説明

イオン性有機化合物及びその製造方法、並びにそれを用いた光応答性高分子電解質

【課題】イオン性有機化合物、および光に応答して主鎖構造変化を起こす光応答性高分子電解質を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるイオン性有機化合物である。これらの化合物は、(A)両末端に4−(クロロメチル)ベンズアミド基を有し、置換基を有してもよいシクロヘキサンジアミド化合物又は芳香族ジアミド化合物と、(B)両末端に(ジメチルアミノ)アルキレン基を有するアゾベンゼンジアミド化合物の縮合反応により得られる。


(式中、Aは置換基を有してもよいシクロヘキサン環または芳香環を1個以上有する連結部位、Xは1価のアニオンを示す。nは2もしくは3、mは1〜800の整数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン性有機化合物とその製造方法、並びに該イオン性有機化合物を利用した光に応答して主鎖構造変化を起こす高分子電解質に関する。
【背景技術】
【0002】
光エネルギーの利用は、自然界における光合成に代表されるように、省エネルギーの観点から重要である。機能性高分子においても、光応答性を有する高分子は広く研究され、例えば、非特許文献1では、フォトクロミック化合物として知られるアゾベンゼンを、分子内に組み込んだ高分子の薄膜が、光照射によって自在に屈曲する材料となることが知られている(非特許文献1)。
【0003】
他方、有機高分子の中で、主鎖中に電荷を有する高分子電解質は、一種の固体電解質として種々の電気化学的な応用が期待される材料である。この高分子電解質の構造に、光応答性のフォトクロミック化合物を組み入れた例は、側鎖として導入された場合には、PAZOの慣用名で知られるアゾベンゼン系高分子が、既に化学試薬として市販されている程度に一般的であるが、主鎖中に直接導入した例は、非特許文献2,3に知られる限られた例のみである。もし、光照射により効率よく主鎖構造の大きな変化が誘起できれば、固体電解質としてのイオン伝導度のスイッチング等が可能な新規有機材料となり得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Y.L.Yu, M.Nakano, T.Ikeda, Nature,425,145(2003).
【非特許文献2】J.-D.Hong, B.-D.Jung, C.H.Kim, K.Kim, Macromolecules,33,7905(2000).
【非特許文献3】B.-D.Jung, J.-D.Hong, A.Voigt, S.Leporatti, L.Dahne, E.Donath, H.Mohwald, Colloids and Surfaces,198-200,483(2002).
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−248224号公報
【特許文献2】国際公開第2010/027067号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、光照射によりその主鎖構造及び物性変化が可能な高分子電解質はごく少数のみ知られてきた。本発明は、こうした現状を鑑みてなされたものであって、新しい構造の光応答性高分子電解質を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、先に共重合型の新規高分子電解質の合成法を見出し出願した(特許文献1、2)。本発明は、さらに上記の共重合法を発展させた、新たなイオン性有機化合物、並びにそれを利用した光応答性高分子電解質の合成に関するものである。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)両末端に4−(クロロメチル)ベンズアミド基を有し、置換基を有してもよいシクロヘキサンジアミド化合物又は芳香族ジアミド化合物と、(B)両末端に(ジメチルアミノ)アルキレン基を有するアゾベンゼンジアミド化合物を、縮合反応させることにより、一般式(1)で表されるイオン性有機化合物を合成したもので、つぎの[1]〜[5]の構成を採用する。
【0009】
[1]下記の一般式(1)で表されるイオン性有機化合物。
【化1】

