説明

イオン水接触による有機感光体の電気的特性測定方法

【課題】イオン水を接触させることで効率よく合理的に、しかも簡便な機構により感光ドラムたる有機感光体の電気的特性を測定する方法を提供する。
【解決手段】イオン水2を有機感光体1に接触させた電極4と、ネットワーク回路5を組み合わせる。ポット3内のイオン水2の上面2aを有機感光体1の表面1aに接触させて電極4をつくり、直接に電圧を印加して表面電位を確保すると共に、前記ポット3内のイオン水2を通して有機感光体1の表面1aに光9を照射する機構により、前記有機感光体1の電気的特性を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン水接触による有機感光体(以下、感光ドラムとも言う。)の電気的特性測定方法の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機感光体の電気的特性を測定するための方法として、(1)帯電、(2)露光、(3)電位測定、(4)除電、を順に操作できる装置を使用する方法が一般的に行われている。
【0003】
一例として、本出願人の製造する測定器を図4を用いて説明する。同図中の帯電器bによる帯電は、コロナ放電等によりイオンを生成し、サンプルの表面に付着させ、有機感光体aに電位ギャップをつくる。露光光源cによる露光は、照射することでキャリアが生成される。このキャリアは、有機感光体aの電位ギャップによりその表面に移動して、表面の電位を中和する。電位測定は、通常非接触式の表面電位計dが使われる。除電は、除電光源eにより光を照射して、帯電の残りを無くす。これらの動作を順に実行するために、有機感光体aを回転移動させる。この仕組みで、コピー機等ではアルミ管の表面に感光体aを塗布し、帯電器b、露光光源c、表面電位計d、除電光源eの各装置をその感光体aの周囲に配置して当該有機感光体aを回転させながら測定を行っている。
【0004】
また、関連する技術文献として、本出願人に係る下記文献1の特許第3203349号特許公報には、被試験体の感光ドラムを嵌脱容易にして、しかも回転自在にセットした後、感光ドラムに帯電させ、ついで帯電させた感光ドラムを露光し、露光後前記ドラムに検査用トナーを付着し、トナーが付着した状態をCCDラインセンサーもしくはCCDカメラを介して感光ドラムの光減衰の欠陥の有無を検出せしめると共に、さらに再度感光ドラムに帯電させ、帯電後そのまゝ検出用トナーを付着させ、前記トナーが付着した状態をCCDラインセンサーもしくはCCDカメラを介して感光ドラムの帯電の欠陥を検出し、検出後はトナーを除去し、光消去を行ってセットしている感光ドラムを離脱せしめるようにしたことを特徴とする感光ドラムの欠陥検出方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3203349号特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図4に示した前記従来技術による測定方法では、帯電→露光→電位測定→除電といった一連の動作を順に実行するために、有機感光体aを回転移動させながら慎重に行う必要がある。
【0007】
そのため、測定には多くの時間がかかる。例えば、ドラムに塗布した有機感光体aの場合、1箇所を測定する為に1秒から0.5秒を要する。この測定において、有機感光体aで生成されるキャリアが電位ギャップ、すなわち帯電電位と照射される光の量に依存することから、その帯電電圧や露光強度等のパラメーターを変化させる場合には、膨大な時間を必要とする。さらに、寿命試験を行うには数日の時間が通常必要となる。
【0008】
また前記特許文献1の方法によれば、感光ドラムの光減衰特性と帯電特性の検査を複雑な検出装置を使用することなく、複雑な制御を不要にして検査に要する処理速度のスピードアップ化が図られるが、更に感光ドラムの欠陥検出の作業効率化が解決すべき課題としてある。
【0009】
したがって、本発明の目的は、イオン水を接触させることで効率よく合理的に、しかも簡便な機構により感光ドラムたる有機感光体の電気的特性を測定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段として、請求項1記載の発明のイオン水接触による有機感光体の電気的特性測定方法は、イオン水2を有機感光体1に接触させた電極4と、ネットワーク回路5を組み合わせることにより、前記有機感光体1の電気的特性を測定することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明のイオン水接触による有機感光体の電気的特性測定方法は、ポット3内のイオン水2の上面2aを有機感光体1の表面1aに接触させて電極4をつくり、直接に電圧を印加して表面電位を確保すると共に、前記ポット3内のイオン水2を通して有機感光体1の表面1aに光9を照射する機構により、前記有機感光体1の電気的特性を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1、2の本発明は、イオン水を有機感光体に接触させた電極と、ネットワーク回路を組み合わせたり、ポット内のイオン水の上面を有機感光体の表面に接触させて電極をつくり、直接に電圧を印加して表面電位を確保すると共に、イオン水を通して有機感光体の表面に光を照射する機構により、有機感光体(感光ドラム)の電気的特性を、効率よく飛躍的な短時間で測定できる上、実施コストの低減化にも寄与する。そのため、有機感光体の開発の時間短縮に、多大に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のイオン水接触による有機感光体の電気的特性測定方法の基本的構成を示した説明図である。
【0014】
