけ備えた構成を図示しているが、同様のイオン発生部6を風路4中に複数備えた構成であってもよい。イオン発生部6を複数備える場合には、各イオン発生部6を共通の高圧印加部9に対して並列接続させることで、高圧印加部9の印加電圧は抑えたうえで、全体のイオン発生量を維持又は増大させることができる。
【0093】
また、複数のイオン発生部6を高圧印加部9に並列接続させて備える場合には、高圧印加部9が、各イオン発生部6の電極部8に対してパルス状の高電圧を印加するように設けることが好ましい。これは、複数のイオン発生部6には組み付け精度等の固体差が不可避的に存在するため、例えば直流電圧を供給した場合には、各イオン発生部6間に放電の偏りが生じやすくなるからである。これに対して、パルス状に高電圧を印加する場合には、複数のイオン発生部6間に組み付け精度等の固体差が存在することに関わらず、全てのイオン発生部6において放電を偏りなく生じさせることができる。
【0094】
なお、パルス状の高電圧を印加する場合には、そのパルス周波数を数十ヘルツ〜数十キロヘルツに設定し、パルス幅を、ON時間(即ち、印加電圧が放電開始電圧を超える時間)が50%以下となるように設定することが望ましい。また、パルス状の高電圧を直流電圧に重畳させてもよい。
【0095】
以上、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の実施形態における第1例のイオン吐出装置を示す説明図であり、(a)は装置全体、(b)はイオン発生部を示している。
【図2】同上のイオン吐出装置の電極部の変形例を示す説明図である。
【図3】同上のイオン吐出装置の第2流路の変形例を示す説明図であり、(a)は下流側に幅狭部を設けた場合、(b)は上流側に幅狭部を設けた場合を示している。
【図4】同上のイオン吐出装置の流路中に加圧部を設けた変形例を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態における第2例のイオン吐出装置を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態における第3例のイオン吐出装置を示す説明図である。
【図7】本発明の実施形態における第4例のイオン吐出装置を示す説明図である。
【図8】本発明の実施形態における第5例のイオン吐出装置を示す説明図である。
【図9】本発明の実施形態における第6例のイオン吐出装置を示す説明図である。
【図10】同上のイオン吐出装置の電極部や絶縁スペーサの変形例を示す説明図である。
【図11】同上のイオン吐出装置の電極部や絶縁スペーサの他の変形例を示す説明図であり、(a)は側方から見た場合を示し、(b)は風路の軸方向から見た場合を示している。
【図12】同上のイオン吐出装置の電極部や絶縁スペーサの更に他の変形例を示す説明図である。
【図13】同上のイオン吐出装置の電極部や絶縁スペーサのまた更に他の変形例を示す説明図である。
【図14】本発明の実施形態における第7例のイオン吐出装置を示す説明図である。
【図15】同上のイオン吐出装置の電極部や絶縁スペーサの変形例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0097】
1 本体ケース
4 風路
5 送風部
6 イオン発生部
7 絶縁スペーサ
8 電極部
10 貫通孔
13 調整弁
16 放熱フィン
30 冷却部
40 ミスト付加部
50 ペルチェユニット
60 隙間
R1 第1流路
R2 第2流路
S 放電空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、本体ケースに貫通形成される風路と、風路中に配される送風部及びイオン発生部を具備するイオン吐出装置であって、上記イオン発生部は、電極部と、電極部に密着して又は近傍に配置される絶縁スペーサとを備え、電極部に高電圧を印加することで、絶縁スペーサに沿って形成される微小な放電空間内において放電を生じさせるものであり、上記風路は、上記イオン発生部に送り込む送風が、放電空間と電極部の外周面とを共に通過するように形成したものであることを特徴とするイオン吐出装置。
【請求項2】
上記放電空間は、絶縁スペーサに設けた貫通孔と、絶縁スペーサと電極部の間に形成される隙間の、両方又は一方であることを特徴とする請求項1記載のイオン吐出装置。
【請求項3】
上記イオン発生部は、絶縁スペーサを挟む両側に電極部を配置し、両側の電極部間に高電圧を印加するものであることを特徴とする請求項1又は2記載のイオン吐出装置。
【請求項4】
上記イオン発生部は、絶縁スペーサを挟む両側の電極部の両方又は一方を該絶縁スペーサに密着させたものであることを特徴とする請求項3記載のイオン吐出装置。
【請求項5】
上記イオン発生部を複数備えて高圧印加部に並列接続し、該高圧印加部からは各イオン発生部の電極部に対してパルス状の高電圧を印加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のイオン吐出装置。
【請求項6】
上記風路には、送風部が発生させる送風の一部を放電空間内に送り込む第1流路と、送風部が発生させる送風の他の一部を電極部の外周面に沿って通過するように送り込む第2流路とを、分岐して形成してあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のイオン吐出装置。
【請求項7】
上記風路中の第1流路と第2流路に流入する送風の割合を可変する調整弁を具備することを特徴とする請求項6に記載のイオン吐出装置。
【請求項8】
上記調整弁は、第1流路中の風量を略一定に保つように送風の割合を可変するものであることを特徴とする請求項7に記載のイオン吐出装置。
【請求項9】
上記イオン発生部の電極部に、放熱フィンを設けていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載のイオン吐出装置。
【請求項10】
上記風路中の上記イオン発生部より上流側の箇所に、冷却部を配置していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項記載のイオン吐出装置。
【請求項11】
上記冷却部が、ペルチェユニットを用いたものであることを特徴とする請求項10記載のイオン吐出装置。
【請求項12】
上記風路中にミスト付加部を配置していることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項記載のイオン吐出装置。
【請求項13】
上記ミスト付加部が、ペルチェユニットを用いて結露水を生成するものであることを特徴とする請求項12記載のイオン吐出装置。
【請求項14】
上記ミスト付加部を、上記風路中の上記イオン発生部より上流側の箇所に配置していることを特徴とする請求項13記載のイオン吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−75660(P2010−75660A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331354(P2008−331354)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】