(式中、Aは置換基を有してもよい、シクロヘキサン環または芳香環を1個以上有する連結部位、Xは1価のアニオンを示す。nは2もしくは3、mは1〜800の整数を示す。)
[2](A)両末端に4−(クロロメチル)ベンズアミド基を有し、置換基を有してもよいシクロヘキサンジアミド化合物又は芳香族ジアミド化合物と、(B)両末端に(ジメチルアミノ)アルキレン基を有するアゾベンゼンジアミド化合物を、縮合反応させることを特徴とする上記[1]のイオン性有機化合物の製造方法。
[3]前記縮合反応をジメチルホルムアミド中で、50〜80℃で行うことを特徴とする上記[2]のイオン性有機化合物の製造方法。
[4]さらに、得られたイオン性有機化合物のアニオンをアニオン交換反応により他のアニオンに置換することを特徴とする上記[2]又は[3]のイオン性有機化合物の製造方法。
[5]上記[1]のイオン性有機化合物を有効成分とする光応答性高分子電解質。
【発明の効果】
【0010】
本発明のイオン性有機化合物は、高分子電解質、特に光応答性高分子電解質として有効である。光応答性高分子電解質は、光スイッチ機能を有する擬固体電解質として好適に用いられる。本発明は簡単な工程によって、光応答性高分子電解質として優れた性状を有する新規な化合物を効率よく製造することを可能にするものであり、反応試薬の組み合わせによる物性の制御あるいは機能性官能基の導入による機能性高分子電解質の合成開発に新たな道を拓くものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の光応答性高分子電解質の紫外―可視吸収スペクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のイオン性有機化合物は、下記の一般式(1)で表される。
【化1】

(式中、Aは置換基を有してもよい、シクロヘキサン環または芳香環を1個以上有する連結部位、Xは1価のアニオンを示す。nは2もしくは3、mは1〜800の整数を示す。)
【0013】
上記一般式(1)で表される本発明のイオン性有機化合物は、(A)両末端に4−(クロロメチル)ベンズアミド基を有し、置換基を有してもよいシクロヘキサンジアミド化合物又は芳香族ジアミド化合物と、(B)両末端に(ジメチルアミノ)アルキレン基を有するアゾベンゼンジアミド化合物を縮合反応およびそれに続くアニオン交換反応により得られる。縮合反応溶媒は、ジメチルホルムアミド等の極性有機溶媒を使用することが望ましいが、これに限定されるものではない。また、反応時間は12〜48時間が好ましい。反応温度は50〜80℃程度、特に80℃程度とすることが好ましい。イオン性有機化合物の重合度(m)は1〜800、好ましくは10〜300である。アニオン交換反応の溶媒は、水を使用することが望ましいが、これに限定されるものではない。また、アニオン交換反応時間は5分から1時間程度が好ましい。反応温度は80〜100℃程度とすることが好ましい。
【0014】
(A)両末端に、4−(クロロメチル)ベンズアミド基を有するシクロヘキサンジアミド化合物または芳香族ジアミド化合物の具体例としては、trans−1,4−ビス[(4−クロロメチル)ベンズアミド]シクロヘキサン、4,4’−ビス[(4−クロロメチル)ベンズアミド]ベンズアニリドが挙げられる。
【0015】
また、(B)両末端に(ジメチルアミノ)アルキレン基を有するアゾベンゼンジアミド化合物の具体例としては、(E)-4,4'-(ジアゼン-1,2-ジイル)ビス(N-(2-(ジメチルアミノ)エチル)ベンズアミド)、および(E)-4,4'-(ジアゼン-1,2-ジイル)ビス(N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)ベンズアミド)が挙げられる。
【0016】
上記した一般式(1)で表される、好ましいイオン性有機化合物としては、つぎの一般式(A1)で表される化合物が例として挙げられる。
【化2】