【図2】本測定方法の具体的構成を示した説明図である。
【0015】
【図3】本発明のネットワーク回路を示した説明図である。
【0016】
【図4】従来例を示した説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のイオン水接触による有機感光体の電気的特性測定方法の好適な実施形態を、以下図面にしたがって説明する。
【0018】
本実施形態は、イオン水2を感光ドラムたる有機感光体1に接触させた電極4と、後述のネットワーク回路5を組み合わせることにより、有機感光体1の電気的特性を測定する。とりわけ、ポット3内のイオン水2の上面2aを有機感光体1の表面1aに接触させて電極4をつくり、直接に電圧を印加して表面電位を確保すると共に、ポット3内のイオン水2を通して有機感光体1の表面1aに光9を照射する機構により、前記有機感光体1の電気的特性を測定するものである。
【0019】
本実施形態の測定方法の基本的構成を図1に示した。イオン水2を感光ドラムたる有機感光体1に接触させ、電源6に接続して電極をつくり、光源8の光9を前記イオン水2を通して感光ドラム1の表面に照射することにより電気的特性を測定する。
【0020】
接触電極をつくるイオン水2としては、食塩水等のイオン化されているものであって、光9が通過するものが好適に使用される。イオン化された電極の抵抗値は、有機感光体1の抵抗値より充分に低いため、有機感光体1の電極として充分に使用できるものである。
【0021】
具体的な構成を図2に基づき説明する。
【0022】
ポット3は、導電性の材料で円筒状に形成され、その中に充填した前記のイオン水2を介して有機感光体1に接触されている。
【0023】
電極4に埋め込まれたガラス7は、光9を有機感光体1の表面1aに照射するために設置されている。表面電位計13は、アパーチャー14を電極4に対向して設置されおり、電極4の電位を非接触で測定する。電源6は、ネットワーク5を介して電極4と接続されている。
【0024】
前記ポット3内のイオン水2の上面2aは、表面張力により有機感光体1の表面1aに接続される。
【0025】
有機感光体1に接続された電流計12は、有機感光体1に流れる電流を測定する。
【0026】
本実施形態のネットワーク5は、測定内容に合わせてイオン水2aが充填されたポット3と電源6の接続条件を構築する。実際の回路を、以下に図3を用いて説明する。
【0027】
同図3において、リレー10、リレー20、リレー30をオンして、電圧を印加した後にリレー10をオフすると、イオン水電極は、有機感光体1の暗減衰特性を検知する。この減衰特性を表面電位計13で測定することで、有機感光体1の暗減衰特性が得られる。
【0028】
同上の条件で、光9を照射することにより明減衰特性を測定できる。
【0029】
また、リレー10をオンしてリレー20をオフした後、リレー30をオンしてチャージ抵抗を介してイオン電極に電流を供給するとき、表面電位計13で有機感光体1の帯電特性が測定できる。
【0030】
リレー10、リレー20、リレー30をオンし、イオン電極に電圧を供給しながら光9を有機感光体1に照射することで、有機感光体1の寿命試験が行える。この測定は、有機感光体1の光照射に対するキャリアの発生量を電流計12に流れる電流からその特性を測定できる。
【0031】
さらに、有機感光体1は、常にキャリアの生成と放出を実時間で実行するため、従来例に比べて著しく短時間に疲労をさせることが可能である。電子写真プロセスによる試験では33時間以上かかる試験を50分程度で実行することができる。
【0032】
次に、リレー10、リレー20、リレー30をオンし、光9を照射しながらイオン電極に印加する電圧を可変するとき、帯電電位に対するキャリアの発生効率が電流計12で測定できる。
【0033】
同様にリレー10、リレー20、リレー30をオンし、イオン電極に一定の電圧を印加しながら、光強度を可変することで光強度に対するキャリア発生量特性が電流計12の測定で得られる。
【0034】
さらに、リレー10、リレー20、リレー30をオンし、イオン電極に一定の電圧を印加しながら、光9を短いパルスにして照射するとき、電流計12の測定をして結果を計算することで、有機感光体1で生成されたキャリアが、有機感光体1内を移動する時間やキャリアの発生効率などを得ることができるのである。
【符号の説明】
【0035】
1 有機感光体(感光ドラム)
1a 表面
2 イオン水
2a 上面
3 ポット
4 電極
5 ネットワーク
9 光


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン水を有機感光体に接触させた電極と、ネットワーク回路を組み合わせることにより、前記有機感光体の電気的特性を測定することを特徴とするイオン水接触による有機感光体の電気的特性測定方法。
【請求項2】
ポット内のイオン水の上面を有機感光体の表面に接触させて電極をつくり、直接に電圧を印加して表面電位を確保すると共に、前記ポット内のイオン水を通して有機感光体の表面に光を照射する機構により、前記有機感光体の電気的特性を測定することを特徴とするイオン水接触による有機感光体の電気的特性測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−113075(P2012−113075A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260891(P2010−260891)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(391048843)ジェンテック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】