【0017】
(式中、Xはハロゲンイオン(F,Cl,Br,I)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド基(TFSA)、テトラフルオロホウ酸基(BF)、ヘキサフルオロリン酸基(PF)、チオシアネート(SCN)、硝酸基(NO)、硫酸基(SO)、チオ硫酸基(S)、炭酸基(CO)、炭酸水素基(HCO)、リン酸基、亜リン酸基、次亜リン酸基、各ハロゲン酸化物酸基(XO,XO,XO,XO: X=Cl,Br,I)、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)炭素酸基、トリフルオロメチルスルホン酸基、ジシアンアミド基、酢酸基(CHCOO)、ハロゲン化酢酸基((CX3−n)COO,X=F,Cl,Br,I;n=1,2,3)、テトラフェニルホウ酸基(BPh)およびその誘導体(B(Aryl):Aryl=置換フェニル基)から選ばれた少なくとも1種を示す。nは2もしくは3、mは1〜800の整数を示す。)
【0018】
上記方法で得られた一般式(1)で表されるイオン性有機化合物は、高分子電解質として優れた性状を有する。これらの化合物において、イオン性の4級化された窒素原子とカウンターアニオンがイオン電導性を発現するキャリアとなり、また、アゾベンゼン部位が紫外光照射と白色光照射によってシス―トランス異性化を起こすことによって、主鎖構造変化を誘起している。
【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。以下の実施例において、イオン性有機化合物を製造する原料となる4−(クロロメチル)ベンゾイルクロリド、アゾベンゼン-4,4’-ジカルボニルクロリド、 N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルプロピレンジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、trans−1,4−ジアミノシクロヘキサンは東京化成工業から購入したものを用いた。脱水塩化メチレン、脱水テトラヒドロフラン(THF)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、関東化学から購入したものを用いた。リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドは、キシダ化学から購入したものを用いた。分子量測定用のサイズ排除クロマトグラフィーシステム(島津製作所)は、カラムにShodex Asahipak GF−510 HQを使用した。フローレートは、0.4 ml/minとした。カラムの温度をカラムオーブン(島津製作所)により40℃に保った。溶離液に30mMのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドを含むN,N−ジメチルホルムアミドを使用した。示差屈折計検出器により得られたクロマトグラムを基にしてポリ(メチルメタクリレート)基準で分子量を算出した。
【0020】
(実施例1)
(E)-4,4'-(ジアゼン-1,2-ジイル)ビス(N-(2-(ジメチルアミノ)エチル)ベンズアミド)の合成
【化3】

【0021】
アルゴン雰囲気下で、無水THF(20mL)中にN,N−ジメチルアミノエチレンジアミン(0.54mL, 4.88mmol)、トリエチルアミン(1.37mL, 9.78mmol)を導入し、氷冷下で滴下ロートを用いて、アゾベンゼン-4,4’-ジカルボニルクロリド(0.5g, 1.63mmol)を含む無水THF(20mL)を加え、そのまま終夜で攪拌した。減圧下で溶媒を除去し、塩化メチレン50mLで三回抽出を行った後、飽和食塩水および無水硫酸ナトリウムにより母液の乾燥を行った。溶液を濃縮後に、ジクロロメタン/ヘキサン混合溶媒による再結晶操作で、式(2)で表わされる目的化合物を橙色固体として得た(530mg、収率79%)。
【0022】
1H NMR(300 MHz, DMSO-d6):δ=8.59(t,J=5.64 Hz,-NH,1H),8.07-7.99(m,4H),3.39(t,J=6.75 Hz,2H),2.42(t,J=6.75 Hz,2H),2.18(s,6H).
UV/vis(DCM):λmax=333nm.
IR (塩化メチレン溶液,νmax/cm-1):3550,3150,1659,1605,1510,1480,1460,1275,1260.
【0023】
trans−1,4−ビス[(4−クロロメチル)ベンズアミド]シクロヘキサンの合成
【化4】

【0024】
無水塩化メチレン(200mL)中、トリエチルアミン(2.02g, 20mmol)存在下で、trans−1,4−ジアミノシクロヘキサン(1.14g, 10mmol)を懸濁させた後、4−(クロロメチル)ベンゾイルクロリド(3.78g, 20mmol)を含む無水塩化メチレン(50mL)溶液を、滴下ロートを用いて加え、室温で18時間攪拌を行った。生成した沈殿物を濾別し、塩化メチレンで洗浄した後、乾燥させることで目的物を無色粉末として得た(4.0g, 96%)。
【0025】
1H NMR(300 MHz, DMSO-d6):δ=8.26(d,J=7.9 Hz,2H,-NH),7.80(d,J=8.2 Hz,4H,Ph-H),7.47(d,J=8.3 Hz,4H,Ph-H),4.77(s,4H,-CH2Cl),3.73(br s,2H,cyclohexyl-CH),1.86(d,J=5.9 Hz,4H,cyclohexyl-CH2),1.42(t,J=10.7 Hz,4H,cyclohexyl-CH2).
IR(DMSO, νmax/cm-1):3456,1648,1541,1504,1318,1228.
【0026】
イオン性有機化合物の合成(I)
【化5】

【0027】
式(2)の化合物(0.080g,0.21mmol)、および(3)で表わされる化合物(0.090g, 0.21mmol)を、DMF(15mL)中、80℃で48時間攪拌した。室温まで冷却後に、沈殿物を濾別することで、上記の式(4)で表されるイオン性有機化合物を収率55%で得た。
IR(D2O,νmax/cm-1):1628,1574,1451,1233,1210,1156.
後述するTFSAアニオン交換誘導体の結果より、サイズ排除クロマトグラフィーの測定から求められた分子量分布において、カチオン主鎖部分の数平均分子量:Mn=2.35×104Da、重量平均分子量:Mw=6.98×104Da、分子量分布の分散度:Mw/Mn=2.9.
【0028】
(実施例2)
上記の実施例1で得られた、式(4)で表わされるイオン性有機化合物を用いて、0.6×10-5M濃度の水溶液を調製し、その溶液を石英セル中に入れて水銀灯による紫外光照射を行ったところ、図1に示すような、照射時間に依存した紫外吸収スペクトルの変化が観測された。
なお、図中、uvは、紫外線光照射、visは、可視光照射を示す。
図1から、330nm付近の、トランス体アゾベンゼンに由来する吸収極大ピークが時間と共に減少し、それと共に長波長側の440nm付近の吸収強度が増大して、シス体の生成が起こっていることが示唆された。この変化は、下記の式に示すようなアゾベンゼンの光照射による構造異性化に典型的な吸収スペクトル変化であり、主鎖中のアゾベンゼン部位が効率よく光に応答して異性化していることを表している。また、この異性化後の溶液に、長波長側の可視光を照射することによって、シス体からトランス体への戻り反応が起こり、当初のスペクトル形状が回復することも確認された。
【0029】
【化6】

【0030】
(実施例3)
イオン性有機化合物の合成(II):アニオン交換反応
【化7】

【0031】
上記実施例1で得られた式(4)で表される高分子電解質(50 mg)を80℃で水(20 mL)に溶かし、その溶液に0.4M濃度のリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(Li-TFSA)水溶液(5 mL)を加えると、上記の式(5)で表される光応答性高分子電解質の沈殿物が生じた(収率87%)。
【0032】
1H NMR(300MHz,DMSO-d6):δ=9.04(-NH),8.39(-NH),8.09-7.96(m),7.65-7.69(m),4.68(s),3.85(br s),3.56(br s),3.07(s,-N+(CH3)2-),1.91(br s),1.50(br s).
サイズ排除クロマトグラフィーの測定から求められた分子量分布において、カチオン基を有する主鎖部分の数平均分子量:Mn=2.35×104Da、重量平均分子量:Mw=6.98×104Da、分子量分布の分散度:Mw/Mn=2.9.
【0033】
(実施例4)
(E)-4,4'-(ジアゼン-1,2-ジイル)ビス(N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)ベンズアミド)の合成
【化8】

【0034】
前述した式(2)で表わされる化合物の合成において、N,N−ジメチルアミノエチレンジアミンの代わりに、N,N−ジメチルプロピレンジアミンを用いることで、式(6)で表わされる目的化合物を得た(収率96%)。
【0035】
1H NMR(300 MHz,DMSO-d6):δ=8.71(t,J=5.61 Hz,-NH,1H),8.07-7.97(m,4H),3.30(t,J=6.90 Hz,2H),2.27(d,J=7.02 Hz,2H),2.09(s,6H),1.69-1.65(q,2H).
IR(DCM, νmax/cm-1):3564,2953,1652,1605,1554,1431,1242,1100.
UV/vis(DCM):λmax=334nm.
【0036】
イオン性有機化合物の合成(III)
【化9】

【0037】
上記実施例1の縮合反応において、式(2)で表わされる化合物の代わりに式(6)のアゾベンゼン化合物を用いて反応を行い、上記式(7)の光応答性高分子電解質を得た(収率70%)。
【0038】
(実施例5)
4,4’−ビス[(4−クロロメチル)ベンズアミド]ベンズアニリドの合成
【化10】

【0039】
上記実施例1において、trans−1,4−ジアミノシクロヘキサンの代わりに4,4’−ジアミノベンズアニリドを用いて反応を行い、上記式(8)の目的物を得た(収率99%)。
IR(DMSO,νmax/cm-1):3458,1662,1517,1403,1317,1278,1184.
【0040】
イオン性有機化合物の合成
【化11】

【0041】
上記、実施例4の縮合反応において、式(3)で表わされるアミド化合物の代わりに、上記式(8)のアミド化合物を用いて反応を行い、上記式(9)のイオン性有機化合物を得た(収率70%)。
【0042】
IR(D2O,νmax/cm-1):1651,1574,1516,1458,1438,1383,1230,1162.
後述するTFSAアニオン交換誘導体の結果より、サイズ排除クロマトグラフィーの測定から求められた分子量分布において、カチオン基を有する主鎖部分の数平均分子量:Mn=1.81×104Da、重量平均分子量:Mw=3.21×104Da、分子量分布の分散度:Mw/Mn=1.8.
【0043】
(実施例5)
イオン性有機化合物の合成:アニオン交換反応
【化12】

【0044】
上記実施例2において、式(4)のイオン性有機化合物の代わりに、上記式(9)のイオン性有機化合物を用いて、上記の式(10)で表されるイオン性有機化合物の沈殿物が生じた(収率85%)。
【0045】
1H NMR(300 MHz,DMSO-d6):δ=10.61(-NH),10.35(-NH),10.18(-NH),8.09-7.86(m),7.76-7.70(m),4.63(s),3.34(br s),3.01(s,-N+(CH3)2-),2.14(br s).
サイズ排除クロマトグラフィーの測定から求められた分子量分布において、カチオン基を有する主鎖部分の数平均分子量:Mn=1.81×104Da、重量平均分子量:Mw=3.21×104Da、分子量分布の分散度:Mw/Mn=1.8.
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明で得られるイオン性有機化合物は、擬固体高分子電解質として、電池のような蓄電デバイスに用いることが可能と考えられる。さらに光応答性高分子電解質は、イオン伝導度を光刺激によって制御し得る性質を利用した、スイッチング素子としての利用も期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表されるイオン性有機化合物
【化1】

(式中、Aは置換基を有してもよいシクロヘキサン環または芳香環を1個以上有する連結部位からなる連結部位、Xは1価のアニオンを示す。nは2もしくは3、mは1〜800の整数を示す。)
【請求項2】
(A)両末端に4−(クロロメチル)ベンズアミド基を有し、置換基を有してもよいシクロヘキサンジアミド化合物又は芳香族ジアミド化合物と、(B)両末端に(ジメチルアミノ)アルキレン基を有するアゾベンゼンジアミド化合物を、縮合反応させることを特徴とする請求項1に記載のイオン性有機化合物の製造方法。
【請求項3】
前記縮合反応をジメチルホルムアミド中で、50〜80℃で行うことを特徴とする請求項2に記載のイオン性有機化合物の製造方法。
【請求項4】
さらに、得られたイオン性有機化合物のアニオンをアニオン交換反応により他のアニオンに置換することを特徴とする請求項2又は3に記載のイオン性有機化合物の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のイオン性有機化合物を有効成分とする光応答性高分子電解質。


【図1】
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【公開番号】特開2012−87259(P2012−87259A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236948(P2010−236948)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】